【解決手段】スクラバ装置等を通過した排ガスを採取して分析を行う装置であって、被分析ガスを採取する採取ノズル10と、採取ノズルが採取した被分析ガスに含まれる液体成分を捕集して通過させる液体捕集部14と、液体捕集部が捕集した液体成分を順次排出する液体排出部30と、液体捕集部を通過した被分析ガスのガス成分を分析する分析部50とを備える。
前記分析部は、前記液体捕集部から前記ガスセル部に導入される前記被分析ガスの流量に基づいて、前記ガスセル部に導入する前記パージガスの流量を制御する流量制御部を更に有する
請求項6または7に記載の分析装置。
前記計測部は、前記ガスセル部に前記被分析ガスおよび前記パージガスを導入した場合に前記受光部が受光した光の強度と、前記記憶部が記憶した前記校正情報とに基づいて、前記被分析ガスのガス成分を分析する
請求項9に記載の分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る分析装置100の構成例を示す図である。分析装置100は、煙道210を通過するガスに含まれる所定の被測定物質の濃度を分析する。煙道210を通過するガスは、例えばエンジンが排出する排ガスである。本例の分析装置100は、排ガスに含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物、炭素酸化物等の1種類以上の有害物質の濃度を分析する。本例の分析装置100は、採取ノズル10、液体捕集部14、ダスト捕集部20、接続管24、分析部50、ガス排出部26および液体排出部30を備える。
【0022】
採取ノズル10は、被分析ガスを採取する。本例の採取ノズル10は、一端が煙道210内に挿入されて、煙道210を通過する排ガスの一部を被分析ガスとして採取する。採取ノズル10は、煙道210の側壁に設けられたフランジ部212を貫通してよい。ガスが通過する採取ノズル10等の部品は、ガスに含まれる成分に対する耐腐食性を有することが好ましい。採取ノズル10は、ガラス管であってよく、金属管であってもよい。採取ノズル10は、煙道210の断面の中心近傍において、被分析ガスを採取してよい。
【0023】
採取ノズル10は、煙道210内の複数の箇所から被分析ガスを採取してもよい。採取ノズル10は、煙道210の断面の直径方向において異なる複数の位置で被分析ガスを採取してよく、ガスが進行する煙道210の延伸方向において異なる複数の位置で被分析ガスを採取してもよい。これにより、煙道210内の場所毎にガス成分の濃度の偏りが生じる場合であっても、平均的なガス成分を有する被分析ガスを採取することができる。
【0024】
液体捕集部14は、採取ノズル10が採取した被分析ガスに含まれる液体成分を捕集して通過させる。本例の液体捕集部14は、分離捕集部16および捕集筐体18を有する。また、採取ノズル10は、採取した被分析ガスを分離捕集部16に向けて噴射する噴射口12を有する。噴射口12は、分離捕集部16に向かう方向にかけて、管の直径が徐々に減少するテーパー部を有することが好ましい。これにより、分離捕集部16に噴射する被分析ガスの流速を向上させることができる。
【0025】
捕集筐体18は、分離捕集部16および採取ノズル10の噴射口12を囲むように形成される。捕集筐体18は、噴射口12から噴射した被分析ガスが外部に拡散することを防ぐ。捕集筐体18は、ガラスで形成されてよく、金属で形成されてもよい。
【0026】
分離捕集部16は、被分析ガスに含まれる液体成分の少なくとも一部を分離して、被分析ガスを通過させる。例えば分離捕集部16は、被分析ガスに含まれる液体成分の90%以上を分離する。
【0027】
液体排出部30は、液体捕集部14が捕集した液体成分を捕集筐体18の外部に順次排出する。「液体成分を順次排出する」とは、液体の排出を時間的に途切れずに行うこと、一定の周期で液体成分を排出すること、および、所定の条件が満たされる毎に液体成分を順次排出することを含む。
【0028】
液体排出部30は、液体捕集部14が捕集した液体成分の量が予め定められた量を超えた場合に液体成分を順次排出してよい。また、液体排出部30は、液体捕集部14が捕集した液体成分のうち、一定量以上の塊になったものから順次排出してもよい。例えば液体捕集部14が捕集した液体成分は、分離捕集部16の表面に付着する。付着した液体成分の塊の大きさが所定値を超えると、液体成分の当該塊は重力の影響、または、被分析ガスが吹き付けられることで、分離捕集部16の表面に留まることができずに落下するか、または、下方に流れる。
【0029】
液体排出部30は、捕集筐体18の底面に開口を有する。当該開口は、分離捕集部16の表面から液体成分が落下する位置、または、流れ落ちる位置に設けられる。また、捕集筐体18の底面は、液体成分が液体排出部30の開口に向かって流れる斜面を有してよい。液体排出部30は、当該開口を介して液体成分を捕集筐体18の外部に排出する。分離捕集部16は、表面に付着した液体を当該開口に誘導する誘導路を有してよい。当該誘導路は、採取ノズル10が噴射する被分析ガスが、誘導路上の液体に接触することを妨げる遮蔽部を有してよい。また当該開口は、採取ノズル10と対向する分離捕集部16の表面を延長した位置に設けられてよい。
【0030】
液体排出部30を設けることで、捕集筐体18の液体抜きを自動で行うことができる。このため、例えば船舶等のように、作業場所に制限があり捕集筐体18の液体抜きを手動で行うことができない場合でも、捕集筐体18に一定量以上の液体が残留することを防ぐことができる。
【0031】
特に、被分析ガスに液体成分が多く含まれている場合に、当該効果は顕著になる。例えば、排ガスにミストを噴射することで、排ガスに含まれる硫黄酸化物等の有害物質を除去するような排ガス処理システムの場合、被分析ガスには水分が多量に含まれてしまう。この場合であっても、本例の分析装置100は自動で水抜きを行うので、捕集筐体18に多量の水が溜まるのを防ぐことができる。このため、捕集筐体18を通過するガスと、残留水分とが接触する度合いを小さくできる。また、捕集筐体18を小型化することができる。
【0032】
本例の液体排出部30は、液体成分を捕集筐体18の外部に排出する排出管32を有する。本例の排出管32は、液体捕集部14が捕集した液体を、煙道210の内部に排出する。煙道210の底部には、排ガスに含まれる液体成分のうち、結露等によって底部に溜まった分を外部に排出する排出構造が設けられる。排出管32が煙道210の内部に排出した液体成分は、当該排出構造を利用して煙道210の外部に排出される。また、排出管32は、捕集筐体18の外部に排出した液体成分が、捕集筐体18の内部に逆流することを防ぐ構造を有してよい。また、排出管32は、煙道210の排ガスが排出管32を通って捕集筐体18内に流入することを防ぐ構造を有してよい。
【0033】
例えば排出管32の捕集筐体18の底面に設けられた開口近傍には、テーパー形状を有する漏斗42が設けられてよい。漏斗42は、捕集筐体18の底面側に設けられた大開口と、捕集筐体18と離れる側に設けられ、大開口より直径の小さい小開口とを有する。これにより、被分析ガスと排出された液体の接触面積を低減することができ、排出された液体にガス成分が溶解することを防ぐことができる。
【0034】
また、排出管32の開口近傍には、分離捕集部16から液体成分が落下してきたときに液体成分の重さで開放状態となり、液体成分が通過した後は閉状態となる弁を設けてもよい。閉状態となった当該弁は、排出管32から捕集筐体18に向かう液体またはガスを通過させない。これにより、液体成分等の逆流を防ぐことができる。
【0035】
本例の排出管32は、第1領域34、第2領域36、第3領域38および第4領域40を有する。第1領域34は、捕集筐体18の底面から下方に延伸する部分を有する。第1領域34の少なくとも一部は、捕集筐体18の底面と垂直な方向に延伸してよい。第2領域36は、第1領域34の端部と第3領域38の端部とを接続する。第2領域36は、捕集筐体18の底面と平行な方向に延伸する直線部分を有してよく、円弧状の部分を有してもよい。第3領域38は、第2領域36の端部から上方に延伸する部分を有する。第3領域38の少なくとも一部は、捕集筐体18の底面と垂直な方向に延伸してよい。第4領域40は、捕集筐体18の底面よりも下方に配置され、第3領域38の端部から水平方向に延伸する部分を有してよい。第4領域40は、フランジ部212を貫通して、煙道210の内部に挿入される。第4領域40の第3領域38側の端部は、煙道210側の端部よりも高い位置に設けられてよい。第4領域40の全体は、捕集筐体18の下面より低く、且つ、第2領域36より高い位置に設けられてよい。
【0036】
このような構成の排出管32を液体が通過した場合、少なくとも第2領域36には液体が残留する。第1領域34の一部、第2領域36、および、第3領域38の一部は、捕集筐体18と煙道210との間に液体成分を貯留する貯留部として機能する。貯留した液体により排出管32が封止されるので、ガスが排出管32を通過するのを防ぐことができる。また、第4領域40が捕集筐体18の下面より低い位置に設けられるので、液体成分が捕集筐体18に逆流することを防ぐことができる。
【0037】
ダスト捕集部20は、液体捕集部14を通過した被分析ガスに含まれるダストを捕集する。ダスト捕集部20は、筐体の内部に設けたフィルタ22を有する。フィルタ22は、例えば被分析ガスが通過する繊維部分を有する。フィルタ22は、繊維部分にダストを付着させることで、被分析ガスに含まれるダストを捕集する。
【0038】
接続管24は、ダスト捕集部20を通過した被分析ガスを、分析部50に伝送する。接続管24には、採取ノズル10が噴射するガスを吸引して、分析部50側に放出するポンプが設けられてよい。なお、接続管24は、通過する被分析ガスに含まれる液体成分が結露しないように加熱されてよい。同様に、ダスト捕集部20および後述するガスセル部55も加熱されてよい。
【0039】
分析部50は、液体捕集部14およびダスト捕集部20を通過した被分析ガスのガス成分を分析する。分析部50は、被分析ガスに所定の波長成分を有する光を照射する。分析部50は、被分析ガスにおける所定の波長成分の吸収度合いに基づいて、被測定物質の濃度を算出してよい。分析部50により導入されたガスは、分析部50を通過してガス排出部26によって煙道210の内部に戻される。本例のガス排出部26は、煙道210のフランジ部212を貫通する。
【0040】
本例の分析装置100によれば、被分析ガスに含まれる液体成分を捕集してから、被分析ガスのガス成分を分析するので、液体成分による影響を低減して精度よくガス成分を分析することができる。また、上述したように液体捕集部14が捕集した液体成分を、捕集筐体18の外部に順次排出するので、捕集筐体18に液体成分が溜まるのを防ぐことができる。このため、被分析ガスが捕集筐体18に溜まった液体と接触する度合いを低減することができる。このため、被分析ガスに含まれる被測定成分が、捕集筐体18に溜まった液体に吸収されることを防ぐことができ、被分析ガスのガス成分を精度よく分析することができる。また、小型の捕集筐体18を用いることができるので装置を小型化することができる。
【0041】
図2は、液体捕集部14およびダスト捕集部20の構成例を示す図である。本例における分離捕集部16は、分離板15を有する。分離板15は、採取ノズル10の噴射口12と対向して設けられる。分離板15は、噴射口12と対向する位置に設けられた板状部13と、板状部13の周囲に設けられた通気孔17とを有する。
【0042】
採取ノズル10の噴射口12からは、板状部13に向けて被分析ガスが噴射される。被分析ガスに含まれるガス成分は、板状部13の周囲の通気孔17に回りこみ、通気孔17を通過する。一方、被分析ガスに含まれる液体成分は、ガス成分に比べて質量が大きいので、慣性により板状部13に衝突して付着する。これにより、被分析ガスに含まれる液体成分を捕集する。
【0043】
分離板15は、液体成分を含む被分析ガスに対して腐食しづらい材料で形成されることが好ましい。例えば分離板15はガラスで形成される。また、液体捕集部14全体がガラスで形成されてもよい。また、捕集筐体18もガラスで形成されてよい。
【0044】
上述したように、液体捕集部14を通過した被分析ガスは、ダスト捕集部20に導入される。ダスト捕集部20のフィルタ22は、被分析ガスに含まれる煤塵等のダストを捕集する。フィルタ22は、交換可能であることが好ましい。フィルタ22を交換可能にするべく、ダスト捕集部20は、フィルタ22を収容する筐体の壁の一部が開閉または取り外し可能であってよい。一方で、分離捕集部16は、捕集筐体18に固定されてよい。また捕集筐体18は、壁の一部が開閉または取り外し可能ではなく、一体形成されていてよい。
【0045】
図3は、分析部50の構成例を示す図である。本例の分析部50は、分光測定部52、計測部76、流量制御部78、2つのパージ部65、2つのパージ管64、2つのパージポンプ66、ガス排出ポンプ70およびガス導入ポンプ74を有する。流量制御部78は、それぞれのガスの流量を制御する。本例の流量制御部78は、それぞれのポンプを制御して、それぞれのガスの流量を制御する。
【0046】
分光測定部52は、被分析ガスに所定の波長の光を照射した場合の光吸収スペクトルに基づいて、被分析ガスのガス成分を分析する。分光測定部52は、発光部54、発光窓58、受光部56、受光窓60およびガスセル部55を有する。
【0047】
発光部54は、所定の波長の光を受光部56に向けて照射する。発光部54は、レーザー光を照射してよく、所定の波長帯域を有する光を照射してもよい。本例の発光部54はレーザー光を照射する。
【0048】
ガスセル部55は、発光部54と受光部56との間に設けられ、液体捕集部14を通過した被分析ガスが導入される。なお、ガスセル部55は、被分析ガスに含まれる液体成分が結露しないように加熱されることが好ましい。ガスセル部55は、内部を光およびガスが通過可能な筒形状を有する。ガスセル部55の側壁には、被分析ガスをガスセル部55の内部に導入する被分析ガス導入口72が設けられる。本例の被分析ガス導入口72は、ガスセル部55の高さ方向における中央に設けられる。
【0049】
また、ガスセル部55の側壁には、ガスセル部55の内部のガスを排出するガス排出口68が設けられる。本例のガスセル部55は、発光部54と被分析ガス導入口72との間に設けられたガス排出口68−1、および、受光部56と被分析ガス導入口72との間に設けられたガス排出口68−2を有する。ガス排出口68−1は発光部54の近傍に設けられ、ガス排出口68−2は受光部56の近傍に設けられることが好ましい。これにより、ガスセル部55の高さ方向に被分析ガスを分布させることができる。
【0050】
発光窓58は、発光部54と対向して設けられ、発光部54が照射する光を通過させる。本例の発光窓58は、ガスセル部55の高さ方向において、発光部54と、ガス排出口68−1との間に設けられる。発光窓58は、発光部54の光照射面と接していてもよい。
【0051】
受光窓60は、受光部56と対向して設けられ、発光部54が照射した光を受光部56側に通過させる。本例の受光窓60は、ガスセル部55の高さ方向において、受光部56と、ガス排出口68−2との間に設けられる。受光窓60は、受光部56の受光面と接していてもよい。
【0052】
このような構成により、発光部54が発光した光は、ガスセル部55内部の被分析ガスに含まれる各物質に固有の光吸収スペクトルに応じて吸収される。受光部56は、被分析ガスを通過した光を受光する。
【0053】
計測部76は、発光部54における発光強度と、受光部56における受光強度とに基づいて、被分析ガスのガス成分を分析する。発光部54における発光強度は、発光部54の制御情報から算出してよい。また、発光部54における発光強度は、ガスセル部55内部を真空状態にして発光部54を発光させた場合の受光部56の受光強度を予め測定して用いてもよい。また、ガスセル部55内部を空気または窒素で充満させて発光部54を発光させた場合の受光部56の受光強度を予め測定して用いてもよい。計測部76は、被分析ガスに含まれる被測定物質に対応する波長における、発光強度と受光強度との比に基づいて、被測定物質の濃度を算出してよい。発光部54は、分析対象の物質に対応する波長の光を照射する。
【0054】
なお、液体捕集部14を通過した被分析ガスに、微小な粒径の液体成分が含まれている場合がある。このため発光部54は、液体成分による影響を低減すべく、当該液体成分における光の吸収量が、被測定物質における光の吸収量よりも小さくなる波長の光を照射することが好ましい。当該吸収量は、光がガスセル部55を通過する間に吸収される量を指す。液体成分における光の吸収量が、被測定物質における光の吸収量の20%以下となる波長を選択してよく、10%以下となる波長を選択してもよい。
【0055】
また、発光部54は、当該液体成分の単位体積当たりの吸収度が所定値より小さく、且つ、被測定物質の単位体積当たりの吸収度が所定値より大きい波長の光を照射することが好ましい。例えば発光部54は、被測定物質の光吸収スペクトルにおける複数のピーク波長のうちの一つの波長であり、且つ、液体成分における光吸収度が、当該液体成分の光吸収スペクトルにおける最大吸収度の50%以下である波長の光を照射する。液体成分における光吸収度が、当該液体成分の光吸収スペクトルにおける最大吸収度の30%以下である波長を選択してもよい。
【0056】
一例として当該液体成分が水であり、測定すべき物質が硫黄酸化物または窒素酸化物の場合、発光部54は赤外領域または紫外領域の波長の光を照射する。より具体的には、測定すべき物質がSO
2の場合には、発光部54は7μm近傍の波長の光を照射する。また、測定すべき物質がNO
2の場合には、発光部54は6μm近傍の波長の光を照射する。このような波長の光を照射することで、液体捕集部14を通過した被分析ガスに液体成分が残留している場合であっても、当該液体成分の影響を低減して、被分析ガスを分析することができる。
【0057】
また、測定すべき物質が複数種類ある場合、発光部54は、それぞれの物質に対応する波長の光を時分割で照射してよい。また、発光部54は、それぞれの物質に対応するそれぞれの波長を含む光を照射してもよい。この場合、受光部56は、当該波長毎に光の強度を測定できることが好ましい。
【0058】
また、発光部54は、ガスセル部55に導入される被分析ガスの温度に基づいて、発光する光の波長を変化させてもよい。被測定物質の光吸収スペクトルのピーク波長が温度に応じて変化する場合、発光部54は、被測定物質毎に、各温度で用いるべき波長に関する情報を予め記憶してよい。また、分析装置100は、ガスセル部55に導入される被分析ガスの温度が一定値になるように、接続管24の温度を制御してもよい。
【0059】
また、ガスセル部55の側壁には、パージガスをガスセル部55の内部に導入するパージガス導入口62が設けられる。本例のガスセル部55は、ガス排出口68−1に対応するパージガス導入口62−1、および、ガス排出口68−2に対応するパージガス導入口62−2を有する。それぞれのパージガス導入口62は、対応するガス排出口68と対向する位置に設けられてよい。
【0060】
パージ部65は、ガスセル部55において発光窓58に対向する領域、および、受光窓60に対向する領域の少なくとも一方に対してパージガスを導入する。本例の分析部50においては、パージ部65−1は、パージ管64−1およびパージガス導入口62−1を介して、ガスセル部55の内部の発光窓58に対向する領域にパージガスを導入する。また、パージ部65−2は、パージ管64−2およびパージガス導入口62−2を介して、ガスセル部55の内部の受光窓60に対向する領域にパージガスを導入する。発光窓58および受光窓60には、少なくとも一部のパージガスが接触することが好ましい。
【0061】
パージガスは、ダスト捕集部20を通過した被分析ガスよりもダスト密度が小さく、且つ、発光部54が照射する光に対する吸収度が所定値より小さいガスであることが好ましい。パージガスは、窒素ガスであってよく、空気であってもよい。
【0062】
ガスセル部55内に導入されたパージガスは、ガス排出口68から順次排出される。このため、発光窓58に対向する領域、および、受光窓60に対向する領域には、パージガスが連続して流れる。従って、被分析ガスに含まれるダストが、発光窓58および受光窓60に付着することを防ぐことができる。
【0063】
図4は、分光測定部52における各ガスの流れの概要を示す図である。被分析ガス導入口72からガスセル部55の内部に導入された被分析ガスは、ガス排出口68に向けてガスセル部55の内部を移動する。本例では、発光部54近傍、および、受光部56近傍にガス排出口68が設けられているので、被分析ガスは、発光部54側および受光部56側に移動する。これにより、被分析ガスは、所定の濃度でガスセル部55の高さ方向に分布する。
【0064】
また、それぞれのパージガス導入口62から導入されたパージガスも、ガス排出口68に吸引される。なお、対応するパージガス導入口62およびガス排出口68が、発光窓58または受光窓60の近傍において同一の高さ位置に設けられるので、パージガスは当該高さ位置を発光窓58または受光窓60に沿って流れる。このため、発光窓58に対向する領域80−1および受光窓60に対向する領域80−2に拡散する被分析ガスの量を低減することができる。このため、発光窓58および受光窓60にダストが付着することを防ぐことができる。
【0065】
なお、パージガス導入口62およびガス排出口68は、レーザー光が通過する光路82上の領域80−1および80−2にパージガスが流れるように配置されることが好ましい。例えば、レーザー光がガスセル部55の中心の光路82を通過する場合、対応するパージガス導入口62およびガス排出口68は、ガスセル部55の側壁において対向する位置に設けられてよい。つまり、対応するパージガス導入口62およびガス排出口68は、ガスセル部55の直径の両端に配置されてよい。
【0066】
ガスセル部55に対して被分析ガスおよびパージガスが連続的に導入および排出されている状態で、発光部54は所定の波長のレーザー光を照射する。受光部56が受光する光の強度P
56は、下式で与えられる。
[数1]
P
56=P
54・exp(−ε・c・L)
なお、P
54は発光部54が照射したレーザー光の強度、εはレーザー光の波長における被測定成分の吸光係数、cはレーザー光が通過する被分析ガスに含まれる被測定成分の濃度、Lは被分析ガス中をレーザー光が通過する光路長を示し、通常はガスセル部55の長さに相当する。
【0067】
発光強度P
54、吸光係数εおよび光路長L(ガスセル部55の長さ)は既知であるので、受光強度P
56を計測することで被分析ガスに含まれる被測定成分の濃度cを算出することができる。しかし、パージガスを発光窓58および受光窓60に沿って連続的に流すと、領域80−1および80−2には被分析ガスが進入しづらくなる。このため、領域80−1および80−2には被分析ガスが存在しなくなり、実質的な光路長Lが短くなる。つまり、被分析ガス中をレーザー光が通過する光路長Lは、ガスセル部55の長さに対して、被分析ガスが進入できない領域80−1および80−2の長さだけ短くなる。
【0068】
計測部76は、領域80−1および80−2の長さに応じて、光路長Lを補正することが好ましい。領域80−1および80−2の長さは、被分析ガスおよびパージガスの流量比に依存する。計測部76は、ガス流量比毎に異なる光路長Lの値を用いてよい。また、計測部76は、ガス流量比が一定になるように、パージガスの流量を制御してもよい。この場合、計測部76は光路長Lの補正値として固定値を用いることができる。
【0069】
流量制御部78は、上述したガス流量比を一定値に制御する場合、ガスセル部55に導入される被分析ガスの流量に基づいて、ガスセル部55に導入するパージガスの流量を制御する。本例の流量制御部78は、パージ管64におけるガス流量を調整するパージポンプ66を制御して、パージガスの流量を制御する。流量制御部78は、2つのパージポンプ66における流量を同一の値に設定してよい。流量制御部78は、接続管24におけるガス流量を調整するガス導入ポンプ74における制御情報に基づいて、ガスセル部55に導入される被分析ガスの流量を検出してよい。また、流量制御部78は、接続管24に設けられた流量計を用いて被分析ガスの流量を検出してもよい。
【0070】
また、流量制御部78は、ガスセル部55に導入されるパージガスおよび被分析ガスの流量の総和に基づいて、ガス排出部26におけるガス流量を調整するガス排出ポンプ70を制御してよい。例えば流量制御部78は、パージガスおよび被分析ガスの流量の総和と、ガス排出部26が排出する分析後ガスの流量が同一となるように、ガス排出ポンプ70を制御する。また、ガス排出ポンプ70は、ガス排出部26を通って、煙道210からガスセル部55に排ガスが導入されることを防ぐ。
【0071】
また、流量制御部78は、パージガスの流量をゼロに制御してもよい。例えば流量制御部78は、煙道210の前段に設けられた排ガス処理装置の性能試験のように、高精度にガス成分を分析する場合に、パージガスの流量をゼロに制御する。この場合、計測部76は、光路長Lとしてガスセル部55の長さを用いてよい。
【0072】
また、被分析ガス導入口72は、光路82と垂直な平面内における被分析ガスの濃度分布ができるだけ均一になるように、被分析ガスをガスセル部55内に導入することが好ましい。このような構成により、例えばレーザー光の光路82の位置ずれによる、ガス成分の分析結果の誤差を低減することができる。
【0073】
図5は、被分析ガス導入口72の配置例を示す図である。
図5は、ガスセル部55を光路82と平行な方向から見た場合を示している。本例のガスセル部55は、複数の被分析ガス導入口72を有する。それぞれの被分析ガス導入口72は、同一の高さ位置に設けられることが好ましい。
【0074】
複数の被分析ガス導入口72は、発光部54から受光部56に向かう軸(本例では光路82と同一)と非平行に配列される。つまり、ガスセル部55を光路82と平行な方向から見た場合に重ならない位置に配置される。複数の被分析ガス導入口72は、
図5に示す光路82と垂直な平面において、ガスセル部55の側壁に等間隔で配置されることが好ましい。
【0075】
例えば、被分析ガス導入口72が2個の場合、それぞれの被分析ガス導入口72は、光路82を挟んで対向する位置に設けられる。また、被分析ガス導入口72が4個の場合、それぞれの被分析ガス導入口72とガスセル部55の中心とを結ぶ直線の角度が90度となるように配置される。このような構成により、光路82と垂直な平面内における被分析ガスの濃度分布の均一性を向上できる。
【0076】
なお、ガス排出口68−1、ガス排出口68−2、パージガス導入口62−1、および、パージガス導入口62−2のそれぞれも、複数設けられてよい。ただし、ガス排出口68−1およびパージガス導入口62−1は対向する位置に設けられることが好ましい。また、ガス排出口68−2およびパージガス導入口62−2も対向する位置に設けられることが好ましい。一例として、
図5に示す配置において、被分析ガス導入口72−1および72−4の位置にガス排出口68−1を設け、被分析ガス導入口72−2および72−3の位置にパージガス導入口62−1を設けてよい。
【0077】
図6は、分析部50の他の構成例を示す図である。本例の分析部50は、
図3から
図5において説明した分析部50の構成に加え、校正ガス導入部86、校正ガス導入口84、校正ガス排出口85、および、記憶部88を有する。なお
図6においては、各ガスを伝送する管、各ガスの流量を調整するポンプ、および、流量制御部78を省略している。
【0078】
分析部50は、所定のタイミングで、校正用ガスを用いて分析部50の校正を行ってよい。例えば分析部50は、所定の期間毎に校正を行ってよい。また、分析部50は、校正を行う場合に被分析ガスがガスセル部55に導入されないように、ガス導入ポンプ74を制御する。
【0079】
校正ガス導入部86は、ガスセル部55に校正用ガスを導入する。校正用ガスは、被分析ガスに含まれる被測定物質を、予め定められた濃度で含有する。また、校正用ガスに含まれるダストは、パージガスと同程度に少ないことが好ましい。校正ガス導入口84は、ガスセル部55の側壁に設けられる。本例におけるガスセル部55は、発光部54および発光窓58との間に延長部83を有する。延長部83は、発光窓58および受光窓60の間におけるガスセル部55と同一の直径を有することが好ましい。延長部83は、発光窓58によりガスセル部55の他の領域と隔離される。
【0080】
校正ガス導入口84および校正ガス排出口85は、ガスセル部55の延長部83における側壁に設けられる。校正ガス導入口84は、発光部54の近傍に設けられてよい。また校正ガス排出口85は、発光窓58の近傍に設けられてよい。校正ガス排出口85は、ガス排出部26に接続されてよい。なお校正を行う場合、パージガスをガスセル部55に導入しなくともよい。
【0081】
流量制御部78は、校正用ガスの流量を、通常動作時の被分析ガスの流量と同程度になるように制御してよい。また、校正時にパージガスをガスセル部55に導入する場合、流量制御部78は、校正用ガスおよびパージガスの流量比が、通常動作時の被分析ガスおよびパージガスの流量比と同程度になるように、校正用ガスおよびパージガスの流量を制御してもよい。
【0082】
計測部76は、校正用ガスがガスセル部55に導入されている状態で、受光部56が受光した光の強度を計測する。計測部76は、発光部54が照射した光と、受光部56が受光した光の強度比を、当該校正用ガスに含まれる被測定物質の濃度と対応付けた第1の校正情報として記憶部88に記憶する。
【0083】
校正ガス導入部86は、校正用ガスに含まれる被測定物質の濃度を変化させてよい。この場合、記憶部88は、被測定物質のそれぞれの濃度毎に上述した第1の校正情報を記憶する。計測部76は、被分析ガスをガスセル部55の内部に導入して検出した光の強度比に対応する被測定物質の濃度を、記憶部88が記憶した第1の校正情報に基づいて検出する。これにより、被分析ガスにおける被測定物質の濃度を検出することができる。
【0084】
なお、計測部76は、通常動作時の光路長Lと、延長部83の長さの比とに基づいて、被分析ガスにおける被測定物質の濃度を補正してよい。数1に示すように、受光部56における受光強度は、レーザー光が校正用ガスまたは被分析ガス中の通過する光路長に依存する。このため、通常動作時の光路長Lと、延長部83の長さとが異なる場合、計測部76は、当該長さの比に基づいて、被分析ガスに含まれる被測定物質の濃度の測定結果を補正する。
【0085】
なお、延長部83は、発光窓58および受光窓60の間におけるガスセル部55と同一の長さを有してもよい。この場合、通常動作時の光路長Lと、延長部83の長さとがほぼ同一になる。
【0086】
また、校正ガス導入部86は、被分析ガス導入口72を介して、校正用ガスをガスセル部55の内部に導入してもよい。この場合、ガスセル部55は延長部83を有さない。これにより、通常動作時の光路長Lと、校正時の光路長とを一致させることができる。接続管24には、被分析ガスおよび校正用ガスのいずれかを選択して被分析ガス導入口72に供給する選択部が設けられてよい。
【0087】
また、流量制御部78は、校正用ガスの流量に対するパージガスの流量の比を変化させて、校正情報を取得してもよい。流量制御部78は、校正用ガスの流量を固定して、パージガスの流量を変化させてよい。
【0088】
例えば計測部76は、校正用ガスおよびパージガスの流量比毎に、受光部56が受光した光の強度を計測する。計測部76は、発光部が照射した光と、受光部56が受光した光の強度比を算出する。記憶部88は、それぞれのガス流量比において計測した光の強度比に応じた第2の校正情報を記憶する。
【0089】
図7は、校正用ガスおよびパージガスの流量比と、発光部54が照射した光および受光部56が受光した光の強度比との関係を示す図である。横軸の流量比は、パージガスの流量を、校正用ガスの流量で除算した値を示す。なお校正用ガスの流量および校正用ガスに含まれる各物質の濃度は固定とする。つまり、横軸の値が小さくなるほど、パージガスの流量が減少していることを示す。
【0090】
また、縦軸の強度比は、発光部54が照射する光の強度を、受光部56が受光する光の強度で除算した値を示す。つまり、縦軸の値が小さくなるほど、校正用ガスおよびパージガスを通過した光の吸収度合いが大きいことを示す。
【0091】
パージガスは、発光部54が照射する光を吸収しないことが好ましいが、吸収率がゼロでない場合も考えられる。このような場合、被分析ガスとパージガスをガスセル部55の内部に導入してガス成分を計測すると、パージガスの影響により誤差が生じてしまう。本例の分析部50は、パージガスの流量を変化させて光の吸収度合いを測定することで、パージガスの影響がどの程度かを見積もり、上述した誤差を補正する。
【0092】
計測部76は、少なくとも2種類のガス流量比において、光の強度比を算出する。
図7の例では、流量比r1、r2、r3の3点において、光の強度比を算出している。計測部76は、複数の算出結果に基づいて、ガス流量比と光強度比との関係を直線89で近似する。直線89の傾きが、パージガスによる影響の大きさを示している。また、直線89においてガス流量比を0にした場合の光強度比Poは、パージガスの流量を0にした場合に計測されるべき光強度比を示している。
【0093】
記憶部88は、上述した直線89の傾きを第2の校正情報として記憶してよい。計測部76は、通常動作時に計測した光強度比、そのときのガス流量比、および、上述した直線89の傾きに基づいて、パージガスの流量を0にした場合に計測されるべき光強度を算出する。例えば計測部76は、当該光強度比および当該ガス流量比に対応する測定点を通り、且つ、直線89と同一の傾きを有する直線を算出する。そして、算出した直線においてガス流量比を0にした場合の光強度比を算出する。
【0094】
計測部76は、算出した光強度比に対応する被測定物質の濃度を、記憶部88が記憶した第1の校正情報に基づいて検出する。これにより、パージガスにおける光吸収の影響を除外して、被分析ガスに含まれる被測定物質の濃度を検出することができる。
【0095】
また、計測部76は、パージガスの温度毎に、第2の校正情報を取得してもよい。また第2の校正情報を取得する場合に設定される複数の流量比r1、r2、r3・・・のうちの一つは0であってもよい。つまり、計測部76は、パージガスの流量を0にした場合の測定結果を用いて、第2の校正情報を取得してもよい。
【0096】
図8は、液体捕集部14およびダスト捕集部20の構成例を示す図である。本例の分析装置100は、2つの液体捕集部14−1および14−2を備える。第1の液体捕集部14−1には、ダスト捕集部20が接続され、第2の液体捕集部14−2には、ダスト捕集部20が接続されない。なお、それぞれの液体捕集部14には液体排出部30が接続されるが、
図8では省略している。液体排出部30は、液体捕集部14毎に設けられてよく、排出管32の一部が共通して設けられてもよい。
【0097】
本例の分析装置100は、選択部94、バルブ90−1、バルブ90−2、バルブ92−1、および、バルブ92−2を有する。また、採取ノズル10は、2つの液体捕集部14に分岐して接続する。採取ノズル10の分岐後の各経路にバルブ90が設けられる。接続管24は、ダスト捕集部20および第2の液体捕集部14−2のそれぞれから延伸して設けられ、分析部50に接続される前に一つに合流する。合流前のそれぞれの接続管24にバルブ92が設けられる。
【0098】
選択部94は、採取ノズル10が煙道210から採取した被分析ガスを、第1の液体捕集部14−1および第2の液体捕集部14−2のいずれかに選択的に導入する。第1の液体捕集部14−1にはダスト捕集部20が接続されているので、第2の液体捕集部14−2に比べて、通過させるガスのダストを低減することができる。
【0099】
選択部94は、被分析ガスに含まれるダストが、分析部50を汚染する程度に多い場合には第1の液体捕集部14−1を選択してよい。また、被分析ガスに含まれるダストが、分析部50を汚染しない程度に多い場合には第2の液体捕集部14−2を選択してよい。例えば、被分析ガスに含まれるダストが、パージガスを流すことで発光窓58および受光窓60を十分に保護することができる程度の量の場合、選択部94は、第2の液体捕集部14−2を選択する。このような動作により、ダスト捕集部20に含まれるフィルタ22の劣化を低減することができ、フィルタ22の交換頻度を低減できる。このため、船舶等に分析装置100を設置した場合のように、フィルタ22の交換作業が困難な場合に、交換頻度を下げて作業負担を低減できる。
【0100】
選択部94は、被分析ガスを排出したガス源の情報に基づいて、第1の液体捕集部14−1および第2の液体捕集部14−2のいずれかを選択してよい。例えば、複数のガス源からの排ガスが同一の煙道210を通過する場合、選択部94は、いずれのガス源が動作しているかに基づいて液体捕集部14を選択してよい。選択部94は、それぞれのガス源の排ガスが、どの程度のダストを含有するかを示す情報を予め記憶してよい。
【0101】
また、選択部94は、排ガスを排出するガス源が、定格出力に対してどの程度の出力を生成しているかに基づいて液体捕集部14を選択してもよい。選択部94は、それぞれのガス源の出力値に対応するダスト量を示す情報を予め記憶してよい。
【0102】
選択部94は、排ガスを処理したスクラバ装置の動作状態に基づいて、液体捕集部14を選択してもよい。スクラバ装置の動作状態とは、例えばスクラバ装置に導入される排ガス量を示す情報および噴霧されるミスト量を示す情報の一方または両方を含む。通常、排ガス量に対するミスト量の割合が低下すると、スクラバ装置を通過した排ガスには比較的に多くのダストが含まれる。
【0103】
また、選択部94は分析装置100の位置情報に基づいて、液体捕集部14を選択してもよい。分析装置100の位置情報とは、例えば緯度、経度等を示す情報である。例えば船舶においては、船舶の位置毎に排ガスに要求される規制が異なる場合がある。選択部94は、当該位置においては、分析部50において精度のよい分析が必要か否かを判断して、いずれかの液体捕集部14を選択してよい。
【0104】
例えば選択部94は、当該位置における排ガス規制の値に対して、スクラバ装置等の排ガス処理能力が十分にマージンを有する場合には、それほど精度のよい分析は必要ないと判断して第2の液体捕集部14−2を選択してよい。この場合、分析部50における分析結果は、被分析ガスに残留するダストによって多少の誤差を含む可能性がある。一方、第1の液体捕集部14−1を選択した場合、被分析ガスに残留するダストが少なくなるので、より高精度に硫黄酸化物等の濃度を計測することができる。
【0105】
図9は、本発明の実施形態に係る排ガス処理システム200の構成例を示す図である。排ガス処理システム200は、分析装置100、スクラバ装置220および煙道210を備え、1以上のガス源230が排出する排ガスを処理する。本例では、船舶に設けられた排ガス処理システム200を説明するが、排ガス処理システム200は他の用途に用いることもできる。
【0106】
それぞれのガス源230は、船舶のエンジン用の主動力源、補助動力源、船内設備用の電力源等であり、機械的な動力または電力等を発生させて、硫黄酸化物等の有害物質を含む排ガスを発生させる。
【0107】
スクラバ装置220は、それぞれのガス源230の排ガスに含まれる有害物質を除去する。スクラバ装置220は、排ガスに対して液体を噴霧して、液体に有害物質を吸着させてよい。船舶に用いる排ガス処理システム200の場合、当該液体として船舶の周囲の海水等、または、予め準備した水を用いてよい。また、排ガス処理システム200は、スクラバ装置220において使用した液体を薬品等で再使用可能な状態にして、再度スクラバ装置220で用いてもよい。
【0108】
また、排ガス処理システム200は、排ガスをスクラバ装置220に導入する前に、排ガスに含まれるダストを除去するダスト除去装置を更に設けてもよい。また、排ガス処理システム200は、排ガスをスクラバ装置220に導入する前に、排ガスの熱を電気に変換する熱電変換装置を更に設けてもよい。
【0109】
分析装置100は、
図1から
図8において説明した分析装置100と同一である。分析装置100は、スクラバ装置220に接続された煙道210を通過する排ガスの一部を採取して、排ガスに含まれる有害物質の濃度を分析する。本例の分析装置100は、排ガスの一部を採取する。そして、煙道210とは独立した分析部50において光吸収スペクトルを測定して、ガス成分を分析する。
【0110】
これに対して、煙道210の側壁に受光部および発光部を設けて光吸収スペクトルを測定する技術がある。この場合、受光部および発光部の間隔は、煙道210の直径に依存する。このため、受光部および発光部の間隔を適切に設定できず、ガス中を進行する光の光路長を適切に設定することが難しい場合がある。
【0111】
本例の分析装置100は、煙道210とは独立したガスセル部55を有するので、受光部および発光部の間隔を適切に設定することができる。このため、ガス成分を精度よく分析することができる。また、分析装置100は、排ガスに含まれる有害物質の濃度が許容範囲外になった場合、使用者に警告を発してよく、また、スクラバ装置220およびガス源230等を制御して有害物質の濃度を低下させてもよい。
【0112】
また分析装置100は、排ガスに含まれる液体成分の少なくとも一部を除外して、ガス成分を分析することができる。このため、液体による光吸収の影響を低減させて、精度よくガス成分を分析することができる。また、分析装置100は、捕集した液体成分を順次排出することができるので、捕集した液体成分が被分析ガスに含まれる被測定物質の濃度を変化させてしまうことを防ぎ、また、分析装置100を小型化することができる。
【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0114】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。