特開2016-31083(P2016-31083A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SMC株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000003
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000004
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000005
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000006
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000007
  • 特開2016031083-ゲートバルブ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-31083(P2016-31083A)
(43)【公開日】2016年3月7日
(54)【発明の名称】ゲートバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/02 20060101AFI20160208BHJP
【FI】
   F16K3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-152367(P2014-152367)
(22)【出願日】2014年7月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】石垣 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋己
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
【テーマコード(参考)】
3H053
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053AA22
3H053AA31
3H053AA35
3H053BA24
3H053DA09
(57)【要約】
【課題】弁プレートのシール機能の低下や、塵埃の発生を抑制することができるばかりでなく、シール部材を交換するにあたっても利便性に優れたゲートバルブを提供する。
【解決手段】外周部に弁座3を備えたゲート開口部4と、外周部に弁座に接離してゲート開口部を開閉するシール部材8が配設された弁プレート6とを有するゲートバルブ1において、弁プレートに、シール部材8としてのOリングが収容された環状のアリ溝9を凹設し、アリ溝の溝底を成す底壁部12の中央に、ゲート開口部に向けて凸設された突条部13を形成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバに接続されるゲート開口部が開設され、該ゲート開口部の周囲に弁座を備えて成る隔壁と、上記弁座に接離して上記ゲート開口部を開閉するシール部材を備えて成る弁プレートとを有するゲートバルブであって、
上記シール部材が弾性材により環状に形成されていて、
上記弁プレートにおける上記ゲート開口部と対向するプレート面には、上記シール部材が収容された環状のアリ溝が凹設されており、
上記アリ溝が、その開口側から深さ方向に向けて、上記プレート面に接続されて最小溝幅が上記シール部材の最大幅よりも小さく形成された絞り開口部と、該絞り開口部に接続されて最大溝幅が上記シール部材の最大幅よりも大きく形成された収容部と、該収容部に両側端がそれぞれ接続されて上記アリ溝の溝底を形成する底壁部とを順次有し、
上記アリ溝の底壁部には、該アリ溝の開口方向に凸設された突条部が該アリ溝の長手方向に沿って延設されており、上記シール部材が、その一部を上記絞り開口部を通じて上記アリ溝の外部に突出させた状態で、該アリ溝内において、その外周面を前記絞り開口部に係合させると共に上記突条部に圧接させていることを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1に記載のゲートバルブであって、
アリ溝が、その横断面において幅方向に対称に形成され、上記突条部が上記底壁部の幅方向の中央に凸設されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項2に記載のゲートバルブであって、
上記アリ溝において、上記収容部における最大溝幅となる部分が、上記突条部の頂部よりも該アリ溝の開口側に位置している、
ことを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のゲートバルブであって、
上記アリ溝の底壁部が、上記突条部の幅方向の両側に、該突条部に沿って延びる一対の内溝をさらに有している、
ことを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項2〜4に記載のゲートバルブであって、
上記シール部材の横断面が略円形に形成されている、
ことを特徴とするもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート開口部に対し弁プレートを接離させて、該ゲート開口部を開閉するように構成されたゲートバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のゲートバルブは、例えば、半導体製造装置や液晶製造装置等における真空処理チャンバの開口部に使用されるもので、該チャンバ開口部に対し接続されるゲート開口部と、それを開閉する弁プレートとを有している。そして、該弁プレートは、上記ゲート開口部を気密に閉塞するシール位置と、該ゲート開口部が全開状態となるよう該ゲート開口部から退避した開放位置との間で移動可能となっている(特許文献1)。
【0003】
ところで、このようなゲートバルブにおいては、上記弁プレートのプレート面の外周部に環状のアリ溝が形成されていて、該アリ溝に弾性材から成る環状のシール部材が収容されている。そして、上記シール位置で、上記ゲート開口部の周囲に形成された環状の弁座に対し、該弁プレートのシール部材を当接させることにより、該ゲート開口を密閉するようになっている。ところが、このようなシール部材と弁座との接離が繰り返されたり、シール部材と弁座とが接触した状態で上記プレート面方向(プレート面と平行方向)に相対的にずれたりすると、該シール部材に捩れやアリ溝との擦れが生じる。そして、このような捩れや擦れを生じると、塵埃が発生したり、捩れの蓄積により弁プレートのシール機能が低下したり、シール部材が脱落し易くなったり、シール部材の寿命の低下を招いたりする虞がある。
【0004】
そこで、特許文献2〜4には、このような問題点を解決するための各種シール部材を備えたゲートバルブが開示されている。しかしながら、シール部材は消耗品であるため交換を必要とするが、これら特許文献2〜4に記載のゲートバルブにおいては、使用できるシール部材が特定のものに限定されるため利便性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−5008号公報
【特許文献2】特開2007−321922号公報
【特許文献3】特開2008−180293公報
【特許文献4】特開2009−2459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の技術的課題は、弁プレートのシール機能の低下や、塵埃の発生を抑制することができるばかりでなく、シール部材を交換するにあたっても利便性に優れたゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明に係るゲートバルブは、チャンバに接続されるゲート開口部が開設され、該ゲート開口部の周囲に弁座を備えて成る隔壁と、上記弁座に接離して上記ゲート開口部を開閉するシール部材を備えて成る弁プレートとを有するゲートバルブであって、上記シール部材が弾性材により環状に形成されていて、上記弁プレートにおける上記ゲート開口部と対向するプレート面には、上記シール部材が収容された環状のアリ溝が凹設されており、上記アリ溝が、その開口側から深さ方向に向けて、上記プレート面に接続されて最小溝幅が上記シール部材の最大幅よりも小さく形成された絞り開口部と、該絞り開口部に接続されて最大溝幅が上記シール部材の最大幅よりも大きく形成された収容部と、該収容部に両側端がそれぞれ接続されて上記アリ溝の溝底を形成する底壁部とを順次有し、上記アリ溝の底壁部には、該アリ溝の開口方向に凸設された突条部が該アリ溝の長手方向に沿って延設されており、上記シール部材が、その一部を上記絞り開口部を通じて上記アリ溝の外部に突出させた状態で、該アリ溝内において、その外周面を前記絞り開口部に係合させると共に上記突条部に圧接させていることを特徴としている。
【0008】
上記ゲートバルブにおいては、好ましくは、アリ溝が、その横断面において幅方向に対称に形成され、上記突条部が上記底壁部の幅方向の中央に凸設されている。このとき、上記アリ溝において、上記収容部における最大溝幅となる部分が、上記突条部の頂部よりも該アリ溝の開口側に位置しているとより好ましい。
また、好ましくは、上記アリ溝の底壁部が、上記突条部の幅方向の両側に、該突条部に沿って延びる一対の内溝をさらに有している。
そして、上記ゲートバルブにおいては、上記シール部材の横断面が略円形に形成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るゲートバルブによれば、弁プレートに設けられたアリ溝の底壁部に、該アリ溝の開口方向に凸設された突条部が該アリ溝の長手方向に沿って延設され、シール部材がその外周面を上記突条部に圧接させた状態で上記アリ溝に装着されている。そのため、シール部材と弁座とが接離を繰り返したり、シール部材と弁座とが当接した状態で、プレート面方向(プレート面と平行を成す方向)に相対的にずれたりしても、上記突条部が上記シール部材の捩れに対する抵抗として機能する。その結果、シール部材が捩れたりアリ溝と擦れたりするのを抑制することができ、シール機能の低下や塵埃の発生を抑制することができる。
しかも、メンテナンス時にシール部材を交換するにあたっても、シール部材の捩れやアリ溝との擦れを抑制するために、そのような機能を有する特定形状のシール部材を準備する必要性がなく、例えば、汎用的な断面略円形のシール部材を使用することも可能であり、メンテナンス性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るゲートバルブの基本的動作を示す概略図である。
図2図1のゲートバルブの弁プレートのプレート面を示す図である。
図3図2のIII−IIIにおける要部断面図である。
図4】アリ溝にシール部材を取り付けた状態を示す要部断面図である。
図5】ゲート開口部の密閉状態において、弁座及びアリ溝に作用する接触圧力Pの分布状態を概略的に示す要部断面図である。(a)が本発明の実施形態に係るものであり、(b)が従来技術に係るものである。
図6図5の状態から、弁プレートと弁座とがプレート面方向に相対的に移動したときに、弁座及びアリ溝に作用する接触圧力Pの分布状態を概略的に示す要部断面図である。(a)が本発明の実施形態に係るものであり、(b)が従来技術に係るものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るゲートバルブの一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
このゲートバルブは、例えば、半導体処理装置における真空処理チャンバのチャンバ開口部とトランスファチャンバのチャンバ開口部との間に取り付けられ、該真空処理チャンバとトランスファチャンバとの間で、半導体ウエハ等のワークを出し入れする際などに、両チャンバ間を連通させたり遮断したりするためのものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るゲートバルブ1は、互いに対向する一対の第1及び第2隔壁2a,2bを備え成る中空の弁箱2を有している。そして、その一方の第1隔壁2aには、真空処理チャンバのチャンバ開口部に接続される第1ゲート開口部4が開設され、他方の第2隔壁2bには、トランスファチャンバのチャンバ開口部に接続される第2ゲート開口部5が開設されている。これら第1及び第2ゲート開口部4,5は、共に略矩形で、上記両隔壁2a,2bの互いに対向する位置に設けられている。そうすることにより、上記弁箱内における第1ゲート開口部4と第2ゲート開口部5との間に、直線的な連通路が形成されるようになっている。
【0013】
上記弁箱2は、上記各ゲート開口部4,5を除いて気密に密閉された空間となっている。そして、該弁箱2内には、略矩形の板状を成していて上記第1ゲート開口部4よりも少し大きく形成された弁プレート6が配されている。この弁プレート6には、弁シャフト7の一端側が固定されており、該弁シャフト7の他端側には、図示しない移動機構が連結されている。このとき、上記弁シャフト7は、上記弁箱2を摺動自在に貫通し、該弁箱2の外部において上記移動機構と連結されている。そして、該移動機構の動作により、図1に示すように、上記弁プレート6を、上記弁箱2内において、上記第1ゲート開口部4を気密に閉塞するシール位置(実線)と、該第1ゲート開口4を全開状態にして上記第2ゲート開口5と連通させる開放する開放位置(二点鎖線)との間で往復移動させることができるようになっている。なお、この種の駆動機構は、従来から一般的に知られているものであるため、ここでは具体的な説明は省略する。
【0014】
上記弁プレート6における上記第1ゲート開口部4側(すなわち、上記第1隔壁2a側)に向いた略平坦なプレート面6aの外周部には、環状のシール部材8が設けられている。その一方で、上記第1隔壁2aの内面における第1ゲート開口部4の外周部には、該第1ゲート開口部4を取り囲むように、上記シール部材8が接離する環状の弁座3が設けられている。そうすることより、上記弁プレート6を上記シール位置に移動させた時に、上記シール部材8が上記弁座3に押し当てられ、該第1ゲート開口部4を気密に閉塞することができるようになっている。
【0015】
図2及び図3に示すように、上記シール部材8は、フッ素ゴム等の弾性材によって環状且つ一体に形成されており、例えば、本実施形態のように、一般的な断面略円形のOリングが好適に用いられる。上記弁プレート6は、耐熱性のある金属等の素材により形成されていて、その上記プレート面6aの外周部には、環状のアリ溝9が凹設されている。そして、図4に示すように、上記シール部材8が、その一部を該アリ溝9内に収容すると共に他部を上記弁プレート6から突出させた状態で、上記弁プレート6に対し取り付けられている。
【0016】
図4は、上記アリ溝9にシール部材8を装着した状態(未圧縮状態)を示す横断面図である。
上記アリ溝9は、その開口から深さ方向(底方向)に向けて、上記プレート面6aに接続されて最小溝幅W1が上記シール部材8の最大幅(ここでは直径)よりも小さく形成された絞り開口部10と、該絞り開口部10に接続されて最大溝幅W2が上記シール部材8の最大幅よりも大きく形成された収容部11と、該収容部11に両側端がそれぞれ接続されて上記アリ溝9の溝底を形成する底壁部12とを順次有している。このとき、上記プレート面6aと絞り開口部10との間、及び絞り開口部10と収容部11との間も、図示するように滑らかに接続されている。なお、このアリ溝9は、本実施形態のように、その横断面の中心軸Lに関して対称に形成されていることが望ましい。
【0017】
上記アリ溝9の絞り開口部10は、互いに内向きに対向する一対の突縁10a,10aを有していて、これら突縁10a,10aにおいて最も溝幅が狭い上記最小溝幅W1となっている。そして、該突縁10a,10aが、上記シール部材8の両側部分に係合して、該シール部材8をアリ溝9内に保持するための係合部として機能する。
【0018】
上記収容部11は、アリ溝9の中心軸Lに対し垂直方向に膨らんだ曲面状の互いに対向する内壁面によって形成され、中心軸Lから最も離間した位置に互いに対向する頂部11a,11aを有していて、これら頂部11a,11aにおいて最も溝幅が広い上記最大溝幅W2となっている。そして、該収容部11内にシール部材8の最大幅を有する部分及び中心(重心)Oが配されており、該収容部11においては、シール部材8の外周面とアリ溝9の内壁面との間に間隙が形成されている(図4参照)。
【0019】
上記アリ溝9の底壁部12は、その中央に上記絞り開口部10に向けて凸設されると共に該アリ溝9に沿って連続的に延設された環状の突条部13を含んでいる。より具体的には、該底壁部12は、底面12aとその両側端のテーパ状の段部12b,12bとにより溝状に形成されていて、該底面12aの中央に上記突条部13が設けられている。そうすることにより、該突条部13の両側に、該突条部13に沿った一対の内溝14,14が形成されている。このとき、上記底面12aにおける該内溝14,14の底を形成する部分は何れも平坦になっており、また、上記段部12b,12bは、前記収容部11の各内壁面に接続されている。
【0020】
上記底壁部12の突条部13は、上記底面12a幅の約半分の幅を有し、その頂部13aを上記中心軸L上に位置させて、該底面12aから円弧状に隆起した形状を有している。具体的には、該突条部13の表面は中心角が180度よりも小さい円弧面によって形成されており、その曲率半径は、上記シール部材8の半径よりも小さくなっている。なお、本実施形態においては、上記底面12aから突条部13の頂部13aまでの高さhが、上記底壁部12の内溝14,14の深さ(すなわち、上記底面12aからの段部12bの高さ)とほぼ同じとなっており、上記収容部11における溝幅が最大溝幅W2となる頂部11a,11aが、上記突条部13の頂部13aよりも上記絞り開口部10側に位置している。また、上記アリ溝9に上記シール部材8が装着された状態において、該シール部材8の中心Oと該突条部13の頂部13aとの距離は、シール部材8の半径よりも小さくなっており、該突条部13がシール部材8に当接し中心軸L方向に押圧している。さらに、上記プレート面6aから上記突条部13の頂部13aまでの距離(D−h)は、上記シール部材8の直径よりも小さくて半径よりも大きくなっている。
【0021】
その結果、上記シール部材8は、その中心Oよりも上端側(すなわち、アリ溝9の開口側)における中心軸Lに対して対称を成す両側の二点を、上記絞り開口部10の互いに対向する各内壁面にそれぞれ圧接させると共に、その下端側(すなわち、アリ溝9の底壁部12側)の一点を、上記突条部13に圧接させた状態にあり、これら三点におけるシール部材8の変形に伴う弾発力により、アリ溝9内で所定の姿勢に保持されている。このとき、これら圧接された三点を結ぶ三角形は、中心軸Lに対して対称を成す二等辺三角形で、上記シール部材8の中心Oがその三角形の内側に位置している。
【0022】
図5は、アリ溝9の底壁部12に突条部13を有して成る本発明に係るゲートバルブ(a)と、アリ溝109の底壁部112が平坦面に形成されて成る従来のゲートバルブ(b)とにつき、上記弁プレート6が上記シール位置に在る状態(すなわち、ゲート開口部4の密閉状態)において、弁座3及びアリ溝9,109に対するシール部材8の接触圧力PをFEMによって解析し、その結果(圧力分布)を概略的に示したものである。なお、このとき、両ゲートバルブにおいて、弁プレート6を弁座3に対し押しつける負荷加重Wは等しいものとし、絞り開口部10,110におけるアリ溝9,109の最小溝幅W1(上記突縁10a,10a間の距離)、収容部11,111におけるアリ溝9,109の最大溝幅W2(頂部11a,111a間の距離)、及び該アリ溝9.109に装着するシール部材8の直径も等しいものとした。また、アリ溝9,109のプレート面6aから底面12a,112aまでの深さDも互いに等しいものとした。
【0023】
そこで、本実施形態における圧力分布と従来のものにおける圧力分布とを比較すると、何れの場合においても、上記弁座3とアリ溝9,109との間でシール部材8が圧縮及び扁平化されることに伴って、上記弁座3とシール部材8との間に、中央の中心軸L上にピークを有する山形の接触圧力Ps(すなわち、シール部材8の弾性反発力)が作用している。また、何れの場合においても、上記絞り開口部10,110の両内壁面においても接触圧力Pu,Pdが作用すると同時に、アリ溝9の底壁部12,112にも同様に中心軸L上にピークを有する山形の接触圧力Ppが作用している。すなわち、シール部材8はアリ溝9,109内で3点支持されてアリ溝9を閉塞している。
このとき、上記弁座3及び上記絞り開口部10,110の各内壁面に作用する接触圧力Ps,Pu,Pdについては、本実施形態と従来のものとで大きな差異は認められない。その一方で、上記底壁部12,112に作用する接触圧力Ppについては、本実施形態の方が、突条部13において、局所的に高い接触圧力が作用している。また、本実施形態の場合、弁座3における接触圧力Psのピークよりも、底壁部12における接触圧力Ppのピークの方が数倍大きくなっている。
【0024】
次に、図6は、図5の状態から弁プレート6と弁座3を有する第1隔壁2aとがプレート面6a方向に相対的にずれ動いた状態(具体的には、弁プレート6が弁座3に対して下方にずれ動いた状態)を示している。ただし、図5の状態から図6の状態に至るまで、弁座3とシール部材8との間でスリップは発生していない。
この結果から、本実施形態及び従来のものの何れの場合においても、図5に示す移動前(ずれの発生前)のものと比べて、弁座3での接触圧力Psは、弁座3に対する弁プレート6の移動方向と逆側(図中上方側)にピークが変位した山形となるが、ピークの大きさはほとんど変化していない。このとき、ピークの変位量は上記弁座3と弁プレート6の相対移動量とほぼ等しくなっている。
【0025】
また、絞り開口部10,110での接触圧力Pu,Pdについては、弁プレート6の移動方向と逆側に在る一方の内壁面での接触圧力Puが、何れの場合においても移動前に比べて非常に大きくなっている。しかし、弁プレート6の移動方向側(図中下方側)に在る他方の内壁面での接触圧力Pdは、本実施形態の場合、移動前に比べて小さいが依然として作用しているのに対し、従来のものの場合、作用していない。すなわち、本実施形態においては、移動後(ずれの発生後)も移動前と同様に、シール部材8によるアリ溝9の密閉状態が維持されているのに対し、従来のものにおいては、上記他方の内壁面とシール部材8との間に隙間が発生し、アリ溝109内の一部が外部に開放されてしまっている。
【0026】
そして、底壁部12,112の接触圧力Ppについては、本実施形態の場合には、移動前に比べて、ピークが突条部3の範囲で若干弁プレート6の移動方向と逆側に変位しているが、上記弁座3における接触圧力Psのピークよりは変位量が小さく、また、ピークの大きさもほとんど変化していない。それに対して、従来のものの場合には、ピークの大きさはほとんど変化していないものの、ピークの変位量が上記弁座3における接触圧力Psとほぼ同程度となっている。
【0027】
以上の結果を総合すると、従来のものと比べて本実施形態の方が、ゲート開口部4の密閉状態において弁座3と弁プレート6とが相対的に移動した時などに、突条部3の存在により、アリ溝9の底壁部12における接触圧力Ppが大きく、該突条部13が上記シール部材8の捩れに対する抵抗として機能するため、底壁部12とシール部材8との間でスリップが発生し難くなる。
【0028】
したがって、本発明に係るゲートバルブ1によれば、シール部材8と弁座3とが接離を繰り返したり、シール部材8と弁座3とが当接した状態でプレート面6a方向に相対的にずれたりしても、シール部材8が捩れたりアリ溝9と擦れたりするのを抑制することができ、シール機能の低下や塵埃の発生を抑制することができる。
しかも、メンテナンス時にシール部材8を交換するにあたっても、汎用的なOリングを使用することも可能であるため、メンテナンス性にも優れている。
【0029】
以上、本発明に係るゲートバルブ1の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な設計変更が可能である。例えば、上記突条部13を複数設けても良く、その際には、該突条部13の頂部13aが中心軸L上に無くても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 ゲートバルブ
2 弁箱
3 弁座
4 第1ゲート開口部
6 弁プレート
6a プレート面
8 シール部材
9 アリ溝
10 絞り開口部
10a 突縁
11 収容部
11a 頂部
12 底壁部
13 突条部
13a 頂部
14 内溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6