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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-224360(P2016-224360A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】清掃部材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20161205BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20161205BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20161205BHJP
   A47L 13/16 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   G03G21/00 310
   G03G15/02 103
   G03G15/16 101
   F16C13/00 E
   A47L13/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-112876(P2015-112876)
(22)【出願日】2015年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】林 俊成
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
3B074
3J103
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA02
2H134GA06
2H134GB02
2H134HA01
2H134HA05
2H134HA17
2H134HA18
2H134KD08
2H134KE02
2H134KE03
2H134KE07
2H134KH10
2H134KH15
2H200FA09
2H200FA13
2H200GA23
2H200GB15
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JC03
2H200JC12
2H200LA40
2H200LB02
2H200LB08
2H200LB15
2H200LB35
2H200LB37
2H200LC01
2H200LC03
2H200LC08
2H200MA03
2H200MA08
2H200MA20
2H200MC01
3B074AA03
3B074AB03
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA65
3J103BA41
3J103BA46
3J103FA07
3J103FA21
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA12
3J103HA48
3J103HA53
(57)【要約】
【課題】複写装置、プリンター装置、ファクシミリ装置等の電子写真システムの画像形成装置に用いられる清掃部材について、清掃効果を高めると共に低い駆動トルクで回転させることができ、かつ清掃対象部を傷付け難い清掃部材を提供する。
【解決手段】回転されるシャフト11と、シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けられたポリウレタン発泡体からなる帯状の弾性発泡体21とよりなる清掃部材10において、シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体21は、シャフト11の外周面12に対して起立した側面22、23のうち少なくとも一つの側面を未発泡層で構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体とよりなる清掃部材において、
前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面に対して起立した側面のうち少なくとも一つの側面が未発泡層からなることを特徴とする清掃部材。
【請求項2】
前記一つの側面は、前記シャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面であることを特徴とする請求項1に記載の清掃部材。
【請求項3】
前記シャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面と後方側に位置する側面の両方の側面が未発泡層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃部材。
【請求項4】
前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面側の面と反対側の外面の両面が気孔の露出した切断面からなることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の清掃部材。
【請求項5】
前記帯状の弾性発泡体は、ポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の清掃部材。
【請求項6】
少なくとも一面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シートを、横断面が矩形の帯状に切断して、前記未発泡層を前記帯状の長さ方向に沿って片面または両面に有する帯状の弾性発泡体を形成する切断工程と、
前記帯状の弾性発泡体を、シャフトの外周面に、前記未発泡層の面が前記シャフトの外周面に対して起立した側面となるようにし、かつ前記切断して形成された面が前記シャフトの外周面側の面とその反対側の外面になるようにして螺旋状に巻き付ける巻き付け工程とにより、
前記シャフトの外周面に前記帯状の弾性発泡体が螺旋状に巻き付けられ、かつ該螺旋状に巻き付けられた前記帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面に対して起立した側面のうち少なくとも一つの側面が未発泡層からなる清掃部材を製造することを特徴とする清掃部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において使用される清掃部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、プリンター装置、ファクシミリ装置等の電子写真システムの画像形成装置においては種々の清掃部材が用いられている。
【0003】
図8に示す画像形成装置の構成においては、画像形成体(感光体ドラム)71に現像ローラ73と帯電ローラ77が当接して回転し、また画像形成体71との間に記録媒体(紙)P及びベルト76を挟んで転写ローラ75が回転するように構成されている。
【0004】
前記画像形成装置は、前記現像ローラ73と当接して回転するトナー供給ローラ72をトナーに接触した状態で回転させることにより、前記トナー供給ローラ72を介して現像ローラ73の表面にトナーを供給し、トナー層規制ブレード74によって現像ローラ73の表面のトナー層を均一にした後、前記画像形成体71上の潜像に現像ローラ73の表面のトナーを付着させ、前記画像形成体71と転写ローラ75との間に電界を発生させることにより、前記画像形成体71上の潜像に付着しているトナーを記録媒体Pに転写させる。
【0005】
前記画像形成装置には、画像形成体(感光体ドラム)71用のクリーニングローラ78、帯電ローラ77用のクリーニングローラ79、中間転写ベルト用のクリーニングローラ81が清掃部材として設けられている。前記クリーニングローラは、清掃対象部と接触して回転することにより、清掃対象部に付着しているトナー等の微粒子を掻き取るように構成されている。
【0006】
クリーニングローラとして、帯状の弾性発泡体をシャフトの外周面に螺旋状に巻き付けたものがある。帯状の弾性発泡体は、連続気泡構造の弾性発泡体をスライス加工及び裁断によって帯状にしたものであり、全面が開口した気孔の露出した切断面となっている(特許文献1、2)。
【0007】
しかし、帯状の弾性発泡体をシャフトの外周に螺旋状に巻き付けた従来のクリーニングローラは、帯状の弾性発泡体の全面が開口した気孔の露出した切断面となっているため、例えば図9に示すように、クリーニングローラ93の弾性発泡体95を清掃対象部(例えば帯電ローラ)91に接触させた状態で回転して清掃対象部91を清掃する際に、清掃対象部91に付着しているトナー等の微粒子97が、弾性発泡体95の表面の開口した気孔をすり抜けて清掃対象部91に清掃残り97aを生じるおそれがある。また、トナー等のすり抜けを防ぐために弾性発泡体95の密度を大にすると、清掃対象部との接触面積が増えてクリーニングローラ93の回転トルクが上昇してクリーニングローラ93が回転し難くなる問題がある。さらに、弾性発泡体95の密度を大にし過ぎると、弾性発泡体95の硬度が大になって清掃時に清掃対象部を傷つける問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−177733号公報
【特許文献2】特開2012−103641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、清掃効果を高めると共に低い駆動トルクで回転させることができ、かつ清掃対象部を傷付け難い清掃部材とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、シャフトと、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体とよりなる清掃部材において、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面に対して起立した側面のうち少なくとも一つの側面が未発泡層からなることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記一つの側面は、前記シャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面であることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1において、前記シャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面と後方側に位置する側面の両方の側面が未発泡層で構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面側の面と反対側の外面の両面が開口した気孔の露出した切断面からなることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記帯状の弾性発泡体は、ポリウレタン発泡体であることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、少なくとも一面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シートを、横断面が矩形の帯状に切断して、前記未発泡層を前記帯状の長さ方向に沿って片面または両面に有する帯状の弾性発泡体を形成する切断工程と、前記帯状の弾性発泡体を、シャフトの外周面に、前記未発泡層の面が前記シャフトの外周面に対して起立した側面となるようにし、かつ前記切断して形成された面が前記シャフトの外周面側の面とその反対側の外面になるようにして螺旋状に巻き付ける巻き付け工程とにより、前記シャフトの外周面に前記帯状の弾性発泡体が螺旋状に巻き付けられ、かつ該螺旋状に巻き付けられた前記帯状の弾性発泡体は、前記シャフトの外周面に対して起立した側面のうち少なくとも一つの側面が未発泡層からなる清掃部材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、シャフトの外周面に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体は、清掃部材が回転して清掃対象部の表面に付着しているトナー等の微粒子を掻き取る際に、シャフトの外周面に対して起立した側面のうち少なくとも一つの側面が未発泡層からなるため、未発泡層の先端のエッジ部分(角の部分)によるトナー掻き取り効果が高く、微粒子が弾性発泡体をすり抜けることを防ぐことができ、清掃を良好に行うことができる。また、弾性発泡体の密度を過度に大にする必要がないため、清掃部材の回転トルクが上昇して清掃部材が回転し難くなることもなく、弾性発泡体の硬度が大になって清掃時に清掃対象部を傷つける問題もない。
【0017】
請求項2の発明によれば、弾性発泡体の未発泡層からなる側面が、シャフトの回転方向に対して前方側に位置するため、清掃時に未発泡層が清掃対象部に線状に密着することになり、清掃能力が向上する。
【0018】
請求項3の発明によれば、弾性発泡体の未発泡層からなる側面が、シャフトの回転方向に対して前方側と後方側の両方に位置するため、清掃能力が一層向上する。
【0019】
請求項4の発明によれば、弾性発泡体は、シャフトの外周面側の面と反対側の外面の両面が開口した気孔の露出した切断面からなるため、弾性発泡体が清掃対象部と密着して清掃する際に弾性発泡体が変形し易くなり、清掃能力が向上する。
【0020】
請求項5の発明によれば、弾性発泡体がポリウレタン発泡体からなるため、弾性発泡体が清掃対象部と密着して清掃する際に弾性発泡体が変形し易くなり、清掃能力が向上すると共に、清掃対象部の傷付きを防ぐことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項1から5の清掃部材を容易に製造することができる。さらに、弾性発泡体の切断された面は、未発泡層のない開口した気孔の露出した面であり、該切断面がシャフトの外周面側の面とその反対側の外面となるようにして弾性発泡体をシャフトに螺旋状に巻き付けるため、弾性発泡体がシャフトの外周面側及びその反対側で変形しやすくなり、螺旋状に巻き付けやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る清掃部材の斜視図である。
図2図1のA−A拡大断面図である。
図3】帯状の弾性発泡体の斜視図とB−B拡大断面図である。
図4】弾性発泡体シートの製造装置の概略を示す図である。
図5】弾性発泡体シートと帯状の弾性発泡体の斜視図及びC−C拡大断面図である。
図6】実施例及び比較例の帯状の弾性発泡体の斜視図及びD−D断面図である。
図7】実施例及び比較例の清掃部材の概略図である。
図8】画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図9】従来のクリーニングローラと清掃対象部を模式的に示す図である。
図10】清掃ブレード用清掃部材の試験方法を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1及び図2に示す清掃部材10は、例えば図8に示した画像形成体用クリーニングローラ78、帯電ローラ用クリーニングローラ79あるいは中間転写ベルト用クリーニングローラ81等として用いられ、画像形成体などの清掃対象部と接触して回転することにより、清掃対象部のトナー等の微粒子を掻き取るのに好適なものである。
【0024】
前記清掃部材10は、シャフト11と、前記シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けられてシャフト11に固定された帯状の弾性発泡体21とよりなり、前記清掃対象部の清掃時に従動回転または駆動回転する。従動回転は、前記清掃対象部との摩擦によって前記清掃部材10を回転させる回転方法である。一方、駆動回転は、前記清掃対象部の回転軸と前記清掃部材10のシャフトに互いにかみ合うギア(歯車)を設け、前記清掃対象部を回転させると共に前記ギアを介して前記清掃部材10を回転させる回転方法である。前記従動回転の場合、前記清掃対象部と前記清掃部材10の周速比は1:1である。一方、前記駆動回転の場合、前記ギアの組合せによって前記清掃対象部と前記清掃部材10との周速を異ならせることができ、清掃効果を高めることができる。前記駆動回転における前記清掃対象部に対する前記清掃部材10の周速比は、1:0.5〜1:1.4ぐらいが好ましい。符号L1はシャフト11の長さ方向である。
【0025】
前記シャフト11は、金属等からなる棒状体で構成される。前記シャフト11の寸法は、前記清掃部材10が取り付けられる機器に応じた長さ及び径とされるが、一般的な長さとして226〜350mm、径として3〜8mmを挙げる。
【0026】
前記シャフト11の外周面に12に巻き付けられる帯状の弾性発泡体21は、巻き付け前を示す図3のように、帯状の弾性発泡体21の長さ方向Xに対して直交する横断面が矩形からなり、長さ方向Xに沿う一組の背中合わせとなる側面22、23が未発泡層21a、21aで構成されると共に、前記シャフト11の外周面側となる面24及びその反対側の面25が、開口した気孔の露出した切断面21b、21bで構成されている。前記未発泡層21aはスキン層とも称され、開口した気孔が露出していない層である。なお、前記未発泡層21aは、前記帯状の弾性発泡体21の長さ方向Xに沿う一つの側面(例えば側面22)のみに設け、他の側面(例えば側面23)を開口した気孔の露出した切断面としてもよい。また、前記帯状の弾性発泡体21において、長さ方向Xの両端の面26、27は、開口した気孔の露出した切断面で構成されている。
【0027】
前記帯状の弾性発泡体21の材質は、ポリウレタン発泡体が好ましく、特にメカニカルフロス法で形成された未発泡層を有するポリウレタン発泡体が好ましい。メカニカルフロス法については後述する。また、前記帯状の弾性発泡体21の横断面における幅W1は0.15〜0.5mm、厚みt1は0.5〜15mmが好ましい。厚みt1を0.5〜15mmとすることで、前記帯状の弾性発泡体21を前記シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けやすくなる。なお、前記帯状の弾性発泡体21において前記シャフト11の外周面側となる面(シャフトへの取り付け側の面)24には、接着剤や接着テープ等の接着層28が設けられ、前記接着層28によって前記シャフト11の外周面12に前記帯状の弾性発泡体21が固定される。
【0028】
前記シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体21は、前記未発泡層21a、21aからなる側面22、23が、前記シャフト11の外周面12に対して起立した側面となっている。一方の側面22は前記シャフト11の回転方向に対して前方側R1に位置する側面であり、他方の側面23は前記シャフト11の回転方向に対して後方側に位置する側面である。なお、前記回転方向の前方側R1に位置する側面とは、前記シャフト11の外周面12に螺旋状に巻き付けられた帯状の弾性発泡体21における起立した両側面22、23のうち、前記清掃部材10の回転時に前側となる側面22であり、回転時に後側となる側面23が回転方向の後方側に位置する側面である。また、前記未発泡層21aを、一方の側面のみに設ける場合は、前記シャフト11の回転方向に対して前方側R1に位置する側面22のみに設けるのが、清掃効率(クリーニング性)の点で好ましい。
【0029】
前記清掃部材10の製造方法の例について示す。清掃部材10の製造方法は、切断工程と巻き付け工程からなる。
切断工程では、少なくとも一面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シートを、横断面が矩形の帯状に切断して、前記未発泡層を前記帯状の長さ方向に沿って片面または両面に有する帯状の弾性発泡体を形成する。また、気孔構造とは気孔が三次元的に隣接する構造である。
【0030】
少なくとも一面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シートは、メカニカルフロス法によって製造されたポリウレタン発泡体を用いるのが好ましい。メカニカルフロス法によって製造された弾性発泡体シートは、上下面に未発泡層を有するものであり、本発明では市販のメカニカルフロス発泡品を用いることができるが、以下にメカニカルフロス法による弾性発泡体シートの製造方法について説明する。
【0031】
図4に示す製造装置50は、上下面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シートを、公知のメカニカルフロス(機械撹拌)法を用いて連続的に製造する装置の一例である。
メカニカルフロス法は、ポリオール、イソシアネート、触媒等からなるポリウレタン原料に、窒素等の不活性ガスをオークスミキサー等による機械撹拌で混入し、不活性ガス混入後のポリウレタン原料を平面上に吐出し、ポリオールとイソシアネートを反応させることにより、上下面に未発泡層を有し、内部に気孔構造を有するポリウレタン発泡体シートを形成する方法である。
【0032】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールまたはポリジエン系ポリオール等を単独で使用または複数種類併用することができる。イソシアネートとしては、トルエンジフェニルジイソシアネート(TDI)、TDIプレポリマー、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、クルードMDI、カルボジイミド変成MDI等を使用することができる。触媒としては、アミン触媒、金属触媒等を使用することができる。前記ポリウレタン原料には、その他に整泡剤やその他の添加材を適宜含むことができる。
【0033】
前記製造装置50は、一方向へ駆動するコンベア51と、前記コンベア51により水平な一方向へ送られる離型シート52と、前記離型シート52の上方に位置する原料吐出ノズル53と、ロール等の厚み規制部材54と、トンネル状の加熱装置55とが、前記離型シート52の進行方向に沿って順に設けられている。また、前記原料吐出ノズル53は、基部側でオークスミキサー等の撹拌装置(図示せず)と接続され、ポリウレタン原料に不活性ガスを機械撹拌で混入した後に原料吐出ノズル53から吐出し、前記不活性ガスにより発泡させるように構成されている。符号57は離型シート52の送り出しロール、符号59は離型シート52の巻き取りロールである。
【0034】
前記製造装置50では、前記コンベア51によって一方向へ送られる前記離型シート52の平面上に、不活性ガスが混入されたポリウレタン原料Mを前記原料吐出ノズル53から吐出し、該離型シート52上に吐出された不活性ガス混入ポリウレタン原料Mを、前記厚み規制部材54によって一定の厚みにし、その後に前記加熱装置55により前記不活性ガス混入ポリウレタン原料Mを加熱して反応・硬化させることにより、上下面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有するポリウレタン発泡体からなる弾性発泡体シート21Mを形成する。前記上下面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シート21Mは、前記離型シート52から剥がされ、所定の長さに切断される。なお、前記加熱装置55による加熱温度は、例として50〜250℃を挙げる。また、前記上下面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シート21Mは、厚みが0.15〜15mmが好ましい。なお、一面のみに未発泡層を有する弾性発泡体シートを得るには、前記上下面の未発泡層のうち、一方の面の未発泡層を切除すればよい。
以下の説明では、前記上下面に未発泡層を有し内部に気孔構造を有する弾性発泡体シート21Mを用いる場合について示す。
【0035】
前記切断工程では、上下面に未発泡層を有する弾性発泡体シート21Mを、図5の(5−1)及び(5−2)に示すように、切断工具を用いて横断面が矩形の帯状に切断して、未発泡層21aを前記帯状の長さ方向Xに沿って背中合わせとなる両側の表面に有し、他の表面が開口した気孔の露出した切断面21bからなる帯状の弾性発泡体21を形成する。なお、図1及び図2に示した前記清掃部材10において前記未発泡層21aを、一方の側面のみに設ける場合には、図5の(5−2)における前記未発泡層21aを前記帯状の長さ方向Xに沿って一表面にのみ有し、他の表面を開口した気孔の露出した切断面21bとなるように切断する。
【0036】
前記巻き付け工程では、前記帯状の弾性発泡体21を、図1に示すようなシャフト11の外周面に、前記未発泡層21a、21aの面が前記シャフト11の外周面12に対して起立した側面22、23となるようにし、かつ前記切断面21b、21bが前記シャフト11の外周面側の面24とその反対側の面25になるようにして螺旋状に巻き付けて固定し、図1の清掃部材10を得る。前記帯状弾性発泡体21のシャフト11への固定は、図3に示すように、前記帯状の弾性発泡体21におけるシャフト外周面側となる面24に、予め接着剤や接着テープのような接着層28を設け、前記接着層28によって前記シャフト11の外周面12に接着固定する。
【実施例】
【0037】
・実施例1、2
シャフトは、直径6mm、全長330mmの快削鋼SUM23、表面ニッケルメッキ処理品を用いた。
帯状の弾性発泡体は、メカニカルフロス法で製造された上下面に未発泡層を有するポリウレタン発泡体(密度200kg/m、厚み6mm、品名:ポロン(登録商標)LE−20、ロジャースイノアック社製)を、図6に示すように横断面形状が2.35mm×6mmの矩形をした帯状に切断して、D−D断面図に示すa1、a2面が未発泡層からなり、b1、b2が開口した気孔の露出した切断面からなるものを用いた。
前記帯状の弾性発泡体のb2面に両面接着テープ(品名:No.500、日東電工社製)を貼着した後、前記帯状の弾性発泡体を、a1、a2、b1の面が図7に示す位置となるようにし、かつ巻き付け角度θが25度となるようにしてシャフトの外周面に螺旋状に巻き付け、前記両面接着テープでシャフトの外周面に固定することによって実施例1と2の清掃部材を作成した。なお、実施例1と2は同一の構成からなり、後述の残存トナー濃度の測定において、実施例1は従動回転(周速差なし)に用いられ、実施例2は駆動回転(周速差あり)に用いられる。
【0038】
・実施例3〜6
実施例1、2と同一のメカニカルフロス法で製造された上下面に未発泡層を有するポリウレタン発泡体(密度200kg/m、厚み12mm、品名:ポロン(登録商標)LE−20、ロジャースイノアック社製)を、スライサーで上下二分割して、片面に未発泡層を有する厚み6mmのシートとし、実施例1、2と同一横断面形状からなる長さ310mmの短冊状に切断してa1とa2の一方が未発泡層、他方の層及びb1、b2が開口した気孔の露出した切断面からなる帯状の弾性発泡体を作成し、その他は実施例1、2と同様にして実施例3〜6の清掃部材を作成した。なお、実施例3と5は、同一の構成からなり、a1が未発泡層、a2、b1、b2が開口した気孔の露出した切断面で構成され、かつ実施例3が従動用であり、実施例5が駆動用である。また、実施例4と6は、同一の構成からなり、a2が未発泡層、a1、b1、b2が開口した気孔の露出した切断面で構成され、かつ実施例4が従動用であり、実施例6が駆動用である。
【0039】
・比較例1、2
シャフトは実施例1、2と同一とし、帯状の弾性発泡体は、メカニカルフロス法で製造された上下面に未発泡層を有するポリウレタン発泡体(密度200kg/m、厚み2.35mm、品名:ポロン(登録商標)、ロジャースイノアック社製)の未発泡層を剥ぎ、実施例1、2と同一形状及び寸法に切断して、前記a1、a2、b1、b2の各面を開口した気孔の露出した切断面としたものを用い、実施例1、2と同一の両面接着テープを用い、巻き付け角度θを25度として比較例1(従動試験用、周速差なし)及び比較例2(駆動試験用、周速差あり)の清掃部材を作成した。
【0040】
・比較例3
シャフトは実施例1、2と同一とし、帯状の弾性発泡体は、メカニカルフロス法で製造された上下面に未発泡層を有するポリウレタン発泡体(密度320kg/m、厚み2.35mm、品名:ポロン(登録商標)、ロジャースイノアック社製)の未発泡層を剥ぎ、実施例1、2と同一形状及び寸法に切断して、前記a1、a2、b1、b2の各面を開口した気孔の露出した切断面としたものを用い、実施例1、2と同一の両面接着テープを用い、巻き付け角度θを25度として比較例3(駆動試験用、周速差あり)の清掃部材を作成した。
【0041】
・比較例4
実施例1、2と同一のメカニカルフロス法で製造された上下面に未発泡層を有するポリウレタン発泡体(密度200kg/m、厚み2.35mm、品名:ポロン(登録商標)LE−20、ロジャースイノアック社製)を、実施例1、2と同一横断面形状からなる長さ310mmの短冊状に切断してa1、a2が未発泡層、b1、b2が開口した気孔の露出した切断面からなる比較例4の清掃ブレード用清掃部材を作成した。
【0042】
実施例1〜6及び比較例1〜3の清掃部材に対して、清掃能力を次のようにして確認した。表面にトナーを均一に配置した直径12cmのゴムローラに、実施例1〜6と比較例1〜3の清掃部材のそれぞれを食い込み量0.12mmに設定して当接させた状態で、清掃部材を従動回転(実施例1、3、4、比較例1)あるいは駆動回転(実施例2、5、6、比較例2、3)により8回転させた後、ゴムローラの表面に透明テープを接触させてゴムローラの表面に残存しているトナーを透明テープに転写し、転写後の透明テープに対してマクベス濃度計(品名:RD−918、Gretag Macbeth製)で残存トナーによる濃度(残トナー濃度)を測定した。その際、a1がシャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面であり、a2がシャフトの回転方向に対して後方側に位置する側面である。測定結果は表1に示す。なお、駆動回転では、ゴムローラの回転軸と清掃部材のシャフト間にギヤを介在させ、ゴムローラを所定の速度で回転させると共に一定のギア比で清掃部材のシャフトを回転させるようにし、周速比がゴムローラ:清掃部材=1:1.1となるようにギア比を設定した。また、比較のため、表面にトナーを均一に配置した未清掃状態のゴムローラの表面に透明テープを接触させてゴムローラのトナーを透明テープに転写し、転写後のテープの濃度(残トナー濃度)をマクベス濃度計で測定した。その測定結果は1.4であった。
【0043】
比較例4の清掃ブレード用清掃部材は、ブレード状の弾性部材であり、その先端を清掃対象部に一定の角度で当接させて配置する。すなわち、図10に簡略に示すように、表面にトナーを均一に配置した直径12cmのゴムローラ98に、清掃ブレード用清掃部材99を未発泡層a1、a2が刃を形成するように撓ませて当接させ、その状態でゴムローラ98を前記刃状の未発泡層a1、a2に対してカウンター方向に8回転させた後に、ゴムローラ98の表面に残存しているトナーを透明テープに転写し、転写後の透明テープに対してマクベス濃度計で濃度を測定した。測定結果は表1に示す。
【0044】

【表1】
【0045】
表1に示すように、a1、a2が未発泡層からなると共にb1、b2が開口した気孔の露出した切断面からなる実施例1、2は、残トナー濃度が0.20と0.17であった。また、a1,a2のいずれかが未発泡層もしくは切断面からなる実施例3〜6は、残トナーの濃度が0.17〜0.24であった。特にシャフトの回転方向に対して前方側に位置する側面a1が未発泡層からなって、シャフトの回転方向に対して後方側に位置する側面a2が切断面からなる実施例3と実施例5は、未発泡層と切断面の位置が逆の実施例4と実施例6よりも残トナートナー濃度が小さく、清掃能力が良好であった。これらに対し、a1、a2、b1、b2の何れも開口した気孔の露出した切断面からなる比較例1〜3は、残トナー濃度が0.75〜0.5であり、実施例の清掃部材の方が清掃能力に優れていた。これは、未発泡層のa1もしくはa2面のいずれか一方もしくは双方をシャフトの外周面に対して起立した側面としたことにより、未発泡層の先端のエッジ部分によりトナー掻き取り効果が向上し、かつ開口した気孔をトナーがすり抜けるのを未発泡層で抑えることができることによる。また、未発泡層が前方にある従動式(実施例1、3、4)と駆動式(実施例2、5、6)を比較すると、駆動式の方が清掃能力に優れている(残トナー濃度が低い)。これは、駆動式の場合は、ゴムロールと清掃部材との回転(周速)に差があるため、清掃部材によるトナーの掻き取り力が高くなることによる。
【0046】
一方、清掃ブレード用清掃部材の比較例4は、未発泡層のa1、a2が清掃対象部と当接するエッジ部を構成する刃物形状をしており、表1に示すように残トナー濃度が0.96と大きく、実施例1、2よりも清掃能力が低い結果であった。これは、清掃ブレード用清掃部材は、未発泡層のエッジ部がゴムロールの回転表面に対して回転することなく撓んだ状態で当接しているだけであり、実施例1、2のような未発泡層の先端のエッジ部分によるトナー掻き取り効果が得られないことによる。
【0047】
このように、本発明の清掃部材は、シャフトの外周面に対して起立した側面を構成する未発泡層の存在によって、微粒子の掻き取り性が大であり、かつ微粒子が弾性発泡体をすり抜けることを防ぐことができ、清掃を良好に行うことができる。さらに、弾性発泡体の密度を過度に大にする必要がないため、清掃部材の回転トルクが上昇して清掃部材が回転し難くなることもなく、弾性発泡体の硬度が大になって清掃時に清掃対象部を傷つける問題もない。
【符号の説明】
【0048】
10 清掃部材
11 シャフト
21 帯状の弾性発泡体
21a 未発泡層
21b 開口した気孔の露出した切断面
22、23 起立した側面
24 シャフトの外周面側となる面
25 シャフトの外周面側とは反対側の面
28 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10