特開2016-225708(P2016-225708A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧
特開2016-225708タイミング信号生成装置、電子機器および移動体
<>
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000004
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000005
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000006
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000007
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000008
  • 特開2016225708-タイミング信号生成装置、電子機器および移動体 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225708(P2016-225708A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】タイミング信号生成装置、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/095 20060101AFI20161205BHJP
   H03L 7/26 20060101ALI20161205BHJP
   H03K 5/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   H03L7/08 B
   H03L7/26
   H03K5/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-107644(P2015-107644)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】牧 義之
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106CC07
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD36
5J106EE02
5J106GG02
5J106KK11
(57)【要約】
【課題】周波数異常の原因を絞り、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができるタイミング信号生成装置を提供すること、また、かかるタイミング信号生成装置を備える電子機器および移動体を提供すること。
【解決手段】タイミング信号生成装置1は、1PPSを出力するGPS受信機10と、1PPSに同期させるためのクロック信号を出力する原子発振器30と、1PPSとクロック信号との位相を比較する位相比較器21と、位相比較器21の比較結果を用いて、クロック信号の周波数が異常であるか否かを判断し、その判断結果を含む周波数異常情報を出力する周波数異常判断部27と、比較結果に影響を及ぼす環境情報を検出するセンサー部40と、周波数異常情報および環境情報を用いて、異常の原因を判定する判定部28と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準タイミング信号を出力する基準タイミング信号出力部と、
前記基準タイミング信号に同期させるためのクロック信号を出力する発振器と、
前記基準タイミング信号と前記クロック信号との位相を比較する位相比較器と、
前記位相比較器の比較結果を用いて、前記クロック信号の周波数が異常であるか否かを判断し、その判断結果を含む周波数異常情報を出力する周波数異常判断部と、
環境情報を検出するセンサー部と、
前記周波数異常情報および前記環境情報を用いて、前記異常の原因を判定する判定部と、
を備えることを特徴とするタイミング信号生成装置。
【請求項2】
前記発振器は、原子発振器である請求項1に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項3】
前記原子発振器は、互いに異なる2つの基底準位を有する金属原子のエネルギー遷移に基づいて発振し、
前記センサー部は、前記2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数のマイクロ波を検出可能なマイクロ波受信機を有し、
前記環境情報は、前記マイクロ波に関する情報を含む請求項2に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項4】
前記センサー部は、前記発振器が受ける振動を検出可能な振動センサーを有し、
前記環境情報は、前記振動に関する情報を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項5】
前記センサー部は、電源ノイズを検出可能な電源ノイズセンサーを有し、
前記環境情報は、前記電源ノイズに関する情報を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項6】
前記センサー部は、前記発振器の温度を検出可能な温度センサーを有し、
前記環境情報は、前記温度に関する情報を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項7】
前記判定部の判定結果を出力する出力部を備える請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置。
【請求項8】
前記基準タイミング信号出力部がGPS受信機である請求項1ないし7のいずれか1項記載のタイミング信号生成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイミング信号生成装置を備えていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイミング信号生成装置、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星を利用した全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の1つであるGPS(Global Positioning System)に用いるGPS衛星は、極めて精度の高い原子時計が搭載されており、GPS衛星の軌道情報や正確な時刻情報等が重畳された衛星信号を地上に送信している。GPS衛星から送信された衛星信号は、GPS受信機で受信される。そして、GPS受信機は、衛星信号に重畳されている軌道情報や時刻情報に基づいてGPS受信機の現在位置や時刻情報を算出する処理や、協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)に同期した正確なタイミング信号(1PPS)を生成する処理等を行う。1PPSの精度は、設定される受信点の位置情報の精度に依存するため、GPS受信機に正確な位置情報を設定することが重要になる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の基準周波数発生装置は、GPS受信機と、ルビジウム発振器と、水晶発振器と、を備え、ルビジウム発振器が正常であるときに、ルビジウム発振器を含む第1PLL回路を用いて、GPS受信機で受信したリファレンス信号(1PPS)にルビジウム発振器の出力信号を同期させて基準周波数信号として出力し、一方、ルビジウム発振器が正常でないときに、水晶発振器を含む第2PLL回路を用いて、GPS受信機で受信したリファレンス信号(1PPS)に水晶発振器の出力信号を同期させて基準周波数信号として出力する。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の基準信号発生装置では、ルビジウム発振器の出力信号とリファレンス信号との位相差が所定の範囲から外れたときに、ルビジウム発振器が故障したと判断し、上述したPLL回路の切り換えを行う。このような装置では、ルビジウム発振器において、出力信号のいわゆる周波数ズレや周波数飛びのような周波数異常を検出することができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の基準信号発生装置では、ルビジウム発振器の出力信号の周波数異常の原因がわからないため、メンテナンスや修理等の作業効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−155367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、周波数異常の原因を絞り、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができるタイミング信号生成装置を提供すること、また、かかるタイミング信号生成装置を備える電子機器および移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態
様または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
本発明のタイミング信号生成装置は、基準タイミング信号を出力する基準タイミング信号出力部と、
前記基準タイミング信号に同期させるためのクロック信号を出力する発振器と、
前記基準タイミング信号と前記クロック信号との位相を比較する位相比較器と、
前記位相比較器の比較結果を用いて、前記クロック信号の周波数が異常であるか否かを判断し、その判断結果を含む周波数異常情報を出力する周波数異常判断部と、
環境情報を検出するセンサー部と、
前記周波数異常情報および前記環境情報を用いて、前記異常の原因を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
このようなタイミング信号生成装置によれば、発振器のクロック信号の異常の原因を絞ることができ、その結果、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。なお、ここで、「基準タイミング信号とクロック信号との位相を比較する」とは、基準タイミング信号出力部から出力された基準タイミング信号と、発振器から出力されたクロック信号を分周したクロック信号との位相を比較する場合も含む。
【0011】
[適用例2]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記発振器は、原子発振器であることが好ましい。
【0012】
原子発振器は、水晶発振器に比べて長期安定度に優れる。したがって、原子発振器を用いることにより、例えば、基準タイミング信号出力部が基準タイミング信号を出力できないときであっても、原子発振器を自走させることで、高精度な信号出力を行うことができる。
【0013】
[適用例3]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記原子発振器は、互いに異なる2つの基底準位を有する金属原子のエネルギー遷移に基づいて発振し、
前記センサー部は、前記2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数のマイクロ波を検出可能なマイクロ波受信機を有し、
前記環境情報は、前記マイクロ波に関する情報を含むことが好ましい。
【0014】
原子発振器は、2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数のマイクロ波が外乱として入力されると、いわゆる周波数飛びが生じやすい。例えば、一般に、タイミング信号生成装置では、複数の原子発振器を設けておき、必要に応じてこれらを切り換えることにより、ロバスト性を向上させることが行われる。このような場合において、使用中の原子発振器に対して他の原子発振器の出力信号によるマイクロ波が入力され、周波数飛びが生じる場合がある。したがって、このようなマイクロ波の検出結果を用いることで、判定部において、周波数異常の原因にマイクロ波による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0015】
[適用例4]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記センサー部は、前記発振器が受ける振動を検出可能な振動センサーを有し、
前記環境情報は、前記振動に関する情報を含むことが好ましい。
【0016】
発振器は、振動が外乱として入力されると、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような振動の検出結果を用いることで、判定部において、周波数異常の原因に振動による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0017】
[適用例5]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記センサー部は、電源ノイズを検出可能な電源ノイズセンサーを有し、
前記環境情報は、前記電源ノイズに関する情報を含むことが好ましい。
【0018】
発振器は、電源ノイズが外乱として入力されると、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような電源ノイズの検出結果を用いることで、判定部において、周波数異常の原因に電源ノイズによる周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0019】
[適用例6]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記センサー部は、前記発振器の温度を検出可能な温度センサーを有し、
前記環境情報は、前記温度に関する情報を含むことが好ましい。
【0020】
発振器は、一般に、温度特性を有し、その温度特性を補正する制御が行われるが、例えば、環境温度が急激に変化すると、その補正が間に合わず、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような環境温度の検出結果を用いることで、判定部において、周波数異常の原因に環境温度による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0021】
[適用例7]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記判定部の判定結果を出力する出力部を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、判定部の判定結果を表示したり他の機器に送信したりして、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。
【0023】
[適用例8]
本発明のタイミング信号生成装置では、前記基準タイミング信号出力部がGPS受信機であることが好ましい。
【0024】
これにより、協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)に同期した正確な基準タイミング信号(1PPS)を用いることができる。
【0025】
[適用例9]
本発明の電子機器は、本発明のタイミング信号生成装置を備えていることを特徴とする。
【0026】
このような電子機器によれば、タイミング信号生成装置が備える発振器の周波数異常の原因を絞り、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。
【0027】
[適用例10]
本発明の移動体は、本発明のタイミング信号生成装置を備えていることを特徴とする。
【0028】
このような移動体によれば、タイミング信号生成装置が備える発振器の周波数異常の原因を絞り、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るタイミング信号生成装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示すタイミング信号生成装置が備えるGPS受信機の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示すタイミング信号生成装置が備える原子発振器において、アルカリ金属のエネルギー状態を説明するための図である。
図4図1に示すタイミング信号生成装置が備える原子発振器において、光源部から出射される2つの光の周波数差と、受光部で検出される光の強度との関係を示すグラフである。
図5】本発明の電子機器の実施形態を示すブロック図である。
図6】本発明の移動体の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のタイミング信号生成装置、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
1.タイミング信号生成装置
図1は、本発明の実施形態に係るタイミング信号生成装置の概略構成を示す図である。
【0032】
図1に示すタイミング信号生成装置1は、GPS受信機10(基準タイミング信号出力部)、処理部(CPU)20、原子発振器30(発振器)、温度センサー41、マイクロ波受信機42、電源ノイズセンサー43、振動センサー44、GPSアンテナ50、電源回路60を含んで構成されている。
【0033】
なお、タイミング信号生成装置1は、構成要素の一部または全部が物理的に分離されていてもよいし、一体化されていてもよい。例えば、GPS受信機10と処理部(CPU)20はそれぞれ別個のICで実現されていてもよいし、GPS受信機10と処理部(CPU)20は1チップのICとして実現されていてもよい。
【0034】
このタイミング信号生成装置1は、GPS衛星2(位置情報衛星の一例)から送信された衛星信号を受信し、高精度の1PPSを生成するものである。
【0035】
GPS衛星2は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、搬送波である1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージおよびC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)を重畳(搬送波を変調)させた衛星信号を地上に送信している。
【0036】
C/Aコードは、現在約30個存在するGPS衛星2の衛星信号を識別するためのものであり、各chipが+1または−1のいずれかである1023chip(1ms周期)からなる固有のパターンである。したがって、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0037】
各GPS衛星2が送信する衛星信号(具体的には航法メッセージ)には、各GPS衛星2の軌道上の位置を示す軌道情報が含まれている。また、各GPS衛星2は原子時計を搭載しており、衛星信号には、原子時計で計時された極めて正確な時刻情報が含まれている。したがって、4つ以上のGPS衛星2からの衛星信号を受信し、各衛星信号に含まれている軌道情報および時刻情報を用いて測位計算を行うことで、受信点(GPSアンテナ50の設置場所)の位置と時刻の正確な情報を得ることができる。具体的には、受信点の3次元位置(x,y,z)および時刻tを4つの変数とする4次元方程式を立ててその解を求めればよい。
【0038】
なお、受信点の位置が既知である場合、1つ以上のGPS衛星2からの衛星信号を受信し、各衛星信号に含まれている時刻情報を用いて受信点の時刻情報を得ることができる。
【0039】
また、各衛星信号に含まれている軌道情報を用いて、各GPS衛星2の時刻と受信点の時刻との差の情報を得ることができる。なお、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星2に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメーターも含まれており、この時刻補正パラメーターを用いて受信点の時刻を補正することで極めて正確な時刻情報を得ることができる。
【0040】
GPSアンテナ50は、衛星信号を含む各種の電波を受信するアンテナであり、GPS受信機10に接続されている。
【0041】
GPS受信機10(衛星信号受信部の一例)は、GPSアンテナ50を介して受信した衛星信号に基づいて、各種の処理を行う。
【0042】
具体的に説明すると、GPS受信機10は、通常測位モード(第1のモードの一例)および位置固定モード(第2のモードの一例)を有し、処理部(CPU)20からの制御コマンド(モード設定用の制御コマンド)に応じて通常測位モードと位置固定モードのいずれかに設定される。
【0043】
GPS受信機10は、通常測位モードでは、「測位計算部」として機能し、複数(好ましくは4個以上)のGPS衛星2から送信された衛星信号を受信し、受信した衛星信号に含まれる軌道情報(具体的には、前述したエフェメリスデータやアルマナックデータ等)および時刻情報(具体的には、前述した週番号データやZカウントデータ等)に基づいて測位計算を行う。通常測位モードは、継続的に測位計算を行うモードである。
【0044】
また、GPS受信機10は、位置固定モードでは、基準タイミング信号を出力する「基準タイミング信号出力部」として機能し、少なくとも1つのGPS衛星2から送信された衛星信号を受信し、受信した衛星信号に含まれる軌道情報および時刻情報と設定された受信点の位置情報とに基づいて、基準タイミング信号として1PPS(1 Pulse Per Second)を生成する。1PPS(基準時刻に同期した基準タイミング信号の一例)は、UTC(世界標準時)と完全同期したパルス信号であり、1秒毎に1パルスを含む。このように、GPS受信機10が基準タイミング信号の生成に用いる衛星信号が軌道情報および時刻情報を含んでいることにより、基準時刻に正確に同期したタイミング信号を生成することができる。位置固定モードは、あらかじめ設定された位置情報に基づいて1PPSを出力するモードである。
【0045】
以下、GPS受信機10の構成について詳述する。
図2は、図1に示すタイミング信号生成装置が備えるGPS受信機の構成例を示すブロック図である。
【0046】
図2に示すGPS受信機10は、SAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルター11、RF処理部12、ベースバンド処理部13および温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)14を含んで構成されている。
【0047】
SAWフィルター11は、GPSアンテナ50が受信した電波から衛星信号を抽出する処理を行う。このSAWフィルター11は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルターとして構成される。
【0048】
RF処理部12は、PLL(Phase Locked Loop)121、LNA(Low Noise Amplifier)122、ミキサー123、IFアンプ124、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルター125およびADC(A/D変換器)126を含んで構成されている。
【0049】
PLL121は、数十MHz程度で発振するTCXO14の発振信号を1.5GHz帯の周波数に逓倍したクロック信号を生成する。
【0050】
SAWフィルター11が抽出した衛星信号は、LNA122で増幅される。LNA122で増幅された衛星信号は、ミキサー123でPLL121が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯(例えば、数MHz)の信号(IF信号)にダウンコンバートされる。ミキサー123でミキシングされた信号は、IFアンプ124で増幅される。
【0051】
ミキサー123でのミキシングにより、IF信号とともにGHzオーダーの高周波信号も生成されるため、IFアンプ124はIF信号とともにこの高周波信号も増幅する。IFフィルター125は、IF信号を通過させるとともに、この高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルター125を通過したIF信号はADC(A/D変換器)126でデジタル信号に変換される。
【0052】
ベースバンド処理部13は、DSP(Digital Signal Processor)131、CPU(Central Processing Unit)132、SRAM(Static Random Access Memory)133およびRTC(リアルタイムクロック)134を含んで構成されており、TCXO14の発振信号をクロック信号として各種処理を行う。
【0053】
DSP131とCPU132は、協働しながら、IF信号からベースバンド信号を復調し、航法メッセージに含まれる軌道情報や時刻情報を取得し、通常測位モードの処理あるいは位置固定モードの処理を行う。
【0054】
SRAM133は、取得された時刻情報や軌道情報、所定の制御コマンド(位置設定用の制御コマンド)に応じて設定された受信点の位置情報、位置固定モード等で用いる仰角マスク等を記憶するためのものである。RTC134は、ベースバンド処理を行うためのタイミングを生成するものである。このRTC134は、TCXO14からのクロック信号でカウントアップされる。
【0055】
具体的には、ベースバンド処理部13は、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理(衛星サーチ)を行う。そして、ベースバンド処理部13は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードをC/AコードとするGPS衛星2に同期(GPS衛星2を捕捉)したものと判断する。なお、GPSでは、すべてのGPS衛星2が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星2を検索することができる。
【0056】
また、ベースバンド処理部13は、捕捉したGPS衛星2の軌道情報や時刻情報を取得するために、当該GPS衛星2のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星2の軌道情報や時刻情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド処理部13は、航法メッセージに含まれる軌道情報や時刻情報を取得し、SRAM133に記憶する処理を行う。
【0057】
また、ベースバンド処理部13は、所定の制御コマンド(具体的にはモード設定用の制御コマンド)を受信し、通常測位モードと位置固定モードのいずれかに設定される。ベースバンド処理部13は、通常測位モードでは、SRAM133に記憶されている4つ以上のGPS衛星2の軌道情報および時刻情報を用いて測位計算を行う。
【0058】
また、ベースバンド処理部13は、位置固定モードでは、SRAM133に記憶されている1つ以上のGPS衛星2の軌道情報と、SRAM133に記憶されている受信点の位置情報とを用いて高精度の1PPSを出力する。具体的には、ベースバンド処理部13は、RTC134の一部に1PPSの各パルスの発生タイミングをカウントする1PPSカウンターを備えており、GPS衛星2の軌道情報と受信点の位置情報とを用いて、GPS衛星2から送信された衛星信号が受信点まで到達するのに要する伝搬遅延時間を計算し、この伝搬遅延時間に基づき1PPSカウンターの設定値を最適値に変更する。
【0059】
なお、ベースバンド処理部13は、通常測位モードにおいて、測位計算で得られた受信点の時刻情報に基づき1PPSを出力してもよく、位置固定モードにおいて、複数のGPS衛星2が捕捉できれば測位計算を行ってもよい。
【0060】
また、ベースバンド処理部13は、測位計算の結果の位置情報や時刻情報、受信状況(GPS衛星2の捕捉数、衛星信号の強度等)等の各種情報を含むNMEAデータを出力する。
【0061】
以上説明したように構成されたGPS受信機10の動作は、図1に示す処理部(CPU)20により制御される。
【0062】
処理部20(衛星信号受信制御装置の一例)は、GPS受信機10に対して各種の制御コマンドを送信してGPS受信機10の動作を制御し、GPS受信機10が出力する1PPSやNMEAデータを受け取って各種の処理を行う。なお、処理部20は、例えば、任意のメモリーに記憶されているプログラムにしたがって、各種処理を行ってもよい。
【0063】
この処理部20は、位相比較器21、ループフィルター22、DSP(Digital Signal Processor)23、分周器24、GPS制御部25、周波数異常判断部27および判定部28を含んで構成されている。なお、DSP23、GPS制御部25、周波数異常判断部27および判定部28のうちの少なくとも2つが1つの部品で構成されていてもよい。
【0064】
DSP23(「位置情報生成部」の一例)は、GPS受信機10から定期的に(例えば、1秒毎に)NMEAデータを取得し、NMEAデータに含まれる位置情報(GPS受信機10による通常測位モードでの測位計算の結果)を集めて所定時間における統計情報を作成し、その統計情報に基づいて、受信点の位置情報を生成する処理を行う。
【0065】
GPS制御部25は、GPS受信機10に各種の制御コマンドを送信し、GPS受信機10の動作を制御する。具体的には、GPS制御部25は、GPS受信機10にモード設定用の制御コマンドを送信し、GPS受信機10を通常測位モードから位置固定モードに切り替える処理を行う。また、GPS制御部25は、GPS受信機10を通常測位モードから位置固定モードに切り替える前に、GPS受信機10に位置設定用の制御コマンドを送信し、DSP23が生成した受信点の位置情報をGPS受信機10に設定する処理を行う。
【0066】
分周器24は、原子発振器30が出力するクロック信号(周波数:f)をf分周し、1Hzの分周クロック信号を出力する。
【0067】
位相比較器21は、GPS受信機10が出力する1PPS(基準タイミング信号)と分周器24が出力する1Hzの分周クロック信号(クロック信号)とを位相比較する。位相比較器21の比較結果の位相差信号は、ループフィルター22を介して原子発振器30に入力される。ループフィルター22のパラメーターは、DSP23により設定される。
【0068】
分周器24が出力する1Hzの分周クロック信号は、GPS受信機10が出力する1PPSと同期しており、タイミング信号生成装置1は、この分周クロック信号をUTCと同期した極めて周波数精度の高い1PPSとして外部に出力する。また、タイミング信号生成装置1は、1PPSと同期して1秒毎に最新のNMEAデータを外部に出力する。
【0069】
原子発振器30は、例えばルビジウム原子やセシウム原子等の原子のエネルギー遷移を利用した周波数精度の高いクロック信号を出力可能な発振器である。原子発振器30として、例えば、EIT(Electromagnetically Induced Transparency)現象(CPT(Coherent Population Trapping)現象とも呼ばれる)を利用した方式の原子発振器や、光マイクロ2重共鳴現象を利用した方式の原子発振器等を利用することができる。タイミング信号生成装置1は、原子発振器30が出力する周波数がfのクロック信号も外部に出力する。
【0070】
本実施形態では、原子発振器30は、2つの原子発振器30a、30bを備えており、これらのうちの1つの原子発振器を適宜選択して用いる。2つの原子発振器30a、30bは、選択されているか否かに関わらず、ともにクロック信号を出力しており、選択された原子発振器のクロック信号を分周器24に入力するように原子発振器30の出力の切り換えを行う。例えば、原子発振器30a、30bのうちの一方の原子発振器のクロック信号を原子発振器30の出力信号として出力しておき、その一方の原子発振器が外乱の影響や故障等により動作不良を起こした場合、他方の原子発振器のクロック信号に切り換えて原子発振器30の出力を行う。これにより、タイミング信号生成装置1のロバスト性を向上させることができる。なお、この切り換えは、処理部20によって自動的に行ってもよいし、手動により行ってもよい。この切り換えを処理部20により行う場合、例えば、後述する判定部28の判定結果に応じて切り換えを行うことができる。
【0071】
以下、EIT現象を利用した原子発振器の原理を簡単に説明する。
図3は、図1に示すタイミング信号生成装置が備える原子発振器において、アルカリ金属のエネルギー状態を説明するための図である。図4は、図1に示すタイミング信号生成装置が備える原子発振器において、光源部から出射される2つの光の周波数差と、受光部で検出される光の強度との関係を示すグラフである。
アルカリ金属は、図3に示すように、3準位系のエネルギー準位を有し、エネルギー準位の異なる2つの基底状態(基底状態1、2)と、励起状態との3つの状態をとり得る。ここで、基底状態1は、基底状態2よりも低いエネルギー状態である。
【0072】
周波数の異なる2種の共鳴光1、2(共鳴光対)を前述したようなガス状のアルカリ金属に照射したとき、共鳴光1の周波数ωと共鳴光2の周波数ωとの差(ω−ω)に応じて、共鳴光1、2のアルカリ金属における光吸収率(光透過率)が変化する。
【0073】
そして、共鳴光1の周波数ωと共鳴光2の周波数ωとの差(ω−ω)が基底状態1と基底状態2とのエネルギー差に相当する周波数に一致したとき、基底状態1、2から励起状態への励起がそれぞれ停止する。このとき、共鳴光1、2は、いずれも、アルカリ金属に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT)と呼ぶ。
【0074】
例えば、共鳴光1の周波数ωを固定し、共鳴光2の周波数ωを変化させていくと、共鳴光1の周波数ωと共鳴光2の周波数ωとの差(ω−ω)が基底状態1と基底状態2とのエネルギー差に相当する周波数ωに一致したとき、アルカリ金属を透過する共鳴光1、2の強度は、図4に示すように、急峻に上昇する。このような急峻な信号をEIT信号として検出する。このEIT信号は、アルカリ金属の種類によって決まった固有値をもっている。したがって、このようなEIT信号を基準信号として用いることにより、高精度な発振器を構成することができる。
【0075】
原子発振器30は、ループフィルター22の出力電圧(制御電圧)に応じて周波数を微調整可能に構成されており、前述のように、位相比較器21、ループフィルター22、DSP23および分周器24により、原子発振器30が出力するクロック信号はGPS受信機10が出力する1PPSに完全に同期する。すなわち、位相比較器21、ループフィルター22、DSP23および分周器24は、PLL(Phase Locked Loop)回路を構成し、原子発振器30が出力するクロック信号を1PPSに同期させる「同期制御部」として機能する。なお、原子発振器30は、単体では周波数温度特性が平坦ではないため、原子発振器30の近傍に、原子発振器30の温度を検出する温度センサー41が配置されており、DSP23は、温度センサー41の検出値(検出温度)に応じて位相比較器21の出力電圧を調整することで、原子発振器30の周波数温度特性を温度補償する処理も行う。
【0076】
また、GPS受信機10が衛星信号を受信できない等の状況(ホールドオーバー)が発生すると、GPS受信機10が出力する1PPSの精度が劣化し、あるいは、GPS受信機10が1PPSの出力を停止する。そのような場合、処理部20は、原子発振器30が出力するクロック信号をGPS受信機10が出力する1PPSに同期させる処理を停止して原子発振器30を自走発振させるようにしてもよい。このようにすれば、タイミング信号生成装置1は、GPS受信機10が出力する1PPSの精度が劣化した場合でも、原子発振器30の自走発振による周波数精度の高い1PPSを出力することができる。なお、原子発振器30に代えてダブルオーブンもしくはシングルオーブンの恒温槽型水晶発振器(OCXO)、電圧制御型水晶発振器(VCXO)、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)等の水晶発振器を用いても、自走発振による周波数精度の高い1PPSを出力することができる。
【0077】
以上説明したような原子発振器30を含むPLL回路において、原子発振器30が故障した場合、原子発振器30のクロック信号とGPS受信機10の1PPS(基準タイミング信号)との位相がずれ(位相のずれが大きくなり)、位相比較器21の出力(位相差信号)が大きくなる。したがって、位相比較器21の出力に基づいて、原子発振器30の故障を検出することができる。本実施形態では、周波数異常判断部27が、位相比較器21の比較結果を用いて、原子発振器30のクロック信号の周波数が異常であるか否かを判断し、周波数が異常である場合には、その判断結果を含む周波数異常情報を出力する。
【0078】
しかし、原子発振器30が実際に故障していなくても、例えば、マイクロ波、電源ノイズ、振動、温度変化等の外乱の影響によって、原子発振器30のクロック信号とGPS受信機10の1PPS(基準タイミング信号)との位相がずれることがある。そのため、位相比較器21の出力のみに基づいて、すなわち、周波数異常判断部27の判断結果のみを用いて、原子発振器30の故障を検出しようとすると、原子発振器30が実際に故障していない場合であっても原子発振器30が故障していると判断してしまうこととなる。また、原子発振器30が実際に故障している場合でも、周波数異常判断部27の判断結果のみに基づいて、原子発振器30が故障しているのか、または、他の部分が故障しているのかが判断できない。したがって、周波数異常判断部27の判断結果のみを報知しても、メンテナンスや修理等が必要ないにもかかわらず、作業員が出向かなければならなかったり、メンテナンスや修理等が必要である場合でも、メンテナンスや修理すべき箇所を特定するのに長時間を要したりして、メンテナンスや修理等の作業効率が悪い。
【0079】
そこで、タイミング信号生成装置1は、前述したような外乱を検出する温度センサー41、マイクロ波受信機42、電源ノイズセンサー43および振動センサー44を有するセンサー部40を設け、判定部28が、周波数異常判断部27の判断結果のみならず、センサー部40の検出結果をも用いて、周波数異常の原因を判定する。
【0080】
以下、周波数異常の判断およびその原因の判定について詳述する。
周波数異常判断部27は、前述したように、位相比較器21の比較結果を用いて、原子発振器30のクロック信号の周波数が異常であるか否かを判断し、その判断結果を含む周波数異常情報を出力する。より具体的には、周波数異常判断部27は、例えば、位相比較器21の出力が所定の設定値以上であるときに、原子発振器30のクロック信号の周波数が異常(いわゆる周波数飛びまたは周波数ズレが生じている状態)であると判断し、その判断結果を出力する。
【0081】
また、周波数異常判断部27は、前述した判断をループフィルター22の時定数に応じた時間間隔(例えば基準タイミング信号の数十周期から数千周期分程度の時間長さ)ごとに行い、当該時間間隔ごとに判断結果を出力することが好ましい。これにより、原子発振器30を有するPLL回路の制御に伴う位相比較器21の出力の揺らぎを周波数異常として判断してしまうのを低減することができる。
【0082】
また、周波数異常判断部27は、前述した判断を所定時間毎に複数行い、所定回数(例えば2回または3回)以上連続して異常であると判断した場合に、異常である旨の判断結果を出力することが好ましい。これによっても、原子発振器30を有するPLL回路の制御に伴う位相比較器21の出力の揺らぎを周波数異常として判断してしまうのを低減することができる。
【0083】
センサー部40は、位相比較器21の比較結果に影響を及ぼす環境情報を検出する。本実施形態では、センサー部40は、温度センサー41、マイクロ波受信機42、電源ノイズセンサー43および振動センサー44を有する。
【0084】
温度センサー41は、原子発振器30の温度を検出する機能を有する。したがって、センサー部40が検出する環境情報は、当該温度に関する情報を含む。この温度センサー41は、例えば、熱電対またはサーミスタ等を含んで構成されている。
【0085】
原子発振器30等の発振器は、一般に、温度特性を有し、その温度特性を補正する制御が行われるが、例えば、環境温度が急激に変化すると、その補正が間に合わず、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような環境温度の検出結果を用いることで、判定部28において、周波数異常の原因に環境温度による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0086】
マイクロ波受信機42は、原子セル内の金属原子の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数ω(例えば、金属原子がセシウム原子である場合、約9.2GHz)のマイクロ波を検出する機能を有する。したがって、センサー部40が検出する環境情報は、当該マイクロ波に関する情報を含む。このマイクロ波受信機42は、例えば、周波数ωに共振するアンテナと、このアンテナで受信したマイクロ波を増幅する増幅器と、を含んで構成されている。
【0087】
原子発振器30(30a、30b)は、原子セル内の金属原子の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数ωのマイクロ波が外乱として入力されると、いわゆる周波数飛びが生じやすい。例えば、前述したように、本実施形態のタイミング信号生成装置1では、複数の原子発振器30a、30bを設けておき、必要に応じてこれらを切り換えることにより、ロバスト性を向上させている。このような場合において、使用中の原子発振器に対して他の原子発振器の出力信号によるマイクロ波が入力され、周波数飛びが生じる場合がある。したがって、このようなマイクロ波の検出結果を用いることで、判定部28において、周波数異常の原因にマイクロ波による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0088】
電源ノイズセンサー43は、タイミング信号生成装置1の各部に電力を供給する電源回路60およびその電力供給経路に生じるノイズである電源ノイズを検出する機能を有する。したがって、センサー部40が検出する環境情報は、当該電源ノイズに関する情報を含む。この電源ノイズセンサー43は、例えば、コイルを含んで構成されている。
【0089】
原子発振器30等の発振器は、電源ノイズが外乱として入力されると、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような電源ノイズの検出結果を用いることで、判定部28において、周波数異常の原因に電源ノイズによる周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0090】
振動センサー44は、原子発振器30が受ける振動を検出する機能を有する。したがって、センサー部40が検出する環境情報は、当該振動に関する情報を含む。この振動センサー44は、例えば、3軸加速度センサーまたは3軸ジャイロセンサー等を含んで構成されている。
【0091】
原子発振器30等の発振器は、振動が外乱として入力されると、周波数飛びを生じやすい。したがって、このような振動の検出結果を用いることで、判定部28において、周波数異常の原因に振動による周波数飛びが含まれると判定することができる。
【0092】
判定部28は、周波数異常判断部27の周波数異常情報およびセンサー部40の環境情報を用いて、原子発振器30のクロック信号の周波数の異常の原因を判定する。
【0093】
また、判定部28は、判定結果を出力する「出力部」としての機能を有する。この出力は、例えば、図示しないが、表示装置に入力されたり、通信回線を通じて外部の他の機器に送信されたりする。これにより、装置の使用者や、メンテナンス等の作業者が周波数異常およびその原因を知ることができ、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。
判定部28は、例えば、以下のようなステータス情報を判断結果として出力する。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示すように、原子発振器30のクロック信号の周波数が異常である旨の判断結果を含む周波数異常情報が周波数異常判断部27から出力されている時間長さが所定時間(例えば1秒)以上である場合、周波数異常が周波数ズレ(Fズレ)であると判定する。これにより、作業者等は、この判定結果に基づき、原子発振器30等に何らかの故障があると原因を絞ることができる。
【0096】
一方、原子発振器30のクロック信号の周波数が異常である旨の判断結果を含む周波数異常情報が周波数異常判断部27から出力されている時間長さが所定時間(例えば1秒)未満である場合、周波数異常に周波数飛び(F飛び)が含まれると判定する。これにより、作業者等は、この判定結果に基づき、原子発振器30以外に故障があるか、または、外乱による一時的な周波数飛びであると原因を絞ることができる。
【0097】
また、ステータス情報には、このような周波数飛びまたは周波数ズレである旨の判定結果に加えて、温度センサー41、マイクロ波受信機42、電源ノイズセンサー43および振動センサー44の検出結果に基づく判定結果を付加する。
【0098】
具体的には、温度センサー41の検出結果に基づき、短期間(例えば1秒間〜10秒間)に温度が比較的大きく(例えば5℃以上)変動した場合、その旨(急激な温度変化)の判定結果をステータス情報に付加する。あるいは、周波数異常が発生している間の温度の変遷情報をステータス情報に付加してもよい。
【0099】
また、マイクロ波受信機42の検出結果に基づき、周波数ωのマイクロ波が外乱として入力された場合、その旨(マイクロ波外乱)の判定結果をステータス情報に付加する。
【0100】
また、電源ノイズセンサー43の検出結果に基づき、電源ノイズが外乱として入力された場合、その旨(電源ノイズ)の判定結果をステータス情報に付加する。
【0101】
また、振動センサー44の検出結果に基づき、振動が外乱として入力された場合、その旨(振動)の判定結果をステータス情報に付加する。
【0102】
以上説明したようなタイミング信号生成装置1によれば、判定部28が、周波数異常判断部27の判断結果のみならず、センサー部40の検出結果をも用いて、周波数異常の原因を判定するため、原子発振器30のクロック信号の異常の原因を絞ることができ、その結果、メンテナンスや修理等の作業効率を高めることができる。
【0103】
2.電子機器
次に、本発明の電子機器の実施形態を説明する。
図5は、本発明の電子機器の実施形態を示すブロック図である。
【0104】
図5に示す電子機器300は、タイミング信号生成装置310、CPU(Central Processing Unit)320、操作部330、ROM(Read Only Memory)340、RAM(Random Access Memory)350、通信部360および表示部370を含んで構成されている。
【0105】
タイミング信号生成装置310は、例えば、前述したタイミング信号生成装置1であり、先に説明したように、衛星信号を受信して高精度のタイミング信号(1PPS)を生成し、外部に出力する。これにより、より低コストで信頼性の高い電子機器300を実現することができる。
【0106】
CPU320は、ROM340等に記憶されているプログラムに従い、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、CPU320は、タイミング信号生成装置310が出力するタイミング信号(1PPS)やクロック信号に同期して、計時処理、操作部330からの操作信号に応じた各種の処理、外部とデータ通信を行うために通信部360を制御する処理、表示部370に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理等を行う。
【0107】
操作部330は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号をCPU320に出力する。
【0108】
ROM340は、CPU320が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0109】
RAM350は、CPU320の作業領域として用いられ、ROM340から読み出されたプログラムやデータ、操作部330から入力されたデータ、CPU320が各種プログラムにしたがって実行した演算結果等を一時的に記憶する。
【0110】
通信部360は、CPU320と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
【0111】
表示部370は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、CPU320から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。表示部370には操作部330として機能するタッチパネルが設けられていてもよい。
【0112】
このような電子機器300としては種々の電子機器が考えられ、特に限定されないが、例えば、標準時刻との同期を実現する時刻管理用のサーバー(タイムサーバー)、タイムスタンプの発行等を行う時刻管理装置(タイムスタンプサーバー)、基地局等の周波数基準装置等が挙げられる。
【0113】
3.移動体
図6は、本発明の移動体の実施形態を示す図である。
【0114】
図6に示す移動体400は、タイミング信号生成装置410、カーナビゲーション装置420、コントローラー430、440、450、バッテリー460、バックアップ用バッテリー470を含んで構成されている。
【0115】
タイミング信号生成装置410としては、前述したタイミング信号生成装置1を適用することができる。タイミング信号生成装置410は、例えば、移動体400が移動中は、通常測位モードでリアルタイムに測位計算を行って1PPS、クロック信号およびNMEAデータを出力する。また、タイミング信号生成装置410は、例えば、移動体400が停止中は、通常測位モードで複数回の測位計算を行った後、複数回の測位計算結果の最頻値または中央値を現在の位置情報として設定し、位置固定モードで1PPS、クロック信号およびNMEAデータを出力する。
【0116】
カーナビゲーション装置420は、タイミング信号生成装置410が出力する1PPSやクロック信号に同期して、タイミング信号生成装置410が出力するNMEAデータを用いて、位置や時刻その他の各種の情報をディスプレイに表示する。
【0117】
コントローラー430、440、450は、エンジンシステム、ブレーキシステム、キーレスエントリーシステム等の各種の制御を行う。コントローラー430、440、450は、タイミング信号生成装置410が出力するクロック信号に同期して各種の制御を行うようにしてもよい。
【0118】
本実施形態の移動体400は、タイミング信号生成装置410を備えていることで、移動中も停止中も高い信頼性を確保することができる。
【0119】
このような移動体400としては種々の移動体が考えられ、例えば、自動車(電気自動車も含む)、ジェット機やヘリコプター等の航空機、船舶、ロケット、人工衛星等が挙げられる。
【0120】
以上、本発明のタイミング信号生成装置、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0121】
また、本発明は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0122】
また、前述した実施形態では、GPSを利用したタイミング信号生成装置を例に挙げたが、GPS以外の全地球的航法衛星システム(GNSS)、例えば、ガリレオ、GLONASS等を利用してもよい。
【0123】
また、前述した実施形態では、センサー部が、温度センサー、マイクロ波受信機、電源ノイズセンサーおよび振動センサーを備える場合を例に説明したが、これらのセンサーのうちの少なくとも1つをセンサー部が有していれば、他のセンサーを省略してもよい。また、センサー部が備えるセンサーとしては、位相比較器の出力結果に影響を与える環境(外乱)を検出し得るものであれば、前述したものに限らず、例えば、気圧センサー、光センサー等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1‥‥タイミング信号生成装置
2‥‥GPS衛星
10‥‥GPS受信機
11‥‥SAWフィルター
12‥‥RF処理部
13‥‥ベースバンド処理部
14‥‥TCXO
20‥‥処理部
21‥‥位相比較器
22‥‥ループフィルター
23‥‥DSP
24‥‥分周器
25‥‥GPS制御部
27‥‥周波数異常判断部
28‥‥判定部
30‥‥原子発振器
30a‥‥原子発振器
30b‥‥原子発振器
40‥‥センサー部
41‥‥温度センサー
42‥‥マイクロ波受信機
43‥‥電源ノイズセンサー
44‥‥振動センサー
50‥‥GPSアンテナ
60‥‥電源回路
121‥‥PLL
122‥‥LNA
123‥‥ミキサー
124‥‥IFアンプ
125‥‥IFフィルター
126‥‥ADC
131‥‥DSP
132‥‥CPU
133‥‥SRAM
134‥‥RTC
300‥‥電子機器
310‥‥タイミング信号生成装置
320‥‥CPU
330‥‥操作部
340‥‥ROM
350‥‥RAM
360‥‥通信部
370‥‥表示部
400‥‥移動体
410‥‥タイミング信号生成装置
420‥‥カーナビゲーション装置
430‥‥コントローラー
440‥‥コントローラー
450‥‥コントローラー
460‥‥バッテリー
470‥‥バックアップ用バッテリー
ω‥‥周波数
ω‥‥周波数
ω‥‥周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6