特開2016-223881(P2016-223881A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223881(P2016-223881A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20161205BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   G01N27/30 341Z
   G01N27/46 311A
   G01N27/46 311G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-109760(P2015-109760)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】大石 満
(57)【要約】
【課題】酸素を含まない測定ガスであっても定電位電解式において分析を可能としたガス分析装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のガス分析装置(1)は、電解液により電気的に接続された電極間に流れる測定ガスの電解電流を検知するセンサ部(2)と、センサ部(2)に通じる測定ガス流路(3)と、酸素透過膜(14)と磁界発生手段(15)とを有して、測定ガス流路(3)を流れる測定ガスに酸素を混合することが可能な調整手段(4)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液により電気的に接続された電極間に流れる測定ガスの電解電流を検知するセンサ部と、
前記センサ部に通じる測定ガス流路と、
前記測定ガス流路を流れる測定ガスに含まれる酸素量を調整可能な調整手段と、
を有することを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記測定ガス流路の側壁に設けられた開口部を塞ぐように設けられた酸素透過膜と、前記酸素透過膜と対向する前記測定ガス流路内にて磁界が生じるように配置された磁界発生手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
酸素を含むガスが流通する酸素ガス流通部と、前記測定ガス流路とが、前記酸素透過膜を介して対向して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記磁界発生手段は、磁界強度が可変可能とされることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記磁界発生手段は、磁界を生じさせるための磁気コアと、通電により前記磁気コアを励磁するコイルと、を有して構成されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記酸素透過膜は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、エチルセルロース、及びポリ4メチルペンテン1から選択される少なくとも1種にて形成されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境用、プロセス用などに用いられる定電位電界式のガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、定電位電解式ガスセンサに関する発明が開示されている。定電位電解式ガスセンサは、測定ガスを検出する作用電極と、作用電極との間で電界電流を流通する対極と、作用電極の電位を一定電圧に保つ参照電極と、を有する。これら作用電極、対極及び参照電極は、ガス透過性隔膜(ガス拡散膜)にて仕切られた空間に配置され、この空間内は電解液で満たされている。
【0003】
測定ガスは、ガス透過性隔膜を透過して、電解液に溶解し作用電極に接触する。これにより測定ガスは、作用電極と電解液との界面で電解され、測定ガスの濃度に比例した電流値を計測することができる。この電流値に基づいて、測定ガスの濃度測定を行うことができる。
【0004】
定電位電解式のガス分析装置の原理について図4を用いて説明する。なお図4では測定ガスとしてHSが用いられている。図4に示すようにガス分析装置は、作用電極20、対極21、及び参照電極22と、電解液(図示せず)を備え、図4に示すように対極21に電流計23が接続されている。符号24はオペアンプであり、符号25は参照電極用基準電池である。
【0005】
作用電極20では、H+4HO→HSO+8H+8eの反応が起こっている。また対極21では、O+4H+4e→2HOの反応が起こっている。これにより全反応は、HS+2O→HSOとなる。このように、HSガスは電解される際、酸素と反応してHSOに変化している。
【0006】
したがって、測定ガスに酸素が含まれていれば、上記の反応が起こり、測定ガスの濃度測定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−230933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プロセスガスの品質管理や漏えい監視などのモニタリングなどでは、測定ガス中に酸素が含まれていない場合があり、測定ガスの濃度測定を適切に行えないことがあった。係る場合、ガスクロマトグラフなどの原理が採用される場合があるが、装置本体が非常に高価となるだけでなく、操作性、メンテナンス性において複雑な操作も必要とされた。このように従来では、測定ガスに酸素が含まれていない場合、定電位電解式にて適切にガス分析を行うことができず、別の原理を採用して分析を行う場合には、使用上の煩わしさ及び装置コストの上昇といった問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、酸素を含まない測定ガスであっても定電位電解式において分析を可能としたガス分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明におけるガス分析装置は、電解液により電気的に接続された電極間に流れる測定ガスの電解電流を検知するセンサ部と、前記センサ部に通じる測定ガス流路と、前記測定ガス流路を流れる測定ガスに含まれる酸素量を調整可能な調整手段と、を有することを特徴とする。本発明によれば、測定ガスに酸素を含まない場合でも、調整手段により、測定ガス流路を流れる測定ガスに含まれる酸素量を調整することができ、これにより、適切かつ簡単に定電位電解式におけるガス分析を行うことができる。また測定ガスに酸素の混合を続けて行うことで、連続測定を可能とする。
【0011】
本発明では、前記調整手段は、前記測定ガス流路の側壁に設けられた開口部を塞ぐように設けられた酸素透過膜と、前記酸素透過膜と対向する前記測定ガス流路内にて磁界が生じるように配置された磁界発生手段とを有することが好ましい。調整手段を、酸素透過膜と磁界発生手段とを有する調整手段とすることで、簡易な構成で装置を実現できるため装置コストの上昇を抑制することができる。
【0012】
また本発明では、酸素を含むガスが流通する酸素ガス流通部と、前記測定ガス流路とが、前記酸素透過膜を介して対向して配置されていることが好ましい。これによりガス分析装置の設置環境に関わらず、酸素を測定ガス流路に安定して供給することが可能であり、分析精度を効果的に向上させることができる。
【0013】
また本発明では、前記磁界発生手段は、磁界強度が可変可能とされることが好ましい。例えば、超電導コイルを用いるなどした場合、磁界発生手段から生じる磁界は一定となるが、係る場合、酸素の混合比率を変更できないなどの問題が生じる。これに対して本発明では、磁界強度を可変にでき、このため、測定ガス中に混合される酸素の割合を容易に調整することができる。このため、例えば、高濃度の測定ガスを連続で測定する場合など酸素を多量に消費する場合、測定ガス濃度に最適な酸素供給量に調整でき、高濃度領域においての電極反応を安定化させることができる。
【0014】
また本発明では、前記磁界発生手段は、磁界を生じさせるための磁気コアと、通電により前記磁気コアを励磁するコイルと、を有して構成されることが好ましい。これにより、簡易な磁界発生手段を実現でき、装置コストの上昇を抑制できる。またコイルに流通する電流値を変化させることにより、適切かつ簡単に、磁界強度を調整することができる。
【0015】
また本発明では、前記酸素透過膜は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、エチルセルロース、及びポリ4メチルペンテン1から選択される少なくとも1種にて形成されることが好ましい。これにより安価で酸素透過性に優れた酸素透過膜を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定ガスに酸素を含まない場合でも、調整手段により、測定ガス流路を流れる測定ガスに含まれる酸素量を調整することができ、これにより、適切かつ簡単に定電位電解式におけるガス分析を行うことができる。また測定ガスに酸素の混合を続けて行うことで、連続測定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態におけるガス分析装置の模式図である。
図2】本実施の形態における調整手段の模式図である。
図3】本実施の形態における調整手段での酸素の混合原理を説明するための模式図である。
図4】定電位電解式のガス分析の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本実施の形態は、従来、定電位電解式のガス分析装置において特に考慮されていなかった、測定ガスに酸素が含まれていない場合であっても適切にガス分析を可能としたガス分析装置に関する。
【0020】
プロセスガスの品質管理や漏えい監視などのモニタリングでは、測定ガス中に酸素が含まれていない場合がある。係る場合、従来における定電位電解式のガス分析装置の構成では、原理上、測定が不可能であった。
【0021】
そこで本実施の形態では、測定ガスが、電解液により電気的に接続された電極間に流れる測定ガスの電解電流を検知するセンサ部に流入する前に、測定ガスに酸素を混合すべく、センサ部よりも手前の流路位置に酸素量を調整可能な調整手段を有する構成とした。以下、本実施の形態のガス分析装置について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態におけるガス分析装置の模式図である。図1に示す定電位電解式のガス分析装置1は、センサ部2と、測定ガス流路3と、調整手段4と、を有して構成される。
【0023】
センサ部2は、容器6、ガス透過性隔膜(ガス拡散膜)7、電解液8、作用電極9、対極10及び参照電極11を備えて構成される。容器6には、ガス流入口6aが設けられている。また図示しないがガス流入口6aと反対側にガス排出口が設けられている。容器6の材質を限定するものでないが、容器6は、例えば合成樹脂容器で形成されている。
【0024】
図1に示すように容器6のガス流入口6aとガス排出口(図示せず)は、ガス透過性隔膜7により内側から閉鎖されている。この閉鎖された空間内に電解液8が充填されている。ガス透過性隔膜7は、ガスは透過するが電解液8は透過しない膜である。ガス透過性隔膜7の材質を限定するものでないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂によりなる多孔質膜を用いることができる。また電解液8の材質を限定するものでないが、例えば、硫酸、リン酸、水酸化カリウム等、既存の電解液を用いることができる。
【0025】
また図1に示すように、ガス流入口6a側に設けられたガス透過性隔膜7の内側には、作用電極9が設けられている。また、ガス流出口側に設けられたガス透過性隔膜7の内側には、対極10及び参照電極11が設けられている。
【0026】
したがって、作用電極9、対極10及び参照電極11は、電解液8中に浸漬された状態で配置され、これら3つの電極が電解液を介して導通状態とされている。また、回路構成は例えば図4と同様とされ、参照電極11に対して作用電極9の電位が規定されている。また対極10には電流計(図示せず)が設置されており、電流計にて測定ガスの電解電流を検知することができる。作用電極9、対極10及び参照電極11は、電解液8に対して不溶な材質で形成される。例えば、対極10と参照電極11は白金で形成され、作用電極9は白金や金等の貴金属により形成される。
【0027】
図1に示すように、測定ガス流路3は、例えば細長い管状とされる。測定ガス流路3の一方の端部は、ガス供給口3aであり、他方の端部はガス排出口3bである。図1に示すように測定ガス流路3は、センサ部2のガス流入口6aに連通されている。したがって図1に示すように、測定ガスg1を測定ガス流路3のガス供給口3aへ導入すると、測定ガスg1がセンサ部2のガス流入口6aからセンサ部2内へ流入できるようになっている。測定ガスg1のうちガス流入口6aへ流入しなかったガスg2はガス排出口3bから外部に排出される。
【0028】
測定ガス流路3は、センサ部2を構成する容器6と一体で形成されていてもよいし別体で形成されていてもよい。別体の場合、測定ガス流路3には、センサ部2のガス流入口6aと対向する位置に開口部を有し、開口部を介してセンサ部2と測定ガス流路3とが接続固定される。測定ガス流路3の材質を限定するものでないが、例えば、測定ガス流路3を、センサ部2の容器6と同様に樹脂にて形成することができる。
【0029】
図1では、センサ部2の周囲を測定ガス流路3とともに固定してセンサ部2に対する保護機能を高めた固定ブロック13が設けられている。これによりセンサ部2やセンサ部2と測定ガス流路3との接続部分等に衝撃が加わっても、その衝撃を緩和することができる。ただし固定ブロック13は設けられていなくてもよい。
【0030】
図1に示すように、酸素量を調整可能な調整手段4は、酸素透過膜14と、磁界発生手段15とを有する酸素混合部を構成する。図1に示すように調整手段4は、センサ部2との接続部分よりも測定ガス流路3のガス供給口3a側に配置されている。
【0031】
図1に示すように、測定ガス流路3のガス供給口3a側の側壁には開口部3cが設けられ、開口部3cを塞ぐように酸素透過膜14が配置されている。例えば酸素透過膜14は開口部3cよりも一回り大きく形成され、酸素透過膜14の周囲と開口部3cの周囲の側壁とが例えば接着層(図示しない)を介して接着固定されている。
【0032】
酸素透過膜14は、酸素を透過するが、測定ガスは透過しない機能を有している。また測定ガス流路3の外部から供給された酸素は、後述するように測定ガス流路3内の磁界に引き寄せられ、酸素透過膜14を透過して測定ガス流路3内へ入り込む。
【0033】
酸素透過膜14は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、エチルセルロース、及びポリ4メチルペンテン1から選択される少なくとも1種にて形成されることが好ましい。これにより安価で酸素透過性に優れた酸素透過膜14を実現できる。
【0034】
図2は、本実施の形態における調整手段の模式図である。図2は、図1の正面に対して横方向から見た側面図である。図1図2に示すように、磁界発生手段15は、磁界を生じさせるための磁気コア16と、通電により磁気コア16を励磁するコイル17とを有して構成される。図2に示すように磁気コア16は、例えば、外周面および内周面が略矩形状とされたリング形状の一部分にギャップGを備えた形態(C型コア)である。図2に示すようにギャップGを介して対向する磁気コア16の脚部16aが、測定ガス流路3の両側に配置され、これにより、磁気コア16のギャップGが、測定ガス流路3内に位置している。例えば、接着層(図示せず)を介して、磁気コア16の脚部16aと測定ガス流路3の側面との間を接着固定することができる。磁気コア16はフェライト等の磁性材料からなり特に材質を限定するものではない。また磁気コア16の周囲に絶縁被膜が形成されていてもよい。
【0035】
図2に示すように、コイル17が、磁気コア16に巻回されている。コイル17は、銅等の導線である。図2では、コイル17が、ギャップGと対向する磁気コア16の部分にて巻回されているが、巻回位置を限定するものではない。
【0036】
図1図2に示す実施の形態では、酸素透過膜14を介して測定ガス流路3と対向する位置に酸素ガス流通部18が設けられている。したがって、調整手段4は、酸素透過膜14及び磁界発生手段15と、酸素ガス流通部18とを有して構成される。
【0037】
酸素ガス流通部18はパージセルとしての機能を有する。酸素ガス流通部18は、ガス供給口18aと、ガス排出口18bと、ガス供給口18aとガス排出口18bとの間に位置する開口部18cと、を有する流路を構成する。酸素ガス流通部18は、測定ガス流路3に例えば接着層(図示せず)を介して接着固定されている。このとき酸素ガス流通部18の開口部18cが酸素透過膜14を介して測定ガス流路3の開口部3cと対向する位置に配置される。
【0038】
本実施の形態では、調整手段4により、酸素を測定ガスg1に混合し、酸素量の調整が可能である。その原理について図3等を用いて説明する。図3は、本実施の形態における調整手段での酸素の混合原理を説明するための模式図である。図3は、図2と同様の側から見た図面であり、特に測定ガス流路3、酸素透過膜14、及び酸素ガス流通部18の各内部での磁界の状態及びガス分子の状態を示している。
【0039】
図2に示すコイル17を通電して、磁気コア16を励磁してギャップGに磁界を生じさせる。これにより図3に示す磁界領域Hが、酸素透過膜14と対向する測定ガス流路3内に形成される。図3に示す点線の矢印は磁界方向を示している。図1に示す酸素ガス流通部18のガス供給口18aから酸素を含むガスg3(空気等のパージガス)を供給する。そのうち一部のガスg4は、酸素ガス流通部18のガス排出口18bから排出される。
【0040】
図3に示すように、酸素ガス流通部18内の酸素分子g5は、測定ガス流路3内での磁界領域Hに引き寄せられ、一定の割合で酸素透過膜14を透過して測定ガス流路3へ入り込む。これにより、測定ガス流路3では、測定ガスg1に酸素分子g5を混合することができる。
【0041】
このように本実施の形態では測定ガスg1に酸素が含まれていない場合でも、調整手段4により酸素を含有させることができ、この結果、酸素を含む測定ガスg1をセンサ部2へ流入させることができる。酸素を含む測定ガスg1は、センサ部2のガス透過性隔膜(ガス拡散膜)7を透過して作用電極9に接触する。例えば、測定ガスg1がHSである場合、作用電極9では、H+4HO→HSO+8H+8eの反応が起こる。一方、対極10では、O+4H+4e→2HOの反応が起こる。したがって全反応は、HS+2O→HSOとなるが、本実施の形態では、測定ガスg1に酸素を含めることができるため、前記した反応を適切に起こすことができる。そして、対極10に接続された電流計により電解電流を検知し、電解電流に基づいてガス濃度を検知することができる。本実施の形態では、調整手段4により測定ガスg1に含まれる酸素量を調整できる。その方法は、例えば、コイル17に流す電流量を調整して磁界強度を変化させることで行うことが可能である。
【0042】
以上のように本実施の形態におけるガス分析装置1は、電解液により電気的に接続された電極間に流れる測定ガスの電解電流を検知するセンサ部2と、センサ部2に通じる測定ガス流路3と、酸素透過膜14と磁界発生手段15とを有して、測定ガス流路3を流れる測定ガスg1に含まれる酸素量を調整可能な調整手段4と、を有する。これにより、測定ガスg1に酸素を含まない場合でも、調整手段4により、測定ガス流路3を流れる測定ガスg1に酸素を混合することができ、適切かつ簡単に定電位電解式におけるガス分析を行うことができる。また、測定ガスg1に酸素を含むが、その量がわずかでセンサ部2での反応には酸素量が足りない場合でも、調整手段4により、測定ガス流路3を流れる測定ガスg1の酸素量を調整することができ、適切かつ簡単に定電位電解式におけるガス分析を行うことができる。また酸素の混合を続けて行うことで、連続測定を可能とする。
【0043】
また本実施の形態では、図1に示すように、調整手段4は、測定ガス流路3の側壁に設けられた開口部3cを塞ぐように設けられた酸素透過膜14と、酸素透過膜14と対向する測定ガス流路3内にて磁界が生じるように配置された磁界発生手段15とを有することが好ましい。これにより簡易な構成で調整手段4を形成することができ、装置コストの上昇を抑制することができる。
【0044】
また本実施の形態では図1図2図3に示すように、酸素を含むガスが流通する酸素ガス流通部18と、測定ガス流路3とが、酸素透過膜14を介して対向して配置されていることが好ましい。本実施の形態では、酸素ガス流通部18は設けられていなくてもよいが、その場合は、外気から酸素を測定ガス流路3に取り込むことになる。ただし、酸素ガス流通部18を設け、酸素を含むガスを強制的に酸素ガス流通部18に流すことで、ガス分析装置1の使用環境に関わらず安定して酸素を測定ガス流路3に取り込むことができ、また、測定ガス流路3と酸素ガス流通部18との間で圧力差を付けやすく、分析精度を向上させることができる。
【0045】
また本実施の形態では、磁界発生手段15は、磁界強度が可変可能とされることが好ましい。例えば、本実施の形態では、磁界発生手段15は、磁界を生じさせるための磁気コア16と、通電により磁気コア16を励磁するコイル17と、を有して構成される。
【0046】
例えば超電導コイルを用いるなどした場合、磁界発生手段から生じる磁界は一定となるが、係る場合、酸素の混合比率を変更できないなどの問題が生じる。これに対して本実施の形態では、磁界強度を可変にできる。上記の構成でいえば、コイル17に通電する電流値を変化させることで、磁界強度の調整が可能である。このため本実施の形態では、測定ガス中に混合される酸素量を容易に調整することができる。以上により、例えば、高濃度の測定ガスを連続で測定する場合など酸素を多量に消費する場合、測定ガス濃度に最適な酸素供給量に調整でき、高濃度領域においての電極反応を安定化させることができる。また、測定ガスに含まれる酸素がわずかでセンサ部2で適切に反応を起こすには酸素量が十分でない場合には、コイル17に通電する電流値を変化させて磁界強度を調整し、これにより測定ガスに含まれる酸素量を増やすことで、センサ部2での電極反応を安定化させることができる。
【0047】
なお、本実施の形態における調整手段4は、もともと測定ガスに酸素が含まれており、酸素の混合を必要としない場合には酸素混合機能をストップさせることができる。このように本実施の形態では、調整手段4により、測定ガス中の酸素濃度や分析条件等に合わせ必要に応じて酸素量の調整を行う。
【0048】
なお本実施の形態における調整手段は、酸素透過膜と磁界発生手段とを備え、磁界発生により酸素を、酸素透過膜を透過して測定ガスに混合する手法以外も含む。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明における定電位電解式のガス分析装置は、例えば、プロセスガスの品質管理や漏えい監視などのモニタリングにて測定ガスに酸素を含んでいない場合であっても、安定してガス分析を行うことができる。また酸素の混合を続けることで、連続測定を可能とする。また本発明の調整手段を構成する磁界発生手段の磁界強度を可変でき、これにより測定ガスの種類や濃度等に合わせて磁界強度を調整することで、安定したガス分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ガス分析装置
2 センサ部
3 測定ガス流路
4 調整手段
6 容器
7 ガス透過性隔膜
8 電解液
9 作用電極
10 対極
11 参照電極
13 固定ブロック
14 酸素透過膜
15 磁界発生手段
16 磁気コア
17 コイル
18 酸素ガス流通部
図1
図2
図3
図4