【解決手段】覆工空間S1、又は、既設のトンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2を検知対象領域Sとし、検知対象領域Sに充填されるセメント系の充填物Xの充填状況を検知する充填状況検知装置100であって、光源部101と、検知対象領域S内に一端部側102aが延設され、光源部101からの光を検知対象領域S内に導く第1導光部材102と、検知対象領域S内に一端部側103aが延設され、検知対象領域Sからの反射光を型枠3の径方向内方又はトンネル構造体11の径方向内方へ導く第2導光部材103と、を備え、第2導光部材103によって導かれる反射光を受光して得られる受光情報に基づいて、充填物Xの充填状況を検知可能に構成される。
掘削された地盤の内周面と当該内周面に相対させた型枠との間の覆工空間、又は、既設のトンネル構造体の径方向外方のトンネル外方領域を検知対象領域とし、当該検知対象領域に充填されるセメント系の充填物の充填状況を検知する充填状況検知装置であって、
光を発生させる光源部と、
前記検知対象領域内に一端部側が延設され、前記光源部からの光を前記検知対象領域内に導く第1導光部材と、
前記検知対象領域内に一端部側が延設され、当該検知対象領域からの反射光を前記型枠の径方向内方又は前記トンネル構造体の径方向内方へ導く第2導光部材と、
を備え、前記第2導光部材によって導かれる前記反射光を受光して得られる受光情報に基づいて、前記充填物の充填状況を検知可能に構成される、充填状況検知装置。
前記第1導光部材及び前記第2導光部材は、それぞれ、光路となるコアと、当該コアを被覆するクラッドとを有し、前記一端部側が前記検知対象領域内にて地盤上下方向に延設され、
前記第1導光部材及び前記第2導光部材のいずれか一方は、前記一端部側にて、延伸方向に間隔を空けた複数個所で、径方向外方から前記クラッドを貫通して前記コアに至る開口部を有して形成される、請求項2に記載の充填状況検知装置。
前記第1導光部材の前記検知対象領域内への光の出射端と、前記第2導光部材の前記検知対象領域からの反射光の入射端は、地盤下方に向けて配置される、請求項9に記載の充填状況検知装置。
前記第1導光部材の前記検知対象領域内への光の出射端と、前記第2導光部材の前記検知対象領域からの反射光の入射端と、互いに離間して対向配置される、請求項1〜8に記載の充填状況検知装置。
前記第1導光部材及び前記第2導光部材の一端部側は、前記型枠の天端部、又は、前記トンネル構造体の天端部を貫通して、前記検知対象領域内に延設される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の充填状況検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る充填状況検知装置の実施形態について説明する。本発明に係る充填状況検知装置は、トンネルの新設時とトンネルの補修時にそれぞれ用いることができる。まず、トンネルの新設時に適用する場合について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による充填状況検知装置100の概略構成を示す図であり、山岳トンネルの覆工コンクリートの構築に適用した場合を示している。尚、
図1は、切羽側(妻側)から見たトンネルの横断面図でもある。
図2は、充填状況検知装置100の概略ブロック図を示すと共に、
図1に示すA部の拡大断面図を示す概念図である。
図3は、後述する第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103の一端部側の拡大断面図であり、
図4は、
図3に示すB―B断面図である。
【0013】
本実施形態のトンネルは山岳トンネルであり、ブレーカーや自由断面掘削機や発破等により掘削されて形成された地盤の内周面1には、吹き付けコンクリート2が吹き付けられ一次支保されている。そして、この内周面1(詳しくは、吹き付けコンクリート2)に相対させてアーチ状の外周面を有する型枠3がセットされ、内周面1と型枠3との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間S1が形成されている。型枠3のセットには、トンネル底面4にトンネル軸方向に沿って敷設されたレール5上を移動可能なガントリー車7が用いられる。
【0014】
充填状況検知装置100は、
図1及び
図2に示すように、掘削された地盤の内周面1とこの内周面1に相対させた型枠3との間の覆工空間S1を検知対象領域Sとし、この検知対象領域S(S1)に充填されるセメント系の充填物Xの充填状況を検知するものであり、光源部101(
図2参照)と、光ファイバーからなる第1導光部材102と、同じく光ファイバーからなる第2導光部材103と、装置本体部104とを備えて構成される。なお、本実施形態において、上記第1導光部材102、第2導光部材103を、それぞれ、第1光ファイバー102、第2光ファイバー103と言う。
本実施形態において、充填物Xはコンクリートである。なお、後述するように、覆工空間S1にコンクリートが打設されて完成した覆工コンクリートと、吹き付けコンクリート2とがトンネル構造体となり、このトンネル構造体の径方向外方の領域、つまり、吹き付けコンクリート2の径方向外方の領域をトンネル外方領域S2と呼ぶ。
【0015】
前記光源部101は、
図2に示すように、光を発生させるものであり、例えば、発光ダイオード(LED)等を用いて構成され、装置本体部104内に内蔵されている。光源部101は、例えば、連続的に光を発生させる。
【0016】
前記第1光ファイバー(第1導光部材)102は、光源部101からの光を検知対象領域S(S1)内に導くものであり、その一端部側102aが検知対象領域S内に延設され、他端部102bが光源部101に接続されている。第1光ファイバー102の後述する光出射端102eから出射された光は、検知対象領域S内で反射して、その一部が第2光ファイバー103の後述する光入射端103eに入射する。
【0017】
前記第2光ファイバー(第2導光部材)103は、検知対象領域Sからの反射光を型枠3の径方向内方のトンネル内部空間S3へ導くものであり、その一端部側103aが検知対象領域S内に延設され、他端部103bが後述する受光部104aに接続されている。
【0018】
第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、例えば、
図3及び
図4に示すように、それぞれ、光路となるコア102c,103cと、コア102c,103cを被覆するクラッド102d,103dとを有して形成され、
図1及び
図2に示すように、一端部側102a,103aが検知対象領域S内にて地盤上下(トンネル上下)方向に直線的に延設されている。
【0019】
また、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103としては、例えば、コア102c,103c及びクラッド102d,103dがプラスチック製の安価な光ファイバーを適宜長さに切断して用いる。第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、それぞれの両端部においてコア102c,103cが外部に露出し、この露出部が光出射端及び光入射端になる。第1光ファイバー102の一端部側102aの先端が光の出射端(以下において「光出射端」と言う)102eとなり、第2光ファイバー103の一端部側103aの先端が反射光の入射端(以下において「光入射端」と言う)103eとなる。また、図示を省略するが、各クラッド102d,103dは合成樹脂等の被覆材により被覆されている。
本実施形態において、第1光ファイバー102の光出射端102eと、第2光ファイバー103の光入射端103eは、いずれも地盤上方に向けて配置される。
【0020】
また、本実施形態においては、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、予め、互いに隣接して平行に延伸し、一体形成され、光ファイバー対110(102,103)を構成する。この光ファイバー対110の一端部側102a,103aが、例えば、
図1及び
図2に示すように、棒鋼6に支持されて検知対象領域S内に配置される。
なお、本実施形態において、上記光ファイバー対110が本発明に係る「導光部材対」に相当する。この光ファイバー対110の検知対象領域S内への配置位置及び配置方法については、後に詳述する。
【0021】
また、本実施形態においては、第1光ファイバー102は、
図3に示すように、その一端部側102aにて、延伸方向に間隔を空けた複数個所で、径方向外方からクラッド102d及び被覆材(図示省略)を貫通してコア102cに至る開口部102fを有して形成される。各開口部102fは、開口面積が例えば略同一になるように構成されている。
クラッド102dに、略同一の開口面積の開口を形成することが困難である場合がある。この場合、例えば、略同一の開口面積の貫通孔が開口形成されたシールを複数枚用意し、クラッド102d及び被覆材に、目標の開口面積より大きな開口のスリットを適宜間隔で形成し、そのスリットを覆うように、適宜間隔でシールを張り付ける。これにより、適宜間隔で、開口面積が同一の開口部102fを容易に形成することができる。
【0022】
ここで、
図2に示すように、コンクリートが光ファイバー対110の周辺に到達しておらず、光ファイバー対110の周りが空洞である場合、光源部101から第1光ファーバー101のコア102cを介して導かれる光の一部は、各開口部102fを介して外方に漏れる。このとき、光出射端102eからの出射光の光量は、光源部101から出射された光の光量より減少する。一方、後述する
図8〜
図10に示すように、第1光ファイバー102の周りに、コンクリート等の充填物Xが充填され、充填物Xの打ち上がり高さが高くなって、下の開口部102fから順に遮蔽されるにつれ、光出射端102eからの出射光の光量は段階的に増加する。そして、光出射端102eからの光の光量は、一番上の開口部102fが遮蔽されたところで最大となる。さらに、充填物Xの打ち上がり高さが高くなると、光出射端102eが遮蔽されて、光出射端102eから光は出射されなくなる。
【0023】
図2に戻って、前記装置本体部104は、第2光ファイバー103によって導かれる反射光を受光して得られる受光情報に基づいて、充填物Xとしてのコンクリートの充填状況を検知するものであり、受光部104aと、記録部104bと、情報処理部104cとを備えて構成される。
前記受光部104aは、第2光ファイバイー103によって導かれる反射光を受光して、その受光情報を得るものであり、取得した受光情報に対応する信号を連続的に発生させて、記録部104bに出力可能に構成されるセンサユニットである。
前記記憶部104bは、受光部104aから連続的に出力される信号情報を記憶するものであり、例えば、一般的なデータロガーを用いて構成される。
前記情報処理部104cは、記憶部104bに記憶された受光情報に対応する信号情報に基づいて、充填物Xの充填状況に関するデータを演算するものであり、例えば、一般的なパーソナルコンピュータを用いて構成される。
【0024】
本実施形態において、前記受光情報は、第2光ファイバー103からの反射光の強度であり、前記充填状況として、反射光の強度変化に基づいて検知対象領域S(S1)へ充填される充填物Xの充填高さを検知する。具体的には、充填高さとして、覆工空間S1へ打設されるコンクリートの打設高さを検知する。
より具体的には、例えば、受光部104aにより反射光の受光強度に対応する信号を記憶部104bに出力し、情報処理部104cにより記憶部104bに記憶された受光強度に対応する信号情報に基づいて、コンクリートの打設高さを演算する。このようにして、充填状況として打設高さ(充填高さ)を検知する。この打設高さのデータは、例えば、パーソナルコンピュータからなる情報処理部104cのディスプレイ部に表示される。
なお、充填高さの検知動作の詳細については、後に説明する。
【0025】
図5は、
図1に示すC−C矢視断面図である。この
図5において、後述するガントリー車7は図の簡略化のため省略している。
図6は、
図1に示すD矢視方向から見た型枠3の平面図である。
前記型枠3は、「覆工セントル」とも呼ばれ、
図5及び
図6に示すように、トンネル軸(図中一点鎖線で示す)方向に所定幅(例えば1.5m)を有する型枠部材をトンネル軸方向に複数(例えば7個)連結し、1スパン(例えば10.5m)として構成される。尚、各型枠部材は、
図1に示すように周方向に適宜分割されており、組み合わせて使用される。
図6では、図の簡略化のため、型枠3の周方向の分割境界については、図示省略している。
【0026】
図5及び6に示すように、トンネル軸方向に例えば7個の型枠部材3A〜3Gにより1スパンの型枠3が構成され、内周面1と1スパンの型枠3(3A〜3G)との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間S1が形成される。そして、この覆工空間S1は、
図1及び
図6に示すように、左右のトンネル側壁部(トンネル側壁部の覆工空間)S1a、S1aと、これに続く左右のアーチ形状部(アーチ形状部の覆工空間)S1b、S1bと、中央のトンネル冠部(トンネル冠部の覆工空間)S1cと、に大別することができる。覆工空間S1のうち、左右のトンネル側壁部S1a、S1a及びアーチ形状部S1b、S1bへのコンクリートの打設は、ガントリー車7に装備されているコンクリートの打設管8を、左右の型枠3のトンネル軸方向中央で適宜高さにそれぞれ設けられた検査窓(図示せず)から覆工空間S1(S1a、S1b)に挿入して、コンクリートを圧送することにより行われる。その後、トンネル冠部の覆工空間S1cに対応する型枠3の天端部3aの適宜位置に適宜個数(
図6では11個)形成された打設孔3b(
図6参照)にコンクリートの打設管8(
図1及び
図6参照)を適宜接続してコンクリートを圧送し、トンネル冠部S1cへのコンクリート打設が行われる。また、後述するように、光ファイバー対110の一端部側102a,103aを検知対象領域S(S1)に配置するため貫通孔3cが、型枠3の天端部3aのトンネル軸線に沿う適宜位置に適宜個数(
図5及び
図6では、3個)形成されている。打設するコンクリートとしては、流動性の高い例えば中流動コンクリートを用いてもよい。これにより、覆工空間S1内へのコンクリートの充填性を向上させることができると共に、覆工コンクリートの表面の仕上がりを向上させることができる。なお、上記検査窓、打設孔3b及び貫通孔3cの位置及び個数は、適宜決めることができる。
また、
図5に示すように、覆工空間S1のトンネル軸方向の坑口側端部(ラップ側)は、先行の覆工コンクリート9により塞がれている。他方、覆工空間S1(S1a,S1b,S1c)のトンネル軸方向の切羽側端部(妻側)は、閉塞用の妻型枠10により塞がれている。
【0027】
前記ガントリー車7は、トンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車であり、トンネル軸方向に所定の長さを有し、
図1に示すように、その前後端の脚部71の下端には、レール5上を移動する自走装置72が設けられている。また、ガントリー車7には、ジャッキ73〜76が取付けられている。周方向に分割された各型枠部材3A〜3Gは、これら各ジャッキ73〜76を介して、ガントリー車7に連結固定されている。
【0028】
ここで、覆工空間S1へのコンクリートの打設は、トンネル側壁部の覆工空間S1a、S1a、アーチ形状部の覆工空間S1b、S1b、トンネル冠部の覆工空間S1cの順に行われる。このうち、S1a、S1a〜S1b、S1bへの打設は、点検窓等により適宜その充填状況を目視等により確認することができる。しかし、型枠3の天端部3aには点検窓等の大きな開口を形成することができないため、トンネル冠部の覆工空間S1cにおける充填状況は、一般的に、打設管8が接続されている打設孔3bに隣接する打設孔3bからコンクリートが漏れ出してくることを確認することにより行われている。そのため、このトンネル冠部の覆工空間S1cにおける充填物の充填状況を適切に把握することが困難である。
【0029】
次に、光ファイバー対110(102,103)の検知対象領域S内への配置位置及び配置方法について詳述する。
具体的には、光ファイバー対110の一端部側102a,103aは、型枠3の天端部3aを貫通して、検知対象領域S内にて地盤上下方向に延設されるように配置される。
より具体的には、光ファイバー対110の一端部側102a,103aは、例えば、ビニールテープ等により棒鋼6に沿わせて、棒鋼6と伴に結束されている。詳しくは、
図2に示すように、棒鋼6の先端6aが光出射端102e及び光入射端103eよりわずかに突出するように、結束されている。このように結束された光ファイバー対110及び棒鋼6が、型枠3の天端部3a等に形成される貫通孔3cを介して検知対象領域S内に配置される。この際、棒鋼6の先端6aが吹き付けコンクリート2に突き当たるまで、光ファイバー対110及び棒鋼6が挿入される。また、棒鋼6及び光ファイバー対110と貫通孔3cの内周面との間には密閉部材3d(
図2及び
図5参照)が設けられる。
【0030】
ここで、前述した情報処理部104cには、例えば、棒鋼6を吹き付けコンクリート2に突き当てた時の、各開口部102fのトンネル底面4からの高さのデータと、受光強度のデータとが予め関連付けられたデータテーブルが予め記憶されている。情報処理部104cは、記憶部104bに記憶された受光強度の情報を読み出して得た受光強度のデータが予め定める閾値未満の場合は、コンクリートの打設高さは型枠3の天端部3aの高さ未満であるという検知結果を得る。この閾値は、例えば、第1光ファイバー102の光出射端102e及び開口部102fが全て開口している時に、受光部104aで得られる受光強度を考慮して予め設定される。そして、情報処理部104cは、記憶部104bからの受光強度のデータが閾値以上である場合は、そのデータに一番近い受光強度のデータを、データテーブルの中から選択し、コンクリートの打設高さの検知結果(演算結果)を得る。
【0031】
次に、本実施形態に係る充填状況検知装置100の充填高さの検知動作を、
図2及び
図7〜
図10を参照して説明する。以下では、覆工空間S1のうち左右のトンネル側壁部の覆工空間S1a、S1aと、これに続く左右のアーチ形状部の覆工空間S1b、S1bには、既にコンクリートが充填されており、これに続いて、
図7に示すように、坑口側のトンネル冠部の覆工空間S1cの一部にコンクリートが打設され始めているものとして説明する。
図8〜
図10は、充填高さの検知動作を説明するための概念図であり、コンクリートの打ち上がり高さが徐々に高くなっている状況を示している。なお、
図8〜
図10においては、棒鋼6は図の明瞭化のため図示を省略した。
【0032】
まず、
図2及び
図7に示すように、コンクリートが光ファイバー対110の周辺に到達しておらず、光ファイバー対110の周りが空洞である場合、光源部101から第1光ファーバー102を介して導かれる光の一部は、各開口部102fを介して外方に漏れる。このとき、光出射端102eからの出射光の光量は、光源部101から出射された光の光量より減少する。そして、第1光ファイバー102の光出射端102eから出射された光は、吹き付けコンクリート2で反射する等して、第2光ファイバー103の光入射端103eからコア103cを介して伝播し、受光部104で受光される。受光部104aは、反射光を受光し、その受光強度に対応する信号を発生させ、記録部104bに出力する。記憶部104bは、受光部104aからの受光強度のデータを記憶する。そして、情報処理部104cは、記憶部104bに記憶された受光強度のデータを読み出し、その受光強度が閾値未満であると判定し、コンクリートの打設高さは型枠3の天端部3aの高さ未満であるという検知結果を得る。この充填高さの検知結果は、情報処理部104のディスプレイ部に表示される。
【0033】
そして、
図8及び
図9に示すように、第1光ファイバー102の周りに、コンクリートが充填され、充填物Xの打ち上がり高さが高くなって、下の開口部102fから順に遮蔽されるにつれ、光出射端102eからの出射光の光量は段階的に増加する。このとき、受光部104aで得られる受光強度は、開口部102fが遮蔽される毎に、段階的に増加する。そして、情報処理部104は、記憶部104bからの受光強度のデータが閾値以上であると判定し、そのデータに一番近い受光強度のデータを、データテーブルの中から都度選択し、コンクリートの打設高さの検知結果(演算結果)を得る。この充填高さの検知結果は、情報処理部104のディスプレイ部に連続的に表示される。これにより、作業者等は、コンクリートの打設高さをリアルタイムにモニタリングすることができる。
作業者等は、情報処理部104のディスプレイ部に表示される充填高さの検知結果を確認して、コンクリートの充填状況が良好であることを確認する。この充填状況確認後、光ファイバー対110を棒鋼6と伴に、型枠3の内周面の位置で切断し、光ファイバー対110の一端部側102a,103aだけ覆工コンクリート(冠部の覆工空間S1c)内に残置させる。光ファイバー対110の残りの部分は、別の貫通孔3cからのコンクリートの打設高さの検知等に再利用される。なお、コンクリートの打設は、一箇所の打設孔3bからだけでなく、同時に、複数の打設孔3bから行ってもよい。
【0034】
かかる本実施形態による充填状況検知装置100によれば、掘削された地盤の内周面1とこの内周面1に相対させた型枠3との間の覆工空間S1を検知対象領域Sとし、一端部側102a,103aが検知対象領域S内に延設される第1光ファイバー102によって、光源部101からの光を検知対象領域Sに導き、一端部側102a,103aが検知対象領域S内に延設される第2光ファイバー103によって、検知対象領域Sからの反射光を型枠3の径方向内方へ導き、第2光ファイバー103からの反射光の受光情報に基づいて、充填物Xの充填状況を検知可能に構成される。
したがって、セメント系の充填物Xの充填が完了し、充填物Xが固化しても、単に、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103のうち検知対象領域S内に配置させた一端部側102a,103aが検知対象領域S内に残置されるだけである。このため、各光ファイバー102,103を残置部分の境界位置(例えば、型枠3の内周面)で切断すれば、各光ファイバー102,103の残置部分以外の残りの部分については、別の検知対象領域用等に再利用することができる。その結果、圧力センサや振動検知式のセンサを検知対象領域内に残置させ、その再利用ができなかった従来技術と比較して、検知対象領域に残置させる部分の費用を抑制することができる。
また、第1ファイバー102により検知対象領域S内に光を導き、その反射光を第2光ファイバー103によりトンネル構造体11の径方向内方に導いて得られる受光情報に基づいて充填状況を検知する構成、つまり、単に、光を用いて充填状況を検知する構成であるため、検知対象領域Sには電気的な信号配線の敷設をする必要はない。このため、設置作業を簡素化することができる。
このようにして、検知対象領域に残置させる部分の費用を抑制しつつ、セメント系の充填物の充填状況を検知可能であると共に、容易に設置することができる充填状況検知装置を提供することができる。
【0035】
本実施形態において、第1光ファイバー102の一端部側102aにて、延伸方向に間隔を空けた複数個所で、径方向外方からクラッド102dを貫通してコア102cに至る開口部102fを形成する構成とし、受光強度が段階的に変化することを利用して充填物Xとしてのコンクリートの打設高さを検知する構成とした。このため、センサとして光ファイバーを一対のみ必要とするだけであり、打設高さを検知するために圧力センサを複数必要とした従来の構成と比較して、簡易かつ安価な構成で打設高さを検知することができる。また、開口部102fの形成間隔を緻密にすることで、圧力センサと比較して、打設高さの検知間隔(高さピッチ)を向上させることができる。なお、本実施形態においては、開口部を第1光ファイバー102に設けるものとして説明したが、これに限らず、第2光ファイバー103に設けてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、検知対象領域Sは覆工空間S1であり、充填物Xはコンクリートであり、受光情報は、第2光ファイバー103からの反射光の強度であり、充填状況として、反射光の強度変化に基づいて覆工空間S1へ充填されるコンクリートの打設高さを検知する構成とした。これにより、トンネル新設時におけるコンクリート打設高さを容易に、且つ、精度よく把握することができ、施工管理の効率向上を図ることができる。
【0037】
そして、本実施形態において、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103の一端部側102a,103aは、型枠3の天端部3aを貫通して、検知対象領域S内に配置される構成とした。これにより、従来、充填状況を適切に把握することが困難であったトンネル冠部の覆工空間S1cにおけるコンクリートの充填状況を適切に把握することができる。
【0038】
そして、本実施形態において、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、互いに隣接して一体形成され、光ファイバー対110を構成する場合で説明した。これにより、単に、光ファイバー対110を棒鋼6に結束させるだけで、各光ファイバー102,103を検知対象領域S内に容易に配置することができる。
また、棒鋼6の先端6aを光ファイバー対110の光出射端102e及び光入射端103eよりわずかに突出させて結束させる構成とした。これにより、光ファイバー対110の光出射端102e及び光入射端103eと吹き付けコンクリート2との間にはわずかな隙間を確保して、光を出射すると共に反射光を入射することができ、且つ、光出射端102e及び光入射端103eを、検知対象領域Sの中で可能な限り上方に配置させることができる。したがって、トンネル冠部の覆工空間S1cの充填状況をより精度よく把握することができ、より適切にコンクリートを充填することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、トンネルの新設時の施工管理に適用する場合について説明したが、これに限らず、以下の第2実施形態に詳述するように、トンネルの補修時の施工管理に適用してもよい。
【0040】
図11は、本発明の第2実施形態による充填状況検知装置100の概略構成を示す図である。なお、
図11は、覆工コンクリート等からなるトンネル構造体11の横断面図、つまり、既設のトンネルの横断面図でもある。第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。また、充填高さの検知動作についても第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0041】
図11に示すように、既設のトンネルのトンネル構造体11と地山との間に、地山の変動や地下水の流れ等により、空洞S4が生じている場合がある。つまり、トンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2に空洞S4がトンネル構造体11の天端部11aを覆うように広がって生じている場合がある。なお、
図11では、空洞S4の広がりを明瞭にするため、空洞S4の大きさは、誇張して示されている。
【0042】
本実施形態において、充填状況検知装置100は、既設のトンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2を検知対象領域Sとし、検知対象領域Sに充填されるセメント系の充填物Xの充填状況を検知するように構成されている。
具体的には、検知対象領域Sはトンネル外方領域S2に生じた空洞S4であり、充填物Xはグラウト材であり、充填状況として、トンネル外方領域S2の空洞S4内へ注入されるグラウト材の注入高さを検知可能に構成されている。グラウト材は、例えば、モルタルやセメントミルク等である。
【0043】
図12に示すように、トンネル構造体11の天端部11aの周方向及びトンネル軸線方向にそれぞれ離間する適宜位置に適宜個数形成された注入孔11bにグラウト材の注入管8’を適宜接続してグラウト材を圧送し、空洞S4へのグラウト材の注入が行われる。また、光ファイバー対110の一端部側102a,103aを検知対象領域S(S4)に配置するため貫通孔11cが、天端部11aのトンネル軸線に沿う適宜位置に適宜個数形成されている。
【0044】
第2光ファイバー103は、検知対象領域Sからの反射光をトンネル構造体11の径方向内方へ導くように構成される。
【0045】
また、光ファイバー対110(102,103)の一端部側102a,103aは、トンネル構造体11の天端部11aを貫通して、検知対象領域S内にて地盤上下方向に延設されるように配置される。
より具体的には、光ファイバー対110の一端部側102a,103aは、棒鋼6と伴に結束され、トンネル構造体11の天端部11aに形成される貫通孔11cを介して検知対象領域S(S4)内に配置される。この際、棒鋼6の先端6aが地山に突き当たるまで、光ファイバー対110及び棒鋼6が挿入される。また、光ファイバー対110及び棒鋼6と貫通孔11cの内周面との間には密閉部材(図示省略)が設けられる。
【0046】
かかる本実施形態による充填状況検知装置100によれば、トンネル補修時において、検知対象領域Sに残置させる部分の費用を抑制しつつ、セメント系の充填物の充填状況を検知可能な充填状況検知装置を提供することができる。また、既設のトンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2に、空洞S4が生じている可能性があり補修が必要な場合に、グラウトの注入高さを、容易に、且つ、精度よく把握することができ、補修施工の管理の効率向上を図ることができる。
また、光ファイバー対110の一端部側102a,103aを、トンネル構造体11の天端部11aを貫通して、検知対象領域S内に配置される構成とした。これにより、従来、充填状況を適切に把握することが困難であったトンネル構造体11の天端部11a上方の空洞S4部分におけるグラウト材の充填状況を適切に把握することができる。
【0047】
ここで、
図11では、光ファイバー対110(102,103)は、一対のみ設ける場合で説明したが、複数対備え、
図13に示すように、検知対象領域S内の互いに離間した複数の箇所に、光ファイバー対110の一端部102a,103aを配置させて、この配置箇所毎に充填状況を検知する構成としてもよい。この場合、光ファイバー対110は、例えば、
図13に示すように、注入管8’が接続されている注入孔11b以外の注入孔11bやトンネル軸方向に離間して形成された残りの貫通孔11cを用いて、その注入孔11b及び残りの貫通孔11c毎に配置する。これにより、天端部11aの上方の空洞S4の全域に亘る各ポイントにおいて、充填高さを同時に検知することができる。
なお、第1実施形態においても、
図13と同様に、検知対象領域S内の互いに離間した複数の箇所に、光ファイバー対110の一端部102a,103aを配置させてもよい。この場合、光ファイバー対110は、打設管8が接続されている打設孔3b以外の打設孔3bや残りの貫通孔3cを用いて、その打設孔3b及び残りの貫通孔3c毎に配置する。
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態において、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、それぞれ、一端部側102a,103aが検知対象領域S内にて地盤上下方向に、直線的に延設される場合で説明したが、これに限らない。例えば、
図14に模式的に示すように、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、各一端部側102a,103aで、地盤上下方向の一方側から他方側に向って屈曲する屈曲部110aを複数有して、地盤上下方向に延設されてもよい。言い換えると、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、各一端部側102a,103aの複数個所で、S字クランク状に屈曲させつつ全体として地盤上下方向に延設(敷設)される。この場合、各開口部102fは、この屈曲部110a(詳しくは、屈曲部110aのうち地盤上方に凸、又は、地盤下方に凸のいずれか一方、
図14では地盤上方に凸の屈曲部110a)にそれぞれ形成する。これにより、第1光ファイバー102からの光の漏れ量を多くすることができるため、コンクリートの立ち上がりに伴う受光強度の段階的な変化をより強調することができる。この変形例においても、開口部を第1光ファイバー102ではなく、第2光ファイバー103の屈曲部110a部分にそれぞれ設けてもよい。なお、
図14では、棒鋼6は図の簡略化のため図示を省略した。屈曲部110aを設けて延設する場合についても、例えば、棒鋼6等に沿わせて延設する。
【0048】
また、上記第2実施形態においては、既設のトンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2内に空洞S4がトンネル構造体11の天端部11aを覆うように広がって生じている場合で説明した。しかし、例えば、
図15に示すように、トンネル新設時には、トンネル構造体11の外方領域S2に空洞がない場合であっても。地山の変動や地下水の流れ等によって、例えば、
図16に示すように、土砂G等の間に空隙S5が生じる場合がある。なお、
図15、後述する
図16、
図18及
図19では、土砂G等や空隙S5を明瞭にするため、それぞれの大きさは誇張して示されている。
以下に、既設のトンネル構造体11の外方領域S2の地盤内に空隙S5が生じている場合の実施形態について説明する。
【0049】
図16は、本発明の第3実施形態による充填状況検知装置100の要部の概略構成を示す図である。なお、
図16は、トンネル構造体11の天端部11aの部分横断面図である。第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
本実施形態において、検知対象領域Sはトンネル外方領域S2であり、充填物Xはセメントミルクやモルタル等のグラウト材であり、充填状況として、反射光の強度変化に基づいてトンネル外方領域S内におけるグラウト材の置換状態を検知可能に構成されている。グラウト材を注入する注入管は、本実施形態においては図示を省略した。注入管は、第2実施形態と同様にして、適宜位置に配置すればよい。
【0051】
また、本実施形態において、第1光ファイバー102のクラッド102dには、
図17に示すように、開口部102fは形成されていない。第1光ファイバー102の他端部102b(
図2参照)から入射された光は、光量が減じられることなく光出射端102eから出射される。
【0052】
光ファイバー対110は、第2実施形態と同じ方法でトンネル構造体11の天端部11aに形成される貫通孔11cを介して、トンネル外方領域S2内に配置される。光ファイバー対110は、
図16に示すように、棒鋼6と伴に土砂G等に突き当たるまで挿入される。
例えば、
図16のように、光ファイバー対110の周りが空隙S5である場合に、第1光ファイバー102の光出射端102eから光が出射されると、その光は、空隙(つまり、空気)S5内を伝播し、土砂G等で反射して、再び空隙S5を伝播して、第2光ファイバー103の光入射端103eに入射し、受光部104aで受光される。
一方、
図18に、斜線で示すように、光ファイバー対110の周りに、グラウト材(X)が充填され、第1光ファイバー102の光出射端102eと土砂G等との間の空隙S5がグラウト材に置換されると、グラウト材の光透過性に応じて、受光部104aにおける受光強度が減少又は略ゼロとなる。グラウト材は、例えば、モルタルやセメントミルクであり、トンネル外方領域G2への注入時に、セメント濃度の濃い部分と薄い部分とが混在する場合がある。そのため、濃度の薄いグラウト材の部分が光ファイバー対110の周りに充填されている場合は、光の一部はそのグラウト材を透過し、受光部104aでその反射光を受光することができる。
【0053】
本実施形態において、情報処理部104cには、例えば、棒鋼6を障害物(例えば、礫等)に突き当てたときに、受光部104aで受光する光の受光強度のデータが、光出射端102eと障害物との間に、例えば、空気(空隙)、水、セメントミルク、モルタルを介在させた場合についてそれぞれ関連付けて記憶されている。具体的には、受光強度のデータと介在物の種別とを関連付けたデータテーブルが記憶されている。土砂(土粒子)Gの間隙に存在する物質としては、水の場合の受光強度が一番高く、空気、濃度の低いセメントミルク(モルタル)、濃度の高いセメントミルク(モルタル)の順で受光強度のデータは低くなる。セメントミルクのセメント分量とモルタルのセメント分量が同じであれば、それぞれの場合の受光強度は略同じである。
【0054】
次に、本実施形態に係る充填状況検知装置100のグラウト材の置換状態の検知動作を、
図16及び
図18を参照して簡単に説明する。なお、図示省略した注入孔からグラウト材としてモルタル(X)がトンネル外方領域S2内に注入され始めたものとして、以下説明する。
まず、
図16に示すように、モルタル(X)が光ファイバー対110の周辺に到達しておらず、光ファイバー対110の周りが空隙S5である場合、第1光ファイバー102の光出射端102eから出射された光は、土砂(土粒子)G等で反射し、第2光ファイバー103の光入射端103eを介して伝播し、受光部104で受光される。受光部104aは、反射光を受光し、その受光強度に対応する信号を発生させ、記録部104bに出力する。記憶部104bは、受光部104aからの受光強度のデータを記憶する。そして、情報処理部104cは、記憶部104bに記憶された受光強度のデータを読み出し、その受光強度のデータに一番近い受光強度のデータを、データテーブルの中から選択し、この検知ポイントにおける空隙S5は空気のままであると判定し、空隙S5は空隙のままであるという置換状態の検知結果を得る。この置換状態の検知結果は、情報処理部104のディスプレイ部に連続的に表示される。これにより、作業者等は、置換状態をリアルタイムにモニタリングすることができる。
【0055】
そして、
図18に示すように、第1光ファイバー102の周りに、斜線で示すようにモルタル(X)が到達すると、受光強度は減少又はゼロとなる。そして、情報処理部104は、記憶部104bからの受光強度のデータに一番近い受光強度のデータを、データテーブルの中から選択し、この検知ポイントにおける空隙S5はモルタルに置換されているという置換状態の検知結果を得る。この置換状態の検知結果は、情報処理部104のディスプレイ部に連続的に表示される。
【0056】
かかる本実施形態による充填状況検知装置100によれば、既設のトンネル構造体11の径方向外方のトンネル外方領域S2に、空隙S5が生じている可能性があり、グラウト材により置換して地盤改良(補修)が必要な場合に、その置換状態を、容易に把握することができ、補修施工の管理の効率向上を図ることができる。
【0057】
なお、
図18においては、置換状態の検知箇所は一箇所であるものとして説明したが、これに限らず、
図19に示すように複数個所で同時に検知してもよい。例えば、
図19に示すように、トンネル外方領域S2の一部の領域では空隙S5が残っており、また、一部の領域(図中、網掛けされた領域)では空隙S5は水Wに置換されており、一部の領域(図中、斜線で示された領域)では空隙S5がグラウト材(X)に置換されているような場合、情報処理部104cは、図中左側の検知ポイントでは空隙S5は空隙のままであり、図中中央の検知ポイントでは空隙S5は水(地下水)に置換されおり、図中右側の検知ポイントでは空隙S5はグラウト材に置換されているという置換状態の検知結果を得る。これにより、空洞S5の置換状態をより詳細に把握することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態についてそれぞれ説明したが、本発明は上記各実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【0059】
例えば、上記各実施形態では、第1光ファイバー102の光出射端102eと、第2光ファイバー103の光入射端103eは、地盤上方に向けて配置(上向き配置B)されるものとして説明したが、これに限らず、地盤下方に向けて配置(下向き配置A)されてもよい。
図20は、各光ファーバー102,103の一端部側102a,103aを全体として地盤上下方向に延設しつつ、その光出射端102e及び光入射端103eを地盤下方に向けて配置(下向き配置A)した状態を示すと共に、各光ファイバーの一端部側102a,103aの周囲に水が存在し、その水面と光出射端102e及び光入射端103eの面とが一致した状態を示した模式図である。また、
図21は、各光ファーバーの光出射端102e及び光入射端103eを地盤上方に向けて配置(上向き配置B)した状態を示すと共に、水面と光出射端102e及び光入射端103eの面とが一致した状態を示した模式図である。
図22は、下向き配置A及び上向き配置Bのそれぞれの場合の、受光強度の変化の様子を示した模式図である。横軸は水位を示し、縦軸は受光強度を示す。
図20に示すように、下向き配置Aの光出射端102e及び光入射端103eは、水位がhb2及びhb1(図中一点鎖線)の時、水面との間に空隙を有して水面と対向し、水位がh0(図中実線)の時、水面と一致し、水位がhu2及びhu1(図中二点鎖線)のとき、水中内に位置する。また、
図21に示すように、上向き配置Bの光出射端102e及び光入射端103eは、水位がhb2及びhb1の時、水面より上方で上に向いて位置し、水位がh0のとき、水面と一致し、水位がhu2及びhu1の時、水中内で上方に向いて位置する。
【0060】
図22から分かるように、下向き配置Aの場合、水位がhb2から上昇するにつれ、光出射端102e及び光入射端103eの面と水面との離間距離が小さくなるため、受光強度は高くなる。そして、受光強度は、水面と一致するh0より若干下方のhb1の水位から急激に高くなり、さらに水位が上昇するにつれ急激に減少し、水位がh0になったところで安定し、その後、水位がhu1、hu2と上昇しても、略変化しない。
一方、上向き配置Bの場合、受光強度は、水位がhb2からh0に向かって上昇しても、略変化せず、水位がh0より上昇するにつれ徐々に高くなり、h0より若干上方のhu1の水位で最大となる。そして、受光強度は、さらに水位が上昇するにつれ徐々に減少し、その後、水位がhu2より上昇しても略変化しない。
このように、下向き配置Aの場合、水面の接近に伴う受光強度の上昇度合いは、上向き配置Bの場合より大きい。また、下向き配置Aの場合、水面の接近を、上向き配置Bの場合より早いタイミングで検知することができる。そして、各光ファイバーの一端部側102a,103aの周囲にコンクリート等の充填物Xが充填されて打ち上がっていく過程においても、
図22に示す特性を示す。したがって、光出射端102e及び光入射端103eを下向きに配置する構成とすることにより、充填物(水面)の接近をより確実かつ迅速に判断でき、充填状況をより精度よく検知することができる。
【0061】
また、上記各実施形態及び
図20で示した変形例では、第1光ファイバー102の光出射端102eと、第2光ファイバー103の光入射端103eを、伴に同一の方向に向けて配置(同一方向配置)するものとしたが、これに限らず、互いに離間して対向配置してもよい。この対向配置の場合、充填状況に応じて、光出射端102eと光入射端103eとの間に充填物Xや空気や水が位置することになる。このため、受光強度は、これら充填物X、空気及び水の光透過度等に大きく依存して変化することとなり、その振れ幅が同一方向配置の場合と比べて高くなる。したがって、光出射端102eと光入射端103eとを対向配置する構成によると、光出射端102eと光入射端103eとの間に、濃度の低いセメントミルク(モルタル)が存在する場合と、濃度の高いセメントミルク(モルタル)が存在する場合と、水や空気が存在する場合とを、それぞれ、明確に区別可能な振れ幅で、受光強度が変化する。つまり、対向配置とすることに、充填物Xの濃度の高低の判別や、充填物Xと水及び空気との区別をより確実に判別して充填状況を確認することができる。
【0062】
また、上記各実施形態では、第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103は、一体形成されるものとして説明したが、これに限らず、別体であってもよい。また、各光ファイバー102,103の一端部側102a,103aを、型枠3の天端部3aやトンネル構造体11の天端部11aを貫通させて、各天端部に対応する検知対象領域Sに配置させるものとして説明したが、検知対象領域Sへの挿入箇所はこれに限らず、適宜決めることができる。
【0063】
さらに、上記各実施形態では、各光ファイバー102,103の一端部側102a,103aを、検知対象領域S内で、地盤上下方向に延設させる場合で説明したが、延設方向はこれに限らず、例えば、トンネル周方向に延設させてもよいし、トンネル軸方向に延設させてもよい。これらの場合、各光ファイバー102,103の一端部側102a,103aは、トンネル新設時には、型枠3の外周面や吹き付けコンクリート2の内周面や掘削された地盤の内周面1に沿わして延設し、トンネル補修時には、トンネル構造体11の外周面に沿わして延設する。これらにより、特に、上記第1及び第2実施形態のように、光ファイバーに開口部を複数設ける構成において、充填物のトンネル軸方向の充填状況を少なくとも一対の光ファイバー102,103のみで検知することができる。
【0064】
さらにまた、上記各実施形態では、各光ファイバー102,103の一端部側102a,103aは、棒鋼6に支持されて検知対象領域S内に配置されるものとして説明したが、これに限らず、例えば、合成樹脂製や鋼製の配管内に沿わして検知対象領域S内に配置するようにしてもよい。この場合、上記配管の外周の適宜箇所に貫通孔を設け、配管内に充填物が流入するようにする。また、これらに限らず、各光ファイバー102,103が例えば自立可能な強度を有している場合、各光ファイバー102,103を支持する棒鋼6や配管等の他の部材は必要ない。
【0065】
そして、上記各実施形態では、第1導光部材102及び第2導光部材103は、それぞれ光ファイバーからなるものとして、それぞれを第1光ファイバー102及び第2光ファイバー103としたが、これに限らない。第1導光部材102及び第2導光部材103は、光を導くことができる部材であればよく、例えば、合成樹脂製や鋼管等の筒状の部材を用いることができる。
【0066】
また、第1実施形態においては、充填状況検知装置100は、山岳トンネルの新設時における覆工空間Sへのコンクリートの充填状況を検知する場合について説明したが、これに限らず、シールド掘進機により地山を掘削し、その掘進と併行してに、シールド掘進機のテール部で一次覆工となる場所打ちコンクリートを打設して地山を保持しながらトンネルを構築するSENS工法において、上記一次覆工の場所打ちコンクリートの充填状況の検知に適用してもよい。