特開2016-225097(P2016-225097A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000003
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000004
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000005
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000006
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000007
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000008
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000009
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000010
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000011
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000012
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000013
  • 特開2016225097-導通遮断装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225097(P2016-225097A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】導通遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   H01H39/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-109417(P2015-109417)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥宜
(72)【発明者】
【氏名】福山 岳樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 啓介
(57)【要約】
【課題】導電体の切断に伴い切断端間で発生したアークを効率よく減衰させる。
【解決手段】導通遮断装置Cは、長尺板状の被切断部22を有する導電体20、消弧室32、ガス発生器59、及び刃部62を有する切断部材60を備える。導通遮断装置Cでは、ガス発生器59で発生されたガスにより切断部材60が消弧室32に向けて移動させられて、被切断部22が刃部62によって消弧室32で切断される。この切断により、被切断部22には、互いに離間した状態の一対の切断端が生じ、電気回路を構成する機器間の導通が遮断される。刃部62の外壁面であって、同刃部62による被切断部22の切断後に両切断端の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域には嵌合部70が設けられる。消弧室32の内壁面には、嵌合部70の少なくとも一部が接触させられた状態で嵌合される被嵌合部45が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を構成する機器間に介在され、かつ一部に長尺板状の被切断部を有する導電体と、
前記被切断部の厚み方向の一方に形成された消弧室と、
前記厚み方向であって、前記被切断部を挟んで前記消弧室の反対側に配設されたガス発生器と、
前記被切断部及び前記ガス発生器の間に配設され、同ガス発生器で発生されたガスにより前記消弧室に向けて移動させられて、同被切断部を刃部により同消弧室で切断する切断部材と
を備え、前記切断により、前記被切断部には、互いに離間した状態の一対の切断端を生じさせ、前記機器間の導通を遮断するようにした導通遮断装置であって、
前記刃部の外壁面であって、同刃部による前記被切断部の切断後に両切断端の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域には嵌合部が設けられ、
前記消弧室の内壁面には、前記嵌合部の少なくとも一部が接触された状態で嵌合される被嵌合部が設けられている導通遮断装置。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記刃部のうち、前記切断部材の移動方向における先端部に設けられ、
前記被嵌合部は、前記消弧室の内壁面のうち前記嵌合部の先端面に対向する奥壁面に設けられている請求項1に記載の導通遮断装置。
【請求項3】
前記被嵌合部は、前記消弧室の前記奥壁面において開口する凹部により構成されており、
前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入されることで、前記切断部材の移動方向における先端において同被嵌合部の内壁面に接触された状態で同被嵌合部に嵌合されるものであり、
前記被嵌合部の少なくとも奥部は、前記被切断部の長さ方向における寸法が、前記消弧室の前記奥壁面から遠ざかるに従い小さくなるように形成されている請求項2に記載の導通遮断装置。
【請求項4】
前記被嵌合部の内壁面のうち、前記嵌合部の前記先端面に対向する内奥壁面には、同被嵌合部に挿入される同嵌合部により押圧されて変形させられるリブが設けられている請求項3に記載の導通遮断装置。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記刃部のうち、前記被切断部の幅方向に直交する側壁面に設けられ、
前記被嵌合部は、前記消弧室のうち、前記幅方向に直交する側壁面に設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の導通遮断装置。
【請求項6】
前記被嵌合部は、前記消弧室の前記側壁面において開口し、かつ前記切断部材の移動方向に沿って延びる凹部により構成されており、
前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入されることで、前記切断部材の移動方向における先端において同被嵌合部の内壁面に接触された状態で同被嵌合部に嵌合されるものであり、
前記被嵌合部のうち、前記切断部材の移動方向における少なくとも先端部は、同被嵌合部の深さが同方向における先端側ほど浅くなるように形成されている請求項5に記載の導通遮断装置。
【請求項7】
前記消弧室は前記導電体に面して開口する多角形状の開口部を有し、かつ同開口部において前記被切断部の幅方向に沿って延びる一辺を切断エッジ部としており、
前記刃部は、前記消弧室内で前記切断エッジ部に接近した箇所を移動することにより、同切断エッジ部との間で前記被切断部を切断するものであり、
前記切断部材は弾性変形し得る材料により形成されており、
前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入される際に前記切断部材を前記切断エッジ部側へ弾性変形させることで、同被嵌合部に接触されるものである請求項3に記載の導通遮断装置。
【請求項8】
前記被嵌合部の内壁面のうち、前記嵌合部の前記先端面に対向する面には、前記嵌合部により押圧されて変形させられるリブが設けられている請求項2に記載の導通遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を構成する機器間の導通を、導電体の切断を通じて遮断する導通遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路には、その電気回路を構成する機器の異常時や、同電気回路が搭載されたシステムの異常時に作動することによって機器間の導通を遮断する導通遮断装置が設けられる。その一態様として、導電体、ガス発生器及び切断部材を備えた導通遮断装置が、例えば特許文献1に記載されている。導電体は、電気回路を構成する機器間に介在される。ガス発生器は、導電体から離れた箇所に配設され、ガスを発生する。切断部材は、導電体及びガス発生器の間に配設され、ガス発生器からのガスにより移動させられて導電体を切断する。この切断により、導電体には互いに離間した状態の一対の切断端が生じ、導電体が両切断端間で分断された状態となり、機器間の導通が遮断される。
【0003】
ところで、導通遮断装置が作動して、通電状態の導電体が切断されると、切断により生じた一対の切断端間で電位差が生じることによりアークが発生する、すなわち、両切断端間に存在する気体の絶縁が破壊されて電流が流れる現象が生ずる場合がある。
【0004】
アークが発生すると、両切断端間が電気的に接続された状態となり、導電体は物理的に切断されているにも拘わらず、通電した状態を維持する(導通が遮断されない)おそれがある。そのほか、アークは導電体や周辺の樹脂製の部材を溶融させるおそれがある。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に記載された導通遮断装置では、上記構成に加え、切断部材による導電体の切断が行なわれるとともに、切断により導電体に生ずる一対の切断端間で発生するアークを減衰させる消弧室が設けられている。消弧室は、電気絶縁性を有する材料により形成されている。消弧室の内壁面であって、導電体の切断時に両切断端の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間を少なくとも含む領域には凹部が設けられている。
【0006】
そのため、通電状態の導電体が切断部材により切断された場合、アークが一方の切断端から他方の切断端に向け、凹部の壁面に沿って流れる。アークが凹部の壁面に沿う分、アークが流れる経路の長さは、凹部の設けられていない場合よりも長くなり、アークが減衰される。従って、アークが導通遮断装置に及ぼす影響は、アークを減衰させるための対策が講じられていないものよりも小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−49300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術は、上述したように、アークが流れる経路を長くして、アークを減衰させようとするものである。しかし、この技術がアークを減衰させるための唯一の方式というわけではなく、これとは異なる方式でアークを減衰させることのできる導通遮断装置も要望されている。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、導電体の切断に伴い切断端間で発生したアークを効率よく減衰させることのできる導通遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する導通遮断装置は、電気回路を構成する機器間に介在され、かつ一部に長尺板状の被切断部を有する導電体と、前記被切断部の厚み方向の一方に形成された消弧室と、前記厚み方向であって、前記被切断部を挟んで前記消弧室の反対側に配設されたガス発生器と、前記被切断部及び前記ガス発生器の間に配設され、同ガス発生器で発生されたガスにより前記消弧室に向けて移動させられて、同被切断部を刃部により同消弧室で切断する切断部材とを備え、前記切断により、前記被切断部には、互いに離間した状態の一対の切断端を生じさせ、前記機器間の導通を遮断するようにした導通遮断装置であって、前記刃部の外壁面であって、同刃部による前記被切断部の切断後に両切断端の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域には嵌合部が設けられ、前記消弧室の内壁面には、前記嵌合部の少なくとも一部が接触された状態で嵌合される被嵌合部が設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、導電体に通電された状態で、ガス発生器からガスが発生されると、そのガスの圧力が切断部材に加わり、同切断部材が消弧室側へ移動させられる。被切断部が切断部材の刃部によって押圧され、消弧室において切断される。この切断に伴い、被切断部には、互いに離間した状態の一対の切断端が生ずる。導電体は、両切断端間で分断された状態となり、機器間の導通が遮断される。
【0012】
このとき、一方の切断端からは、アークが、切断部材の刃部と消弧室との間の空間を経由して、他方の切断端に向けて流れようとする。しかし、被切断部の切断後には、両切断端間において、消弧室の被嵌合部に対し切断部材の嵌合部が嵌合されて、嵌合部と被嵌合部との間の空間が狭くされるため、アークはこの空間を流れにくい。
【0013】
しかも、上記嵌合は、嵌合部の少なくとも一部が被嵌合部に接触された状態でなされる。嵌合部と被嵌合部との間の空間が、接触部分を境として被切断部の長さ方向に分断されたような状態となり、アークがこの空間をより一層流れにくくなる。
【0014】
上記導通遮断装置において、前記嵌合部は、前記刃部のうち、前記切断部材の移動方向における先端部に設けられ、前記被嵌合部は、前記消弧室の内壁面のうち前記嵌合部の先端面に対向する奥壁面に設けられていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、切断部材の刃部による被切断部の切断後には、刃部のうち、切断部材の移動方向における先端部に設けられた嵌合部が、消弧室の内壁面のうち嵌合部の先端面に対向する奥壁面に設けられた被嵌合部に嵌合される。この嵌合に際しては、嵌合部の少なくとも一部が被嵌合部に接触される。このように、嵌合部の被嵌合部との接触を伴う嵌合は、切断部材の移動方向における先端側で行なわれる。
【0016】
そのため、アークは、一方の切断端から、切断部材の移動方向における先端側へ向かって流れ、嵌合部と被嵌合部との間の空間を経由した後、他方の切断端に向かって流れることになる。しかし、上記先端側では嵌合部と被嵌合部との間の空間が狭く、分断された状態となっていることからアークが同空間を流れにくい。
【0017】
上記導通遮断装置において、前記被嵌合部は、前記消弧室の前記奥壁面において開口する凹部により構成されており、前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入されることで、前記切断部材の移動方向における先端において同被嵌合部の内壁面に接触された状態で同被嵌合部に嵌合されるものであり、前記被嵌合部の少なくとも奥部は、前記被切断部の長さ方向における寸法が、前記消弧室の前記奥壁面から遠ざかるに従い小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0018】
被嵌合部の少なくとも奥部が上記の条件を満たす形状に形成されることで、嵌合部が被嵌合部に挿入される過程で、同嵌合部の先端が被嵌合部において、被切断部の長さ方向に対向する内壁面の少なくとも一方に対し接触しやすくなる。嵌合部は、その先端を被嵌合部の上記内壁面に接触させた状態で同被嵌合部に嵌合される。
【0019】
上記導通遮断装置において、前記被嵌合部の内壁面のうち、前記嵌合部の前記先端面に対向する内奥壁面には、同被嵌合部に挿入される同嵌合部により押圧されて変形させられるリブが設けられていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、嵌合部の被嵌合部への挿入が進むにつれて、嵌合部の先端面が被嵌合部の内奥壁面に近づく。嵌合部の先端面が、被嵌合部の上記内奥壁面に設けられたリブに接触した後にも、嵌合部の移動が続くと、リブが嵌合部によって押圧されて変形させられる。嵌合部の先端面と被嵌合部の内奥壁面との間の空間が、上記のように変形したリブによって埋められた状態となり、同空間がより一層小さくされ、アークがこの空間をより一層流れにくくなる。
【0021】
上記導通遮断装置において、前記嵌合部は、前記刃部のうち、前記被切断部の幅方向に直交する側壁面に設けられ、前記被嵌合部は、前記消弧室のうち、前記幅方向に直交する側壁面に設けられていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、切断部材の刃部による被切断部の切断後には、同刃部のうち被切断部の幅方向に直交する側壁面に設けられた嵌合部が、消弧室において、被切断部の幅方向に直交する側壁面に設けられた被嵌合部に嵌合される。この嵌合に際しては、嵌合部の少なくとも一部が被嵌合部に接触される。このように、嵌合部の被嵌合部との接触を伴う嵌合は、被切断部の幅方向に沿った側で行なわれる。
【0023】
そのため、アークは、一方の切断端から、被切断部の幅方向に沿って流れ、嵌合部と被嵌合部との間の空間を経由した後、他方の切断端に向かって流れることになる。しかし、被切断部の幅方向における外端側では嵌合部と被嵌合部との間の空間が狭く、分断された状態となっていることからアークが同空間を流れにくい。
【0024】
上記導通遮断装置において、前記被嵌合部は、前記消弧室の前記側壁面において開口し、かつ前記切断部材の移動方向に沿って延びる凹部により構成されており、前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入されることで、前記切断部材の移動方向における先端において同被嵌合部の内壁面に接触された状態で同被嵌合部に嵌合されるものであり、前記被嵌合部のうち、前記切断部材の移動方向における少なくとも先端部は、同被嵌合部の深さが同方向における先端側ほど浅くなるように形成されていることが好ましい。
【0025】
被嵌合部のうち、切断部材の移動方向における少なくとも先端部が上記の条件を満たす形状に形成されることで、嵌合部が被嵌合部に挿入される過程で、同嵌合部の先端が被嵌合部において、被切断部の幅方向に対向する内壁面の少なくとも一方に対し接触しやすくなる。嵌合部は、その先端を被嵌合部の上記内壁面に接触させた状態で同被嵌合部に嵌合される。
【0026】
上記導通遮断装置において、前記消弧室は前記導電体に面して開口する多角形状の開口部を有し、かつ同開口部において前記被切断部の幅方向に沿って延びる一辺を切断エッジ部としており、前記刃部は、前記消弧室内で前記切断エッジ部に接近した箇所を移動することにより、同切断エッジ部との間で前記被切断部を切断するものであり、前記切断部材は弾性変形し得る材料により形成されており、前記嵌合部は、前記被嵌合部に挿入される際に前記切断部材を前記切断エッジ部側へ弾性変形させることで、同被嵌合部に接触されるものであることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、導電体に通電された状態でガス発生器からガスが発生されると、そのガスにより、切断部材の刃部は、消弧室内であって、開口部において被切断部の幅方向に沿って延びる一辺により構成される切断エッジ部に接近した箇所を移動する。導電体は、これらの間隔の狭い切断エッジ部及び刃部の間で切断される。
【0028】
ここで、切断部材は弾性変形し得る材料によって形成されている。そのため、嵌合部が被嵌合部に挿入される際に、切断部材が切断エッジ部側へ弾性変形させられることで、嵌合部が被嵌合部に接触しつつ嵌合される。
【0029】
上記導通遮断装置において、前記被嵌合部の内壁面のうち、前記嵌合部の前記先端面に対向する面には、前記嵌合部により押圧されて変形させられるリブが設けられていることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、嵌合部の被嵌合部への挿入が進むにつれて、嵌合部の先端面が被嵌合部の内壁面のうち、嵌合部の先端面に対向する面に近づく。嵌合部の先端面が、被嵌合部の上記面に設けられたリブに接触した後にも、嵌合部の移動が続くと、リブが嵌合部によって押圧されて変形させられる。嵌合部の先端面と被嵌合部の上記面との間の空間が、上記のように変形したリブによって埋められた状態となり、同空間がより一層小さくされ、アークがこの空間をより一層流れにくくなる。
【発明の効果】
【0031】
上記導通遮断装置によれば、導電体の切断に伴い切断端間で発生したアークを効率よく減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態における導通遮断装置の内部構造を示す断面図。
図2図1の導通遮断装置が適用される電気回路の概略構成を示す略図。
図3図1におけるX部を拡大して示す部分断面図。
図4図3の4−4線断面図。
図5】一実施形態の導通遮断装置において、切断部材の刃部及び嵌合部を示す部分斜視図。
図6】(a)は、一実施形態の導通遮断装置において、導電体の被切断部が切断された状態を示す部分断面図、(b)は、図6(a)の一部を拡大して示す部分断面図。
図7】(a)は図6(a)の7−7線断面図、(b)は図7(a)の一部を拡大して示す部分断面図。
図8図6(b)に対応する図であり、(a)は、被嵌合部の内奥壁面にリブが設けられた変形例を示す部分断面図、(b)は、図8(a)のリブが嵌合部により押圧されて変形させられた状態を示す部分断面図。
図9】嵌合部及び被嵌合部の変形例を示す図であり、切断部材が切断エッジ部側へ弾性変形させられることで、嵌合部が複数箇所において被嵌合部に接触させられた状態を示す部分断面図。
図10図6(b)に対応する図であり、被嵌合部の変形例を示す部分断面図。
図11図6(b)に対応する図であり、嵌合部及び被嵌合部の変形例を示す部分断面図。
図12図6(a)に対応する図であり、変形例の導通遮断装置により導電体の被切断部が切断された状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、車両用の導通遮断装置に具体化した一実施形態について、図1図7を参照して説明する。
図2は、導通遮断装置Cが適用される電気回路11を示している。電気回路11は、これを構成する機器として蓄電池12及び電気機器13を備えている。この電気回路11では、蓄電池12からの電力供給によって電気機器13が作動させられる。電気機器13は、蓄電池12から入力される電力を昇圧したうえで出力するコンバータ14と、同コンバータ14から入力される直流電力をモータ駆動に適した交流電力に変換して出力するインバータ15と、インバータ15から出力される交流電力によって駆動されるモータ16とによって構成されている。
【0034】
上記電気回路11は車両10に搭載されている。この車両10に対し衝突による衝撃が加わった場合には、電気機器13が適正に作動しなくなったり、上記電気回路11からの漏電を招いたりするおそれがある。そのため、車両10には、その衝突に際して、電気回路11を構成する機器間、例えば、蓄電池12と電気機器13との間の導通を遮断する導通遮断装置Cが設けられている。車両10には、その衝突の有無を検出する衝突センサ17と、マイクロコンピュータを中心に構成され、かつ衝突センサ17からの信号が入力される電子制御ユニット18とが取付けられている。電子制御ユニット18は、衝突センサ17の出力信号をもとに車両10の衝突を検知すると、導通遮断装置Cを作動させる。この作動により、蓄電池12から電気機器13への電力供給が遮断される。
【0035】
次に、導通遮断装置Cの基本的な構造について説明する。図1に示すように、導通遮断装置Cは、導電体20、ケース30、火薬式のガス発生器59及び切断部材60を備えている。次に、導通遮断装置Cを構成する各部材について説明する。
【0036】
<導電体20>
導電体20は、蓄電池12及びコンバータ14の間を導通させる導通経路を構成するものであり、バスバーとも呼ばれる。導電体20は、電気伝導率の高い金属材料によって形成されている。こうした金属材料としては、銅が代表的であるが、その他の材料、例えば真鍮、アルミニウム等が用いられてもよい。導電体20の両端部は、外部接続部20a,20bを構成している。これらの外部接続部20a,20bは、蓄電池12及びコンバータ14に接続される箇所である。すなわち、各外部接続部20a,20bには、貫通孔21があけられている。そして、上記貫通孔21を利用してねじ等によって、外部接続部20a,20bのうちの一方が、蓄電池12に導通する端子に接続されるとともに、他方が、コンバータ14に導通する端子に接続される。このようにして、導電体20が外部接続部20a,20bにおいて、電気回路11の上記端子にそれぞれ接続されることにより、蓄電池12及びコンバータ14の間が導電体20を通じて導通される。
【0037】
導電体20は、両外部接続部20a,20bのほかに、それらの間に被切断部22を有している。被切断部22は、両外部接続部20a,20b間において、それらの並設方向(図1の左右方向)へ延びていて、長尺板状をなしている。なお、被切断部22の延びる方向、すなわち、両外部接続部20a,20bの並設方向を、被切断部22の長さ方向という場合がある。また、被切断部22の厚み方向というときには、切断前の被切断部22の厚み方向を指すものとする。
【0038】
<ケース30>
ケース30は、電気絶縁性を有し、かつ強度の高い材料、例えば樹脂材料によって形成されており、その内部には、上記導電体20を配置するための配置部31が形成されている。導電体20は、外部接続部20a,20bをケース30の外部に露出させた状態で、上記配置部31に配設されている。ケース30内において、被切断部22の厚み方向の一方(図1では上方)には消弧室32が形成されている。ケース30内において、上記厚み方向であって、被切断部22を挟んで消弧室32の反対側(図1の下側)には可動室41が形成されている。
【0039】
消弧室32は、切断部材60により被切断部22の切断が行なわれるとともに、切断により被切断部22に生ずる一対の切断端23,24(図6(a)参照)間で発生するアークを減衰させるための部屋である。消弧室32の奥行き(図1の紙面に直交する方向の寸法)は、被切断部22の幅(図1の紙面に直交する方向の寸法)よりも僅かに大きく設定されており、切断された被切断部22が同消弧室32内に入り込むことが可能となっている。
【0040】
図3に示すように、消弧室32は、切断前の被切断部22に面して開口する多角形状の開口部33を有している。この開口部33において、被切断部22の長さ方向における一方(図3の左方)の辺は、被切断部22の幅方向に延びていて切断エッジ部34を構成している。
【0041】
消弧室32は、第1側壁面35、第2側壁面36、一対の第3側壁面37、及び奥壁面38を有している。第1側壁面35は、切断エッジ部34を含んだ状態で、切断前の被切断部22に対し直交又はそれに近い状態で交差する方向へ延びている。第2側壁面36は、第1側壁面35に対し、被切断部22の長さ方向へ離間した箇所に位置している。第2側壁面36は、開口部33から遠ざかるほど(図3の上側ほど)、第1側壁面35との間隔が狭まるように、同第1側壁面35に対し傾斜している。各第3側壁面37は、被切断部22の幅方向に直交している。奥壁面38は、開口部33から遠ざかった箇所に位置し、切断前の被切断部22に対し平行又はそれに近い状態となっている。
【0042】
図1に示すように、可動室41は、被切断部22の厚み方向に沿って延びる略円筒状をなしている。可動室41の内壁面の複数箇所には、上記厚み方向に沿って延びるガイド溝42が形成されている。
【0043】
<ガス発生器59>
ガス発生器59は、導通遮断装置Cの駆動源として用いられている。ガス発生器59は、被切断部22の厚み方向であって、同被切断部22を挟んで消弧室32の反対側において、自身の一部を可動室41に露出させた状態でケース30内に配設されている。ガス発生器59は電子制御ユニット18に接続されており、同電子制御ユニット18からの作動信号の入力に伴って内蔵の火薬を着火及び燃焼させてガスを発生させる。
【0044】
なお、火薬式のガス発生器59を用いて駆動される装置には、一般に、駆動源として他の方式(電磁式等)のものが用いられる装置と比較して、迅速な駆動が可能であり、低廉で、しかも動作信頼性が高い特徴がある。
【0045】
<切断部材60>
切断部材60は、被切断部22の厚み方向に沿って延びる略円柱状の本体部61と、本体部61から消弧室32側へ突出し、かつ上記切断エッジ部34と協働して被切断部22を切断する刃部62とを備えている。切断部材60は、可動室41内であって被切断部22とガス発生器59との間に配設されている。本体部61の外壁面の複数箇所には、被切断部22の厚み方向に沿って延びるガイド突部63が設けられている。本体部61は、ガイド突部63において、可動室41のガイド溝42に対し、被切断部22の厚み方向へ移動可能に係合されている。
【0046】
図3図5及び図6(a)に示すように、刃部62は、第1側壁面65、第2側壁面66、一対の第3側壁面67及び先端面68を有している。第1側壁面65は、切断エッジ部34から、被切断部22の長さ方向へ、同切断エッジ部34と協働して被切断部22を切断(剪断)するのに適した、僅かな距離D1(図3参照)、例えば、0.5mm程度離れた箇所で、切断前の被切断部22に対し直交又はそれに近い状態で交差する方向へ延びている。第2側壁面66は、第1側壁面65に対し、被切断部22の長さ方向へ離間した箇所に位置している。第2側壁面66は、消弧室32の上記第2側壁面36に対応して傾斜、すなわち、本体部61から遠ざかるほど(図6(a)の上側ほど)、上記第1側壁面65との間隔が狭まるように、同第1側壁面65に対し傾斜している。一対の第3側壁面67は、被切断部22の幅方向に直交している。先端面68は、刃部62において本体部61から遠ざかった箇所に位置し、切断前の被切断部22に対し平行又はそれに近い状態となっている。
【0047】
なお、上記切断部材60は、電気絶縁性を有し、かつ強度が高く、弾性変形し得る材料、例えば樹脂材料を用いて形成されている。
上記切断部材60が用いられて被切断部22が切断されると、その切断により生じた一対の切断端23,24は、被切断部22の長さ方向及び厚み方向に離間する。一方の切断端23は、切断エッジ部34の近くに位置する。他方の切断端24は、刃部62の先端面68上であって、第1側壁面65と第2側壁面66との中間部分に位置する。
【0048】
上述した構造が、導通遮断装置Cの基本構造である。本実施形態では、上記基本構造に加え、刃部62に嵌合部70が設けられ、消弧室32に被嵌合部45が設けられている。次に、各部について説明する。
【0049】
<嵌合部70>
嵌合部70は、刃部62の外壁面であって、同刃部62による被切断部22の切断後に両切断端23,24の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域に設けられている。この条件を満たす箇所として、嵌合部70は、第1側壁面65に接近した箇所で、刃部62の周り(先端面68上、両第3側壁面67上)に設けられている。
【0050】
図5図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示すように、嵌合部70は、上嵌合部71、一対の側嵌合部72、及び一対の連結嵌合部73によって構成されている。上嵌合部71は、刃部62の先端面68のうち第1側壁面65寄りの箇所から上方へ突出していて、被切断部22の幅方向に細長い形状をなしている。この嵌合部70の切断エッジ部34側の面は、刃部62の第1側壁面65と同一平面上に位置している。そのため、嵌合部70は、刃部62と同様、切断エッジ部34と協働して被切断部22を切断する機能を有している。各側嵌合部72は、刃部62の第3側壁面67のうち第1側壁面65寄りの箇所から、被切断部22の幅方向における外側へ突出していて、上下方向に細長い形状をなしている。各連結嵌合部73は、上嵌合部71において、被切断部22の幅方向における両外端部と、各側嵌合部72において切断部材60の移動方向の先端部との間に設けられて、それらを互いに連結している。
【0051】
<被嵌合部45>
図4図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示すように、被嵌合部45は、嵌合部70の少なくとも一部が接触された状態で嵌合される箇所である。この条件を満たす箇所として、被嵌合部45は、第1側壁面35に接近した箇所で、奥壁面38及び両第3側壁面37の周りに設けられている。
【0052】
被嵌合部45は、上被嵌合部46、一対の側被嵌合部47、及び一対の連結被嵌合部48によって構成されている。上被嵌合部46は、奥壁面38のうち第1側壁面35寄りの箇所において開口し、かつ上方へ凹む凹部によって構成されている。上被嵌合部46は、被切断部22の幅方向に沿って延びている。
【0053】
各側被嵌合部47は、各第3側壁面37のうち第1側壁面35寄りの箇所から被切断部22の幅方向における両方の外側へ凹んでいる。各側被嵌合部47は、切断部材60の移動方向に沿って延びている。各連結被嵌合部48は、上被嵌合部46において、被切断部22の幅方向における両端部と、各側被嵌合部47において切断部材60の移動方向の先端部との間に設けられて、それらを互いに連結している。
【0054】
被嵌合部45における上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48に対しては、嵌合部70における上嵌合部71及び両連結嵌合部73が挿入される。この挿入により、上嵌合部71及び両連結嵌合部73は、自身の少なくとも一部において上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の内壁面に接触する。
【0055】
また、被嵌合部45における両側被嵌合部47に対しては、嵌合部70における両側嵌合部72が挿入される。
上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48において、消弧室32の奥壁面38から最も遠ざかった面を内奥壁面49といい、内奥壁面49の近傍部分(内奥壁面49を含む)を奥部51というものとする。
【0056】
奥部51において、被切断部22の幅方向に沿って互いに平行に延びる一対の縁部52には、傾斜面53がそれぞれ形成されている。縁部52毎の傾斜面53は、被切断部22の長さ方向における両縁部52間の寸法L1が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなるように、切断部材60の移動方向に対し傾斜している。
【0057】
また、奥部51において、被切断部22の長さ方向に沿って互いに平行に延びる一対の縁部54には、傾斜面55がそれぞれ形成されている。縁部54毎の傾斜面55は、被切断部22の幅方向における両縁部54間の寸法L2が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなるように、切断部材60の移動方向に対し傾斜している。
【0058】
さらに、上記奥部51における各連結被嵌合部48は、嵌合部70における両側嵌合部72及び両連結嵌合部73が、被嵌合部45における両側被嵌合部47及び連結被嵌合部48に沿って移動する際の先端部を構成する。この先端部では、上記両傾斜面55の形成により、第3側壁面37からの深さD2が、切断部材60の移動方向における先端側ほど浅くなっている。
【0059】
次に、上記のように構成された本実施形態の導通遮断装置Cの作用について説明する。
車両10の衝突が衝突センサ17によって検知されないときには、電子制御ユニット18からガス発生器59に対し作動信号が出力されず、同ガス発生器59からガスが発生されない。図1及び図3に示すように、切断部材60は、被切断部22とガス発生器59との間に位置し、消弧室32から後退している。そのため、被切断部22は切断されず、蓄電池12及びコンバータ14の間は導電体20を介して導通された状態となる。
【0060】
これに対し、導電体20に通電されているときに、車両10の衝突が衝突センサ17によって検知されると、電子制御ユニット18からガス発生器59に作動信号が出力される。この作動信号に応じ、ガス発生器59が作動してガスを発生する。切断部材60が、消弧室32側へ向かうガスの圧力を受ける。このとき、切断部材60は、ガイド突部63が可動室41のガイド溝42内を移動することによって、消弧室32側へ案内される。
【0061】
切断部材60は、上嵌合部71及び両連結嵌合部73を先頭に消弧室32へ向けて高速で移動する。この移動に伴い、切断部材60の上嵌合部71が最初に被切断部22に当たり、同被切断部22が消弧室32側へ押圧される。この押圧により、被切断部22のうち、切断エッジ部34の近傍部分に応力が集中して加わる。被切断部22が、切断エッジ部34と上嵌合部71との間で切断される。この切断により、図6(a),(b)に示すように、被切断部22には、互いに離間した一対の切断端23,24が生ずる。切断後も切断部材60の移動が続くことで、嵌合部70及び刃部62が消弧室32の内奥部へ入り込む。
【0062】
図4図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示すように、上記切断部材60の移動により、連結嵌合部73及び側嵌合部72が、対応する側被嵌合部47に順に挿入されて、同側被嵌合部47に沿ってスライド移動する。このスライド移動は、両切断端23,24間において行なわれる。
【0063】
一方の切断端23は、その発生後に、上記刃部62によって押圧されないため、切断エッジ部34の近くに位置する。これに対し、被切断部22のうち他方の切断端24を含む部分は、刃部62によって押圧され、消弧室32内に入り込む。被切断部22の上記部分は、上記押圧により、刃部62の傾斜した第2側壁面66と、消弧室32の傾斜した第2側壁面36とに沿って鈍角に折り曲げられる。これらの折り曲げに要する荷重は、切断に要する荷重よりも小さい。従って、切断部材60を消弧室32側へ移動させるために必要な荷重は小さくてすむ。
【0064】
そして、上記他方の切断端24は、刃部62の先端面68の近くに位置する。表現を変えると、切断端24は、消弧室32の奥壁面38と、消弧室32内に入り込んだ刃部62の先端面68との間に位置する。
【0065】
ここで、銅からなる導電体20は延性に富んでいる。被切断部22が切断時に伸びると、切断端23,24間の距離が短くなってアークが発生しやすい。
この点、本実施形態では、導電体20は、切断エッジ部34と、これに対し僅かな距離D1だけ離れた箇所を移動する嵌合部70及び刃部62(第1側壁面65)とによって切断される。そのため、切断エッジ部34がなく、かつ嵌合部70及び刃部62の押圧のみにより被切断部22が切断される場合に比べ、被切断部22の伸び量が少ない。従って、両切断端23,24の間隔が大きくなる。
【0066】
被切断部22は、両切断端23,24間で分断された状態となり、蓄電池12及びコンバータ14の間の導通が遮断される。このとき、切断により生じた両切断端23,24間で電位差が生じることによりアークが発生する、すなわち、両切断端23,24間に存在する気体の絶縁が破壊されて電流が流れる場合がある。この際、アークは、切断端23,24の一方から他方へ向けて、嵌合部70及び刃部62と消弧室32の内壁面との間の空間を経由して流れようとする。
【0067】
ところが、本実施形態では、切断部材60の移動に伴い、上嵌合部71が上被嵌合部46に挿入される。各側被嵌合部47に沿ってスライド移動した各連結嵌合部73が、対応する連結被嵌合部48に挿入される。
【0068】
ここで、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の奥部51では、一対の縁部52のそれぞれに傾斜面53が形成されていて、被切断部22の長さ方向における奥部51の寸法L1が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなっている。そのため、上記挿入の過程で、上嵌合部71及び両連結嵌合部73が両傾斜面53において奥部51に接触する。
【0069】
また、上記奥部51の一部は、被嵌合部45のうち、切断部材60の移動方向における先端部を構成している。この奥部51(先端部)の一対の縁部54には、それぞれ傾斜面55が形成されていて、各連結被嵌合部48の深さD2が先端側ほど浅くなっている。そのため、各連結嵌合部73は側被嵌合部47及び連結被嵌合部48に沿ってスライド移動することで、両傾斜面55において奥部51に接触する。
【0070】
そして、上記のように上嵌合部71及び両連結嵌合部73が、それぞれの少なくとも一部において、傾斜面53,55に接触した状態で、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48に嵌合される。また、両側嵌合部72が両側被嵌合部47に嵌合される。
【0071】
こうした嵌合により、上嵌合部71と上被嵌合部46との間の空間が狭くされ、各連結嵌合部73と各連結被嵌合部48との間の空間が狭くされ、各側嵌合部72と各側被嵌合部47との間の空間が狭くされる。
【0072】
そのため、アークの一部は、図5において経路R1で示すように、一方の切断端23(24)から、切断部材60の移動方向における先端側へ向かって流れ、上嵌合部71と上被嵌合部46との間の空間を経由した後、他方の切断端24(23)に向かって流れようとする。しかし、上記空間が狭いことから、アークは経路R1に沿って流れにくい。
【0073】
また、アークの一部は、図5において経路R2で示すように、一方の切断端23(24)から、被切断部22の幅方向における外端側へ流れ、側嵌合部72及び連結嵌合部73と、側被嵌合部47及び連結被嵌合部48との間の空間を経由した後、他方の切断端24(23)に向かって流れようとする。しかし、上記空間が狭いことから、アークは経路R2に沿って流れにくい。
【0074】
しかも、上記嵌合は、上嵌合部71及び両連結嵌合部73が、それらの少なくとも一部において、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の内壁面に接触された状態でなされる。これらの接触は、両切断端23,24間で行なわれる。上嵌合部71及び両連結嵌合部73と上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48との間の空間は、接触部分を境として被切断部22の長さ方向に分断されたような状態となる。従って、アークはより一層好適に減衰される。
【0075】
さらに、アークは、そのアークが流れる経路が長くなるに従い減衰されやすい。この点、本実施形態では、嵌合部70の外壁面と被嵌合部45の内壁面との間の空間が、一対の切断端23,24間でアークが流れる経路の一部を構成する。従って、こうした被嵌合部45及び嵌合部70が設けられない場合よりも、アークが流れる経路が長くなり、この点においてもアークが一層減衰されやすくなる。
【0076】
その結果、アークが導通遮断装置Cに及ぼす影響が小さくなる。例えば、両切断端23,24間がアークにより電気的に接続された状態が発生しにくくなる。導電体20が物理的に切断されているにも拘わらず、通電した状態に維持される(導通が遮断されない)現象が起こりにくくなる。また、高温のアークに晒されることが原因で、導電体20や周辺の樹脂製の部材(ケース30、切断部材60等)が軟化したり溶融したりする現象が抑制される。
【0077】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)刃部62の外壁面であって、同刃部62による被切断部22の切断後に両切断端23,24の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域に嵌合部70を設ける。消弧室32の内壁面には、嵌合部70の少なくとも一部が接触させられた状態で嵌合される被嵌合部45を設けている(図1)。
【0078】
そのため、被切断部22の切断後に、嵌合部70と被嵌合部45との間の空間を狭くし、同被切断部22の切断に伴い切断端23,24間で発生したアークを効率よく減衰させることができる。
【0079】
また、アークの流れる経路を長くして、アークを一層減衰させることができる。
(2)嵌合部70の上嵌合部71及び両連結嵌合部73を、刃部62のうち、切断部材60の移動方向における先端部に設ける。被嵌合部45の上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48を、消弧室32の内壁面のうち、上嵌合部71及び両連結嵌合部73の各先端面に対向する奥壁面38に設けている(図3図4)。
【0080】
そのため、嵌合部70の被嵌合部45との接触を伴う嵌合を、切断部材60の移動方向における先端側で行うことができる。嵌合部70と被嵌合部45との間の空間を狭く、かつ分断された状態にすることで、切断部材60の移動方向における先端側を経由してアークが流れるのを抑制して、アークを減衰させることができる。
【0081】
(3)被嵌合部45の上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48を、消弧室32の奥壁面38において開口する凹部により構成する。嵌合部70の上嵌合部71及び両連結嵌合部73を、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48に挿入させることで、切断部材60の移動方向における先端において、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の内壁面に対し、接触させた状態で嵌合させる。上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の各奥部51を、被切断部22の長さ方向における寸法L1が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなるように形成している(図4図6(a))。
【0082】
そのため、上嵌合部71及び両連結嵌合部73の各先端を、上被嵌合部46及び両連結被嵌合部48の各内壁面に接触させた状態で、嵌合部70を被嵌合部45に嵌合させることができる。
【0083】
(4)嵌合部70における両側嵌合部72及び両連結嵌合部73を、刃部62のうち、被切断部22の幅方向に直交する第3側壁面67に設ける。被嵌合部45の両側被嵌合部47及び両連結被嵌合部48を、消弧室32のうち、上記幅方向に直交する第3側壁面37に設けている(図4図7(a))。
【0084】
そのため、嵌合部70の被嵌合部45との接触を伴う嵌合を、被切断部22の幅方向における両外端側で行うことができる。嵌合部70と被嵌合部45との間の空間を狭く、かつ分断された状態にすることで、上記幅方向における両外端側を経由してアークが流れるのを抑制して、アークを減衰させることができる。
【0085】
(5)被嵌合部45の両側被嵌合部47及び両連結被嵌合部48を、消弧室32の第3側壁面37において開口し、かつ切断部材60の移動方向に沿って延びる凹部により構成する。嵌合部70の両側嵌合部72及び両連結嵌合部73を、被嵌合部45の両側被嵌合部47及び両連結被嵌合部48に挿入させスライド移動させることで、両連結嵌合部73を、切断部材60の移動方向における先端において、両連結被嵌合部48の内壁面に対し、接触させた状態で嵌合させる。各連結被嵌合部48のうち、切断部材60の移動方向における少なくとも先端部を、同連結被嵌合部48の深さD2が同方向における先端側ほど浅くなるように形成している(図4)。
【0086】
そのため、嵌合部70における両連結嵌合部73の先端を被嵌合部45における両連結被嵌合部48の内壁面に接触させた状態で、同嵌合部70を被嵌合部45に嵌合させることができる。
【0087】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<消弧室32について>
・消弧室32の開口部33の形状が、上記実施形態とは異なる多角形状に変更されてもよい。
【0088】
<被嵌合部45について>
図8(a)に示すように、被嵌合部45の内奥壁面49に、嵌合部70により押圧されて変形させられるリブ56が設けられてもよい。
【0089】
このようにすると、嵌合部70の被嵌合部45への挿入が進むにつれて、嵌合部70の先端面が被嵌合部45の内奥壁面49に近づく。嵌合部70の先端面が、リブ56に接触した後にも、嵌合部70の移動が続くと、図8(b)に示すように、リブ56が嵌合部70によって押圧されて変形させられる。上嵌合部71が傾斜面53に接触したときには、嵌合部70の先端面と被嵌合部45の内奥壁面49との間の空間が、上記のように変形したリブ56によって埋められた状態となり、同空間がより一層小さくされ、アークが空間をより一層流れにくくなる。
【0090】
・上記実施形態において、刃部62から突出する嵌合部70を割愛し、刃部62の外壁面であって、同刃部62による被切断部22の切断後に両切断端23,24の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域を嵌合部とする。
【0091】
また、上記実施形態において、消弧室32の奥壁面38から凹む被嵌合部45を割愛し、消弧室32の内壁面のうち、上記嵌合部の少なくとも一部が接触された状態で嵌合される箇所を被嵌合部とする。そして、被嵌合部の内壁面のうち、嵌合部の先端面に対向する面には、嵌合部により押圧されて変形させられるリブが設けられてもよい。
【0092】
このようにすると、嵌合部の被嵌合部への挿入が進むにつれて、嵌合部の先端面が被嵌合部の内壁面のうち、嵌合部の先端面に対向する面に近づく。嵌合部の先端面が、被嵌合部の上記面に設けられたリブに接触した後にも、嵌合部の移動が続くと、リブが嵌合部によって押圧されて変形させられる。嵌合部の先端面と被嵌合部の上記面との間の空間が、上記のように変形したリブによって埋められた状態となり、同空間がより一層小さくされ、アークがこの空間をより一層流れにくくなる。
【0093】
図9に示すように、被嵌合部45の深さ方向における奥部51において、被切断部22の幅方向(図9の紙面に直交する方向)に沿って平行に延びる一対の縁部52のうちの一方にのみ傾斜面53が形成されてもよい。
【0094】
図9は、切断エッジ部34を含む第1側壁面35から遠い側の縁部52に傾斜面53が形成された例を示している。
この場合には、次の効果も期待できる。
【0095】
すなわち、上嵌合部71及び刃部62は、消弧室32内で切断エッジ部34から僅か(距離D1)に離間した箇所を移動することにより、同切断エッジ部34との間で被切断部22を切断する。一方、切断部材60は、上述したように、弾性変形し得る材料によって形成されている。
【0096】
この場合にも、傾斜面53は、同被切断部22の長さ方向(図9の左右方向)における両縁部52間の寸法L1が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなるように、切断部材60の移動方向に対し傾斜させられる。
【0097】
そのため、嵌合部70は、被嵌合部45内に挿入される過程で、傾斜面53に接触する。その後も、被嵌合部45内への挿入が続くと、図9において二点鎖線で示すように、切断部材60が切断エッジ部34側へ弾性変形させられて、同被嵌合部45の内壁面に接触する。嵌合部70の被嵌合部45の内壁面に対する接触箇所が増え、嵌合部70と被嵌合部45との間の空間がより的確に分断された状態となり、アークがこの空間を一層流れにくくなる。
【0098】
・被嵌合部45において、被切断部22の長さ方向における寸法L1が、消弧室32の奥壁面38から遠ざかるに従い小さくなるように形成される箇所は、同被嵌合部45の深さ方向における奥部51にとどまらず、奥部51を含み、かつ同奥部51よりも広い領域に変更されてもよい。
【0099】
図10は、上記箇所(傾斜面53)が、被嵌合部45の深さ方向の全体にわたって形成された例を示している。この場合には、嵌合部70が被嵌合部45内に挿入される過程で、同被嵌合部45の内壁面(傾斜面53)に対しより接触しやすくなる。
【0100】
<嵌合部70について>
・刃部62において、被切断部22の幅方向における片側だけに、側嵌合部72及び連結嵌合部73の組合わせが設けられてもよい。
【0101】
・嵌合部70が、上嵌合部71のみによって構成されてもよい。
・嵌合部70が、側嵌合部72のみによって構成されてもよい。その場合には、嵌合部70が両側嵌合部72によって構成されてもよいし、一方の側嵌合部72のみによって構成されてもよい。
【0102】
図11に示すように、嵌合部70は、被切断部22の長さ方向(図11の左右方向)における同嵌合部70の厚さT1が、切断部材60の移動方向における先端側(図11の上側)ほど小さくなるように形成されてもよい。この場合にも、嵌合部70が被嵌合部45内に挿入される過程で、その被嵌合部45の内壁面に接触しやすくなる。
【0103】
<嵌合部70及び被嵌合部45の凹凸関係について>
図12に示すように、嵌合部70及び被嵌合部45は、両者の凹凸関係が上記実施形態とは反対となるように形成されてもよい。この場合、刃部62の外壁面において両切断端23,24の一方が接近する箇所と他方が接近する箇所との間の領域には、切断部材60の移動方向における先端側(図12の上側)の面において開口する凹部が設けられ、この凹部によって嵌合部70が構成される。また、消弧室32の奥壁面38から刃部62側へ突出する突部が設けられ、この突部によって被嵌合部45が形成される。そして、嵌合部70の少なくとも一部が被嵌合部45に対し接触させられた状態で同被嵌合部45に嵌合される。
【0104】
<その他>
・上記実施形態では、切断部材60を形成する材料として、樹脂材料を用いることができるが、そのほかにも被切断部22を切断し得る程度に強度が高く、弾性変形し得る材料であって、かつ適度な電気絶縁性を有する材料であることを条件に、任意の材料を採用することができる。
【0105】
・上記実施形態では、ケース30及び切断部材60を形成する手法としては、金型成形を用いて形成する手法、切削加工により形成する手法等、任意の手法を採用することができる。
【0106】
・上記導通遮断装置Cは、蓄電池12とコンバータ14との間に設けられるものに限らず、電気回路を構成する機器間に設けられて、それら機器間の導通を遮断する装置であれば適用することができる。そうした装置としては、例えば燃料電池車両において燃料電池と車両走行用モータとの間に設けられる導通遮断装置や、据置式のシステムの電源と電気機器との間に設けられる導通遮断装置、据置式のシステムの電気機器間に設けられる導通遮断装置等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0107】
11…電気回路、12…蓄電池(電気回路を構成する機器)、13…電気機器(電気回路を構成する機器)、20…導電体、22…被切断部、23,24…切断端、32…消弧室、33…開口部、34…切断エッジ部、38…奥壁面、45…被嵌合部、49…内奥壁面、51…奥部、56…リブ、59…ガス発生器、60…切断部材、62…刃部、68…先端面、70…嵌合部、C…導通遮断装置、D2…深さ、L1,L2…寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12