【解決手段】フレキソ樹脂版を用いたフレキソ印刷法により、金属ナノワイヤーを含む金属ナノワイヤー分散液を基材の一部の上に塗布し、金属ナノワイヤー分散膜を得る塗布工程と、前記金属ナノワイヤー分散膜を乾燥して、金属ナノワイヤー層を形成する金属ナノワイヤー層形成工程とを含む、電極の製造方法であって、前記フレキソ樹脂版は、前記金属ナノワイヤー分散液を収容するための複数の凹部が格子形状に形成された塗布領域を有し、前記塗布工程では、前記フレキソ樹脂版の塗布領域における凹部及び凹部以外の部分の両方により、基材の上に金属ナノワイヤー分散液を塗布する、ことを特徴とする、電極の製造方法。
前記アンカー層形成工程において、前記基材の上にポリシラザンを塗布し、該塗布されたポリシラザンを反応させて、前記基材の上に前記アンカー層を形成する、請求項3に記載の電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電極の製造方法)
本発明の一実施形態に係る電極の製造方法(以下、単に「本発明の一実施形態に係る方法」と称することがある。)は、少なくとも、塗布工程と、金属ナノワイヤー層形成工程とを含み、更に、必要に応じて適宜選択した、アンカー層形成工程、導電性高分子層形成工程、オーバーコート層形成工程、その他の工程を含む。
【0015】
<塗布工程>
前記塗布工程は、基材の一部の上に金属ナノワイヤー分散液を塗布し、金属ナノワイヤー分散膜を得る工程であり、複数の凹部が格子形状に形成された塗布領域を有するフレキソ樹脂版を用い、フレキソ印刷法により行われる。
ここで、フレキソ印刷法は、
図1に示すようなフレキソ印刷装置1を用い、ドクターブレード2によってインク3をアニロックスロール(金属ロール)4に充填し、版胴5上に設置されたフレキソ樹脂版6にインク3を転写し、このフレキソ樹脂版6から印刷ステージ(厚胴)7上の基材8にインク3を印刷(塗布)する方法である。そして、本発明の一実施形態に係る方法では、インクとして金属ナノワイヤー分散液を用いるとともに、複数の凹部が格子形状に形成された塗布領域を有するフレキソ樹脂版を用い、金属ナノワイヤー分散液を基材の一部の上に塗布するため、塗布ムラを起こすことなく塗布量を増加させることができ、乾燥後の金属ナノワイヤー層(透明導電膜)の厚みを高くすることができる。
【0016】
<<基材>>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機材料、プラスチック材料等の可視光に対して透過性を有する材料からなる透明基材が好ましい。
前記透明基材は、透明導電膜を有する電極に必要とされる膜厚を有しており、例えばフレキシブルな屈曲性を実現できる程度に薄膜化されたフィルム状(シート状)、又は適度の屈曲性と剛性を実現できる程度の膜厚を有する平板状とすることができる。
前記無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、石英、サファイア、ガラス、などが挙げられる。これらの中でも、基材の変形を抑制して、該変形により塗布厚みにムラが生じて、高抵抗の部分が生じるのを防止することができる点で、ガラスが好ましい。
前記プラスチック材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、などの公知の高分子材料が挙げられる。これらの中でも、基材の変形を抑制して、該変形により塗布厚みにムラが生じて、高抵抗の部分が生じるのを防止することができる点で、ガラス転移温度が150℃以上の高分子フィルム(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN、ガラス転移温度155℃)、ポリイミドフィルム(PI、宇部興産社製ユーピレックスS、ガラス転移温度359℃))、が好ましい。
斯かるプラスチック材料を用いて透明基材を構成した場合、透明基材の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の観点から、5〜500μmとすることが好ましい。
なお、透明基材の厚みは、マイクロゲージを用いて、MD方向(流れ方向)及びTD方向(流れに直角方向)に測定することができる。
【0017】
<<金属ナノワイヤー分散液>>
前記金属ナノワイヤー分散液は、少なくとも、金属ナノワイヤーを含んでなり、更に必要に応じて、カーボンナノチューブ、透明樹脂材料(バインダー)、溶剤、分散剤、その他の成分、などを含んでなる。
【0018】
前記金属ナノワイヤー分散液の分散手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、攪拌、超音波分散、ビーズ分散、混錬、ホモジナイザー処理、加圧分散処理、などが好適に挙げられる。
【0019】
前記金属ナノワイヤー分散液の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜300mPa・sが好ましい。前記金属ナノワイヤー分散液の粘度が40mPa・s以上であることにより、フレキソ樹脂版の塗布領域における凹部以外の部分(非凹部)にも金属ナノワイヤー分散液を十分に付着させて、塗布ムラ、ひいては得られる金属ナノワイヤー層の抵抗の増加及び不均一化を抑制することができる。また、金属ナノワイヤー分散液の粘度が300mPa・s以下であることにより、金属ナノワイヤー分散液を容易に凹部に収容することができるとともに、基材への塗布時に凹部中に残留する金属ナノワイヤー分散液の量を低減して、十分な塗布厚みの確保、及び得られる金属ナノワイヤー層の抵抗の増加の抑制をすることができる。同様の観点から、前記金属ナノワイヤー分散液の粘度は、60mPa・s以上がより好ましく、また、200mPa・s以下がより好ましい。
なお、金属ナノワイヤー分散液の粘度は、溶剤の種類の変更、金属ナノワイヤーの配合量の変更、透明樹脂材料(バインダー)の配合量の変更、粘度調整剤の配合量及び/又は種類の変更などにより、乾燥後に得られる金属ナノワイヤー層の抵抗値に大きな影響を及ぼさない範囲で、調整することができる。
【0020】
−金属ナノワイヤー−
前記金属ナノワイヤーは、金属を用いて構成されたものであって、nmオーダーの径を有する微細なワイヤーであり、アスペクト比が1:100以上である。
前記アスペクト比としては、1:100以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電膜の良好なネットワーク形成の点で、1:500以上が好ましい。
本発明の電極の製造方法において、金属ナノワイヤーの代わりに金属ナノ粒子を使用すると、金属ナノワイヤー分散液内での金属ナノ粒子の沈降が大きくなり、塗布時にムラが生じやすい。よって、本発明の電極の製造方法では、金属ナノワイヤーを使用する。
前記金属ナノワイヤーの構成元素としては、金属元素である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ag、Au、Ni、Cu、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、Co、Sn、Al、Tl、Zn、Nb、Ti、In、W、Mo、Cr、Fe、V、Ta、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Agが、低抵抗で導電性が高い点で、好ましい。即ち、本発明の電極の製造方法で用いる金属ナノワイヤーは、低抵抗で且つ高い導電性を得る観点から、銀ナノワイヤーであることが好ましい。
【0021】
金属ナノワイヤーの平均短軸径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm超500nm以下が好ましい。
金属ナノワイヤーの平均短軸径が、1nm超であることにより、金属ナノワイヤーの導電率が悪化して、金属ナノワイヤーを含む層、即ち金属ナノワイヤー層が導電膜として機能し難くなることを抑制することができ、500nm以下であることにより、金属ナノワイヤー層の全光線透過率やヘイズ(Haze)の劣化を抑制することができる。
同様の観点から、金属ナノワイヤーの平均短軸径は、10nm以上がより好ましく、また、100nm以下がより好ましい。
【0022】
金属ナノワイヤーの平均長軸長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜1000μmが好ましい。
金属ナノワイヤーの平均長軸長が、1μm以上であることにより、金属ナノワイヤー同士をつながり易くし、金属ナノワイヤーを含む層、即ち金属ナノワイヤー層を導電膜として良好に機能させることができ、1000μm以下であることにより、金属ナノワイヤー層の全光線透過率やヘイズ(Haze)の劣化や、金属ナノワイヤー分散液における金属ナノワイヤーの分散性の劣化を抑制することができる。
同様の観点から、金属ナノワイヤーの平均長軸長は、1μm以上がより好ましく、また、100μm以下がより好ましい。
なお、金属ナノワイヤーの平均短軸径及び平均長軸長は、走査型電子顕微鏡により測定可能な、数平均短軸径及び数平均長軸長である。より具体的には、金属ナノワイヤーを少なくとも100本以上測定し、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いて、それぞれのナノワイヤーの投影径及び投影面積を算出する。そして、当該投影径を短軸径とすることができるとともに、下記式に基づき、長軸長を算出することができる。
長軸長=投影面積/投影径
ここで、平均短軸径は、短軸径の算術平均値であり、平均長軸長は、長軸長の算術平均値である。
【0023】
更に、金属ナノワイヤーは、金属ナノ粒子が数珠状に繋がってワイヤー形状を有しているものでもよい。この場合、前記金属ナノワイヤーの長さは限定されない。
【0024】
塗布工程時の金属ナノワイヤーの目付量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜1.000g/m
2が好ましい。
金属ナノワイヤーの目付量が、0.001g/m
2以上であることにより、金属ナノワイヤーを十分に金属ナノワイヤー層中に存在させて、金属ナノワイヤー層の導電性を良好にすることができ、また、1.000g/m
2以下であることにより、金属ナノワイヤー層の全光線透過率やヘイズ(Haze)の劣化を抑制することができる。
同様の観点から、塗布工程時の金属ナノワイヤーの目付量は、0.003g/m
2以上がより好ましく、また、0.3g/m
2以下がより好ましい。
【0025】
−カーボンナノチューブ−
カーボンナノチューブとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来の合成法で合成されるものでもよく、また、市販のものであってもよい。
カーボンナノチューブの合成法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、などが挙げられる。
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよいが、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
前記カーボンナノチューブとしては、金属性と半導体性のカーボンナノチューブの混合物であってよく、また、また選択的に分離された半導体性カーボンナノチューブであってもよい。
【0026】
−透明樹脂材料(バインダー)−
透明樹脂材料(バインダー)は、上述した金属ナノワイヤー及び任意に使用するカーボンナノチューブを分散させるものである。
透明樹脂材料(バインダー)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、既知の透明な、天然高分子樹脂、合成高分子樹脂、などが挙げられ、熱可塑性樹脂であってもよく、また、熱、光、電子線、放射線で硬化する熱(光)硬化性樹脂であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。
前記熱(光)硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、イソシアネート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂、アジド基やジアジリン基などの感光基を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに導入したポリマー、などが挙げられる。
【0027】
−溶剤−
前記溶剤としては、金属ナノワイヤー及び任意に含まれるカーボンナノチューブが分散するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フレキソ印刷法により金属ナノワイヤー分散液を基材の一部に塗布することを可能にする観点及び乾燥による塗布ムラを抑制する観点から、沸点が160℃以上である溶剤であることが好ましい。沸点が160℃以上である溶剤としては、例えば、エチルカルビトール(沸点202℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)、トリエチレングリコール(沸点287℃)、フタル酸ジブチル(沸点340℃)、ブチルセロソルブ(沸点171℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、沸点が200℃以上300℃未満であるエチルカルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが、乾燥による塗布ムラをより抑制することができ、かつ、乾燥後に溶剤が残留して抵抗値が上がってしまうのを防止することができる点で、好ましい。
【0028】
なお、上述した沸点が160℃以上である溶剤に加えて、水(沸点100℃)、エタノール(沸点78℃)、イソプロパノール(沸点82℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、エチルラクテート(沸点155℃)、イソブチルアルコール(沸点108℃)、トルエン(沸点111℃)等の、沸点が160℃未満である溶剤を用いてもよい。
【0029】
−分散剤−
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレンイミン等のアミノ基含有化合物;スルホ基(スルホン酸塩含む)、スルホニル基、スルホンアミド基、カルボン酸基(カルボン酸塩含む)、アミド基、リン酸基(リン酸塩、リン酸エステル含む)、フォスフィノ基、シラノール基、エポキシ基、イソシアネート基、シアノ基、ビニル基、チオール基、カルビノール基等の官能基を有する化合物で金属に吸着可能なもの;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記分散剤は、前記金属ナノワイヤー及び任意に含まれるカーボンナノチューブの表面に吸着させてもよい。これにより、前記金属ナノワイヤー及び任意に含まれるカーボンナノチューブの分散性を向上させることができる。
【0030】
−その他の成分−
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レベリング剤、界面活性剤、増粘剤等の粘度調整剤、硬化促進触媒、可塑性、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、などが挙げられる。
【0031】
<<アニロックスロール>>
本発明の一実施形態に係る方法では、任意のアニロックスロールを用い、フレキソ印刷法による塗布を行うことができる。
ここで、アニロックスロールの線数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150〜400線/インチが好ましい。
アニロックスロールの線数が、150線/インチ以上であることにより、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に転写されるインク(金属ナノワイヤー分散液)の量が不均一となるのを抑制することができ、また、400線/インチ以下であることにより、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に転写されるインクの量を十分なものとすることができる。また、アニロックスロールの線数が、150〜400線/インチであることにより、アニロックスロールに供給される金属ナノワイヤー分散液を、均質に定量で受け取った後にフレキソ樹脂版に受け渡すことができ、基材に対する適切な塗布効果が得られる。
同様の観点から、アニロックスロールの線数は、200線/インチ以上がより好ましく、また、350線/インチ以下がより好ましい。
【0032】
<<フレキソ樹脂版>>
本発明の一実施形態に係る方法で用いるフレキソ樹脂版は、金属ナノワイヤー分散液を収容するための複数の凹部が格子状に形成された塗布領域を有する。具体的には、
図2に示すように、フレキソ樹脂版6の塗布領域(図中ではフレキソ樹脂版6の表面全域)に、例えば矩形(略正方形)の形状である複数の凹部9が形成されている。これら複数の凹部9は、アニロックスロールからフレキソ樹脂版6にインクとしての金属ナノワイヤー分散液が転写される際、多量の金属ナノワイヤー分散液を収容することができる。従って、当該フレキソ樹脂版から基材上への金属ナノワイヤー分散液の塗布量を効果的に高めることができ、得られる金属ナノワイヤー層(透明導電膜)の低抵抗化を達成することができる。ここで、フレキソ樹脂版6の非凹部10は、塗布領域における凹部9以外の部分である。更に、フレキソ樹脂版6の塗布領域における複数の凹部9は、向きを揃え、辺方向に等間隔に整列されていることにより、格子形状をなしている。そして、このような、塗布領域において複数の凹部が格子形状に形成されたフレキソ樹脂版を用いれば、得られる金属ナノワイヤー層の抵抗の均一化を達成することができる。
なお、複数の凹部は、少なくともフレキソ樹脂版の表面において格子形状に形成されていればよく、表面よりも低い部分における断面形状は、特に制限されない。
【0033】
また、本発明で用いるフレキソ樹脂版は、ゴム弾性を有し、且つ、JISK6253によるショアA硬度が50〜90度であることを要する。フレキソ樹脂版がゴム弾性を有しなければ、低粘度の金属ナノワイヤー分散液を塗布することができない虞があり、また、十分な塗布量を確保することができない虞がある。また、フレキソ樹脂版のJISK6253によるショアA硬度が50度未満であると、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に金属ナノワイヤー分散液を転写する際に、当該フレキソ樹脂版の凹部に十分な量の金属ナノワイヤー分散液を充填することができない虞がある。更に、フレキソ樹脂版のJISK6253によるショアA硬度が90度超であると、基材の上に十分な量の金属ナノワイヤー分散液を塗布することができず、塗布厚みの低下、及び得られる金属ナノワイヤー層の抵抗が増加する虞がある。同様の観点から、フレキソ樹脂版のJIS K6253によるショアA硬度は、50度以上が好ましく、また、80度以下が好ましい。
なお、フレキソ樹脂版の硬度は、材料を適切に選択することにより調整することができる。また、例えば、フレキソ樹脂版への凹部の形成を、紫外線硬化性樹脂を用いて紫外線照射による硬化及び現像を含む方法により実施する場合、上述したフレキソ樹脂版の硬度は、当該紫外線硬化性樹脂の反応率や架橋度を適宜設計することにより調整することができる。
【0034】
図3(a)に示されるように、複数の凹部が塗布領域に形成されたフレキソ樹脂版6は、版胴5の少なくとも一部の表面に設置されて使用される。なお、
図3(b)は、
図3(a)におけるフレキソ樹脂版6の塗布領域Aの拡大図である。
ここで、凹部の一辺の長さ(
図3(b)に示される(S))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗布ムラを抑制しつつ塗布量を増大させる観点から、80〜300μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。
また、隣接する凹部の間隔、即ち、ライン13の幅(
図3(b)に示される(L))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗布ムラを抑制しつつ塗布量を増大させる観点から、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
そして、隣接する凹部の間隔(L)と凹部の一辺の長さ(S)との比(L/S)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗布ムラを抑制しつつ塗布量を増大させる観点から、0.06〜0.18が好ましく、0.08〜0.16がより好ましい。
【0035】
フレキソ樹脂版の塗布領域において複数の凹部がなす格子形状は、解像度が100〜220線/インチであることを要する。ここで、本発明において「解像度」とは、フレキソ樹脂版を版胴の上に設置した際の、版胴の回転方向1インチ当たりのフレキソ樹脂版におけるラインの線数を指し、ラインは既述した通りである。格子形状の解像度が100線/インチ未満であると、フレキソ樹脂版から基材に金属ナノワイヤー分散液を塗布する際に、塗布ムラが生じることがある。また、格子形状の解像度が220線/インチ超であると、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に金属ナノワイヤー分散液を転写する際に、十分な量の金属ナノワイヤー分散液を凹部に収容することができない虞があり、また、ある程度の量の金属ナノワイヤー分散液を凹部に収容できたとしても、基材への塗布時に金属ナノワイヤー分散液の多くが凹部中に残留し、十分な塗布厚みが確保できずに金属ナノワイヤー層の抵抗値が増加することがある。同様の観点から、格子形状の解像度は、120線/インチ以上が好ましく、また、160線/インチ以下が好ましい。
【0036】
フレキソ樹脂版の平面方向から見た凹部の輪郭形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、十分な塗布量を確保する観点から、矩形の形状である(即ち、凹部自体が、直方体状にくりぬいた形状である)ことが好ましい。
なお、フレキソ樹脂版への凹部の形成を、紫外線硬化性樹脂を用いて紫外線照射による硬化及び現像を含む方法により実施する場合、上述したフレキソ樹脂版の平面方向から見た凹部の輪郭形状は、紫外線発生装置とフレキソ樹脂版との距離を調節したり、紫外線照射の時間を調節することにより、調整することができる。
【0037】
フレキソ樹脂版の塗布領域における凹部は、セル容積が15〜60cm
3/m
2であることを要する。ここで、本発明において「セル容積」とは、フレキソ樹脂版の塗布領域1m
2当たりの、凹部の容積の総和を指す。塗布領域における凹部のセル容積が15cm
3/m
2未満であると、基材への金属ナノワイヤー分散液の塗布量を増大させて金属ナノワイヤー層の抵抗値及びその面内分布を低減する効果が十分に得られない。また、塗布領域における凹部のセル容積が60cm
3/m
2超であると、塗布ムラが発生し、低膜厚部分における抵抗性の悪化が生じる虞がある。同様の観点から、塗布領域における凹部のセル容積は、20cm
3/m
2以上が好ましく、また、50cm
3/m
2以下が好ましい。
なお、凹部のセル容積は、例えば、共焦点レーザー顕微鏡を用い、観察される各凹部の容積を求める方法により、測定することができる。また、凹部のセル容積は、フレキソ樹脂版に凹部を形成させる際の設計条件(例えば、紫外線照射による硬化及び現像を含む方法によりフレキソ樹脂版に凹部を形成させる場合には、紫外線照射の時間、紫外線発生装置とフレキソ樹脂版との距離など)を厳密に設定してフレキソ樹脂版に凹部を形成させ、当該設計条件と、それとは異なる設計条件にてフレキソ樹脂版に形成させた凹部のセル容積の実測値とに基づいて、経験的な方法により推算してもよい。
【0038】
フレキソ樹脂版の塗布領域では、凹部の深さに対するセル容積の比(凹部のセル容積(cm
3/m
2)/凹部の深さ(μm)、無次元数)が0.3〜0.45であることを要する。ここで、本発明において「凹部の深さ」とは、塗布領域の凹部の最も深い部分における、塗布領域の非凹部の表面からの深さを指す。凹部の深さに対するセル容積の比が0.3未満であると、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に金属ナノワイヤー分散液を転写する際に、当該フレキソ樹脂版の凹部に十分な量の金属ナノワイヤー分散液を充填することができない虞がある。また、凹部の深さに対するセル容積の比が0.45超であると、アニロックスロールからフレキソ樹脂版に金属ナノワイヤー分散液を転写する際に、十分な量の金属ナノワイヤー分散液を凹部に充填することができない虞があり、また、ある程度の量の金属ナノワイヤー分散液を凹部に充填できたとしても、基材への塗布時に金属ナノワイヤー分散液の多くが凹部中に残留し、十分な塗布厚みが確保できずに金属ナノワイヤー層の抵抗値が増加することがある。そして、凹部の深さに対するセル容積の比を0.3〜0.45とすることにより、塗布後に得られる金属ナノワイヤー分散膜の厚み(金属ナノワイヤー層のwet膜厚)を大きくする(例えば、8〜12μm)ことができる。同様の観点から、凹部の深さに対するセル容積の比は、0.32以上が好ましく、また、0.43以下が好ましい。
【0039】
塗布領域は、凹部占有面積率が65〜85%であることを要する。塗布領域における凹部占有面積率が65%未満であると、基材への金属ナノワイヤー分散液の塗布量を増大させて金属ナノワイヤー層の抵抗値及びその面内分布を低減する効果が十分に得られない。また、塗布領域における凹部占有面積率が85%超であると、塗布ムラが発生し、低膜厚部分における抵抗性の悪化が生じる虞がある。同様の観点から、塗布領域における凹部占有面積率は、70%以上が好ましく、また、80%以下が好ましい。
【0040】
ここで、上述したような、複数の凹部が格子形状に形成された塗布領域を有するフレキソ樹脂板は、例えば、以下の工程(1−1)〜(1−5)を含む方法、又は以下の工程(2−1)〜(2−4)を含む方法などにより作製することができる。或いは、上述したような、複数の凹部が格子形状に形成された塗布領域を有するフレキソ樹脂板は、切削法等の常法に従って作製してもよい。
【0041】
(1−1)板状で紫外線硬化性の樹脂を用意し、当該樹脂の表面をブラックマスク層で被覆する。
(1−2)レーザーを用い、凹部を形成させる樹脂部分の上のブラックマスク層は残すようにして、所望の格子形状に対応するパターンをブラックマスク層に描画する。
(1−3)紫外線照射により、樹脂に対して、描画されたブラックマスク層の上から露光する。
(1−4)ブラックマスク層を除去し、樹脂の非露光部(未硬化部)をブラシ等の処理器具又は溶剤で洗浄する。
(1−5)温風により樹脂を乾燥させる。
【0042】
(2−1)板状で紫外線硬化性の樹脂(紫外線硬化性樹脂層)を用意し、その層上に、赤外線に反応する層(赤外線感受層)を形成する。
(2−2)赤外線レーザーを用い、赤外線感受層に所望の格子形状をなす複数の凹部を直接描画する。
(2−3)赤外線感受層が形成されていない側の紫外線硬化性樹脂層の表面に紫外線を照射することにより、紫外線硬化性樹脂層を硬化する。
(2−4)温風により各層を乾燥させる。
なお、上記の工程(2−1)〜(2−4)を含む方法では、赤外線感受層を形成した後に紫外線硬化性樹脂層を硬化しているが、紫外線硬化性樹脂層をあらかじめ硬化しておき、その後、赤外線感受層を形成してもよい。
【0043】
<<基材上への金属ナノワイヤー分散液の塗布>>
そして、塗布工程では、上述したようなフレキソ樹脂版を用い、金属ナノワイヤー分散液を基材の一部の上に塗布する。このとき、フレキソ樹脂版の塗布領域における凹部及び凹部以外の部分(非凹部)の両方により、基材の上に金属ナノワイヤー分散液を塗布することを要する。以下、その理由を図面を参照しながら説明する。
図7(a)及び(b)は、従来の方法によりフレキソ印刷法に従った、インク103が転写されたフレキソ樹脂版106と、当該フレキソ樹脂版106によりインク103が塗布された基材108と、塗布から所定時間経過した後の基材108とを示す模式図である。
図7(a)では、フレキソ樹脂版106の凸部111の表面のみにインク103が転写され、この凸部111により、基材108の上にインク103を塗布している。そのため、基材108に塗布されるインク103の膜厚は小さく、塗布されたインクが流動しても、依然として未塗布部分112が存在し得る。また、
図7(b)では、フレキソ樹脂版106の凸部111の表面に加え、凸部111以外の部分(非凸部)113にもインク103が転写されている。なお、非凸部113は、相対的に一定の深さを有することから、凸部111よりも多量のインクが収容されている。そして、非凸部113に収容されているインク103を基材108に塗布するべく、比較的高い圧力でフレキソ樹脂版106を基材108に押し付けるため、フレキソ樹脂版106の非凸部113と対面する基材108上にのみ、インク103が塗布される。そのため、塗布されたインクが流動しても、基材108には依然として未塗布部分112が存在し得る。これらの未塗布部分112は、インクの粘度が高い場合や、インク及び基材の表面張力が大きい場合には、より顕在化し、塗布ムラや外観の悪化の一因となる。
これに対して、本発明の一実施形態に係る方法では、
図4に示すように、フレキソ樹脂版6の塗布領域における凹部9及び凹部以外の部分(非凹部)10の両方に金属ナノワイヤー分散液11が転写され、この両方によって基材8の上に金属ナノワイヤー分散液11を塗布するため、塗布直後の塗布領域に対面する基材8上において、未塗布部分は存在しない。そして、基材8の上に得られた金属ナノワイヤー分散膜12は、流動し、高さ(膜厚)が均一化する。特に、本発明で用いるフレキソ樹脂版は、複数の凹部が格子形状に形成された特定の塗布領域を有するため、塗布量自体を増加させることもできる。そして、この金属ナノワイヤー分散膜12を乾燥させることで、抵抗が低く且つ均一で、外観も良好な、金属ナノワイヤー層を得ることができる。
【0044】
なお、凹部及び非凹部の両方により基材の上に金属ナノワイヤー分散液を塗布するために、基材へのフレキソ樹脂版の押し込み量を調整してもよい。ここで、基材へのフレキソ樹脂版の押し込み量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜20μmが好ましい。基材へのフレキソ樹脂版の押し込み量が10μm以上であることにより、凹部に収容された金属ナノワイヤー分散液が基材への塗布時に凹部中に残留することを効果的に抑制し、十分な塗布厚み、ひいては得られる金属ナノワイヤー層の低抵抗化を達成することができる。また、基材へのフレキソ樹脂版の押し込み量が20μm以下であることにより、非凹部と対面する基材上に金属ナノワイヤー分散液が塗布されずに未塗布部分が生じるのを十分に防止することができる。
ここで、基材へのフレキソ樹脂版の押し込み量は、例えば、フレキソ印刷装置に搭載された測定装置により測定することができる。
【0045】
フレキソ印刷法における印刷速度(基材の送り速度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜30m/minが好ましい。
印刷速度が、5m/min以上であることにより、印刷ムラに起因した得られる金属ナノワイヤーの外観不良を抑制することができ、30m/min以下であることにより、基材への金属ナノワイヤー分散液の塗布量を十分なものとし、均一な膜厚を得ることができる。
同様の観点から、印刷速度は、10m/min以上がより好ましく、また、20m/min以下がより好ましい。
【0046】
<<金属ナノワイヤー分散膜>>
金属ナノワイヤー分散膜は、フレキソ樹脂版を用いたフレキソ印刷法により、金属ナノワイヤー分散液を基材の一部の上に塗布することで得られるものである。また、この金属ナノワイヤー分散膜は、後述する金属ナノワイヤー層形成工程において乾燥することにより、金属ナノワイヤー層となる。
【0047】
金属ナノワイヤー分散膜の厚み(即ち、金属ナノワイヤー層のwet膜厚)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜20μmが好ましい。
金属ナノワイヤー分散膜の厚みが、3μm以上であることにより、より容易に金属ナノワイヤー層を形成することができ、20μm以下であることにより、得られる金属ナノワイヤー層の表面抵抗の分布の不均一化を抑制することができる。
同様の観点から、金属ナノワイヤー分散膜の厚みは、5μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましく、また、15μm以下がより好ましく、12μm以下が更に好ましい。
<金属ナノワイヤー層形成工程>
金属ナノワイヤー層形成工程は、塗布工程において金属ナノワイヤー分散液を基材等の上に塗布して得られた金属ナノワイヤー分散膜を乾燥して、基材等の上に金属ナノワイヤー層を形成する工程である。この金属ナノワイヤー層形成工程で形成される金属ナノワイヤー層は、高い厚みを有し、抵抗が低く且つ均一であり、また、外観が良好である。
【0048】
<<乾燥>>
乾燥時の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜200℃が好ましい。
乾燥時の加熱温度が、100℃以上であることにより、乾燥に要する時間が長くなって作業性が悪化するのを抑制することができ、200℃以下であることにより、基材のガラス転移温度(Tg)との兼ね合いで基材が歪曲するのを抑制することができる。また、乾燥時の加熱温度が100〜200℃であることにより、金属ナノワイヤーのネットワーク形成及びそれによる金属ナノワイヤー層の低抵抗化の点で有利である。
同様の観点から、乾燥時の加熱温度は、120℃以上がより好ましく、180℃以下がより好ましく、また、約150℃が特に好ましい。
【0049】
乾燥時の加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜30分間が好ましい。
乾燥時の加熱時間が、1分間以上であることにより、溶媒を十分に除去することができ、30分間以下であることにより、作業性及び電極の生産性の悪化を防ぐことができる。また、乾燥時の加熱時間が1〜30分間であることにより、金属ナノワイヤーのネットワーク形成及びそれによる金属ナノワイヤー層の低抵抗化の点で有利である。
同様の観点から、乾燥時の加熱時間は、2分間以上がより好ましく、10分間以下がより好ましく、また、約5分間が特に好ましい。
【0050】
<<金属ナノワイヤー層>>
金属ナノワイヤー層は、金属ナノワイヤー分散液を基材等の上に塗布し、乾燥することにより形成される。金属ナノワイヤー分散液、並びに、当該金属ナノワイヤー分散液に含まれ得る金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、透明樹脂材料(バインダー)、溶剤、分散剤、その他の成分は、いずれも、金属ナノワイヤー分散液の説明で既述した通りである。
【0051】
金属ナノワイヤー層の抵抗値の標準偏差σとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20Ω/sq以下が好ましく、15Ω/sq以下がより好ましく、10Ω/sq以下が特に好ましい。
金属ナノワイヤー層の抵抗値の標準偏差σが20Ω/sqを超えると、抵抗値の均一性が低いため、電気回路として問題が生じることがある。例えば、抵抗値の標準偏差σが20Ω/sq超である金属ナノワイヤー層を有する電極を備えるタッチパネルは、パネルの場所によってタッチ部位の検出精度に差が生じ、消費電力が増大するという問題があり、また、前記金属ナノワイヤー層を有する電極を備える有機EL照明素子は、輝度ムラ、発光ムラや発熱が生じる。
ここで、金属ナノワイヤー層の抵抗値は、非破壊抵抗測定器を用いて、測定プローブを金属ナノワイヤー層の表面に接触させて、任意の方向及び当該任意の方向に垂直な方向に20mm毎に抵抗値を測定することができる。なお、金属ナノワイヤー層の抵抗値の標準偏差σを求める場合には、通常20点以上測定する。
【0052】
<アンカー層形成工程>
本発明の一実施形態に係る方法が含み得るアンカー層形成工程は、基材の上にアンカー層を形成する工程であり、通常は基材と金属ナノワイヤー層との接着性を高めることを目的するものである。
本発明の一実施形態に係る製造方法がアンカー層形成工程を更に含む場合、アンカー層形成工程は塗布工程の前に行われるとともに、塗布工程では、アンカー層の一部の上に金属ナノワイヤー分散液が塗布されて、金属ナノワイヤー層が形成される。
本発明の一実施形態に係る方法がアンカー層形成工程を含むことにより、基材と金属ナノワイヤー層の基材と金属ナノワイヤー層との密着性が良好となり、耐久性に優れた電極を製造することができる。
【0053】
<<アンカー層>>
アンカー層形成工程で基材の上に形成されるアンカー層は、いわゆるプライマー層となり、最終的に得られる電極では、基材と金属ナノワイヤー層の中間層となって密着性を改善することができる。
アンカー層は、基材及び金属ナノワイヤー層の両方との密着性に優れることが好ましく、例えば、分子中にSi原子と有機物とを同時に含む化合物等を用いて形成することができる。
アンカー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜5μmが好ましい。
アンカー層の厚みが、0.001μm以上であることにより、基材と金属ナノワイヤー層との密着不良が生じるのを抑制することができ、5μm以下であることにより、電極の色度や全光線透過率などの光学特性が不良となるのを抑制することができる。
同様の観点から、アンカー層の厚みは、0.01μm以上がより好ましく、また、1μm以下がより好ましい。
ここで、アンカー層は、基材の上にポリシラザンを塗布し、このポリシラザンを反応させて、基材の上に形成することが好ましい。ポリシラザンは、特にガラス及び有機物に対する密着性に優れているため、ポリシラザンをアンカー層の形成に用いれば、アンカー層としてのポリシラザンの膜がバリア膜として機能し、電極の経時劣化を軽減することができる。
【0054】
<<ポリシラザン>>
ポリシラザンは、特に、ガラスや有機物に対する密着性に優れているため、アンカー層の成分として好適に使用される。
ポリシラザンの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500〜5000が好ましい。
また、ポリシラザンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーヒドロポリシラザン、などが挙げられる。ここで、パーヒドロポリシラザンは、下記式(1)(式中、nは任意の整数を示す)によって表され、大気中の水分と反応してシリカガラスに転化する(下記反応式(2)参照)。
【0056】
−(SiH
2NH)−+2H
2O→SiO
2+NH
3+2H
2 ・・・(2)
【0057】
<<アンカー層におけるポリシラザンの反応率>>
アンカー層の上に金属ナノワイヤー分散液が塗布される(即ち、塗布工程が実施される)時点でのアンカー層におけるポリシラザンの反応率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜95%が好ましい。
前記反応率が、50%以上であることにより、耐溶剤性を十分に高め、基材と金属ナノワイヤー層との密着性を強固なものとすることができ、95%以下であることにより、アンカー層がほぼガラスとなる前に塗布工程が実施されるので、アンカー層形成工程を実施する必要性がもたらされる。
同様の観点から、前記反応率は、70%以上がより好ましく、82.5%以上が特に好ましく、また、87.5%以下が特に好ましい。
なお、アンカー層におけるポリシラザンの反応率は、測定対象となるサンプルの赤外分光法(IR)スペクトルを用いて算出することができ、例えば、ポリシラザンとしてパーヒドロポリシラザンを用い、上記反応式(2)の反応前のパーヒドロポリシラザンのSi−N基の吸収ピークの高さを100%とした場合の、上記反応式(2)の反応後のパーヒドロポリシラザンのSi−N基の吸収ピークの高さの割合(%)として算出することができる。なお、上記反応率の算出には、事前に作成した検量線(縦軸が「Si−N基の吸収ピークの高さ」、横軸が「反応時間」のグラフ)を用いてもよい。
【0058】
前記基材の上にアンカー層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凸版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、スリットダイ塗布、スプレー塗布、浸漬法、などの既存の塗布方法が挙げられる。斯かる印刷法を用いることにより、短時間で、基材の一部のみにアンカー層を形成することができる。
【0059】
<導電性高分子層形成工程>
本発明の一実施形態に係る方法が含み得る導電性高分子層形成工程は、金属ナノワイヤー層形成工程で形成した金属ナノワイヤー層の上に、導電性高分子を用いて導電性高分子層を形成する工程であり、金属ナノワイヤー層の表面の平滑性を抵抗性を悪化させることなく向上させることを目的とするものである。
本発明の一実施形態に係る製造方法が導電性高分子層形成工程を更に含む場合、導電性高分子層形成工程は、金属ナノワイヤー層形成工程の後に行われる。
導電性高分子層を金属ナノワイヤー層の上に有する電極は、電極に対して高い表面平滑性が求められる用途、例えば有機EL照明素子用の電極として、特に有用である。
【0060】
<<導電性高分子層>>
導電性高分子層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン等を溶剤で希釈した導電性高分子インクを調製し、スピンコート法などにより、金属ナノワイヤー層の上に当該導電性高分子インクを塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
【0061】
<オーバーコート層形成工程>
本発明の一実施形態に係る方法が含み得るオーバーコート層形成工程は、金属ナノワイヤー層形成工程で形成した金属ナノワイヤー層の上に、既存の物質によりオーバーコート層を形成する工程であり、金属ナノワイヤー層を保護することを目的とするものである。
本発明の一実施形態に係る製造方法がオーバーコート層形成工程を更に含む場合、オーバーコート層形成工程は、金属ナノワイヤー層形成工程の後に行われる。
【0062】
<<オーバーコート層>>
オーバーコート層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属ナノワイヤー層の上に、アクリレートモノマーと重合開始剤とを含有する液状物質を塗布し、該塗布した液状物を、熱や光により硬化させる方法が挙げられる。
ここで、前記オーバーコート層を、架橋構造を形成し得る硬化系材料で形成すると、耐溶剤性及び耐環境試験性をより高めることができる。前記硬化系材料としては、架橋構造を形成し得る材料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、透明性、速硬化性、耐溶剤性、耐環境試験性の観点から、アクリル重合系材料が好ましく、特に、耐溶剤性、耐環境試験性を向上する観点から、多官能アクリレートモノマー含有材料がより好ましい。また、前記硬化系材料の硬化反応系としては、熱硬化及び光硬化のいずれでもよいが、電極への熱ダメージが少ない点で、光硬化系が好ましい。
このほか、オーバーコート層を形成する方法としては、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のポリマーを溶剤に溶解させて溶液を得、次いで、この溶液を金属ナノワイヤー層の上に塗布し、乾燥する方法、も挙げられる。
【0063】
(電極)
本発明の電極は、本発明の電極の製造方法により製造された電極であって、少なくとも、基材と、金属ナノワイヤー層とを有し、必要に応じて、その他の部材を有する。その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンカー層、オーバーコート層、などが挙げられる。本発明の電極は、本発明の電極の製造方法により製造されたものであるため、抵抗が低く且つ均一な金属ナノワイヤー層が基材の一部に形成されており、外観も良好である。
なお、前記基材及び金属ナノワイヤー層、アンカー層、及びオーバーコート層は、電極の製造方法の説明で既述した通りである。
【0064】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、少なくとも、本発明の電極を備え、必要に応じて、その他の部材を有する。本発明のタッチパネルは、本発明の電極を備えるため、タッチ部位の場所による検出精度の差が十分に小さく、また、使用による消費電力量を、従来よりも低減することができる。
なお、
図5は、本発明の一実施形態に係るタッチパネルの模式図である。
図5において、タッチパネル20は、本発明の電極を有する画像表示部材21と、画像表示部材21上に形成された光透過性硬化樹脂層22と、光透過性硬化樹脂層22上に形成された光透過性カバー部材24と、光透過性硬化樹脂層22と光透過性カバー部材24との間に介装された遮光層23とを備える。
【0065】
(有機EL照明素子)
本発明の有機EL照明素子は、少なくとも、本発明の電極を備え、必要に応じて、その他の部材を有する。本発明の有機EL照明素子は、本発明の電極を備えるため、輝度ムラ、発光ムラや発熱の発生が十分に抑制されている。ここで、本発明の有機EL照明素子は、金属ナノワイヤー層の上に、上述した導電性高分子層が形成されていることが好ましい。
なお、
図6は、本発明の一実施形態に係る有機EL照明素子の模式図である。
図6において、本発明の有機EL照明素子30は、ガラス等からなる基材31と、この基材31の表面に成膜された陽極32、陽極32の表面に成膜された有機発光層33と、有機発光層33の表面に成膜された陰極34と、これらの表面を封止するガラス製の封止材35と、封止材35の内側面に形成された乾燥剤膜36と、基材31と封止材35の周囲とを接着する接着剤37とを備える。この有機EL照明素子30においては、基材31及び陽極32の組み合わせが、本発明の電極に相当する。
【実施例】
【0066】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0067】
(比較例1)
<金属ナノワイヤー分散液の調製>
下記成分を混合し、常法に従って分散させて、金属ナノワイヤー分散液としての銀ナノワイヤーインクを調製した。
(1)金属ナノワイヤー:銀ナノワイヤー(Blue Nano社製、SLV−NW−35、平均短軸径15nm(メーカー値)、平均長軸長35μm(メーカー値)):配合量0.20質量部
(2)透明樹脂材料(バインダー):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(アルドリッチ株式会社製、2%水溶液の20℃における粘度2600〜5600cP(文献値)):配合量0.25質量部
(3)増粘剤:A−7185(東亞合成株式会社製):配合量0.15質量部
(4)溶剤:エチルカルビト―ル:配合量99.40質量部
【0068】
<金属ナノワイヤー分散液の粘度の測定>
粘度計(東機産業株式会社製、TVB10)を用い、調製した金属ナノワイヤー分散液の粘度を測定したところ、150mPa・s(150cP)であった。
【0069】
<金属ナノワイヤー層の形成>
調製した金属ナノワイヤー分散液を、
図1に示すようなフレキソ印刷装置を用いて、フレキソ印刷法により、透明基材としてのPENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:「Q65HA」、厚み125um)の一部の上に塗布し、金属ナノワイヤー分散膜を得た。そして、塗布直後の金属ナノワイヤー分散膜の厚み(金属ナノワイヤー層のwet膜厚)(μm)を、反射型レーザー変位計(株式会社キーエンス製、「FU−67TZ」)を用いて測定した。
その後、得られた金属ナノワイヤー分散膜を、クリーンオーブンにて150℃/10分間で乾燥して金属ナノワイヤー層(透明導電膜)を形成し、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極を製造した。
ここで、フレキソ印刷装置による塗布の条件として、アニロックスロールの線数を180線/インチとし、印刷速度を15m/minとし、フレキソ樹脂版の押し込み量を10μmとした。
また、フレキソ印刷装置に装着したフレキソ樹脂版は、ショアA硬度が68である板状感光性樹脂(旭化成株式会社製、「AWP(登録商標)−DEF」)を用いて作製した。なお、フレキソ樹脂版としては、塗布領域が平板状であるものを用いた(即ち、塗布領域には、金属ナノワイヤー分散液を収容するための凹部を設けなかった)。
【0070】
<金属ナノワイヤー層の抵抗値の測定>
金属ナノワイヤー層の表面に、手動式非破壊抵抗測定器(ナプソン株式会社製、「EC−80P」)の測定プローブを接触させて、任意の方向及び当該任意の方向に垂直な方向に20mm毎に抵抗値を測定した。そして、20点の測定値の平均値を求め、対象とする金属ナノワイヤー層の抵抗値(Ω/sq)とした。結果を表1に示す。
【0071】
<金属ナノワイヤー層の抵抗分布の評価>
前記金属ナノワイヤー層の抵抗値の測定で測定した全ての測定値を用いて、その標準偏差σを、抵抗分布(Ω/sq)として算出した。そして、算出した抵抗分布を、以下の4段階で評価した。結果を表1に示す。
◎:5Ω/sq未満
○:5Ω/sq以上、10Ω/sq未満
△:10Ω/sq以上、20Ω/sq未満
×:20Ω/sq以上
【0072】
<金属ナノワイヤー層の外観の評価>
表面検査ランプ(フナテック株式会社製、「FY−100R」)を用い、金属ナノワイヤー層の外観を、以下の3段階で評価した。結果を表1に示す。
○:塗布に起因した欠陥(スジ等の外観不良)なし
△:塗布に起因した欠陥(スジ等の外観不良)あり
×:塗布できていない(基材の下地が見えている)
【0073】
<導電性高分子インクの調製>
一方で、下記成分を混合し、常法に従って分散させて、導電性高分子インクを調製した。
(1)透明導電性ポリマー:Heraeus社製、「Clevious(登録商標) PH750」:配合量80質量部
(2)溶剤1:エチレングリコールモノブチルエーテル:配合量10質量部
(3)溶剤2:ジメチルスルホキシド:配合量10質量部
【0074】
<有機EL照明素子の製造及び発光ムラの評価>
調製した導電性高分子インクを、上述の電極の金属ナノワイヤー層の上に、スピンコート法により塗布した。なお、塗布厚さは50nmとした。その後、クリーンオーブンにて150℃/10分間で焼成(乾燥)し、金属ナノワイヤー層の上に導電性高分子層が形成された電極を得た。
得られた電極を用い、常法に従って有機EL照明素子を製造した。そして、KEITHLEY社製のソースメジャーユニット2400型を用い、製造した有機EL照明素子を発光させた。200cd/m
2の輝度で発光させた有機EL照明素子について、点灯時の発光面全体の発光ムラを、目視にて観察し、以下の3段階で評価した。結果を表1に示す。
○:発光面全体の70%以上が均一に発光している
△:発光面全体の50%以上70%未満が均一に発光している
×:発光面全体の50%未満しか発光していない
【0075】
(比較例2)
比較例1において、フレキソ印刷装置に装着したフレキソ樹脂版の塗布領域を、平板状の塗布領域とする代わりに、金属ナノワイヤー分散液を収容するための複数の凹部を格子形状に形成させた塗布領域であって、格子形状の解像度を100線/インチ、格子形状における隣接する凹部の間隔(L)を30μm、凹部の一辺の長さ(S)を249μmとして凹部占有面積率を80%とし、凹部のセル容積が51cm
3/m
2であり、凹部の深さが188μmである塗布領域としたこと以外は、比較例1と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
なお、上述の塗布領域を有するフレキソ樹脂版は、(1)板状感光性樹脂の表面をブラックマスク層で被覆する、(2)レーザーにより、ブラックマスク層に格子状のパターンを描画し、樹脂に露出部を形成する、(3)紫外線照射により、ブラックマスク層の上から露光を行う、(4)ブラックマスク層を樹脂表面から除去し、樹脂の非露光部(未硬化部)をブラシで洗浄する、(5)乾燥させる、(6)紫外線照射により後露光を行う、ことにより作製した。
凹部のセル容積及び深さは、共焦点レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、「VK−8500」)を用いて測定した。
【0076】
(比較例3)
比較例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を100線/インチから90線/インチに変え、凹部の一辺の長さ(S)を249μmから274μmに変えて、凹部占有面積率を81%とし、また、フレキソ樹脂版の作製の際に紫外線照射の時間を短くしたこと以外は、比較例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
なお、比較例3では、フレキソ樹脂版の作製の際に紫外線時間を比較例2よりも短くしたため、凹部のセル容積及び凹部の深さの値が比較例2よりも小さくなっていることが分かる。
【0077】
(実施例1)
比較例3における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を90線/インチから100線/インチに変え、凹部の一辺の長さ(S)を274μmから249μmに変えて、凹部占有面積率を80%としたこと以外は、比較例3と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
なお、実施例1では、格子形状の解像度を比較例3よりも大きくし、凹部の一辺の長さ(S)を比較例3よりも小さくしたため、凹部の深さの値が比較例3よりも小さくなっていることが分かる。
【0078】
(実施例2)
実施例1における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を100線/インチから120線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を30μmから25μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を249μmから212μmに変えて、凹部占有面積率を80%としたこと以外は、実施例1と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
なお、実施例2では、格子形状の解像度を実施例1よりも大きくし、凹部の一辺の長さ(S)を実施例1よりも小さくしたため、凹部のセル容積及び凹部の深さの値が実施例1よりも小さくなっていることが分かる。
【0079】
(実施例3)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから140線/インチに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから181μmに変えて、凹部占有面積率を77%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから160線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから20μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから159μmに変えて、凹部占有面積率を79%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから180線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから15μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから146μmに変えて、凹部占有面積率を82%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから200線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから15μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから123μmに変えて、凹部占有面積率を79%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから220線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから15μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから115μmに変えて、凹部占有面積率を78%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0084】
(比較例4)
実施例2における塗布領域の形成において、格子形状の解像度を120線/インチから240線/インチに変え、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから15μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから106μmに変えて、凹部占有面積率を77%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0085】
(比較例5)
実施例7において、フレキソ樹脂版の作製の際に紫外線照射の時間を短くしたこと以外は、実施例7と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表1に示す。
【0086】
(比較例6)
実施例2における塗布領域の形成において、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから52μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから185μmに変えて、凹部占有面積率を61%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
なお、比較例6では、凹部の一辺の長さ及び凹部占有面積率を実施例2よりも小さくしたため、凹部のセル容積及び凹部の深さの値が実施例2よりも小さくなっていることが分かる。
【0087】
(実施例8)
実施例2における塗布領域の形成において、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから46μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから191μmに変えて、凹部占有面積率を65%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0088】
(実施例9)
実施例2における塗布領域の形成において、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから36μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから201μmに変えて、凹部占有面積率を72%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0089】
(実施例10)
実施例2における塗布領域の形成において、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから19μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから218μmに変えて、凹部占有面積率を85%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0090】
(比較例7)
実施例2における塗布領域の形成において、隣接する凹部の間隔(L)を25μmから11μmに変え、凹部の一辺の長さ(S)を212μmから226μmに変えて、凹部占有面積率を91%としたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0091】
(比較例8)
実施例2において、フレキソ樹脂版の原材料として、ショアA硬度が68である板状感光性樹脂に代えて、ショアA硬度が40である樹脂(材料メーカーによる試作品)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0092】
(実施例11)
実施例2において、フレキソ樹脂版の原材料として、ショアA硬度が68である板状感光性樹脂に代えて、ショアA硬度が51である感光性樹脂(旭化成株式会社製、「APR(登録商標) NS60」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0093】
(実施例12)
実施例2において、フレキソ樹脂版の原材料として、ショアA硬度が68である板状感光性樹脂に代えて、ショアA硬度が76である樹脂(東洋紡株式会社製、「コスモライト(登録商標) QH」、測定厚み:1.7mm)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0094】
(比較例9)
実施例2において、フレキソ樹脂版の原材料として、ショアA硬度が68である板状感光性樹脂に代えて、ショアA硬度が98である樹脂(材料メーカーによる試作品)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表2に示す。
【0095】
(比較例10、実施例13〜15、比較例11)
実施例2において、フレキソ樹脂版の作製の際に紫外線照射の時間を適宜変更したこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
【0096】
(実施例16)
実施例2において、透明樹脂材料(バインダー)の配合量を0.25質量部から0.10質量部に変え、且つ、金属ナノワイヤー分散液における増粘剤の配合量を0.15質量部から0.05質量部に変え、金属ナノワイヤー分散液の粘度を150mPa・sから41mPa・sに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
【0097】
(実施例17)
実施例2において、透明樹脂材料(バインダー)の配合量を0.25質量部から0.50質量部に変え、且つ、金属ナノワイヤー分散液における増粘剤の配合量を0.15質量部から0.20質量部に変え、金属ナノワイヤー分散液の粘度を150mPa・sから295mPa・sに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
【0098】
(実施例18)
実施例2において、金属ナノワイヤー分散液を、基材の一部の上に塗布する代わりに、下記方法により、基材の上にアンカー層を形成し、当該アンカー層の一部の上に塗布したこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
<アンカー層の形成>
基材としてのPENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:「Q65HA」、厚み125um)の上に、パーヒドロポリシラザン(AZエレクトロニック マテリアルズ社製、「NN120A)を、スピンコート法(1,000rpm/20秒間)にて塗布した後に、100℃/30秒間焼成して、パーヒドロポリシラザン膜(アンカー層)を形成した。パーヒドロポリシラザンの反応率(アンカー層反応率)が60%のときに、実施例2と同様にして調製した金属ナノワイヤー分散液を、実施例2と同様のフレキソ樹脂版を用いたフレキソ印刷法によりアンカー層の上に塗布し、次いで120℃で2分間焼成して、アンカー層上に金属ナノワイヤー層を形成した。
<パーヒドロポリシラザンの反応率>
パーヒドロポリシラザンの反応率を、測定対象となるサンプルの赤外分光法(IR)スペクトルを用いて算出した。具体的には、反応前のアンカー層におけるパーヒドロポリシラザンのSi−N基の吸収ピークの高さを100%とした場合の、反応後のアンカー層におけるパーヒドロポリシラザンのSi−N基の吸収ピークの高さの割合(%)を求め、パーヒドロポリシラザンの反応率とした。
【0099】
(実施例19)
実施例18において、パーヒドロポリシラザンの反応率が60%のときに金属ナノワイヤー分散液を塗布する代わりに、パーヒドロポリシラザンの反応率が85%のときに金属ナノワイヤー分散液を塗布したこと以外は、実施例18と同様にして、アンカー層上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
【0100】
(実施例20)
実施例18において、パーヒドロポリシラザンの反応率が60%のときに金属ナノワイヤー分散液を塗布する代わりに、パーヒドロポリシラザンの反応率が95%のときに金属ナノワイヤー分散液を塗布したこと以外は、実施例18と同様にして、アンカー層上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
【0101】
(比較例12)
実施例2において、フレキソ印刷装置による塗布の条件として、フレキソ樹脂版の押し込み量を10μmから30μmに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、基材上に金属ナノワイヤー層が形成された電極、及び有機EL照明素子を製造し、同様の測定及び評価を行った。諸条件及び結果を表3に示す。
なお、比較例12では、フレキソ樹脂版の押し出し量が大きい(基材へのフレキソ樹脂版の押圧が高い)ため、フレキソ樹脂版の非凹部と接触する基材の表面には、金属ナノワイヤー分散液が塗布されなかった。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
表1〜3から、実施例1〜20のように、基材又は基材上に形成されたアンカー層の一部の上に対し、所定のフレキソ樹脂版を用いたフレキソ印刷法により金属ナノワイヤー分散液を塗布することにより、高い膜厚を有する金属ナノワイヤー分散膜が得られ、また、この金属ナノワイヤー分散膜を乾燥して形成される金属ナノワイヤー層は、抵抗が低い上、抵抗分布が小さく、更には外観が良好であることが分かる。また、上述の金属ナノワイヤー層が形成された電極を用いて製造される有機EL照明素子は、発光ムラの発生が十分に抑えられていることが分かる。