【実施例1】
【0034】
[ヘッド・サスペンションの概要]
図1は、本発明の実施例1に係るフレキシャーを取り付けた小型のヘッド・サスペンションの要部を示す平面図である。なお、以下の説明において、左右とはフレキシャーの延長方向に交差する方向の両側(ヘッド・サスペンションのスウェイ方向の両側)であり、上下とは、フレキシャーの層厚方向の上下、前後とは、フレキシャーのタング部側を前、テール部側を後ろとする。なお、ヘッド・サスペンション1の基本的な構造は、適宜
図28のヘッド・サスペンション100を参照する。
【0035】
図1のヘッド・サスペンション1は、ロード・ビーム3及び図外のベース・プレートにフレキシャー5が取り付けられている。フレキシャー5は、薄板配線基板の一例であり、先端に読み取り書き込み用のスライダー(図示せず。)を支持している。なお、薄板配線基板としては、フレキシャー以外の他の電気部品の基板にも適用することができる。
【0036】
このフレキシャー5は、金属基板7と配線部9とを備えている。金属基板7は、金属製の支持層であり、ステンレス鋼(SST)等のばね性を有する精密な金属薄板からなっている。金属基板7の板厚は、例えば12μm〜25μm程度に設定されている。配線部9は、金属基板7の表面に読取用及び書込用の複数の配線がほぼ左右方向に並列して配索されている。
【0037】
このフレキシャー5は、ロード・ビーム3に沿って延設され、レーザーのスポット溶接によってロード・ビーム3やベース・プレートに所定箇所(
図28参照)で固着されている。ロード・ビーム3やベース・プレートは、組み付け相手の金属製の板材である。フレキシャー5の基端側には、テール部が延設され、フレキシャー5の先端側には、一対のアウトリガー部を介してタング部が設けられている。
【0038】
タング部は、ロード・ビーム先端側のディンプル(図示せず)に当接支持される。タング部の表面に、スライダーを取り付けている。スライダーは、読取用素子及び書込用素子を有し、これらの素子に配線部9の読取用及び書込用の各配線がそれぞれ接続されている。
【0039】
[凸部]
図2は、
図1のヘッド・サスペンションにおけるフレキシャーの長手方向中間部でロード・ビームに対する溶接部を示す要部拡大平面図、
図3は、配線部及び凸部の断面構造を示すヘッド・サスペンションの要部拡大断面図である。
【0040】
図1、
図2のように、金属基板7には、ロード・ビーム3の中間部の溶接箇所において面方向に翼形状の突片部7a、7bが左右一対一体に設けられている。突片部7a、7bは、配線部9外に突出形成され溶接部11によりロード・ビーム3への結合を行わせるものである。
【0041】
なお、
図1、
図2の溶接箇所における突片部7a、7bは、一例であり、ロード・ビーム3の他の箇所やベース・プレートにおける溶接箇所についても適用することができる。
【0042】
突片部7a、7bには、スポット溶接の溶接部11の周辺部に凸部13が連続的に備えられている。凸部13を周辺部に有する溶接部11は、フレキシャー5単体においては、スポット溶接の溶接予定箇所に対応する。なお、凸部13は、左右の突片部7a、7bに同一断面構造で平面から見て対称に形成されているため、左右同一符号を付し、
図2以降右側の突片部7a及び凸部13について説明し、左側の凸部についての説明は省略する。
【0043】
凸部13は、突片部7aの縁部に沿って連続して形成され、配線部9に対して後述のように電気的には分離され、単なる凸部を構成している。
【0044】
凸部13は、前後に沿った縦部13aと左右に沿った横部13bと縦部13aから配線部9に至る弧状部13cとを有し、縦部13a及び横部13b間と縦部13a及び弧状部13c間とに第1アール部13d、第2アール部13eが形成され、配線部9に渡って一体に連続したものである。
【0045】
図3のように、凸部13の断面は、本実施例において配線部9と積層断面構造が同一であり、凸部13全体は、ダミー配線となっている。
【0046】
配線部9は、ベース層14と、配線15a、15b、・・・と、カバー層17とを断面構造として備えている。
【0047】
ベース層14は、絶縁性の樹脂、例えばポリイミドで形成され、金属基板7の表面に積層されて配線15a、15b、・・・の絶縁性を確保している。このベース層14は、各配線15a、15b、・・・の背面(
図3では、下側の面)に配策方向に沿って形成され、配策方向に交差する方向の断面において、各配線15a、15b、・・・に沿ってその背面に左右方向に渡るように平たく形成されている。ベース層14の層厚は、例えば10μm〜20μm程度に設定されている。ただし、この厚みは、要求される絶縁耐圧に応じて変更することが可能である。
【0048】
各配線15a、15b、・・・は、読取用及び書込用等の複数本が配策され、例えば銅等の高導電性金属からなっている。この各配線15a、15b、・・・は、ベース層14の表面に積層されて備えられ、例えば3〜18μm程度の層厚を有している。
【0049】
カバー層17は、絶縁性の樹脂、例えばポリイミドで形成されている。カバー層17は、配線部9の各配線15a、15b、・・・を被覆している。カバー層17の厚みは、例えば1〜5μm程度となっている。
【0050】
凸部13は、ベース層19と、導体層21と、カバー層23とを積層断面構造として備え、均一断面形状で形成され、配線部9と同一高さに形成されている。凸部13は、配線部9と同一高さであれば、
図2の平面視で部分的に幅を異ならせることもできる。
【0051】
ベース層19は、配線部9のベース層14に相当し、導体層21は、同配線15a、15b、・・・に相当し、カバー層23は、同カバー層17に相当している。これら凸部13のベース層19と導体層21とカバー層23とは、ダミー配線として配線部9のベース層14と配線15a、15b、・・・とカバー層17との形成と同時に形成されている。
【0052】
凸部13のベース層19は、矩形断面の導体層21よりも幅広に形成され、導体層21を安定して支持し、突片部7aを外縁から幅を持って補強している。ベース層19の外縁は、突片部7aの外縁上に一致し、突片部7aに沿っている。
【0053】
凸部13の導体層21は、配線15a、15b、・・・と同一の断面形状に形成され、凸部13の芯をなしている。
【0054】
凸部13のカバー層23は、導体層21の上面及び側面を被覆し、上壁部23a、側壁部23b、鍔部23cを備えている。
図2、
図3のように、鍔部23cの幅方向両縁は、ベース層19の幅方向両縁と一致している。従って、鍔部23cの幅方向外縁も突片部7aの外縁に沿っている。
【0055】
カバー層23の上壁部23aの上面は、配線部9の上面9aと同様に平坦に形成され、凸部13の上壁部23aと配線部9の上面9aとは、金属基板7から同一高さに設定されている。この同一な高さは、フラットな溶接治具の平坦な面により配線部9及び凸部13を共に押さえ付けて力を伝達できればよく、その範囲において高さの誤差は許容される。
【0056】
本実施例において凸部13は、前記のように配線部9から連続して形成されているが、凸部13の導体層21は、配線15a、15b、・・・から分離され、ベース層19とカバー層23とが、配線部9のベース層14とカバー層17とに一体に連続形成されている。
【0057】
配線部9に対する電気的な分離は、凸部13の連続方向の何れかにおいて行われていればよい。本実施例では、配線部9に対して連続する凸部13の端部で分断されている。凸部13の連続する中間部で分断させることもできる。
【0058】
なお、凸部13は、その上面或いは上縁が配線部9と同一高さであれば良く、高さ方向の縦断面形状は配線部9と異ならせることもできる。例えば、凸部13の断面を半円形、半楕円形、台形、逆台形、三角形、逆三角形等、高さを保持できる形状であれば、種々変更することができる。鍔部23cを無くし、ベース層19の幅を狭く形成して単なる矩形断面にすることもできる。
【0059】
また、凸部13に導体層21とカバー層23とを設けることなく、ベース層19と同一の材質で凸部13全体を形成することもできる。つまり、金属基板7上に、ベース層19のみを配線部9と同一高さに突出させて凸部13に代えることもできる。
【0060】
[溶接方法]
図4は、
図1のヘッド・サスペンションにおけるフレキシャーの長手方向中間部でロード・ビームに対する溶接部を溶接冶具との関係で示す要部概略拡大平面図、
図5は、
図4のV−V線矢視における要部概略拡大断面図である。
【0061】
なお、
図4、
図5では単一のヘッド・サスペンションでの単一の溶接部で説明するが、製造は、ヘッド・サスペンション半製品の複数の連鎖品について複数の溶接予定箇所を一枚のフラットな溶接治具により押さえ、スポット溶接により溶接部を形成するものである。
【0062】
まず、図示しない作業台上にロード・ビーム3及びベース・プレートとフレキシャー5とを
図5の層順で順次重ねる。
【0063】
次いで、フラットな溶接治具29の平坦な面を配線部9と凸部13とに渡るように当てる。溶接治具29は、配線部9及び凸部13に渡る平坦な面があればよく、その他の部分での凹凸は許容される。溶接治具29は、貫通穴29aを備えている。貫通穴29aは、スポット溶接の溶接予定箇所に対応して備えられている。従って、溶接治具29を配線部9と凸部13とに当てるとき、貫通穴29aがスポット溶接の溶接予定箇所に位置合わせされる。
【0064】
この位置合わせが多少ずれても、溶接治具29が平坦な面で押さえ付ける形状であるため、配線部9と凸部13とに渡って荷重を付与して溶接予定箇所の周囲で金属基板7を押さえ付ける状態を維持させることができ、配線部9と凸部13とを介してスポット溶接の溶接予定箇所の周囲に押さえ力を正確に付与することができる。
【0065】
従って、金属基板7の突片部7aの縁部に沿って突片部7aを、全体的に押さえ付け、溶接対象のロード・ビーム3に確実に密着させることができる。
【0066】
特に、凸部13が配線部9から連続し、突片部7aの外縁に沿って連続形成されているから、金属基板7と一体の薄い突片部7aが翼形状であっても、凸部13により突片部7aの外縁を確実に押さえ付けることができる。
【0067】
押さえ付けられた突片部7aは、凸部13により配線部9から外縁に渡って支持される形態であるため、突片部7aを押さえ付け力により溶接予定箇所を含めて突片部7a全体をロード・ビーム3に確実に密着させることができる。
【0068】
次に、突片部7aの密着状態で貫通穴29aから突片部7aの溶接予定箇所をスポット溶接して溶接部11を形成する。
【0069】
[実施例の効果]
凸部を設ける代わりに、溶接部周りに配線を配置すれば、ダミー配線によらなくてもフラットな溶接治具で配線部を押さえ付け、この配線部を介して金属基板を押さえつけることは可能であると考えられる。
【0070】
しかし、かかる場合には、以下のような問題を招来する。
【0071】
低インピーダンス化により配線幅が広がり、その配線を溶接部の周りに配するスペースに制約を受ける。
【0072】
再生配線のように細い配線を1本だけ配置すれば、スペース的な問題は発生しないが、電気特性が劣化する。
【0073】
フレキシャーの左右外側配線が異なる幅で有ることが多く、これを溶接部の周囲に配した場合、フレキシャーの長手方向に対する左右の対称性が崩れ、サスペンションの動的特性が劣化することになる。
【0074】
これに対し、本発明実施例のフレキシャー5は、金属基板7と、金属基板7の表面に複数の配線15a、15b、・・・が並列して配索された配線部9とを備え、組み付け相手のロード・ビーム3や図外のベース・プレートに金属基板7がスポット溶接の溶接部11により結合され、金属基板7は、スポット溶接の溶接部11の周囲に溶接冶具29の平坦な面を配線部9と共に当てるための凸部13を配線部9と同一高さに備え、溶接部11は、溶接治具29の平坦な面を配線部9及び凸部13に当ててスポット溶接により形成した。
【0075】
このため、スポット溶接に際しては、フレキシャー5の金属基板7を、溶接予定箇所の突片部7a、7bにおいて溶接対象のロード・ビーム3に密着させ、さらには同様の構造を適用した図外の部分でベース・プレートに確実に密着させることで、溶接打点品質の高い溶接部11や他の箇所の溶接部を得ることができる。
【0076】
前記フレキシャー5に突片部7aを有し、前記凸部11は、前記突片部7aに連続的に備えられ又は部分的に備えられている。
【0077】
このため、ヘッド・サスペンション1が小型化され、或は配線部9の配線幅が広がり、配線部9外に突出する突片部7aの大きさが十分なものではなくても、凸部13により突片部7aをロード・ビーム3に確実に密着させることができ、スポット溶接による溶接部11の溶接打点品質を維持させることができる。
【0078】
前記凸部13により突片部7aの縁部を補強するリブとして機能させることもでき、ロード・ビーム3に対する突片部7aの密着に寄与させることができる。
【0079】
前記凸部13は、配線部9と積層断面構造が同一であるダミー配線であるから実配線の幅に関係なく設計することが可能となる。しかも、凸部13を、配線部9と共に形成することができ、製造が容易である。
【0080】
前記凸部13を、ベース層19と同一の材質で凸部13全体を形成した場合は、凸部13において導体層や絶縁性のカバー層を不要とし、構造が簡単となり、より安価に製造することができる。
【0081】
本発明実施例の溶接方法は、作業台上にロード・ビーム3(及びベース・プレート)とフレキシャー5とを相互の位置を合わせて順次重ね、突片部7a等のスポット溶接の溶接予定箇所に対応する貫通穴29aを備えたフラットな溶接冶具29の平坦な面を配線部9と凸部13とに渡るように当てて貫通穴29aをスポット溶接の溶接予定箇所に合わせ、貫通穴29aから溶接予定箇所をスポット溶接して溶接部11を形成する。
【0082】
このため、フラットな溶接治具29が使用でき、小さな溶接予定箇所の周囲に溶接治具の突出した押さえ部を入れ込む必要もなく、突片部7aを確実に押さ付けることができる。従って、ヘッド・サスペンション1の小型化に有利である。
【0083】
但し、本発明を適用できるヘッド・サスペンションは、小型のものに限らず、大きさを問わず適用することができる。ヘッド・サスペンション1が小型でなくても、フラットな溶接治具が使用でき、溶接予定箇所の周囲で金属基板7を十分に押さえ付ける効果を得ることができる。
【0084】
フラットな押さえ溶接治具が使用できるため、溶接治具29の位置ズレに対する密着度の影響を抑制することができる。
【0085】
突片部7aをダミー配線の凸部13を介して押さえるので、金属基板7表面の傷の発生を防ぐことができる。
【0086】
[変形例]
図6〜
図9は、変形例に係り、
図1のヘッド・サスペンションにおけるフレキシャーの長手方向中間部でロード・ビームに対する溶接部を示す要部拡大平面図である。なお、
図6〜
図9では、一方(右側)の突片部のみ図示するが、他方の突片部も同様に構成されるため、実施例1同様に左側の説明は省略する。また、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一構成部分には同符号を付し、対応する構成部分には、同符号にA〜Dを付し、重複した説明は省略する。
【0087】
図6〜
図9のように、凸部は、突片部7aに部分的に備えられてもよい。
【0088】
図6の変形例は、凸部13Aに隙間13Adaを設けた。隙間13Adaは、突片部7aのコーナー部7aaに対応して形成され、
図2の第1アール部13dをカットした形態に相当する。隙間13Adaの両側で縦部13aと横部13bとの端部は、半円形に形成され、角が無いようにしている。
【0089】
従って、この変形例では、フラットな溶接治具の平坦面で凸部13B及び配線部9を押さえ付けてスポット溶接するとき、溶接治具及び突片部7a間に不活性ガスを流して溶接焼けを防ぎ、隙間13Adaにより溶接焼け防止の不活性ガスコントロールが可能となる。
【0090】
図7の変形例は、凸部13Bに隙間13Bba、13Bca、13Bdaを設けた。隙間13Bdaは、突片部7aのコーナー部7aaに対応して形成され、隙間13Bbaは、凸部13Bの横部13Bbを一部省いて配線部9との間に形成され、凸部13Bcaは、凸部13Bの弧状部13cを省いて配線部9との間に形成されている。
【0091】
従って、この変形例では、フラットな溶接治具で凸部13B及び配線部9を押さえてスポット溶接するとき、溶接治具及び突片部7a間に不活性ガスを流して溶接焼けを防ぎ、この不活性ガスを隙間13Bba、13Bca、13Bdaから排出させて不活性ガスコントロールが可能となる。
【0092】
図8の変形例は、凸部13Cに隙間13Cba、13Ccaを設けた。隙間13Cba、13Ccaは、
図7の隙間13Bba、13Bcaと同一に対応している。
【0093】
従って、この変形例では、隙間13Cba、13Ccaにより溶接焼け防止の不活性ガスコントロールが可能となる。
【0094】
図9の変形例は、凸部13Da・・・、13Db・・・を複数独立して設け、凸部13Deを独立して設けた。凸部3Da・・・、13Db・・・、13Deは、平断面が円形に形成され、
図7の凸部13Bに対応した位置に形成されている。
【0095】
凸部3Da・・・、13Db・・・、13Deの相互間隔は、均一ではない。凸部13Db・・・において、突片部7aのコーナー部7aa寄りで相対的に間隔が広くなっている。凸部13Da・・・の相互間隔は、相対的に狭くなっている。複数の凸部13Dbの内、コーナー部7aa寄りの端部に位置する凸部13Dbは、コーナー部7aaに隣接しているが、複数の凸部13Daの内、コーナー部7aa寄りの端部に位置する凸部13Daは、コーナー部7aaから若干離れている。凸部13Deは、コーナー部7abの端部に配置され、凸部13Daとの間隔は、相対的に広く設定されている。
【0096】
従って、この変形例では、隙間13Dba、13Dca、13Ddaと、及び凸部3Da・・・、13Db・・・、13De間の隙間とにより溶接焼け防止の不活性ガスコントロールが可能となる。
【0097】
なお、凸部3Da・・・、13Db・・・、13Deにおける間隔は、任意であり、不活性ガスコントロールに応じて間隔を変更することができる。
【0098】
また、この凸部13D・・・の形態は、
図2、
図6、
図8の凸部13、13A、13Cに代えて同一配置箇所に形成することもできる。
【0099】
この実施例は、ロード・ビーム3の他の箇所やベース・プレートにおける溶接箇所についても適用することができ、押さえ用の凸部は、溶接箇所を選択して設けることもできる。凸部を設けない箇所においては、従来通り溶接治具に押さえ部を突設することもできる。
【実施例2】
【0100】
図10は、比較例に係り、フレキシャーの先端部側での溶接部を示す要部概略拡大平面図、
図11は、実施例2に係り、フレキシャーの先端部側での溶接部を示す要部概略拡大平面図、
図12〜
図14は、変形例に係り、フレキシャーの先端部側での溶接部を示す要部概略拡大平面図である。
【0101】
図10の比較例のように、ヘッド・サスペンションのヘッド部には、フレキシャー5の先端部側でスライダー(
図28参照)を取り付けたタング部30を金属基板7が備え、スライダーの読取用素子及び書込用素子に配線部9の配線が接続されている。なお、配線部9は、概念的に示している。配線部9の積層断面構造は、
図3と同様である。
【0102】
フレキシャー5の先端部では、左右のアウトリガー25よりも前方へ突出し、金属基板7のタング部30の前側に位置する先端部7cがロード・ビーム(
図28参照)の先端部に溶接部27により結合される。
【0103】
この比較例において、先端部7cの弧状の縁部7dに凸部は存在しない。
【0104】
これに対し、
図11の実施例2では、凸部29Fが、先端部7cで溶接部27となる溶接予定箇所の周辺部に備えられている。凸部29Fは、先端部7cの円弧状の縁部7dに備えられている。この凸部29Fは、溶接部27の前側を囲むように溶接部27の中心を曲率中心とした平面視で弧状に形成され、ヘッド・サスペンションのスウェイ方向で対称の形状で配置されている。凸部29Fの左右両端部は、縁部7dから外れ、先端部7cの面上に至っている。
【0105】
金属基板7の先端部7c側には、ピッチング方向の曲げ加工が存在し、凸部29Fの形成箇所である先端部7cは、曲げ加工に影響されない部分として設定されている。
【0106】
凸部29Fの断面構造は、実施例1と同様に形成することができ、また凸部29Fの高さも、配線部9と同一高さに設定されている。この場合の高さは、凸部29F、配線部9の位置での金属基板7表面からの高さである。
【0107】
従って、溶接に際しては、前記フラットな溶接治具の平坦な面が配線部9及び凸部29Fに渡って押さえ付ける。従って、本実施例では、
図10の比較例に対し、溶接予定箇所を含めて先端部7cをロード・ビームの先端部に確実に押さえ付けて溶接部27を確実に形成することができる。また、凸部29Fにより金属基板7の先端部7cの縁部7dの補強を図ることができる。
【0108】
図12、
図13の変形例は、凸部が、先端部7cの縁部7dと溶接予定箇所及び配線部9間とに備えられたものである。
【0109】
図12の変形例は、凸部29G、31Gを独立して設けた。凸部29Gは、
図11の凸部29Fと同一である。凸部31Gは、溶接部27を挟んで凸部29Gに対向するように形成され、配線部9に隣接して形成されている。凸部31Gは、配線部9の前端に沿って左右に指向した直状に形成されている。凸部31Gは、凸部29Gと同一積層構造及び同一高さに設定されている。
【0110】
従って、溶接に際しては、前記フラットな溶接治具の平坦な面が配線部9及び凸部29G、31Gに渡って押さえ付け、
図10の比較例に対して溶接部27をより確実に形成することができる。
【0111】
図13の変形例は、凸部29Ha、29Hb、31Hを独立して設けた。凸部29Ha、29Hbは、
図12の凸部29Gに対応し、凸部31Hは、
図12の凸部31Gと同一である。
【0112】
凸部29Ha、29Hbは、中央に隙間29Hcを配置して分離形成されたものである。
【0113】
従って、本実施例では、
図12の変形例に対し、隙間29Hcの存在により溶接焼け防止の不活性ガスコントロールを容易にする。
【0114】
図14の変形例は、
図13の変形例に対するものであり、凸部29Ia、29Ib、隙間29Icを設けている。凸部29Ia、29Ib、隙間29Icは、
図13の凸部29Ha、29Hb、隙間29Hcと同一であり、本変形例では、
図13の凸部31Hを省略したものに相当する。
【実施例3】
【0115】
図15〜
図17は、実施例3に係り、
図15は、ヘッド・サスペンションにおけるフレキシャーの長手方向中間部でロード・ビームに対する配線間の溶接部を示す要部平面図、
図16は、溶接部における凸部を示す要部拡大平面図、
図17は、凸部の断面構造を示すヘッド・サスペンションの要部拡大断面図、
図18〜
図20は、変形例に係り、溶接部における凸部を示す要部拡大平面図、
図21(A)は、変形例に係り、溶接部における凸部を示す要部拡大平面図、(B)は、(A)の凸部の断面構造を示すヘッド・サスペンションの要部拡大断面図、
図22〜
図27は、変形例に係り、溶接部における凸部を示す要部拡大平面図である。
【0116】
図15〜
図27の本実施例は、配線間の溶接部に適用した。配線間の広さは、広い場合、狭い場合の何れに適用できる。
【0117】
図15、
図16のように、フレキシャー5は、配線部9に配線相互が二股に離間して金属基板7が露出した配線間部分7eを有している。この配線間部分7eで溶接部35による結合が行われる。本実施例では、フレキシャー5が、スポット溶接の溶接部35となる溶接予定箇所の周囲部に配線部9と同一高さの凸部33を周回状に連続的に備えた。
【0118】
本実施例の凸部33は、溶接部35を囲む平面視で円形周回状に形成されている。凸部33の円形形状の内径は、溶接治具29Jの貫通穴29Jaに対し若干大径に形成されている。
【0119】
図17のように、凸部33の積層断面構造は、金属基板7に対し、
図3の凸部13のベース層19と、導体層21と、カバー層23と同様に、ベース層19Jと、導体層21Jと、カバー層23Jとを備え、左右の配線部9と同一の積層構造となっている。従って、凸部33は、一定幅で円形周回状のベース層19Jの上に導体層21Jを備え、カバー層23Jは、上壁部23Ja、側壁部23Jb、鍔部23Jcを備えている。上壁部23Jaの平坦な上面の高さは、左右の配線部9の平坦な上面と同一に設定されている。
【0120】
なお、凸部33の縦断面形状は、実施例1の凸部13と同様に種々変更することができ、凸部13と同様にベース層19Jと同一の材質で凸部33全体を形成することもできる。また、凸部33の幅は、全周で均一である必要はなく、部分的に幅を変え、或いは径方向内側又は外側に突出した部分を設けることもできる。後述の変形例についても同様である。
【0121】
従って、フラットな溶接治具29Jの平坦な面が配線部9と凸部33とに渡って荷重を付与し、溶接予定箇所の周囲で金属基板7を押さえ付けることができ、配線部9と凸部33とを介してスポット溶接の溶接予定箇所の周囲に押さえ力を正確に付与することができる。凸部33の円形形状は、溶接治具29Jの貫通穴29Jaの位置合わせの目印にもなる。
【0122】
特に、本実施例では、凸部33が溶接部35を囲む平面視で円形形状に形成されているため、溶接に際しては、溶接予定箇所を凸部33により円形に囲んで押さえ付けることができ、スポット溶接の溶接予定箇所の周囲に押さえ力をより正確に付与することができる。
【0123】
図18〜
図27の変形例は、凸部を、周回状に部分的に備えた。
図18〜
図27の変形例は、凸部が何れも前後左右対称に配置されている。
【0124】
図18の変形例は、前後左右対称の凸部33Ka、33Kb間に前後対称の隙間33Kc、33Kdを設けた。凸部33Ka、33Kbは、
図16の凸部33に対応している。隙間33Kc、33Kdは、左右の凸部33Ka、33Kb間でフレキシャー5の延設方向前後方向での両側に形成され、左右方向のバランスを維持させるようにしている。
【0125】
そして、本変形例では、
図16の実施例に対し、隙間33Kc、33Kdの存在により溶接焼け防止の不活性ガスコントロールを容易にする。
【0126】
図19の変形例は、前後左右対称の凸部33La、33Lb間に左右対称の隙間33Lc、33Ldを設けた。凸部33La、33Lbは、
図16の凸部33に対応している。隙間33Lc、33Ldは、前後の凸部33La、33Lb間でフレキシャー5の左右方向での両側に形成され、前後方向のバランスを維持させるようにしている。
【0127】
そして、本変形例では、
図16の実施例に対し、隙間33Lc、33Ldの存在により溶接焼け防止の不活性ガスコントロールを容易にする。
【0128】
図20の変形例は、
図18、
図19の変形例を合体させたものであり、前後左右対称の凸部33Ma、33Mb、33Mc、33Md間に前後左右対称の隙間33Me、33Mf、33Mg、33Mhを設けた。
【0129】
本変形例では、前後左右対称の凸部33Ma、33Mb、33Mc、33Md間に前後左右対称の隙間33Me、33Mf、33Mg、33Mhにより左右方向のバランスを維持させるようにしている。
【0130】
そして、本変形例では、
図16の実施例に対し、前後左右対称の隙間33Me、33Mf、33Mg、33Mhの存在により溶接焼け防止の不活性ガスコントロールをより容易にする。
【0131】
図21の変形例は、凸部33Nを独立して溶接部35の周りに一定間隔で周回状に複数設け、円形周回状に配列した。凸部33N・・・の円形状の配置は、
図16の凸部33に対応している。凸部33N・・・相互間は、隙間33Naとなる。凸部33N・・・の積層断面構造は、金属基板7に対し、
図3の凸部13のベース層19と、導体層21と、カバー層23と同様に、ベース層19Nと、導体層21Nと、カバー層23Nとを備え、左右の配線部9と同一の積層構造となっている。
【0132】
従って、凸部33Nは、それぞれ平面視で円形のベース層19Nの上に平断面円形の導体層21Nを備え、カバー層23Nは、導体層21Nを被覆するように上壁部23Na、側壁部23Nb、鍔部23Ncを備えている。上壁部23Naの平坦な上面の高さは、左右の配線部9の平坦な上面と同一に設定されている。
【0133】
なお、凸部33Nの縦断面形状は、実施例1の凸部13と同様に種々変更することができ、凸部13と同様にベース層19Nと同一の材質で凸部33N全体を形成することもできる。また、凸部33Nの平断面形状も、円形に限らず、楕円形、四角形、三角形、菱形など種々変更することができる。他の変形例の同様な凸部についても同様の変更が可能である。
【0134】
従って、フラットな溶接治具29が配線部9と凸部33N・・・とに渡って荷重を付与し、溶接予定箇所の周囲で金属基板7を押さえ付けることができ、配線部9と凸部33N・・・とを介してスポット溶接の溶接予定箇所の周囲に押さえ付け力を正確に付与することができる。
【0135】
特に、凸部33N・・・が独立しているため、各凸部33N・・・によりポイントで押さえ付け力を伝達し、溶接部35を正確に形成することができ、また、隙間33Na・・・により不活性ガスコントロールも容易にする。
【0136】
図22の変形例は、凸部33Pを独立して溶接部35の周りに一定間隔で周回状に複数設け、円形状に配列した。凸部33P・・・の位置は、
図21の凸部33Nに対応している。凸部33P・・・相互間は、隙間33Paとなる。凸部33P・・・は、平断面が円形に形成され、凸部33P・・・の積層断面構造は、
図21の凸部33Nとほぼ同様である。
【0137】
但し、凸部33P・・・では、ベース層19Pが、溶接部35の周囲に円形周回状に連続形成されている。
【0138】
従って、溶接時にフラットな溶接治具の平坦な面から凸部33P・・・が受けた押さえ付け力を、ベース層19Pを介して溶接予定箇所の周囲に伝達することができ、溶接部35を正確に形成することができ、また、隙間33Pa・・・により不活性ガスコントロールも容易にする。
【0139】
なお、
図22のベース層が円形状に連続した変形例は、他の変形例にも同様に適用することができる。
【0140】
図23の変形例は、
図21の変形例に対する変形例であり、
図21の平面から見て円形の凸部33N・・・に代えて平面から見て端部が半円状で直状の独立した凸部33Q・・・を放射方向に指向させて配列している。凸部33Q・・・は、溶接部35の周りに一定間隔で周回状に複数設けられ、円形周回状に配列されている。凸部33Q・・・相互間は、隙間33Qaとなる。
【0141】
従って、溶接時にフラットな溶接治具から凸部33Q・・・が受けた押さえ付け力により、溶接予定箇所の周囲を放射方向所定の範囲で押さえ付けることができ、溶接部35を正確に形成することができ、また隙間33Qa・・・により不活性ガスコントロールも容易にする。
【0142】
図24の変形例は、
図23の変形例に対する変形例であり、溶接部35の周りに円形状に配列された凸部33Ra・・・、33Rb・・・の内、前後左右に対向する凸部33Ra・・・が溶接部35の周りを円形状に囲むように円形状に沿って弧状に形成されたものである。凸部33Ra・・・、33Rb・・・相互間は、隙間33Rcとなる。
【0143】
従って、本変形例では、
図23の凸部33Q・・・に対し、周方向に指向する凸部33Ra・・・により、押さえ付け力を周方向に連続する傾向に変更し、また、隙間33Rc・・・により不活性ガスコントロールを変えることができる。
【0144】
図25の変形例は、
図24の変形例に対する変形例であり、溶接部35の周りに円形状に配列された凸部33Sa・・・、33Sb・・・の内、前後左右の斜めに対向する凸部33Sb・・・が
図21の凸部33Nと同様に平断面が円形状に形成されたものである。凸部33Sa・・・、33Sb・・・相互間は、隙間33Scとなる。
【0145】
従って、本変形例では、
図24の凸部33Rb・・・に対し、周方向に指向する凸部33Sa・・・間では、凸部33Sb・・・のポイントで押さえ付け力を付与することができる。
【0146】
図26の変形例は、
図23の変形例に対する変形例であり、溶接部35の周りに円形状に配列された凸部33Ta・・・、33Tb・・・の内、前後左右に対向する凸部33Ta・・・が
図21の凸部33Nと同様に平断面が円形状に形成されたものである。凸部33Ta・・・、33Tb・・・相互間は、隙間33Tcとなる。
【0147】
従って、本変形例では、
図23の凸部33Q・・・に対し、径方向に指向する凸部33Tb・・・間では、凸部33Ta・・・によるポイントで押さえ付け力を付与することができる。
【0148】
図27の変形例は、
図21の変形例に対する変形例であり、溶接部35の周りに円形周回状に配列された凸部33Ua・・・の外周側に凸部33Ub・・・を円形周回状に配列した。凸部33Ua・・・は、
図21の凸部33N・・・と同一である。凸部33Ub・・・は、凸部33Nと同一平断面に形成され、配列位置が凸部33Ua・・・の周方向間で径方向の外側となっている。凸部33Ua、33Ub間が、周方向に対し斜めに向いた隙間33Ucとなる。
【0149】
従って、本変形例では、凸部33Ua・・・、凸部33Ub・・・による内外二重のポイントにより押さえ付け力を付与することができ、また隙間33Ucにより不活性ガスコントロールも変えることができる。