【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年2月21日に北海道グリーン・コミュニティ推進ネットワーク情報交換会にて公開 平成26年3月6日に第52回試錐研究会にて公開 平成26年3月11日に空気調和・衛生工学会北海道支部 第48回学術講演会にて公開 平成26年5月1日発行の北海道建設新聞にて公開 平成26年5月20日に地方独立行政法人北海道立総合研究機構 産業技術研究本部工業試験場成果発表会にて公開
【解決手段】 熱交換器は、上下の横ヘッダと、上下の横ヘッダ間に並列に配置された複数の縦管と、下側の横ヘッダに熱媒を送る縦ヘッダとを有する複数の集熱パネルを、複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向に並列に配置し、複数の集熱パネルの各々と連通する頂部ヘッダから複数の集熱パネルの各々に熱媒を供給するように構成される。
前記第1の頂部ヘッダには第1の熱媒給排管が接続され、前記第2の頂部ヘッダには第2の熱媒給排管が接続されており、前記第1の熱媒給排管から供給された熱媒が、前記第1の頂部ヘッダと、前記複数の集熱パネルの前記縦ヘッダと、前記複数の集熱パネルの前記下側横ヘッダと、前記複数の集熱パネルの前記複数の縦管と、前記複数の集熱パネルの前記上側横ヘッダと、前記第2の頂部ヘッダとをこの順で経由して、前記第2の熱媒給排管から排出される、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
前記スペーサ管は、前記上側横ヘッダの端部を閉止する小口板から外方に突出する鞘管の内側に、一方の端部が嵌合するように設けられている、請求項4に記載の熱交換器。
前記縦ヘッダと前記下側横ヘッダとの間、前記縦ヘッダと前記第1の頂部ヘッダとの間、及び、前記上側横ヘッダと前記第2の頂部ヘッダとの間は、接続管を介して連通されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器。
前記接続管は、前記縦ヘッダ及び前記下側横ヘッダの端部に設けられた貫通孔を有する小口板から外方に突出する鞘管の内側に、一方の端部が嵌合するように設けられている、請求項6に記載の熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の熱交換器は、熱交換プレートの洗浄の際に、締付けボルトを取外してプレートごとに洗浄することが必要であるため、煩雑な作業となる。スケール分、浮遊物又は油分等が含まれる水質又は源泉にシャンプー、石鹸、毛髪又は垢等が含まれる排湯水を熱媒として用いる場合には、隣接する熱交換プレート間の凹凸部に目詰まりが生じ、熱交換プレート間の流水に支障を与え、熱交換能力の低下を招くことになるため、高頻度の洗浄を必要とし、さらに煩雑である。熱交換プレート及びガスケットは、熱媒に応じて材料を選定することになり、例えば海水や低PHの流体を熱媒として利用する場合には、高価となる。ガスケットは、プレートの取外しで損傷を受けると共に、熱媒の影響やガスケット自体の経年変化によって劣化が生じる。
【0007】
特許文献2に記載の熱交換器は、第1流体及び第2流体の出入口部材を取り外して実施する保守点検や洗浄の際のOリングの損傷、部材自体の経年劣化、固定管板の圧入用孔に挿合するチューブの熱変形などによって、第1流体と第2流体とが混合するおそれがある。第2流体として排湯水を用いる場合には、チューブ間の間隔に目詰まりが生じて熱交換効率が低下する。
【0008】
特許文献3に記載の熱交換器は、水通路内に熱回収する熱媒が流水し、温熱を保持する熱媒が細かく屈曲する金属製内パイプを流水するため、排湯水や汚水を流水すると内パイプ内周面にスケール又は浮遊物が付着して、熱交換効率が低下する。また、屈曲する金属製パイプは、内部の洗浄が煩雑であるとともに、腐食の問題がある。
【0009】
本発明の目的は、これらの従来例の問題を解決し、温水又は排気ガス等の各種の液体又は気体から高効率に熱エネルギーを回収できるとともに保守性に優れた熱交換器と、こうした熱交換器を用いた熱交換システムとを提供することである。また、本発明の別の目的は、スケール分、浮遊物又は油分等が含まれる水質又は源泉にシャンプー、石鹸、毛髪又は垢等といった異物が含まれる産業用排湯水を用いた場合でも、高効率で保守性及び耐久性に優れた熱交換器と、こうした熱交換器を用いた熱交換システムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、上下の横ヘッダと、上下の横ヘッダ間に並列に配置された複数の縦管と、下側の横ヘッダと連通する縦ヘッダとを有する複数の集熱パネルを、複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向に並列に配置し、複数の集熱パネルの各々と連通する頂部ヘッダから複数の集熱パネルの各々に熱媒が供給され、複数の集熱パネルの各々と連通する別の頂部ヘッダから熱媒が排出されるように構成した熱交換器によって達成される。また、本発明の別の目的は、熱交換器全体をプラスチック樹脂製とすることによって達成される。
【0011】
一態様において、本発明は、複数の集熱パネルと、前記複数の集熱パネルの各々と連通する第1及び第2の頂部ヘッダとを備えた熱交換器を提供する。複数の集熱パネルの各々は、上側横ヘッダと、この上側横ヘッダと略平行に配置された下側横ヘッダと、両端部が上側横ヘッダ及び下側横ヘッダと連通し、上側横ヘッダと下側横ヘッダとの間にこれらの長さ方向に沿って並列に配置された複数の縦管と、複数の縦管のうちの最外端の縦管のいずれか一方の外側に配置され、下端部において下側横ヘッダと連通する縦ヘッダとを有する。複数の集熱パネルは、前記複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向に並列に配置されている。
【0012】
第1の頂部ヘッダは、縦ヘッダの上端部と連通し、その長さ方向が集熱面と直交する方向になるように配置される。第2の頂部ヘッダは、第1の頂部ヘッダが配置された位置とは反対側の上側横ヘッダの端部と連通し、その長さ方向が集熱面と直交する方向になるように配置される。
【0013】
一実施形態においては、第1の頂部ヘッダには第1の熱媒給排管が接続され、第2の頂部ヘッダには第2の熱媒給排管が接続されており、第1の熱媒給排管から供給された熱媒が、第1の頂部ヘッダと、複数の集熱パネルの縦ヘッダと、複数の集熱パネルの下側横ヘッダと、複数の集熱パネルの複数の縦管と、複数の集熱パネルの上側横ヘッダと、第2の頂部ヘッダとをこの順で経由して、第2の熱媒給排管から排出されるようにすることが好ましい。
【0014】
一実施形態においては、縦ヘッダとは連通しない上側横ヘッダの端部は、スペーサ管を介して縦ヘッダと接続されることが好ましい。スペーサ管は、上側横ヘッダの端部を閉止する小口板から外方に突出する鞘管の内側に、一方の端部が嵌合するように設けられることが好ましい。一実施形態においては、縦ヘッダと下側横ヘッダとの間、縦ヘッダと第1の頂部ヘッダとの間、及び、前記上側横ヘッダと前記第2の頂部ヘッダとの間は、接続管を介して連通されることが好ましい。接続管は、縦ヘッダ及び下側横ヘッダの端部に設けられた貫通孔を有する小口板から外方に突出する鞘管の内側に、一方の端部が嵌合するように設けられることが好ましい。
【0015】
一実施形態においては、熱交換器全体が、例えばポリプロピレンランダムコポリマー樹脂(PPR樹脂)などのプラスチック樹脂によって構成されることが好ましい。
【0016】
別の態様において、本発明は、上述の構造を持つ第1の熱交換器と、上述の構造を持ち、第1の熱交換器の上側横ヘッダ及び下側横ヘッダより短い上側横ヘッダ及び下側横ヘッダを有する、第2の熱交換器とを備え、第1の熱交換器の複数の集熱パネルの間に形成された空間に、第2の熱交換器の複数の集熱パネルが配置された熱交換器を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、第1の熱媒と第2の熱媒との間で熱交換を行う熱交換システムが提供される。熱交換システムは、第1の熱媒が内部を流れる上述の構造の熱交換器と、熱交換器が内部に配置され、熱交換器によって熱が回収される第2の熱媒を貯留する槽と、槽内に第2の熱媒を供給する流入管を有する流入回路と、槽内から第2の熱媒を排出する排出管を有する流出回路とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る熱交換器は、横ヘッダを上下部位として並列に配置された複数の縦管群が集熱面となり、その集熱面を持つ複数の集熱パネルが、集熱面と直交する方向に並列に配置されることによって、全体として柵状の多くの集熱面が形成されるため、水流の上下貫流を許容する等間隔のスペースにおいて第2の熱媒が澱むことなくスムーズに上下に貫流して熱伝達が向上するとともに、柵状の集熱面の間を貫流する第2の熱媒から均質にかつ多量に温熱を回収することが可能な熱交換器及び熱交換システムを提供することが出来る。また、本発明に係る熱交換器は、複数の集熱パネル間の接続が左右の頂部ヘッダによって行われており、さらに、これらの集熱パネルが集熱面と直交する方向に並列に配置されていることにより、圧力損失が小さく、熱交換能力及び出口温度が高まるとともに、洗浄が容易となる。
【0019】
また、複数の集熱パネルの各々において、複数の縦管の各々における第1の熱媒の経路長が同一であるため、複数の縦管によって各々が形成される複数の集熱パネルの集熱面は、実質上均斉な集熱作用を奏する。さらに、複数の集熱パネルの各々において、第1の熱媒が縦ヘッダから下側横ヘッダに供給され、下側横ヘッダから複数の縦管内を通って上側横ヘッダに収集される場合には、第1の熱媒は、複数の縦管内を充満して上昇流となるため、集熱パネルの上部に位置する頂部ヘッダの空気溜りを抑制することができ、流水経路に空気溜り生じず、エア抜き装置の付設の不要な熱交換器及び熱交換システムを提供することができる。
【0020】
熱交換器全体をプラスチック樹脂製とすれば、部材の切断、融着が容易であるとともに、軽量で、製作、運搬及び取付作業が容易である。例えば、プラスチック樹脂を、第2の熱媒が、その溶存成分を高濃度の塩化物泉や、酸性泉、ナトリウム塩化物質等の泉質とするものであっても、腐食や劣化が生じない材料とすることによって、毛髪やスケール、浮遊物質などを外側のみの高圧洗浄で容易に洗い流すことができ、耐久性及び保守性に優れる熱交換器及び熱交換システムを提供することができる。さらに、上下横ヘッダに設けられる取付孔Haは、パイプの一側面に自動孔開機で容易に穿設することができるとともに、複数の縦管を取付孔Haに嵌合して融着することによって接合することができるため、均質な集熱効果を有する複数の集熱パネルを簡単かつ低コストで製作することができる。
【0021】
熱交換器全体をプラスチック樹脂製とする場合には、同構造の2つの熱交換器の集熱パネルを交互に配置して組み立てられる熱交換器(本明細書において説明される熱交換器He)とすることによって、同性能を有する全プラスチック製の熱交換器を単体で製作した場合に問題となる自重による全体のゆがみ、破損、取り扱いの困難さなどを考慮することなく、軽量で、製作、運搬、現場での組立、及び取付作業が容易な熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[本発明に係る熱交換器の説明]
図1は、本発明の第1の実施形態による熱交換器H1を示す。また、
図6は、熱交換器H1の部分断面図を示す。熱交換器H1は、複数の集熱パネル1が並列に配置され、それらの複数の集熱パネル1の各々と、第1の頂部ヘッダ13a及び第2の頂部ヘッダ13bとが接続された構造を有する。複数の集熱パネル1の各々においては、略平行に配置された上側横ヘッダ10aと下側横ヘッダ10bと間に、これらのヘッダより径が小さい同径同長の複数の縦管11が、横ヘッダ10a及び10bの長さ方向に沿って並列に配置されており、複数の縦管11は、その両端部において上側横ヘッダ10a及び下側横ヘッダ10bと連通している。集熱パネル1の数及び縦管11の数は、
図1において示される数に限定されるものではなく、熱交換器のサイズ、回収する熱エネルギー量、又は第2の熱媒の状態等に応じて、適宜決定することができる。
【0024】
上側横ヘッダ10aの左端部にはスペーサ管17が、下側横ヘッダ10bの左端部には接続管16cが、おのおの外方に突出して設けられ、これらのさらに外側には、縦管11より大径の縦ヘッダ12が配置される。上側横ヘッダ10aと縦ヘッダ12とは、スペーサ管17を介して接続されているため連通しておらず、下側横ヘッダ10bと縦ヘッダ12とは、接続管16cを介して連通している。
【0025】
縦ヘッダ12の上端部には、接続管16aが上方に突出して設けられる。接続管16aには、集熱パネル1に第1の熱媒を案内する(又は、集熱パネル1から第1の熱媒を収集する)第1の頂部ヘッダ13aの側面が接続されており、第1の頂部ヘッダ13aは、並列に配置された複数の集熱パネル1の上側横ヘッダ10aの各々と直交するように、すなわち、その長さ方向が複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向になるように、配置される。縦ヘッダ12と第1の頂部ヘッダ13aとは、接続管16aを介して連通している。なお、本発明において熱交換器内を流れる第1の熱媒として、気体、又は、水道水、井水などスケールや浮遊物のない液体を用いることができ、典型的には、水道水を用いることが好ましい。
【0026】
上側横ヘッダ10aの右端部上面(すなわち、上側横ヘッダ10aの側面)には、接続管16bが上方に突出して設けられる。接続管16bには、集熱パネル1から第1の熱媒を収集する(又は、集熱パネル1に第1の熱媒を案内する)第2の頂部ヘッダ13bの側面が接続されている。第2の頂部ヘッダ13bは、並列に配置された複数の集熱パネル1の上側横ヘッダ10bの各々に対して垂直方向に延びるように、すなわち、その長さ方向が複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向になるように、配置される。上側横ヘッダ10bと第2の頂部ヘッダ13bとは、接続管16bを介して連通している。
【0027】
第1の頂部ヘッダ13aの後端部には、集熱パネル1に供給(又は、集熱パネル1から排出)される第1の熱媒が通る第1の熱媒給排管18aが接続され、第2の頂部ヘッダ13bの後端部には、集熱パネル1から排出(又は、集熱パネル1に供給)される第1の熱媒が通る第2の熱媒給排管18bが接続される。
【0028】
一実施形態においては、
図5に示されるように、第1の熱媒は、第1の熱媒給排管18a(この場合は、熱媒供給管として機能する)から第1の頂部ヘッダ13aに入り、接続管16aを通って縦ヘッダ12に案内され、縦ヘッダ12の下端部から接続管16cを通って下側横ヘッダ10bに流れるようにすることが好ましい。下側横ヘッダ10bに入った第1の熱媒は、複数の縦管11内を上方に向かって流れ、その間に、第1の熱媒と、複数の縦管11の周囲を流れる第2の熱媒との間で熱交換が行われる。第1の熱媒は、次に上側横ヘッダ10aに入り、接続管16bを通って第2の頂部ヘッダ13bに収集され、第2の熱媒給排管18b(この場合は、熱媒排出管として機能する)から排出される。
【0029】
縦ヘッダ12の位置、第1及び第2の頂部ヘッダ13a、13bの位置、並びに第1の熱媒の流れの方向については、
図1の形態に限定されるものではない。例えば、縦ヘッダ12を上側及び下側横ヘッダ10a、10bの右端部の外側に配置し、スペーサ管17及び接続管16cを、それぞれ上側横ヘッダ10a及び下側横ヘッダ10bの右端部に設けてもよい。この場合には、第1の熱媒は、第2の熱媒給排管18b(この場合は、熱媒供給管として機能する)から縦ヘッダ12に供給され、第1の熱媒給排管18a(この場合は、熱媒排出管として機能する)から排出されるようにすることができる。また、例えば、第1及び第2の頂部ヘッダ13a、13bを複数の集熱パネル1の下方に配置してもよい。また、例えば、
図1に示される構造の熱交換器において、第1の熱媒の流れの方向のみを逆方向としてもよい。ただし、第1の熱媒の流水による熱交換器内の空気が効果的に抜けて排出されるように、複数の縦管11内の流れの方向は上昇流であることが好ましい。なお、スペーサ管17及び接続管16a〜16cの位置は、縦ヘッダ12及び頂部ヘッダ13の位置並びに第1の熱媒の流れの方向に応じて、適宜変更することができる。
【0030】
図2は、本発明の第2の実施形態による熱交換器Heを示す。この実施形態の熱交換器は、
図1に示される熱交換器H1と、熱交換器H1と同じ構造を有し、熱交換器H1より横ヘッダの長さが短い、
図3に示されるような熱交換器H2とを組み合わせて構成される。なお、熱交換器Heに用いられる場合には、熱交換器H1は、複数の集熱パネル1間の間隔が
図1に示されるものより広い熱交換器が用いられる。熱交換器Heは、熱交換器H1及び熱交換器H2が、いずれも、例えばポリプロピレンランダムコポリマー樹脂(PPR樹脂)などのプラスチック樹脂によって形成される場合に用いられることが好ましい。熱交換器がプラスチック樹脂製の場合には、熱交換器H1単体の集熱パネルで適切な熱交換性能を得ようとすると、自重が大きくなり、全体のゆがみ、破損、取り扱いの困難さなどが問題となるおそれがある。したがって、熱交換器Heのように、2つの熱交換器を組み合わせて構成し、2つの熱交換器の各々を、その自重による影響が生じないサイズで製作することによって、こうした問題を解決することができる。
【0031】
熱交換器H2は、複数の集熱パネル2が並列に配置され、それらの複数の集熱パネル2の各々と、第1の頂部ヘッダ23a及び第2の頂部ヘッダ23bとが接続された構造を有する。熱交換器H2は、
図3に示されるように、複数の集熱パネル2の各々が有する上側横ヘッダ20a及び下側横ヘッダ20bの長さが、熱交換器H1が有する上側横ヘッダ10a及び下側横ヘッダ10bの長さより短いこと以外は、熱交換器H1と同じ構造である。熱交換器H2の縦ヘッダ22の位置、第1及び第2の頂部ヘッダ23a、23bの位置、並びに第1の熱媒の流れの方向については、
図3の形態に限定されるものではないことは、熱交換器H1の場合と同様である。熱交換器H2においても、熱交換器H1と同様に、集熱パネル2の数及び縦管21の数は、
図3において示される数に限定されるものではなく、熱交換器のサイズ、回収する熱エネルギー量、又は第2の熱媒の状態等に応じて、適宜決定することができる。
【0032】
以上のように構成された熱交換器H1と熱交換器H2と組み合わせることによって、熱交換器Heを製作することができる。熱交換器Heは、例えば工場や施工現場で熱交換器H1と熱交換器H2とを別々に組み立てた後に、熱交換器H1の複数の集熱パネル1の間に形成された空間に、熱交換器H2の複数の集熱パネル2を挿入するように配置することによって、形成することができる。熱交換器Heにおいては、集熱パネル1と集熱パネル2とが1枚ずつ交互に配置されることが好ましいが、交互に配置される集熱パネルの数はこれに限定されるものではなく、例えば集熱パネル1の間に2枚の集熱パネル2が配置されるようにしてもよく、2枚の集熱パネル1と2枚の集熱パネル2とが交互に配置されるようにしてもよい。
【0033】
この実施形態においては、
図2に示されるように、熱交換器H1の複数の縦管11と熱交換器H2の複数の縦管21とは、複数の縦管によって形成される集熱面と直交する方向に沿って一列に並んでいる(すなわち、
図2(A)に示される正面からみると、複数の縦管21は、複数の縦管11と重なって見えない位置関係となっている)が、縦管の並び方はこれに限定されるものではなく、たとえば、集熱面と直交する方向に沿って、複数の縦管11と複数の縦管21とが千鳥状に配置されていてもよい(すなわち、正面からみると、複数の縦管21の各々が複数の縦管11の間に見える位置関係となる)。ただし、第2の熱媒が、異物を含む排湯水の場合には、異物が縦管の間に滞留しないように、流れに対する抵抗を小さくすることが望まれることが多く、このようなときには、複数の縦管が千鳥状に配置される形態より一列に並ぶように配置されることが好ましい。
【0034】
熱交換器H1における複数の縦管11の間の間隔(gA)、複数の集熱パネル1の各々の間での横ヘッダ10a、10b同士の間隔(gB)、複数の集熱パネル1の各々の間での縦管11同士の間隔(gC)については、第2の熱媒の種類や性状に応じて適切に設計されればよく、特に限定されるものではないが、第2の熱媒として多くの異物が含まれる流体を用いる場合でも少なくともその異物が上記間隔の各々に閉塞しない程度に密接していることが好ましい。このことは、熱交換器Heにおける複数の縦管11の間の間隔(gA)、複数の縦管21間の間隔(gA)、熱交換器H1及び熱交換器H2の各々における横ヘッダ10間及び横ヘッダ20間の間隔(gB)、熱交換器H1と熱交換器H2との間における縦管11と縦管21との間の間隔(gD)についても同様である。本発明において、熱交換器の外部を流れる第2の熱媒は、特に限定されないが、第1の熱媒より高温の液体又は気体とすることができ、例えば、酸性の水質、スケール分、浮遊物質又は油分等がある水質又は源泉にシャンプー、石鹸、毛髪又は垢等が含まれる排湯水とすることができる。
【0035】
熱交換器H1(又は熱交換器He(なお、本明細書の以下の記載において、( )内の符号は、熱交換器He、熱交換器H2又は集熱パネル2の各部材を指す))は、集熱パネル1(2)の一方の左端部に大径の縦ヘッダ12(22)が配置されているため、第1の頂部ヘッダ13a(23a)から第1の熱媒が流入する際の配管抵抗が小さくなり、複数の縦管11(21)に第1の熱媒をスムーズに供給することができる。また、集熱パネル1(2)においては、下側横ヘッダ10b(20b)の左端部の位置、すなわち複数の縦管11(21)への第1の熱媒の実質的な供給位置から、上側横ヘッダ10a(20a)の右端部の位置、すなわち第1の熱媒の排出位置までの、第1の熱媒の流水経路は、いずれの縦管11(21)を経由する場合でも同一長であり、したがって、複数の縦管11(21)によって形成される集熱面は、実質上、均斉な集熱作用を奏する。
【0036】
また、複数の縦パイプ11(21)を集熱面とする集熱パネル1(2)は、複数の縦管11(21)の間隔、複数の集熱パネル1の前後間隔(集熱パネル1と集熱パネル2との間の間隔)を保って配置されるため、熱交換器の周囲に流れる第2の熱媒の温熱を効率良く吸収して、複数の縦管11(21)内の第1の熱媒に均斉な加熱作用を奏する。
【0037】
熱交換器H1(He)は、大径の横ヘッダ10(20)が上下に略平行に存在しており、複数の縦管11(21)によって形成される面の間の間隔、即ち集熱パネルの集熱面間の間隔は、下端から上端まで同一寸法であるため、上下開通状態となり、熱交換器の周囲を流れる第2の熱媒の上下貫流が澱むことなくスムーズであり、その結果、伝導熱伝達が向上する。
【0038】
熱交換器H1(He)は、複数の集熱パネル1間(又は、複数の集熱パネル1と複数の集熱パネル2との間)の接続が左右の頂部ヘッダ13(23)によって行われており、さらに、これらの集熱パネルが集熱面と直交する方向に並列に配置されていることにより、圧力損失が小さく、熱交換能力及び出口温度が高まるとともに、洗浄が容易となる。
【0039】
熱交換器H1(He)は、プラスチック樹脂製の場合には、軽量かつ安価で、作業性に優れ、耐腐食性が高く、第2の熱媒が、酸性の水質、スケール分、浮遊物質又は油分がある水質又は源泉にシャンプー、石鹸、毛髪又は垢等が含まれる排湯水の場合でも、長期間浸漬後の強度試験結果は良好で、物性低下がなく、耐久性に優れる。
【0040】
また、熱交換器H1(He)の構成要素である上下横ヘッダ10(20)、縦管11(21)、縦ヘッダ12(22)、頂部ヘッダ13(23)は、単純かつ安価な形状の押出成形で準備することができ、複数の縦管11(21)の上下横ヘッダ10(20)への取付位置や、縦ヘッダ12(22)の頂部ヘッダ13(23)への取付位置などの配置も自由に選択することができる。したがって、複数の縦管11(21)を並列に配置した高性能集熱パネルを、簡単かつ安価に製作することが可能であり、さらに、集熱パネル1(集熱パネル2)を容易に増加することができるため、需要者の要求に容易に対応することが可能である。
【0041】
熱交換器H1(He)は、第1の熱媒が複数の縦管11(21)内を上昇流として流れる形態の場合には、流水で生じる熱交換器内の空気が、上側横ヘッダ10a(20a)の右端部から頂部ヘッダ13b(23b)を経て、第2の熱媒給排管18b(28b)に排出され、熱源機に常備される膨張タンクやエア抜き具から放出されるため、熱交換器自体にエア抜き装置を設けることが不要であり、高性能で稼働率に優れた熱交換器とすることができる。
【0042】
[熱交換器の実施例]
以下に、全プラスチック製熱交換器Heを例として、本発明に係る熱交換器の実施例を説明する。
(熱交換器Heの構造)
熱交換器Heは、横方向の長さが異なる同形態の熱交換器H1と熱交換器H2とによって構成される。熱交換器Heは
図2に、熱交換器H1は
図1に、熱交換器H2は
図3に示される。熱交換器H1(又は熱交換器H2)の集熱パネル1(2)は、外径27mm、肉厚5mmの上下横ヘッダ10(20)間に、外径13mm、肉厚1.6mmの複数の縦管11(21)が、露出長さ646mm、間隔gAを7mmとして並列に配置される。上下横ヘッダ10(20)には、側面に、直径13mmの複数の貫通孔Haが設けられており、複数の縦管11(21)の両端部は、貫通孔Haに嵌合している。
【0043】
上側横ヘッダ10a(20a)の両端部及び下側横ヘッダ10b(20b)の右端部には、上側ヘッダ10a(20a)と同質同径で3mm厚のプレート状の小口板14b(24b)が配置され、横ヘッダの端部を閉止している。上側横ヘッダ10a(20a)の左端部の小口板14b(24b)の外方には、外径17mm、肉厚2mm、長さ15mmの鞘管15(25)の内側に一方の端部が嵌合し、縦管11(21)と同質同径で露出長さが30mmの、プレート板17aで他方の端部が閉止されたスペーサ管17(27)が突出して設けられる。鞘管15(25)を設けることによって、例えばスペーサ管17(27)と小口板14bとの間の融着面積が大きくなり、接続部分の強度を高めることができる。
【0044】
下側横ヘッダ10b(20b)の左端部には、直径13mmの貫通孔Hbを備えた小口板14a(24a)が配置され、小口板14a(24a)の外方には、一方の端部が鞘管15(25)の内側に嵌合する、縦管11(21)と同質同径で露出長さが30mmの接続管16c(26c)が突出して設けられる。
【0045】
接続管16c(26c)及びスペーサ管17(27)の外端(すなわち、複数の縦管のうち最外端の縦管のさらに外側)には、横ヘッダ10(20)と同質同径で全長h
3が700mmの縦ヘッダ12(22)が立設される。縦ヘッダ12(22)は、上下横ヘッダ10(20)と同質同径で3mm厚のプレート状の小口板14b(24b)が下端部に、外径13mmの貫通孔Hbを備えた小口板14a(24a)が上端部に、おのおの配置され、接続管16c(26c)及びスペーサ管17(27)が接続される取付孔Haを側面に備える。
【0046】
縦ヘッダ12(22)の上端部には、外径17mm、肉厚2mm、長さ15mmの鞘管15(25)の内側に下端が嵌合された、縦管11(21)と同質同径で露出長さが30mmの接続管16a(26a)が、上方に突出するように設けられる。上側横ヘッダ10a(20a)は、外径13mm、深さ(奥行き)がヘッダと同厚の5mmの取付孔Haを右端部上面(すなわち、上側横ヘッダ10a(20a)の上向きの側面)に備え、取付孔Haには、縦管11(21)と同質同径で露出長さが30mmの接続管16b(26b)が上方に突出するように配置される。
【0047】
熱交換器H1の複数の集熱パネル1の各々は、左右方向の全長L1が1,527mm、上下横ヘッダ10の長さL
2が1,470mm、上下横ヘッダ10の左端部から縦ヘッダ12外端までの距離L
3が57mm、上側横ヘッダ10aの上面から下側横ヘッダ10bの下面までの高さh3が700mm(h
1:757mm−h
2:57mm)、厚さが27mmである。熱交換器H2の複数の集熱パネル2の各々は、高さ及び厚さが集熱パネル1と同一であり、左右方向全長L
4が1,407mm、上下横ヘッダ20の長さL
4が1,350mm、上下横ヘッダ20の左端部から縦ヘッダ22外端までの距離L
3が57mmである。集熱パネル1及び集熱パネル2は、共に、左端部の縦ヘッダ12(22)の上端部から接続管16a(26a)が、右端部の上側横ヘッダ10a(20a)の上面から接続管16b(26b)が、おのおの露出長さ30mmで上方に突出している。
【0048】
熱交換器H1は、
図1に示されるように、縦ヘッダ12の上端部から突出する接続管16aに頂部ヘッダ13aが、上側横ヘッダ10aの右端部上面から突出する接続管16bに頂部ヘッダ13bが、接続されている。頂部ヘッダ13a、13bは、一側面に中心距離60mm間隔で複数の取付孔Haが設けられ、外径が27mm、肉厚が5mm、長さD
1が600mmである。熱交換器H1は、9枚の集熱パネル1を有し、集熱パネル1の各々の接続管16の上端の外周部は、頂部ヘッダ13の複数の取付孔Haに融着されている。9枚の集熱パネル1は、その集熱面に直交する方向に並列に配置され、頂部ヘッダ13によって一体的に連通される。
【0049】
熱交換器H2は、
図3に示されるように、縦ヘッダ22の上端部から突出する接続管26aに頂部ヘッダ23aが、上側横ヘッダ20aの右端部上面から突出する接続管26bに頂部ヘッダ23bが、接続されている。頂部ヘッダ23a、23bは、長さD
2が540mmであり、8枚の集熱パネル2と連通されること以外は、熱交換器H1と同様である。
【0050】
頂部ヘッダ13(23)の前端部には、肉厚3mm、外径が頂部ヘッダ13(23)と同径のプレート状の小口板14bが、後端部には、外径17mmの貫通孔Hbを備えた小口板14aが設けられる。一方の頂部ヘッダ13a(23a)の後端からは第1の熱媒給排管18aが、他方の頂部ヘッダ13b(23b)の後端からは第2の熱媒給排管18bが、おのおの長さ1,000mmで延出している。小口板14a(24a)、14b(24b)の外方に、外径22mm、肉厚2.5mmの鞘管15(25)が設けられ、鞘管15(25)の内面には、外径17mm、肉厚2mm、長さが1,000mmの入出管18(28)の一方の端部が融着されている。
【0051】
熱交換器Heは、
図4に示されるように、集熱パネル1の下側横ヘッダ10b間の間隔gB(33mm)に集熱パネル2の下側横ヘッダ20bが、縦管11間の間隔gC(47mm)に集熱パネル2の縦管21が、上側横ヘッダ10a間の間隔gB(33mm)に集熱パネル2の上側横ヘッダ20aがおのおの嵌入された形態である。これらの集熱パネル1と集熱パネル2とは、上下横ヘッダ10及び20の上下面に配置された板状のプラスチック樹脂製の平板(図示せず)又はプラスチック樹脂製の小径パイプ(図示せず)と、上下横ヘッダ10又は20とを融着することによって一体化されている。あるいは、慣用のプラスチック樹脂製の結束バンドを用いて、集熱パネル1と集熱パネル2とを一体化してもよい。集熱パネル1の各々と集熱パネル2の各々とは、両端同士が横ヘッダの長さ方向にd1(60mm)の段差をもって交互に配置される。熱交換器Heは、全長L
1が1,527mm、全高h
1が757mm、奥行き(厚さ)D
1が600mmである。
【0052】
(熱交換器Heの製造方法)
以下に、熱交換器Heの製造方法を説明する。集熱パネル1及び集熱パネル2の上下横ヘッダ10(20)、縦管11(21)及び縦ヘッダ12(22)はいずれも、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂(PPR樹脂)を押出成形して準備することができる。上下横ヘッダ10(20)の側面に、
図6に示されるように、その長さ方向に沿って複数の取付孔Haを設ける。複数の取付孔Haの間隔は、複数の縦管11(21)の配置間隔gA(7mm)と整合させる。
【0053】
次いで、上下横ヘッダ10(20)の取付孔Haの各々に、縦管11(21)の各々の両端部を嵌合してその外周面を融着することによって、上下横ヘッダ10(20)間に複数の縦管11(21)を間隔gA(7mm)で並列に配置する。
【0054】
次いで、上下横ヘッダ10(20)の右端部に、プレート状の小口板14b(24b)を融着し、上側横ヘッダ10a(20a)の左端部にも小口板14b(24b)を融着する。後者の小口板14b(24b)には鞘管15(25)を融着し、鞘管15(25)の内面にはスペーサ管17(27)を融着する。下側横ヘッダ10b(20b)の左端部には、小口板14aを融着する。小口板14aには貫通孔Hbを設け、外方には鞘管15(25)を融着し、鞘管15(25)の内面には接続管16c(26c)を融着する。
【0055】
次いで、接続管16c(26c)及びスペーサ管17(27)の外端に、縦ヘッダ12(22)を立設する。縦ヘッダ12(22)には、接続管16c(26c)及びスペーサ管17(27)と整合する取付孔Haを設ける。縦ヘッダ12(22)の取付孔Haには、接続管16c(26c)及びスペーサ管17(27)を嵌合して融着する。
【0056】
縦ヘッダ12(22)の下端部には、プレート状の小口板14b(24b)を融着し、上端部には、小口板14a(24a)を融着する。小口板14a(24a)には、鞘管15(25)を上方に突出させて融着し、鞘管15(25)の内面には、接続管16a(26a)を融着する。また、上側横ヘッダ10(20)の右端部の上面に取付孔Haを設け、この取付孔Haに、接続管16b(26b)を上方に突出するように嵌合し、融着する。
【0057】
一方、並列に配置される複数の集熱パネル1(2)の各々を接続するとともに、第1の熱媒を複数の集熱パネル1(2)に分配する頂部ヘッダ13a(23a)は、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂(PPR樹脂)を押出成形することによって得られる。また、並列に配置される複数の集熱パネル1(2)の各々を接続するとともに、第1の熱媒を複数の集熱パネル1(2)から収集する頂部ヘッダ13b(23b)もまた、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂(PPR樹脂)を押出成形することによって得られる。頂部ヘッダ13(23)の一側面に、その長さ方向に沿って、複数の接続管16(26)を嵌合して融着するための複数の取付孔Haを間隔60mmで設ける。
【0058】
頂部ヘッダ13(23)の前端部にプレート状の小口板14b(24b)を融着し、後端部に小口板14a(24a)を融着する。小口板14a(24a)に貫通孔Hbを設け、その外方に鞘管15a(25a)を融着し、鞘管15a(25a)の内面に、入出管18(28)の一方の端部を融着する。
【0059】
頂部ヘッダ13(23)の複数の取付孔Haに、複数の集熱パネル1(2)の各々の接続管16(26)の上端を嵌合してその外周部を融着することによって、複数の集熱パネル1(2)が並列に配置されて一体的に連通接続された熱交換器H1(H2)を得る。
【0060】
次いで、
図4に示されるように、熱交換器Iの複数の集熱パネル1の上下横ヘッダ10間の間隔gB及び縦パイプ11間の間隔gCに、熱交換器IIの複数の集熱パネル2を嵌入する。さらに、上下横ヘッダ10及び20の上下面に、板状のプラスチック樹脂製の平板(図示せず)又はプラスチック樹脂製の小径パイプ(図示せず)を配置し、それらと上下横ヘッダ10又は20とを融着する。
【0061】
(第1の熱媒の流れ)
図5には、熱交換器He内における第1の熱媒の流れの方向を示す。第1の熱媒は、熱交換器H1(H2)の左側に設けられた頂部ヘッダ13a(23a)の後端から延出する第1の熱媒給排管18a(28a)から供給され、右側に設けられた頂部ヘッダ13b(23b)の後端から延出する第2の熱媒給排管18b(28b)から排出される。第1の熱媒給排管18a(28a)から供給される第1の熱媒の水流f1は、頂部ヘッダ13a(23a)内を横水流f2で案内され、頂部ヘッダ13a(23a)の下面から垂下する集熱パネル1(集熱パネル2)の各々の接続管16a(26a)で下降流f3に方向転換される。ついで、第1の熱媒は、縦ヘッダ12(22)内を下降流f4として案内され、縦ヘッダ12(22)の下端部において連通する集熱パネル1(2)の各々の接続管16c(26c)で横水流f5に方向転換される。第1の熱媒は、下側横ヘッダ10b(20b)内を横水流f6で案内され、下側横ヘッダ10b(20b)と直交する複数の縦管11(21)の各々内を上昇流f7として案内される。複数の縦管11(21)の各々から上側横ヘッダ10a(20a)に案内された第1の熱媒は、上側横ヘッダ10a(20a)で横水流f8に方向転換され、上側横ヘッダ10a(20a)の右端部の上面から立設する接続管16b(26b)で上昇流f9に方向転換される。第1の熱媒は、接続管16b(26b)に直交する頂部ヘッダ13b(23b)で横水流f10に方向転換されて収集され、第2の熱媒給排管18b(28b)から排出流f11として排出される。このように、第1の熱媒は、縦ヘッダ12(22)内を下降流として流れ、複数の縦管11(21)内を上昇流として流れることになる。
【0062】
[熱交換システムの実施例]
以下に、本発明に係る熱交換器を用いた熱交換システムの実施例を説明する。
図7は、本発明に係る熱交換器を用いた熱交換システムの一例である熱交換システム5の構成を示す。この熱交換システム5は、例えば毛髪や浮遊物等の異物を含む排湯水である第2の熱媒から熱を回収する目的で用いることができる。熱交換システム5は、現場打ちコンクリート、コンクリート二次製品又はプラスチック樹脂製の貯湯槽3内に1つ又は複数の熱交換器Heを配置し、貯湯槽3に流入及び流出する第2の熱媒(排湯水)の温熱を、熱交換器He内を流れる第1の熱媒(例えば水道水)に伝達するものである。熱交換システム5は、熱交換器Heが、長さL
1方向を貯湯槽3の長辺方向入出側壁版31cと平行にして配置され、貯湯槽3に第2の熱媒を供給する流入回路と、貯湯槽3から第2の熱媒を排出する流出回路と、熱交換器Heに第1の熱媒を供給する給水回路と、熱交換器Heから流出する第1の熱媒の温度調整を実施する給湯回路とから構成することができる。
【0063】
(流入回路)
流入回路は、貯湯槽3に第2の熱媒を供給するためのものであり、
図7に示されるように、上流側の流入管35aと、慣用のコンクリート管33(450mm)と、コンクリート管33の下流側の流入管35bとを有するものとすることができる。流入管35aは、外径165mm、肉厚5.1mmの硬質ポリ塩化ビニル樹脂製(JISK6741)とすることができ、コンクリート管33の円筒面内側に面一で接続される。コンクリート管33の下側内面には、アングル形状のプラスチック樹脂製の受材41が配置され、受材41上には、ステンレス鋼棒の円弧状の取手42と上面が開放されたネット張りの籠40とを有するプラスチック樹脂製のヘアキャッチャー4が載置される。
【0064】
ヘアキャッチャー4の上下方向中央より下側位置に、コンクリート管33の円筒面と貯湯槽3の流入側壁版31aとを貫通する、流入管35aと同質同径の流入管35bが配置される。流入管35bの上方には、コンクリート管33の円筒面と流入側壁版31aとを貫通する、流入管35aと同質同径のオーバーフロー管36が配置される。流入管35bは、貯湯槽3の常水面WLより下方に配置され、オーバーフロー管36は、常水面WLより上方に配置される。オーバーフロー管36は、その下面が、流入管35aの上面より段差d
3(30mm)だけ下方に位置するように配置されることが好ましい。
【0065】
ヘアキャッチャー4や流入管35bが毛髪や浮遊物等で目詰まりが生じた場合には、流入管35aの上面より下面が段差d
3の低位置にあるオーバーフロー管36から貯湯槽3内に第2の熱媒が供給されるため、コンクリート管33内の水位上昇は発生しない。また、オーバーフロー管36上方の流入側壁版31aの内側に慣用の水位センサー(図示せず)を設置し、適宜場所にブザーを配置すれば、ヘアキャッチャー4の目詰まり等を通知することが出来る。
【0066】
(流出回路)
流出回路は、貯湯槽3から第2の熱媒を排出するためのものであり、
図7に示されるように、排水管34と排出管37とを有する。排水管34は、貯湯槽3内の流出側壁版31b側に配置され、下端に流入管35aと同質同径の直管34bが嵌合し、円筒部の一側面から継手34cが突出するとともに上端が開放されたT字管34aを有しており、慣用のプラスチック樹脂製のバンドで流出側壁版31bから支持される。継手34cには、流出側壁版31bを貫通して、流入管35aと同質同径の排出管37が接続されている。排出管37は、その下面が、貯湯槽3の常水面WLより段差d
2(30mm)だけ下方に位置するように配置されることが好ましい。
【0067】
貯湯槽3内に流入した第2の熱媒は、熱交換器Heを、
図7(B)の貯湯槽3内の右上方から左下方に向かって傾斜状に貫流して排水管34に入り、その下端から上昇流となって、排出管37を横流して排水され、第2の熱媒が熱交換器Heに長く接触することで、集熱面内の第1の熱媒に温熱を効率的に付与することができる。また、排水管34の下方が目詰まりした場合、貯湯槽3内の常水面WLが上昇しても、排水管34の上端の開放面から第2の熱媒が流入し、排水管37を介して排水されるため、排水管34及び排水管37内に第2の熱媒が滞留しても貯湯槽3及びコンクリート管33の近傍を汚損することはない。
【0068】
(給水回路)
給水回路は、熱交換器Heに第1の熱媒を供給するためのものであり、
図7(A)に示されるように、給水ポンプ50と給水管53aと給水管53bとを有するものとすることができ、例えばプラスチック樹脂製の給水管53aを介して、給水源から給水ポンプ50を経由して貯湯タンク51に接続される。給水管53aの途中から給水管53bが分岐し、給水管53bは、貯湯槽3内に配置される熱交換器Heの第1の熱媒給排管18a(28a)に連通する。給水管53aからの分岐部には、流水を停止するメンテナンス用の仕切弁55bが配置されることが好ましく、給水管53bと第1の熱媒給排管18a(28a)との接続部には、仕切弁55cが配置されることが好ましい。
【0069】
(給湯回路)
給湯回路は、熱交換器Heから流出する第1の熱媒の温度調整を実施するためのものであり、
図7(A)に示されるように、給水管53と給湯管54bと貯湯タンク51とを有するものとすることができる。給湯管54bは、仕切弁55dを介して、貯湯槽3内に配置される熱交換器Heの第2の熱媒給排管18b(28b)に連通するとともに、メンテナンス用の給湯用仕切弁55bを経由して給水管53aに連通する。給水用仕切弁55bと給湯用仕切弁55bとの間の給水管53aに、仕切弁55aが配置される。給湯回路は、熱源機52と、貯湯タンク51と熱源機52との間に配置された給湯管54cと、循環ポンプ56を経由する給水管53cとをさらに有し、貯湯タンク51から、蛇口等に連続する給湯管54aが配管される。
【0070】
(熱交換システムの運転)
熱交換システムは、以下のとおり稼働させることができる。例えば排湯水である第2の熱媒は、上流側の流入管35aを介して、コンクリート管33の下側に配置されるヘアキャッチャー4で毛髪や浮遊物等の異物が除去された後、下流側の流入管35bから貯湯槽3内に流入する。流入した第2の熱媒は、熱交換器Heの周囲を傾斜状に貫流し、流出側壁版31b側の排水管34下端から上昇流で流水し、排出管37を介して排出される。
【0071】
例えば水道水である第1の熱媒は、給水源から給水ポンプ50と給水管53a、53bとを経由して貯湯槽3内の熱交換器Heに流入し、熱交換器He内を流れながら排湯水の温熱を回収し、給湯管54bと給水管53aとを経由して貯湯タンク51に送られ、循環ポンプ56を経由して熱源機52に流入する。第1の熱媒は、熱源機52で加温され、給湯管54cを介して貯湯タンク51に送られ、貯湯タンク51から給湯管54aによって蛇口等の端末器具に送られる。
【0072】
ヘアキャッチャー4に毛髪や浮遊物等の異物が堆積した場合には、コンクリート管33上面の蓋33aを開放して、取手42を治具(フック棒)で引っ掛けてヘアキャッチャー4を取り出し、洗浄後に受材41に載置すれば良く、ヘアキャッチャー4の設置によって熱交換器Heの洗浄頻度を延長することができ、ヘアキャッチャー4も容易に洗浄が可能である。
【0073】
熱交換器Heの運転中には、給水管53aの仕切弁55aを閉止し、両側の仕切弁55bを開放する。一方、貯湯槽3側のメンテナンスを実施する場合には、両側の仕切弁55bを閉止し、仕切弁55aを開放する。この場合には、給水ポンプ50からの第1の熱媒は、貯湯タンク51に直接送られ、循環ポンプ56を経由して熱源機52に送水られる。次いで、第1の熱媒は、熱源機52で加温され、給湯管54cを介して貯湯タンク51に戻り、貯湯タンク51から蛇口等の端末器具に送られる。貯湯槽3内において第2の熱媒に接触しない位置に配置される仕切弁55c及び各仕切弁55dは、第1の熱媒の熱交換器Heへの流出入を停止すると共に、入出管18及び28を取り外して熱交換器Heの拘束を解き、メンテナンスを実施することが出来る。
【0074】
第2の熱媒に含まれる毛髪や浮遊物等の異物によってヘアキャッチャー4からの流水が停止した場合は、コンクリート管33内の水位が上昇しても、排湯水はオーバーフロー管36から貯湯槽3に流水する。また、排水管34内の上昇流が停止した場合は、貯湯槽3内の常水面WLが上昇しても、第2の熱媒は排水管34の上端から流入し、排水管37を介して排水される。常水面WLと排出管37下面との段差d
2(30mm)によって、排出管37は常時過半が開放された状態であり、排水量不足になることなくスムーズに排出され、常水面の上昇を回避する。
【0075】
本明細書に係る熱交換器及び熱交換システムは、上記の実施例においては、排温水内に熱交換器を浸漬し、熱交換器内に水を流水する液−液熱交換器及び熱交換システムとして説明されているが、これに限定されるものではなく、熱交換器内に水を通水し高温の排気ガスと熱交換する気−液熱交換器や、熱交換器内に空気を流し高温の排気ガスと熱交換する気−気熱交換器として用いることもでき、当業者であれば、本明細書に記載された熱交換器及び熱交換システムの形態を、気−液熱交換器及び気−気熱交換器として用いるためにどのように改変すればよいか、容易に理解することができる。