【解決手段】針組立体10において、固定側ガイド30に対して移動側ガイド64が係合されており、固定側ガイド30が針軸方向に延びる案内溝34を有している一方、移動側ガイド64が案内溝34に案内される長手の案内ロッド65を有しており、案内ロッド65が案内溝34に嵌め入れられていると共に、案内ロッド65の案内溝34に嵌め入れられて針軸方向に案内される部分は、針軸方向に対して非平行な部分を有し、案内溝34を案内ロッド65の非平行な部分が通過することで、針孔16は針12から外れた位置に案内されて、針先カバー18が針先20を覆う位置に移動されることで、針12の軸直角方向で移動側ガイド64が固定側ガイド30に挟まれて保持されて、針先カバー18の軸ずれ方向への移動が阻止されるようになっている。
針ハブから突設された針が挿通される針孔を有する針先カバーが、該針に外挿されて針軸方向で移動可能に設けられており、該針先カバーを針先よりも先端側へ移動させることで該針先が覆われる針組立体において、
前記針ハブの外周側に位置して針軸方向に延びる案内溝が設けられていると共に、該案内溝に嵌め入れられて針軸方向に案内される長手の案内ロッドが前記針先カバーに設けられている一方、
該案内溝と該案内ロッドとにそれぞれ段差状部が設けられており、該案内溝に対して該案内ロッドが前記針の基端側から先端側に向かって針軸方向に案内されつつ移動させられて該案内溝の該段差状部の位置を該案内ロッドの該段差状部が越えることで該針の中心軸から前記針孔が外れる方向へ前記針先カバーが移動して該針先が該針先カバーで覆われるようになっていると共に、
該案内溝において該案内ロッドに当接して該案内ロッドを針軸方向に案内する案内面を設けて、該案内ロッドの該段差状部が該案内溝の該段差状部を越える前と後の何れの移動位置においても該案内ロッドが該案内溝に当接されて保持されるようになっていることを特徴とする針組立体。
前記案内溝において、溝深さ方向で対向位置する案内下面と案内上面を含んで前記案内面が構成されており、それら案内下面と案内上面との間で前記案内ロッドが挟まれて保持されている請求項1に記載の針組立体。
前記案内ロッドにおいて、前記案内溝に対する移動方向の後端側に位置して、該案内溝の後端側の開口部分に嵌まり込む嵌合部が設けられている請求項1又は2に記載の針組立体。
前記案内溝の溝底部と前記案内ロッドとが重ね合わされる部分において、前記針先カバーが前記針先を覆う位置へ移動することで相互に係止されて該案内ロッドの前記針の基端側への後退移動を阻止する完了位置ロック機構が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の針組立体。
針ハブから突設された針が挿通される針孔を有する針先カバーが、該針に外挿されて針軸方向で移動可能に設けられており、該針先カバーを針先よりも先端側へ移動させることで該針先が覆われる針組立体において、
前記針に対して固定的に設けられた固定側ガイドに対して、前記針先カバーに一体的に設けられた移動側ガイドが係合されており、
該固定側ガイドが針軸方向に延びる案内溝を有している一方、
該移動側ガイドが該案内溝に案内される長手の案内ロッドを有しており、該案内ロッドが該案内溝に嵌め入れられていると共に、
該案内溝に嵌め入れられて針軸方向に案内される該案内ロッドの部分は、針軸方向に対して非平行な部分を有し、該案内溝を該案内ロッドの該非平行な部分が通過することで、前記針孔は前記針から外れた位置に案内されて、
前記固定側ガイドは、前記針先カバーが前記針先を覆う位置に移動されることで、該針の軸直角方向で該移動側ガイドが該固定側ガイドに挟まれて保持されるように寸法付けられていることを特徴とする針組立体。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において患者に薬液等を注射したり輸液や輸血、人工透析、採血などの処置を行うに際しては、処置用の医療器具として、穿刺用の中空又は中実の針を備えた針組立体が用いられている。かかる針組立体は、一般に針ハブに対して針が突設された構造とされている。そして、その針ハブとして、例えばシリンジの雄ルアーに取り付けられる針基や、内針ハブ、シリンジの先端に一体形成されたシリンジハブなどが採用されることで、種々の処置に用いられる各種構造の針組立体が提供されている。
【0003】
ところで、針組立体を使用後に、抜去した針先が暴露されたままになっていると、医師や看護師、針組立体の廃棄業者等が暴露された針先で指等を誤って刺す誤穿刺事故の発生のおそれがある。誤穿刺事故が発生した場合、針先に付着した血液による感染症をひきおこしたり、針先に付着した薬液を意図せず摂取してしまう危険がある。
【0004】
そこで、使用後の針先を覆う針先カバーを設けた針組立体が提案されている。例えば特許第2974299号公報(特許文献1)に記載のものがそれであり、針に外挿されたキャップを、針組立体の使用後に、針の先端部側へ移動させて針先を覆うようになっている。また、針先がキャップで覆われた際には、キャップの針挿通孔を通じて針先が見えないように、針先が針挿通孔から偏心方向にずれて覆われるようになっている。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載された従来構造の針組立体では、
図23(a)〜(c)に概略構造を示すように、針先を針挿通孔からずらせて覆うために、キャップ状のバリアー部材から延びるロッド状のバリアーアーム2を、注射器に固定された溝状のガイド部材4で長さ方向へ案内させて針の基端側から先端側(
図23中の左側から右側)へ移動させる案内機構において、バリアーアーム2の長さ方向中間部分に角度Aの屈曲部が設けられている。なお、
図23において、バリアーアーム2は長さ方向中間部分だけを図示してあり、バリアーアームの一端側となる図中の左端には延長された先端部にバリアー部材が設けられている一方、バリアーアームの他端側となる図中の右端に延長された先端部に操作部が設けられている。
【0006】
そして、第1の位置(a)に示されるように、バリアーアーム2の屈曲部より先端側がガイド部材4内に位置した初期状態では、バリアーアーム2の先端に設けられたバリアー部材の挿通孔に対して針が同軸的に位置して挿通されている。一方、バリアーアーム2を先端側に押し出してバリアー部材を針の先端側に移動させることで針先を覆った状態では、第2の位置に示されるように、バリアーアーム2の屈曲部より後端側がガイド部材4内に位置することとなる。これにより、バリアーアーム2の屈曲部よりも先端側が針の中心軸に対して傾斜して延び出すこととなり、バリアーアーム2の先端に設けられたバリアー部材の挿通孔から針先がずれて覆われるようになっている。
【0007】
このように屈曲部を有するバリアーアーム2を採用する構造の針組立体では、
図23の(b)に示される押出方向の中間位置において、バリアーアーム2における屈曲部を含む前後両側の所定長さの領域がガイド部材4内を通過する際にも、バリアーアーム2の移動抵抗を軽減してスムーズな押出操作を実現するために、バリアーアーム2の幅寸法に比して、ガイド部材4の内法寸法を十分に大きく設定する必要がある。ところが、従来構造においては、バリアーアーム2の幅寸法が一定に形成されていることから、
図23(c)に示す第2の位置(カバー操作完了位置)では、バリアーアーム2の直線部分だけがガイド部材4内に位置して、ガイド部材4とバリアーアーム2との間に大きな隙間が発生して、バリアーアーム2がガイド部材4内で大きくがたついてしまう。そのために、カバー操作完了位置において、バリアーアームが大きくがたつき、一時的に針孔が針軸上に位置してしまいやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、針先カバーによる針先の保護位置において、案内ロッドが大きくがたつきにくい新規な構造の針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、針ハブから突設された針が挿通される針孔を有する針先カバーが、該針に外挿されて針軸方向で移動可能に設けられており、該針先カバーを針先よりも先端側へ移動させることで該針先が覆われる針組立体において、針ハブの外周側に位置して針軸方向に延びる案内溝が設けられていると共に、該案内溝に嵌め入れられて針軸方向に案内される長手の案内ロッドが前記針先カバーに設けられている一方、該案内溝と該案内ロッドとにそれぞれ段差状部が設けられており、該案内溝に対して該案内ロッドが前記針の基端側から先端側に向かって針軸方向に案内されつつ移動させられて該案内溝の該段差状部の位置を該案内ロッドの該段差状部が越えることで該針の中心軸から前記針孔が外れる方向へ前記針先カバーが移動して該針先が該針先カバーで覆われるようになっていると共に、該案内溝において該案内ロッドに当接して該案内ロッドを針軸方向に案内する案内面を設けて、該案内ロッドの該段差状部が該案内溝の該段差状部を越える前と後の何れの移動位置においても該案内ロッドが該案内溝に当接されて保持されるようになっていることを、特徴とする。
【0011】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、案内溝と案内ロッドのそれぞれに段差状部を形成して、案内溝の段差状部を案内ロッドの段差状部が越えることで、針の中心軸から針孔が外れる方向へ針カバーを移動させると共に、針カバーが針を覆うようにされている。この際、案内溝の段差状部を越える移動の前後において、案内ロッドが案内溝の案内面に対して当接して保持されるようにされていることから、案内ロッドの移動に際して、がたつきを小さく抑えることができる。それに伴い、針孔が針軸上に位置してしまうことが回避されて、針カバーが不用意に基端側へ移動することで針が針孔から突出するおそれが低減され得る。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る針組立体であって、前記案内溝において、溝深さ方向で対向位置する案内下面と案内上面を含んで前記案内面が構成されており、それら案内下面と案内上面との間で前記案内ロッドが挟まれて保持されているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、案内面が案内上面と案内下面を含んで構成されており、これら上下間で案内ロッドが挟まれて保持されていることから、例えば案内ロッドの前方への押込操作が安定して実現され得る。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る針組立体において、前記案内ロッドにおいて、前記案内溝に対する移動方向の後端側に位置して、該案内溝の後端側の開口部分に嵌まり込む嵌合部が設けられているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、案内ロッドの後端側に、案内溝の後端側開口部に嵌まり込む嵌合部が設けられていることから、より一層がたつきが抑えられる。
【0016】
本発明の第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係る針組立体において、前記案内溝の溝底部と前記案内ロッドとが重ね合わされる部分において、前記針先カバーが前記針先を覆う位置へ移動することで相互に係止されて該案内ロッドの前記針の基端側への後退移動を阻止する完了位置ロック機構が設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、完了位置ロック機構が、針組立体の内部に設けられることから、使用者が直接完了位置ロック機構に触れることができなくされている。これにより、意図せずロック機構が解除されるおそれが回避されて、一層確実に針先カバーによる針の保護状態が維持され得る。
【0018】
本発明の第5の態様は、針ハブから突設された針が挿通される針孔を有する針先カバーが、該針に外挿されて針軸方向で移動可能に設けられており、該針先カバーを針先よりも先端側へ移動させることで該針先が覆われる針組立体において、前記針に対して固定的に設けられた固定側ガイドに対して、前記針先カバーに一体的に設けられた移動側ガイドが係合されており、該固定側ガイドが針軸方向に延びる案内溝を有している一方、該移動側ガイドが該案内溝に案内される長手の案内ロッドを有しており、該案内ロッドが該案内溝に嵌め入れられていると共に、該案内溝に嵌め入れられて針軸方向に案内される該案内ロッドの部分は、針軸方向に対して非平行な部分を有し、該案内溝を該案内ロッドの該非平行な部分が通過することで、前記針孔は前記針から外れた位置に案内されて、前記固定側ガイドは、前記針先カバーが前記針先を覆う位置に移動されることで、該針の軸直角方向で該移動側ガイドが該固定側ガイドに挟まれて保持されるように寸法付けられていることを特徴とする、ものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた針組立体では、案内ロッドが案内溝内を基端側から先端側に案内されることで、針先カバーが先端に移動して針先を覆うようにされている。そして、この針先カバーが針先を保護する位置にある時に、移動側ガイドが固定側ガイドに挟まれて保持されることで、針先カバーの軸ずれ方向への移動が阻止されている。これにより、針先の保護位置での針先カバーのがたつきが小さく抑えられて、針孔が針軸上に位置するおそれが低減されている。従って、針先カバーが不用意に基端側に移動してしまった場合でも、針孔を通じて針が露出して誤穿刺が発生することが回避される。
【0020】
なお、案内ロッドの基端部が案内溝内に位置している時の、固定側ガイドによる移動側ガイドの保持態様としては、以下の第6の態様または第7の態様が好適に採用される。
【0021】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る針組立体であって、前記案内溝は、前記針の軸直角方向で対向位置する対向下面と対向上面を含んで構成されており、前記針先カバーが前記針先を覆う位置に移動されることで、該案内ロッドは該対向下面の先端と該対向上面の先端との間で挟まれて保持されていると共に、これら対向下面と対向上面の先端よりも基端側において、前記移動側ガイドが前記固定側ガイドに該針の軸直角方向で挟まれて保持されるようになっているものである。なお、本態様において、固定側ガイドの案内ロッドに対する先端側および基端側の各保持位置では、針軸方向で点状の当接でもよい。
【0022】
本発明の第7の態様は、前記第5の態様に係る針組立体において、前記案内溝は、前記針の軸直角方向で対向位置する対向下面と対向上面とを含んで構成されており、前記針先カバーが前記針先を覆う位置に移動されることで、該案内ロッドは該対向下面の先端側の面と該対向上面の先端側の面との間で挟まれて保持されるようになっているものである。なお、本態様では、案内ロッドを保持する案内溝の上下面が、針軸方向で所定長さに亘って案内ロッドに当接されることとなり、かかる案内ロッドを保持する上下面が針軸方向において少なくとも1カ所に設けられていればよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従う構造とされた針組立体によれば、針先カバーが針先を保護する状態での、針先カバーのがたつきが小さく抑えられる。これにより、針孔が針軸上に位置するおそれが低減されて、針先カバーが不用意に基端側に押し込まれた場合でも、針孔から針が突出して誤穿刺が発生することが回避され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、
図1〜5には、本発明の1実施形態としての針組立体10が使用前の初期状態で示されている。この針組立体10では、針12が針ハブとしてのシリンジ14の先端ノズル部から突設されており、針孔16を有する針先カバー18が針12に外挿されて組み付けられている。そして、この針先カバー18が針12の軸方向で移動可能とされており、針先カバー18を針12の先端側へ移動させることで、針先20が針先カバー18で覆われるようになっている。なお、以下の説明において、針12およびシリンジ14の軸方向とは、
図1中の左右方向を言い、先端側とは針先20の位置する
図1中の左方、基端側とは
図1中の右方を言う。また、上下方向とは、
図2中の上下方向を言う。
【0027】
より詳細には、シリンジ14は、略円筒形状の注射筒を構成しており、基端側には拡径された基端側開口部21が設けられている一方、有底構造の先端部には、軸方向外方に向かって突出する先端ノズル部22が設けられている。なお、先端ノズル部22の基端部外周面には、周方向に延びる溝状の括れ状部26が形成されている。また、シリンジ14の基端側開口部21の近くには、外周面に突出するフランジ部28が形成されている。
【0028】
さらに、シリンジ14の先端ノズル部22には、その中心孔に対して針12の基端部が挿入されて固着されている。この針12は中空針とされており、本実施形態では金属製とされている。そして、シリンジ14の先端側から針12が突設されて延び出していると共に、シリンジ14の内部空間が針12の内孔を通じて外部空間に連通されている。なお、先端ノズル部22には、中心孔の周囲に29a,29bが埋設されている。これらの補強片29a,29bは、軸方向で直列的に配されており、それぞれ、周方向で実質的に複数に分割された構造をもって、先端ノズル部22に埋設状態で固着されている。
【0029】
さらに、シリンジ14の先端部分には、固定側ガイド30が外嵌状態で取り付けられている。この固定側ガイド30は、全体として略円環状とされた嵌合部32と、案内溝34を備えた案内部36とを含んで構成されている。
【0030】
嵌合部32は、シリンジ14の先端ノズル部22に外挿される周壁部38を備えており、この周壁部38には、内周面に突出する固定部40が形成されている。そして、この固定部40が、先端ノズル部22の括れ状部26に係合されることにより、嵌合部32が先端ノズル部22に対して軸方向で位置決めされて外挿状態で組み付けられている。
【0031】
また、周壁部38の基端側は、シリンジ14の外周面に外挿される筒状のカラー構造とされており、シリンジ14の外周面に対して軸直角方向に位置決めされている。なお、周壁部38の基端側には、周上の一部に切欠部42が形成されており、シリンジ14の先端側外周面に付された表示を、この切欠部42を通じて視認できるようになっている。なお、本実施形態では、嵌合部32がシリンジ14に対して中心軸回りで回動可能とされて、切欠部42による視認可能な位置を、シリンジ14の周方向で適宜に変更できるようになっている。
【0032】
さらに、周壁部32の周上から部分的に軸方向で基端側に向かって延びるようにして、案内部36が設けられており、かかる案内部36が、シリンジ14の先端側の外周上に配されるようになっている。また、案内部36の上側外面には、シリンジ14と略平行に軸方向へ延びる案内溝34が形成されている。即ち、案内部36には、案内溝34の下壁部を構成する溝底部44と、案内部36の幅方向(
図1中の上下方向)両側において、溝底部44から上方に突出する側壁部46,46が形成されている。また、これら一対の側壁部46,46の上端部分には、それぞれ対向方向(幅方向内方)に突出する対向部48,48が形成されている。そして、これら溝底部44、側壁部46,46、対向部48,48によって囲まれた領域により案内溝34が構成されている。
【0033】
ここにおいて、嵌合部32の上方に案内部36が連続して形成されていることから、周壁部38の上端部分によって溝底部44の先端部分が構成されており、周壁部38と溝底部44との接続部位は、
図3,4に示されるように、段差状部としての略直角な屈曲部分50とされている。また、溝底部44は、
図3〜5に示されるように、溝底面を構成する案内溝底面51が、平坦面でシリンジ14の軸方向に広がっている一方、シリンジ14の外周面に重ね合わされる溝底部下面52が、周方向に湾曲した円弧形状とされてシリンジ14の外周面に重ね合わされている。更に、屈曲部分50における外側角面は、案内溝底面51の先端縁部から先端側へ斜め下方に屈曲してシリンジ14の中心軸側へ直線的にのびる傾斜した下側段差面54とされている。
【0034】
また、溝底部44の幅方向中央部分には、軸方向中間部分から屈曲部分50にかけて略矩形の係合窓56が、厚さ方向に貫通して形成されている。なお、この係合窓56の先端側は、下側段差面54上で軸方向前方に向かって開放されている。
【0035】
更にまた、溝底部44の基端側端面からつながって上方にのびる側壁部46,46の基端側端面は、上方に行くに従って次第に前方に向かう傾斜方向をもって連続的に緩やかに湾曲した基端側面57,57とされている。
【0036】
また、案内溝34の対向部48,48には、軸方向の中間部分に段差状部が形成されており、かかる段差状部において、案内溝34の上側案内面を構成する対向部48,48の各下面には、前方に向かって斜め下方に傾斜した上側段差面58が設けられており、上側段差面58を挟んで基端側の案内上面60に対して先端側の案内上面62が、段差方向(軸直角方向となる
図4中の上下方向)で下方に位置している。なお、これら基端側案内上面60および先端側案内上面62は、それぞれ軸方向に直線的に延びている。
【0037】
そして、案内溝34において、下側案内面の案内溝底面51が上側案内面の基端側案内上面60に対して上下方向で対向位置している一方、下側案内面の下側段差面54と上側案内面の上側段差面58とが、軸方向で略対応する位置で上下方向に離隔して配されている。換言すれば、案内溝34は、針12の軸直角方向(上下方向)で対向する対向下面と対向上面を含んで構成されており、案内溝底面51が対向下面とされている一方、基端側案内面60および先端側案内面62により対向上面が構成されている。
【0038】
さらに、かかる固定側ガイド30の案内部36における案内溝34には、
図6〜10に示される移動側ガイド64が係合されている。この移動側ガイド64では、長手状の案内ロッド65の先端部分に針先カバー18が設けられている。
【0039】
針先カバー18は、底板状の先端壁部66の外周縁部から略円筒状の周壁部68が軸方向基端側に延び出して形成されて、基端側に開口する略カップ形状とされている。また、先端壁部66の中央部分には、針孔16が、針12の外径寸法より大きな内径寸法をもって軸方向に貫通して形成されている。なお、周壁部68の内径寸法は、シリンジ14先端に設けられた先端ノズル部22よりも大きくされて、針先カバー18が先端ノズル部22を覆って被さるようになっている。また、針先カバー18の周壁部68の外径寸法は、固定側ガイド30の嵌合部32における周壁部38の先端側開口部へ嵌まり込む大きさとされている。
【0040】
さらに、針先カバー18の開口縁部には、周上の一箇所から軸方向基端側に延びる長手状の案内ロッド65が一体形成されている。この案内ロッド65には、上面の幅方向中央部分を長手方向に延びる中央突部70が、略一定の高さ寸法で上方に突出して形成されている。この中央突部70により、案内ロッド65の高さ寸法が幅方向で異ならされており、幅方向両側に比して幅方向中央が厚肉とされている。なお、案内ロッド65の基端部分には、断面形状が大きくされた嵌合部76が形成されている。更に、嵌合部76の基端側先端部には、移動側ガイド64を押圧操作するために、大きな操作用面を備えた操作部78が形成されている。
【0041】
そして、案内ロッド65の幅寸法が、固定側ガイド30に設けられた案内溝34の幅寸法と略同じか僅かに小さくされている。また、案内ロッド65において、中央突部70の幅方向両側に位置する部分(中央突部70が設けられていない部分)の高さ寸法が、案内溝34における案内溝底面51と先端側案内上面62との高さ方向の離隔距離と略同じか僅かに小さくされている。そして、案内ロッド65が固定側ガイド30の案内溝34に差し入れられて軸方向に挿通された状態で組み付けられるようになっている。
【0042】
また、案内ロッド65の軸方向中間部分には段差状部が設けられて略クランク状に屈曲されており、段差状部を挟んで、案内ロッド65の基端側に比して先端側がシリンジ14に接近するように下方に位置している。また、段差状部の上下面が、軸方向先端側に向かって斜め下方にのびる傾斜面80,81とされている。
【0043】
そして、案内ロッド65において、固定側ガイド30の案内溝34の内面に摺接して軸方向に案内されることとなる、案内ロッド65の下面と、中央突部70が設けられていない幅方向両側の上面とが、上側傾斜面80および下側傾斜面81を含んで、それぞれ軸方向基端側と先端側との両方に向かって直線的に広がっている。即ち、案内ロッド65の上面には、上側傾斜面80が、先端側上面82と基端側上面83とにそれぞれ接続されている。なお、基端側上面83の基端部は、嵌合部76に対して、傾斜した嵌入面84で滑らかに接続されており、かかる嵌合部76では、案内ロッド65の上面が全幅にわたって同一高さの平坦面とされている。
【0044】
また、案内ロッド65の下面には、下側傾斜面81が、先端側下面85と基端側下面86とにそれぞれ接続されている。更に、基端側下面86には、鉤状の係合突部88が、基端側下面86の幅方向中央部分において、下側傾斜面81の近くから基端側に向かって一体的に突設されている。また、この係合突部88が突設された基端側下面86の軸方向中間部分には、凹状に窪んだ変形許容部89が形成されている。そして、変形許容部89の下方開口部上に係合突部88が突出して位置しており、係合突部88が変形許容部89内に向かって弾性変形可能とされている。
【0045】
一方、案内ロッド65の上面に突設された中央突部70は、軸方向中間部分から先端部分までが大きな幅寸法で直線状に延びる広幅部90とされている一方、軸方向中間部分から基端部分までは小さな幅寸法で直線状に延びる狭幅部92とされている。そして、広幅部90における幅寸法は、固定側ガイド30の対向部48,48における対向面間距離の最も大きい部分と同じか僅かに小さくされている一方、狭幅部92における幅寸法は、対向部48,48における対向面間距離の最も小さい部分よりも僅かに小さくされている。また、中央突部70における上面には、長さ方向中間部分において、傾斜面94が設けられて滑らかに接続されている。即ち、中央突部70において、傾斜面94よりも基端側の狭幅部92が先端側の広幅部90よりも上方に位置しており、広幅部90の上面の位置が、対向部48,48における基端側案内上面60,60の位置と略等しくされている。
【0046】
従って、案内ロッド65の軸方向中間部分には傾斜面80,81,94が形成されていると共に、軸方向基端部分には嵌入面84が設けられており、これにより、案内ロッド65において傾斜する各面80,81,84,94よりも基端側が先端側よりも上方に位置している。即ち、案内ロッド65の軸方向中間部分において、傾斜面80,81,94により、段差状部が形成されている。換言すれば、案内ロッド65の軸方向中間部分において、傾斜面80,81,94により、針軸方向に対して非平行な部分が形成されている。
【0047】
また、中央突部70の上面には、初期ストッパ96が上方に突出して設けられている。本実施形態では、初期ストッパ96は、平面視において三角形状とされており、基端側の面が軸直角方向に広がっていると共に、三角形の1つの角が先端側を向くようにされている。換言すれば、初期ストッパ96は、先端側から基端側に向かって、幅寸法が次第に大きくなっている。なお、この初期ストッパ96における基端側の最大幅寸法は、対向部48,48における対向面間距離の最も小さい部分よりも僅かに大きくされている。
【0048】
かかる案内ロッド65の基端側には操作部78が一体形成されている。この操作部78は、基端側に凸となるように湾曲した湾曲板形状とされており、嵌合部76よりも大きな幅寸法および長さ寸法(
図2中の上下方向寸法)をもって形成されている。そして、操作部78の基端側面には、使用者が操作部78に触れていることを認識し易いように凹凸が付されている。一方、操作部78の先端側面において、嵌合部76よりも上方の面が上方当接面98とされている一方、嵌合部76よりも下方の面が下方当接面100とされている。これら上下当接面98,100は、それぞれ対向部48の基端側面57と溝底部44の基端側面と対応して、上側当接面98が湾曲形状とされている一方、下側当接面100が軸直角方向に広がる形状とされている。
【0049】
なお、上記の如き形状とされた固定側ガイド30や移動側ガイド64の材質としては、硬質の合成樹脂が好適に採用されて、これにより、針12が安定して針カバー18により保護され得る。
【0050】
上記の如き構造とされたシリンジ14に対して固定側ガイド30および移動側ガイド64が組み付けられることにより、本実施形態の針組立体10が構成されている。即ち、シリンジ14の先端ノズル部22における括れ状部26に対して、固定側ガイド30の嵌合部32における固定部40が周方向の全周に亘って嵌め入れられることにより、固定側ガイド30がシリンジ14の先端部分に対して固定的に取り付けられている。なお、固定部40が、括れ状部26に対してある程度の締付力をもって取り付けられていることにより、固定側ガイド30がシリンジ14に対して十分に位置決めされつつ、周方向に回転可能とされている。なお、本実施形態では、シリンジ14の周方向における下方側に目盛が付されており、周壁部38に設けられた切欠部42の周方向位置を当該目盛に合わせることで、固定側ガイド30と目盛とが重なることなく、目盛を外部から読み取ることが可能とされている。
【0051】
さらに、固定側ガイド30の案内部36における案内溝34に対して、移動側ガイド64の案内ロッド65が嵌め入れられることにより、移動側ガイド64がシリンジ14に対して組み付けられている。即ち、
図1〜5に示される初期状態では、針先カバー18の針孔16に対してシリンジ14の先端に設けられた針12が同心的に挿通されて、針先カバー18の先端側から針12の針先20が外部に露出していると共に、針先カバー18によりシリンジ14先端の先端ノズル部22が覆われている。なお、案内溝34に対する移動側ガイド64の組付けは、例えば案内部36,36の側壁部46,46を幅方向両側に押し広げて、移動側ガイド64の案内ロッド65を嵌め入れることによって、実現され得る。
【0052】
具体的には、案内溝34に対して案内ロッド65が嵌め入れられることにより、
図5に示されているように、案内部36における側壁部46,46の内面に案内ロッド65の両側面が当接していると共に、対向部48,48の基端側案内上面60,60に中央突部70の上面が当接している。また、案内ロッド65の先端側上面82と対向部48,48の先端側案内上面62,62とが当接している。即ち、案内溝34における基端側案内上面60,60および先端側案内上面62,62が、案内溝34において案内ロッド65に当接して案内する案内面とされている。特に、これら基端側案内上面60,60と先端側案内上面62,62は、溝深さ方向において、案内溝34の上面に位置しており、案内溝34の案内上面を構成している。
【0053】
さらに、かかる初期状態では、先端側下面85と案内溝34の案内溝底面51とが当接している。即ち、案内溝34における案内溝底面51が、案内溝34において案内ロッド65に当接して案内する案内面とされている。特に、この案内溝底面51は、溝深さ方向において、案内溝34の下面に位置しており、案内溝34の案内下面を構成している。これにより、案内溝34において、案内ロッド65が、案内上面および案内下面により構成される案内面により上下方向で挟まれて保持された状態で配置されている。
【0054】
更にまた、かかる初期状態では、対向部48,48の対向間に初期ストッパ96が入り込んでいる。ここにおいて、初期ストッパ96における最大幅寸法は、対向部48,48における対向面間距離の最も小さい部分よりも大きくされていることから、初期ストッパ96が対向部48,48により係止されている。これにより、初期状態では、固定側ガイド30に対する移動側ガイド64の先端側への移動が制限されている。なお、初期状態では、針先カバー18が嵌合部32の周壁部38内に入り込んでおり、針先カバー18の周壁部68と嵌合部32の固定部40とが当接することにより、固定側ガイド30に対する移動側ガイド64の基端側への移動が制限されている。
【0055】
そして、シリンジ14内に薬液が充填された針組立体10の針12を患者の血管に穿刺して、基端開口部21から図示しないプランジャを押圧することにより、針先20を通じて薬液が患者の血管内に注入される。かかる薬液注入後、医療従事者が、手指で移動側ガイド64を先端側へ押し込むことにより、移動側ガイド64が、固定側ガイド30の案内溝34に沿って先端側へ案内されて、針12の針先20が針先カバー18で保護されるようになっている。
【0056】
具体的には、
図10〜15に示されているように、移動側ガイド64を先端側へ押し込むことにより、初期ストッパ96が対向部48,48を押し広げて、初期ストッパ96と対向部48,48との係止が解除される。これにより、移動側ガイド64が上下方向で挟まれると共に、対向部48,48間に中央突部70の狭幅部92が入り込むことで、移動側ガイド64が案内溝34に沿って軸方向先端側へ変位することが可能とされている。なお、移動側ガイド64において、初期ストッパ96の基端側部分が、対向部48,48間の狭幅とされている部分を越えて、先端側へ変位すると、移動側ガイド64が初期位置に戻ることが不能とされている。
【0057】
また、移動側ガイド64が軸方向先端側へと変位することにより、針先カバー18が針12の針先20を越えた位置まで移動する。即ち、針先カバー18の先端壁部66が針12の針先20よりも先端側に位置するまで、針先カバー18が移動する。この際、針孔16の内径寸法は、針12の外径寸法より十分大きくされていることから、移動側ガイド64の先端側への変位において、針12の外周面が針孔16の内周面に接触することなく、針12の針先20が、針先カバー18により覆われることとなる。かかる状態では、
図12に示されているように、針12の中心軸102と針孔16の中心軸104は同軸的に位置しており、軸方向視(
図12中の左方から右方を見た状態)では、針孔16から針12の針先20が露呈している。
【0058】
ここにおいて、案内溝34に対して移動側ガイド64における案内ロッド65が上下及び幅方向で嵌まり込んでいることから、移動側ガイド64の先端側への変位が案内溝34に沿って安定して実現される。要するに、移動側ガイド64は、針先カバー18が針12の針先20を越えた位置まで移動した後、案内ロッド65の段差状部が案内溝34の段差状部を越えて、
図13中の左下方へ滑らかに移動させられる。
【0059】
すなわち、移動側ガイド64を先端側へ押し込むと、先ず、対向部48,48の基端側面57,57と、移動側ガイド64における案内ロッド65の嵌入面84とが当接する。そして、かかる状態では、
図13にも示されているように、案内ロッド65の下側傾斜面81と、案内溝底面51から連続する下側段差面54とが、略同一平面上に位置するようになっている。これにより、移動側ガイド64が、下側傾斜面81と下側段差面54とが当接しながら、嵌入面84に沿って、
図13中の左下方に変位する。更に、その際、対向部48,48における上側段差面58の湾曲面と、案内ロッド65の上側傾斜面80が当接することから、移動側ガイド64は、上側段差面58に沿って、一層安定して
図13中の左下方に案内される。ここにおいて、嵌入面84や上側段差面58、上側傾斜面80は、滑らかな傾斜面または湾曲面とされていることから、移動側ガイド64は、案内溝34に沿って滑らかに案内される。
【0060】
このように、移動側ガイド64が、案内溝34に沿って
図13中の左下方に案内されて、更に先端側に押し込まれることにより、
図16〜19に示されているように、針先カバー18が完了位置に移動する。
【0061】
具体的には、移動側ガイド64の嵌入面84、上側傾斜面80、下側傾斜面81がそれぞれ、対向部48,48の基端側面57,57、上側段差面58、屈曲部分50の下側段差面54と当接しながら、移動側ガイド64が先端側に押し込まれることにより、嵌合部76が案内溝34の基端側開口部に対して基端側から嵌め入れられる。そして、下側傾斜面81と下側段差面54とが当接すると共に、基端側下面86と案内溝34の案内溝底面51とが当接しており、更に基端側上面83と先端案内溝上面62,62が当接している。また、嵌合部76が、案内溝34の基端側開口部に対して基端側から嵌め入れられており、嵌合部76の上面と対向部48,48の基端側案内上面60,60が当接していると共に、操作部78の上側当接面98と対向部48,48の基端側面57,57が当接している。これにより、移動側ガイド64のこれ以上の先端側への変位が制限されている。即ち、移動側ガイド64の完了位置においても、移動側ガイド64の案内ロッド65が固定側ガイド30における案内溝34の案内面を構成する基端側案内上面60,60、先端側案内上面62,62および案内溝底面51の間で、上下方向間で当接して保持されている。要するに、本実施形態では、案内ロッド65の基端側部分を厚さ方向(上下方向)に挟んで当接状態で位置決めし得るように、案内溝34の上面60,62と下面51との対向間距離が寸法設定されている。
【0062】
また、移動側ガイド64の基端側下面86に設けられた係合突部88が、案内溝34の溝底部44に設けられた係合窓56に入り込んでいる。これにより、移動側ガイド64が基端側へ変位しようとすると、係合突部88が係合窓56内周壁の基端部分に打ち当たるようにされており、移動側ガイド64の基端側への変位が制限されている。従って、本実施形態では、係合突部88と係合窓56により完了位置ロック機構が構成されており、これら係合突部88と係合窓56が相互に係止されることにより、移動側ガイド64の基端側への移動が阻止されている。なお、係合突部88が係合窓56内に入り込んだ際に、例えば係合突部88がシリンジ14の外周面へ打ち当たる等して、移動側ガイド64が完了位置にあることを使用者に示す音が生じるようにされている。
【0063】
かかる移動側ガイド64の移動完了位置では、案内溝34の段差状部の位置を案内ロッド65の段差状部が越えることで、移動側ガイド64が、
図18中の左下方、即ち針12の中心軸102に対して傾斜する方向に案内されて、針12の中心軸102と針孔16とがずらされている。これにより、軸方向視(
図18中の左方から右方を見た状態)において、針孔16から針12の針先20が外れた状態で、針12の針先20が針先カバー18で覆われている。この際、移動側ガイド64が初期位置から完了位置に移動する直前まで、針12と針カバー18とは非接触状態が維持される。なお、本実施形態では、上記の如き移動完了位置では、移動側ガイド64の先端側が僅かに下傾しており、針12の中心軸102に対して針孔16の中心軸104が傾斜している。即ち、操作部78の下端面とシリンジ14の外周面とは僅かに離隔している。また、移動側ガイド64の完了位置への移動後は、
図18に示されているように、針12の針先20が、針先カバー18における周壁部68の内周面に接触しないか、僅かに接触している。
【0064】
上記の如き構造とされた本実施形態の針組立体10では、
図20(a)〜(c)の概略図にも示されるように、案内ロッド65の段差状部が、案内溝34の段差状部を越える前後の何れの移動位置においても、案内ロッド65が案内溝34の案内面に当接して保持されることから、案内ロッド65における移動時のがたつきが小さく抑えられて、針カバー18が針12を安定して覆い得る。これにより、使用者による操作力が安定して案内ロッド65に及ぼされると共に、使用者が大きな信頼感をもって操作することができる。なお、
図20では、固定側ガイド30および移動側ガイド64における要部のみを概略的に示しており、固定側ガイド30に対する案内ロッド65の動きを(a)〜(c)の順で示している。
【0065】
また、
図20(c)に示されるように、案内ロッド65が完了位置にある場合には、案内ロッド65の基端部分が案内溝34内に位置しており、かかる状態では、案内ロッド65が、案内溝34において上下方向間で挟まれて保持されている。即ち、案内ロッド65が、対向下面である案内溝底面51の先端側の面と、対向上面の先端側の面である先端側案内面62とにより挟まれて保持されている。これにより、針先カバー18が針先20を覆う状態において、移動側ガイド64の案内ロッド65が、固定側ガイド30の案内溝34によって上下方向で挟まれて保持されることで、案内溝34内での案内ロッド65のがたつきが小さく抑えられる。それ故、針孔16が針12の中心軸102上に位置するおそれが低減されて、意図せず針先カバー18が基端側に押し込まれた場合でも、針12が針孔16から突出せず、誤穿刺の発生が回避され得る。
【0066】
特に、案内溝34や案内ロッド65に段差状部、または針軸方向に対して非平行となる部分を設けていることから、針12の中心軸102から針孔16を外す移動が簡単に実現される。更に、案内ロッド65の段差状部の前後が、案内溝34の段差状部の前後に設けられた案内面に当接して保持されることから、がたつきが生じ易い軸ずれ移動においてもがたつきが小さく抑えられ得る。
【0067】
また、本実施形態では、案内ロッド65が案内溝34内において、上下及び幅方向で保持されることから、案内ロッド65の移動が何等制限されることなく、案内ロッド65のがたつきが一層小さく抑えられ得る。
【0068】
更にまた、本実施形態では、案内ロッド65の基端部分に嵌合部76が設けられると共に、嵌合部76の基端側に操作部78が設けられており、移動完了時には、嵌合部76が案内溝34の基端側開口部に嵌め入れられる。これにより、案内ロッド65の移動完了時には、案内ロッド65のがたつきが更に小さく抑えられる。また、使用者が、案内溝34内に嵌合部76が嵌め入れられる状態が手指からの感触で判別できるようにすることで、使用者が、案内ロッド65が所定位置に到達したことを認識することができて、安心して案内ロッド65の操作を行うことができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、案内ロッド65の基端側下面86における幅方向中央部分から係合突部88が突出して形成されていると共に、溝底部44の幅方向中央部分には係合窓56が形成されており、これら係合突部88と係合窓56とにより完了位置ロック機構が構成されている。これにより、完了位置まで移動した移動側ガイド64が基端側に変位してしまうことが防止されて、針カバー18による針12の保護状態が安定して維持され得る。特に、かかる完了位置ロック機構が、使用者が直接触れられない針組立体10の内部に形成されていることから、意図せずロック機構が解除されるおそれが効果的に低減されている。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでない。
【0071】
例えば、前記実施形態において図示したシリンジ14は、シリンジ内部の容積が1mlのものであるが、
図21に示される如き内部の容積が0.5mlのシリンジ106や、
図22に示される如き内部の容積が0.3mlのシリンジ108に対しても、同一の固定側ガイド30および移動側ガイド64が適用可能である。なお、前記実施形態では、針12の中心軸102に対して針孔16の中心軸104が傾斜して、移動側ガイド64の先端部分が下傾していたが、
図21,22に示される態様では、針12の中心軸と針孔の中心軸が平行であり、移動側ガイド64の先端部分は下傾せず、操作部78の下端面とシリンジ14の外周面は当接している。
【0072】
また、前記実施形態では、針12が先端ノズル部22から突出して、針ハブがシリンジと一体のシリンジハブとされていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば、シリンジの雄ルアーに取り付けられる針基であってもよく、更に、プレフィルドシリンジや採血管ホルダ、ペン針など、針を使用する別の医療器具に本発明が採用されてもよい。また、固定側ガイドは、前記実施形態のように針ハブの外周に固定される必要はなく、例えばシリンジバレルに固定されていてもよい。更に、前記実施形態では、固定側ガイド30の固定部40が、シリンジ14の先端ノズル部22における括れ状部26に対して、周方向の全周に亘って嵌め入れられることで、固定側ガイド30が針組立体10に対して離脱不能に固定されているが、例えば、固定部40をC字状にするなどして、固定側ガイド30が針組立体10に対して離脱可能に固定されてもよい。かかる態様では、これらの針ハブに対して固定側ガイドと移動側ガイドが組み付けられて、本発明に係る針組立体が構成される。
【0073】
更にまた、前記実施形態では、案内溝34は、軸方向両端と上方に開口した溝形状とされていたが、軸方向両端にのみ開口する貫通孔形状とされてもよい。かかる場合には、例えば案内部を上下の部材の分割構造として、側方に設けたヒンジ等で連結し、案内部を開閉可能としてもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、対向部48,48の上側段差面58,58や屈曲部分50の下側段差面54が
図13中の左下方に延び出して、かかる案内溝34に沿って案内ロッド65が滑らかに案内されていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば対向部の基端に対して先端が垂直に屈曲していたり、屈曲部分50が設けられず、溝底部44と固定部40とが垂直に接続されていたりして、案内溝が段差形状をもって下方に折れ曲がっていてもよい。かかる場合には、例えば、移動側ガイドを基端側から先端側に押し込んだ後、更に上方から下方に押し込むことにより、針の中心軸に対して針孔を外すことができる。
【0075】
尤も、針12に対する針カバー18および移動側ガイド64のずれ方向は、前記実施形態に記載の如き上下方向で針12に近づく方向に限定されるものではなく、例えば上下方向で針から遠ざかる方向でもよいし、径方向の何れの方向であってもよい。なお、前記実施形態のように、移動側ガイド64の移動完了後における針組立体10のサイズがコンパクトになることから、針12に近づくように移動する方が好ましい。
【0076】
さらに、前記実施形態では、針先カバー18の先端壁部66が針12の針先20を覆う位置まで移動した後、針先カバー18が軸方向に対して傾斜する方向に移動して、針12と針孔16とが接触しないように針12の中心軸102から針孔16が外れるようにしていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば針先カバー18の先端壁部66が針12の針先20を覆う位置に移動する前に、針先カバー18が軸方向に対して傾斜する方向に移動してもよいし、針12が針孔16に接触しながら移動側ガイド64が移動してもよい。
【0077】
更にまた、前記実施形態では、
図16〜19に示される移動完了状態において、嵌合部76が案内溝34の基端側開口部に嵌まり込むことによって、より確実に位置決め保持されるようになっていたが、かかる嵌合部76の嵌合構造は必須ではない。また、嵌合部76の嵌合構造に代えて、または加えて、移動完了状態において、案内ロッド65の下側傾斜面81や当該傾斜面81の下端縁から先端側に延びる先端側下面85が当接する当接面を、下側段差面54の下部や当該段差面54の下端縁から先端側に突出して形成することも可能であり、それによって、案内溝34による案内ロッド65の保持作用の向上が図られ得る。
【0078】
また、前記実施形態では、案内ロッド65が完了位置にある場合において、案内ロッド65が、対向下面である案内溝底面51の先端側の面と、対向上面の先端側の面である先端側案内上面62とに上下方向で挟まれて保持されていたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えば案内ロッド65が、対向下面の先端と対向上面の先端とで上下方向で挟まれて保持されていると共に、これら先端よりも基端側、例えば嵌合部76が、その上端と下端とにおいて、上下方向で保持されていれば、移動側ガイド64は大きくがたつくことがなく、針孔16から針12が突出して誤穿刺が発生するおそれも回避され得る。