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特開2016-225303セパレータ、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225303(P2016-225303A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】セパレータ、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20161205BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161205BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M10/052
   H01M4/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-132373(P2016-132373)
(22)【出願日】2016年7月4日
(62)【分割の表示】特願2013-554205(P2013-554205)の分割
【原出願日】2012年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-8410(P2012-8410)
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】奥野 盛朗
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA01
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE22
5H021HH02
5H021HH03
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK04
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ04
5H029HJ03
5H029HJ09
5H050AA01
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CB01
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB20
5H050DA19
5H050FA05
5H050HA06
5H050HA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大きな空孔径および高い空隙率を有し、かつ、電極の膨張を吸収することができるセパレータ、及びそのセパレータを備える電池の提供。
【解決手段】セパレータ1は、多孔質の第1の層2と、第1の層2の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層3とを備える。第2の層3は、前記粒子の凝集ネットワーク構造を有し、第2の層3の平均空孔径は、前記粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびそれらの間に設けられたセパレータを備え、
上記セパレータは、第1の層と、上記第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層を備え、
上記第2の層は、上記粒子の凝集ネットワーク構造を有し、
上記第2の層の平均空孔径は、上記粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下である電池。
【請求項2】
上記第2の層の平均空孔径は、2.8μm以上5.0μm以下である請求項1に記載の電池。
【請求項3】
上記第2の層の空隙率は、74%以上90%以下である請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
上記第2の層は、上記正極および負極少なくとも一方の電極の膨張を吸収する請求項1から3のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
上記凝集ネットワーク構造は、上記粒子の凝集体同士が上記粒子により相互に連結された構造である請求項1から4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
上記樹脂材料および粒子の総量に対する上記粒子の含有量は、70質量%以上である請求項1から5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
上記樹脂材料は、フッ素樹脂を含んでいる請求項1から6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
上記フッ素樹脂は、ポリフッ化ビニリデンである請求項7に記載の電池。
【請求項9】
上記粒子が、酸化アルミニウムを含んでいる請求項1から8のいずれかに記載の電池。
【請求項10】
上記負極は、合金系負極である請求項1から9のいずれかに記載の電池。
【請求項11】
上記負極は、スズ(Sn)の合金を含み、
上記スズ(Sn)の合金は、上記スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項1から10のいずれかに記載の電池。
【請求項12】
上記負極は、ケイ素(Si)の合金を含み、
上記ケイ素(Si)の合金は、上記ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項1から10のいずれかに記載の電池。
【請求項13】
上記負極は、スズ(Sn)の化合物またはケイ素(Si)の化合物を含み、
上記化合物は、酸素(O)または炭素(C)を含む請求項1から10のいずれかに記載の電池。
【請求項14】
第1の層と、上記第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層を備え、
上記第2の層は、上記粒子の凝集ネットワーク構造を有し、
上記第2の層の平均空孔径は、上記粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下であるセパレータ。
【請求項15】
上記第2の層の平均空孔径は、2.8μm以上5.0μm以下である請求項14に記載のセパレータ。
【請求項16】
請求項1から13のいずれかに記載の電池を備える電池パック。
【請求項17】
請求項1から13のいずれかに記載の電池を備え、
上記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項18】
請求項1から13のいずれかに記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と
を備える電動車両。
【請求項19】
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置をさらに備える請求項18に記載の電動車両。
【請求項20】
請求項1から13のいずれかに記載の電池を備え、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項21】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項22】
請求項1から13のいずれかに記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記電池に電力が供給される電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、セパレータ、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。詳しくは、第1の層の少なくとも一方の面に第2の層が設けられたセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレータとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系微多孔性高分子膜またはこれらの多重膜が広く用いられている。しかしながら、これらのセパレータには、電池の内部短絡や過充電による発熱で、気孔詰まりや収縮が発生するという問題がある。セパレータが電池の内部発熱により収縮した場合には、収縮部分では正極と負極とが直接触れるようになり、この接触により様々な問題が発生する。
【0003】
そこで、近年では、上述したセパレータの問題を解決するために、セラミック粒子およびバインダを含む多孔質膜を表面に設けたセパレータに関する研究が活発に行われている。このような構成のセパレータでは、ポリオレフィン材質に耐熱性を付与し、120℃以上の高温環境下におけるポリオレフィン材質の溶融、収縮を抑制することができる。
【0004】
上記セパレータは、ポリオレフィン材質に耐熱性を付与するだけでなく、耐酸化性や機械強度などを付与することも可能である。その効果はセラミック粒子の含有量が多い方が大きくなるため、従来の技術のほとんどでは、セラミック粒子の含有量は80%以上の範囲が好適であるとされている。
【0005】
ところで、近年注目されている車載用バッテリーでは、高い出力密度を達成することが要求される。この要求に応えるべく、電池の各構成部材について種々検討が重ねられており、セパレータではその空孔径を大きくし、空隙率を高くする技術が望まれている。
【0006】
この要求に応えるべく、特許文献1では、ポリマー溶液を貧溶媒浴槽に浸漬する前に吸湿させて表面に薄い多孔質膜を形成することで、溶液溶媒置換や溶剤拡散を適度に抑制して空孔径を大きくし、空隙率を高める技術が提案されている。
【0007】
また、電池のさらなる高容量化のニーズに対応するため、新たな負極材料としてケイ素(Si)またはスズ(Sn)などの合金系負極が検討されている。この合金系負極は充電時に体積が膨張する性質を有していため、潰れることで、電極の体積膨張を吸収できるセパレータが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4159090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、樹脂材料のみを含む多孔質膜の空孔径を大きくし、空隙率を高めるものであり、樹脂材料およびセラミック粒子を含む多孔質膜の空孔径を大きくし、空隙率を高める技術については記載されていない。また、特許文献1には、樹脂材料およびセラミック粒子を含む多孔質膜について、電極の体積膨張を吸収する技術についても記載されてはいない。
【0010】
したがって、本技術の目的は、大きな空孔径および高い空隙率を有し、かつ、電極の膨張を吸収することができるセパレータ、そのセパレータを備える電池、その電池を備える電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
正極、負極およびそれらの間に設けられたセパレータを備え、
セパレータは、第1の層と、第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層を備え、
第2の層は、粒子の凝集ネットワーク構造を有し、
第2の層の平均空孔径は、粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下である電池である。
【0012】
第2の技術は、
第1の層と、第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層を備え、
第2の層は、粒子の凝集ネットワーク構造を有し、
第2の層の平均空孔径は、粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下であるセパレータである。
【0013】
本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、第2の技術のセパレータを有する電池、または第1の技術の電池を備えることを特徴とする。
【0014】
本技術では、第2の層は、粒子の凝集ネットワーク構造を有しているので、大きな空孔径および高い空隙率を得ることができる。また、粒子の凝集ネットワーク構造は、加圧により潰れることが可能な構造であるため、第2の層が第1の層の少なくとも一方の面に設けられたセパレータを電池に備えた場合には、セパレータの第2の層が電極の膨張に伴い潰れることで、電極の膨張を吸収することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本技術によれば、大きな空孔径および高い空隙率を有し、かつ、電極の膨張を吸収することができるセパレータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本技術の第1の実施形態に係るセパレータの一構成例を示す断面図である。
図2図2A図2Dは、本技術の第1の実施形態に係るセパレータの製造方法の一例を説明するための工程図である。
図3図3は、本技術の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の一構成例を示す断面図である。
図4図4は、図3に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
図5図5は、本技術の第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。
図6図6は、図5に示した巻回電極体のVI−VI線に沿った断面図である。
図7図7は、本技術の第3の実施形態に係る電池パックの一構成例を示すブロック図である。
図8図8は、本技術の非水電解質二次電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
図9図9は、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の一構成を示す概略図である。
図10図10A図10Cは、実施例1−3の表面層の表面SEM像を示す図である。
図11図11A図11Cは、比較例1−2の表面層の表面SEM像を示す図である。
図12図12は、実施例2、比較例2−1〜2−9のセパレータの樹脂比率と空隙率との関係を示すグラフである。
図13図13は、実施例3、比較例3のセパレータの微少圧縮試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本技術の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(セパレータの例)
2.第2の実施形態(円筒型電池の例)
3.第3の実施形態(扁平型電池の例)
4.第4の実施形態(電池パックの例)
5.第5の実施形態(蓄電システムの例)
【0018】
<1.第1の実施形態>
[セパレータの構成]
図1は、本技術の第1の実施形態に係るセパレータの一構成例を示す断面図である。セパレータ1は、基材(第1の層)2と、基材2の少なくとも一方の面に設けられた表面層(第2の層)3とを備える。なお、図1には、基材2の両面に表面層3が設けられた例が示されているが、基材2のいずれか一方の面に表面層3を設けるようにしてもよい。
【0019】
セパレータ1は、電池内において正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を抑制するものであり、セパレータ1には電解質が含浸される。セパレータ1は、充電または放電に伴う電極の膨張が著しい電池に適用することが好ましい。表面層3を基材2の一方の面にのみ設ける場合には、充電または放電に伴って膨張が著しい電極に対向配置される側の面に、表面層3を設けることが好ましい。
【0020】
例えば、充電に伴って負極の膨張が著しい電池に対して、セパレータ1を適用した場合には、充電に伴う負極の膨張時に、表面層3が潰れて負極の膨張を吸収する。これにより、負極の膨張によって負極にかかる応力を低減することができ、負極の損傷や破断を抑制することができる。また、セパレータ1を介して負極と圧接状態にある正極についても同様に、損傷や破断を抑制することができる。
【0021】
セパレータ1は、負極活物質として金属系材料または金属合金系材料を主成分として含む負極を有する電池に用いることが特に好ましい。このような電池に用いることで、顕著な効果を発揮することができるからである。負極活物質として金属系材料または金属合金系材料を主成分として含む負極では、充電時の膨張が著しい。このため、セパレータ1による電極の損傷や破断の抑制効果が高くなる。なお、負極活物質として黒鉛などの炭素材料を用いた電池にセパレータ1を適用してもよい。
【0022】
セパレータ1の適用される電池の構造は特に限定されるものでなく種々の電池に適用可能である。例えば、正極と負極とがセパレータ1を介して巻回された巻回型の電池、正極と負極とがセパレータ1を介して折り畳まれた、または積み重ねられた積層型の電池に適用可能であるが、巻回型の電池に適用することが好ましい。このような電池に用いることで、顕著な効果を発揮することができるからである。
【0023】
以下、セパレータ1を構成する基材2および表面層3について説明する。
【0024】
(基材)
基材2は、多孔質の基材であり、基材2の空孔に電解液が保持される。多孔質の基材としては、例えば、多孔質膜、不織布、織布などを単独または2種以上積層して用いることができる。基材2は、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度および絶縁性を有することが好ましい。基材2は、上記特性に加えて、電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性をさらに有していることがより好ましい。また、巻回型の電池にセパレータ1を用いる場合には、基材2が可撓性を有していることが好ましい。
【0025】
多孔質膜を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレンもしくはポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂などを用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなどのポリエチレン、もしくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、または2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜は、正極と負極との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
【0026】
不織布を構成する繊維としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、またはナイロン繊維などを単独または2種以上の組み合わせて用いることができる。
【0027】
基材2の厚さは、必要な強度を保つことができる厚さ以上であれば任意に設定可能であるが、正極および負極間の絶縁性、イオン透過性、および電池内における活物質層の体積効率などを考慮して設定することが好ましい。具体的には、基材2の厚さは、5μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0028】
基材2の空孔率は、イオン透過性の観点から、25%以上70%以下であることが好ましい。但し、基材2として不織布を用いる場合には、空孔率は50%以上90%以下であることが好ましい。電池の実使用時の電流値、基材2の空孔構造などの特性や厚さにもよるが、空孔率が25%以上であると、充放電に関わる電解液中のイオンの移動を向上できる傾向がある。すなわち、負荷特性を向上するとともに、大電流放電時には十分な容量を取り出すことが容易になる傾向がある。一方、空孔率が70%以下であると、セパレータ強度を向上できる傾向がある。
【0029】
(表面層)
表面層3は、セパレータ1としてのイオン透過機能や電解液保持機能などを得るために、多数の空孔を有する多孔質膜であることが好ましい。表面層3は、無機粒子および樹脂材料を主成分として含み、無機粒子は、表面層3内において3次元的な凝集構造を形成している。この凝集構造は、無機粒子の凝集ネットワーク構造である。ここで、凝集ネットワーク構造とは、無機粒子の凝集体同士が無機粒子の架橋により相互に連結されて、無機粒子の平均粒径よりも大きい平均空孔径の空孔が形成されている多孔質構造のことをいう。凝集体同士は、例えば、鎖状などの細長い形状を有する架橋部により連結される。この架橋部は、例えば、無機粒子が凝集して成長することにより形成されている。
【0030】
表面層3の凝集ネットワーク構造は、加圧により潰れることが可能な構造である。このため、セパレータ1を電池に備えた場合には、セパレータ1の表面層3が電極の膨張に伴い潰れることで、電極の膨張を吸収することができる。
【0031】
樹脂材料および無機粒子の総量に対する無機粒子の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは70質量%以上98質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上98質量%以下の範囲内である。無機粒子の含有量が70質量%以上であると、凝集ネットワーク構造を有する表面層3と、凝集ネットワーク構造を有していない表面層との空孔の大きさおよび空隙率の値の相違が顕在化する。ここで、凝集ネットワーク構造を有していない表面層とは、表面層内で無機粒子が充填されており、その無機粒子の間隙により空孔が形成される表面層などを意味する。一方、無機粒子の含有量が98質量%以下であると、無機粒子を担持する樹脂材料量が十分であり、表面層3の基材2への固定化が容易となる傾向がある。
【0032】
表面層3の平均空孔径は、好ましくは無機粒子の平均粒径より大きく、無機粒子の平均粒径の20倍以下、より好ましくは無機粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下の範囲内である。より具体的には、表面層3の平均空孔径は、好ましくは0.5μmより大きく10μm以下、より好ましくは2.8μm以上5.0μm以下の範囲内である。平均空孔径が無機粒子の平均粒径より大きいと、セパレータ1を備えた電池の出力密度を向上できる傾向がある。一方、平均空孔径が無機粒子の平均粒径の20倍以下であると、表面層3の圧縮後において、凝集によって形成された空孔が周囲の無機粒子によって埋められるため、基材2上に無機粒子を均一に固定化でき、これにより耐酸化性や機械強度などの効果の付与を大きくできる傾向がある。
【0033】
表面層3の空隙率は、好ましくは74%以上90%以下の範囲内である。空隙率が74%以上であると、セパレータ1を備えた電池の出力密度を向上できる傾向がある。一方、空隙率が90%以下であると、電池作製時に応力を受けても潰れることなく電極間の距離を保つことができる傾向がある。
【0034】
無機粒子としては、電気的絶縁性を有する無機粒子を用いることが好ましい。このような特性を有する無機粒子としては、例えば、セラミック材料を主成分とするセラミック粒子を用いることができる。セラミック材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物または金属硫化物などを用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al23)、水和酸化アルミニウム(ベーマイト)、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)または酸化イットリウム(イットリア、Y23)などを用いることができる。金属窒化物としては、例えば、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)または窒化チタン(TiN)などを用いることができる。金属炭化物としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B4C)などを用いることができる。金属硫化物としては、例えば、硫酸バリウム(BaSO4)などを用いることができる。また、ゼオライト(M2/nO・Al23・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)などの多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などの鉱物を用いてもよい。中でも、アルミナ、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナを用いることがより好ましい。
【0035】
これらのセラミック材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、無機粒子としては、単一種類の無機粒子を用いてもよいし、2種以上の無機粒子を混合して用いてもよい。無機粒子は耐酸化性を有していることが好ましい。特に、正極に対向する側の面に設けられた表面層3が、耐酸化性を有する無機材料を含んでいることが好ましい。これにより、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有するセパレータ1が得られるからである。
【0036】
無機粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体状、針状、板状、鱗片状、チューブ状、ワイヤー状、棒状(ロッド状)、不定形状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、上記形状の粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、球状には、真球状のみならず、真球状がやや扁平または歪んだ形状、真球状の表面に凹凸が形成された形状、またはこれらの形状が組み合わされた形状なども含まれる。楕円体状には、数学的に厳密な楕円体状のみならず、厳密な楕円体状がやや扁平または歪んだ形状、厳密な楕円体状の表面に凹凸が形成された形状、またはこれらの形状が組み合わされた形状なども含まれる。
【0037】
無機粒子の平均粒径は、セパレータ1の強度や塗工性などの観点から、数μm以下であることが好ましい。具体的には、無機粒子の平均粒径は、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下の範囲内である。無機粒子の平均粒径が0.3μm以上であると、塗料の粘度を適正に保ち塗工性を確保できる傾向がある。一方、無機粒子の平均粒径が1.0μm以下であると、表面層3の平滑性や潰れ量を確保できる傾向がある。
【0038】
樹脂材料は、例えば、凝集した無機粒子同士を結着するとともに、基材2に無機粒子を結着し固定するバインダである。樹脂材料としては、フッ素を含有する樹脂材料を用いることが好ましい。フッ素を含有する樹脂材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの含フッ素ゴムなどを用いることができる。樹脂材料としては、フッ素を含有する樹脂材料以外のものを用いてもよく、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステルなどが挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
[セパレータの製造方法]
図2A図2Dは、本技術の第1の実施形態に係るセパレータの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0040】
まず、図2Aに示すように、樹脂材料と無機粒子4aとを所定の混合比で混合し、分散溶媒4bに添加し、分散させて、樹脂溶液4を調製する。なお、図2Aでは、樹脂材料の図示を省略している。分散溶媒としては、樹脂材料を溶解することができる溶媒であればいずれも使用可能である。分散溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエンまたはアセトニトリルなどを単独または2種以上混合して用いることができるが、溶解性および高分散性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが好ましい。
【0041】
次に、基材2の少なくとも一方の面に、調製した樹脂溶液4を塗布することにより、塗膜を形成する。次に、塗膜を形成した基材2を相分離溶媒(凝固液)に浸漬することにより、基材2の少なくとも一方の面に表面層3を形成する。次に、形成した表面層3を乾燥させる。相分離溶媒としては、アルコールまたはその混合溶媒を用いることが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などを単独または2種以上混合して用いることができる。アルコールと混合する溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンなどを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0042】
上記浸漬の工程において、表面層は具体的には以下のようにして形成される。まず、図2Bに示すように、塗膜3a内において無機粒子4aが凝集して凝集体を形成する。次に、図2Cに示すように、無機粒子4aの凝集体同士を無機粒子4aが架橋してネットワーク化しながら成長し、凝集ネットワーク構造が形成される。次に、図2Dに示すように、この凝集ネットワーク構造を維持したまま無機粒子4aが基材2に固定化される。なお、図2B図2Dでは、樹脂材料の図示を省略している。
以上により、目的とするセパレータ1が得られる。
【0043】
[効果]
第1の実施形態によれば、セパレータ1は、第1の層である基材2と、基材2の少なくとも一方に設けられた、第2の層である表面層3とを備えている。そして、表面層3は、無機粒子の凝集ネットワーク構造を有している。したがって、大きな空孔径および高い空隙率を得ることができる。このような構成を有するセパレータ1を電池に適用した場合には、電池の負荷特性を向上することができる。
【0044】
空孔は無機粒子の凝集ネットワーク構造により形成されているので、表面層3は加圧により潰れることが可能な構成を有している。したがって、このような構成のセパレータ1を電池に備えた場合には、セパレータ1の表面層3が電極の膨張に伴い潰れることで、セパレータ1により電極の膨張を吸収することができる。また、表面層3の空孔が大きいため、表面層3が潰れた後でも、リチウムイオンなどのイオンが透過できるセパレータとして機能することができる。また、表面層3は、上述のように大きな空孔径および高い空隙率を有しているので、潰れ量を確保することができる。すなわち、表面層3は優れた圧縮率を有している。
【0045】
負極として合金系負極を用いた場合には、セパレータ1の表面層3により、合金系負極の膨張を吸収して、負極の損傷および破断を抑制することができる。また、サイクル特性や出力特性などの電池特性を向上することができる。
【0046】
セパレータ1の表面層3が無機粒子を含んでいるので、セパレータ1の耐熱性および耐酸化性を向上することができる。また、表面層3が多孔質構造を有することで、電解液の注液性および保液性を向上することができ、かつ、表面層3が電極膨張時に電解液の供給源としての機能することができる。
【0047】
相分離の際に無機粒子の凝集ネットワーク化を引き起こすことで、無機粒子の含有量が80%以上の範囲内にある場合でも、空隙率が高く、かつ、空孔サイズが大きい表面層3を形成することができる。なお、従来の技術では、無機粒子の含有量が80%以上の範囲内において、空隙率が高く、かつ、空孔サイズが大きい表面層3を形成することは困難である。例えば、無機粒子の含有量が80%を超える範囲において、特許文献1に記載された方法を本発明者らが実験により試したところ、無機粒子の凝集および空孔径の増大は確認できなかった。
【0048】
本技術において、空隙率が高く、かつ、空孔サイズが大きい表面層3が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下の理由が考えられる。すなわち、アルコールで相分離を行うと、無機粒子同士の引力または無機粒子に被覆されている樹脂材料の相互作用によって、無機粒子が凝集を引き起こしたのち、凝集した無機粒子がネットワーク化していると考えられる。これに対して、従来のネットワーク構造(3次元網目構造)の形成方法は、樹脂材料の粘弾性相分離を利用して、樹脂材料の3次元網目構造を形成することを特徴としている。したがって、本技術の凝集ネットワーク構造の形成方法は、従来のネットワーク構造(樹脂材料の3次元網目構造)の形成方法とは原理的に異なっている。
【0049】
<2.第2の実施形態>
[電池の構成]
図3は、本技術の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の一構成例を示す断面図である。この非水電解質二次電池は、負極の容量が、電極反応物質であるリチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この非水電解質二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、ニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
【0050】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、封口ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0051】
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0052】
図4は、図3に示した巻回電極体20の一部を拡大して表す断面図である。以下、図4を参照しながら、二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、および電解液について順次説明する。
【0053】
(正極)
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0054】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0055】
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z ・・・(A)
(但し、式(A)中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0056】
LiaM2bPO4 ・・・(B)
(但し、式(B)中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0057】
LifMn(1-g-h)NigM3h(2-j)k ・・・(C)
(但し、式(C)中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0058】
LimNi(1-n)M4n(2-p)q ・・・(D)
(但し、式(D)中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0059】
LirCo(1-s)M5s(2-t)u ・・・(E)
(但し、式(E)中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0060】
LivMn2-wM6wxy ・・・(F)
(但し、式(F)中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0061】
LizM7PO4 ・・・(G)
(但し、式(G)中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0062】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0063】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記で例示した正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0064】
(負極)
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0065】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0066】
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0067】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0068】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。ここでは、このような負極材料を含む負極22を合金系負極と称する。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0069】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0070】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0071】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0072】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0073】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0074】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23としては、上述の第1の実施形態に係るセパレータ1を用いる。
【0075】
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0076】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0077】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0078】
溶媒としては、更にまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0079】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0080】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0081】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0082】
[電池の製造方法]
次に、本技術の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
【0083】
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0084】
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。次に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回する。次に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。次に、正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、リン化合物を含む電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。次に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16を封口ガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図3に示した二次電池が得られる。
【0085】
[効果]
この第2の実施形態に係る非水電解質二次電池では、セパレータ23が基材2の少なくとも一方の面に表面層3を備え、その表面層3が凝集ネットワーク構造を有しているので、高い出力密度を得ることができる。
【0086】
セパレータ23の表面層3は加圧により潰れることが可能な構成を有しているので、正極21および負極22の少なくとも一方の電極の膨張を吸収することができる。例えば、負極22として合金系負極を用いた場合には、セパレータ1の表面層3により、合金系負極の膨張を吸収して、負極22の損傷および破断を抑制することができる。また、サイクル特性や出力特性などの電池特性を向上することができる。
【0087】
<3.第3の実施形態>
[電池の構成]
図5は、本技術の第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
【0088】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0089】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0090】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0091】
図6は、図5に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面図である。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0092】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ第2の実施形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bと同様である。セパレータ35の構成は、上述の第1の実施形態に係るセパレータ1と同様である。
【0093】
電解質層36は、リン化合物を含む電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒、電解質塩およびリン化合物など)の組成は、第2の実施形態に係る二次電池と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0094】
[電池の製造方法]
次に、本技術の第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0095】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、添加剤であるリン化合物と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。次に、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図5および図6に示した二次電池が得られる。
【0096】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述のようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付ける。次に、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次に、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。次に、溶媒と、電解質塩と、添加剤であるリン化合物と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0097】
次に、電解質用組成物を外装部材40内に注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、図5に示した二次電池が得られる。
【0098】
この第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の作用および効果は、第2の実施形態に係る非水電解質二次電池と同様である。
【0099】
<4.第4の実施形態>
(電池パックの例)
図7は、本技術の非水電解質二次電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0100】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0101】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この二次電池301aは本技術の二次電池である。なお、図7では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n、mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0102】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けてもよい。
【0103】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0104】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0105】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0106】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0107】
ここで、例えば、二次電池301aがリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0108】
充放電スイッチは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0109】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0110】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値などが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。(また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0111】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0112】
<5.第5の実施形態>
上述した非水電解質二次電池およびこれを用いた電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置などの機器に搭載または電力を供給するために使用することができる。
【0113】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機などが挙げられる。
【0114】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などが挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0115】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0116】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の非水電解質二次電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0117】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0118】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0119】
(応用例としての住宅における蓄電システム)
本技術の非水電解質二次電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図8を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102cなどの集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108などを介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104などの独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0120】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池などが利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105dなどである。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0121】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質二次電池が適用される。本技術の非水電解質二次電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0122】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサなどである。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態などが把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社などに送信することができる。
【0123】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換などの処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)などの通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fiなどの無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0124】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていてもよい。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信してもよいが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機など)から送受信してもよい。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)などに、表示されてもよい。
【0125】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能などを備えていてもよい。
【0126】
以上のように、電力が火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102cなどの集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0127】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0128】
(応用例としての車両における蓄電システム)
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図9を参照して説明する。図9に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0129】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質二次電池が適用される。
【0130】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0131】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0132】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0133】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0134】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0135】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、またはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0137】
本技術の実施例について以下の順序で説明する。
1.相分離溶媒についての検討
2.セラミック粒子の含有量についての検討
3.潰れ性についての検討
【0138】
<1.相分離溶媒についての検討>
(実施例1−1)
まず、無機粒子である平均粒子径0.5μmのアルミナ(Al23)粒子と、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを質量比で90:10となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて樹脂溶液を調製した。
【0139】
なお、上述のアルミナ粒子の平均粒径は以下のようにして求めた。
上記樹脂溶液をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD7100)を用いて測定を行った。なお、平均粒子径は、レーザー回折式における粒度分布において、小さな粒子側から起算した体積累計50%の平均粒子直径(μm)を表している。
【0140】
次に、基材として厚さ12μmのポリエチレン(PE)多孔質膜を準備した。ここで、基材の厚さは、デジタル測長機(株式会社ニコン製、商品名:DIGIMICRO MF-501)を使用して測定した値である。次に、この基材の片面に、上記樹脂溶液を塗布し、エタノールからなる相分離溶媒(凝固液)に浸漬後、乾燥させることで表面層を形成した。これにより、目的とするセパレータが得られた。
【0141】
(実施例1−2)
相分離溶媒として、エタノール90vol%とNMP10vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0142】
(実施例1−3)
相分離溶媒として、エタノール80vol%とNMP20vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0143】
(実施例1−4)
相分離溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0144】
(実施例1−5)
相分離溶媒として、IPA90vol%とNMP10vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0145】
(実施例1−6)
相分離溶媒として、IPA80vol%とNMP20vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0146】
(実施例1−7)
相分離溶媒として、IPA70vol%とNMP30vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0147】
(比較例1−1)
厚さ12μmのポリエチレン(PE)多孔質膜を準備し、これをセパレータとした。
【0148】
(比較例1−2)
相分離溶媒として、水を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0149】
(比較例1−3)
相分離溶媒として、水50vol%とエタノール50vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0150】
(比較例1−4)
相分離溶媒として、水30vol%とエタノール70vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0151】
(比較例1−5)
相分離溶媒として、水50vol%とNMP50vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0152】
(比較例1−6)
相分離溶媒として、水30vol%とNMP70vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0153】
(比較例1−7)
相分離溶媒として、水20vol%とNMP80vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0154】
(比較例1−8)
相分離溶媒として、エタノール70vol%とNMP30vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0155】
(比較例1−9)
相分離溶媒として、IPA60vol%とNMP40vol%とを混合した混合溶媒を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0156】
(比較例1−10)
相分離溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0157】
(比較例1−11)
相分離溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)を用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0158】
(比較例1−12)
相分離溶媒として、アセトンを用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0159】
(比較例1−13)
相分離溶媒として、酢酸エチルを用いる以外のことは、実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0160】
(評価)
上述のようにして得られた実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13のセパレータについて、以下の評価を行った。
【0161】
(凝集ネットワーク構造観察)
高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-4800)を使用して表面層の表面および断面SEM像を撮影し、それらのSEM像に基づき凝集ネットワーク構造の有無を判断した。実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13のうち実施例1−3、比較例1−2の表面層の表面SEM像を図10A図10C図11A図11Cに代表して示した。なお、図10Cは、図10Bの枠線で示した部分を拡大した図である。
【0162】
(表面層の空隙率)
表面層の空隙率は、次のようにして求めた。まず、セパレータを切り取り面積S[cm2]で切り取ってサンプルを形成し、そのサンプルの質量(W1[g])と厚み(D[cm])とを測定した。この際、サンプルの質量の測定には、電子天秤(株式会社島津製作所製、商品名:AUW220D)を用い、サンプルの厚みの測定には、デジタル測長機(株式会社ニコン製、商品名:DIGIMICRO MF-501)を用いた。次に、サンプルの質量(W1[g])から予め測定した基材の質量を差し引き、表面層の質量(W2[g])を算出した。なお、基材の質量測定には、上述のサンプルの質量測定と同様の装置を用いた。次に、表面層を構成するi種類(i=1,2・・・,n)の材料の質量(Wi[g]、i=1,2・・・,n)を組成から計算により割り出した。次に、それぞれの材料の質量(Wi[g])をそれぞれの真密度(di[g/cm3])で割り、それぞれの材料の体積を仮定して、次式より空隙率を算出した。
空隙率[%]=100−{(質量W1/真密度d1)+(質量W2/真密度d2)+・・・+(質量Wn/真密度dn)}/(切り取り面積S×厚みD)
【0163】
(表面層の膜厚)
表面層の膜厚は、次のようにして求めた。まず、デジタル測長機(株式会社ニコン製、商品名:DIGIMICRO MF-501)を使用して、セパレータの膜厚を10点測定した。次に、10点の平均値を求めセパレータ膜厚とした。セパレータ膜厚から基材の厚さ12μmを差し引いて表面層の膜厚を求めた。
【0164】
(表面層の平均空孔径)
表面層の平均空孔径は、次のようにして求めた。まず、高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-4800)を使用して、表面層のSEM観察を行い、45μm×30μmの観察視野において、確認できる空孔を径(サイズ)の大きい順に5個測定した。次に、測定したサイズを単純に平均(算術平均)して平均径(平均サイズ)を求めた。ここで、径(サイズ)は、空孔の差し渡しの長さのうち最大ものを意味している。
【0165】
(表面層の圧縮率)
表面層の圧縮率は、次のようにして求めた。まず、上述の「表面層の膜厚」の評価方法と同様にして、圧縮前の表面層の膜厚を求めた。次に、セパレータ1枚を厚紙で挟み、ハンドプレス機を使用して100kg/cm2の圧力でセパレータを圧縮した。次に、圧縮後のセパレータの膜厚を測定し、その測定膜厚から、基材の厚さ12μmを差し引いて、圧縮後の表面層の膜厚を求めた。次に、圧縮前後の表面層膜厚の差分から潰れた表面層厚みを算出した。次に、上述のようにして求めた「潰れた表面層厚み」および「圧縮前の表面層の膜厚」を以下の式に代入することにより、表面層の圧縮率を求めた。
表面層圧縮率[%]=(潰れた表面層厚み/圧縮前の表面層の膜厚)×100
【0166】
(透気度の測定)
透気度は、次のようにして求めた。JIS P8117準拠のガーレー式透気度計を用い、645mm2の面積(直径28.6mmの円)の微多孔膜を空気100ccが通過する時間[秒]を測定し、透気度とした。
【0167】
表1は、実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13のセパレータの構成およびその作製に用いた相分離溶媒の種類を示す。
【表1】
【0168】
表2は、実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13のセパレータの評価結果を示す。
【表2】
【0169】
表1および表2から以下のことがわかる。
実施例1−1では、相分離溶媒としてエタノールを用いている。この場合には、表面層を基材表面に固定化させる際に、アルミナ粒子が凝集ネットワーク構造を形成するため、比較例1−2〜1−7に比べて平均空孔径が大きく、空隙率が高くなる。したがって、実施例1−1では、表面層の付与による透気度上昇を比較例1−2〜1−7に比べて抑えることができる。また、圧縮時に表面層が潰れるため圧縮率が高く、予め大きな空孔を形成できるため圧縮時の透気度の上昇を抑制することができる。このように透気度の上昇を抑制することで、サイクル特性や出力密度の特性を向上することができる。
【0170】
実施例1−2、1−3、比較例1−8では、相分離溶媒としてエタノールとNMPとの混合溶媒を用いている。この場合には、NMPの混合量の増加に伴って、平均空孔径が大きくなり、空隙率が上昇する傾向がある。また、圧縮時の透気度の上昇をさらに抑制できる傾向がある。しかしながら、NMPの混合量を30Vol%まで増加させると、表面層を基材表面に固定化することができない。
【0171】
実施例1−4では、相分離溶媒としてIPAを用いている。この場合にも、相分離溶媒としてエタノールを用いた実施例1と同様の傾向が見られる。
【0172】
実施例1−5〜1−7、比較例1−9では、相分離溶媒としてIPAとNMPとの混合溶媒を用いている。この場合には、NMPの混合量の増加に伴って、平均空孔径が大きくなり、空隙率が上昇する傾向がある。また、圧縮時の透気度の上昇をさらに抑制できる傾向がある。しかしながら、NMPの混合量を40Vol%まで増加させると、表面層を基材表面に固定化できない。
【0173】
比較例1−1では、基材である微多孔膜のみをセパレータとして用いている。この場合には、圧縮前後で膜厚はほとんど変化しないが、圧縮により微多孔膜の表面が直接潰されるため、圧縮前後で透気度が上昇する傾向がある。
【0174】
比較例1−2では、相分離溶媒として水を用いている。この場合には、表面層を基材表面に固定化させる際に、アルミナ粒子が凝集ネットワーク構造を形成しないため、比較例1−2では、実施例1−1〜1−7に比べて平均空孔径は小さく、空隙率も低い値となる。したがって、比較例1−2では、表面層の付与による透気度上昇が実施例1−1〜1−7に比べて大きくなる。また、圧縮時に表面層が潰れにくいため圧縮率が低く、予め大きな空孔を形成できないため圧縮時の透気度の上昇を抑制することができない。
【0175】
比較例1−3、1−4では、相分離溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いている。この場合には、比較例1−2と同様の傾向が見られる。すなわち、エタノール(アルコール)に水を混合させた場合には、相分離溶媒がエタノール(アルコール)を含む場合であっても、実施例1−1〜1−7に見られるような傾向は得られない。
【0176】
比較例1−5〜1−7では、相分離溶媒として水とNMPとの混合溶媒を用いている。この場合には、NMPの混合量が70Vol%までは、比較例1−2と同様の傾向が見られる。しかしながら、NMPの混合量を80Vol%まで増加させると、表面層を基材表面に固定化できない。
【0177】
水とNMPとの混合溶媒を相分離溶媒として用いる技術は、粘弾性相分離現象を利用して樹脂材料(PVdF)の相分離速度を遅くし、樹脂材料のネットワーク構造(3次元網目構造)を制御する技術である。しかながら、この技術を用いても、セラミック粒子の凝集ネットワーク構造を形成することはできない。すなわち、相分離溶媒としてエタノールやIPAなどのアルコールまたはその混合溶媒を用いなければ、セラミック粒子の凝集ネットワーク構造を形成することはできない。
【0178】
比較例1−10〜1−13では、アルコールおよび水以外のDMC、MEK、アセトンおよび酢酸エチルを相分離溶媒として用いている。この場合には、樹脂材料(PVdF)によりアルミナ粒子を基材表面に固定化できない。すなわち、表面層を基材表面に固定化できない。
【0179】
図10A図11Cから以下のことがわかる。
比較例1−2では、セラミック粒子は、セパレータ内にほぼ均一に充填されている(図11A参照)。充填されたセラミック粒子間には空隙が形成され、この空隙によりセパレータの空孔が形成されている(図11B図11C参照)。その空孔の径は、充填されたセラミック粒子間の空隙により形成されるものであるため、セラミック粒子の粒径よりも小さいものとなっている。樹脂材料は、セラミック粒子間の空隙内で3次元網目構造(樹脂材料のネットワーク構造)を形成している。このため、その網目の空孔径は、セラミック粒子の粒径に比べて非常に小さいものである。
【0180】
実施例1−3では、セラミック粒子が凝集することにより、セパレータ内には多数の空孔が形成されている(図10A参照)。セパレータ内には樹脂材料の3次元網目構造はほとんど存在せず、また、セラミック粒子の凝集体同士をさらにセラミック粒子が架橋してネットワーク化しながら成長することで、セパレータ内の空孔は形成されている(図10B図10C参照)。このため、その空孔の径は、セラミック粒子の粒子径よりも大きくなっている。このような大きい径の空孔は、粒子間の空隙によりセパレータの空孔が形成される比較例1−2では、形成不可能である。
【0181】
なお、実施例1−1、1−2、1−4〜1−7のSEM像でも、上述の実施例1−3のSEM像とほぼ同様の構造が観察された。また、比較例1−3〜1−6のSEM像でも、上述の比較例1−2のSEM像とほぼ同様の構造が観察された。
【0182】
以上の結果を総合すると、以下のことがわかる。
相分離溶媒としてアルコールを用いることで、凝集ネットワーク構造を形成することができる。そして、この凝集ネットワーク構造により、表面層の平均空孔径を大きくし、空隙率を高くできるとともに、加圧により表面層を潰れやすくすることができる。また、表面層は良好な透気度を有するので、出力密度を向上できる。
【0183】
アルコールの混合溶媒を用いた場合にも、アルコールの単一溶媒を用いた場合と同様に、凝集ネットワーク構造を形成することができる。但し、アルコールと混合する溶媒が水である場合には、凝集ネットワーク構造を形成することが困難になるため、アルコールと混合する溶媒は有機溶媒が好ましい。
【0184】
アルコールの混合溶媒の混合比率には好適な範囲があり、その混合比は混合溶媒に含まれる溶媒の種類によって異なっている。したがって、アルコールの混合溶媒の混合比率はその成分に応じて適宜調整することが好ましい。
【0185】
<2.セラミック粒子の含有量についての検討>
(実施例2)
実施例1−3と同様にしてセパレータを得た。
【0186】
(比較例2−1)
比較例1−2と同様にしてセパレータを得た。
【0187】
(比較例2−2)
アルミナとPVdFとを質量比で85:15となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0188】
(比較例2−3)
アルミナとPVdFとを質量比で84:16となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0189】
(比較例2−4)
アルミナとPVdFとを質量比で83:17となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0190】
(比較例2−5)
アルミナとPVdFとを質量比で80:20となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0191】
(比較例2−6)
アルミナとPVdFとを質量比で77:23となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0192】
(比較例2−7)
アルミナとPVdFとを質量比で70:30となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0193】
(比較例2−8)
アルミナとPVdFとを質量比で50:50となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0194】
(比較例2−9)
アルミナとPVdFとを質量比で30:70となるように混合する以外は、比較例2−1と同様にしてセパレータを得た。
【0195】
(表面層の空隙率)
上述のようにして得られた実施例2、比較例2−1〜2−9のセパレータの表面層の空隙率を、上述の実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−3と同様の方法により求めた。その結果を表3および図12に示す。
【0196】
表3は、実施例2、比較例2−1〜2−9のセパレータの構成および評価結果を示す。
【表3】
【0197】
表3および図12から以下のことがわかる。
比較例2−1〜2−9では、樹脂材料およびセラミック粒子の総量に対するセラミック粒子の含有量が30質量%以上70質量%未満(すなわち樹脂材料が30質量%超えて70質量%以下)の範囲内では、セラミック粒子の含有量の増加に伴って、空隙率が緩やかに減少する傾向がある。
【0198】
上記セラミック粒子および樹脂材料の含有量の範囲内では、樹脂材料のネットワーク構造(3次元網目構造)の生成により多孔質が形成される。すなわち、樹脂材料のネットワーク構造の形成によって、表面層の空隙率が決まる。
【0199】
比較例2−1〜2−9では、セラミック粒子の含有量が70質量%以上80質量%未満(すなわち樹脂材料の含有量が20質量%を超えて30質量%以下)の範囲内では、セラミック粒子の含有量の増加に伴って、空隙率が急激に減少する傾向がある。
【0200】
上記セラミック粒子および樹脂材料の含有量の範囲において、空隙率が急激に減少するのは、以下の理由による。すなわち、セラミック粒子の含有量が70質量%以上(すなわち樹脂材料の含有量が30質量%以下)になると、多孔質の形成方法が樹脂のネットワーク構造(3次元網目構造)の生成から、充填されたセラミック粒子間の空隙の生成に変化し始める。そして、セラミック粒子の含有量が80質量%(すなわち樹脂材料の含有量が20質量%)となるまでは、上述の2つの多孔質の形成方法により生成された構造が共存していると考えられる。
【0201】
比較例2−1〜2−9では、セラミック粒子の含有量が80質量%以上90質量%以下(すなわち樹脂材料が10質量%以上20質量%以下)の範囲内では、セラミック粒子の含有量に依存せず、空隙率は非常に低いほぼ一定値に維持される。
【0202】
上記セラミック粒子および樹脂材料の含有量の範囲では、充填されたセラミック粒子間の間隙により空孔が形成される。すなわち、セラミック粒子間の間隙によって空孔の大きさおよび空隙率の値が決まる。セラミック粒子間の空孔(間隙)の平均空孔径は、無機粒子の平均粒径以下であるため、上述のように空隙率は非常に低い値となる。
【0203】
上述のように、セラミック粒子の間隙によって空孔が形成される場合、その空孔径は粒子サイズによって制御される。この場合、大きな空孔径および高い空隙率を達成しようとすると、粒径の大きなセラミック粒子が必要となる。しかしながら、そのような大きなセラミック粒子を表面層に用いるとセパレータは厚くなりすぎるため、電池容量の低下を招くこととなる。また、セラミック粒子は加圧により容易には潰れないために、セラミック粒子を含む表面層も加圧により容易に潰れるものではない。したがって、上述の表面層を有するセパレータでは、電極の膨張を吸収することは困難である。
【0204】
実施例2では、上述の比較例2−1〜2−9では空隙率が非常に低い値となるセラミック粒子の含有量80質量%以上(樹脂材料の含有率20質量%以下)の範囲内において、空隙率を向上することができる。すなわち、実施例2では、上述の比較例2−1〜2−9では無機粒子の間隙で空隙率が支配されるセラミック粒子の含有量範囲において、セラミック粒子の凝集ネットワーク化によって空隙率を向上させることができる。
【0205】
実施例2では、表面層の空孔径は無機粒子の粒径によって規定されるものではないため、大きな粒径の無機粒子を表面層に含有せずとも、大きな空孔径および高い空隙率を得ることができる。このため、電池容量を犠牲にすることなく、大きな空孔径および高い空隙率を得ることができる。このような表面層を備えたセパレータを電池に適用した場合には、電池の負荷特性を向上することができる。
【0206】
以上の結果を総合すると、セラミック粒子の凝集ネットワーク構造により孔径の大きな空孔を形成し、高い空隙率を実現する技術は、セラミック粒子の含有量が70質量%以上の表面層に適用することが好ましく、80質量%以上の表面層に適用することがより好ましい。
【0207】
<3.潰れ性についての検討>
(実施例3)
樹脂溶液の塗布条件を調製して塗布厚を変えたこと以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを得た。
【0208】
(比較例3)
樹脂溶液の塗布条件を調製して塗布厚を変えたこと以外は比較例1−2と同様にしてセパレータを得た。
【0209】
上述のようにして得られた実施例3、比較例3のセパレータについて、以下の評価を行った。
【0210】
(表面層の膜厚)
上述の実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13と同様の方法により求めた。
【0211】
(表面層の空隙率)
上述の実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13と同様の方法により求めた。
【0212】
(微少圧縮試験)
微少圧縮試験機(株式会社島津製作所製、商品名:MCT-W500J)を使用して、セパレータ1枚をφ500μmの圧子で圧縮し、圧縮試験力と潰れ量との関係を求めた。その結果を表4および図13に示す。
【0213】
表4は、実施例3、比較例3のセパレータの構成および評価結果を示す。
【表4】
【0214】
表4および図13から以下のことがわかる。
実施例3および比較例3の基材および表面層は同じ膜厚を有しているが、実施例3では、低い圧縮試験力において比較例3よりも大きく潰れることがわかる。これは、実施例3では、アルコールまたはその混合溶媒を用いて形成した凝集ネットワーク構造が崩壊して潰れるためである。
【0215】
上述の表面層の圧縮率(実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−13)および微少圧縮試験(実施例3、比較例3)の結果から、凝集ネットワーク構造を有する表面層では、低い圧縮力においても、凝集ネットワーク構造の崩壊により高い圧縮率を実現できる。表面層が凝集ネットワーク構造による大きな空孔を有することで、表面層形成時や圧縮後の透気度上昇を抑えることが可能となる。したがって、電池のサイクル特性や出力密度を向上することができる。
【0216】
以上、本技術の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0217】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0218】
また、上述の実施形態および実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0219】
また、上述の実施形態および実施例では、凝集ネットワーク構造を形成する粒子が無機粒子である場合を例として説明したが、粒子は無機粒子に限定されるものではなく、有機粒子および有機無機ハイブリッド粒子を用いることも可能である。すなわち、粒子としては、無機粒子、有機粒子および有機無機ハイブリッド粒子からなる群のうちの少なくとも1種を用いることができる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメタアクリル酸メチル樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化エチレン樹脂などを用いることができる。有機無機ハイブリット粒子としては、例えば、シリカ/アクリル複合粒子、シリカ/メラミン複合粒子などを用いることができる。
【0220】
また、上述の実施例では、無機粒子としてのアルミナ粒子と、樹脂材料(バインダー)としてのPVdFとを用いて表面層を形成する場合を例として示したが、本技術はこの例に限定されるものではない。すなわち、本技術は、表面層が無機粒子による凝集ネットワーク構造を有していればよく、無機粒子および樹脂材料はアルミナ粒子およびPVdFに限定されるものではない。本技術では、無機粒子や樹脂材料の相互作用に基づく凝集性を利用し、樹脂材料の急激なスピノーダル分解を抑制することで凝集ネットワーク構造への成長を誘起しているためである。すなわち、無機粒子および樹脂材料の選定に併せて相分離溶媒などを適時選択すれば、アルミナ粒子およびPVdF以外でも凝集ネットワーク構造を形成することが可能である。
【0221】
また、上述の実施例では、セパレータの製造方法として、アルコール相分離溶媒により凝集ネットワーク構造を形成する方法を例として示したが、セパレータの製造方法はこの例に限定されるものではい。例えば、塗布後に樹脂溶液を乾燥させる場合、無機粒子や樹脂材料(バインダー)の凝集性や乾燥速度などを制御することで上記凝集ネットワーク構造を形成することが可能である。
【0222】
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
多孔質の第1の層と、
上記第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層と
を備え、
上記第2の層は、上記粒子の凝集ネットワーク構造を有しているセパレータ。
(2)
上記凝集ネットワーク構造は、上記粒子の凝集体同士が上記粒子により相互に連結された構造である(1)に記載のセパレータ。
(3)
上記樹脂材料および粒子の総量に対する上記粒子の含有量は、70質量%以上である(1)から(2)のいずれかに記載のセパレータ。
(4)
上記樹脂材料および粒子の総量に対する上記粒子の含有量は、80質量%以上である(1)から(2)のいずれかに記載に記載のセパレータ。
(5)
上記第2の層の平均空孔径は、上記粒子の平均粒径の5.6倍以上10.0倍以下である(1)から(4)のいずれかに記載のセパレータ。
(6)
上記第2の層の平均空孔径は、2.8μm以上5.0μm以下である(1)から(4)のいずれかに記載のセパレータ。
(7)
上記第2の層の空隙率は、74%以上90%以下である(1)から(6)のいずれかに記載のセパレータ。
(8)
上記樹脂材料は、フッ素樹脂を含んでいる(1)から(7)のいずれかに記載のセパレータ。
(9)
上記フッ素樹脂は、ポリフッ化ビニリデンである(8)に記載のセパレータ。
(10)
上記粒子が、酸化アルミニウムを含んでいる(1)から(9)のいずれかに記載のセパレータ。
(11)
正極と、負極と、電解質と、セパレータとを備え、
上記セパレータは、
多孔質の第1の層と、
上記第1の層の少なくとも一方の面に設けられ、樹脂材料および粒子を含む第2の層と
を備え、
上記第2の層は、上記粒子の凝集ネットワーク構造を有している電池。
(12)
上記負極は、合金系負極である(11)に記載の電池。
(13)
(11)に記載の電池を備える電池パック。
(14)
(11)に記載の電池を備え、
上記電池から電力の供給を受ける電子機器。
(15)
(11)に記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
(16)
(11)に記載の電池を備え、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
(17)
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う(16)に記載の蓄電装置。
(18)
(11)に記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0223】
1 セパレータ
2 基材
3 表面層
11 電池缶
12、13 絶縁板
14 電池蓋
15 安全弁機構
15A ディスク板
16 熱感抵抗素子
17 ガスケット
20、30 巻回電極体
21、33 正極
21A、33A 正極集電体
21B、33B 正極活物質層
22、34 負極
22A、34A 負極集電体
22B、34B 負極活物質層
23、35 セパレータ
24 センターピン
25、31 正極リード
26、32 負極リード
36 電解質層
37 保護テープ
40 外装部材
41 密着フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13