【解決手段】溶接装置5の溶接電源装置1において、電力系統から電力線14を介して供給される電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する電源部11と、電力線14を介して通信信号を送受信する通信部13とを備えるようにした。溶接電源装置1は、同様に電力が供給される電力線64を介して通信を行う溶接管理装置6との間で、電力線を介した通信を行うことができる。これにより、溶接電源装置1と溶接管理装置6とを接続する通信ケーブルを必要としないし、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶接電源装置100と溶接管理装置600とが離れて配置されている場合、長い通信ケーブルで両者の間を接続する必要がある。溶接電源装置100は工場などに配置されているので、作業者に踏まれるなどにより通信ケーブルが断線する場合がある。
【0008】
通信ケーブルを用いずに通信する方法として、無線通信がある。しかしながら、溶接電源装置100と溶接管理装置600とが離れて配置されている場合、通信信号が減衰する上に、両者の間に位置する他の溶接装置500が発するノイズなどの影響で、適切に通信を行えない場合がある。また、溶接電源装置100と溶接管理装置600との間に遮蔽物があると、適切に通信を行えない場合がある。
【0009】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、通信ケーブルによる有線通信や無線通信以外の方法で通信を行う電源装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の側面によって提供される電源装置は、電力系統から電力線を介して供給される電力を加工に適した電力に変換して出力する電源部と、前記電力線を介して通信信号を送受信する通信部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記通信信号は、スペクトル拡散された信号である。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記通信部は、磁気結合を利用して、前記電力線に前記通信信号を重畳させる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記加工はアーク溶接である。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供される溶接装置は、本発明の第1の側面によって提供される電源装置と、電力系統から第2の電力線を介して供給される電力で送給モータを駆動させるワイヤ送給装置とを備え、前記電源装置と前記ワイヤ送給装置とが、前記電力線および前記第2の電力線を介して通信を行う。
【0016】
本発明の第3の側面によって提供される加工装置は、本発明の第1の側面によって提供される電源装置と、電力系統から第3の電力線を介して供給される電力で、マニピュレータを制御する制御部を駆動させるロボットコントローラとを備え、前記電源装置と前記ロボットコントローラとが、前記電力線および前記第3の電力線を介して通信を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の側面によって提供される加工装置は、本発明の第1の側面によって提供される電源装置と、電力系統から第4の電力線を介して供給される電力で駆動されるマニピュレータとを備え、前記電源装置と前記マニピュレータとが、前記電力線および前記第4の電力線を介して通信を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の第5の側面によって提供される加工システムは、本発明の第1の側面によって提供される電源装置と、電力系統から第5の電力線を介して供給される電力を利用し、前記電源装置の管理を行う管理装置とを備え、前記電源装置と前記管理装置とが、前記電力線および前記第5の電力線を介して通信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電源装置は、電力が供給される電力線を介して通信を行う。したがって、電源装置は、同様に電力が供給される電力線を介して通信を行う管理装置との間で、電力線を介した通信を行うことができる。これにより、電源装置と管理装置とを接続する通信ケーブルを必要としないし、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、第1実施形態に係る溶接システムA1の全体構成を説明するための図である。
【0024】
溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、および、パワーケーブル41,42を備えている溶接装置5と、溶接管理装置6とを備えている。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接装置5は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。溶接システムA1は、複数の溶接装置5を備えており、溶接管理装置6は、これら溶接装置5を管理する。なお、溶接管理装置6が管理する溶接装置5は1つであってもよい。
【0025】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための直流電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、電源部11、制御部12、通信部13、および、電力線14を備えている。
【0026】
電源部11は、電力系統から電力線14を介して入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力するものである。電力線14は、図示しない電源プラグを交流200Vのコンセントに差し込むことで、電力系統に接続される。電源部11に入力される三相交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、インバータ回路によって交流電力に変換される。そして、トランスによって降圧(または昇圧)され、整流回路によって直流電力に変換されて出力される。なお、電源部11の構成は、上記したものに限定されない。
【0027】
制御部12は、溶接電源装置1の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部12は、溶接電源装置1から出力される溶接電圧および溶接電流が設定電圧および設定電流になるように、電源部11のインバータ回路を制御する。制御部12は、図示しない設定ボタンの操作に応じて溶接条件の変更を行ったり、図示しない起動ボタンの操作に応じて電源部11を起動させたりなどの制御を行う。また、制御部12は、図示しないセンサによって検出された溶接電圧や溶接電流の検出値を図示しない表示部に表示させたり、異常が発生した場合に図示しない報知部に報知させたりする。
【0028】
また、制御部12は、通信部13から入力される信号に基づいても、溶接条件の変更などを行い、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号を通信部13に出力する。
【0029】
通信部13は、電力線14を介して、溶接管理装置6との間で通信を行うためのものである。通信部13は、溶接管理装置6から受信した信号を復調して、制御部12に出力する。溶接管理装置6から受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号などがある。また、通信部13は、制御部12から入力される信号を変調して、通信信号として溶接管理装置6に送信する。溶接管理装置6に送信する通信信号には、例えば、検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号などがある。なお、溶接管理装置6との間で送受信される通信信号は、上記したものに限定されない。
【0030】
通信部13は、直接スペクトル拡散(Direct Sequence Spread Spectrum:DSSS)通信方式を用いて通信を行う。直接スペクトル拡散通信方式では、送信側は、送信する信号に対して拡散符号による演算を行い、元の信号のスペクトルをより広い帯域に拡散して送信する。受信側は、受信した信号を共通する拡散符号を用いて逆拡散することで、元の信号に戻す。通信信号にノイズが重畳された場合でも、逆拡散によってノイズのスペクトルが拡散されるので、フィルタリングによって元の通信信号を抽出することができる。また、溶接装置5毎に異なる拡散符号を用いていれば、別の溶接装置5と溶接管理装置6との間で送受信される通信信号を受信したとしても、当該通信信号は異なる拡散符号で逆拡散されて、ノイズとして除去される。したがって、高い通信品質で通信を行うことができる。
【0031】
通信部13は、結合回路を備えている。当該結合回路は、通信部13の入出力端に接続されたコイルと、電力線14のうちの2つ電力線(例えば、V相の電力線とW相の電力線)に並列接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部13が出力する通信信号を電力線14に重畳し、また、電力線14に重畳された通信信号を検出する。通信部13は、制御部12より入力される信号に応じてキャリア信号をBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調し、変調信号にスペクトル拡散を行い、アナログ信号に変換して送信する。なお、変調方法はBPSK変調に限られず、ASK変調やFSK変調を行うようにしてもよい。また、スペクトル拡散は直接拡散方式に限られず、周波数ホッピング方式を用いてもよい。なお、本実施形態では、スペクトル拡散を行っているが、これに限定されず、スペクトル拡散を行わないようにしてもよい。また、通信部13は、電力線14に重畳された通信信号を検出し、デジタル信号に変換して、逆拡散およびフィルタリングを行い、復調を行って、制御部12に出力する。溶接電源装置1から溶接管理装置6に送信する信号と、溶接管理装置6から溶接電源装置1に送信する信号とでは、時間をずらして送受信を行う。なお、異なる周波数帯域を利用するようにしてもよい。
【0032】
溶接管理装置6は、各溶接装置5を管理するものである。溶接管理装置6は、各溶接装置5との間で通信を行って、各溶接装置5の稼働状態を管理したり、各溶接装置5に溶接条件を設定したりする。溶接管理装置6は、例えば、パーソナルコンピュータなどに、溶接装置5を管理するためのソフトウエアをインストールしたものである。なお、専用の端末であってもよい。溶接管理装置6は、電源部61、制御部62、通信部63、および、電力線64を備えている。
【0033】
電源部61は、制御部62などに電力を供給するものである。電源部61は、電力系統から電力線64を介して入力される交流電力を、制御部62などに適した直流電力に変換して出力する。電力線64は、図示しない電源プラグを交流100Vのコンセントに差し込むことで、電力系統に接続される。電力線64の2つの電力線は、溶接電源装置1の通信部13が通信に利用する2つの電力線と同じ相(例えば、V相とW相)の電力線に接続される。電源部61は、いわゆるスイッチングレギュレータであって、電源部61に入力される交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路によって降圧(または昇圧)されて出力される。電源部61は、電圧が例えば5Vに制御された直流電力を、制御部62などに供給する。なお、電源部61の構成は、上記したものに限定されない。例えば、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0034】
制御部62は、溶接管理装置6の制御を行うものである。制御部62は、図示しない操作部より入力される溶接条件を変更するための操作信号に応じて、図示しない記憶部に記憶されている溶接条件を変更して、通信部63に出力する。また、制御部62は、通信部63より入力される溶接電圧または溶接電流の検出値を、図示しない表示部に出力して表示させたり、通信部63より入力される異常発生を示す信号に基づいて、図示しない報知部に異常の報知(例えば、スピーカからの警告音による報知や、表示部での表示)をさせたりする。
【0035】
通信部63は、電力線64を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部63は、溶接電源装置1から受信した通信信号を復調して、制御部62に出力する。溶接電源装置1から受信する通信信号には、例えば、溶接電源装置1においてセンサで検出された溶接電圧または溶接電流の検出値や、異常発生を示す信号などがある。また、通信部63は、制御部62から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する通信信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される通信信号は、上記したものに限定されない。通信部63も、通信部13と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0036】
通信部63は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力線64の2つ電力線に並列接続されたコイルと通信部63の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部63が出力する通信信号を電力線64に重畳し、また、電力線64に重畳された通信信号を検出する。
【0037】
本実施形態によると、溶接電源装置1は、電力線14、電力線64、および、これらを接続する電力線を介して、溶接管理装置6と通信を行う。したがって、通信のための通信ケーブルを別途設ける必要がない。また、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。また、溶接電源装置1と溶接管理装置6とが離れて配置される場合でも、それぞれを近くの電源コンセントに接続すればよいだけなので、両者を通信ケーブルで接続する場合のように、通信ケーブルが邪魔になったり、断線によって通信不能になるということが生じない。また、無線通信を行う場合のように、溶接電源装置1と溶接管理装置6とを、間に遮蔽物が入らないように配置する必要がない。
【0038】
なお、本実施形態においては、コイルによる磁気結合を利用して、通信部13(通信部63)が通信信号を電力線14(電力線64)に重畳し、電力線14(電力線64)に重畳された通信信号を検出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、コンデンサによる電界結合を利用するようにしてもよい。また、電力線14(電力線64)に並列に通信信号を入力するのではなく、電力線14(電力線64)に直列に通信信号を入力するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態においては、溶接電源装置1がアークに直流電力を供給する直流電源である場合について説明したが、これに限られない。例えばアルミなどの溶接を行うために、溶接電源装置1を、交流電力を供給する交流電源装置としてもよい。
【0040】
本実施形態においては、溶接装置5が消耗電極式の溶接装置である場合について説明したが、これに限られない。溶接装置5は、非消耗電極式の溶接装置であってもよい、この場合、ワイヤ電極を送給するためのワイヤ送給装置は必要ない。
【0041】
上記第1実施形態においては、溶接電源装置1が溶接管理装置6と通信を行う場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1が他の周辺装置と通信を行う場合にも、本発明を適用することができる。例えば、溶接電源装置1がワイヤ送給装置2と通信を行う場合に、本発明を適用するようにしてもよい。溶接電源装置1がワイヤ送給装置2と通信を行う場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0042】
図2は、第2実施形態に係る溶接システムA2を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る溶接システムA1(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0043】
図2に示す溶接システムA2は、ワイヤ送給装置2に電力系統から電力が供給され、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが電力線を介して通信を行っている点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0044】
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出すものである。また、ワイヤ送給装置2は、図示しないガスボンベのシールドガスを溶接トーチ3の先端に供給する。ワイヤ送給装置2は、電源部21、制御部22、通信部23、送給モータ24、ガス電磁弁25、および、電力線26を備えている。
【0045】
電源部21は、制御部22や送給モータ24、ガス電磁弁25などに電力を供給するものである。電源部21は、電力系統から電力線26を介して入力される交流電力を、制御部22や送給モータ24、ガス電磁弁25などに適した直流電力に変換して出力する。電力線26は、図示しない電源プラグを交流100Vのコンセントに差し込むことで、電力系統に接続される。電力線26の2つの電力線は、溶接電源装置1の通信部13が通信に利用する2つの電力線と同じ相(例えば、V相とW相)の電力線に接続される。電源部21は、いわゆるスイッチングレギュレータであって、電源部21に入力される交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路によって降圧(または昇圧)されて出力される。電源部21は、制御部22、送給モータ24およびガス電磁弁25のそれぞれに適した電圧に変換を行って、直流電力をそれぞれに供給する。なお、電源部21の構成は、上記したものに限定されない。例えば、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0046】
制御部22は、ワイヤ送給装置2の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部22は、溶接トーチ3に設けられている図示しないトーチスイッチより入力される起動のための操作信号に応じて、溶接電源装置1の電源部11を起動するための起動信号を通信部23に出力する。また、制御部22は、通信部23からワイヤ送給指令を入力されている間、送給モータ24にワイヤ電極の送給を行わせて、溶接トーチ3にワイヤ電極を送り出す。また、通信部23からガス供給指令を入力されている間、ガス電磁弁25を開放して、ガスボンベのシールドガスを溶接トーチ3の先端から放出させる。
【0047】
通信部23は、電力線26を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部23は、溶接電源装置1から受信した通信信号を復調して、制御部22に出力する。溶接電源装置1から受信する通信信号には、例えば、ワイヤ送給指令やガス供給指令のための信号などがある。また、通信部23は、制御部22から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する通信信号には、例えば、電源部11の起動を指示する起動信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される通信信号は、上記したものに限定されない。通信部23も、通信部13と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0048】
通信部23は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力線26の2つ電力線に並列接続されたコイルと通信部23の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部23が出力する通信信号を電力線26に重畳し、また、電力線26に重畳された通信信号を検出する。
【0049】
送給モータ24は、溶接トーチ3にワイヤ電極の送給を行うものである。送給モータ24は、制御部22からのワイヤ送給指令に基づいて回転し、送給ローラを回転させて、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出す。
【0050】
ガス電磁弁25は、ガスボンベと溶接トーチ3とを接続するガス配管に設けられており、制御部22からのガス供給指令に基づいて開閉される。制御部22からガス供給指令が入力されている間、ガス電磁弁25は開放され、溶接トーチ3へシールドガスの供給が行われる。一方、制御部22からガス供給指令が入力されていないときは、ガス電磁弁25は閉鎖され、溶接トーチ3へのシールドガスの供給が停止される。
【0051】
第2実施形態によると、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが、電力線14、電力線26、および、これらを接続する電力線を介して通信を行う。したがって、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間に、通信のための通信ケーブルを別途設ける必要がない。また、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが離れて配置される場合でも、それぞれを近くの電源コンセントに接続すればよいだけなので、両者を通信ケーブルで接続する場合のように、通信ケーブルが邪魔になったり、断線によって通信不能になるということが生じない。また、無線通信を行う場合のように、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを、間に遮蔽物が入らないように配置する必要がない。
【0052】
次に、ロボットを利用して溶接を行う溶接装置において、溶接電源装置1がロボットコントローラと通信を行う場合を、第3実施形態として、以下に説明する。
【0053】
図3は、第3実施形態に係る溶接システムA3を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る溶接システムA1(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0054】
図3に示す溶接システムA3は、溶接トーチ3がマニピュレータ8の先端に取り付けられており、マニピュレータ8を制御するロボットコントローラ7と溶接電源装置1とが電力線を介して通信を行っている点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。マニピュレータ8はロボットコントローラ7からの指令に応じて溶接トーチ3を移動させ、溶接電源装置1はロボットコントローラ7からの指令に応じて溶接トーチ3に電力を供給する。つまり、溶接システムA3は、作業者が溶接トーチを移動させて溶接を行う半自動の溶接システムではなく、ロボットによる全自動の溶接システムである。
【0055】
ロボットコントローラ7は、マニピュレータ8および溶接電源装置1を制御するものであり、マニピュレータ8および溶接電源装置1に各種指令信号を出力する。ロボットコントローラ7は、電源部71、制御部72、通信部73、および、電力線74を備えている。ロボットコントローラ7は、マニピュレータ8に近接して配置されており、通信線を介してマニピュレータ8に操作指令信号を出力する。マニピュレータ8は、入力される操作指令信号に応じて、図示しない各軸の駆動モータを回転することで、溶接トーチ3を移動させる。また、マニピュレータ8の各軸の駆動モータに設けられた図示しないエンコーダは、位置情報を検出して、通信線を介してロボットコントローラ7に出力する。ロボットコントローラ7は、入力される位置情報に応じて、各駆動モータの回転を調整する。また、ロボットコントローラ7は、電力線74を介して溶接電源装置1に起動信号や溶接条件を設定するための信号を出力して、溶接電源装置1を制御する。
【0056】
電源部71は、制御部72などに電力を供給するものである。電源部71は、電力系統から電力線74を介して入力される交流電力を、制御部72などに適した直流電力に変換して出力する。電力線74は、図示しない電源プラグを交流100Vのコンセントに差し込むことで、電力系統に接続される。電力線74の2つの電力線は、溶接電源装置1の通信部13が通信に利用する2つの電力線と同じ相(例えば、V相とW相)の電力線に接続される。電源部71は、いわゆるスイッチングレギュレータであって、電源部71に入力される交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路によって降圧(または昇圧)されて出力される。電源部71は、制御部72に適した電圧に変換を行って、直流電力を供給する。なお、電源部71の構成は、上記したものに限定されない。例えば、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0057】
制御部72は、ロボットコントローラ7の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部72は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムに応じて、マニピュレータ8および溶接電源装置1を制御する。制御部72は、通信線を介して、マニピュレータ8に操作指令信号を出力し、マニピュレータ8から位置情報を入力される。また、制御部72は、溶接電源装置1の電源部11を起動するための起動信号や、溶接条件を設定するための信号を通信部73に出力する。また、制御部72は、通信部73より溶接電圧または溶接電流の検出値を入力される。
【0058】
通信部73は、電力線74を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部73は、溶接電源装置1から受信した通信信号を復調して、制御部72に出力する。溶接電源装置1から受信する通信信号には、例えば、溶接電圧または溶接電流の検出値などがある。また、通信部73は、制御部72から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する通信信号には、例えば、電源部11の起動を指示する起動信号や、溶接条件を設定するための信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される通信信号は、上記したものに限定されない。通信部73も、通信部13と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0059】
通信部73は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力線74の2つ電力線に並列接続されたコイルと通信部73の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部73が出力する通信信号を電力線74に重畳し、また、電力線74に重畳された通信信号を検出する。
【0060】
第3実施形態によると、溶接電源装置1とロボットコントローラ7とが、電力線14、電力線74、および、これらを接続する電力線を介して通信を行う。したがって、溶接電源装置1とロボットコントローラ7との間に、通信のための通信ケーブルを別途設ける必要がない。また、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。また、溶接電源装置1とロボットコントローラ7とが離れて配置される場合でも、それぞれを近くの電源コンセントに接続すればよいだけなので、両者を通信ケーブルで接続する場合のように、通信ケーブルが邪魔になったり、断線によって通信不能になるということが生じない。また、無線通信を行う場合のように、溶接電源装置1とロボットコントローラ7とを、間に遮蔽物が入らないように配置する必要がない。
【0061】
次に、溶接電源装置1がマニピュレータ8と通信を行う場合を、第4実施形態として、以下に説明する。
【0062】
図4は、第4実施形態に係る溶接システムA4を説明するための図である。同図において、第3実施形態に係る溶接システムA3(
図3参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0063】
図4に示す溶接システムA4は、マニピュレータ8と溶接電源装置1とが電力線を介して通信を行っている点で、第3実施形態に係る溶接システムA3と異なる。
【0064】
マニピュレータ8は、電源部81、制御部82、通信部83、駆動モータ84、および、電力線85を備えている。
【0065】
電源部81は、制御部82および駆動モータ84などに電力を供給するものである。電源部81は、電力系統から電力線85を介して入力される交流電力を、制御部82および駆動モータ84などに適した直流電力に変換して出力する。電力線85は、図示しない電源プラグを交流100Vのコンセントに差し込むことで、電力系統に接続される。電力線85の2つの電力線は、溶接電源装置1の通信部13が通信に利用する2つの電力線と同じ相(例えば、V相とW相)の電力線に接続される。電源部81は、いわゆるスイッチングレギュレータであって、電源部81に入力される交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ回路によって降圧(または昇圧)されて出力される。電源部81は、制御部82および駆動モータ84のそれぞれに適した電圧に変換を行って、直流電力をそれぞれに供給する。なお、電源部81の構成は、上記したものに限定されない。例えば、電力系統から入力される交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0066】
制御部82は、マニピュレータ8の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部82は、溶接電源装置1に送信する信号を通信部83に出力する。また、制御部82は、通信部83が受信した信号を入力される。
【0067】
各軸の駆動モータ84は、通信線を介してロボットコントローラ7より入力される操作指令信号に応じて回転することで、溶接トーチ3を移動させる。また、各軸の駆動モータ84に設けられた図示しないエンコーダは、位置情報を検出して、通信線を介してロボットコントローラ7に出力する。
【0068】
通信部83は、電力線85を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。通信部83は、溶接電源装置1から受信した通信信号を復調して、制御部82に出力する。また、通信部83は、制御部82から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置1に送信する。通信部83も、通信部13と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。
【0069】
通信部83は、結合回路を備えている。当該結合回路は、電力線85の2つ電力線に並列接続されたコイルと通信部83の入出力端に接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えており、通信部83が出力する通信信号を電力線85に重畳し、また、電力線85に重畳された通信信号を検出する。
【0070】
第4実施形態によると、溶接電源装置1とマニピュレータ8とが、電力線14、電力線85、および、これらを接続する電力線を介して通信を行う。したがって、溶接電源装置1とマニピュレータ8との間に、通信のための通信ケーブルを別途設ける必要がない。また、無線通信を行う場合より、通信信号の減衰やノイズの影響を緩和することができる。また、溶接電源装置1とマニピュレータ8とが離れて配置される場合でも、それぞれを近くの電源コンセントに接続すればよいだけなので、両者を通信ケーブルで接続する場合のように、通信ケーブルが邪魔になったり、断線によって通信不能になるということが生じない。また、無線通信を行う場合のように、溶接電源装置1とマニピュレータ8とを、間に遮蔽物が入らないように配置する必要がない。
【0071】
上記第1ないし第4実施形態においては、本発明をアーク溶接システムに適用した場合について説明したが、これに限られない。例えば、アーク溶接以外の溶接(例えば、抵抗溶接など)を行う溶接システムにも適用することができる。また、溶接以外の加工を行う加工システムにも適用することができる。例えば、トーチの先端にプラズマを発生させて被加工物Wを切断するプラズマ切断システムや、トーチの先端に発生させたアークの熱と圧縮空気の噴射を利用して溝掘りを行うエアアークガウジングシステムなどにおいても、本発明を適用することができる。すなわち、各種加工装置において電力を供給する電源装置が、離れて配置される管理装置やその他の周辺装置と通信を行う場合に、本発明を適用することができる。
【0072】
本発明に係る電源装置、加工装置、溶接装置および加工システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電源装置、加工装置、溶接装置および加工システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。