【課題】Ti/Si比が4:3である結晶性シリコチタネートとして、海水中においてセシウム及びストロンチウムの吸着性能の高い結晶性シリコチタネートを、低い水熱合成温度により製造できる、工業的に有利な製造方法を提供すること。
第一工程において、ハロゲン源を、四塩化チタンに対するハロゲン源中のハロゲン原子のモル比が0.3以上2.3以下となる量で添加する、請求項1〜3の何れか1項に記載の結晶性シリコチタネートの製造方法。
第一工程において、ケイ酸源と、ハロゲン含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン含有カリウム化合物と、ハロゲン非含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン非含有カリウム化合物と、四塩化チタンと、水とを混合して、混合ゲルを得る、請求項1〜4の何れか1項に結晶性シリコチタネートの製造方法。
第一工程において、混合ゲル中のTiとSiとのモル比Ti/Siが0.5以上3.0以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加する、請求項1〜6の何れか1項に記載の結晶性シリコチタネートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法について、その好ましい態様に基づいて詳細に説明する。本発明の製造方法は、一般式;Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O、(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(これらの式中、xは0超1未満の数を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートから選ばれる少なくとも一種(以下、特に断りがない場合、単に「結晶性シリコチタネート」又は「前記結晶性シリコチタネート」という)を製造するものである。
【0013】
本発明の製造方法における第一工程は、ケイ酸源と、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物と、四塩化チタンと、四塩化チタン以外のハロゲン源と、水とを混合し混合ゲルを製造する工程である。
【0014】
第一工程において用いられるケイ酸源としては、水溶性のものが挙げられる。そのようなケイ酸源としては、例えば、ケイ酸ソーダやケイ酸カリ等のケイ酸塩が挙げられる。また、ケイ酸アルカリ(すなわちケイ酸のアルカリ金属塩)をカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸も挙げられる。ケイ酸源としてケイ酸ソーダやケイ酸カリを用いる場合、該ケイ酸ソーダやケイ酸カリを、後述するナトリウム化合物やカリウム化合物と兼用することも可能である。
【0015】
活性ケイ酸は、ケイ酸アルカリ水溶液を例えばカチオン交換樹脂に接触させてカチオン交換して得られるものである。ケイ酸アルカリ水溶液の原料としては、通常水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液が好適に用いられる。このものは比較的安価であり、容易に手に入れることができる。また、Naイオンを嫌う半導体用途では、ケイ酸カリウム水溶液が原料としてふさわしい。固体状のメタケイ酸アルカリを水に溶かしてケイ酸アルカリ水溶液を調製する方法もある。メタケイ酸アルカリは晶析工程を経て製造されるので、不純物の少ないものがある。ケイ酸アルカリ水溶液は、必要に応じて水で希釈して使用する。
【0016】
活性ケイ酸を調製するときに使用するカチオン交換樹脂は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に制限されない。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触工程では、例えばケイ酸アルカリ水溶液をシリカが濃度3質量%以上10質量%以下となるように水に希釈し、次いで、希釈したケイ酸アルカリ水溶液をH型強酸性又は弱酸性カチオン交換樹脂に接触させて脱アルカリする。更に必要に応じてOH型強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱アニオンすることができる。この工程によって、活性ケイ酸水溶液が調製される。ケイ酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂との接触条件の詳細については、従来、様々な提案が既にあり、本発明ではそれら公知のいかなる接触条件も採用することができる。
【0017】
例えば、非特許文献3においてケイ酸源として高分散SiO
2粉末を用いているのに対し、本発明の製造方法においてケイ酸源として、ケイ酸ソーダ又は活性ケイ酸を用いる場合、汎用シリカ原料を使用することによる製造コストの低減が図れる利点を有するため好ましい。
【0018】
第一工程において用いられるナトリウム化合物としては、例えば、ハロゲン非含有化合物及びハロゲン含有化合物が挙げられる。ハロゲン非含有化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられる。これらのナトリウム化合物のうち、炭酸ナトリウムを用いると炭酸ガスが発生するため、そのようなガスの発生がない水酸化ナトリウムを用いることが、中和反応を円滑に進める観点から好ましい。また後述するように、ナトリウム化合物としてハロゲン化ナトリウム等のハロゲン含有化合物を用いて、ナトリウム化合物をハロゲン源と兼用することも可能である。ナトリウム化合物は通常、水溶性のものが用いられる。
【0019】
第一工程において用いられるカリウム化合物としては、ハロゲン非含有化合物及びハロゲン含有化合物が挙げられる。ハロゲン非含有化合物としては、水酸化カリウムや炭酸カリウムが挙げられる。ナトリウム化合物と同様の理由から水酸化カリウムが好ましい。また後述するように、カリウム化合物として、ハロゲン化カリウム等のハロゲン含有化合物を用いて、カリウム化合物をハロゲン源と兼用することも可能である。カリウム化合物は通常、水溶性のものが用いられる。
【0020】
例えば、第一工程において、ナトリウム化合物及びカリウム化合物のうちナトリウム化合物のみを用いた場合、結晶性シリコチタネートとしてNa
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートを得ることができる。また例えば、第一工程においてナトリウム化合物及びカリウム化合物のうちカリウム化合物のみを用いた場合、結晶性シリコチタネートとしてK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートを得ることができる。
【0021】
また、例えば第一工程において、ナトリウム化合物及びカリウム化合物を用いた場合、結晶性シリコチタネートとして、Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oを含むか、或いは(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oを含むものを得ることができる。
【0022】
第一工程においてカリウム化合物を用いた場合、結晶化度が高く、セシウム吸着性能が高い結晶性シリコチタネートが得やすいため好ましい。
【0023】
第一工程においてナトリウム化合物及びカリウム化合物を用いる場合は、混合ゲル中において、以下に定義されるA’のモル数に対するKのモル数の比が5%以上50%以下、特に5%以上30%以下となるように、ナトリウム化合物及びカリウム化合物を添加することがより好ましい。ここで混合ゲル中のA’のモル数は、以下の式で表される。
A’のモル数=ナトリウム化合物由来のナトリウムイオンのモル数+カリウム化合物由来のカリウムイオンのモル数
なお、上述したケイ酸源としてケイ酸ソーダ又はケイ酸カリを用いる場合、該ケイ酸ソーダやケイ酸カリ中に含まれるナトリウムイオンやカリウムイオンの量は、A’のモル数の算出に含める。この場合、A’のモル数は下記の式で求められる。
A’のモル数=ケイ酸ソーダ由来のナトリウムイオンのモル数+ケイ酸カリ由来のカリウムイオンのモル数+ケイ酸ソーダ以外のナトリウム化合物由来のナトリウムイオンのモル数+ケイ酸カリ以外のカリウム化合物由来のカリウムイオンのモル数
【0024】
本発明の結晶性シリコチタネートの製造方法においては、チタン源として四塩化チタンを用いる。酸化チタン等の他のチタン化合物をチタン源とした場合には、後述する比較例1において例証されるとおり、未反応の酸化チタンが残存したり、あるいはTi:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートが生成しやすい。そこで本発明ではチタン源として四塩化チタンを用いている。この四塩化チタンは、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0025】
第一工程において、ケイ素源及び四塩化チタンは、混合ゲルにおけるTiとSiとのモル比Ti/Si比が0.5以上3.0以下となるような量で添加することが、A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(AはNa、K又はNa及びKを示す)で表される結晶性シリコチタネートとして結晶化度の高いものが得やすい等の理由から、この結晶性シリコチタネートのセシウム及びストロンチウムの吸着性能が向上しやすいため好ましい。この観点から、混合ゲル中のTi/Si比は、0.5以上3.0以下であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましく、1.8以上2.2以下であることが更に好ましい。
【0026】
また、混合ゲルに占めるSiO
2換算のケイ酸源濃度とTiO
2換算の四塩化チタン濃度の総量が2.0質量%以上40質量%以下であり、かつ混合ゲルに占めるA’
2Oのモル数とSiO
2のモル数との比がA’
2O/SiO
2=0.5以上3.0以下となるようにケイ酸源及び四塩化チタンを添加することが望ましい。
ここで混合ゲル中のA’
2Oのモル数は以下の式で表される。
A’
2Oのモル数=前記のA’のモル数−四塩化チタン由来の塩化物イオンのモル数−ハロゲン源由来のハロゲン化物イオンのモル数)×0.5
【0027】
前記範囲内にケイ酸源及び四塩化チタンの添加量を調整することで、TiとSiのモル比が4:3である目的の結晶性シリコチタネートの収率を満足すべき程度に高くすることができ、かつ、TiとSiのモル比が1:1の生成物が生成することを効果的に防止することができる。この観点から、混合ゲルに占めるSiO
2換算のケイ酸源濃度とTiO
2換算の四塩化チタン濃度の総量は、3.0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。また、混合ゲルに占めるA’
2OとSiO
2のモル比はA’
2O/SiO
2=0.7以上2.5以下となることがより好ましく、1.0以上1.8以下となることが特に好ましい。
【0028】
本発明者らは、Ti/Si比が4:3である結晶性シリコチタネートを低温での水熱処理により結晶化させる因子について鋭意検討した結果、ハロゲンが効果的であることを見いだした。本発明で用いる混合ゲルには上述したように、四塩化チタンが含まれているところ、本発明者らはこれに加えて四塩化チタン以外のハロゲン源(以下、単にハロゲン源ともいう)を更に含有させることが重要であることを知見した。
【0029】
ハロゲン源としては、例えば、ハロゲン化金属、ケイハロゲン化金属、ハロゲン化アンモニウム等の無機化合物を挙げることができる。ハロゲン化金属としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化リチウム等のハロゲン化アルカリ金属、四塩化チタン以外のハロゲン化チタン(IV)等を挙げることができる。これらのハロゲン源におけるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。また、ケイハロゲン化金属としては、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化リチウム等のケイフッ化金属や、ケイ塩化ナトリウム等のケイ塩化物等を挙げることができる。ハロゲン源としてはこれらのうち、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
ハロゲン源としては、水溶性のものが好ましく、特に、水に溶解してハロゲン化物イオンを電離しうるものを用いると、本発明の効果が高くなるため好ましい。このようなハロゲン源としては、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化銀等のハロゲン化金属及びハロゲン化アンモニウムが挙げられる。また、ハロゲン源として、フッ化物を用いることも、SiO
2との反応性が高いため好ましい。これらの理由から特に好ましいハロゲン源としては、フッ化金属、フッ化アンモニウム、ケイフッ化アルカリが挙げられる。とりわけ、フッ化アルカリ金属を用いることが好ましい。
【0031】
また、ハロゲン源として、混合ゲルに添加する他の成分を兼用可能な化合物を用いると、省コスト化が容易であり、また水熱合成後に不要な副生物等を低減が容易である等の観点から好ましい。特に、ハロゲン源として、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物であるハロゲン源を用いると、該ハロゲン源を本発明の製造方法で用いるナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物と兼用させることができる。この兼用は、原料配合組成物の簡素化による計量ミスの防止の利点があることから好ましい。ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物であるハロゲン源としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム等を挙げることができる。ハロゲン化ナトリウムとしては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムが挙げられ、ハロゲン化カリウムとしては、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。
【0032】
混合ゲルにおける四塩化チタン以外のハロゲン源の量は、四塩化チタン1モルに対して、該ハロゲン源中のハロゲン原子のモル数の比が0.3以上2.3以下となる量であることが好ましい。この比が0.3以上であることは、水熱処理温度を低下させるという本発明の効果を一層高める観点から好ましい。また、この比が2.3以下であることは、これ以上ハロゲン源を使用しても本発明の効果に大きな差が認められない場合が多いことから、ハロゲン源を必要以上に使用しないという省資源の観点から好ましい。これらの観点から、ハロゲン源は前記の比が0.3以上2.3以下となるように添加することがより好ましく、0.7以上2.0以下となるように添加することが更に好ましく、0.9以上1.7以下となるように添加することが特に好ましい。
【0033】
また、混合ゲルにおける四塩化チタン以外のハロゲン源由来のハロゲン化物イオンXのモル数は、該混合ゲル中の上記のA’のモル数に対するモル比X/A’が0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.14以上0.40以下であることがより好ましい。
特にハロゲン源として、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物であるハロゲン源を用いる場合、つまりハロゲン源をナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物と兼用させる場合、前記のモル比X/A’は0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.14以上0.40以下であることがより好ましい。ここで、本明細書中、特に断らない場合、ハロゲン源をナトリウム化合物として用いているときにおける「ナトリウム化合物」はこのハロゲン源を含む。同様に、ハロゲン源をカリウム化合物として用いているときに「カリウム化合物」は、このハロゲン源を含む。
【0034】
本発明において、ハロゲン源として、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物であるハロゲン源を用いる場合、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物の全てとして、ハロゲン含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン含有カリウム化合物を用いてもよい。しかしながら、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物の一部としてハロゲン含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン含有カリウム化合物を用いることが好ましい。この場合、第一工程における混合ゲルは、ケイ酸源と、ハロゲン含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン含有カリウム化合物と、ハロゲン非含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン非含有カリウム化合物と、四塩化チタンと、水とを混合して得られる。
【0035】
このようにハロゲン含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン含有カリウム化合物と、ハロゲン非含有ナトリウム化合物及び/又はハロゲン非含有カリウム化合物とを併用する例としては、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物のうち、ナトリウム化合物のみを用いる場合において、このナトリウム化合物としてハロゲン含有ナトリウム化合物及びハロゲン非含有ナトリウム化合物を用いる。
(b)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物のうち、カリウム化合物のみを用いる場合において、このカリウム化合物としてハロゲン含有カリウム化合物及びハロゲン非含有カリウム化合物を用いる。
(c)ナトリウム化合物及びカリウム化合物を用いる場合において、ナトリウム化合物の一部又は全部としてハロゲン含有ナトリウム化合物を用いるか、或いは/且つ、カリウム化合物の一部又は全部としてハロゲン含有カリウム化合物を用いる。ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物の一部としてハロゲン含有化合物を用いた場合、残部としてハロゲン非含有化合物を用いる。
【0036】
このうち(c)の好ましい態様としては以下の(c−1)〜(c−5)が挙げられる。(c−1)ナトリウム化合物としてハロゲン含有ナトリウム化合物のみ又はハロゲン含有ナトリウム化合物及びハロゲン非含有ナトリウム化合物を用い、カリウム化合物としてハロゲン非含有カリウム化合物のみを用いる。
(c−2)カリウム化合物としてハロゲン含有カリウム化合物のみ又はハロゲン含有カリウム化合物及びハロゲン非含有カリウム化合物を用い、ナトリウム化合物としてハロゲン非含有ナトリウム化合物のみを用いる。
(c−3)ナトリウム化合物としてハロゲン含有ナトリウム化合物及びハロゲン非含有ナトリウム化合物を用い、且つ、カリウム化合物として、ハロゲン含有カリウム化合物及びハロゲン非含有カリウム化合物を用いる。
(c−4)ナトリウム化合物としてハロゲン含有ナトリウム化合物及びハロゲン非含有ナトリウム化合物を用い、且つ、カリウム化合物として、ハロゲン含有カリウム化合物のみを用いる。
(c−5)ナトリウム化合物としてハロゲン含有ナトリウム化合物のみを用い、且つ、カリウム化合物として、ハロゲン含有カリウム化合物及びハロゲン非含有カリウム化合物を用いる。
【0037】
本発明の製造方法としては、以下の(イ)〜(ハ)の1又は2以上を満たす態様が好ましく、全てを満たす態様が特に好ましい。
(イ)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物としてハロゲン非含有ナトリウム化合物を用いる。
(ロ)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物としてカリウム化合物を用いる、且つ/或いは、ケイ酸源としてケイ酸カリを用いる。
(ハ)ハロゲン源としてフッ化物を用いる。
【0038】
四塩化チタンに加えて、四塩化以外のハロゲン源を含有した第一工程の混合ゲルは、驚くべきことに、第二工程において、110〜120℃程度の低温で水熱反応させても、結晶化度の高い結晶性シリコチタネートが得られるものである。
【0039】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、四塩化チタン及びハロゲン源は、それぞれ水溶液の形態で反応系に添加することができる。場合によっては固体の形態で添加することもできる。更に第一工程では、得られた混合ゲルに対して、必要があれば純水を用いて該混合ゲルの濃度を調整することができる。
【0040】
第一工程において、ケイ酸源、ナトリウム化合物、カリウム化合物、四塩化チタン及びハロゲン源は、種々の添加順序で添加することができる。例えば(1)ケイ酸源、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物並びに四塩化チタンを予め混合したものと、ハロゲン源とを混合すると、四塩化チタンとハロゲン源との直接反応をより一層効果的に防止できる観点から好ましい。その他のハロゲン源の添加態様としては、(2)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物とハロゲン源をあらかじめ混合したのちケイ酸源を混合し、最後に四塩化チタンを混合する態様、(3)ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物とケイ酸源を混合し、水に溶解したハロゲン源を混合し、最後に四塩化チタンを混合する態様が挙げられる。
【0041】
(1)の場合、四塩化チタンの添加の態様としては(1−1)ケイ酸源並びにナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物の混合物と四塩化チタンとを混合する態様を採用すると、四塩化チタンから塩素の発生をおさえる点で好ましい。また、(1)の場合における別の添加順序として、(1−2)ケイ酸アルカリをカチオン交換することによって得られる活性ケイ酸(以下、単に「活性ケイ酸」ということもある。)水溶液と四塩化チタンとを混合したものに、ナトリウム化合物及び/又はカリウム化合物を添加する、という態様を採用することもできる。
【0042】
四塩化チタンはその水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。同様に、ナトリウム化合物及びカリウム化合物も、その水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。また、ハロゲン源も、その水溶液の形態又は固体の形態で添加することができる。
【0043】
上記のいずれの態様の実施においても、ナトリウム化合物及びカリウム化合物は、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度(A’
2O濃度)がNa
2O換算で0.5質量%以上15質量%以下、特に0.7質量%以上13質量%以下となるように添加されることが好ましい。混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量及び混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(以下「ナトリウム及びカリウムの合計濃度(第一工程でカリウム化合物を用いない場合、ナトリウム濃度)」と言う)は、以下の式で計算される。
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量(g)=前記のA’のモル数−四塩化チタン由来の塩化物イオンのモル数−ハロゲン源由来のハロゲン化物イオンのモル数)×0.5×Na
2O分子量
混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算の濃度(質量%)=混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量/(混合ゲル中の水分量+混合ゲル中におけるナトリウム及びカリウムの合計のNa
2O換算質量)×100
【0044】
ケイ酸源の選択と混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度の調整を組み合わせることにより、Ti:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネートの生成を抑制することができる。ケイ酸源としてケイ酸ソーダ又はケイ酸カリを用いた場合、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で2.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で4.5質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。また、ケイ酸源としてケイ酸アルカリをカチオン交換することにより得られる活性ケイ酸を用いた場合、Na
2O換算で1.0質量%以上とすることで、Ti:Siのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となり、一方、混合ゲル中のナトリウム及びカリウムの合計濃度をNa
2O換算で6.0質量%以下とすることで、Ti:Siのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートの生成を効果的に抑制することが可能となる。
【0045】
なお、ケイ酸源としてケイ酸ナトリウムを用いた場合は、ケイ酸ナトリウム中のナトリウム成分は、同時に混合ゲル中のナトリウム源となる。したがって、ここで言う「混合ゲル中におけるナトリウムのNa
2O換算質量(g)」とは混合ゲル中のすべてのナトリウム成分の和として計数される。同様に、「混合ゲル中におけるカリウムのNa
2O換算質量(g)」も混合ゲル中のすべてのカリウム成分の和として計数される。
【0046】
上記の各実施態様において、四塩化チタン及び/又はハロゲン源の添加は、それぞれ、均一なゲルを得るため一定の時間をかけて、水溶液として段階的又は連続的に行うことが望ましい。このため、四塩化チタン及び/又はハロゲン源の添加にはペリスタポンプ等を好適に用いることができる。
【0047】
第一工程により得られた混合ゲルは、後述する第二工程である水熱反応を行う前に、0.5時間以上2時間以下の時間にわたり、30℃以上100℃以下で熟成を行うことが、均一な生成物を得る点で好ましい。熟成工程は、例えば静置状態で行ってもよく、あるいはラインミキサーなどを用いた撹拌状態で行ってもよい。
【0048】
本発明においては第一工程において得られた前記混合ゲルを、第二工程である水熱反応に付して結晶性シリコチタネートを得る。水熱反応としては、結晶性シリコチタネートが合成できる条件であれば、いかなる条件であってもよく制限されない。通常、好ましくは105℃以上140℃以下、より好ましくは110℃以上130℃以下、更に好ましくは115℃以上125℃以下の温度において、好ましくは12時間以上96時間以下、更に好ましくは24時間以上72時間以下の時間にわたって反応させる。水熱反応温度が100℃を超える場合は、オートクレーブ中で加圧下で反応させる。反応時間は、合成装置のスケールに応じて選定できる。本発明においては、このように低い温度を採用しても、目的とする結晶性シリコチタネートを効率よく得ることが可能である。
【0049】
前記第二工程で得られた含水状態の結晶性シリコチタネートは、通常、乾燥させて乾燥状態のものとして各種用途に用いられる。
【0050】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、一般式;Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O、(Na
xK
(1-x))
4Ti
4O
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(これらの式中、xは0超1未満の数を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートから選ばれる少なくとも一種である。前記結晶性シリコチタネートはこれらの結晶性シリコチタネートのうち1種のみからなるものであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。また、これらのうち(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表される結晶性シリコチタネートは、xが一つの値をとる単一の化合物であってもよいし、xが2つの値をとるものの混合物であってもよい。また前記結晶性シリコチタネートは、nは1つの値のみをとっていてもよいし、nが2つ以上の値をとるものが混合していてもよい。本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートの第一の特徴は、これらの一般式から明らかなように、Ti:Siのモル比が4:3である点にある。前記結晶性シリコチタネートにおけるTi:Siのモル比がこの値であることは、該結晶性シリコチタネートをX線回折による構造解析で確認することができる。
【0051】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、セシウム及びストロンチウムの吸着材として用いる場合の吸着性能を高める観点から、該結晶性シリコチタネートをX線源にCu−Kαを用いて回折角(2θ)が5〜80°の範囲でX線回折測定すると、そのメーンピークが回折角(2θ)10〜13°の範囲に観察されることが好ましい。この範囲で検出されるピークは、前記結晶性シリコチタネートのうち、結晶方位が(0,1,0)であり、nが5〜7であるものに由来する。回折角(2θ)=10〜13°の範囲に前記結晶性シリコチタネートのメーンピークが検出される場合、これに加えて、27°〜29°及び/又は34°〜35°の範囲に更に前記結晶性シリコチタネートのピークが検出されることが好ましい。また、これらのピークは、前述した結晶性シリコチタネートのメーンピークの高さに対して5%以上40%以下の高さを有することが好ましい。
【0052】
本発明の製造方法によって得られる結晶性シリコチタネートは、一般式;Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O、(Na
xK
(1-x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2Oで表されるTi:Siのモル比が4:3であるものを主成分(主相)とするものであり、他の結晶性シリコチタネートが本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよい。例えば、本製造方法に由来するチタン酸ナトリウム(Na
4Ti
9O
20)又はその含水塩等のチタン酸塩の副生物が含有されていても差し支えない。しかしながら、本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートを、回折角(2θ)5〜80°の範囲でX線回折測定したときに、A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O以外の成分に由来するピークの高さが、前述した結晶性シリコチタネートのメーンピークの高さに対して40%以下、特に30%以下であることが好ましい。特に前記のX線回折測定において、結晶性シリコチタネートとして、少なくとも、TiとSiのモル比が1:1の結晶性シリコチタネートのピーク及び、TiとSiのモル比が5:12の結晶性シリコチタネートのピークが観察されないことが好ましい。前記のX線回折測定においては、A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O以外の成分に由来するピークが観察されないことがとりわけ好ましい。
【0053】
前記のピーク高さ比は、実際のX線回折測定で得られた回折ピークパターンをベースライン補正した回折ピークパターンに基づいて算出する。このベースライン補正はsonneveld-visser法により行う。前記の回折ピークパターンからピーク高さを求める際には、次のようにする。まず、一つのピークが有する2つの底点を結んで直線を得る。そして当該ピークの頂点から垂線を引いて該直線と交わらせ、得られた交点と該ピークの頂点との距離をピーク高さとする。
【0054】
また、本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、不純物として酸化チタンを含まないことが好ましい。酸化チタンを含まないことは、前記結晶性シリコチタネートをX線回折測定して得られる回折ピーク中に、酸化チタンのピークである2θ=25°が検出されないことによって確認することができる。
【0055】
本発明の製造方法で得られる結晶性シリコチタネートは、セシウム及び/又はストロンチウムの吸着除去特性に優れている。この特性を利用して、この結晶性シリコチタネートを必要に応じて常法に従い成形加工し、それによって得られた成形体をセシウム及び/又はストロンチウムの吸着材として好適に用いることができる。
【0056】
例えば、第二工程で得られた含水状態の結晶性シリコチタネートは上述したように乾燥し、得られた乾燥物を必要により解砕又は粉砕して粉末状(粒状を含む)とすることができる。また、含水状態の結晶性シリコチタネートを複数の開孔が形成された開孔部材から押出成形して棒状成形体を得、得られた該棒状成形体を乾燥させて柱状にしてもよいし、乾燥させた該棒状成形体を球状に成形したり、解砕又は粉砕して粒子状としてもよい。後者の場合つまり乾燥前に押出成形を行う場合、後述する分級方法により回収される結晶性シリコチタネートの収率を高めることができる。ここで、解砕とは、細かい粒子が集まって一塊になっているものをほぐす操作をいい、粉砕とはほぐされた固体粒子に対し,機械的な力を作用させさらに細かくする操作をいう。
【0057】
開孔部材に形成された孔の形状としては、円形、三角形、多角形、環形等を挙げることができる。開孔の真円換算径は0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましい。ここでいう真円換算径は、孔一つの面積を円面積とした場合の該面積から算出される円の直径である。押出成形後の乾燥温度は例えば例えば50℃以上200℃以下とすることができる。また乾燥時間は1時間以上120時間以下とすることができる。
【0058】
乾燥させた棒状成形体は、そのままでも吸着材として用いることができるし、軽くほぐして用いてもよい。また乾燥後の棒状成形体は粉砕して用いてもよい。これら各種の方法で得られた粉末状の結晶性シリコチタネートは、更に分級してから吸着材として用いることが、セシウム及び/又はストロンチウムの吸着効率を高める等の観点から好ましい。分級は、例えばJISZ8801−1に規定する公称目開きが1000μm以下、特に710μm以下の第1の篩を用いることが好ましい。また前記の公称目開きが100μm以上、特に300μm以上の第2の篩を用いて行うことも好ましい。更に、これら第1及び第2の篩を用いて行うことが好ましい。
【0059】
前記の成形加工のほかの例としては、例えば粉末状の結晶性シリコチタネート又はそれを含む粉末状の吸着材を顆粒状に成型するための造粒加工や粉末状の結晶性シリコチタネートをスラリー化して塩化カルシウム等の硬化剤を含む液中に滴下して結晶性シリコチタネートをカプセル化する方法、樹脂芯材の表面に結晶性シリコチタネートの粉末を添着被覆処理する方法、天然繊維または合成繊維で形成されたシート状基材の表面及び/又は内部に粉末状の結晶性シリコチタネート又はそれを含む粉末状の吸着材を付着させて固定化してシート状にする方法などを挙げることができる。造粒加工の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば攪拌混合造粒、転動造粒、押し出し造粒、破砕造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒(スプレードライ)、圧縮造粒等を挙げることができる。造粒の過程において必要に応じバインダーや溶媒を添加、混合してもよい。バインダーとしては、公知のもの、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。溶媒としては水性溶媒や有機溶媒等各種のものを用いることができる。
【0060】
本発明の製造方法によって得られる含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものは、放射性物質吸着材を充填してなる吸着容器及び吸着塔を有する水処理システムの吸着材として好適に使用することが出来る。
この場合、含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工して得られる顆粒状のものの形状や大きさは、吸着容器や充填塔に充填して、セシウム及び/又はストロンチウムを含む処理水を通水するのに適応するようにその形状及び大きさを適宜調整することが好ましい。
【0061】
また、本発明の製造方法によって得られる含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものは、更に磁性粒子を含有させることにより、セシウム及び/又はストロンチウムを含む水から磁気分離で回収可能な吸着材として使用することが出来る。磁性粒子としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の金属またはこれらを主成分とする磁性合金の粉末、四三酸化鉄、三二酸化鉄、コバルト添加酸化鉄、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の金属酸化物系磁性体の粉末が挙げられる。
含水状態の結晶性シリコチタネートを造粒加工した顆粒状のものに磁性粒子を含有させる方法としては、例えば、前述した造粒加工操作を磁性粒子を含有させた状態で行えばよい。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を表す。実施例及び比較例で使用した評価装置及び使用材料は以下のとおりである。
【0063】
<評価装置>
X線回折:Bruker社 D8 AdvanceSを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
ICP−AES:Varian社720−ESを用いた。Csの測定波長は697.327nm、Srの測定波長は216.596nmとしてCs及びSrの吸着試験を行った。標準試料はNaClを0.3%含有したCs:100ppm、50ppm及び10ppmの水溶液、並びにNaClを0.3%含有したSr:100ppm、10ppm及び1ppmの水溶液を使用した。
【0064】
<使用材料>
・3号ケイ酸ソーダ:日本化学工業株式会社製(SiO
2:28.96%、Na
2O:9.37%、H
2O:61.67%、SiO
2/Na
2O=3.1)。
・苛性ソーダ水溶液:工業用25%水酸化ナトリウム(NaOH:25%、H
2O:75%)。
・四塩化チタン水溶液:石原産業(株)製 TC−36(TiO
2:15.3%、HCl:28.3%、H
2O:56.4%)
・フッ化カリウム(ハロゲン源、KF:99%)。
・二酸化チタン:石原産業ST−01
・模擬海水:Cs及びSrをそれぞれ100ppm含有した0.3%NaCl水溶液を模擬海水とした。模擬海水はNaCl(99.5%):3.0151g、SrCl・6H
2O(99%):0.3074g、CsNO
3(99%):0.1481g、H
2O:996.5294gを混合して得た。
【0065】
〔実施例1〜5〕
<吸着材(結晶性シリコチタネート)の合成>
(1)第一工程
1Lビーカーに、3号ケイ酸ソーダ、苛性ソーダ水溶液をそれぞれ下記表1の量を秤量した後、撹拌して混合液を得た。この混合液を攪拌しながら、下記の量の四塩化チタン水溶液をペリスタポンプで30〜60分にわたって連続的に添加してTi含有混合液を製造した。フッ化カリウムをイオン交換水に溶解した溶液を、前記で得られたTi含有混合液に10〜15分にわたって連続的に添加して混合ゲルを得た。当該混合ゲルは、フッ化カリウムの添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。混合ゲル中における、四塩化チタンに対するハロゲン源のハロゲン原子のモル比、ナトリウムイオン及びカリウムイオンに対するハロゲン化物イオンのモル比A’/X、TiとSiとのモル比Ti/Si、混合ゲル中のSiO
2の濃度、TiO
2の濃度、Na
2O換算したナトリウム及びカリウムの濃度(A’
2OのNa
2O換算濃度)、A’
2OとSiO
2のモル比をそれぞれ下記の表1に示す。
【0066】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて下記の表1の温度に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に、下記の時間の水熱反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造から判断される組成を以下の表2に示す。また、得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを前記の方法によりベースライン補正して得られた補正後のX線回折チャートを
図1及び
図2に示す。
図1及び
図2に示すように、これらのX線回折チャートにおいては、2θ=10〜13°の範囲に、A
4Ti
4Si
3O
16・6H
2Oに由来する結晶性シリコチタネートのメーンピーク(ここでAはNa、K又はNa及びKを示す)が検出されており、このうち実施例2〜5で得られた結晶性シリコチタネートについては、このピークの強度が他のピークを上回っている。
【0067】
<Cs及びSrの吸着試験>
得られた塊状の結晶性シリコチタネートを乳鉢粉砕および600μmと300μmのフルイによる分級により顆粒状(300〜600μm)とした。この顆粒状の結晶性シリコチタネートを、100mlのポリ容器に0.5g取り、模擬海水100.00gを添加し、蓋をした後、内容物を振り混ぜた。内容物の振り混ぜは、ポリ容器の倒立を10回行うことにより行った(以下同様)。その後、静置して1時間経過した後、再び内容物を振り混ぜ、約50mlを5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。また、残りの50mlはそのまま静置し、更に23時間後(最初に振り混ぜてから24時間後)に再び振り混ぜた。そして、5Cのろ紙でろ過し、ろ過によって得られたろ液を採取した。採取されたろ液を対象として、ICP−AESを用い、ろ液中のCs及びSrの含有量を測定した。その結果を以下の表3に示す。
【0068】
〔比較例1〕
本比較例は、ハロゲン源を用いず、またチタン源として四塩化チタンに代えて二酸化チタンを用いた例である。
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液121.2g及びイオン交換水506.1gを混合し撹拌して混合液を得た。四塩化チタン水溶液に代えて二酸化チタン68.2gをイオン交換水270gに混合分散したスラリーを前記の混合液に5分間にわたって連続的に添加して混合ゲルを得た。当該混合ゲルは、二酸化チタンの添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。この混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行い、反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して結晶性シリコチタネートを得た。混合ゲル中のTiとSiとのモル比はTi:Si=2:1であった。混合ゲル中のSiO
2の濃度は2.47%、TiO
2の濃度は6.46%、Na
2O換算したナトリウム濃度(A’
2OのNa
2O換算濃度)は3.32%であった。得られた結晶性シリコチタネートのX線回折構造から判断される組成を以下の表2に示す。また得られた結晶性シリコチタネートのX線回折チャートを前記の方法によりベースライン補正して得られた補正後のX線回折チャートを
図4に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
図1及び
図2並びに表1及び表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例によれば、Ti:Siのモル比が4:3の結晶性シリコチタネートを、110℃〜120℃の低温で合成できることが判る。また表3に示す結果から、各実施例によれば、得られた結晶性シリコチタネートは、特にストロンチウムの吸着性能が高いことが判る。また、ハロゲン量を増加させることや、水熱処理温度を若干高めることで、ストロンチウムだけでなく、セシウム吸着性能の向上した結晶性シリコチタネートが得られることが判る。