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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-224879(P2016-224879A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】身長予測方法および体重予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20120101AFI20161205BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20161205BHJP
【FI】
   G06Q50/22 130
   G06F19/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-113559(P2015-113559)
(22)【出願日】2015年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】511242753
【氏名又は名称】からだ環境総研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 英俊
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049DD01
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】児童のそれぞれの特性や外部環境に合わせつつ、問診のみの負担で将来的な身長を予測する身長予測方法を提供する。
【解決手段】本発明の身長予測方法は、所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長を値Aとし、X歳までの日数である値Bで値Aを除算した数値を、値Cとし、対象者の現在の身長を、値Dとし、対象者の現在からX歳までの日数を、値Eとし、対象者に関する環境指数を値Fとするとき、「X歳における対象者の予測身長 = D+(C×D)×F」によって、対象者のX歳における身長を予測する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長を値Aとし、
前記X歳までの日数である値Bで前記値Aを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の身長を、値Dとし、
前記対象者の現在から前記X歳までの日数を、値Eとし、
前記対象者に関する環境指数を値Fとするとき、

X歳における対象者の予測身長 = D+(C×D)×F (算出式)

によって、前記対象者の前記X歳における身長を予測する身長予測方法。
【請求項2】
前記X歳は、17歳である、請求項1記載の身長予測方法。
【請求項3】
前記対象者は、児童である、請求項1または2記載の身長予測方法。
【請求項4】
前記所定の平均身長曲線は、文部科学省保健指導要領によって公表されている平均身長曲線である、請求項1から3のいずれか記載の身長予測方法。
【請求項5】
前記環境指数は、前記対象者における問診結果に基づいて算出される、請求項1から4のいずれか記載の身長予測方法。
【請求項6】
前記問診は、前記対象者の食事態様、睡眠態様および運動態様の少なくとも一つを含む、請求項5記載の身長予測方法。
【請求項7】
前記食事態様は、食事回数、食事時間、食事内容および食間時間の少なくとも一つを含む、請求項6記載の身長予測方法。
【請求項8】
前記睡眠態様は、睡眠時間、睡眠開始時刻、睡眠終了時刻および睡眠の深さ度合いの少なくとも一つを含む、請求項6記載の身長予測方法。
【請求項9】
前記運動態様は、運動時間、運動回数、運動種類、運動量および一定期間における運動日数の少なくとも一つを含む、請求項6記載の身長予測方法。
【請求項10】
前記問診項目は、前記対象者の身内態様を更に含む、請求項6記載の身長予測方法。
【請求項11】
前記環境指数は、前記問診結果のそれぞれの項目の合計点数により算出される、請求項6から10のいずれか記載の身長予測方法。
【請求項12】
所定の平均体重曲線におけるX歳での性別平均体重を値Hとし、
前記X歳までの日数である値Bで前記値Hを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の体重を、値Gとし、
前記対象者の現在から前記X歳までの日数を、値Eとし、
前記対象者に関する環境指数を値Fとするとき、

X歳における対象者の予測体重 = G+(C×G)×F (算出式)

によって、前記対象者の前記X歳における体重を予測する体重予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、児童の将来的な身長を高い精度で予測する身長予測方法および体重予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未就学から小学生くらいまでの児童にとっては、自分が将来どの程度の身長になるかは、気になることである。また、これらの児童の親にとっても、自身の子供が将来どの程度の身長になるかは気になることである。児童が将来的にどの程度の身長に到達するかは、本人にとっては自分の健康面、美容面といった視点に加えて、将来の進路にも係ってくるからである。
【0003】
例えば、スポーツ選手を目指している児童にとっては、自身がどの程度の身長に到達できるかは気になることである。身長が伸びるのであれば、バスケットボールやバレーボールの選手を目指すこともできる。一方で、身長が伸びないのであれば、身長に左右されにくいスポーツを選ぶことを考える必要がある。スポーツは、長い期間の練習やトレーニングを必要とし、身長が伸びる/伸びないことが分かってから種目を選択するよりは、早期に身長も考慮して種目を選択することが大切である。
【0004】
同様に、スポーツ選手を目指す児童の親や周囲も、この児童の将来的に到達できる身長を把握できることで、その育成方針を検討することができる。例えば、スポーツチームのコーチや監督は、才能ある児童の将来の身長予測が分かれば、どの種目、どのポジションで育成するのが最適化を早期に検討できるメリットもある。
【0005】
もちろん、スポーツ選手を目指すだけでなく、身長を活かすことができる職業(モデル、芸能人など)を目指す児童やその親などにとっては、将来的な身長の予測ができることが大切である。このように、将来の目標や職業の夢において、将来の身長がどのようになるかは、本人にとっても周囲にとっても重要である。
【0006】
あるいは、職業やキャリアといった将来性だけでなく、一般的な健康や身体能力を考慮して、児童の将来の身長予測は、本人や周囲にとっても気になることである。身長が非常に高くなると予測されるのであれば、それに合わせた食生活や生活習慣を心がける必要がある。あるいは、身長があまり伸びないと予測されるのであれば、やはりこれに合わせた食生活や生活習慣を心がけることもできる。あるいは、身長が余り伸びないと予測される場合には、身長を伸ばすための食生活、生活習慣、運動習慣などの対策を早目に行うこともできる。
【0007】
将来的に到達すると考えられる身長は、当該児童の将来的な生活、仕事、キャリア、健康、人生などを考慮する際に、重要なファクターとなっている。その身長に到達する本人にとっても家族や周囲にとっても重要である。
【0008】
以上のように、児童の将来的な身長予測ができることは、本人の仕事やキャリアといった夢にとっても、健康な生活の実現のためにも、必要となる。
【0009】
このような状況で、厚生労働省において、学校保健統計調査の報告がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
厚生労働省の学校保健統計調査は、様々な対象者の実際の身長や体重を測定して、それらの平均値を算出している。サンプル対象となる対象者の数や属性をさまざまにすることで、身長や体重の平均値を、より高い精度で求めている。この平均値を求める際に、対象者の年齢ごとにその身長や体重を測定しており、年齢別の身長や体重の平均値を算出している。
【0011】
これらの結果、厚生労働省の学校保健統計調査は、多くのサンプルである対象者の平均値によって、年齢ごとの平均身長や平均体重を表している。図4は、平成24年度に公表された厚生労働省の学校保健統計調査での平均身長の年次推移である。このような平均身長の年次推移や、ある年での年齢別の平均身長の算出結果から、児童の将来的な身長を予測することもできなくはない。
【0012】
例えば、図4においては、8歳、11歳、14歳、17歳のそれぞれでの平均身長が示されている。このため、ある児童は、8歳の時に、11歳の時に、14歳の時に、17歳の時に、それぞれどの程度の身長になるかを想定することができる。
【0013】
しかしながら、図4にある平均身長は、多くのサンプルである対象者の実際の身長の平均値であって、個々の児童の将来的な実際の身長との因果関係は低い。例えば、17歳の男子の平均身長が170.7cmであるからと言って、6歳のある男児が、17歳の時に、170.7cmになるとは限らない。もちろん、これに近い身長でもない可能性も高い。
【0014】
すなわち、図4に示されるような平均身長のデータのみでは、個々の、児童の将来的に到達する身長を予測することは困難であった。個々の児童の体質、特性、環境などが異なることを想定せずに、単純な平均身長から、個々の児童の将来的な身長を予測することは困難だからである。
【0015】
また、児童の細胞を検査するなどの医学的な診療や検査によって将来的な身長を予測することも考えられている。しかしながら、これらの医学的検査は、非常に高額であったり、対象となる児童に苦痛などを伴ったりする。もちろん、すべての児童がこの医学的検査を受けることができるわけではない。医学的検査であれば、個々の児童の体質や遺伝などに基づいた個別の身長予測ができる可能性がある。しかしながら、児童の育っていく環境などの外部条件を考慮したものではない問題がある。加えて、上述の通り費用や容易性などにおける欠点もある。
【0016】
以上のように、従来技術では、児童のそれぞれに合わせつつ、コストや不快感を抑えた将来の身長を予測することができなかった。
【0017】
また、身長だけでなく、将来の体重を予測することも大切な場合があるが、やはり従来技術では、児童の外部環境を考慮しつつ、将来的な体重を予測することができなかった。
【0018】
本発明は、これらの課題に鑑み、児童のそれぞれの特性や外部環境に合わせつつ、問診のみの負担で将来的な身長を予測する身長予測方法および体重予測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題に鑑み、本発明の身長予測方法は、
所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長を値Aとし、
X歳までの日数である値Bで値Aを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の身長を、値Dとし、
対象者の現在からX歳までの日数を、値Eとし、
対象者に関する環境指数を値Fとするとき、
X歳における対象者の予測身長 = D+(C×D)×F
によって、対象者のX歳における身長を予測する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の身長予測方法は、厚生労働省から提供されている身長予測曲線に、所定の環境パラメータを追加することで、外部環境をも考慮したより正確性の高い将来的な身長を予測できる。
【0021】
また、本発明の身長予測方法は、個々の児童の情報を算出用のパラメータとして使用しつつ、多数のサンプルから得られている厚生労働省の身長予測曲線も使用するので、個々の児童のそれぞれに対応した正確性の高い将来的な身長を予測できる。
【0022】
また、問診等の情報入力によって身長を予測するので、対象者の身体的、精神的負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態における文部科学省が発表している男子の横断的標準身長・標準体重曲線である。
図2】本発明の実施の形態における文部科学省が発表している女子の横断的標準身長・標準体重曲線である。
図3】本発明の実施の形態における身長予測方法の作業フローチャートである。
図4】平成24年度に公表された厚生労働省の学校保健統計調査での平均身長の年次推移である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の発明に係る身長予測方法は、所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長を値Aとし、
X歳までの日数である値Bで値Aを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の身長を、値Dとし、
対象者の現在からX歳までの日数を、値Eとし、
対象者に関する環境指数を値Fとするとき、
X歳における対象者の予測身長 = D+(C×D)×F
によって、対象者のX歳における身長を予測する。
【0025】
この構成により、身長予測方法は、身長の成長に関連のある外部環境の影響を考慮することができる。
【0026】
本発明の第2の発明に係る身長予測方法では、第1の発明に加えて、X歳は、17歳である。
【0027】
この構成により、一般的に成長期が完了する17歳での予測身長を把握することができる。
【0028】
本発明の第3の発明に係る身長予測方法では、第1または第2の発明に加えて、対象者は、児童である。
【0029】
この構成により、児童が将来的な自身の身長を予測することができ、本人にとっても両親などにとっても、好適である。
【0030】
本発明の第4の発明に係る身長予測方法では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、所定の平均身長曲線は、文部科学省保健指導要領によって公表されている平均身長曲線である。
【0031】
この構成により、身長の予測において、サンプル抽出による平均化されたものを参照できる。結果として、より精度の高い身長予測が可能となる。
【0032】
本発明の第5の発明に係る身長予測方法では、第1から第4の発明に加えて、環境指数は、対象者における問診結果に基づいて算出される。
【0033】
この構成により、対象者からの問診結果によって環境指数を算出できる。このため、算出される環境指数は、対象者が実際におかれている状況を反映したものとなり、対象者の外部環境を考慮した身長が予測できる。
【0034】
本発明の第6の発明に係る身長予測方法では、第5の発明に加えて、問診は、対象者の食事態様、睡眠態様および運動態様の少なくとも一つを含む。
【0035】
この構成により、身長の成長に影響を及ぼすと考えられる生活態様が、環境指数の算出に考慮される。
【0036】
本発明の第7の発明に係る身長予測方法では、第6の発明に加えて、食事態様は、食事回数、食事時間、食事内容および食間時間の少なくとも一つを含む。
【0037】
この構成により、身長の成長に関与する食事の状態を細かに反映して、環境指数が算出される。
【0038】
本発明の第8の発明に係る身長予測方法では、第6の発明に加えて、睡眠態様は、睡眠時間、睡眠開始時刻、睡眠終了時刻および睡眠の深さ度合いの少なくとも一つを含む。
【0039】
この構成により、身長の成長に関与する睡眠の状態を細かに反映して、環境指数が算出される。
【0040】
本発明の第9の発明に係る身長予測方法では、第6の発明に加えて、運動態様は、運動時間、運動回数、運動種類、運動量および一定期間における運動日数の少なくとも一つを含む。
【0041】
この構成により、身長の成長に関与する運動の状態を細かに反映して、環境指数が算出される。結果として算出される予測身長は、対象者の生活習慣や環境をより高く反映したものとなる。
【0042】
本発明の第10の発明に係る身長予測方法では、第6の発明に加えて、問診項目は、対象者の身内態様を更に含む。
【0043】
この構成により、対象者の身内の状態を加味して、遺伝や生活習慣の遺伝を考慮した、予測身長の算出が可能となる。
【0044】
本発明の第11の発明に係る身長予測方法では、第6から第10のいずれかの発明に加えて、環境指数は、問診結果のそれぞれの項目の合計点数により算出される。
【0045】
この構成により、環境指数は、問診結果のそれぞれを反映した状態で得られる。また、身長成長によい結果をもたらす場合に、環境指数の値が増加することで、予測身長の算出にも好適である。
【0046】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0047】
(実施の形態1)
【0048】
(発明者による分析)
図1は、本発明の実施の形態における文部科学省が発表している男子の横断的標準身長・標準体重曲線である。図2は、本発明の実施の形態における厚生労働省乳幼児身体発育調査報告書および文部科学省学校保健統計調査報告書より作成されて発表されている女子の横断的標準身長・標準体重曲線である。
【0049】
図1図2は、従来技術で説明した厚生労働省が統計を取っている平均身長などに基づいて文部科学省が公表しているものである。図1図2の横断的標準身長曲線に基づいて、所定の手順によって、ある児童の現在の身長から将来の身長を予測することが考えられる。
【0050】
図1図2の標準身長曲線は、17歳時点までの平均身長を示しており、ある児童(対象者)の現在の身長から17歳時点での身長を予測することができる。ここで、図1図2の標準身長曲線での17歳時点での平均身長の値を抽出する。この抽出された17歳時点での平均身長の値を、値「A」とする。
【0051】
ここで、図1図2の標準身長曲線として描かれている曲線の内、平均との符号が付与されている曲線が、平均身長である。+1SDなどの符号が付与されている曲線は、平均からの標準偏差「SD」となる身長の場合の曲線である。
【0052】
17歳時点での身長値である値「A」を、1日当たりの身長増加データに変換する。17年であるので、6209日で近似され、値「A」を、この6209日で除算することで、1日当たりの身長増加データである値「C」が得られる。
【0053】
対象者の対象者、性別、現在の身長の値「D」を抽出する。
【0054】
対象者の現在の日から17歳の誕生日までの日数である値「E」を算出する。
【0055】
以上の算出や抽出された各値を用いて、次の式で、17歳時点での予測身長を算出することが考えられる。

D+(C×D) = 予測身長 (式1)
【0056】
この式1に基づく計算によって、ある年齢である対象者の17歳時点での身長を予測することができると考えられる。例えば、対象者が10歳の男子であれば、17歳までの日数である値「E」、現在の身長の値「D」を、他の値と合せて式1に入力する。この入力によってこの10歳の男子の17歳時点での身長が予測される。
【0057】
しかしながら、この文部科学省が公表している標準身長曲線のみを前提とした式1による身長の予測では、当該対象者が育つ環境などの外部要因が考慮されない。このため、発明者は、この標準身長曲線のみを前提とした式1による身長の予測に更に外部要因を加えることで、正確性の高い身長予測ができると、発明者は分析した。
【0058】
(全体概要)
実施の形態における身長予測方法の全体概要を説明する。
【0059】
上記分析において説明した文科省で使用されている式1においては、現在の身長の値の値Dと、何人かのサンプルから得られた平均身長による1日当たりの身長の伸び量の値Cを加えることで、ある対象者の17歳時点での身長を予測している。
【0060】
しかしながら、対象者が現在の年齢における身長の値Dは、その対象者のもって生まれた資質だけに依存しているのではなく、現在の年齢までの生活環境や運動環境などの外部環境にも依存している。
【0061】
すなわち、そもそもとして、対象者の将来的な身長を予測する際のパラメータの一つである現在の身長の値Dは、対象者の生体的、生理的資質だけに依存しているのではなく、現在までの外部環境にも依存している。この外部環境への依存によって、兄弟や近親者などの生体的、生理的資質が近似している対象者であっても、現在の身長の値Dが異なることも多い。
【0062】
この現在の身長の値Dを基準値として将来の身長を予測する際には、当然に将来においても、外部環境への依存を考慮しなければならない。
【0063】
実施の形態における身長予測方法は、次の通りの算出を行う。
所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長を値Aとし、
X歳までの日数である値Bで値Aを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の身長を、値Dとし、
対象者の現在からX歳までの日数を、値Eとし、
対象者に関する環境指数を値Fとするとき、
X歳における対象者の予測身長 = D+(C×D)×F
【0064】
この算出パラメータと算出方式によって、実施の形態における身長予測方法は、対象者の将来のX歳での身長を予測する。
【0065】
ここで、所定の平均身長曲線は、文部科学省保健指導要領によって公表されている平均身長曲線が用いられれば良い。
【0066】
文科省などによって提唱されている予測方法と異なり、環境指数の値Fを導入することが、上述のように外部環境を考慮していない問題を解決している。
【0067】
ここで、X歳時点での予測身長を算出するにおいて、環境指数の値Fは、(C+D)全体に乗じられている。すなわち、X歳までの日数でX歳での平均身長の値Aを除算した値C(実際のサンプル検査によって算出されているX歳での平均身長)と現在の身長の値Dとの和に、環境指数の値Fが乗じられている。
【0068】
このように、環境指数の値Fは、現在の年齢から将来のX歳までに伸びると予測される追加的身長に乗じられる。この結果、外部環境の影響を予測身長の算出に導入する実施の形態における身長予測方法は、現在までの外部環境と今後の外部環境の両方を考慮している。
【0069】
環境指数の値Fを算出式に導入している身長予測方法は、実サンプルの平均身長から機械的に算出される方法と異なり、身長の伸びに大きな影響を与える外部環境の影響を考慮して、X歳時点での身長を予測できる。
【0070】
ここで、身長予測方法は、将来的なX歳での身長を予測する。将来的なX歳であるので、現在の年齢以上であれば、何歳の時点での予測も可能である。ただ、一般的には、17歳時点での身長を予測することが求められることが多い。一般的に、成長の最大点となる年齢であり、文科省などの平均身長などのデータでも、17歳でのデータが使われることが多い。このため、実施の形態における身長予測方法も、17歳の時点での予測身長を予測することに使用されればよい。
【0071】
また、対象者はX歳時点より前の年齢であればよいが、成長期を経てどの程度の身長になるかを予測したい児童が対象者であることも好適である。すなわち、自身のキャリアや将来的な職業などの参考にするために、成長期前の児童が、成長期を経た17歳程度の身長を予測したいと考えられることが多い。
【0072】
このような欲求に対応するために、実施の形態における身長予測方法は、児童の年齢をスタートとして、17歳程度の将来的な身長を予測できる。
【0073】
(現在の身長)
身長予測方法は、現在の身長の値Dを算出パラメータとして用いる。この現在の身長の値Dは、身長予測方法によってX歳時点での身長を予測したい対象者の現在の身長の値そのものである。この現在の身長の値Dは、対象者の現在の身長を実測で計って得られればよい。
【0074】
身長予測方法を使用する際には、まず対象者の身長を実測し、この実測値を値Dとして使用する。
【0075】
(平均身長)
身長予測方法は、所定の平均身長曲線におけるX歳での性別平均身長の値Aを算出パラメータとして用いる。例えば、図1図2で示したように、所定の平均身長曲線には、文部科学省保健指導要領によって公開されている平均身長曲線が使用されればよい。
【0076】
図1図2のグラフの読み取りによって、X歳での平均身長の値Aが分かる。身長予測方法を使用する際には、この図1図2のグラフのような平均身長曲線におけるX歳での平均身長の値Aを算出式に用いる。
【0077】
また、身長予測方法で予測したい身長が、15歳である場合には、平均身長曲線の15歳に対応する平均身長を読み取って値Aとし、17歳である場合には、平均身長曲線の17歳に対応する平均身長を読み取って値Aとする。
【0078】
(一日当たりの伸び率)
身長予測方法は、現在からX歳までの日数である値BでX歳での平均身長Aを除算した値Cを用いる。値Cは、今後からX歳までの一日当たりの身長の伸び率を示している。
【0079】
この伸び率は、平均身長曲線での平均身長から算出される。この伸び率が現在の身長に乗算されることで、現在からX歳までの期間でのトータルとしての身長の伸び量が算出できる。
【0080】
身長予測方法は、この値Cによって、現在からX歳までのトータルとしての身長の伸び量を算出して、現在の身長の値Dに加えることで、X歳での身長を予測する。
【0081】
(環境指数)
身長予測方法は、一日当たりの伸び率Cを現在の身長の値Dに乗算した値を、現在の身長に加算する。このとき、値Cと値Dとの乗算結果に環境指数の値Fを乗じる。
【0082】
環境指数の値Fは、対象者の生活環境、生活態度、運動環境、食生活などの様々な環境を元に得られるものであり、発明者が見出したものである。対象者に対するヒアリングやアンケートによって環境指数に対応する項目の回答が得られる。この回答一覧を数値化したものが環境指数の値Fである。
【0083】
すなわち、環境指数の値Fは、対象者における問診結果に基づいて算出される。
【0084】
この環境指数を決定する問診は、対象者の食事態様、睡眠態様および運動態様の少なくとも一つを含む。食事態様、睡眠態様、運動態様は、対象者の身長との体格形成に大きな影響を与えると考えられるからである。
【0085】
身長予測方法を使用する場合には、対象者にこれら食事態様、睡眠態様および運動態様の少なくとも一つのジャンルに基づく項目が、ヒアリングやアンケートによって問診される。この問診結果が所定の方式で数値化されると、環境指数の値Fが求まる。この値Fが算出式に導入されて、環境を考慮した身長を予測することができる。
【0086】
以上のように、実施の形態における身長予測方法は、外部環境をも考慮して、将来のX歳における身長を予測することができる。この予測結果は、従来のものよりも高い精度である。
【0087】
(問診内容)
次に、環境指数の値Fを算出するための問診内容について説明する。
【0088】
問診は、対象者の食事態様、睡眠態様および運動態様の少なくとも一つを含む。また、これら以外に、身内の身体的特徴に関する身内態様を更に含んでもよい。
【0089】
食事態様は、対象者の食事の特徴を問診により確認し、対象者の成長に密接に関連する外部環境を測るものである。食事の量が多ければ当然に身長や体重が大きくなりやすい成長方向への影響が高まる。また、食事内容がカロリーの高いものであったり栄養価の高いものであったりする場合には、当然に身長や体重が大きくなりやすい成長方向への影響が高まる。
【0090】
一方で、食事内容の栄養が偏っている場合には、身長へのマイナスの影響を与えることもある。このため、食事内容や食事の嗜好は、身長育成にプラスに働くこともあればマイナスに働くこともある。
【0091】
あるいは、食事回数や食事時間が問診に含まれることも好適である。食事回数は通常1日3回であるが、間食の有無や夜食の有無によって、身長や体重への影響が生じるからである。成長期に応じた適度な間食は、身長や体重にプラスの影響を与える。逆に過度な間食は、身長にマイナスの影響を与えることもある。このため、食事回数が問診に含められることは、より精度の高い環境指数の算出に好適である。
【0092】
また、食事時間(いわゆる朝食や昼食を取った時刻や、食事に要する時間)も、身長や体重の育成において様々な影響を与える。ゆっくり食事をとれば、消化や栄養吸収もよく、身長の育成にはプラスになることが多い。一方で、短時間で食事を行うと、栄養吸収が偏ってしまい、身長よりも体重への寄与度が大きくなりすぎてしまうこともある。
【0093】
このように、食事態様に関する問診項目は、身長や体重への影響(プラスの影響およびマイナスの影響のいずれも)を考慮している。この考慮によって、環境指数の値Fが高い精度で算出できる。
【0094】
また、睡眠態様は、睡眠時間を問診項目として含む。睡眠時間は、成長に大きく影響するからである。特に、成長期においては、睡眠時間の多寡が成長に大きな影響を及ぼす。例えば、極端に睡眠時間が短い場合には、一般的に身長の育成にはマイナスの影響があると考えられる。また、睡眠時間が十分であっても、遅寝や寝坊などの習慣も、身長の育成には種々の影響があると考えられる。
【0095】
これらを考慮して、睡眠態様に係る問診項目としては、起床時刻、就寝時刻が含まれる。あるいは、場合によっては、睡眠の状態(寝つきがよかったか、夜中に目が覚めたか、睡眠の深さなど)を、問診項目に加えることも好適である。
【0096】
また、睡眠態様の問診項目に、睡眠をした場所(家か外出先か)や、睡眠前の状態(食事からの時間が短いか十分であるかなど)が含まれてもよい。これらも、成長における影響の一つとなりうるからである。
【0097】
運動態様は、1日あるいは1週間などの所定期間内の運動量を、その問診項目として含む。運動量は、運動時間や運動の種類などを更に細かな問診項目として含んでもよい。また、運動時間に加えて、どの程度の動作を行ったかを定性的に判断する問診項目が含まれてもよい。運動の種類としては、例えば、水泳、野球、ジョギング、体操などの種目によって回答できればそれでもよい。
【0098】
運動量などの運動態様の実施の有無は、当然に成長への影響を強く与えるからである。運動量が極めて少ない場合には、身長成長へプラスの影響が少ないと考えられる。一方で、十分な運動量がある場合には、身長成長へのプラスの影響が高いと考えられる。もちろん、この運動態様は、食事態様や睡眠態様との複合的な関係によって、身長成長への寄与度が変化する。
【0099】
運動態様は、運動時間、運動回数、運動種類、運動量および一定期間における運動日数の少なくとも一つを問診項目として含む。上述の通り、運動量や運動時間あるいは運動種類は、身長成長への高い影響を有するからである。
【0100】
また、運動量や運動時間に加えて、一定期間における運動日数も正確な環境指数算出に好適な問診項目である。同じ運動時間や運動量であっても、一度に運動が集中していたのか、複数回にわたって規則正しい間隔で運動が行われたのかで、身長への寄与度が異なるからである。
【0101】
一般的には、同じ運動量が、適度な間隔で継続されることが、身長の成長に好ましいと考えられている。このため、運動量などに加えて、一定期間での運動回数も、問診項目に加えられることも好適である。
【0102】
身内態様は、対象者の父親の生年月日や身長、あるいは対象者の母親の生年月日や身長を、その問診項目として含めばよい。対象者の身長においては、遺伝的要素が含まれることも多く、遺伝者としての両親の生年月日や身長も、環境指数の基礎として適切だからである。
【0103】
また、食事態様や運動態様などは、両親の嗜好の影響を児童は受けやすい。このため、両親そのものの環境指数の結果である身長などが、対象者の環境指数の算出の問診項目の一つとなることは、理に適っている。
【0104】
ここで、身内態様としては、両親だけでなく兄弟も加えてもよい。兄弟であれば、同じような外部環境にあり、兄弟の生年月日や身長は、環境指数の算出に適していると考えられるからである。
【0105】
また、食事態様にも関係するが、通常の食事に加えて、サプリメントや栄養補助食品の使用の有無が問診項目に加えられてもよい。
【0106】
例えば、カルシウムやマグネシウム系のサプリメントや栄養補助食品の摂取習慣は、身長の育成にプラスの影響をもたらすこともあるからである。あるいは、ビタミン関係のサプリメントや栄養補助食品も、身長の育成にプラスの影響をもたらすこともあるからである。
【0107】
このため、サプリメントや栄養補助食品の使用の有無や、摂取習慣(摂取量、摂取期間、摂取タイミングなど)を、問診項目に加えることも、精度の高い環境指数の算出に好適である。
【0108】
また、対象者が、特殊事情と考えることを問診項目に加えることも好適である。例えば、親類に非常に背の高い人や背の低い人がいる。あるいは、自身が将来につきたい職業があり、身長の希望がある場合などである。
【0109】
(点数化)
問診結果のそれぞれに点数をつけて、合計点数によって、環境指数の値Fが算出される。上記で説明した食事態様、睡眠態様および運動態様などのそれぞれが含む問診項目に点数が付与されている。問診項目に対する回答内容に応じて、それぞれの点数が変化する。この異なる点数を合計していくことで、環境指数の値Fが算出される。
【0110】
環境指数の値Fは、身長予測の算出式において乗算係数として用いられるので、身長成長にプラスの影響のある回答が点数が高くなるように考慮されていることが好ましい。例えば、食事態様であれば、栄養バランスや規則正しさが高い場合に、点数が高くなる。あるいは、運動態様であれば、運動量や運動回数が十分であるほうが、点数が高くなるように、問診項目の点数が高くなる。
【0111】
このように、身長の成長にとってプラスの影響を与える回答には高い点数が付与されるように、問診項目が作成されている。この結果、算出される環境指数の値Fは、より成長によい環境状態にある対象者の、予測身長にプラスに働く機能を発揮できる。
【0112】
なお、環境指数の値Fは、問診項目の回答による点数の合計点に基づいてもよいし、平均点に基づいてもよい。いずれを環境指数Fの基礎とするのがよいかについては、問診項目の立て方などによって定められれば良い。
【0113】
(実際の作業手順)
【0114】
図3を用いて、実際の作業手順について説明する。
【0115】
図3は、本発明の実施の形態における身長予測方法の作業フローチャートである。なお、身長予測方法を実行する際に、算出式によって予測身長を算出する場合には、コンピュータープログラムが用いられればよい。図3におけるステップの一部は、コンピュータープログラムによる自動作業であり、一部のステップは、このコンピュータープログラムに必要なパラメータを入力するための作業である。
【0116】
まず、ステップST1にて、対象者の現在身長が測定される。現在身長は、予測身長の算出式における値Dである。
【0117】
次いで、ステップST2にて、予測身長を必要とするX歳の年齢と現在の年齢の期間日数で、平均身長を除算して、一日当たりの伸び率Cを算出する。これも、対象者の現在の年齢(日付込)と、X歳の年齢と、平均身長を入力することで、コンピュータープログラムによって計算できる。
【0118】
次に、ステップST3にて、問診項目の回答をもらう。回答は、アンケート形式であったりヒアリング形式であったりしつつ、問診項目の一つ一つに対象者の回答を得る。この回答も、対象者が直接コンピュータープログラムの指示に従って入力していく方式でもよい。
【0119】
次に、ステップST4にて、環境指数の値Fが算出される。ステップST3で回答された問診項目の点数に基づいて、環境指数の値Fが算出される。この環境指数の値Fも、コンピュータープログラムによって自動計算されればよい。すなわち、ステップST1〜ST4までが、コンピュータープログラムによって表示される指示画面に従って入力され、入力に応じて、各値が順次算出されればよい。この手順によって、算出式に必要な値、C、D、Fの全てが算出される。
【0120】
最後に、ステップST5にて、算出式にすべての値であるC,D、Fが導入される。この導入によって、対象者のX歳の時点での予測身長が算出される。もちろん、この算出式もコンピュータープログラムによって実行され、予測身長が算出されればよい。
【0121】
以上の手順を経て、最終的に、対象者のX歳の時点での予測身長が算出される。この予測身長は、身長の成長に影響を与える外部環境を、環境指数として考慮しており、従来技術よりも高い精度での予測を持ったものである。この結果、将来の職業、キャリア、その他についての重要な指数である将来の身長を、早い段階で予測することができるようになる。
【0122】
(体重予測方法)
上述した身長予測方法と同様の手法で、体重予測方法は、対象者のX歳の時点での体重を予測できる。身長の場合と同じく、対象者のキャリアや将来の健康状態を想定するために、将来のX歳の時点での体重が予測できることは好適である。従来技術での将来の体重予測は、身長の場合と同じく、外部環境を考慮していないものであった。
【0123】
実施の形態における体重予測方法は、身長予測方法と同様の手法で、対象者の将来のX歳の時点での体重を予測する。
【0124】
体重予測方法は、次の通りのステップで、対象者の将来的な体重を予測する。
所定の平均体重曲線におけるX歳での性別平均体重を値Hとし、
前記X歳までの日数である値Bで前記値Hを除算した数値を、値Cとし、
対象者の現在の体重を、値Gとし、
対象者の現在から前記X歳までの日数を、値Eとし、
対象者に関する環境指数を値Fとするとき、
X歳における対象者の予測体重 = G+(C×G)×F (算出式)
【0125】
この算出式によって、体重予測方法は、対象者の将来的な体重を予測する。
【0126】
性別平均体重である値Hは、図1図2に含まれる体重曲線の平均値から読み取られる。値Cと値Eは、身長予測方法と同じである。現在の体重の値Gは、対象者の現在の体重が測定されて得られる。
【0127】
環境指数の値Fは、身長予測方法で説明されたステップによって、算出される。このため、環境指数を算出するための問診内容と同様の問診内容が使用されて、環境指数が算出される。環境指数の算出における種々の処理は、身長予測方法の場合と同じである。
【0128】
なお、実施の形態で説明された身長予測方法および体重予測方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0129】
ST1 現在身長の予測
ST2 伸び率Cの算出
ST3 問診項目回答
ST4 環境指数算出
ST5 算出式に導入
図1
図2
図3
図4