【解決手段】 血管網を含む被検体上を走査手段によって走査された測定光と、前記測定光に対応する参照光とによるOCT信号を検出するためのOCT光学系と、を備える光コヒーレンストモグラフィ装置であって、被検体上の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCT信号を処理し、各走査位置での深さ方向における移動流体の分布を画像化したモーションコントラスト画像を前記複数のOCT信号に基づいて生成する信号処理手段と、前記信号処理手段によって生成された前記モーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルを解析し、血管による変化を検出することによって前記被検体に含まれる血管網を検出する血管網検出手段と、を備えることを特徴とする。
血管網を含む被検体上を走査手段によって走査された測定光と、前記測定光に対応する参照光とによるOCT信号を検出するためのOCT光学系と、を備える光コヒーレンストモグラフィ装置であって、
被検体上の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCT信号を処理し、各走査位置での深さ方向における移動物体の分布を画像化したモーションコントラスト画像を前記複数のOCT信号に基づいて生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段によって生成された前記モーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルを解析し、血管による変化を検出することによって前記被検体に含まれる血管網を検出する血管網検出手段と、
を備えることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィ装置。
前記血管網検出手段は、前記プロファイルを解析し、深さ方向に関して異なる位置に存在する各血管による変化を検出することによって前記被検体に含まれる複数の血管網を検出し、検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を分離することを特徴とする請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
前記血管網検出手段は、前記モーションコントラスト画像を2次元フーリエ変換したときの空間周波数スペクトルの深さ方向における輝度プロファイルを解析し、血管による輝度変化を検出することによって前記被検体に含まれる血管網を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置。
前記血管網検出手段は、前記プロファイルが極値をとる深さを前記血管網の境界として検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置。
前記血管網検出手段によって検出された血管網における前記深さ方向のプロファイルに基づいて、前記モーションコントラスト画像を正面方向に関して可視化したEn−face画像を生成するEn−face画像生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項7の光コヒーレンストモグラフィ装置。
前記血管網検出手段は、前記プロファイルを解析し、深さ方向に関して異なる位置に存在する各血管による変化を検出することによって前記被検体に含まれる複数の血管網を検出し、検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を分離し、
前記En−face画像生成手段は、前記血管網検出手段によって分離された各血管網における前記深さ方向のプロファイルに基づいて、各血管網に対応するEn−face画像をそれぞれ生成することを特徴とする請求項8の光コヒーレンストモグラフィ装置。
血管網を含む被検体上を走査手段によって走査された測定光と、前記測定光に対応する参照光とによるOCT信号を検出するためのOCT光学系と、を備える光コヒーレンストモグラフィ装置において実行されるデータ処理プログラムであって、
前記光コヒーレンストモグラフィ装置のプロセッサによって実行されることで、
被検体上の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCT信号を処理し、各走査位置での深さ方向における移動物体の分布を画像化したモーションコントラスト画像を前記複数のOCT信号に基づいて生成する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップにおいて生成された前記モーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルを解析し、血管による変化を検出することによって前記被検体に含まれる血管網を検出する血管網検出ステップと、
を前記光コヒーレンストモグラフィ装置に実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
以下、図面に基づいて本実施例の概要を説明する。本実施例の光コヒーレンストモグラフィ装置(
図1参照)は、被検体(例えば、被検眼E、
図2参照)のモーションコントラスト画像を得る。被検体は、例えば、眼底Efであってもよい。光コヒーレンストモグラフィ装置(以下、本装置と略す場合がある)10は、例えば、OCT光学系100(
図1参照)と、信号処理部(例えば、制御部70)と、血管網検出部(例えば、制御部70)と、を主に備える。
【0012】
OCT光学系100は、例えば、血管網を含む被検体上を走査部(例えば、光スキャナ108)によって走査された測定光と、測定光に対応する参照光とによるOCT信号を検出する。
【0013】
信号処理部は、例えば、被検体上の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCT信号を処理する。さらに、信号処理部は、例えば、各走査位置での深さ方向における移動物体の分布を画像化したモーションコントラスト画像を複数のOCT信号に基づいて生成する。モーションコントラスト画像が生成されることによって、疑似的な血管造影画像が取得される。なお、以下の説明おいては、モーションコントラスト画像を疑似的な血管造影画像として説明する場合がある。なお、モーションコントラスト画像の用途としては、例えば、各走査位置での深さ方向における移動物体を画像化するために用いられてもよい。
【0014】
血管網検出部は、例えば、信号処理部によって生成されたモーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルを解析する。これによって、血管網検出部は、血管による変化を検出することによって被検体に含まれる血管網を検出する。なお、血管による変化とは、例えば、血管の数による変化、血管の有無による変化、深さ方向における血管の粗密具合による変化であってもよい。なお、血管網検出部は、血管による変化を検出するために、例えば、信号のエッジ位置、信号のピーク位置、信号のボトム位置を信号処理によって検出してもよい。このように、血管網検出部(画像処理部)は、モーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルの変化を検出し、検出結果に基づいて血管領域を検出してもよい。なお、血管網検出部は、血管の有無による特徴的部分を検出してもよい。例えば、血管網検出部は、血管による信号の変化が他の深さ位置に対して相対的に少ない位置を血管網の境界として検出してもよい。
【0015】
以上のような装置において、モーションコントラスト画像から直接的に血管網を検出することによって、血管網の画像化が容易となる。さらに、疾患等によって、血管が存在しない層に血管が現れた場合にも対応できる。
【0016】
なお、血管網検出部は、モーションコントラスト画像の深さ方向のプロファイルを解析し、深さ方向に関して異なる位置に形成された各血管による変化を検出してもよい。これによって、被検体に含まれる複数の血管網を検出してもよい。さらに、血管網検出部は、血管網の検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を分離してもよい。
【0017】
なお、血管網検出部は、例えば、領域分離部(例えば、制御部70)を備えてもよい。領域分離部は、例えば、モーションコントラスト画像の深さ方向のプロファイルを解析し、被検眼E(例えば、眼底Efなど)において深さ方向に関して異なる位置に存在する各血管による変化を検出してもよい。これによって、領域分離部は、被検体に含まれる複数の血管網を検出し、その検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を分離してもよい。
【0018】
なお、血管網検出部は、深さ方向における輝度プロファイル(輝度分布)を解析し、血管による輝度変化を検出することによって被検体に含まれる血管網を検出してもよい。
【0019】
なお、血管網検出部は、モーションコントラスト画像を2次元フーリエ変換したときの空間周波数スペクトルの深さ方向における輝度プロファイルを解析してもよい。そして、血管網検出部は、空間周波数スペクトルの深さ方向における輝度プロファイルの血管による輝度変化を検出することによって被検体に含まれる血管網を検出してもよい。
【0020】
なお、血管網検出部は、モーションコントラスト画像の深さ方向のプロファイルが極値をとる深さを血管網の境界として検出してもよい。
【0021】
なお、本装置10は、En−face画像生成部(例えば、制御部70)をさらに備えてもよい。En−face画像生成部は、例えば、血管網検出部によって検出された血管網における深さ方向のプロファイルに基づいて、モーションコントラスト画像を正面方向に関して可視化したEn−face画像を生成してもよい。これによって、良好に検出された血管網を正面方向に関して可視化できる。
【0022】
なお、血管網検出部は、モーションコントラスト画像の深さ方向のプロファイルを解析し、深さ方向に関して異なる位置に形成された各血管による変化を検出してもよい。これによって、血管網検出部は、被検体に含まれる複数の血管網を検出し、検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を分離してもよい。この場合、En−face画像生成部は、血管網検出部によって分離された各血管網における深さ方向のプロファイルに基づいて、各血管網に対応するEn−face画像をそれぞれ生成してもよい。
【0023】
なお、血管網検出部は、3次元モーションコントラストデータを正面方向に関して複数の小領域に分割してもよい(
図6参照)。そして、血管網検出部は、分割された小領域でのプロファイルを解析し、各小領域にて血管による変化を検出することで、被検体に含まれる血管網を検出してもよい。これによって、血管網検出部は、例えば、血管が検出できない箇所があっても、周辺の血管から血管網を求めることができる。
【0024】
なお、本装置10は、被検体上で測定光を二次元的に走査させることによって、各走査位置での複数のOCT信号を2次元的に取得可能であってもよい。この場合、信号処理部は、二次元的に取得された複数のOCT信号に基づいて、3次元モーションコントラストデータを生成してもよい。なお、3次元モーションコントラストデータは、例えば、横断位置が異なるモーションコントラスト画像の集合体である。さらに、血管網検出部は、各モーションコントラスト画像での血管網を検出することによって、3次元モーションコントラストデータにおける血管網を二次元的に検出してもよい。これによって、正面方向(上下左右方向)に関する血管網を検出できるので、検出された血管網でのEn−face画像を生成できる。
【0025】
なお、本装置10のプロセッサにデータ処理プログラムを実行させてもよい。データ処理プログラムは、例えば、信号処理ステップと、血管網検出ステップと、で構成されてもよい。信号処理ステップは、例えば、被検体上の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCT信号を処理し、各走査位置での深さ方向における移動流体の分布を画像化したモーションコントラスト画像を複数のOCT信号に基づいて生成するステップであってもよい。血管網検出ステップは、例えば、信号処理ステップにおいて生成されたモーションコントラスト画像の深さ方向におけるプロファイルを解析し、血管による変化を検出することによって被検体に含まれる血管網を検出するステップであってもよい。
【0026】
<実施例>
以下、典型的な実施例の1つについて、図面を参照して説明する。
図1は本実施例に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(以下、本装置と呼ぶ場合もある)10の構成について説明するブロック図である。本装置10は、一例として、被検眼の眼底の断層像を取得する眼底撮影装置として説明する。
【0027】
OCTデバイス1は、OCT光学系100によって取得された検出信号を処理する。OCTデバイス1は、制御部70を有する。OCT光学系100は、例えば、被検眼Eの眼底Efの断層像を撮影する。OCT光学系100は、例えば、制御部70と接続されている。
【0028】
次いで、OCT光学系100を
図2に基づいて説明する。OCT光学系100は、眼底に測定光を照射する。OCT光学系100は、眼底から反射された測定光と参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。OCT光学系100は眼底Ef上の撮像位置を変更するため、眼底Ef上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108、固視標投影ユニット300)を備える。制御部70は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層像を取得する。
【0029】
<OCT光学系>
OCT光学系100は、いわゆる眼科用光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の装置構成を持ち、眼Eの断層像を撮像する。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー(光分割器)104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を眼Eの眼底Efに導き、また、参照光を参照光学系110に導く。OCT光学系100は、眼底Efによって反射された測定光と、参照光との合成による干渉光を検出器(受光素子)120に受光させる。
【0030】
検出器120は、測定光と参照光との干渉信号を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度(スペクトル干渉信号)が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって複素OCT信号が取得される。例えば、複素OCT信号における振幅の絶対値を算出することによって、所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。光スキャナ108によって走査された測定光の各走査位置における深さ方向の輝度プロファイルを並べることによって、OCT画像データ(断層画像データ)が取得される。ここで、OCT画像データでの輝度プロファイルとは、A−Scanラインで深さ方向に各画素の輝度値を並べた数列であり、深さ方向に対する輝度値のグラフである。
【0031】
なお、測定光を2次元的に走査することによって、OCT3次元データを取得してもよい。また、OCT3次元データから、OCT正面(Enface)画像(例えば、深さ方向に関して積算された積算画像)が取得されてもよい。
【0032】
また、複素OCT信号の信号処理によって、機能OCT信号が取得されてもよい。光スキャナ108によって走査された測定光の各走査位置における機能OCT信号(モーションコントラストデータ)を並べることによって、機能OCT画像データ(モーションコントラスト画像データ)が取得される。さらに、測定光を2次元的に走査することによって、3次元機能OCT画像データ(3次元モーションコントラストデータ)を取得してもよい。また、3次元機能OCT画像データから、OCT機能正面(Enface)画像(例えば、ドップラー正面(Enface)画像、スペックルバリアンス正面画像)が取得されてもよい。
【0033】
例えば、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Swept-source OCT(SS−OCT)が挙げられる。また、Time-domain OCT(TD−OCT)であってもよい。
【0034】
SD−OCTの場合、光源102として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器120には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。スペクトロメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。
【0035】
SS−OCTの場合、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器120として、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源102は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
【0036】
光源102から出射された光は、カップラー104によって測定光束と参照光束に分割される。そして、測定光束は、光ファイバーを通過した後、空気中へ出射される。その光束は、光スキャナ108、及び測定光学系106の他の光学部材を介して眼底Efに集光される。そして、眼底Efで反射された光は、同様の光路を経て光ファイバーに戻される。
【0037】
光スキャナ108は、眼底上で二次元的に(XY方向(横断方向))に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。
【0038】
これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底Ef上で任意の方向に走査される。これにより、眼底Ef上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0039】
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0040】
参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
【0041】
<正面観察光学系>
正面観察光学系200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。観察光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる光スキャナと、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。
【0042】
なお、観察光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、OCT光学系100は、観察光学系200を兼用してもよい。すなわち、正面画像は、二次元的に得られた断層像を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい(例えば、三次元断層像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)。
【0043】
<固視標投影ユニット>
固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0044】
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0045】
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光スキャナを用いて光源からの光を走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0046】
<制御部>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、各構成の各部材など、装置全体(OCTデバイス1、OCT光学系100)の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、装置全体の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0047】
制御部70には、不揮発性メモリ(記憶手段)72、操作部(コントロール部)76、および表示部(モニタ)75等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ(メモリ)72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、OCTデバイス1、及び、OCT光学系100に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用することができる。メモリ72には、OCT光学系100による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、メモリ72には、OCTデバイス1によって得られたOCT信号を信号処理することを可能にする信号処理プログラムが記憶されている。また、メモリ72には、走査ラインにおける断層像(OCTデータ)、三次元断層像(三次元OCTデータ)、眼底正面像、断層像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。
【0048】
操作部76は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部76には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。
【0049】
モニタ75は、装置本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、モニタ75は、タッチパネルであってもよい。なお、モニタ75がタッチパネルである場合に、モニタ75が操作部として機能する。モニタ75には、OCT光学系100によって撮影された断層画像および正面画像を含む各種画像が表示される。
【0050】
<操作方法、制御動作>
本装置10では、断層像が取得される。以下、本装置10の操作方法および制御動作について
図3を用いて説明する。制御部70は、例えば、各種制御処理を司るプロセッサ(例えば、CPU)と、プログラムを記憶する記憶媒体とを備える。プロセッサは、プログラムに従って、以下に説明する処理を実行する。なお、以下の説明において、制御の各ステップを識別するための番号を付与するが、付与した番号の順番と実際の制御の順番は必ずしも一致しない。
【0051】
まず、検者は固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、操作部76(例えば、図示無きジョイスティック)を用いて、アライメント操作を行う。
【0052】
(ステップ1:OCT撮影)
制御部70は、同じ位置において、時間の異なる少なくとも2フレームの干渉信号を取得する。例えば、制御部70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底上で測定光を走査させる。例えば、
図4に示す第1の走査ラインS1に沿ってx方向に測定光を走査させる。なお、横断方向(例えば、x方向)に測定光を走査させることを「B−scan」と呼ぶ。以下、1フレームの干渉信号とは、1回のB−Scanによって得られた干渉信号として説明する。制御部70は、走査中に検出器120によって検出された干渉信号を取得する。なお、
図4において、z軸の方向は、測定光の光軸の方向とする。x軸の方向は、z軸に垂直かつ左右の方向とする。y軸の方向は、z軸に垂直かつ上下の方向とする。
【0053】
1回目の走査が完了すると、制御部70は、1回目と同じ位置で2回目の走査を行う。例えば、制御部70は、
図4に示す走査ラインS1に沿って測定光を走査させた後、再び測定光を走査させる。制御部70は、2回目の走査中に検出器120によって検出された干渉信号を取得する。これによって、制御部70は、同じ位置における時間の異なる2フレームの干渉信号を取得することができる。なお、本実施例においては、同じ位置での走査を4回繰り返し、時間の異なる連続する4フレームの干渉信号を取得する。例えば、走査ラインS1での走査を4回繰り返し、4フレームの干渉信号を取得する。
【0054】
なお、1回の走査で、時間の異なる同じ位置の干渉信号を取得することができる場合は、2回目の走査を行わなくてもよい。例えば、所定間隔だけ光軸のずれた2つの測定光を1度に走査させる場合、複数回走査する必要はない。被検体内の同じ位置における時間の異なる干渉信号を取得することができればよい。なお、2つの測定光を1度に走査させる場合、2つの測定光の間隔によって任意の血流速度を目標として検出できる。
【0055】
なお、制御部70は、別の位置においても、同様に、時間の異なる少なくとも2フレームの信号を取得してもよい。
図4に示すように、第1の走査ラインS1は、例えば、y=y1であるとする。また、第2の走査ラインS2は、例えば、y=y2であるとする。制御部70は、第1の走査ラインS1において、時間の異なる信号の取得が完了すると、引き続き、第2の走査ラインS2において、時間の異なる少なくとも2フレームの信号を取得してもよい。
【0056】
このように、制御部70は、被検体の異なる時間における信号を取得する。例えば、本実施例では、同一ラインで4回走査を繰り返し、4フレームの干渉信号を取得する。ただし、4フレームに限らず、時間の異なる少なくも2フレーム以上の干渉信号を取得すればよい。
【0057】
制御部70は、
図4に示すように、測定光をラスター走査(ラスタースキャン)し、各走査ラインにおいて、時間の異なる少なくとも2フレーム以上の干渉信号を得る。これによって、眼底内部の3次元的な情報を取得することができる。
【0058】
なお、ラスタースキャンは、眼底上を測定光が矩形状に走査するパターンである。ラスタースキャンは、例えば、正面(En−face)画像スキャンとして用いられる。
【0059】
ラスタースキャンでは、例えば、予め設定された走査領域(例えば、矩形領域)において測定光がラスターされる。その結果として、走査領域(例えば、矩形領域)内における各走査ラインでの断層画像が取得される。
【0060】
ラスタースキャンにおける走査条件として、例えば、主走査方向及び副走査方向におけるライン幅(始点から終点までの距離)、走査速度、各走査ラインの間隔、走査ラインの数等が予め設定される。もちろん、ラスタースキャンにおける走査条件が、任意に設定される構成であってもよい。
【0061】
より詳細には、制御部70は、開始位置として設定された走査ライン(1ライン目)にて、測定光を主走査方向に走査することによって、主走査方向に沿った干渉信号を取得する。次に、制御部70は、副走査方向に関して異なる走査ラインにて、測定光を主走査方向に走査することによって、主走査方向に沿った干渉信号を取得する。以上のように、互いに異なるN本のラインに関して、それぞれ干渉信号を得る。副走査方向に関する各走査間隔を近接させることによって、走査領域内における干渉信号を取得できる。走査領域は、副走査方向に関して異なる走査ラインによって形成される。
【0062】
以下の説明では、副走査方向がy方向(上下)、主走査方向がx方向(左右方向)として設定された場合を例として説明するが、これに限定されない。例えば、副走査方向がx方向、主走査方向がy方向であってもよい。
【0063】
副走査方向における走査制御について、上から下に走査位置を順に変更してもよいし、下から上に走査位置を順に変更してもよい。また、中心から周辺に走査位置を順に変更してもよい。また、ラスター走査として、インターレース方式を用いるようにしてもよい
時間の異なる同じ位置での干渉信号を取得する場合、例えば、制御部70は、第1の走査ラインS1において測定光を主走査方向に複数回走査する。つまり、第1の走査ラインS1における始点から終点までの最初の走査が終了したら、制御部70は、再び第1の走査ラインS1における始点に測定光の走査位置を戻し、再度第1の走査ラインS1での走査を行う。
【0064】
なお、制御部70は、OCT光学系100を制御して干渉信号を取得すると共に、観察光学系200を制御し、眼底正面像を取得してもよい。
【0065】
(ステップ2:複素OCT信号群の取得)
続いて、制御部70は、OCT光学系100によって取得された干渉信号を処理し、複素OCT信号を取得する。例えば、制御部70は、ステップ1において取得された干渉信号をフーリエ変換する。ここで、Nフレーム中n枚目の(x,z)の位置の信号をAn(x,z)で表す。制御部70は、フーリエ変換によって、複素OCT信号An(x,z)を得る。複素OCT信号An(x,z)は、実数成分と虚数成分とを含む。
【0066】
なお、制御部70は、画像の位置合わせ(イメージレジストレイション)、位相補正等を行ってもよい。イメージのレジストレーションは、例えば、同じ場面の複数のイメージを揃えて配置するプロセスである。イメージの位置がずれる原因として、例えば、撮影中の被検眼の動き等が考えられる。位相補正は、例えば、画像内でA−Line間に位相ずれを補正する処理である。
【0067】
(ステップ3:血管断層像群の取得)
次いで、制御部70は、ステップ2によって取得された複素OCT信号を処理し、血管断層群(モーションコントラスト画像群)を取得する。複素OCT信号を処理する方法としては、例えば、複素OCT信号の位相差を算出する方法、複素OCT信号のベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法などが考えられる。本実施例では、位相差とベクトル差分を掛け合わせる方法を例に説明する。
【0068】
まず、制御部70は、同じ位置の少なくとも2つ以上の異なる時間に取得された複素OCT信号A(x,z)に対して、位相差を算出する。制御部70は、例えば、式(1)を用いて、位相の時間変化を算出する。本実施例では、例えば、4つの異なる時間に測定を行うため、T1とT2、T2とT3、T3とT4、の計3回の計算が行われ、3つのデータが算出される。なお、数式中のAnは時間Tnに取得された信号を示し、*は複素共役を示している。
【0070】
そして、制御部70は、3フレームの信号を加算平均し、ノイズを除去する。ノイズ成分は各フレームにランダムに存在するため、加算平均することによってシグナル成分に比べて小さくなる。制御部70は、例えば、式(2)を用いて加算平均処理を行う。
【0072】
続いて、制御部70は、複素OCT信号のベクトル差分を算出する。例えば、OCT光学系によって検出された複素OCT信号のベクトル差分を算出する。例えば、複素OCT信号は、複素平面上のベクトルとして表すことができる。そこで、ある時間T1とT2における同じ位置での信号A1,A2を検出し、式(3)によって、ベクトル差分ΔAを算出することで、モーションコントラストデータを生成する。本実施例では、例えば、4つの異なる時間に測定を行うため、T1とT2、T2とT3、T3とT4、の計3回の計算が行われ、3つのデータが算出される。なお、ベクトル差分ΔAを画像化する場合、例えば、差分ΔAの大きさの他に、位相情報に基づいて画像化を行ってよい。
【0074】
そして、制御部70は、3フレーム分の信号を加算平均し、ノイズを除去する。制御部70は、例えば、式(4)を用いて、ベクトル差分の加算平均処理を行う。
【0076】
制御部70は、ベクトル差分と位相差を算出すると、ベクトル差分の算出結果に位相差の算出結果をフィルタとして用いる。なお、本実施例の説明において、「フィルタを掛ける」とは、例えば、ある数値に重み付けを行うことである。例えば、制御部70は、ベクトル差分の算出結果に、位相差の算出結果を掛けることで重み付けを行う。つまり、位相差の小さい部分のベクトル差分は、弱められ、位相差の大きい部分のベクトル差分は、強められる。これによって、ベクトル差分の算出結果は、位相差の算出結果によって重み付けされる。
【0077】
制御部70は、例えば、ベクトル差分の算出結果と、位相差の算出結果を掛け合わせる。例えば、制御部70は、式(5)を用いて、ベクトル差分の算出結果と、位相差の算出結果を掛け合わせる。これによって、制御部70は位相差の算出結果によって重み付けされた断面血管像CA(Cross-section Angiogram)を生成する。
【0079】
ベクトル差分の算出結果と、位相差の算出結果を掛け合わせることによって、それぞれの測定方法のデメリットを打ち消すことができ、上手く血管部の画像を検出することができる。
【0080】
制御部70は、上記の処理を走査ラインごとに繰り返し、
図5に示すように、走査ラインごとに断層血管像を生成する。
【0081】
<血管網の分離>
続いて、血管網の分離について説明する。なお、血管網とは、例えば、正面方向から見た場合に、網目状に走行する毛細血管を示す。ここで、眼底における血管網は、深さ方向に関して複数の層構造からなり、各血管網の深さ位置は、特定の網膜層の位置および病変等によって起因される。
【0082】
(ステップ4:領域分割)
まず制御部70は、2次元血管画像の集合である血管ボリューム画像をXY平面において複数の領域に分割する。以降のステップでは、分割された領域ごとに血管網の分離を行う。これによって、疾患等で血管の分布が局所的に異なる場合でも、領域内の他の血管を検出することで適切に血管網を分離することができる。
【0083】
また、同一の血管網であっても、血管の位置または分布にばらつきがある可能性がある。そのため、ある程度の範囲をもった領域ごとに血管網を分離することによって、ピクセルごとに血管網の深さがばらつくことを低減できる。
【0084】
さらに、ある程度の範囲をもった領域ごとに血管網を分離することによって、血管の存在しない点にも対応できる。
【0085】
さらに、領域ごとに積算した輝度プロファイルを解析することによって、1ピクセルごとに輝度プロファイルを解析する場合に比べて処理時間を短縮できる。
【0086】
分割方法の一つとしては、例えば、
図6(a)に示すような正方形の格子状に画像の領域を分割する方法が考えられる。
図6(a)の例では、8×8の64分割で血管ボリューム画像を分割している。なお、n行m列目の領域をGnmと表す。
図6(b)の例では、同心円状に領域を分割している。中心窩周辺では、同心円状の構造であるため、同心円状に領域を分割してもよく、眼の構造に合わせた血管網の分離が行われる。なお、分割する領域の大きさおよび形状は、自由に設定できてもよい。例えば、
図6の例に限らず、三角形状、その他の多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。例えば、複数の血管が領域内に収まるように、各分割領域の大きさは、少なくとも血管の間隔(例えば、50μm)以上であることが好ましい。
【0087】
(ステップ5:領域ごとにプロファイル生成)
続いて、制御部70は、ステップ4で分割された領域ごとにモーションコントラストの深さ方向の輝度プロファイル(輝度分布)をとる。例えば、
図6(a)の領域G11の内部に存在する各XYピクセルでの深さ方向の輝度プロファイルをXY方向に関して加算する。つまり、分割領域に含まれる各輝度プロファイルにおいて同じ深さ位置に対応する輝度値が加算され、結果として、各XYピクセルでの深さ方向の輝度プロファイルが加算された輝度プロファイルが作成される。次に、制御部は、加算された輝度プロファイルを、深さごとにプロットする。例えば、領域G11における深さ方向の輝度プロファイルは、
図7のようなグラフに表すことができる。
図7のグラフは、縦軸が輝度値、横軸が深さである。
【0088】
(ステップ6:境界値の算出)
続いて、制御部70は、ステップ5において生成した輝度プロファイルから、血管網の境界となる深さを算出する。血管網の境界値を算出する方法としては、例えば、輝度プロファイルの局所最小値を検索することが考えられる。輝度値のプロファイルが局所最小となる場所は、モーションコントラストが小さい場所、つまり、血管が少ない場所である。制御部70は、例えば、輝度プロファイルのグラフの傾きを算出し、傾きがマイナスからプラスに変化する点を局所最小となる場所として検索する。
【0089】
制御部70は、算出された境界値に基づいて血管網の分離を行う。例えば、制御部70は、輝度プロファイルの局所の最小値を境界として血管網の分離を行う。血管網の境界付近では血管が少ないことが多い。従って、局所的に輝度値の小さい場所、つまり血管の少ない場所を境界として血管網を分離する。例えば、
図7に示すように、網膜の表面側から1番深さの浅い位置での局所最小値M1までを第1層(第1の血管網)B1、局所最小値M1から次の局所最小値M2までを第2層(第2の血管網)B2、局所最小値M2から局所最小値M3までを第3層(第3の血管網)B3というように血管網を分離してもよい。なお、本実施例において、第1層B1はSCP(Superficial Capillary Plexus)に相当し、第2層B2はICP(Intermediate Capillary Plexus)に相当し、第3層B3はDCP(Deep Capillary Plexus)に相当する。
【0090】
なお、本実施例では、血管網を3層に分離した場合について説明するが、血管網は2層に分離してもよいし、3層以上に分離してもよい。
【0091】
(ステップ7:En−face画像生成)
続いて、制御部70は、ステップ6で分離された血管網ごとにEn−faceの血管造影画像を取得する。例えば、制御部70は、ステップ6で分離された3層の各血管網に対応する深さの画像をz方向に積算して血管造影画像を生成する。制御部70は上記のような処理を行うことによって
図8に示すような血管造影画像を生成する。
図8は、層ごとに生成されたEn−faceの血管造影画像の一例を示す。
図8(a)は、第1層B1において生成された血管造影画像の一例である。
図8(b)は、第2層B2において生成された血管造影画像の一例である。
図8(c)は、第3層B3において生成された血管造影画像の一例である。制御部70は、生成された画像を表示部に表示させてもよいし、他の装置に転送してもよい。
【0092】
血管の存在する位置は、解剖学的に推定することができるが、疾病等によって本来存在しない位置に血管が存在することがある。このため、解剖学的に推定された領域ごとに区切ってEn−faceの血管造影画像を生成した場合、上記のように疾病等で通常の位置から外れた位置に存在する血管が画像から切り離されてしまう可能性がある。
【0093】
そこで、本実施例では、モーションコントラストによって求めた血管の分布情報から血管網を分離し、分離された血管網ごとに血管造影画像を生成する。これによって、疾病等で通常の位置から外れた位置に存在する血管であっても、血管網の一部として画像化される。したがって、検者は血管網ごとに疾患の状態を観察でき、新たな診断方法の確立に役立つ可能性がある。
【0094】
なお、以上の説明において、輝度プロファイルの局所最小値を境界として血管網の分離を行ったが、これに限らない。例えば、輝度プロファイルの局所最大値を検索し、その情報を用いて血管網の分離を行ってもよい。輝度プロファイルが局所最大となる場所は、モーションコントラストが大きい場所、つまり、血管が多い場所である。制御部70は、例えば、輝度プロファイルのグラフの傾きを算出し、傾きがプラスからマイナスに変化する場所を局所最大となる場所として検索する。そして、例えば検索された場所を中心とした5ピクセルほどの領域を一つの血管網として分離してもよい。
【0095】
なお、血管網の分離をする際は、血管ボリューム画像を2次元フーリエ変換したときの空間周波数の積算を用いてもよい。例えば、血管構造の存在によって空間周波数に高周波成分が増えるため、空間周波数スペクトルの輝度の増減を利用する。
【0096】
例えば、
図9(a)に示すように、ある深さにおけるEn−faceの血管造影画像をフーリエ変換すると、
図9(b)に示すような空間周波数スペクトルが得られる。En−faceの血管造影画像に血管構造が多いと、フーリエ変換後の空間周波数スペクトルに高周波成分が増える。したがって、低周波成分を除去した場合、空間周波数スペクトルの輝度の積算値は増加する。例えば、
図9(c)に示すように、低周波成分を除去した空間周波数スペクトルの深さ方向の輝度プロファイルは、深さによって輝度値が変化する。従って、前述と同様に、
図9(c)の輝度プロファイルが局所最小または局所最大となる深さを算出し、血管網の境界を求めてもよい。なお、空間周波数スペクトルから低周波成分を除去する場合は、例えば、ハイパスフィルタを用いてもよい。例えば、ハイパスフィルタによって閾値以上の周波数成分を取り出してもよい。
【0097】
なお、領域ごとに各血管網の深さを決定した場合、
図10(a)のように、領域の境界で段差ができてしまう。したがって、実際の血管網の形状に近づけるために、各領域の深さの数値を補間してもよい。例えば、
図10(a)に示すように、領域の中央のピクセルを基準として血管網の深さの数値を線形補間してもよい。これによって、領域ごとの段差がなくなり、血管網をより実際に近い形状に分離することができる(
図10(b)参照)。
【0098】
なお、以上の説明において、
図7に示すように、制御部70は第1層から第3層まで血管網を分離する例を説明した。しかしながら、
図11に示すように制御部70は、第1層から第4層まで血管網を分離してもよいし、5層,6層,7層,8層,9層,10層,それ以上の層に分離させてもよい。
図11の例では、網膜の表面側から1番深さの浅い位置での局所最小値M0から次の局所最小値M1までを第1層(第1の血管網)B1、局所最小値M1から次の局所最小値M2までを第2層(第2の血管網)B2、局所最小値M2から局所最小値M3までを第3層(第3の血管網)B3、局所最小値M3から局所最小値M4までを第4層(第4の血管網)B4というように血管網を分離してもよい。もちろん、制御部70は、局所最大値等の他の境界値によって血管網を4層以上に分離させてもよい。
【0099】
なお、
図11の例では、第1層B1はNFL(Nerve Fiber Layer)に相当し、第2層B2はSCP(Superficial Capillary Plexus)に相当し、第3層B3はICP(Intermediate Capillary Plexus)に相当し、第4層B4はDCP(deep capillary plexus)に相当する。なお,第1層B1は、RPC(radial peripapillary capillaries: 放射状乳頭周辺毛細血管)と表現してもよい。
図12は、血管網を4層に分離したときの各血管網のEn−face画像を示しており、(a)は第1層B1、(b)は第2層B2、(c)は第3層B3、(d)は第4層B4における血管網のEn−face画像を示す。
【0100】
以上のように、制御部70は、眼底内において深さ方向に関して異なる位置に存在する各血管による変化を検出することによって被検眼に含まれる4つ以上の血管網を検出し、検出結果に基づいて深さ方向に関して各血管網を4層以上に分離してもよい。