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特開2016-225730ゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225730(P2016-225730A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20161205BHJP
   H03G 5/00 20060101ALI20161205BHJP
   H03G 5/02 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   H03G5/00 005
   H03G5/02 025
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-108446(P2015-108446)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲生
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武志
【テーマコード(参考)】
5D220
5J030
【Fターム(参考)】
5D220AA14
5J030AA06
5J030AA07
5J030AB01
5J030AC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バタワースフィルタ等と等価な周波数特性を備えたゲイン係数を算出する。
【解決手段】ゲイン係数生成装置は、スロープの値がプラスの時、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fcおよびスロープの絶対値slpに基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出し、暫定重み係数wb(n)とslpとに基づいて、重み係数w(n)を算出し、基本ゲイン係数yb(n)より重み係数w(n)を減算してゲイン係数y(n)を算出する。なお、周波数f(n)<fcで、wb(n)=−log(f(n)/fc),yb(n)=slp×wb(n)。周波数f(n)≧fcで、wb(n)=log(f(n)/fc),yb(n)=0。slp=0で、w(n)=0。slp≠0で、w1(n)=10wb(n)/20、w2(n)=w1(n)slp×4.5/3、w(n)=w2(n)×3。nは、周波数帯域のポイント数(1.2.…)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成手段と、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出する重み係数生成手段と、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数合成手段とを有し、
前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成装置。
【請求項2】
前記ゲイン係数合成手段により算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数算出手段を有し、
該ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出すること
を特徴とする請求項1に記載のゲイン係数生成装置。
【請求項3】
ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成手段と、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出する重み係数生成手段と、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数合成手段とを有し、
前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成装置。
【請求項4】
前記ゲイン係数合成手段により算出されたローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数算出手段を有し、
該ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出すること
を特徴とする請求項3に記載のゲイン係数生成装置。
【請求項5】
前記重み係数生成手段は、前記slp≠0の場合に、
ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、
前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゲイン係数生成装置。
【請求項6】
ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数生成手段が、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成ステップと、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数生成手段が、重み係数w(n)を算出する重み係数生成ステップと、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ゲイン係数合成手段が、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数合成ステップとを有し、
前記基本ゲイン係数生成ステップにおいて、前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1.2.・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成方法。
【請求項7】
前記ゲイン係数合成ステップにおいて算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、ゲイン係数算出手段が、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数算出ステップを有し、
該ゲイン係数算出ステップにおいて、前記ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出すること
を特徴とする請求項6に記載のゲイン係数生成方法。
【請求項8】
ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数生成手段が、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成ステップと、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数生成手段が、重み係数w(n)を算出する重み係数生成ステップと、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ゲイン係数合成手段が、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数合成ステップとを有し、
前記基本ゲイン係数生成ステップにおいて、前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成方法。
【請求項9】
前記ゲイン係数合成ステップにおいて算出された、ローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、ゲイン係数算出手段が、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数算出ステップを有し、
該ゲイン係数算出ステップにおいて前記ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出すること
を特徴とする請求項8に記載のゲイン係数生成方法。
【請求項10】
前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段は、
前記slp≠0の場合に、
ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、
前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出すること
を特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のゲイン係数生成方法。
【請求項11】
周波数領域において音響信号に対して乗算処理を行うことにより、前記音響信号に音響処理を行うためのゲイン係数を算出するゲイン係数生成装置の制御部に、
ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出させる基本ゲイン係数生成機能と、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出させる重み係数生成機能と、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出させるゲイン係数合成機能と
を実現させるためのゲイン係数生成プログラムであって、
前記基本ゲイン係数生成機能において、前記制御部に対し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出させ、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させ、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1.2.・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成プログラム。
【請求項12】
前記ゲイン係数合成機能において算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、前記制御部に、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出させるゲイン係数算出機能を有し、
該ゲイン係数算出機能において、前記制御部に、
前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出させること
を特徴とする請求項11に記載のゲイン係数生成プログラム。
【請求項13】
周波数領域において音響信号に対して乗算処理を行うことにより、前記音響信号に音響処理を行うためのゲイン係数を算出するゲイン係数生成装置の制御部に、
ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出させる基本ゲイン係数生成機能と、
前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出させる重み係数生成機能と、
前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出させるゲイン係数合成機能と
を実現させるためのゲイン係数生成プログラムであって、
前記基本ゲイン係数生成機能において、前記制御部に対し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出させ、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させ、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すこと
を特徴とするゲイン係数生成プログラム。
【請求項14】
前記ゲイン係数合成機能において算出されたローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、前記制御部に、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出させるゲイン係数算出機能を有し、
該ゲイン係数算出機能において、前記制御部に、
前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出させること
を特徴とする請求項13に記載のゲイン係数生成プログラム。
【請求項15】
前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、
前記slp≠0の場合に、
ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、
前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させること
を特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載のゲイン係数生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムに関し、より詳細には、周波数領域において音響信号に音響処理を行う場合に、FIRフィルタ等を用いることなく、四則演算および指数・対数演算を用いて、音響信号に対してハイパスフィルタあるいはローパスフィルタによりフィルタ処理を施したものと同等な周波数特性を付与することが可能なゲイン係数を生成するためのゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、最適な出力帯域がそれぞれ異なっている複数のスピーカを用いて、異なる帯域の音響信号を出力させることにより、高音質の音響再生を行うことが可能なマルチスピーカシステムが知られている。マルチスピーカシステムでは、高音質な音響再生を実現するために、音響信号に対して、クロスオーバー処理(ハイパスフィルタ処理およびローパスフィルタ処理)を施すことが一般的である。クロスオーバー処理を施すことによって、スピーカユニット毎に最適な周波数帯域で音響再生を行うことが可能になる。クロスオーバー処理に用いられるデジタルフィルタとしては、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタやFIR(Finite Impulse Response)フィルタ等が知られている。
【0003】
IIRフィルタは、任意の周波数帯域において音響信号の調整を容易に行うことができる(調整容易性を備える)。一方で、IIRフィルタは、フィルタの内部処理においてフィードバックループを用いることから、演算誤差が蓄積して演算精度の低下を招く傾向があった。一方で、FIRフィルタは、フィルタ1係数あたりに、乗算と加算を各1回行うだけで、信号に対するフィルタ処理が完結するため、演算誤差が蓄積することはなく、演算精度が高い(演算高精度性を備える)という特徴がある。しかしながら、FIRフィルタでは、信号の周波数特性に対して、特定の周波数部分だけを変更するようなフィルタ処理が困難であり、フィルタにおける調整性がIIRフィルタに比べて劣るという問題があった。
【0004】
このような、IIRフィルタにおける問題点と、FIRフィルタにおける問題点とを解決する方法として、IIRフィルタにおける調整容易性と、FIRフィルタにおける演算高精度性とを併せ持つ信号処理回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この信号処理回路において、信号の任意の伝達関数を調整するための調整モードと、調整モードにおいて調整された伝達関数に基づいて信号処理を行う信号処理モードとが設けられている。信号処理回路では、調整モードにおいてIIRフィルタを用いて伝達関数の調整を行い、調整モードによる調整が完了した後、あるいは信号処理モードにモード変更された後に、調整モードで調整された伝達関数と等価な伝達関数のFIRフィルタに構成を変更する処理を行う。
【0006】
一方で、時間領域においてFIRフィルタを用いてクロスオーバー処理を行う方法が、一般的に知られている(特許文献2参照)。時間領域においてFIRフィルタを用いてクロスオーバー処理を行う方法では、フィルタ係数記憶部に複数のフィルタ係数が記録されており、必要に応じてフィルタ係数記憶部からフィルタ係数が読み出されてフィルタ係数の切替処理が行われる。この切替処理によって、クロスオーバー処理に必要なカットオフ周波数やスロープ(フィルタの周波数特性における傾き)の調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/041381号
【特許文献2】特許第4364598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、時間領域においてFIRフィルタを用いてクロスオーバー処理を行う方法では、フィルタ係数記憶部に予め想定され得る複数のフィルタ係数を記録させておく必要があるため、メモリ容量が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
さらに、フィルタ係数記憶部に記録されるフィルタ係数を読み出してカットオフ周波数やスロープの調整を行うことによって、IIRフィルタと等価な周波数特性をFIRフィルタで実現するためには、IIRフィルタのフィルタ係数からFIRフィルタのフィルタ係数へと変換を行う必要が生ずるため、処理が複雑化するという問題が生じ得る。
【0010】
一方で、信号の時間領域においてFIRフィルタを用いてクロスオーバー処理を行うのではなく、信号の周波数領域においてFIRフィルタを用いることによりクロスオーバー処理を行うことも可能である。この場合には、信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)することにより得られる周波数スペクトル信号に対して、FFT長に対応した長さを備えたゲイン係数を乗算することにより、信号の周波数特性を調整することができる。
【0011】
このようにして、周波数領域においてFIRフィルタを用いてフィルタ処理を行う場合、バタワースフィルタ等の汎用的なIIRフィルタと等価な周波数特性を実現するためには、IIRフィルタのフィルタ係数を算出する処理や、算出されたフィルタ係数を周波数特性に変換する処理が必要となり、各処理における様々なライブラリ等も必要となる。このため、機能実装の複雑化や、フィルタ係数の切替に伴う処理負担の増加等が生じるおそれがある。予め必要になるフィルタ係数をテーブルとしてメモリ等に保存しておく方法も考えられるが、この場合には、比較的大容量のメモリを確保する必要が生ずるという問題が発生する。
【0012】
また、FIRフィルタを用いて周波数帯域の分割/合成処理を行う場合には、カットオフ周波数における減衰量が−6[dB]となるフィルタ特性を用いる必要が生ずる場合もある。その一例であるリンクウィッツ・ライリーフィルタ(Linkwitz-Riley filter)は、バタワースフィルタを2段カスケード接続することで実現されるが、段数を2段(又はn段)にすることで2倍(又はn倍)のスロープを持つフィルタしか実現することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、複数のフィルタ係数やライブラリ等を予め記録させておくことなく、バタワースフィルタやリンクウィッツ・ライリーフィルタ等と等価な周波数特性を備えたゲイン係数を、四則演算および指数・対数演算を用いて算出することが可能なゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るゲイン係数生成装置は、ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成手段と、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出する重み係数生成手段と、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数合成手段とを有し、
前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るゲイン係数生成装置は、ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成手段と、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出する重み係数生成手段と、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数合成手段とを有し、
前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係るゲイン係数生成方法は、ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数生成手段が、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成ステップと、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数生成手段が、重み係数w(n)を算出する重み係数生成ステップと、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ゲイン係数合成手段が、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数合成ステップとを有し、
前記基本ゲイン係数生成ステップにおいて、前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1.2.・・・・)を示すことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るゲイン係数生成方法は、ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数生成手段が、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出する基本ゲイン係数生成ステップと、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数生成手段が、重み係数w(n)を算出する重み係数生成ステップと、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ゲイン係数合成手段が、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数合成ステップとを有し、
前記基本ゲイン係数生成ステップにおいて、前記基本ゲイン係数生成手段は、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出すると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出し、
前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段は、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出し、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出し、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明に係るゲイン係数生成プログラムは、周波数領域において音響信号に対して乗算処理を行うことにより、前記音響信号に音響処理を行うためのゲイン係数を算出するゲイン係数生成装置の制御部に、ユーザによって設定され、又は予め設定されたハイパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出させる基本ゲイン係数生成機能と、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出させる重み係数生成機能と、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出させるゲイン係数合成機能とを実現させるためのゲイン係数生成プログラムであって、
前記基本ゲイン係数生成機能において、前記制御部に対し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出させ、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させ、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1.2.・・・・)を示すことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るゲイン係数生成プログラムは、周波数領域において音響信号に対して乗算処理を行うことにより、前記音響信号に音響処理を行うためのゲイン係数を算出するゲイン係数生成装置の制御部に、ユーザによって設定され、又は予め設定されたローパスフィルタのカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、基本ゲイン係数yb(n)と暫定重み係数wb(n)とを算出させる基本ゲイン係数生成機能と、前記暫定重み係数wb(n)と、前記slpとに基づいて、重み係数w(n)を算出させる重み係数生成機能と、前記基本ゲイン係数yb(n)より前記重み係数w(n)を減算することにより、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出させるゲイン係数合成機能とを実現させるためのゲイン係数生成プログラムであって、
前記基本ゲイン係数生成機能において、前記制御部に対し、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc未満の場合に、
wb(n)=−log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=0
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
周波数f(n)が前記カットオフ周波数fc以上の場合に、
wb(n)=log(f(n)/fc)
に基づいて前記暫定重み係数wb(n)を算出させると共に、
yb(n)=slp×wb(n)
に基づいて前記基本ゲイン係数yb(n)を算出させ、
前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、
前記slp=0の場合に、w(n)=0 として前記重み係数w(n)を算出させ、
前記slp≠0の場合に、前記重み係数w(n)の算出過程において求められる値をw1(n)およびw2(n)とした上で、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3 ・・・(1)
w(n)=w2(n)×3 ・・・(2)
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させ、
前記nは、前記ゲイン係数を用いた音響処理の対象となる音響信号の周波数帯域における0Hz以外のポイント数(1,2,・・・・)を示すことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムでは、ユーザによって予め設定等されたカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、ゲイン係数を算出することができる。より詳細には、基本ゲイン係数生成手段、重み係数生成手段およびゲイン係数合成手段が、ユーザにより予め設定等されたカットオフ周波数fcとスロープの絶対値slpとに則したフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を、四則演算および指数・対数演算により生成することが可能となる。
【0021】
このため、従来のフィルタ処理のように、予め複数のフィルタ係数をメモリ等に記憶する必要がなくなり、大容量のメモリ等を用意する必要がなくなる。また、IIRフィルタのフィルタ係数からFIRフィルタのフィルタ係数へと変換する処理など、種々の処理を行う必要がなくなるため、各処理における様々なライブラリ等が必要なくなると共に、処理の簡素化と処理負担の軽減を図ることが可能になる。
【0022】
上述したゲイン係数生成装置は、前記ゲイン係数合成手段により算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数算出手段を有し、該ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出するものであってもよい。
【0023】
また、上述したゲイン係数生成装置は、前記ゲイン係数合成手段により算出されたローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数算出手段を有し、該ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出するものであってもよい。
【0024】
さらに、上述したゲイン係数生成方法は、前記ゲイン係数合成ステップにおいて算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、ゲイン係数算出手段が、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出するゲイン係数算出ステップを有し、該ゲイン係数算出ステップにおいて、前記ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出するものであってもよい。
【0025】
また、上述したゲイン係数生成方法は、前記ゲイン係数合成ステップにおいて算出されたローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、ゲイン係数算出手段が、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出するゲイン係数算出ステップを有し、該ゲイン係数算出ステップにおいて前記ゲイン係数算出手段は、前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出するものであってもよい。
【0026】
さらに、上述したゲイン係数生成プログラムは、前記ゲイン係数合成機能において算出されたハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)に基づいて、前記制御部に、ローパスフィルタ用のゲイン係数yL(n)を算出させるゲイン係数算出機能を有し、該ゲイン係数算出機能において、前記制御部に、前記ゲイン係数yL(n)の算出過程において求められる値をyL_linear(n)とした上で、
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20
yL(n)=20×log10(yL_linear(n))
に基づいてローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)を算出させるものであってもよい。
【0027】
また、上述したゲイン係数生成プログラムは、前記ゲイン係数合成機能において算出されたローパスフィルタ用の前記ゲイン係数yL(n)に基づいて、前記制御部に、ハイパスフィルタ用のゲイン係数yH(n)を算出させるゲイン係数算出機能を有し、該ゲイン係数算出機能において、前記制御部に、前記ゲイン係数yH(n)の算出過程において求められる値をyH_linear(n)とした上で、
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20
yH(n)=20×log10(yH_linear(n))
に基づいてハイパスフィルタ用の前記ゲイン係数yH(n)を算出させるものであってもよい。
【0028】
また、本発明に係るゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムでは、ハイパスフィルタに係るゲイン係数あるいはローパスフィルタに係るゲイン係数の一方を四則演算等により算出した後に、周波数領域において信号レベルがフラットな信号の周波数特性からゲイン係数における周波数特性を減算することにより、他方(ローパスフィルタあるいはハイパスフィルタ)のゲイン係数を求めることを特徴としている。このため、四則演算等により算出されたゲイン係数と、求められた他方のゲイン係数とを用いてクロスオーバー処理を行っても、クロスオーバー処理が行われた周波数におけるピークの発生を抑制することができる。
【0029】
さらに、上述したゲイン係数生成装置において、前記重み係数生成手段は、前記slp≠0の場合に、ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出するものであってもよい。
【0030】
また、上述したゲイン係数生成方法は、前記重み係数生成ステップにおいて、前記重み係数生成手段が、前記slp≠0の場合に、ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出するものであってもよい。
【0031】
さらに、上述したゲイン係数生成プログラムは、前記重み係数生成機能において、前記制御部に対し、前記slp≠0の場合に、ユーザによって設定され、又は予め設定された減衰量の絶対値を示すattを用い、前記w2(n)および前記重み係数w(n)を求めるための式(1)および式(2)に換えて、
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att
w(n)=w2(n)×att
に基づいて前記重み係数w(n)を算出させるものであってもよい。
【0032】
また、本発明に係るゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムでは、バタワースフィルタにおいて通常|−3|[dB]である減衰量を、減衰量の絶対値を示すattを用いて、|−3|[dB]以外の値を設定することによって、通常の減衰量である|−3|[dB]以外の値からなる減衰量を備えたフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を生成することが可能となる。
【0033】
例えば、リンクウィッツ・ライリーフィルタ(Linkwitz-Riley filter)のように、減衰量が|−6|[dB]となる場合には、フィルタの段数を2段にする必要が生ずるが、attを|−6|dBに設定することにより、段数を1段のままで減衰量を|−6|[dB]とするフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を生成することが可能となる。
【0034】
このように、本発明に係るゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムでは、ユーザが予め設定等したカットオフ周波数fcの値とスロープの絶対値slpとを特性として備えるフィルタと等価であって、さらにattとして設定された減衰量を特性として有するフィルタと等価な周波数特性のゲイン係数を、容易に算出することが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るゲイン係数生成装置、ゲイン係数生成方法およびゲイン係数生成プログラムによれば、ユーザによって予め設定等されたカットオフ周波数fcの値およびスロープの絶対値を示すslpの値に基づいて、ゲイン係数を算出することができる。より詳細には、基本ゲイン係数生成手段、重み係数生成手段およびゲイン係数合成手段が、ユーザにより予め設定等されたカットオフ周波数fcとスロープの絶対値slpとに則したフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を、四則演算および指数・対数演算により生成することが可能となる。
【0036】
このため、従来のフィルタ処理のように、予め複数のフィルタ係数をメモリ等に記憶する必要がなくなり、大容量のメモリ等を用意する必要がなくなる。また、IIRフィルタのフィルタ係数からFIRフィルタのフィルタ係数へと変換する処理など、種々の処理を行う必要がなくなるため、各処理における様々なライブラリ等が必要なくなると共に、処理の簡素化と処理負担の軽減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施の形態に係る音場補正装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】本実施の形態に係るゲイン係数生成部の処理内容を示したフローチャートである。
図3】(a)は、本実施の形態に係る基本ゲイン係数生成部において求められる基本ゲイン係数の一例を示した図であり、(b)は、暫定重み係数の一例を示した図である。
図4】(a)は、本実施の形態に係る重み係数生成部において求められる重み係数wと算出過程で求められたw1、w2とを示した図であり、(b)は、本実施の形態に係るゲイン係数合成部において求められるゲイン係数の一例を示した図であって、slp=|12|[dB/oct]、att=|−3|[dB]の場合におけるゲイン係数を示した図である。
図5】(a)は、本実施の形態に係るゲイン係数合成部において求められるゲイン係数の他の例を示した図であって、slp=|6|,|12|,|18|,|24|,|36|,|48|,|72|[dB/oct]、att=|−3|[dB]の場合におけるゲイン係数を示した図であり、(b)は、slp=|−6|,|−12|,|−18|,|−24|,|−36|,|−48|,|−72|[dB/oct]、att=|−6|[dB]の場合におけるゲイン係数を示した図である。
図6】(a)は、HPF/LPF独立方式であって、att=|−3|[dB]、slp=|±12|[dB/oct]の周波数特性を備えた段数1のバタワースフィルタにおけるハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図であり、(b)は、HPF/LPF独立方式であって、att=|−3|[dB]、slp=|±12|[dB/oct]の周波数特性を備えた段数2のバタワースフィルタにおけるハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図である。
図7】(a)は、本実施の形態に係るゲイン係数生成部において、HPF/LPF独立方式、att=|−6|[dB]、slp=|±12|[dB/oct]の設定値に基づいて算出された段数1のハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図であり、(b)は、本実施の形態に係るゲイン係数生成部において、HPF/LPF差分方式、att=|−3|[dB]、slp=|−12|[dB/oct]の設定値に基づいて算出された段数2のハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図である。
図8】(a)は、本実施の形態に係るゲイン係数生成部において、HPF/LPF差分方式、att=|−6|[dB]、slp=|−12|[dB/oct]の設定値に基づいて算出された段数1のハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図であり、(b)は、本実施の形態に係るゲイン係数生成部において、HPF/LPF差分方式、att=|−6|[dB]、slp=|−72|[dB/oct]の設定値に基づいて算出された段数1のハイパスフィルタとローパスフィルタとそれらを合成した場合との周波数特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係るゲイン係数生成装置の一例となるゲイン係数生成部を備えた音場補正装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る音場補正装置の概略構成を示したブロック図である。本実施の形態に係る音場補正装置では、図示を省略した音源から出力された音響信号を周波数領域の音響信号に変換し、ゲイン係数を用いて周波数特性の補正を行った後に、時間領域における音響信号(リニアの音響信号)に戻すことによって、クロスオーバー処理を行う。
【0039】
[音場補正装置]
音場補正装置100は、FFT部10と、周波数フィルタ部20と、IFFT部30と、パラメータ設定部40と、ゲイン係数生成部50とを有している。
【0040】
[FFT部]
FFT部10は、まず、図示を省略した音源より入力された音響信号を、サンプリングして離散時間信号に変換し、離散時間信号をフーリエ変換する処理を行う。より詳細に説明すると、FFT部10は、音響信号に対するオーバーラップ処理と窓関数により重み付けとを行った後に、短時間フーリエ変換処理を行う。この短時間フーリエ変換処理によって、FFT部10は、音響信号を時間領域から周波数領域に変換し、実数と虚数の周波数スペクトル信号を出力する。本実施の形態では、一例として、サンプリング周波数は96kHz、フーリエ変換長は16,384サンプル、オーバーラップ長は12,288サンプル、窓関数はハニング窓とし、4,096サンプルずつ時間シフトしながら短時間フーリエ変換を行うものとする。この場合、16,384ポイントの周波数スペクトル信号が得られる。ここで、FFT部10は、16,384ポイントのうち、0Hzから48kHzまでのナイキスト周波数による8,193ポイントの周波数スペクトル信号を出力する。
【0041】
[周波数フィルタ部]
周波数フィルタ部20は、ゲイン係数生成部50において算出されたゲイン係数を用いて、FFT部10から周波数フィルタ部20へ出力された周波数スペクトル信号に対してクロスオーバー処理を行う役割を有している。具体的に、周波数フィルタ部20は、FFT部10より出力された周波数スペクトル信号に対して、ゲイン係数生成部50で算出されゲイン係数を乗算することによって、周波数領域でのフィルタ処理(フィルタリング)を行う。ゲイン係数を用いて周波数スペクトル信号のフィルタ処理を行うことによって、所望の周波数帯域以外の信号レベルが制限された(あるいは、所望の周波数帯域の信号レベルだけが強調された)周波数スペクトル信号を、ゲイン係数に応じて生成することができる。周波数フィルタ部20においてフィルタ処理された周波数スペクトル信号は、周波数フィルタ部20からIFFT部30に対して出力される。
【0042】
[IFFT部]
IFFT部30は、フィルタ処理された周波数スペクトル信号を、時間領域における音響信号へ変換する役割を有している。IFFT部30は、周波数スペクトル信号に対して、短時間逆フーリエ変換処理を施すことによって、周波数スペクトル信号を、周波数領域から時間領域へ変換する。さらに、IFFT部30は、窓関数による重み付け処理とオーバーラップ加算処理とを行うことにより、周波数スペクトル信号を音響信号に変換する。IFFT部30より出力される音響信号は、周波数フィルタ部20におけるフィルタ処理によって、周波数帯域のゲイン補正が行われた(周波数特性の補正が行われた)、音響信号となる。IFFT部30より出力された音響信号は、図示を省略したスピーカ等に出力される。
【0043】
[パラメータ設定部]
パラメータ設定部40は、クロスオーバー処理に必要なパラメータをユーザが設定するためのユーザ入力手段である。パラメータ設定部40は、モニタ41と情報入力部42とを有している。ユーザは、情報入力部42を操作することによって、周波数領域におけるカットオフ周波数の値とスロープの値とを設定することが可能となっている。また、モニタ41には、ユーザにより設定されるカットオフ周波数の値とスロープの値とが表示される。なお、情報入力部42として、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティックあるいはタッチパネル等の一般的な入力手段を用いることが可能である。パラメータ設定部40においてユーザにより設定されたカットオフ周波数の値と、スロープの値とは、ゲイン係数生成部50へと出力される。
【0044】
[ゲイン係数生成部]
ゲイン係数生成部50は、パラメータ設定部40においてユーザにより設定されたカットオフ周波数とスロープとの値に基づいて、バタワースフィルタやリンクウィッツ・ライリーフィルタ等と等価な周波数特性を備えたゲイン係数を算出する役割を有している。図2は、ゲイン係数生成部50における処理内容を示したフローチャートである。
【0045】
ゲイン係数生成部(ゲイン係数生成装置)50は、図1に示すように、基本ゲイン係数生成部(基本ゲイン係数生成手段)51と、重み係数生成部(重み係数生成手段)52と、ゲイン係数合成部(ゲイン係数合成手段、ゲイン係数算出手段)53とを備えている。
【0046】
[基本ゲイン係数生成部]
基本ゲイン係数生成部51は、パラメータ設定部40から取得した、カットオフ周波数の値と、スロープの値とに基づいて、基本ゲイン係数を算出する役割を有している。基本ゲイン係数生成部51は、まず、パラメータ設定部40からカットオフ周波数の値とスロープの値を取得する(ステップS1)。そして、基本ゲイン係数生成部51は、スロープの値がプラスの値であるか否かを判断することによって(ステップS2)、ユーザが、ハイパスフィルタに該当するゲイン係数の算出を望んでいるのか、ローパスフィルタに該当するゲイン係数の算出を望んでいるのかを判断する。具体的に、基本ゲイン係数生成部51は、スロープの値がマイナスの場合に、ローパスフィルタに該当するゲイン係数の算出を望んでいると判断し、スロープの値がプラスの場合には、ハイパスフィルタに該当するゲイン係数を望んでいると判断する。
【0047】
スロープの値がプラスの場合(ステップS2においてYesの場合)、基本ゲイン係数生成部51は、ハイパスフィルタに該当する場合と判断し、次の式(A1)〜式(A4)に基づいて、基本ゲイン係数ybと暫定重み係数wbとを算出する(ステップS3)。なお、パラメータ設定部40から取得したカットオフ周波数をfc、スロープの値の絶対値をslpとする。また、nは0Hzを除く周波数のポイント数に該当するn=1,2,…,8192とし、周波数の値をf(n)で示すものとする。
【0048】
・f(n)<fcの場合(つまり、周波数がカットオフ周波数未満の場合)
wb(n)=−log(f(n)/fc) ・・・(A1)
yb(n)=slp×wb(n) ・・・(A2)
・f(n)≧fcの場合(つまり、周波数がカットオフ周波数以上の場合)
wb(n)=log(f(n)/fc) ・・・(A3)
yb(n)=0 ・・・(A4)
式(A1)〜式(A4)によって求められる基本ゲイン係数yb(n)は、カットオフ周波数以上の場合にフラット(0dB)となり、カットオフ周波数未満の場合に対数軸上で直線的に、指定されたスロープの絶対値の傾きで増加する特性を有することになる。
【0049】
図3(a)は、スロープの値がプラスであることから、基本ゲイン係数生成部51が、ハイパスフィルタに該当すると判断とした場合であって、fc=1000[Hz]、slp=|12|[dB/oct]の場合における基本ゲイン係数yb(n)の状態を示した図である。また、図3(b)は、同じ条件における暫定重み係数wb(n)の状態を示した図である。
【0050】
一方で、スロープの値がマイナスの場合(ステップS2においてNoの場合)、基本ゲイン係数生成部51は、ローパスフィルタに該当すると判断し、次の式(B1)〜式(B4)に基づいて、基本ゲイン係数ybと暫定重み係数wbとを算出する(ステップS4)。なお、カットオフ周波数fc、スロープの値の絶対値slp、n、周波数の値f(n)は上述の式(A1)〜式(A4)と同じものを示している。
【0051】
・f(n)<fcの場合(つまり、周波数がカットオフ周波数未満の場合)
wb(n)=−log(f(n)/fc) ・・・(B1)
yb(n)=0 ・・・(B2)
・f(n)≧fcの場合(つまり、周波数がカットオフ周波数以上の場合)
wb(n)=log(f(n)/fc) ・・・(B3)
yb(n)=slp×wb(n) ・・・(B4)
式(B1)〜式(B4)によって求められる基本ゲイン係数yb(n)は、カットオフ周波数未満の場合にフラット(0dB)となり、カットオフ周波数以上の場合に対数軸上で直線的に、指定されたスロープの絶対値の傾きで減少する特性を有することになる。
【0052】
ステップS3またはステップS4において求められた基本ゲイン係数ybと暫定重み係数wbとは、基本ゲイン係数生成部51によって、重み係数生成部52へと出力される。
【0053】
[重み係数生成部]
重み係数生成部52は、スロープの値の絶対値slpに応じて、重み係数wを算出する役割を有している。具体的に、重み係数生成部52は、slpの値が0であるか否かを判断する(ステップS5)。そして、slpの値が0の場合(ステップS5においてYesの場合)、重み係数生成部52は、重み係数w(n)を0として算出(設定)する(ステップS6)。
【0054】
・slp=0の場合には、 w(n)=0 ・・・(C1)
一方で、重み係数生成部52は、slpの値が0でない場合(ステップS5においてNoの場合)には、次の式(C2)に基づいてw1(n)を算出し、さらに式(C3)に基づいてw2(n)を算出した後に、式(C4)に基づいて、重み係数w(n)を算出する(ステップS7)。
【0055】
・slp≠0の場合には、
w1(n)=10wb(n)/20 ・・・(C2)
w2(n)=w1(n)slp×4.5/att ・・・(C3)
w(n)=w2(n)×att ・・・(C4)
【0056】
ここで、attは、カットオフ周波数における減衰量の絶対値を示している。一般的にカットオフ周波数は、信号の周波数を変化させたときに、利得が減少して通常の利得よりも3[dB]だけ低下した点の周波数として定義される。このため、バタワースフィルタ等の一般的なフィルタにおけるカットオフ周波数の減衰量の絶対値(att)は、|−3|[dB]である。
【0057】
従って、ゲイン係数生成部50においてバタワースフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を算出する場合には、上述した式(C3)および式(C4)のattの値が3となり、
slp≠0の場合には、
w1(n)=10wb(n)/20
w2(n)=w1(n)slp×4.5/3
w(n)=w2(n)×3
として重み係数w(n)の算出が行われる。
【0058】
attの値は、情報入力部42においてユーザにより設定される値であってもよい。また、図示を省略したメモリ等に予め1つ又は複数のattの値を記憶させておき、処理に応じて、重み係数生成部52等がattの値を設定する構成とすることも可能である。このため、上述したように、バタワースフィルタ等の一般的なフィルタにおけるカットオフ周波数の減衰量の絶対値(att)は|−3|[dB]であるが、重み係数生成部52では、減衰量を|−3|[dB]以外の値に調整・設定することが可能である。
【0059】
図4(a)は、ハイパスフィルタに該当する場合であって、fc=1000[Hz]、slp=|12|[dB/oct]、att=|−3|[dB]の場合における重み係数wおよび算出過程で求められたw1、w2を示した図である。
【0060】
重み係数生成部52において求められた重み係数w(n)と、基本ゲイン係数生成部51において求められた基本ゲイン係数yb(n)とは、ゲイン係数合成部53へ出力される。
【0061】
[ゲイン係数合成部]
ゲイン係数合成部53は、重み係数w(n)と、基本ゲイン係数yb(n)とに基づいて、ゲイン係数y(n)を算出する役割を有している。
【0062】
ゲイン係数合成部53は、次の式(D1)に基づいてゲイン係数y(n)を算出する(ステップS8)。
y(n)=yb(n)−w(n) ・・・(D1)
ゲイン係数y(n)は、式(D1)のように、基本ゲイン係数yb(n)から重み係数w(n)を減算することにより算出される。
【0063】
図4(b)は、ハイパスフィルタに該当する場合であって、fc=1000[Hz]、slp=|12|[dB/oct]、att=|−3|[dB]の場合におけるゲイン係数yを示した図である。また、図5(a)は、ハイパスフィルタに該当する場合であって、fc=1000[Hz]、slp=|6|,|12|,|18|,|24|,|36|,|48|,|72|[dB/oct]、att=|−3|[dB]の場合におけるゲイン係数yを示した図である。さらに、図5(b)は、ローパスフィルタに該当する場合であって、fc=1000[Hz]、slp=|−6|,|−12|,|−18|,|−24|,|−36|,|−48|,|−72|[dB/oct]、att=|−6|[dB]の場合におけるゲイン係数yを示した図である。
【0064】
ゲイン係数合成部53で求められたゲイン係数yは、周波数フィルタ部20へ出力される。周波数フィルタ部20では、既に説明したように、FFT部10から周波数フィルタ部20へ出力された周波数スペクトル信号に対して、ゲイン係数を乗算することによって、周波数領域でのフィルタ処理(フィルタリング)を行う。
【0065】
上述したゲイン係数生成部50における基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53による処理(図2におけるステップS1〜ステップS8)によって、従来のフィルタ処理のようにフィルタ特性を求めるための特別なライブラリ等を用意することなく、バタワースフィルタ等のフィルタと等価な周波数特性を得るために必要とされるゲイン係数を算出することが可能になる。
【0066】
なお、実施の形態では、バタワースフィルタ1段分の周波数特性を算出した場合を例示したが、ゲイン係数を整数倍にすることにより、任意の段数(ゲイン係数の整数倍に対応)のバタワースフィルタをカスケード接続した場合と等価な周波数特性を得ることが可能になる。
【0067】
[クロスオーバー周波数付近における周波数特性のピークに関して]
従来より用いられているFIRフィルタを用いて、ハイパスフィルタを用いてフィルタ処理した信号と、ローパスフィルタを用いてフィルタ処理した信号とを合成すると、クロスオーバー周波数付近(カットオフ周波数付近)において、ピーク(突出した信号出力)を生じてしまう場合がある。
【0068】
より詳細には、カットオフ周波数が同じであって、スロープの正負の符号(±)だけが異なるハイパスフィルタとローパスフィルタとを用いて、それぞれ音響信号にフィルタ処理をした後に、それらを合成すると、クロスオーバー周波数付近(カットオフ周波数付近)において、ピークを生じてしまい、フラットな周波数特性にならない場合がある。また、同様にして、ハイパスフィルタとローパスフィルタとでそれぞれでフィルタ処理された信号を、出力帯域が異なる各スピーカから出力した後に、聴取位置で集音すると、集音された音の周波数特性が、クロスオーバー周波数付近でピークを生じてしまい、フラットな周波数特性にならない場合が生じ得る。
【0069】
一般的に、バタワースフィルタのカットオフ周波数における減衰量は約−3[dB]であるため、バタワースフィルタからなるハイパスフィルタとローパスフィルタとを用いてクロスオーバー処理を行うと、カットオフ周波数付近の出力が約3[dB]程度ピークとして出力されてしまう。
【0070】
図6(a)は、共通のカットオフ周波数の値(fc=1000[Hz])およびスロープの絶対値(slp=|±12|[dB/oct])の特性を備えた、バタワースフィルタからなるハイパスフィルタの周波数特性(HPF)と、ローパスフィルタの周波数特性(LPF)と、それらを合成した場合の周波数特性(HPF+LPF)とを示している。図6(a)では、カットオフ周波数において減衰量の絶対値(att)が|−3|[dB]となるバタワースフィルタの振幅特性を、FIRフィルタで実現した状態を示している。ハイパスフィルタの周波数特性とローパスフィルタの周波数特性とを合成した周波数特性(HPF+LPF)では、ピークが発生した状態になっている。なお、図6(a)におけるバタワースフィルタの段数は1段となっている。また、ハイパスフィルタとローパスフィルタとを別々に用いてフィルタ処理した後に、合成することにより周波数特性を求める方法を、便宜上、HPF/LPF独立方式と称する。図6(a)、図6(b)および図7(a)は、HPF/LPF独立方式の場合を示している。
【0071】
クロスオーバー処理において、クロスオーバー周波数付近でピークを生じないように、従来より、バタワースフィルタに換えて、リンクウィッツ・ライリーフィルタ(Linkwitz-Riley filter)を用いる方法が知られている。リンクウィッツ・ライリーフィルタは、カットオフ周波数における減衰量が−6[dB]となるフィルタ特性を備えている。リンクウィッツ・ライリーフィルタからなるハイパスフィルタとローパスフィルタとを用いてクロスオーバー処理を行うと、クロスオーバー周波数付近の周波数特性をフラットにすることが可能である。
【0072】
しかしながら、リンクウィッツ・ライリーフィルタは、バタワースフィルタを2段カスケード接続することで実現されるフィルタである。このため、バタワースフィルタの段数を2段にすることでバタワースフィルタにおけるスロープの整数倍のスロープを持つフィルタしか実現することができない。
【0073】
図6(b)は、図6(a)に示したバタワースフィルタ(カットオフ周波数1000[Hz]、slp=|±12|[dB/oct]、att=|−3|[dB])を2段にしたリンクウィッツ・ライリーフィルタにおける、ハイパスフィルタの周波数特性(HPF)と、ローパスフィルタの周波数特性(LPF)と、それらを合成した場合の周波数特性(HPF+LPF)とを示している。図6(b)に示すように、リンクウィッツ・ライリーフィルタを用いることによって、クロスオーバー周波数付近の周波数特性をフラットにすることが可能となる。一方で、リンクウィッツ・ライリーフィルタを用いると、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタのスロープ(傾き)が、図6(a)とは明らかに異なった傾きになってしまう。
【0074】
このようにスロープが異なった傾きになってしまう理由は、バタワースフィルタを2段にしたことにより生ずるものである。従って、本実施の形態に係るゲイン係数生成部50において、図6(b)の条件と同様に、カットオフ周波数を1000[Hz]、スロープの絶対値slp=|±12|[dB/oct]、減衰量の絶対値att=|−3|[dB]の値に設定してゲイン係数を求めた後に、ゲイン係数を2倍した場合には、図6(b)と同じように、バタワースフィルタを2段にしたリンクウィッツ・ライリーフィルタの周波数特性と等価なゲイン係数を算出することも可能である。しかし、2段にすることにより、図6(b)に示すスロープの傾きは、1段のバタワースフィルタ(図6(a))と異なった傾きになってしまう。
【0075】
一方で、上述した本実施の形態に係るゲイン係数生成部50では、ユーザがカットオフ周波数の値とスロープの値とを設定することにより、様々な周波数特性のバタワースフィルタと等価な周波数特性を持つゲイン係数を算出することができる。さらに、式(C3)および式(C4)に示した減衰量の絶対値(att)の値を調整することによって、カットオフ周波数における減衰量を変更・調整することが可能となる。従って、attの値として|−6|[dB]を設定することにより、バタワースフィルタと減衰量を−6[dB]に設定したフィルタと等価な周波数特性を備えるゲイン係数を容易に算出することが可能になる。
【0076】
図7(a)は、カットオフ周波数を1000[Hz]、スロープの絶対値slp=|±12|[dB/oct]、減衰量の絶対値att=|−6|[dB]の値に設定して求めたハイパスフィルタのゲイン値における周波数特性(HPF)と、ローパスフィルタのゲイン値における周波数特性(LPF)と、それらを合成した場合の周波数特性(HPF+LPF)とを示している。図7(a)に示す周波数特性では、クロスオーバー周波数付近の周波数特性をフラットにすることができると共に、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタのスロープ(傾き)を図6(a)に示した1段のバタワースフィルタと同じ傾きにすることが可能となる。このように、attを調整することにより、フィルタを2段にすることなく、減衰量を調整することができるので、クロスオーバー周波数付近の周波数特性をフラットにすると共にハイパスフィルタおよびローパスフィルタのスロープ(傾き)を所望の傾きに設定することが容易になる。
【0077】
また、ハイパスフィルタの特性を備えた信号に基づいて、ローパスフィルタの特性(ハイパスフィルタの逆特性)を備えた信号を生成する方法が知られている。ハイパスフィルタの特性を備えた信号は、音源の音響信号に対して、バタワースフィルタ等からなるハイパスフィルタを用いてフィルタ処理を施すことにより生成される。ローパスフィルタの特性(ハイパスフィルタの逆特性)を備えた信号は、音源の音響信号から、ハイパスフィルタの特性を備えた信号を減算することによって生成される。このローパスフィルタの特性を備えた信号と、ハイパスフィルタの特性を備えた信号とを用いてクロスオーバー処理した場合には、クロスオーバー周波数付近のピーク発生を抑制することでき、周波数特性をフラットにすることが可能になる。音源の音響信号に対して、ローパスフィルタを用いてフィルタ処理を施すことによりローパスフィルタの特性を備えた信号を生成した後に、音響信号からローパスフィルタの特性を備えた信号を減算して、ハイパスフィルタの特性を備えた信号を生成する場合においても同様である。
【0078】
この方法と同様に、ゲイン係数生成部50においてバタワースフィルタからなるハイパスフィルタの周波数特性と等価なゲイン係数を求めると共に、このゲイン係数に基づいてローパスフィルタの周波数特性と等価なゲイン係数を求めることによって、クロスオーバー周波数付近の周波数特性をフラットにすることが可能になる。ローパスフィルタの周波数特性と等価なゲイン係数を求めてから、求められたゲイン係数に基づいてハイパスフィルタの周波数特性と等価なゲイン係数を求める場合も同様である。
【0079】
例えば、ゲイン係数合成部53において求められたハイパスフィルタに係るゲイン係数をゲイン係数yHとし、算出過程において求められる値をyL_linear(n)とすると、ゲイン係数合成部53は、次の式(E1)および式(E2)に基づいて、ローパスフィルタに係るゲイン係数yLを求めることが可能である。
yL_linear(n)=1−10yH(n)/20 ・・・(E1)
yL(n)=20×log10(yL_linear(n)) ・・・(E2)
【0080】
また、ゲイン係数合成部53において求められたローパスフィルタに係るゲイン係数をゲイン係数yLとし、算出過程において求められる値をyH_linear(n)とすると、ゲイン係数合成部53は、次の式(E3)および式(E4)に基づいて、ハイパスフィルタに係るゲイン係数yHを求めることが可能である。
yH_linear(n)=1−10yL(n)/20 ・・・(E3)
yH(n)=20×log10(yH_linear(n)) ・・・(E4)
【0081】
本実施の形態では、式(E1)および式(E2)、あるいは式(E3)および式(E4)に係る方法を用いて、ゲイン係数生成部50において求められた一方のフィルタ(ハイパスフィルタまたはローパスフィルタ)に係るゲイン係数に基づいて、他方のフィルタ(ローパスフィルタまたはハイパスフィルタ)に係るゲイン係数を求める方法を、便宜上、HPF/LPF差分方式と称する。
【0082】
図7(b)、図8(a)および図8(b)は、ゲイン係数生成部50において、HPF/LPF差分方式に基づいて、ハイパスフィルタのゲイン値yH(n)を求めた後に、ローパスフィルタのゲイン値yL(n)を求めた場合における周波数特性(HPF,LPF)と、それらを合成した場合の周波数特性(HPF+LPF)とを示している。
【0083】
図7(b)は、ハイパスフィルタのゲイン値yH(n)を求めるための条件として、カットオフ周波数を1000[Hz]、スロープの絶対値slp=|−12|[dB/oct]、減衰量の絶対値att=|−3|[dB]の値に設定し、ゲイン係数を2倍にすることによって、フィルタを2段にした場合を示している。図8(a)は、ハイパスフィルタのゲイン値yH(n)を求めるための条件として、カットオフ周波数を1000[Hz]、スロープの絶対値slp=|−12|[dB/oct]、減衰量の絶対値att=|−6|[dB]の値に設定し、ゲイン係数を等倍にすることによってフィルタを1段にした場合を示している。図8(b)は、ハイパスフィルタのゲイン値yH(n)を求めるための条件として、カットオフ周波数を1000[Hz]、スロープの絶対値slp=|−72|[dB/oct]、減衰量の絶対値att=|−6|[dB]の値に設定し、ゲイン係数を等倍にすることによってフィルタを1段にした場合を示している。
【0084】
図7(b)、図8(a)および図8(b)に示すように、HPF/LPF差分方式を用いてハイパスフィルタとローパスフィルタとを合成した周波数特性(HPF+LPF)では、クロスオーバー周波数付近におけるピークが全く発生せず、フラットな周波数特性を実現することが可能になる。
【0085】
また、図8(a)および図8(b)に示すように、ゲイン係数生成部50におけるattの設定を|−6|[dB]に設定することにより、フィルタの段数を意識することなく(1段相当のままで)、任意のスロープ(傾き)を備え、さらに合成時にフラットな周波数特性を備えたゲイン係数を容易に算出することが可能になる。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態に係る音場補正装置100のゲイン係数生成部50では、情報入力部42においてユーザにより設定されたカットオフ周波数の値とスロープの値とを備えたバタワースフィルタと等価な周波数特性を備えるゲイン係数を算出することができる。さらに、ゲイン係数生成部50では、attの値を調整・変更することによって、バタワースフィルタだけでなく、リンクウィッツ・ライリーフィルタ等の異なる特性を備えたフィルタと等価な周波数特性を備えるゲイン係数を、段数が1段の状態で算出することができる。このように、ゲイン係数生成部50では、様々な周波数特性を備えたフィルタと等価な周波数特性を備えるゲイン係数を算出することができるので、フィルタ処理におけるゲイン係数の算出を容易に行うことが可能になる。
【0087】
特に、本実施の形態に係るゲイン係数生成部50では、式(A1)〜式(A4)、式(B1)〜式(B4)、式(C1)〜式(C4)、式(D1)に示す演算処理によりゲイン係数の算出が行われるため、周波数領域におけるFIRフィルタのフィルタ処理のように、特別なライブラリを用いることなく、様々なフィルタと等価な周波数特性を持つゲイン係数を算出することができる。このため、ゲイン係数生成部50では、従来のフィルタ処理に必要とされたフィルタ係数の算出処理や周波数特性への変換処理に伴う処理負荷を軽減することができる。また、処理に必要とされるメモリ容量を大幅に削減することが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態に係るゲイン係数生成部50では、フィルタの段数を意識することなく、カットオフ周波数における減衰量やスロープを任意に設定できる。このため、「カットオフ周波数における減衰量が任意に設定可能なバタワースフィルタ」や「任意のスロープを持つリンクウィッツ・ライリーフィルタ」等を容易に実現することが可能であり、フィルタ設計の自由度を大幅に向上させることが可能になる。
【0089】
以上、本発明に係るゲイン係数生成装置について、一例を示しつつ図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係るゲイン係数生成装置は、本実施の形態に示した構成に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。
【0090】
例えば、本実施の形態のゲイン係数生成部50では、情報入力部42において、カットオフ周波数の値とスロープの値との入力を行う構成となっているが、減衰量の絶対値(att)の値を設定することができるような構成することも可能である。このようにして、ユーザにより減衰量の絶対値(att)が設定された場合には、重み係数生成部52の式(C3)または式(C4)において、ユーザが設定等した減衰量の絶対値(att)の値を用いてゲイン係数を算出することにより、ユーザの希望する減衰量を備えたフィルタと等価な周波数特性を備えたゲイン係数を簡単に算出することが可能になる。
【0091】
また、本実施の形態に係る音場補正装置100では、ゲイン係数生成部50が、基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53を備える構成として説明したが、基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53をそれぞれ異なる機能部としてとらえるのではなく、ゲイン係数生成部50が、基本ゲイン係数生成処理、ゲイン係数生成処理およびゲイン係数合成処理を行うものと判断することも可能である。
【0092】
さらに、本実施の形態に係る音場補正装置100では、ゲイン係数生成部50の基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53における各機能部においてそれぞれ処理を行う場合について説明した。ゲイン係数生成部50でこれらの機能を実行させる方法として、CPU等の制御部が、メモリ等に記録されたプログラムに従って、図2に示した処理を実行することにより、基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53の処理を行うものと判断することも可能である。このような場合には、制御部としてコンピュータ等のCPUを用い、CPUがプログラムに基づいて図2に示したような処理を行うことにより、既に説明したゲイン係数生成部50(基本ゲイン係数生成部51、重み係数生成部52およびゲイン係数合成部53)の機能を実現することが可能である。また、同様にして、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)や、携帯情報端末に通話機能を付加したスマートフォン等を用いて、実施の形態に示したゲイン係数生成部50の機能を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 …FFT部
20 …周波数フィルタ部
30 …IFFT部
40 …パラメータ設定部
41 …モニタ
42 …情報入力部
50 …ゲイン係数生成部(ゲイン係数生成装置)
51 …基本ゲイン係数生成部(基本ゲイン係数生成手段)
52 …重み係数生成部(重み係数生成手段)
53 …ゲイン係数合成部(ゲイン係数合成手段、ゲイン係数算出手段)
100 …音場補正装置
図1
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