【解決手段】筐体窓3と、レーザ光を投光する投光部5と、レーザ光を所定の走査角度範囲に渡って走査しつつ筐体窓3から照射する走査部6とを備えたレーザレーダ装置1であって、筐体窓3は、レーザ光の走査方向に沿って回転可能であり、筐体窓3を回転させる駆動部86と、筐体窓3を、レーザ光の走査に同期して回転させる駆動制御部と、レーザ光が照射された位置の筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断する汚れ判断部とを備え、駆動制御部は、汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓3に汚れが付着していると判断したことに基づいて、筐体窓3の回転角速度をレーザ光の走査角速度とは異なる角速度とすることで、レーザ光が筐体窓3に照射される方向を変化させた後、再び、レーザ光の走査に同期して筐体窓3を回転させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、筐体窓に汚れが付着していることを検知できても、従来技術では、その汚れが人手により除去されるまでは、汚れによる死角は解消しない。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、筐体窓に付着した汚れにより生じる死角を少なくすることができるレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
上記目的を達成するための第1発明は、
筐体に取り付けられている筐体窓(3)と、
レーザ光を発生させて投光する投光部(5)と、
投光部が投光したレーザ光を、上下方向軸の回りの所定の走査角度範囲に渡って周期的に走査しつつ、筐体窓から照射する走査部(6)とを備えたレーザレーダ装置(1)であって、
筐体窓は、上下方向軸の回りに回転可能であり、
筐体窓を回転させる駆動部(86)と、
駆動部を駆動して、筐体窓を、走査部によるレーザ光の走査に同期して回転させる駆動制御部(S1、S5、S6、S9、S10)と、
レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着しているか否かを判断する汚れ判断部(S4、S8)とを備え、
駆動制御部は、汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着していると判断したことに基づいて、筐体窓の回転角速度をレーザ光の走査角速度とは異なる角速度とすることで、レーザ光が筐体窓に照射される位置を変化させた後、再び、レーザ光の走査に同期して筐体窓を回転させることを特徴とする。
【0011】
この第1発明によれば、筐体窓がレーザ光の走査に同期して回転している間は、レーザ光は筐体窓の同じ位置に照射される。汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着していると判断したことに基づいて、筐体窓の回転角速度をレーザ光の走査角速度とは異なる角速度とすると、レーザ光が筐体窓に照射される位置が変化する。これにより、レーザ光が照射される位置は、汚れ判断部により汚れが付着していると判断された位置とは異なる位置になる。よって、レーザ光が照射される位置に汚れが付着していない可能性が生じることから、筐体窓に付着した汚れにより生じる死角を少なくすることができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明では、走査部は、駆動部が筐体窓の回転角速度をレーザ光の走査角速度とは異なる角速度としている間もレーザ光を走査し、
汚れ判断部は、駆動部が筐体窓をレーザ光の走査角速度とは異なる角速度としている間も、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着しているか否かを判断し、
駆動制御部は、汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着していないと判断したことに基づいて、再び、レーザ光の走査に同期して筐体窓を回転させる。
【0013】
このようにすれば、再び、レーザ光の走査に同期して筐体窓を回転させる際に、筐体窓にレーザ光が照射される位置を、確実に、筐体窓に汚れが付着していない位置とすることができる。そして、レーザ光が照射可能な方向であって、筐体窓に汚れが付着していない位置が1箇所でもあるうちは、いずれ、汚れ判断部は筐体窓に汚れが付着していないと判断する。よって、レーザ光が照射可能な方向であって、筐体窓に汚れが付着していない位置が1箇所でもあるうちは、汚れにより阻害されないで、装置外部の物体の距離測定を再開することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、駆動部は、筐体窓に動力伝達可能な動力伝達状態と、筐体窓に動力を伝達する経路が切断された動力切断状態とが可能であり、
駆動制御部は、汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着していると判断したことに基づいて、駆動部を動力切断状態とすることで、レーザ光が筐体窓に照射される位置を変化させる。
【0015】
このようにすれば、駆動部が筐体窓を駆動する動力を制御する構成に比較して、簡単な構成で、レーザ光が筐体窓に照射される位置を変化させることができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明では、筐体窓に制動力を加える制動状態と、筐体窓に制動力を加えていない非制動状態とが可能である制動部(87)を備え、
駆動制御部は、制動部も制御可能であり、汚れ判断部が、レーザ光が照射された位置の筐体窓に汚れが付着していると判断したことに基づいて、駆動部を動力切断状態とすることに加えて、制動部を制動状態とすることで、レーザ光が筐体窓に照射される位置を変化させる。
【0017】
このようにすれば、レーザ光が筐体窓に照射される位置を、迅速に、大きくずらすことができる。そのため、レーザ光が筐体窓に照射される位置を、迅速に、汚れが付着していない位置までずらすことができる。
【0018】
上記目的を達成するための請求項5に係る発明は、筐体に取り付けられている筐体窓(3)と、
レーザ光を発生させて投光する投光部(5)と、
投光部が投光したレーザ光を、上下方向軸の回りの所定の走査角度範囲に渡って周期的に走査しつつ、筐体窓から照射する走査部(6)とを備えたレーザレーダ装置(100)であって、
筐体窓は、上下方向軸の回りに回転可能であり、
筐体窓を、走査部によるレーザ光の走査角速度とは異なる角速度で回転させる駆動部(182)を備えることを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、レーザ光が筐体窓に照射される位置が時間とともにずれていくことになる。したがって、ある第1の時点で、ある方向(第1照射方向とする)に照射されたレーザ光が筐体窓に照射される部分に汚れが付着しているとしても、第1の時点以降の第2の時点で再び第1照射方向にレーザ光を照射するときには、筐体窓においてレーザ光が照射される部分に汚れが付着していない可能性が生じる。したがって、筐体窓に付着した汚れにより生じる死角を少なくすることができる。
【0020】
また、請求項6に係る発明では、駆動部は、筐体窓を、走査部によるレーザ光の走査角速度よりも遅い角速度で、レーザ光の走査方向と同方向に回転させる。
【0021】
本発明によれば、走査部が、レーザ光をある走査方向に照射した後、再び、その走査方向に照射したとき、筐体窓は、まだ1回転していないことになる。したがって、走査部が、レーザ光をある走査方向に照射した後、再び、その走査方向に照射したときは、レーザ光は、前回よりも、筐体窓の回転方向前側の部位を照射することになる。
【0022】
一方で、筐体窓が回転していることから、筐体窓に付着する汚れは、汚れが筐体窓に付着した点から、筐体窓の回転方向後側に広がって付着する可能性が高い。換言すれば、汚れが付着した点よりも回転方向前側は、汚れていない可能性が高い。
【0023】
したがって、本発明によれば、前回の走査において、ある角度にレーザ光が照射されたときに、筐体窓においてレーザ光が照射された部分が、汚れが付着した点となってしまったとしても、次回の走査において同じ角度にレーザ光を走査しても、その角度の筐体窓には汚れが付着していない可能性が高い。そのため、本発明によれば、迅速に死角を解消できる可能性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
(外観構成)
図1は、第1実施形態となるレーザレーダ装置1の側面図である。
図1に示すように、本実施形態のレーザレーダ装置1が備える筐体2は、背面2aが平面状であり、この背面2aが、屋外に露出している壁10に固定される。また、レーザレーダ装置1の上面図である
図2に示すように、筐体2の上面は、前側が円弧状に湾曲した形状である。
【0026】
図1に示すように、筐体2の下部には、筐体窓3と背面カバー4とが取り付けられている。背面カバー4は、筐体2の下部において背面2a側に配置されており、背面2aとは反対側となる前側が開口している。背面カバー4は遮光性材料で構成されている。一方、筐体窓3は、光透過性の材料で形成されており、背面カバー4の開口から180度分が露出している。
【0027】
(内部構成)
図3は、
図2のIII-III線断面である。なお、
図3には、レーザレーダ装置1の内部構成のうち、光学系の構成と機械的構成を主として示しており、レーザレーダ装置1は、
図3に示す構成の他に、
図4に示す電気的構成も備える。
【0028】
筐体窓3は、
図3に示すように、底部3aと、筒部3bと、上環部3cとを備えている。底部3aは円板形状である。筒部3bは、下側ほど小径となるテーパ状の円筒形状である。筒部3bの下端の直径は底部3aの直径と同じ長さになっており、底部3aにより、筒部3bの下面は塞がれている。上環部3cは、内径が筒部3bの上端の直径と同じであり、筒部3bの上端から径方向外側に突き出している。
【0029】
上環部3cはスラストベアリング31を介して筐体2に支持されている。これにより、筐体窓3は、上下方向軸の回りに、筐体2に対して相対回転可能となっている。また、筐体窓3の上端部内面には、内歯車32が形成されている。
【0030】
筐体2の内部には、投光部5、走査部6、受光部7、窓回転部8、制御回路9が備えられている。
【0031】
(投光部5の構成)
投光部5は、
図3に示す構成として、レーザダイオード51、コリメートレンズ52、偏向ミラー53を備える。また、
図4に示すレーザ駆動回路54も備える。
【0032】
レーザダイオード51は、光源であって、レーザ駆動回路54により駆動されて、パルス状のレーザ光を発生させる。コリメートレンズ52は、レーザダイオード51が発生したレーザ光を平行光とする。偏向ミラー53は、コリメートレンズ52によって平行光とされたレーザ光を、走査ミラー61の方向に反射する。
【0033】
レーザ駆動回路54は、レーザダイオード51を駆動させる回路であり、レーザダイオード51を駆動させる信号をレーザダイオード51に出力する。また、レーザダイオード51を駆動させる信号を出力したことを示す信号を、
図4に示す時間計測回路75に出力する。
【0034】
(走査部6の構成)
走査部6は、
図3に示す構成として、走査ミラー61、支持体62、支持体ギヤ63、モータ64、モータギヤ65を備える。また、
図4に示すモータ駆動回路66、回転センサ67も備える。
【0035】
走査ミラー61は、偏向ミラー53からのレーザ光を、筐体窓3を通して装置外部へ照射する。また、筐体窓3から入射した反射光を受光ミラー71に向けて反射する。
【0036】
支持体62は、走査ミラー61を支持する部材であり、円筒形状をしている。また、支持体62は、支持体62の上部および下部をそれぞれ支持する2つのベアリング68により、この支持体62の軸回りに回転可能になっている。この支持体62の下端に走査ミラー61の上端が固定されている。また、支持体62は、軸方向が上下方向となるように配置されている。したがって、支持体62が回転すると、走査ミラー61も、上下方向軸の回りに回転する。
【0037】
この走査ミラー61の回転により、装置外部へ照射されるレーザ光が、水平面内で周期的に走査される。なお、走査ミラー61の回転速度に特に制限はなく、レーザレーダ装置1の設計者、あるいは、使用者が適宜、設定することができる。
【0038】
支持体ギヤ63は、支持体62に固定された外歯車であり、支持体62とともに回転する。モータ64の回転軸にはモータギヤ65が固定されている。モータギヤ65は、支持体ギヤ63と常時噛み合っている。したがって、モータ64が回転することにより、モータ64の回転が、モータギヤ65、支持体ギヤ63、支持体62へと伝えられ、支持体62および走査ミラー61が回転する。また、モータギヤ65は、移動ギヤ82とも常時噛み合っている。なお、
図4において、モータギヤ65と支持体ギヤ63とを結ぶ破線矢印、および、モータギヤ65と移動ギヤ82とを結ぶ破線矢印は、これらが常時噛み合っていることを意味する。
【0039】
モータ駆動回路66は、モータ64を駆動させる回路である。回転センサ67は、支持体ギヤ63に対向して設けられ、回転センサ67の正面を支持体ギヤ63の歯が通過する毎に、そのことを示す信号を制御回路9に出力する。制御回路9は、回転センサ67からの信号をもとに、支持体62と一体回転する走査ミラー61の回転角度を決定する。
【0040】
(受光部7の構成)
受光部7は、
図3に示す構成として、受光ミラー71、集光レンズ72、フォトダイオード73を備える。また、
図4に示す受光回路74、時間計測回路75も備える。
【0041】
受光ミラー71は、走査ミラー61が反射した反射光を集光レンズ72に向けて反射する。集光レンズ72は、走査ミラー61が反射した反射光をフォトダイオード73に集光する。フォトダイオード73は、このフォトダイオード73に入射する反射光の光量を示す受光信号を受光回路74に出力する。受光回路74は、受光信号を増幅して時間計測回路75に出力する。時間計測回路75は、レーザ駆動回路54がレーザダイオード51を駆動させる信号を出力してから、受光回路74から取得する受光信号が所定の閾値を超えるまでの時間を計測する。
【0042】
(窓回転部8の構成)
窓回転部8は、
図3に示す構成として、アクチュエータ81、移動ギヤ82、ブレーキパッド83を備える。また、
図4に示すアクチュエータ84、回転センサ85も備える。
【0043】
アクチュエータ81は、ソレノイドアクチュエータであり、移動ギヤ82が連結されており、この移動ギヤ82を軸方向に移動させる。移動ギヤ82は、アクチュエータ81のソレノイドが非通電状態であるときは、アクチュエータ81が備えるバネの付勢力により下方に位置する。この位置では、移動ギヤ82は、モータギヤ65に加えて、筐体窓3に固定された内歯車32とも噛み合う。
【0044】
したがって、アクチュエータ81のソレノイドが非通電状態であるときは、モータ64が回転すると、筐体窓3も回転する。筐体窓3の回転方向は、移動ギヤ82と同方向である。また、移動ギヤ82と支持体ギヤ63は、ともに、モータギヤ65と噛み合っているので、移動ギヤ82と支持体ギヤ63の回転方向は同方向である。よって、筐体窓3と支持体62とは同方向に回転する。そして、本実施形態では、支持体62と筐体窓3とが同一の角速度で回転するように、ギヤ比が調整されている。したがって、レーザ光の走査に同期して、筐体窓3が回転する。
【0045】
モータ64の回転を筐体窓3に伝達する機構であるアクチュエータ81と移動ギヤ82は、筐体窓3を回転させる駆動部86を構成する。
【0046】
アクチュエータ81のソレノイドが通電状態になると、移動ギヤ82は、筐体窓3の内歯車32と噛み合わない位置まで上方に移動する。この状態が動力切断状態であり、動力切断状態では、駆動部86の動力は筐体窓3に伝達されない。一方、移動ギヤ82が筐体窓3の内歯車32と噛み合っている状態が動力伝達状態であり、動力伝達状態では、駆動部86の動力が筐体窓3に伝達される。
【0047】
ブレーキパッド83とアクチュエータ84は制動部87を構成する。ブレーキパッド83は、アクチュエータ84により、
図4に両方向の矢印で示すように、筐体窓3に対して接近離隔方向に移動する。ブレーキパッド83が最も筐体窓3の方向に移動した状態では、ブレーキパッド83は筐体窓3の上環部3cの側面に接触する。ブレーキパッド83が筐体窓3の上環部3cの側面に接触した状態は制動状態であり、制動状態では、筐体窓3には、回転を停止させる制動力がブレーキパッド83から加えられる。一方、ブレーキパッド83が筐体窓3から離れた状態は非制動状態である。非制動状態では、ブレーキパッド83は、筐体窓3に制動力を加えていない。
【0048】
回転センサ85は、筐体窓3の内歯車32に対向して設けられ、回転センサ85の正面を内歯車32の歯が通過する毎に、そのことを示す信号を制御回路9に出力する。制御回路9は、回転センサ85からの信号をもとに、筐体窓3の回転角度を決定する。
【0049】
(制御回路9の処理の概要)
制御回路9は、レーザ駆動回路54に、レーザダイオード51を駆動させることを指示する信号を周期的に出力する。また、回転センサ67から逐次取得する信号に基づいて、走査ミラー61の回転角度を逐次決定し、走査ミラー61が一定速度で回転するようにモータ64の回転速度を制御する。これにより、レーザレーダ装置1は、レーザ光を、走査しつつ装置外部に照射する。レーザ光を走査する走査角度範囲は、筐体窓3が背面カバー4から露出している範囲、すなわちレーザレーダ装置1の前側の180度の範囲であり、走査ミラー61が背面カバー4の方向を向いているときは、レーザ光は装置外部に照射されない。
【0050】
制御回路9は、レーザ光を走査しているとき、通常は、移動ギヤ82を筐体窓3の内歯車32と噛み合わせることで、筐体窓3を、レーザ光の走査に同期して回転させる。なお、レーザ光の走査に同期して筐体窓3が回転している状態では、レーザ光が筐体窓3を通過する位置は、常に同じ位置である。
【0051】
また、制御回路9は、時間計測回路75が計測した時間に基づいて物体までの距離を算出する。
【0052】
これらに加えて、制御回路9は、筐体窓3においてレーザ光が照射される位置に汚れが付着しているかを判断する。そして、筐体窓3においてレーザ光が照射される位置に汚れが付着していると判断した場合には、筐体窓3の回転速度を低下させて、筐体窓3においてレーザ光が照射される位置を、汚れが付着していない位置とする。その後、筐体窓3を再び、レーザ光の走査に同期して回転させる。
【0053】
(制御回路9の詳細処理)
制御回路9は、
図5に示す処理を周期的に実行する。なお、
図5において、ステップS1、S5、S6、S9、S10は駆動制御部としての処理であり、ステップS4、S8は汚れ判断部としての処理である。
【0054】
ステップS1では、アクチュエータ81のソレノイドを非通電状態とすることで、移動ギヤ82と筐体窓3の内歯車32を噛みあわせて動力伝達状態とする。なお、すでに動力伝達状態となっていれば、このステップS1の処理は省略する。
【0055】
ステップS2では、モータ駆動回路66に、一定速度で一定方向に走査ミラー61を回転させるように、モータ64を駆動させることを指示する信号を出力する。ステップS1で動力伝達状態となっているので、走査ミラー61の回転に同期して筐体窓3も回転する。なお、すでに走査ミラー61が回転している場合には、このステップS2の処理は省略する。
【0056】
ステップS3では、距離測定処理を実行する。この距離測定処理では、レーザ駆動回路54にレーザダイオード51を駆動させてレーザ光を出力させることを指示する信号を出力する。さらに、時間計測回路75から取得する時間に基づいて、物体までの距離を計測する。一度の距離測定処理の実行ではレーザ光を一度照射する。ただし、
図5の処理が周期的に実行されることにより、走査ミラー61の回転角が所定角度変化する毎に距離測定処理が実行される。
【0057】
ステップS4では、近距離反射があったか否かを判断する。近距離反射とは、ステップS3で測定した距離が、筐体窓3までの距離に近似した距離であることを意味する。この判断がNOであれば
図5の処理を終了する。一方、ステップS4の判断がYESであればステップS5に進む。
【0058】
ステップS5では、アクチュエータ81のソレノイドを通電状態とすることで動力切断状態とする。これにより、筐体窓3の回転速度は低下する。
【0059】
さらに、ステップS6で、アクチュエータ84を制御して、ブレーキパッド83を筐体窓3に接触させる制動状態とすることで、筐体窓3をさらに減速させる。
【0060】
ステップS7では、再び距離測定処理を実行する。ステップS8では、ステップS4と同様にして、近距離反射があったか否かを判断する。ステップS8の判断がYESであれば、再びステップS7に戻り、距離測定処理を実行する。一方、ステップS8の判断がNO、すなわち、近距離反射がないと判断した場合、ステップS9に進む。近距離反射がないと判断した場合には、筐体窓3において、レーザ光が通過する位置は汚れていないことになる。
【0061】
ステップS9では、アクチュエータ84を制御して、ブレーキパッド83を筐体窓3から離隔させる。続くステップS10では、アクチュエータ81のソレノイドを非通電状態とすることで動力伝達状態とする。これにより、筐体窓3は再び走査ミラー61と同期して回転する。
【0062】
(第1実施形態の効果)
上記のように構成されたレーザレーダ装置1の効果を
図6〜
図8を用いて説明する。なお、
図6〜
図8は、背面カバー4と筐体窓3以外の構成は省略している。また、
図6、
図7において、Lはレーザ光が照射される方向を示し、Lに続く(tn)は、時刻tnを意味する。なおnは自然数である。
【0063】
筐体窓3においてレーザ光Lが通過する位置に汚れが付着していない場合、
図5のステップS1〜S4が繰り返される。この場合、時刻t1、t2、t3と時間が経過するに従い、レーザ光Lの照射角度は、
図6では反時計回りに変化する。また、動力伝達状態となっているので、レーザ光Lの照射角度の変化に同期して、筐体窓3も回転する。
【0064】
一方、
図7では、時刻t1において、汚れ11が筐体窓3のレーザ光L(t1)が照射される位置に付着している。したがって、
図7の場合、時刻t1でステップS4がYESになり、ステップS5、S6を実行する。これにより、筐体窓3は減速を開始する。そして、時刻t2において、ステップS7を実行したとする。
【0065】
筐体窓3が減速すること、および、レーザ光Lの走査角速度は、筐体窓3が減速を開始した後も一定速度であることから、時間の経過とともに、筐体窓3においてレーザ光Lが照射される位置は、筐体窓3がレーザ光Lの走査に同期して回転していたときの位置から離れた位置となる。
【0066】
図7の例では、時刻t2において、筐体窓3においてレーザ光Lが照射される位置は、汚れ11が付着していない位置となっている。したがって、ステップS8がYESとなるので、制動が解除され(S9)、再び動力伝達状態となる(S10)。これにより、時刻t2以降は、再び、筐体窓3はレーザ光Lの照射角度の変化に同期して回転する。
【0067】
そのため、時刻t3でも、レーザ光Lの照射角度と、筐体窓3に汚れ11が付着している角度範囲との相対関係は変化しない。よって、時刻t2以降は、再び、汚れ11に阻害されずに、装置外部の物体までの距離を測定することができる。
【0068】
以上、説明したように、第1実施形態では、筐体窓3がレーザ光Lの走査に同期して回転している間は、レーザ光Lは筐体窓3の同じ位置に照射される。一方、ステップS4の判断がYES、すなわち、レーザ光Lが照射された位置の筐体窓3に汚れ11が付着していると判断した場合、筐体窓3の回転角速度を減速させる。これにより、レーザ光Lが筐体窓3に照射される位置が変化するので、レーザ光Lが照射される位置は、汚れ11が付着していると判断された位置とは異なる位置になる。
【0069】
これにより、レーザ光Lが照射される位置に汚れが付着していない可能性が生じることから、筐体窓3に付着した汚れにより生じる死角を少なくすることができる。
【0070】
その後、ステップS8の判断がNOとなるまで、すなわち、レーザ光Lが照射された位置の筐体窓3に汚れ11が付着していないと判断するまで、筐体窓3の回転角速度をレーザ光Lの走査角速度と非同期とする。そして、ステップS8の判断がNOとなったら、再び、筐体窓3をレーザ光Lの走査に同期して回転させる(S9、S10)。
【0071】
これにより、再び、レーザ光Lの走査に同期して筐体窓3を回転させる際に、筐体窓3にレーザ光Lが照射される位置を、確実に、筐体窓3に汚れが付着していない位置とすることができる。
【0072】
しかも、
図8に示すように、レーザ光Lが照射可能な方向であって、筐体窓3に汚れ11が付着していない位置が1箇所でもあるうちは、いずれ、ステップS8の判断がNOになる。よって、汚れ11によって阻害されないで、装置外部の物体の距離測定を再開することができる。
【0073】
なお、
図5には示していないが、所定時間以上、ステップS8の判断がNOにならない場合、筐体窓3の全周に汚れ11が付着していると考えられる。この場合、
図5の処理を終了して警告を出力する。警告は、レーザレーダ装置1が離れた場所にある管理装置と接続されている場合、その管理装置から出力する。この警告は、音および表示の一方または両方である。また、レーザレーダ装置1から警告を出力してもよい。
【0074】
また、第1実施形態では、筐体窓3に駆動部86の動力が伝達されない動力切断状態とすることで、筐体窓3の回転角速度をレーザ光Lの走査回転角速度と非同期とする(S5)。動力切断状態とすれば、駆動部86が筐体窓3を駆動する動力を制御する必要がない。したがって、駆動部86が筐体窓3を駆動する動力を制御する構成に比較して、簡単な構成で、レーザ光Lが筐体窓3に照射される位置を変化させることができる。
【0075】
また、第1実施形態では、動力切断状態とすることに加えて、制動を実行する(S6)。これにより、レーザ光Lが筐体窓3に照射される位置を、迅速に、大きくずらすことができる。そのため、レーザ光Lが筐体窓3に照射される位置を、迅速に、汚れが付着していない位置までずらすことができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0077】
第2実施形態のレーザレーダ装置100の構成を
図9に示す。レーザレーダ装置100が、第1実施形態のレーザレーダ装置1と違う点は、窓回転部8を備えておらず、代わりに、固定ギヤ182を備えている点、および、制御回路9が実行する処理である。その他の構成は、第1実施形態のレーザレーダ装置1と同じである。
【0078】
固定ギヤ182は、第1実施形態の移動ギヤ82と同じく、筐体窓3の内歯車32およびモータギヤ65と噛み合っている。そのため、モータ64が回転すると、モータギヤ65を介してモータ64の回転がこの固定ギヤ182に伝達され、固定ギヤ182は内歯車32を介して筐体窓3を回転させる。この固定ギヤ182が請求項の駆動部に相当する。
【0079】
固定ギヤ182と、第1実施形態の移動ギヤ82との違いは、第1に、固定ギヤ182は軸方向に移動しない点である。したがって、固定ギヤ182は、筐体窓3の内歯車32およびモータギヤ65と常時噛み合っている。
【0080】
第2の違いはギヤ比である。固定ギヤ182は、走査ミラー61の回転角速度、すなわちレーザ光の走査角速度と、筐体窓3の回転角速度とが異なるように、ギヤ比が調整されている。つまり、固定ギヤ182は、レーザ光の走査角速度とは異なる角速度で筐体窓3を回転させる。より詳しくは、固定ギヤ182は、レーザ光の走査角速度よりも遅い角速度で筐体窓3を回転させる歯数となっている。なお、筐体窓3の回転方向は、レーザ光の走査方向と同方向である。
【0081】
制御回路9は、第1実施形態において窓回転部8に対して実行していた処理を実行しない。制御回路9が実行するその他の処理は、第1実施形態と同じである。
【0082】
(第2実施形態の効果)
この第2実施形態では、レーザ光の走査角速度とは異なる角速度で筐体窓3を回転させる。これにより、レーザ光が筐体窓3に照射される位置が時間とともにずれていく。したがって、ある第1の時点で、ある方向(第1照射方向とする)に照射されたレーザ光が筐体窓3に照射される部分に汚れが付着しているとしても、第1の時点以降の第2の時点で再び第1照射方向にレーザ光を照射するときには、筐体窓3においてレーザ光が照射される部分に汚れが付着していない可能性が生じる。これにより、筐体窓3に付着した汚れにより生じる死角を少なくすることができる。
【0083】
また、第2実施形態では、レーザ光の走査角速度よりも遅い角速度で、レーザ光の走査方向と同じ方向に筐体窓3を回転させる。これにより、走査部6が、レーザ光を第1照射方向に照射した後、再び、第1照射方向に照射したとき、筐体窓3は、まだ1回転していないことになる。したがって、走査部6が、レーザ光を第1照射方向に照射した後、再び、第1照射方向に照射したときは、レーザ光は、前回よりも筐体窓3の回転方向前側の部位を照射する。
【0084】
一方で、筐体窓3が回転していることから、筐体窓3に付着する汚れは、汚れが筐体窓3に付着した点から、筐体窓3の回転方向後側に広がって付着する可能性が高い。換言すれば、汚れが付着した点よりも回転方向前側は、汚れていない可能性が高い。
【0085】
したがって、前回の走査において、第1照射方向にレーザ光が照射されたときに、筐体窓3においてレーザ光が照射された部分が、汚れが付着した点となってしまったとしても、次回の走査において第1照射方向にレーザ光を照射しても、筐体窓3においてレーザ光が照射される部分には汚れが付着していない可能性が高い。よって、迅速に死角を解消できる可能性が高い。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0087】
<変形例1>
たとえば、第1実施形態では、ステップS4で近距離反射ありと判断した場合、ステップS5で動力切断状態とすることに加えて、ステップS6で制動状態としていた。しかし、ステップS6を実行せずに、動力切断状態とすることのみにより、筐体窓3の回転角速度をレーザ光の回転角速度と非同期としてもよい。
【0088】
<変形例2>
前述の実施形態では、1つのモータ64により、走査ミラー61と筐体窓3を回転させていた。しかし、走査ミラー61を回転させるためのモータと、筐体窓3を回転させるためのモータを別々に備えてもよい。
【0089】
<変形例3>
前述の実施形態では、筐体窓3を減速させることにより、筐体窓3の回転角速度とレーザ光の走査角速度を非同期としていた。しかし、筐体窓3の回転角速度をレーザ光の走査角速度よりも速くすることで、筐体窓3の回転角速度とレーザ光の走査角速度を非同期としてもよい。
【0090】
<変形例4>
前述の実施形態では、近距離反射の有無により、筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断していたが、筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断する方法はこれに限られない。たとえば、特許文献2に記載されているように、筐体窓面を走査する専用の発光素子および受光素子を設けて、筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断してもよい。
【0091】
<変形例5>
前述の実施形態では、走査角度範囲は180度となっていたが、走査角度範囲は何度であってもよい。
【0092】
<変形例6、7>
第2実施形態において、筐体窓3を、レーザ光の走査方向とは反対方向に回転させてもよい(変形例6)。また、筐体窓3を、レーザ光の走査角速度よりも速い角速度でレーザ光の走査方向と同方向に回転させてもよい(変形例7)。