特開2016-225412(P2016-225412A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225412(P2016-225412A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/54 20130101AFI20161205BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20161205BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161205BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20161205BHJP
   H01G 11/58 20130101ALI20161205BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20161205BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20161205BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20161205BHJP
【FI】
   H01G11/54
   H01M10/058
   H01M10/052
   H01M10/0569
   H01G11/58
   H01G11/60
   H01G11/50
   H01G11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-108801(P2015-108801)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 広基
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
(72)【発明者】
【氏名】今野 真
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BA13
5E078BA18
5E078BA38
5E078DA03
5E078DA13
5E078DA14
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK08
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ04
5H029BJ14
5H029CJ15
5H029CJ16
(57)【要約】
【課題】低コストで製造することができ、低温特性において優れる蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】(A)第一の電解液中でリチウムを吸蔵した負極、(B)正極及び(C)前記第一の電解液とは組成が異なる第二の電解液を備える蓄電デバイス。前記第一の電解液は、イオン液体を含むことが好ましい。前記第一の電解液における前記イオン液体の含有割合は、前記第二の電解液における前記イオン液体の含有割合より高いことが好ましい。前記第一の電解液がSEI被膜を形成するための添加剤を含むことが好ましい。前記第一の電解液における前記添加剤の含有割合が、前記第二の電解液中における前記添加剤の含有割合より高いことが好ましい。前記第二の電解液がプロピレンカーボネートを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一の電解液中でリチウムを吸蔵した負極、(B)正極及び(C)前記第一の電解液とは組成が異なる第二の電解液を備える蓄電デバイス。
【請求項2】
前記第一の電解液がイオン液体を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記第一の電解液における前記イオン液体の含有割合が、前記第二の電解液における前記イオン液体の含有割合より高い、請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記第一の電解液がSEI被膜を形成するための添加剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記第一の電解液における前記添加剤の含有割合が、前記第二の電解液中における前記添加剤の含有割合より高い、請求項4に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記第二の電解液がプロピレンカーボネートを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池(蓄電デバイスの一例)が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。
【0003】
このような蓄電デバイスにおいては、様々な目的のために、予めリチウムを電極に吸蔵させるプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。例えば、リチウムイオンキャパシタでは、負極電位を下げエネルギー密度を高めるためにプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法としては、貫通孔を有する集電体を利用してセル内で負極にプレドープを行う方法が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、二次電池では、サイクル特性を向上させるためにプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法としては、集電体を利用する上記方法の他、電池を組み立てる前に負極にプレドープを行う方法も知られている(特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−67105号公報
【特許文献2】特開昭63−10462号公報
【特許文献3】特開平3−176963号公報
【特許文献4】特開平4−190556号公報
【特許文献5】特開平9−293499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貫通孔を有する集電体を利用する方法においては、集電体に規則的で微細な貫通孔を設ける必要があるため、蓄電デバイスの製造コストが非常に高くなるという問題がある。
【0007】
また、電池を組み立てる前に負極にプレドープを行う方法においては、製造された二次電池の低温特性が不十分である。
したがって、本発明は、低コストで製造することができ、低温特性において優れる蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電デバイスは、(A)第一の電解液中でリチウムを吸蔵した負極、(B)正極及び(C)前記第一の電解液とは組成が異なる第二の電解液を備える。
本発明の蓄電デバイスは、貫通孔を有する集電体を必ずしも使用する必要はないため低コストで製造することができ、しかも低温特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を説明する。
1.負極
本発明の蓄電デバイスを構成する負極は、蓄電デバイスを構成する第二の電解液とは組成の異なる第一の電解液中でリチウムを吸蔵している。負極は、通常、負極活物質を備え、その負極活物質がリチウムを吸蔵している。
【0010】
負極は、例えば、集電体と、その上に形成された、リチウムを吸蔵した負極活物質を含む層(以下、負極活物質層とする)と、を備える。
上記集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体は、上記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体の厚みは、例えば、5〜50μmとすることができる。
【0011】
上記負極活物質層は、例えば、リチウムを吸蔵した負極活物質とバインダーとを含む。負極活物質(吸蔵したリチウムを除く部分)は、特に限定されるものではないが、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。
【0012】
炭素材料の具体例としては、特開2013−258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例としては、特開2005−123175号公報、特開2006−107795号公報に記載の材料が挙げられる。負極活物質は、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。
【0013】
上記バインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009−246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダーが挙げられる。
【0014】
負極活物質層は、負極活物質及びバインダーに加えて、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤を含有してもよい。
【0015】
負極活物質層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5〜500μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは10〜100μmである。
負極活物質層の密度は、リチウムイオン二次電池に用いる負極の場合、好ましくは1.50〜2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60〜1.90g/ccである。また、負極活物質層の密度は、リチウムイオンキャパシタに用いる負極の場合、好ましくは0.50〜1.50g/ccであり、特に好ましくは0.70〜1.20g/ccである。
【0016】
リチウムを吸蔵した負極は、リチウムを吸蔵する前の負極(以下、負極前駆体とする)を、第一の電解液中でリチウム供給源と電気化学的に接触させる方法により製造することができる。
【0017】
上記負極前駆体は、例えば、集電体と、その上に形成された、リチウムを吸蔵する前の負極活物質を含む層(以下、前駆体層とする)と、を備える。前駆体層は、例えば、リチウムを吸蔵する前の負極活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成できる。スラリーに含まれるバインダーとしては、上述した、負極活物質層を構成するバインダーを使用できる。前駆体層の厚さ、密度は、例えば、上述した、負極活物質層の厚さ、密度と同程度とすることができる。
【0018】
上記リチウム供給源の形態は特に限定されず、例えば、リチウム金属板、リチウム合金板等をリチウム供給源とすることができる。これらの厚さは、例えば、0.03〜3mmとすることができる。リチウム供給源は、導電性基材上に配置されていることが好ましい。導電性基材は多孔質であってもよい。導電性基材の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。
【0019】
上記負極前駆体と上記リチウム供給源とを電気化学的に接触させる方法としては、例えば、第一の電解液中で負極前駆体とリチウム供給源とを短絡させる方法、第一の電解液中で、負極前駆体とリチウム供給源との間に直流電流を通電する方法が挙げられる。
【0020】
第一の電解液中で負極前駆体とリチウム供給源とを短絡させる方法としては、例えば、集電体を一方の端子とし、リチウム供給源を配置した導電性基材を他方の端子として、両端子間を金属線等の導電体で電気的に接続し、短絡を生じさせる方法がある。短絡させる時間は、前駆体層の面積、厚さ等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜1000時間、好ましくは5〜500時間とすることができる。
【0021】
また、第一の電解液中で、負極前駆体とリチウム供給源との間に直流電流を通電する方法としては、例えば、直流安定化電源のプラス端子を、リチウム供給源を配置した導電性基材に接続し、直流安定化電源のマイナス端子を集電体に接続して通電する方法がある。通電する際の電流は、前駆体層の面積、厚さ等に応じて適宜設定することができる。
【0022】
上記第一の電解液は、後述する第二の電解液と組成が異なっていれば特に限定されるものではないが、有機溶媒と、それに溶解したリチウム塩とを含むことが好ましい。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiN(FSO等が挙げられる。第一の電解液は、単一のリチウム塩を含んでいてもよいし、2種以上のリチウム塩を含んでいてもよい。
【0023】
上記有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。
【0024】
また、上記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。
上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。第一の電解液におけるプロピレンカーボネートの含有割合は少ないことが好ましい。第一の電解液におけるプロピレンカーボネートの含有割合が少ないと、負極におけるリチウムの吸蔵が効率よく進行する。第一の電解液におけるプロピレンカーボネートの含有割合は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、第一の電解液における含有割合とは、第一の電解液の全質量を100質量%としたときの含有割合を意味する。
【0025】
第一の電解液におけるリチウムイオン(リチウム塩)の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5〜1.5モル/Lの範囲内である。この範囲内である場合、リチウムの吸蔵が効率よく進行する。
【0026】
第一の電解液は、SEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成するための添加剤を含むことが好ましい。第一の電解液がこの添加剤を含む場合、負極(例えば負極活物質)にリチウムを吸蔵させる工程で、負極表面にSEI被膜を形成することができる。負極表面にSEI被膜を形成しておくと、後述する第二の電解液に配合可能な成分の選択肢が広がる。
【0027】
SEI被膜を形成するための添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1−フルオロエチレンカーボネート、1−(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等が好ましい。第一の電解液は、単一の添加剤を含んでいてもよいし、2種以上の添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
第一の電解液は、イオン液体を含むことが好ましい。第一の電解液がイオン液体を含む場合、高温下で負極にリチウムを吸蔵させることができる。その結果、負極にリチウムを吸蔵させるために要する時間を短縮できる。
【0029】
また、第一の電解液がイオン液体を含む場合、第一の電解液における揮発量が少なくなる。その結果、第一の電解液を使用する工程において、排気設備を省略するか、簡易化することができる。また、第一の電解液の管理が容易になる。
【0030】
なお、第一の電解液がイオン液体を含む場合の上述した作用効果は、本発明の発明者が鋭意研究を行った結果、新たに発見した知見である。
イオン液体としては、25℃において液状であるイオン性化合物が好ましい。イオン性化合物の25℃における粘度は、好ましくは400mPa・s以下であり、より好ましくは10〜400mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは10〜200mPa・sの範囲内である。イオン性化合物の25℃における粘度が上記の範囲内である場合、リチウムの吸蔵が効率よく進行する。また、上記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0031】
イオン液体を構成するカチオンとしては、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオン、スルホニウム系カチオン等のオニウムカチオンが挙げられるが、低粘度である点から、アンモニウム系カチオンが好ましく、特に第4級アンモニウムカチオンが好ましい。アンモニウム系カチオンとしては、脂肪族アンモニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン等が挙げられる。
【0032】
脂肪族アンモニウム系カチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニム、トリエチルメチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0033】
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メチル−1−ブチルピロリジニウム等が挙げられる。
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0034】
ピリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム等が挙げられる。
ピペリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−メチル−1−ブチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0035】
ホスホニウム系カチオンとしては、例えば、トリブチル−n−オクチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラ−n−オクチルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、イソプロピルトリフェニルホスホニウム、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ブチルトリフェニルホスホニウム、(1−ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウム等が挙げられる。
【0036】
スルホニウム系カチオンとしては、例えば、トリメチルスルホニウム、(2−カルボキシエチル)ジメチルスルホニウム、ジフェニル(メチル)スルホニウム、トリ−n−ブチルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、シクロプロピルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0037】
イオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、ハロゲンアニオン、ホウ素アニオン、リンアニオン、有機スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン等が挙げられるが、ハロ基(好ましくはフルオロ基)及びシアノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の電子吸引基を有するアニオンであることが好ましい。
【0038】
ハロ基(好ましくはフルオロ基)及びシアノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の電子吸引基を有するアニオンとしては、例えば、PF、PF(C、PF(CF、BF、BF (CF)、BF(CF、B(CN)、AlCl 、N(FSO、N(CFSO、N(CSO、CFSO等が挙げられる。
【0039】
第一の電解液におけるイオン液体の含有割合は、特に限定されるものではないが、好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。なお、第一の電解液におけるイオン液体の含有割合とは、第一の電解液の全質量を100質量%としたときの含有割合である。
【0040】
イオン液体を含む第一の電解液を使用する場合、第一の電解液を加熱することが好ましく、第一の電解液の温度を40〜110℃とすることが好ましく、60〜90℃とすることが特に好ましい。第一の電解液の温度を上記の範囲内とした場合、安全性が確保されると共にリチウムの吸蔵が効率よく進行する。
【0041】
第一の電解液を加熱して使用する場合、第一の電解液におけるイオン液体の含有割合は多い方が好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
イオン液体を含む第一の電解液中で負極活物質にリチウムを吸蔵させる工程を含む負極の製造方法は、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が備える負極の製造に適しており、特にリチウムイオンキャパシタが備える負極の製造に適している。
【0042】
2.正極
本発明の蓄電デバイスを構成する正極の基本的な構成は、負極活物質の代わりに以下の正極活物質を用い、リチウムを吸蔵させなくてもよい点以外は、上記の負極と同様とすることができる。また、本発明の蓄電デバイスを構成する正極は、負極活物質に関する部分以外は、上記の負極の製造方法と同様の方法で製造できる。
【0043】
本発明の蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、正極が備える正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物;フッ化黒鉛等の炭素質材料;ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質等を挙げることができる。正極は、単一の正極活物質を含んでいてもよいし、2種以上の正極活物質を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである場合、正極が備える正極活物質としては、例えば、活性炭、ポリアセン系物質を挙げることができる。正極は、単一の正極活物質を含んでいてもよいし、2種以上の正極活物質を含んでいてもよい。
【0045】
3.第二の電解液
本発明の蓄電デバイスを構成する第二の電解液は、上記第一の電解液と組成が異なるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「1.負極」の項で挙げた第一の電解液の成分、濃度等を適宜選択して構成することができる。
【0046】
第二の電解液は、上記イオン液体を含んでいてもよいが、第二の電解液におけるイオン液体の含有割合より、第一の電解液におけるイオン液体の含有割合の方が高いことが好ましい。かかる態様にすることより、低温での内部抵抗が一層低い蓄電デバイスを得ることができる。
【0047】
また、第二の電解液は、上記SEI被膜を形成するための添加剤を含んでいてもよいが、第二の電解液における、SEI被膜を形成するための添加剤の含有割合より、第一の電解液における、SEI被膜を形成するための添加剤の含有割合が高いことが好ましい。かかる態様にすることより、低温での内部抵抗が一層低い蓄電デバイスを得ることができる。
【0048】
従来、蓄電デバイスの電解液を構成する成分として、プロピレンカーボネートを使用することは、還元分解反応が起きることから困難であった。しかしながら、上記第一の電解液にSEI被膜を形成するための添加剤を配合しておけば、負極表面に予めSEI被膜を形成することができる。負極表面にSEI被膜が形成されていれば、第二の電解液を構成する成分として、プロピレンカーボネートを使用することが可能となる。第二の電解液がプロピレンカーボネートを含む場合、低温での内部抵抗がより低い蓄電デバイスを得ることができる。
【0049】
第二の電解液を構成する有機溶媒におけるプロピレンカーボネートの含有割合は、30質量%以上であることが好ましい。この範囲内である場合、蓄電デバイスの低温での内部抵抗が一層低くなる。
【0050】
4.蓄電デバイス
本発明の蓄電デバイスは、例えば、リチウムイオンの挿入/脱離を利用する蓄電デバイスである。本発明の蓄電デバイスとしては、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が好ましく、リチウムイオンキャパシタが特に好ましい。
【0051】
本発明の蓄電デバイスは、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとしては、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムを挙げることができる。
【0052】
蓄電デバイスの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。
【0053】
また、蓄電デバイスの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る帯状の構成単位が捲回されて積層体を形成し、その積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等が挙げられる。
(実施例1)
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されない。なお、以下の各実施例および各比較例において蓄電デバイスの製造は、気温23℃、露点−40℃に制御された空気環境下で行った。
【0054】
(i)負極前駆体の製造
表面粗さRa=0.1μmの銅箔からなる集電体上に、縦50mm×横50mm、厚さ40μmの前駆体層を形成した。前駆体層は、黒鉛(負極活物質)、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック(導電剤)及び分散剤を、質量比で88:4:5:3の比率で含む層である。前駆体層は、上記の成分を含むスラリーを調製し、このスラリーを集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成した。前駆体層に含まれる黒鉛は、リチウムを吸蔵する前の状態である。集電体と、その上に形成された前駆体層とを併せて、以下では負極前駆体とする。
【0055】
(ii)負極の製造
上記(i)で得られた負極前駆体を一方の電極とし、リチウム金属を対極として、第一の電解液中で電解処理を行った。第一の電解液は、1.0MのLiPFを含むとともに、有機溶媒として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を含む。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比は、40:60である。
【0056】
上記の電解処理により、負極前駆体(特に黒鉛)はリチウムを吸蔵した。電解処理における電流値は10Cとし、黒鉛の容量に対してリチウムの吸蔵率が80%になるまで通電した。通電時間は4.8分とした。
【0057】
上記の電解処理の結果、集電体と、その上に形成された、リチウムを吸蔵した黒鉛を含む層(負極活物質層)とを備えた負極が得られた。
(iii)蓄電デバイスの製造
上記(ii)で得られた負極と、活性炭を正極活物質とする正極とをセパレータを介して対向させ、リチウムイオンキャパシタのラミネートセル(以下では、単にラミネートセルとする)を組み立てた。
【0058】
次に、ラミネートセル内に第二の電解液を注入した。第二の電解液は、1.0MのLiPFを含むとともに、有機溶媒として、プロピレンレンカーボネートと1−フルオロエチレンカーボネートとの混合溶媒を含む。プロピレンレンカーボネートと1−フルオロエチレンカーボネートとの体積比は、97:3である。
【0059】
第二の電解液の注入後、減圧封止してラミネートセル(蓄電デバイスの一例)を得た。
(iv)蓄電デバイスの評価
前記(iii)で得られたラミネートセルの−30℃での直流内部抵抗を評価した結果、15.3Ωであった。
(実施例2〜5及び比較例1〜3)
第一の電解液及び第二の電解液の組成、並びに負極の製造工程における第一の電解液の温度を表1及び表2に示すように変更した点以外は、上記実施例1と同様にラミネートセルを製造した。また、前記実施例1と同様に、直流内部抵抗を評価した。直流内部抵抗の評価結果を表3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
なお、表1及び表2における略称は、それぞれ下記の意味を有する。
【0063】
EC:エチレンカーボネート
EMC:エチルメチルカーボネート
DMC:ジメチルカーボネート
FEC:1−フルオロエチレンカーボネート
PC:プロピレンレンカーボネート
また、表3における「通電時間」は、負極の製造工程にて行った電解処理における通電時間を意味する。実施例2〜5のラミネートセルにおいて、直流内部抵抗は顕著に低かった。