特開2016-225034(P2016-225034A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225034(P2016-225034A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】電極製造設備及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20161205BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20161205BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20161205BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20161205BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20161205BHJP
   B05C 5/02 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
   H01M4/139
   H01G13/00 391B
   H01G13/00 381
   H01G11/86
   B05C11/02
   B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-107595(P2015-107595)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】花井 通裕
(72)【発明者】
【氏名】下泉 純
(72)【発明者】
【氏名】西尾 嘉典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 繁
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA13
4F041CA16
4F041CA22
4F042AA22
4F042CB02
4F042DD09
4F042DD17
4F042DD21
4F042DH09
5E078AA14
5E078AA15
5E078AB13
5E078BA04
5E078BA17
5E078BB24
5E078BB33
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5E078LA08
5E082AA11
5E082AA13
5E082AB03
5E082AB04
5E082BB03
5E082BC38
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE27
5E082EE28
5E082EE30
5E082EE35
5E082EE50
5E082LL21
5E082MM32
5E082MM40
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA09
5H050CB08
5H050EA10
5H050GA03
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】プレス後の電極材の膜厚を一定の範囲内となるように安定させることができる電極製造設備及び電極製造方法を提供する。
【解決手段】電極製造設備1は、搬送される電極箔Mの面に電極材Pを塗工する塗工装置10と、電極材Pが塗工され搬送される電極箔Mをプレスして塗工された電極材Pの膜厚を調整する膜厚調整装置20と、塗工された電極材Pの膜厚を測定する膜厚測定装置30と、膜厚測定装置30で測定される塗工された電極材Pの膜厚のうち、塗工装置10による第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、特定膜厚に基づいて膜厚調整装置20の調整動作を制御する制御装置40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される電極箔の面に電極材を塗工する塗工装置と、
前記電極材が塗工され搬送される電極箔をプレスして前記塗工された電極材の膜厚を調整する膜厚調整装置と、
前記塗工された電極材の膜厚を測定する膜厚測定装置と、
前記膜厚測定装置で測定される前記塗工された電極材の膜厚のうち、前記塗工装置による第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、前記特定膜厚に基づいて前記膜厚調整装置の調整動作を制御する制御装置と、
を備える、電極製造設備。
【請求項2】
前記特定膜厚は、前記膜厚データ群の平均膜厚である、請求項1に記載の電極製造設備。
【請求項3】
前記サンプリング時間は、前記第一膜厚変動周期と前記膜厚調整装置による第二膜厚変動周期との最小公倍数の時間である第三膜厚変動周期の整数倍である、請求項1又は2に記載の電極製造設備。
【請求項4】
前記塗工装置は、前記電極箔を支持するバックアップローラを備え、
前記第一膜厚変動周期は、前記バックアップローラが1周回転するときの回転時間である、請求項1−3の何れか一項に記載の電極製造設備。
【請求項5】
前記膜厚調整装置は、前記電極箔をプレスするプレスローラを備え、
前記第二膜厚変動周期は、前記プレスローラが1周回転するときの回転時間である、請求項3に記載の電極製造設備。
【請求項6】
前記膜厚測定装置は、前記膜厚調整装置に対し上流側に配置される調整前測定装置を備え、
前記制御装置は、前記調整前測定装置による測定結果に関係付けられた前記膜厚調整装置の調整量に基づいて前記膜厚調整装置の調整動作を制御する、請求項1−5の何れか一項に記載の電極製造設備。
【請求項7】
前記膜厚測定装置は、前記膜厚調整装置に対し下流側に配置される調整後測定装置を備え、
前記制御装置は、前記調整後測定装置による測定結果及び予め設定された設定膜厚に基づいて前記膜厚調整装置の調整動作を制御する、請求項1−6の何れか一項に記載の電極製造設備。
【請求項8】
前記設定膜厚は、前記電極の製造ロット数に基づいて設定される、請求項7に記載の電極製造設備。
【請求項9】
搬送される電極箔の面に電極材を塗工する塗工工程と、
前記電極材が塗工され搬送される電極箔をプレスして前記塗工された電極材の膜厚を調整する膜厚調整工程と、
前記塗工された電極材の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
前記膜厚測定工程で測定される前記塗工された電極材の膜厚のうち、前記塗工工程における第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、前記特定膜厚に基づいて前記膜厚の調整を制御する制御工程と、
を備える、電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に使用される電極の電極製造設備及び電極製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、電気自動車や電子機器等の駆動用電源として広く用いられる。このような電池に使用される電極の電極製造設備は、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の電極製造設備は、スラリ化した電極材をバックアップローラに支持された電極箔にポンプの圧力で塗工する塗工装置と、電極箔に塗工された電極材を乾燥する乾燥装置と、乾燥した電極材の膜厚を非接触で測定する測定装置とを備える。この電極製造設備では、測定装置で測定した電極材の膜厚に基づいて、塗工後の電極材の膜厚が一定の範囲内となるように、ポンプの圧力を制御している。
【0004】
特許文献2に記載の電極製造設備は、電極材が塗工された電極箔を一対のプレスローラ間に通してプレスし電極材の膜厚を調整する膜厚調整装置を備える。この電極製造設備では、プレス後に外部で測定した電極材の膜厚に基づいて、プレス後の電極材の膜厚が一定の範囲内となるように、一対のプレスローラ間のクリアランスを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−193906号公報
【特許文献2】特開2008−226502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、プレス後の電極材が塗工された電極箔は、所定の既知の処理を施された後、巻回されて電池ケースに収容される。このため、プレス後の電極材の膜厚が大きくばらつくと、巻回した電極箔の大きさにも大きなばらつきが生じ、巻回した電極箔を電池ケースに収容できなくなるおそれがある。よって、プレス後の電極材の膜厚は、一定の範囲内となるように安定させる必要がある。
【0007】
特許文献2に記載の電極製造設備では、プレス後の電極材の膜厚を外部で測定しているため、数十メートルの電極材を有する電極箔を試作して廃却処分する必要がある。プレス後の電極材の膜厚が、インラインで測定可能であれば、品質測定用に数メートルの電極材を有する電極箔を試作して廃却処分するのみで足りる。プレス後の電極材の膜厚のインラインでの測定は、特許文献1に記載の電極製造設備の測定装置を特許文献2に記載の電極製造設備に適用することで可能である。
【0008】
しかし、一般的に、塗工装置のバックアップローラには、組付け等における芯ずれによる振れが発生するため、スラリ化した電極材をバックアップローラに支持された電極箔に塗工する際にむらが生じて電極材の膜厚のばらつきが大きくなる。このため、特許文献1,2を組み合わせた電極製造設備のように、単にプレス後の電極材の測定膜厚に基づいて一対のプレスローラ間のクリアランスを制御しても、プレス後の電極材の膜厚を一定の範囲内となるように安定させることは困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、プレス後の電極材の膜厚を一定の範囲内となるように安定させることができる電極製造設備及び電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(電極製造設備)
本発明の電極製造設備は、搬送される電極箔の面に電極材を塗工する塗工装置と、前記電極材が塗工され搬送される電極箔をプレスして前記塗工された電極材の膜厚を調整する膜厚調整装置と、前記塗工された電極材の膜厚を測定する膜厚測定装置と、前記膜厚測定装置で測定される前記塗工された電極材の膜厚のうち、前記塗工装置による第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、前記特定膜厚に基づいて前記膜厚調整装置の調整動作を制御する制御装置と、を備える。
【0011】
これによれば、制御装置は、塗工装置による電極材の塗工状態に応じて、膜厚調整装置による電極材の膜厚調整を安定させるのに最適な特定膜厚を適宜選択できる。
【0012】
(電極製造方法)
本発明の電極製造方法は、搬送される電極箔の面に電極材を塗工する塗工工程と、前記電極材が塗工され搬送される電極箔をプレスして前記塗工された電極材の膜厚を調整する膜厚調整工程と、前記塗工された電極材の膜厚を測定する膜厚測定工程と、前記膜厚測定工程で測定される前記塗工された電極材の膜厚のうち、前記塗工工程における第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、前記特定膜厚に基づいて前記膜厚の調整を制御する制御工程と、を備える。これによれば、本発明の電極製造設備と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の電極製造設備の概略構成を示す図である。
図2図1の電極製造設備の動作を説明するためのフローチャートである。
図3】電極材を塗工した後の電極箔の搬送時間と電極材の膜厚との関係を示す図である。
図4】電極材の膜厚を調整した後の電極箔の搬送時間と電極材の膜厚との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電極製造設備の概略構成)
電極製造設備は、電極材と溶媒とを混練してスラリ化し、スラリ化した電極材を電極箔の面に塗工して乾燥し、塗工・乾燥された電極材の膜厚を調整することにより電池に使用される電極を製造する設備である。
【0015】
ここで、例えば、リチウムイオン二次電池の正負極の電極箔としては、アルミニウム箔や銅箔等が用いられる。そして、リチウムイオン二次電池の正極の電極材としては、マンガン酸リチウム及びアセチレンブラック等が用いられ、負極の電極材としては、グラファイト及びアセチレンブラック等が用いられる。また、正負極の溶媒としては、炭酸エチレン等が用いられる。
【0016】
以下、本実施形態の電極製造設備の概略構成を図1を参照して説明する。なお、図1においては、電極製造設備の主要装置のみを示す。図1に示すように、電極製造設備1は、塗工装置10と、膜厚調整装置20と、膜厚測定装置30と、制御装置40等とを備える。電極箔Mは、ロール状に巻回され、この電極箔MのロールRが、図略の電極箔供給装置に回転可能に支持される。電極材Pは、溶媒と混練されてスラリ化され、この電極材PのスラリSが、タンク14内に貯留される。
【0017】
塗工装置10は、電極箔MのロールRから引き出され搬送される電極箔Mの片面に、電極材PのスラリSを塗工する装置である。この塗工装置10は、バックアップローラ11と、ダイコータ12と、ポンプ13と、タンク14と、ダイコータ12とポンプ13とタンク14とを繋ぐ配管15等とを備える。
【0018】
バックアップローラ11は、図略の支持装置にローラ軸11a回りに回転可能に支持される。そして、バックアップローラ11は、電極箔MのロールRから引き出され搬送ローラ16,17を介して搬送される電極箔Mを、ローラ周面11bに半周程度巻き付けて搬送支持する。
【0019】
ダイコータ12は、バックアップローラ11のローラ周面11aにおいて巻き付けられる電極箔Mに対し、ダイコータ12の吐出口12aが所定の間隔をあけて対向するように配置される。そして、ダイコータ12は、ポンプ13の駆動によりタンク14から配管15を通して送液される電極材PのスラリSを、吐出口12aから吐出してバックアップローラ11のローラ周面11aに巻き付けられ搬送される電極箔Mの表面に塗工する。
【0020】
膜厚調整装置20は、電極材PのスラリSが塗工・乾燥されて搬送される電極箔Mをプレスし、電極箔Mに塗工された電極材Pの膜厚を調整する装置である。この膜厚調整装置20は、平行且つ上下に並べて配置されるローラ軸21a,22aをそれぞれ有する同一径の一対のプレスローラ21,22等を備える。
【0021】
プレスローラ21は、図1の反時計回りに回転可能に、プレスローラ22は、図1の時計回りに回転可能に、図略の支持装置に支持される。さらに、プレスローラ21,22は、図略のクリアランス調整装置によりローラ間のクリアランスの調整が可能なように、支持装置に支持される。そして、プレスローラ21,22は、ローラ間のクリアランスを所定値に設定された状態で、ローラ間を通る電極材Pが塗工された電極箔Mを厚さ方向にプレスして当該電極材Pの膜厚を調整する。
【0022】
膜厚測定装置30は、電極箔Mに塗工された電極材Pの膜厚を例えば偏光を用いて非接触で測定する装置である。この膜厚測定装置30は、膜厚調整装置20に対し上流側に配置される調整前測定装置31と、膜厚調整装置20に対し下流側に配置される調整後測定装置32等とを備える。調整前測定装置31は、膜厚調整装置20で電極箔Mに塗工された電極材Pの膜厚が調整される前、すなわち塗工装置10で電極箔Mに塗工され乾燥された状態の電極材Pの膜厚を測定する。調整後測定装置32は、膜厚調整装置20で電極箔Mに塗工された電極材Pの膜厚が調整された後の膜厚を測定する。
【0023】
制御装置40は、膜厚測定装置30から入力した電極箔Mに塗工された電極材Pの膜厚の膜厚測定値に基づいて、膜厚調整装置20のプレスローラ21,22間のクリアランスを調整制御する。また、制御装置40は、塗工装置10のポンプ13を駆動制御し、膜厚調整装置20のプレスローラ21,22の回転を駆動制御する。
【0024】
(電極材の膜厚について)
ここで、背景技術でも述べたように、塗工装置10のバックアップローラ11には、組付け等における芯ずれによる振れが発生するため、スラリ化した電極材Pをバックアップローラ11に支持された電極箔Mに塗布する際にむらが生じて電極材Pの膜厚のばらつきが大きくなる。
【0025】
具体的には、図3に示すように、電極材Pを塗工した後の電極箔Mの搬送長さを表す搬送時間Tを横軸に、電極箔Mに塗工される電極材Pの膜厚dを縦軸にとる。そして、調整前測定装置31で膜厚調整前の電極材Pの膜厚dを測定して膜厚測定値をプロットすると、電極材Pの膜厚dは、バックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tを1周期(以下、「第一膜厚変動周期」という)とする正弦曲線で変動することが判明した。そして、その電極材Pの膜厚dの変動範囲Δdは、非常に大きいもので電極材Pの膜厚dの許容範囲Dを越えるものであった。
【0026】
そこで、制御装置30は、膜厚測定装置30で測定される塗工された電極材Pの膜厚のうち、塗工装置10による第一膜厚変動周期に合わせたサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚として平均膜厚を算出し、算出した平均膜厚に基づいて膜厚調整装置20の調整動作を制御する。この塗工装置10におけるサンプリング時間は、本例では第一膜厚変動周期の1倍を用いた場合で説明するが、第一膜厚変動周期の整数倍であれば本例と同様に用いることができる。
【0027】
具体的には、制御装置30は、バックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tを第1膜厚変動周期として電極材Pの平均膜厚daを算出し、算出した電極材Pの平均膜厚daが所定の初期膜厚となるように膜厚調整装置20のプレスローラ21,22間のクリアランスの初期調整動作を制御する。このとき、制御装置30は、予め測定された電極材Pの膜厚dと膜厚調整装置20の調整量との関係を記憶しておき、その関係に基づいて膜厚調整装置20の初期調整動作を制御する。なお、電極材Pの平均膜厚daは、塗工装置10による第一膜厚変動周期、すなわちバックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tの整数倍であるサンプリング時間で算出するようにしてもよい。
【0028】
また、膜厚調整装置20のプレスローラ21,22にも、組付け等における芯ずれによる振れが発生するため、バックアップローラ11と同様に膜厚調整装置20による第二膜厚変動周期について検討した。図4に示すように、電極材Pの膜厚を調整した後の電極箔Mの搬送長さを表す搬送時間TTを横軸に、電極材Pの膜厚を調整した後の電極材Pの膜厚ddを縦軸にとる。そして、調整後測定装置32で膜厚調整後の電極材Pの膜厚ddを測定して膜厚測定値をプロットすると、図3と同様に電極材Pの膜厚ddは、プレスローラ21(22)が1周回転するときの回転時間ttを1周期(以下、「第二膜厚変動周期」という)とする正弦曲線で変動することが判明した。しかし、その電極材Pの膜厚ddの変動範囲Δddは、図3と異なり、非常に小さいもので電極材Pの膜厚ddの許容範囲DD内のものであった。
【0029】
ところが、電極材Pの膜厚ddの許容範囲DDを越える突発的な膜厚変動(このときの膜厚を変動膜厚dd´という)が、一定の周期で発生していることも判明した。この変動膜厚dd´の発生周期は、塗工装置10による第一膜厚変動周期と膜厚調整装置20による第二膜厚変動周期との最小公倍数の時間である第三膜厚変動周期、具体的にはバックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tとプレスローラ21(22)が1周回転するときの回転時間ttとの最小公倍数の回転時間tsであった。
【0030】
そこで、制御装置30は、バックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tとプレスローラ21(22)が1周回転するときの回転時間ttとの最小公倍数の回転時間tsを第三膜厚変動周期として電極材Pの平均膜厚ddaを算出し、算出した電極材Pの平均膜厚ddaが所定の膜厚となるように膜厚調整装置20のプレスローラ21,22間のクリアランスを調整動作をフィードバック制御する。このとき、制御装置30は、算出した電極材Pの平均膜厚ddaと予め設定された電極材Pの設定膜厚との差に基づいて膜厚調整装置20の調整動作をフィードバック制御する。なお、電極材Pの平均膜厚ddaは、第三膜厚変動周期、すなわちバックアップローラ11が1周回転するときの回転時間tとプレスローラ21(22)が1周回転するときの回転時間ttとの最小公倍数の回転時間tsの整数倍であるサンプリング時間で算出するようにしてもよい。
【0031】
この設定膜厚は、電極の製造ロット数に基づいて設定される。膜厚調整装置20のプレスローラ21,22は、電極の製造ロット数の増加に従って発熱により膨張する傾向にあり、プレスローラ21,22間のクリアランスが小さくなって電極材Pの膜厚ddが薄くなり、更に、ある製造ロット数に達した後は膨張の程度が徐々に小さくなって電極材Pの膜厚ddが徐々に薄くなるからである。なお、設定膜厚は、電極材Pと溶媒の液固比や製造現場の気温・湿度等の変動等に基づいて設定するようにしてもよい。
【0032】
(電極製造設備の動作)
次に、電極製造設備1の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。ここで、電極箔Mは、ロールRから引き出され搬送ローラ16,17を介してバックアップローラ11に巻回され、さらにプレスローラ21,22間を通されて電極箔Mの先端が図略の巻取装置に接続されているものとする。また、電極材PのスラリSは、タンク14内に貯留されているものとする。
【0033】
制御装置30は、巻取装置を駆動してロールRから電極箔Mを引き出して電極箔Mを搬送するとともに、ポンプPを駆動してタンクTから電極材PのスラリSを配管15を通してダイコータ12に供給し、バックアップローラ11に支持された電極箔Mの片面に電極材PのスラリSを塗工する(図2のステップS1)。このとき、電極箔Mは、バックアップローラ11上を一定速度で搬送され、電極材PのスラリSは、ダイコータ12から一定量で吐出されるので、電極箔Mの片面に電極材PのスラリSを略均一に塗工できる。
【0034】
次に、制御装置30は、バックアップローラ11の1周の時間内において、調整前測定装置31から電極材Pの膜厚測定値を所定回数取得し(図2のステップS2,S3)、取得した電極材Pの膜厚測定値の和を所定回数で除算して電極材Pの平均膜厚を算出する(図2のステップS4)。そして、制御装置30は、予め記憶している電極箔Mに塗工される電極材Pの膜厚と膜厚調整装置20の調整量との関係を参照し、算出した電極材Pの平均膜厚に対応する膜厚調整装置20の調整量を取得する(図2のステップS5)。そして、制御装置30は、取得した膜厚調整装置20の調整量に基づいて膜厚調整装置20のプレスローラ21,22間のクリアランスを調整制御する(図2のステップS6)。
【0035】
次に、制御装置30は、バックアップローラ11の1周の時間とプレスローラ21,22の1周の時間との最小公倍数の時間内において、調整後測定装置32から電極材Pの膜厚測定値を所定回数取得し(図2のステップS7,S8)、取得した電極材Pの膜厚測定値の和を所定回数で除算して電極材Pの平均膜厚を算出する(図2のステップS9)。そして、制御装置30は、算出した電極材Pの平均膜厚と予め記憶している電極材Pの設定膜厚との差を算出し(図2のステップS10)、算出した膜厚差に基づいて膜厚調整装置20のプレスローラ21,22間のクリアランスを調整制御する(図2のステップS11)。
【0036】
そして、制御装置30は、1製造ロットが完了したか否かを判断し(図2のステップS12)、1製造ロットが完了していない場合はステップS7に戻って上述の処理を繰り返し、1製造ロットが完了したら処理を終了する。
【0037】
(効果)
本実施形態の電極製造設備1は、搬送される電極箔Mの面に電極材Pを塗工する塗工装置10と、電極材Pが塗工され搬送される電極箔Mをプレスして塗工された電極材Pの膜厚を調整する膜厚調整装置20と、塗工された電極材Pの膜厚を測定する膜厚測定装置30と、膜厚測定装置30で測定される塗工された電極材Pの膜厚のうち、塗工装置10による第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、特定膜厚に基づいて膜厚調整装置20の調整動作を制御する制御装置40と、を備える。これによれば、制御装置40は、塗工装置10による電極材Pの塗工状態に応じて、膜厚調整装置20による電極材Pの膜厚調整を安定させるのに最適な特定膜厚を適宜選択できる。
【0038】
また、特定膜厚は、膜厚データ群の平均膜厚である。これによれば、制御装置40は、サンプリング時間を最適化して電極材Pの膜厚の平均膜厚を算出し膜厚調整しているので、膜厚の変動波の立ち上がり部分で上方向に突出する波形の乱れである変動膜厚のオーバーシュートや、膜厚の変動波の立ち下がり部分で下方向に突出する波形の乱れである変動膜厚のアンダーシュートが発生しても、平均膜厚には大きな誤差が生じ難く、安定した膜厚の電極を製造でき、電極の歩留まりが向上する。
【0039】
また、サンプリング時間は、塗工装置10による第一膜厚変動周期と膜厚調整装置20による第二膜厚変動周期との最小公倍数の時間である第三膜厚変動周期の整数倍であってもよい。これにより、バックアップローラ11及びプレスローラ21,22に発生する芯ずれによる振れの影響を抑制できるので、プレスされる電極材Pの膜厚を安定させることができる。
【0040】
また、塗工装置10は、電極箔Mを支持するバックアップローラ11を備え、第一膜厚変動周期は、バックアップローラ11が1周回転するときの回転時間である。これにより、バックアップローラ11に発生する芯ずれによる振れの影響を抑制できるので、塗工される電極材Pの膜厚を安定させることができる。
【0041】
また、膜厚調整装置20は、電極箔Mをプレスするプレスローラ21,22を備え、第二膜厚変動周期は、プレスローラ21,22が1周回転するときの回転時間である。これにより、バックアップローラ11に発生する芯ずれによる振れの影響に重畳されるプレスローラ21,22に発生する芯ずれによる振れの影響を抑制できるので、塗工される電極材Pの膜厚を安定させることができる。
【0042】
また、膜厚測定装置30は、膜厚調整装置20に対し上流側に配置される調整前測定装置31を備え、制御装置40は、調整前測定装置31による測定結果に関係付けられた膜厚調整装置20の調整量に基づいて膜厚調整装置20の調整動作を制御する。これにより、塗工される電極材Pの膜厚が多少変動しても膜厚調整を安定して行うことができる。
【0043】
また、プレス前の電極材Pの膜厚、膜厚調整装置20の調整量、プレス後の電極材Pの膜厚の関係を事前に実験から求めておいて、当該関係をメモリや記憶装置等の情報格納部に保存しておく。そして、測定、算出したプレス前の電極材Pの膜厚と、プレス後の電極材Pの膜厚に対応する膜厚調整装置20の調整量を情報格納部から読み出し、膜厚調整装置20の制御に反映させるように構成してしてもよい。
【0044】
また、膜厚調整装置20の調整量は、上述のように事前の実験から求めた関係から決定する場合だけでなく、プレス前の電極材Pの膜厚、膜厚調整装置20の調整量、プレス後の電極材Pの膜厚を演算パラメータとして含む理論式に基づいて必要な膜厚調整装置20の調整量を決定するように構成してもよい。
【0045】
また、膜厚測定装置30は、膜厚調整装置20に対し下流側に配置される調整後測定装置32を備え、制御装置40は、調整後測定装置32による測定結果と予め設定された設定膜厚との差に基づいて膜厚調整装置20の調整動作を制御する。例えば、設定膜厚よりプレス後の測定膜厚が大きければプレスローラ21,22間のクリアランスをより小さくする方向に制御し、逆に設定膜厚よりプレス後の測定膜厚が小さければプレスローラ21,22間のクリアランスをより大きくする方向に制御する。
【0046】
また、設定膜厚とプレス後の測定膜厚との差の上下限閾値を決めておいて、当該閾値を超える差が発生したときに膜厚調整装置20の調整動作を制御する。また、設定膜厚と測定した平均膜厚との差に限らず、設定膜厚と算出した膜厚との比等を用いてもよい。これにより、プレスローラ21,22に発生する熱膨張等に起因してプレスローラ21,22間のクリアランス量が変動して想定するクリアランス量からずれが生じ、プレス後の電極材Pの膜厚が設定膜厚からずれてしまう等の影響を抑制できるので、プレスされる電極材Pの膜厚を安定させることができる。また、電極材Pの膜厚は、インラインで測定可能となるので、ライン外作業工数が少なくなり製造効率を向上できるとともに、稼働率が向上してコストダウンに繋がる。
【0047】
また、設定膜厚は、電極の製造ロット数に基づいて設定される。膜厚調整装置20のプレスローラ21,22は、電極の製造ロット数の増加に従って発熱により膨張する傾向にあり、プレスローラ21,22間のクリアランスが小さくなって電極材Pの膜厚ddが薄くなり、更に、ある製造ロット数に達した後は膨張の程度が徐々に小さくなって電極材Pの膜厚ddが徐々に薄くなるからである。
【0048】
つまり初期ロット等の特定ロットのみを前提に設定膜厚を最適化すると、特定ロットとしては良好な範囲に電極材Pの膜厚が収まっても、他のロットでは適切な範囲から外れてしまうおそれがあり、ロット全体としては品質不良が発生し易くなるおそれがある。ロット全体として電極材Pの膜厚のばらつきが良好な範囲に収まるように電極材Pの膜厚を設定する。
【0049】
本実施形態の電極製造方法は、搬送される電極箔Mの面に電極材Pを塗工する塗工工程と、電極材Pが塗工され搬送される電極箔Mをプレスして塗工された電極材Pの膜厚を調整する膜厚調整工程と、塗工された電極材Pの膜厚を測定する膜厚測定工程と、膜厚測定工程で測定される塗工された電極材Pの膜厚のうち、塗工工程における第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚を求め、特定膜厚に基づいて膜厚の調整を制御する制御工程と、を備える。これによれば、本実施形態の電極製造設備1と同様の効果を得ることができる。また、設備担当者の技能・熟練度に因らずに膜厚の調整量(膜厚調整装置20のプレスローラ21,22の調整量)を設定できるので、使い易さが向上する。
【0050】
(その他)
なお、上述の実施形態では、第1膜厚変動周期として、塗工装置10のバックアップローラ11が1周回転するときの回転時間(バックアップローラ11の1周分の距離の電極材Pを移動送りさせる時間)の整数倍を事例として説明したが、バックアップローラ11以外の送り機構を用いる場合も含む。この場合は、送り機構に起因する変動周期をもとに平均膜厚を算出するサンプリング時間を設定していれば、送り機構はどのような機構も用いることができる。
【0051】
また、上述の実施形態では、第2膜厚変動周期として、膜厚調整装置20のプレスローラ21,22が1周回転するときの回転時間(プレスローラ21,22の1周分の距離の電極材Pを移動送りさせる時間)を事例として説明したが、プレスローラ21,22以外の送り機構を用いる場合も含む。この場合は、送り機構に起因する変動周期をもとに平均膜厚を算出するサンプリング時間を設定していれば、送り機構はどのような機構も用いることができる。
【0052】
また、上述の実施形態では、第一膜厚変動周期の整数倍であるサンプリング時間中に得られる膜厚データ群から特定膜厚として平均膜厚を制御装置40にて求める構成としたが、当該膜厚データ群から求めた指標であれば、平均膜厚以外を制御装置40にて求める構成としてもよい。
【0053】
例えば、サンプリング時間中に得られる最大膜厚、最小膜厚、最大膜厚と最小膜厚との膜厚差、最大膜厚と最小膜厚との中間膜厚、出現頻度の高い膜厚、などであってもよい。
また、最大膜厚や最小膜厚など膜厚データ群の一部だけを取り出したり、膜厚データ群全体を平均化したりする場合、データを取扱い易いという反面、演算過程やデータ抽出過程で全体情報の一部が欠落する影響もある。そこで、膜厚データ群全体そのものや、データ加工を加えた上での膜厚データ群全体(例えば、膜厚データ群全体を平均膜厚や設定膜厚などを元にオフセット調整する、など)を特定膜厚として用いてもよい。
【0054】
また、平均膜厚や膜厚データ群全体を特定膜厚とする場合、異常値を取り除いてもよい。例えば、異常値として排除する閾値を設定しておいて、膜厚測定装置30の測定ミスや電気ノイズ、塗工装置10の誤動作や機械振動などによる一部の異常値を膜厚データ群全体の中から取り除いた上で、残りの全体データそのものや、残りの全体データから求めた平均膜厚などを特定膜厚として用いてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、非接触型の膜厚測定装置30を用いる構成としたが、接触型の膜厚測定装置を用いる構成としてもよい。また、電極製造装置1は、電極箔Mの片面に電極材Pを塗工する装置としたが、電極箔Mの両面に電極材Pを塗工する装置にも本発明を適用可能である。また、本発明は、リチウムイオン二次電池の電極の製造に限定されるものではなく、例えばキャパシタ等の製造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:電極製造設備、 10:塗工装置、 11:バックアップローラ、 20:膜厚調整装置、 21,22:プレスローラ、 30:膜厚測定装置、 31:調整前測定装置、 32:調整後測定装置、 40:制御装置、 P:電極材、 M:金属箔、 R:ロール、 S:スラリ
図1
図2
図3
図4