特開2016-226089(P2016-226089A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-226089(P2016-226089A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】同期電動機の温度推定装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/00 20160101AFI20161205BHJP
   H02P 27/04 20160101ALI20161205BHJP
【FI】
   H02P5/408 C
   H02P5/408 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-107660(P2015-107660)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 達也
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB06
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG02
5H505GG04
5H505HB02
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL46
5H505MM06
5H505MM12
5H505MM14
(57)【要約】
【課題】q軸インダクタンスは電流による変化が大きいため、電流により生じる電圧の算出が正確ではないという問題があった。
【解決手段】本発明の同期電動機の温度推定装置は、d相びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部と、d相電流を変化させたときのd相及びq相電圧を取得する電圧取得部と、同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、d相及びq相電流を検出する電流検出部と、巻線温度取得部と、巻線温度から巻線抵抗を算出する巻線抵抗換算部と、d相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部と、q相電圧、変化後のd相電流、回転速度、q相電流及び巻線抵抗から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部と、逆起電圧定数に基づいて磁石温度を推定する磁石温度推定部と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
d相電圧及びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部と、
d相電流を変化させたときのd相電圧及びq相電圧を取得する電圧取得部と、
同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、
d相電流及びq相電流を検出する電流検出部と、
同期電動機の巻線の温度を取得する巻線温度取得部と、
取得した巻線温度から巻線抵抗を算出する巻線抵抗換算部と、
d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び前記回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部と、
前記q相電圧、変化後のd相電流、前記回転速度、前記q相電流、前記巻線抵抗、及び前記回転速度から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部と、
前記逆起電圧定数に基づいて同期電動機の磁石温度を推定する磁石温度推定部と、
を有することを特徴とする同期電動機の温度推定装置。
【請求項2】
d相電圧及びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部と、
d相電流を変化させたときのd相電圧及びq相電圧を取得する電圧取得部と、
同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、
d相電流及びq相電流を検出する電流検出部と、
d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、d相電圧の変化分から巻線抵抗を算出する巻線抵抗演算部と、
前記巻線抵抗から同期電動機の巻線の温度を推定する巻線温度推定部と、
d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び前記回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部と、
前記q相電圧、変化後のd相電流、前記回転速度、前記q相電流、前記巻線抵抗、及び前記回転速度から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部と、
前記逆起電圧定数に基づいて同期電動機の磁石温度を推定する磁石温度推定部と、
を有することを特徴とする同期電動機の温度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期電動機の温度推定装置に関し、特に、d相電流を変化させて端子間電圧等をモニタし、逆起電圧、巻線抵抗を推定することにより巻線の温度を推定する同期電動機の温度推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期電動機を制御するためには、同期電動機の温度を知ることが重要である。同期電動機の温度を推定する方法として、同期電動機の駆動中において、逆起電圧の低下割合により磁石温度を推定する方法が知られている。ここで、逆起電圧は、端子間電圧から電流により生じる電圧を減算することにより算出できる。あるいは、巻線抵抗の上昇割合により巻線温度を推定する方法が知られている。
【0003】
また、内部温度測定手段により、同期電動装置の回転子の速度、3相の電圧及び電流を測定し、コイルの抵抗と磁石の磁束のための状態観測器を用いて同期電動装置の内部温度(コイルと磁石の温度)を求め、求めた内部温度に基づいて同期電動装置を診断、制御する同期電動装置の診断方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、n点近似関数を用いてq軸インダクタンスLqのモデルを求め、演算条件を満足しているかを演算し、演算可能信号が出力している場合のみ、電機子鎖交磁束モデルを演算し、電機子巻線温度モデルから求めた電機子巻線抵抗モデルに予め設定したモデルの主回路ケーブル抵抗を加えた電機子抵抗モデルを演算し、回転子の磁極位置モデル信号と回転子速度モデル信号の演算用のモータ定数を補正演算するモータ定数推定部を備え、電機子鎖交磁束のモデル誤差を抑制できる制御装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−230486号公報
【特許文献2】特開2008−92649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、q軸インダクタンスLqは電流による変化が大きいため、電流の変化により生じる電圧の算出が正確ではないという問題がある。また、磁石は回転子に装着され、回転するため、素子により温度を直接測定することも困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例に係る同期電動機の温度推定装置は、d相電圧及びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部と、d相電流を変化させたときのd相電圧及びq相電圧を取得する電圧取得部と、同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、d相電流及びq相電流を検出する電流検出部と、同期電動機の巻線の温度を取得する巻線温度取得部と、取得した巻線温度から巻線抵抗を算出する巻線抵抗換算部と、d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部と、q相電圧、変化後のd相電流、回転速度、q相電流、及び巻線抵抗から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部と、逆起電圧定数に基づいて同期電動機の磁石温度を推定する磁石温度推定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施例に係る同期電動機の温度推定装置によれば、温度の計算にq軸インダクタンスLqを用いていないため、同期電動機の温度を精度よく推定でき、例えば、同期電動機の適切な過熱保護、及び出力の推定精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置の構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置において、d相電流を変える前と変えた後におけるd相電流、q相電流、回転速度、巻線抵抗、d軸インダクタンス、及び逆起電圧定数と、端子間電圧ベクトルとの関係を表すグラフである。
図4】本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置の構成図である。
図5】本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る同期電動機の温度推定装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置について説明する。図1に本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置の構成図を示す。発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置101は、d相電圧及びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部1と、d相電流を変化させたときのd相電圧及びq相電圧を取得する電圧取得部2と、同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部3と、d相電流及びq相電流を検出する電流検出部4と、同期電動機の巻線の温度を取得する巻線温度取得部5と、取得した巻線温度から巻線抵抗を算出する巻線抵抗換算部6と、d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部7と、q相電圧、変化後のd相電流、回転速度、q相電流、及び巻線抵抗から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部8と、逆起電圧定数に基づいて同期電動機の磁石温度を推定する磁石温度推定部9と、を有することを特徴とする。
【0012】
図1に示した本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置について、詳細に説明する。三相交流電源30からコンバータ20へ三相交流電圧が入力され、コンバータ20は直流電圧に変換して出力する。出力された直流電圧は平滑コンデンサ31により平滑化された後、インバータ40に入力されPWM制御されて同期電動機50を駆動するための所望の周波数の交流電圧に変換される。同期電動機50は被駆動体60を駆動する。同期電動機50に供給されるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwは、U相、V相、W相の各電流検出器4u、4v、4wにより検出され、検出結果は電流検出部4に送信される。電流検出部4は、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwから、d相電流Id及びq相電流Iqを算出する。
【0013】
同期電動機50は、巻線55u、55v、55wを備えた固定子53を有する。さらに、同期電動機50は、固定子53の内側に、磁極54a〜54dを備え、中心軸51を中心に回転する回転子52を備えている。また、同期電動機50の近傍には、同期電動機50の回転角θを検出する回転角検出器70が設置されている。検出された回転角θは回転速度検出部3に送信されて、回転角θを微分することにより回転速度ωが算出される。なお、駆動電流周波数から回転速度ωを算出するようにしてもよい。
【0014】
同期電動機(モータ)制御装置100は、q相電流指令値生成部12と、d相電流指令値生成部13と、駆動部14と、電流検出部4と、を備えている。q相電流指令値生成部12は、上位制御装置21から速度指令ωcomを取得し、回転速度検出部3からの回転速度ωを減算器12aで減算して差分Δωを算出する。差分ΔωはPI制御部12bに入力され、q相電流指令Iqcomが出力される。
【0015】
d相電流指令値生成部13は、メモリ90に記憶されたd相電流値Idkと回転速度検出部3からの回転速度ωに基づいて、d相電流指令値Idcomを出力する。
【0016】
d相電流指令Idcomは駆動部14内の減算器14aに入力される。減算器14aは、d相電流指令Idcomから電流検出部4からのd相電流Idを減算して差分ΔIdを出力する。出力されたΔIdはPI制御部14cでd相電圧Vdに変換され、d相電圧Vdは電圧指令生成部1に入力される。
【0017】
q相電流指令Iqcomは駆動部14内の減算器14bに入力される。減算器14bは、q相電流指令Iqcomから電流検出部4からのq相電流Iqを減算して差分ΔIqを出力する。出力されたΔIqはPI制御部14dでq相電圧Vqに変換され、q相電圧Vqは電圧指令生成部1に入力される。
【0018】
電圧指令生成部1は、d相電圧Vd及びq相電圧VqをU相電圧Vu、V相電圧Vv、W相電圧Vwに変換して、PWM信号生成部14fに出力する。ベクトル制御においてはd相電圧Vd及びq相電圧Vqを指令により増減させてd相電流Id及びq相電流Iqを制御する。
【0019】
電圧取得部(Vd、Vq、ΔVd、ΔVq取得部)2は、PI制御部14c及び14dから、d相電流を変化させたときのd相電圧Vd及びq相電圧Vqを取得する。d相電圧Vd及びq相電圧Vqの代わりにそれぞれの電圧の指令値を代用することも可能である。外部測定器により端子間電圧を直接観測出来れば、それをsin、cosに分離し、Vd、Vqとすることも可能である。ここで、q軸の電流位相はベクトル制御においては当然に把握されているので、端子間電圧の位相とq軸の位相差を割り出して、sin、cosとすることができる。
【0020】
巻線温度取得部5は、同期電動機50の巻線55u、55v、55wの温度Tcを取得する。巻線の温度Tcは、温度検出素子(図示せず)を巻線55u、55v、55wに設置することにより取得することができる。
【0021】
巻線抵抗換算部(R換算部)6は、巻線温度取得部5から巻線温度Tcを取得し、巻線抵抗Rを算出する。
【0022】
インダクタンス演算部(Ld演算部)7は、d相電流をId1からId2に変化させたときのd相電流の変化分(Id2−Id1)、q相電圧の変化分ΔVq及び回転速度ωに基づいてd軸インダクタンスLdを算出する。
【0023】
逆起電圧定数演算部(Kv演算部)8は、q相電圧Vq、変化後のd相電流Id2、回転速度ω、q相電流Iq、及び巻線抵抗Rから逆起電圧定数Kvを算出する。
【0024】
磁石温度推定部9は、逆起電圧定数Kvに基づいて同期電動機50の磁石温度Tmを推定する。
【0025】
次に、本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置の動作手順について、図2に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101においてd相電流IdをId1からId2に変化させる。このとき、d相電流を変える前と変えた後におけるd相電流、q相電流、回転速度、巻線抵抗、d軸インダクタンス、及び逆起電圧定数と、端子間電圧ベクトルとの関係を図3(a)及び(b)に示す。図3(a)及び(b)において、Id1、Id2はd相電流(無効電流)、Iqはq相電流(トルク生成電流)、Rは巻線抵抗、Lqはq軸インダクタンス、Ldはd軸インダクタンス、ωは回転速度、Kvは逆起電圧定数である。
【0026】
本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置においては、ベクトル制御を行う同期電動機が対象であって、以下の2つの条件が前提となる。
(前提条件1)Id1からId2への変化は短時間で行われるため、変化の前後で巻線温度及び磁石温度は変わらない。
(前提条件2)Id1からId2への変化におけるd軸インダクタンスLdの変化量は小さい。
【0027】
さらに、Idの変化の前後でKvω、IdR,IqωLqは同じである必要がある。即ち、回転速度ωが同じであり、トルクも同じであるという条件が必要である。これは、例えば、外力がなく一定速度で回転している場合が該当する。この際、軸の動摩擦と釣り合うほぼ一定のトルクが出力されていると考えられる。
【0028】
次に、ステップS102において、d軸インダクタンスLdを算出する。図3(a)及び(b)からId2ωLdとId1ωLdとの差分がq相電圧の差分ΔVqとなっている。従って、以下の式(1)が得られる。
ΔVq=Id2ωLd−Id1ωLd (1)
従って、式(1)を変形して、d軸インダクタンスLdは下記の式(2)から算出できる。
d=△Vq/(Id2−Id1)ω (2)
【0029】
また、ステップS103において、巻線温度を温度検出素子で読み取り、ステップS104において、巻線抵抗Rを下記の式(3)に従って換算する。
R=R1×(T1+234.5(銅固有の値))/(巻線温度+234.5) (3)
ただし、R1は温度T1のときの巻線抵抗である。
【0030】
次に、ステップS105において、逆起電圧定数Kvを算出する。図3(b)から端子間電圧ベクトルのq軸成分であるVqはKvω+IqR+Id2ωLdで与えられる。ただし、Id2は図の矢印の向きを正にとっている。従って、Kvは下記の式(4)から算出することができる。
v=(Vq−Id2ωLd−IqR)/ω (4)
【0031】
次に、ステップS106において、逆起電圧定数Kvを用いて磁石温度を推定する。即ち、逆起電圧定数Kvから磁束密度を算出し、磁石の温度特性から磁石温度を下記の式(5)に従って推定する。
α(T−T1)= 1 − (Kv / Kv1) (5)
ただし、αは磁石の種類によって決まる定数、Tは推定温度、Kv1は温度T1(例えば20℃)での逆起電圧定数である。
【0032】
以上説明したように、本発明の実施例1に係る同期電動機の温度推定装置によれば、d相電流を変化させて端子間電圧等をモニタし、逆起電圧及び巻線抵抗を推定する際に、q軸インダクタンスLqを用いていないため、同期電動機の温度を精度よく推定でき、例えば、電動機の適切な過熱保護及び出力の推定精度向上を図ることができる。
【0033】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置について説明する。図4に本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置の構成図を示す。発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置102は、d相電圧及びq相電圧を指令により増減させてd相電流を制御する電圧指令生成部1と、d相電流を変化させたときのd相電圧及びq相電圧を取得する電圧取得部2と、同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部3と、d相電流及びq相電流を検出する電流検出部4と、d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、d相電圧の変化分から巻線抵抗を算出する巻線抵抗演算部10と、巻線抵抗から同期電動機の巻線の温度を推定する巻線温度推定部11と、d相電流を変化させたときのd相電流の変化分、q相電圧の変化分、及び回転速度に基づいてd軸インダクタンスを算出するインダクタンス演算部7と、q相電圧、変化後のd相電流、回転速度、q相電流、巻線抵抗、及び回転速度から逆起電圧定数を算出する逆起電圧定数演算部8と、逆起電圧定数に基づいて同期電動機の磁石温度を推定する磁石温度推定部9と、を有することを特徴とする。
【0034】
本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置102が、実施例1に係る同期電動機の温度推定装置101と異なっている点は、以下の点である。即ち、実施例1に係る同期電動機の温度推定装置101においては、巻線温度取得部5が同期電動機の巻線の温度を取得し、巻線抵抗換算部6が、取得した巻線温度から巻線抵抗を算出しているのに対して、実施例2に係る同期電動機の温度推定装置102においては、巻線抵抗演算部10がd相電流を変化させたときのd相電流の変化分、d相電圧の変化分から巻線抵抗を算出し、巻線温度推定部11が、巻線抵抗から同期電動機の巻線の温度を推定している点である。実施例2に係る同期電動機の温度推定装置102におけるその他の構成は、実施例1に係る同期電動機の温度推定装置101における構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0035】
次に、本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置の動作手順について、図5に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS201において、d相電流IdをId1からId2に変化させる。このとき、d相電流を変える前と変えた後におけるd相電流、q相電流、回転速度、巻線抵抗、d軸インダクタンス、及び逆起電圧定数と、端子間電圧ベクトルとの関係は実施例1において示した図3(a)及び(b)と同様である。
【0036】
次に、ステップS202において、巻線抵抗Rを算出する。巻線抵抗Rは図3(a)及び(b)からΔVd=Id2R−Id1Rであるので、以下の式(6)で求められる。
R=ΔVd/(Id2−Id1) (6)
【0037】
次に、ステップS203において、算出した巻線抵抗から同期電動機の巻線の温度を実施例1と同様に推定する。
【0038】
次に、ステップS204において、d軸インダクタンスLdを算出する。d軸インダクタンスLdは上記の式(2)から算出できる。
【0039】
次に、ステップS205において、逆起電圧定数Kvを算出する。Kvは上記の式(4)から算出することができる。
【0040】
次に、ステップS206において、逆起電圧定数Kvを用いて磁石温度を推定する。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例2に係る同期電動機の温度推定装置によれば、実施例1に係る同期電動機の温度推定装置と同様に、d相電流を変化させて端子間電圧等をモニタし、逆起電圧及び巻線抵抗を推定する際に、q軸インダクタンスLqを用いていないため、同期電動機の温度を精度よく推定でき、例えば、電動機の適切な過熱保護及び出力の推定精度向上を図ることができる。さらに、d相電流及びd相電圧の検出値から巻線抵抗を算出し、これに基づいて巻線温度を推定しているため、巻線への温度検出用の素子の設置を省略することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 電圧指令生成部
2 電圧取得部
3 回転速度検出部
4 電流検出部
5 巻線温度取得部
6 巻線抵抗換算部
7 インダクタンス演算部
8 逆起電圧定数演算部
9 磁石温度推定部
10 巻線抵抗演算部
11 巻線温度推定部
図1
図2
図3
図4
図5