【課題を解決するための手段】
【0016】
冒頭で言及した方法のうち第1の方法の場合は、この目的を、本発明により、
a)眼の角膜の平均曲率を決定するステップ
b)眼の平均位相誤差を決定するステップ
c)平均曲率と平均位相誤差から眼軸長を決定するステップ
d)眼軸長から眼球支点位置を決定するステップ
で達成する。
【0017】
角膜の平均曲率は、一般に角膜頂周り半径4mmの円領域である、角膜頂領域における角膜曲率の平均値を表す。眼の位相誤差は、眼から出た波面の位相の、基準波から、ここでは一般的に平面波面からの偏差とする。この平均位相誤差は、波面の平均曲率を表す。眼軸長は、角膜頂と小窩間の眼の幾何学長である。眼球支点位置は、極一般的に光学的眼球支点の場所として理解される。DIN(ドイツ工業規格)5340−43によると、例えば、頭と身体を無理のない状態にして、無限遠点を直接視認する際に、機械的眼球支点から、眼内部に延伸させた注視線への垂線の足を、光学的眼球支点(記号Z’)と見なす。DIN5340−42によると、例えば、機械的眼球支点(記号M)は、少なくとも視線の移動中変位する眼の点である。
【0018】
冒頭で言及した方法のうち別の第2の方法では、この目的を、本発明により、
a)少なくとも2視線方向に関して眼の特徴部分の位置及び/形状を検出するステップ、即ち、欧州特許第EP0825826A1号とは対照的に、常時規定のマーキングはせず及び/又は頭部の位置を固定せずに、該検出を行うステップ
b)2視線方向に関する眼の少なくとも1特徴軸の位置を、該2視線に関する、眼の特徴部分の各位置及び/又は各形状から検出するステップ
c)2視線方向に関する眼の少なくとも1特徴軸の位置から眼球支点位置を決定するステップ
で達成する。
【0019】
冒頭で言及した方法のうち更なる第3の方法の場合には、この目的を、本発明により、
a)被検者の第1視線方向に関する眼の角膜表面の少なくとも一部を三次元で測定するステップ
b)ステップa)で決定した角膜表面を、三次元数式で記述するステップ
c)ステップa)の視線方向と比較して変化した被検者の視線方向に関する角膜表面の少なくとも一部を三次元で測定するが、該測定は、ステップa)についてと同じ測定位置で、ステップa)と比較して不変な被検者の頭部位置に対して行われるステップ
d)ステップc)の視線方向及び/又は眼球支点位置を、ステップc)で測定した三次元データをステップb)で決定した式に、数学的変換、特に空間における点周りの回転を利用して、フィッティングさせて決定するステップ
で達成する。
【0020】
冒頭で言及した方法のうち更なる第4の方法の場合には、この目的を、本発明により眼の参照構造を写真記録中に同時に其々記録すること、及びパラメタ値を参照構造と照合することによって達成する。
【0021】
また、本発明の目的は、上記方法を実行する装置によって達成される。
【0022】
特に、冒頭で言及した、被検者の眼の眼球支点位置を決定する装置のうち第1の装置は、
a)眼の角膜の平均曲率を決定する曲率決定装置
b)眼の平均位相誤差を決定する位相誤差測定装置
c)平均曲率と平均位相誤差から眼軸長を決定する眼軸長計算装置
d)眼軸長から眼球支点位置を決定する眼球支点決定装置
を特徴とする。
【0023】
曲率決定装置を、例えば、ビデオケラトグラフィ又はケラトメータとすることができる。例えば、位相誤差測定装置を、自動屈折計又は波面センサとして設計できる。例えば、眼軸長計算装置及び眼球支点決定装置を、市販のパーソナルコンピュータの形で一緒に実装できる。
【0024】
冒頭で言及した装置のうち別の第2の装置は、
a)上記意味での、少なくとも2視線方向に関する眼の特徴部分の位置及び/又は形状を検出する記録装置
b)眼の特徴部分の位置及び/又は形状から2視線方向に関する眼の少なくとも1特徴軸の位置を決定する決定装置
c)2視線方向に関する眼の特徴軸の位置から眼球支点位置を決定する決定装置
を特徴とする。
【0025】
例えば、記録装置を、センタリングユニット又はデジタルカメラとすることができる。例えば、決定装置と眼球支点決定装置を、市販のパーソナルコンピュータの形で一緒に実装できる。
【0026】
冒頭で言及した装置のうち更なる第3の装置は、
a)被検者の第1視線方向に関する眼の角膜表面の少なくとも一部を三次元で測定し、同じ測定位置で、被検者の頭部位置は変えずに、第1視線方向と比べて変化した、被検者の第2視線方向に関する角膜表面の少なくとも一部を三次元で測定する測定装置
b)第1視線方向に関して決定した角膜表面を三次元数式で記述し、また、該第2視線方向に関する測定三次元データを、第1視線方向に関して決定した式に、数式を用いて、特に空間におけるある点周りに回転させて、フィッティングさせて、第2視線方向の他に眼球支点位置も決定する計算装置
を含む。
【0027】
一例として、ビデオケラトグラフィを測定装置として使用できる。計算装置を、例えば市販のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0028】
最後に、参照構造を有する眼の少なくとも2つの光学パラメタを決定する本発明の第4の装置には、その都度眼に関する光学パラメタの1つを決定するための、眼について写真記録する別個の記録ユニットを備える。記録ユニットを、写真記録中に眼の参照構造を同時に其々記録するように設計する。(少なくとも)1つの計算装置を、パラメタ値を参照構造と照合するために設ける。
【0029】
本発明が基づく目的は、このようにして完全に達成される。
【0030】
初めの3方法は、眼球支点位置を従来よりも正確に決定できる点で、優れている。従って、カスタマイズ累進レンズの表面トポグラフィを算出、作製する際に、眼球支点位置を考慮すると、特にカスタマイズ累進レンズをより一層良好に最適化可能となる。
【0031】
角膜の平均曲率及び眼の平均位相誤差は、角膜トポグラフィ及び/又は眼の波面誤差の三次元測定を用いて、所定軸の貫通点で無制限に決定できる。
【0032】
第1〜第3の方法により、既知のシステムを僅かに変更するだけで、上記の更に良好な最適化を達成可能になる。
【0033】
第4の方法により、異なるユニットで記録された2パラメタを良好に関連付け可能になり、その結果、眼鏡の不正確な調整を回避できる。
【0034】
最初に挙げた本発明の方法の場合では、眼球支点位置ADLを、以下の関係式を使用して、眼軸長LAから決定できる。
【0035】
ADL=k
3LA (1)
【0036】
この場合単位メートルで特定した量ADLで、注視線上にある角膜頂と光学的眼球支点Z’の中心との距離を特定する。k
3は、規定可能な無次元パラメタである。
【0037】
このパラメタk
3を、例えば、グルストランド理論に従い、13.5/23.8として選定する。しかしながら一般に、この値から、例えば、其々±10%又は5%の偏差は許容できる。
【0038】
この最初に挙げた方法の場合、眼軸長LAを、例えば、以下の関係式を使用して、平均曲率KH及び平均位相誤差PFから決定できる。
【0039】
LA=(k
1−PF)KH/k
2 (2)
【0040】
平均曲率KHは一般にミリメートルで特定され、平均位相誤差は一般的にディオプタの大きさで特定される。パラメタk
1及びk
2は原則として自由に規定できる。k
1は、位相誤差、具体的にはディオプタの大きさであり、k
2も同様にディオプタの大きさである。
【0041】
本発明者の理論に従うと、k
1を52.634dpt、k
2を17.395dptとして選定する。しかしながら、一般に、これらの値から其々±10%又は±5%の差は許容できる。この測定には、母集団の圧倒的大部分に対して、確実に眼球支点位置を最適決定できるという利点がある。
【0042】
この最初に挙げた方法では、瞳孔開口領域の角膜の平均曲率KHを決定するのに、一般にステップa)で十分である。周囲の明るさに応じて瞳孔開口の拡張が異なるため、瞳孔中心周りに直径8mmの領域を取るのが、通例となっている。
【0043】
角膜の曲率KHと位相誤差PFの場合に特に重要になるのが、光軸周辺領域であるため、一般に、ステップa)で決定するのを角膜の平均曲率KHとし、ステップb)で決定するのを眼の光軸周辺領域及び/又は注視線周辺領域及び/又は視軸周辺領域其々での位相誤差PFとする。これらの軸周りの典型的な半径は4mmである。また、一般に、半径を2mmまで、又は1mmにまで減少させても十分である。例えばDIN5340−で提示される角膜表面の法線は、眼の光軸と考えられ、該光軸が眼内部に延伸する部分は、眼の残りの屈折面の曲率中心から最短距離を有する。DIN5340−360で提示されたような、中心で結像した物点と網膜上の像点とを結んだ直線は、視軸(視線)として使用できる。一例として、DIN5340−159で提示された、中心窩で結像した物点と眼の入射瞳の中心とを結んだ直線は、注視線として使用できる。
【0044】
上記特定した測定には、上記値の決定が、該値を空間的に相互に照合、即ち、特定の軸又は瞳孔中心と照合して決定することによって、改善されるという利点がある。
【0045】
位相誤差を、例えば、ハルトマン−シャック法を用いて、波面屈折計によって測定できる。その後、平均値を、波面自動屈折計を使い測定した位相誤差分布から得る。この平均値が、平均位相誤差PFに相当する。波面自動屈折計を使い位相誤差を決定すると、位相誤差における位置変動を考慮できるという利点がある。また、オートレフラクトメータを、波面自動屈折計の代わりに使用できる。
【0046】
第2の方法の場合では、例えば、眼の特徴部分は、瞳孔及び/又は角膜縁及び/又は虹彩を含むことができる。眼のこれらの特徴部分は、肉眼で認識でき、従って、ユーザと自動検出システムの両方によって、簡単な方法で明確に識別できる。そのため誤認を殆ど排除できる。
【0047】
上記特定した、瞳孔、角膜縁、及び/又は虹彩といった特徴部分の代わりに、勿論、例えば、血管や、色で区別できる領域等の、眼を特徴付ける他の部分(特に生体測定部分)も使用可能である。かかる構造は、例えば、回転に関して構造的に不変性が不足するといった問題がある個々の場合でも、照合できる。
【0048】
眼の特徴部分の位置及び/又は形状を、例えば、較正した撮影システムによって検出できる。較正撮影システムは、頭/眼系の三次元パラメタを検出するのに使用できる撮影システムと理解される。こうしたシステムを使用する利点は、該システムを使用して十分正確に測定できる点である。
【0049】
例えば、較正したビデオセンタリングシステムを、較正撮影システムとして使用できる。一般に、較正していないビデオセンタリングシステムは単なるデジタルカメラであり、従って、運転パラメタを測定しても意味がない。
【0050】
一例として、2視線方向に関する眼の特徴部分の各位置及び/又は各形状から、2視線方向に関するその位置を決定できる少なくとも1特徴軸は、注視線及び/又は視軸及び/又は光軸を含むことができる。例えば、3特徴全てを、上記方法を使用して、予め記録したデータから簡単な演算処理によって決定できる。
【0051】
この第2の方法の場合では、眼球支点位置の決定は、眼の特徴軸が交差する点を決定することを含むことができる。
【0052】
例えば、この第2の方法は、以下の
a)眼の特徴部分を検出し、該部分の幾何学的中心と共に、該中心がある特徴部分の平面を通り、被検者の第1視線方向に向かう法線も決定するステップ
b)眼の特徴部分を検出し、該部分の幾何学的中心と共に、該中心がある特徴部分の平面を通り、被検者の第1視線方向から外れた第2視線方向に向かう法線も決定するステップ
c)ステップa)とb)で決定した法線ベクトルの方向から眼球支点位置を決定するステップ
を含むことができる。
【0053】
異なる視線方向の場合での特徴軸の交点の代わりに、2特徴軸を決定し、2特徴軸の交点として眼球支点位置を決定することも可能である。
【0054】
2特徴軸の交点の代わりに、3特徴軸以上を決定し、眼球支点位置を、特徴軸で接線方向に囲んだ球体積の中心として決定することも可能である。
【0055】
被検者の眼の眼球支点位置を決定するために、上述した方法の1つを、眼球支点位置を決定し、入力パラメタとして使用する、被検者の眼に合わせた眼鏡レンズを最適化する方法として、使用できる。
【0056】
例えば、本発明の第4の方法は、以下の
a)第1測定状況で眼の参照構造を測定するステップ
b)第2測定状況で眼の参照構造を測定するステップ
c)該2測定状況間での参照構造の位置変化を決定するステップ
d)処方された眼鏡レンズを位置変化の関数に従って補正するステップ
を含むことができる。
【0057】
a)とb)による測定値を互いに関連付けできる点で、この方法は優れている。同方法のステップa)及びb)は、例えば2記録装置で実行できる。同方法のステップc)及びd)は、例えば、演算装置(例えば、パーソナルコンピュータ)で実行できる。
【0058】
一例として、この方法の発展形では、参照構造を測定するために、眼の瞳孔中心の位置及び/又は角膜頂の位置を決定する。瞳孔中心の位置又は角膜頂の位置は、検出が容易なため、参照構造として特に適している。
【0059】
また、参照構造として、例えば、虹彩の構造又は真皮の血管も適している。かかる参照構造は、一般に、いかなる対称性もない。そのため空間における明確な位置特定が可能である。
【0060】
プログラムをコンピュータで実行する際に、上記方法の1つを行うように、プログラムコードを有するコンピュータプログラムをセットアップできる。コンピュータプログラムを、例えば、機械可読媒体に格納できる。
【0061】
更なる利点については、以下の記述及び添付図によって明らかとなろう。
【0062】
言うまでもなく、上記特徴及び以下で更に説明する特徴を、其々特定した組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、他の組み合わせ又は単独で使用できる。
【0063】
本発明の例示的実施形態を、図面で示し、以下の記述で更に詳細に説明する。