【解決手段】ビス40などの固定具にて躯体(柱6)に留め付けられる金属サイディング1Bに用いる金具5であって、金属サイディング1Bの裏面側に当接し金属サイディング1Bと躯体(柱6)との間隔を規定するサイディング側当接部52と、躯体(被固定部6a)に対して当接する躯体側当接部51と、を有する、金属サイディング用の金具とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような金属サイディングを柱に取り付ける構法では、金属サイディングと防水シートの間に通気層が確保できないことになる。通気層は、外壁材の内側の結露を抑える効果、雨水の浸入を抑える効果、日射熱を遮熱する効果などが得られるものとして知られている。
【0006】
そして、通気層を金属サイディングと防水シートの間に確保するために、柱に縦胴縁(通気胴縁)を取り付け、縦胴縁に対して金具を固定する構法とすることが考えられるが、柱に縦胴縁を取り付ける施工手間が必要とされてしまう。
【0007】
そこで、本発明は縦胴縁を必要とせずに通気層を確保可能とするための金属サイディング用の金具を提供するものである。
【0008】
さらに、金属サイディングは幅が広く、また、高所での設置作業も必要となるため、金具については取り扱いし易い構成であることが好ましい。
【0009】
そこで、本発明の別の課題として、金属サイディングの施工性をより改善するための金具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1に記載のごとく、
固定具にて躯体に留め付けられる金属サイディングに用いる金具であって、
金属サイディングの裏面側に当接し金属サイディングと躯体との間隔を規定するサイディング側当接部と、
躯体に対して当接する躯体側当接部と、
を有する、金属サイディング用の金具とする。
【0012】
また、請求項2に記載のごとく、
金属サイディングに係止される係止部を有する、こととする。
【0013】
また、請求項3に記載のごとく、
係止部と躯体側当接部には、
金属サイディングに打ち込まれる固定具を貫通させるための貫通孔がそれぞれ形成されており、
躯体側当接部の貫通孔の孔径は、係止部の貫通孔よりも大きく構成される、こととする。
【0014】
また、請求項4に記載のごとく、
固定具にて躯体に留め付けられる金属サイディングの固定構造であって、
金属サイディングは躯体に対し、
金属サイディングの裏面側に当接し金属サイディングと躯体との間隔を規定するサイディング側当接部と、
躯体に対して当接する躯体側当接部と、
を有する金具を介して固定される、金属サイディングの固定構造とする。
【0015】
また、請求項5に記載のごとく、
金属サイディングの固定方法であって、
金属サイディングの上辺縁部の裏面側に金具のサイディング側当接部を当接させるとともに、
躯体に対して金具の躯体側当接部を当接させ、金属サイディングと躯体との間隔を規定する工程と、
金属サイディングに固定具を打ち込んで金属サイディングを躯体に留め付ける工程と、
を含んで施工される金属サイディングの固定方法とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
即ち、請求項1に記載の発明においては、金具によって躯体と金属サイディングの間隔を規定することができ、縦胴縁を用いずに躯体と金属サイディングの間に通気層を形成することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明においては、金具を金属サイディングに引っ掛けるようにして仮固定することができ、仮固定した状態で金属サイディングと金具を一緒に持ち運ぶことが可能となって、施工性に優れた構成が実現できる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明においては、ビス等の固定具を打ち込む際に、躯体側当接部の貫通孔が金属サイディングに隠されて目視できず、また、固定具が傾いて打ち込まれてしまう場合であっても、躯体側当接部の貫通孔の孔径を大きくすることで、このような不具合の発生を防止できる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明においては、金具によって躯体と金属サイディングの間隔を規定することができ、縦胴縁を用いずに躯体と金属サイディングの間に通気層を形成することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明においては、金具によって躯体と金属サイディングの間隔を規定することができ、縦胴縁を用いずに躯体と金属サイディングの間に通気層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施形態について説明する。
図1乃至
図3に示すように、金属サイディング1A,1Bは、表面材2と裏面材3の間に芯材4を挟み込んで板状に構成されるものである。なお、以下の説明中の位置関係を指示する用語に関し、「表側」の用語は、外装壁面を構成する表面材2の側のことをいい、「裏側」の用語は、裏面材3の側のことをいうこととする。
【0024】
表面材2は、金属板材にて構成することができ、例えば、鋼板やアルミ板など構成することができる。この表面材2に、プレス成形などで凹凸面を形成することにより、立体的なパターンを配設することができる。
【0025】
裏面材3は、シート部材にて構成することができ、例えば、アルミラミネート加工クラフト紙や合成樹脂シートなどで構成することができる。
【0026】
芯材4は、合成樹脂発泡体などで構成することができ、例えば、硬質発泡ポリウレタンなどで構成することができる。
【0027】
以上のように構成される金属サイディング1A,1Bは、上下左右方向に並べて貼り合わされて一連の外壁面を構成する。
図1に示すように、金属サイディング1Aの下辺縁部20には幅方向Wに伸びる凹部21が形成され、上辺縁部30には幅方向Wに伸びる凸部31が形成される。凹部21と凸部31は互いに嵌合し、この嵌合により上下に隣り合う金属サイディング1A,1Bが連結される。
【0028】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、金属サイディング1Aの下辺縁部20には、係止部2aから斜め下方向裏側に伸びる傾斜部22と、傾斜部22の裏側端部から上方に向かう縦面部23と、縦面部23の上端部から裏側に向かう側面視円弧状の曲面部24と、曲面部24の裏側端部から下方に向かう縦面部25と、縦面部25の下端部から折り返されて上方に向かう裏側縦面部26と、が形成されている。
【0029】
図3に示すように、縦面部23と縦面部25の間には幅D1の隙間S1が形成され、この隙間S1において凹部21が構成される。
【0030】
図2及び
図3に示すように、凹部21の内部に位置する曲面部24には水密材27が配設されており、凹部21に凸部31が嵌入された状態では、両者に水密材27が挟み込まれ、凹部21と凸部31の間の水密性が確保される。
【0031】
また、金属サイディング1Bの上辺縁部30には、係止部2aから斜め上方向裏側に伸びる傾斜部32と、傾斜部32の裏側端部から上方に向かう縦面部33と、縦面部33の上端部から折り返して下側に伸びる縦面部34と、縦面部34の下端部から裏側に伸びる底面部35と、底面部35の裏側端部から上方に向かう縦面部36と、縦面部36の上端部から折り返されて下方に向かう裏側縦面部37と、が形成されている。
【0032】
縦面部33と縦面部34により上方に突出する凸部31が形成され、凸部31が凹部21に対して嵌入される。
【0033】
また、
図3に示すように、上辺縁部30において、縦面部34と縦面部36の間には幅D2の隙間S2が形成され、この隙間S2に対し、下辺縁部20の縦面部25,26が差し込まれる。
【0034】
さらに、
図3に示すように、縦面部36と裏側縦面部37により固定片部38が構成され、後述するように固定片部38の板厚方向にビス40が打ち込まれ、固定片部38が金具5を介して柱6に固定される。
【0035】
次に、
図1乃至
図4に示される金具5(金属サイディング用金具)について説明する。この金具5は、金属サイディング1Bの上辺縁部30を柱6(間柱)に固定するとともに、金属サイディング1Bの裏側に通気層8を構成するために用いられる。
【0036】
金具5は、鋼板をプレスなどにて曲げ加工して構成することができ、柱6などの躯体の被固定部6aに当接する躯体側当接部51と、金属サイディング1Bの固定片部38の裏面側に当接するサイディング側当接部52と、を有し、躯体側当接部51とサイディング側当接部52の間に幅D3の間隔が設けられることで、金属サイディング1Bと柱6の間に通気層8が形成される。
【0037】
躯体側当接部51とサイディング側当接部52は、それぞれ縦面で構成されており、躯体側当接部51の上端部とサイディング側当接部52の下端部が略水平の横板面部53を介して接続される。この横板面部53の幅D3により通気層8の幅が規定される。
【0038】
また、金具5は、躯体側当接部51と反対側において、サイディング側当接部52に対向する係止部54であって、金属サイディング1Bの固定片部38の表面側に当接する係止部54を有している。
【0039】
本実施例では、サイディング側当接部52の上端と係止部54の上端が側面視円弧状の曲面部55で接続され、逆U字状の側面が形成される。躯体側当接部51と係止部54の間には幅D4の差込隙間58が確保され、この差込隙間58に金属サイディング1Bの固定片部38の上端部が差し込まれる。
【0040】
このように、差込隙間58が形成されることで、金属サイディング1Bの固定片部38を差込隙間58に差し込むようにして、金具5を金属サイディング1Bに対して仮固定することができ、仮固定した状態で金属サイディング1Bと金具5を一緒に持ち運ぶことが可能となる。
【0041】
また、金具5の係止部54には貫通孔54aが設けられており、この貫通孔54aを通じて固定片部38にビス40が打ち込まれる。
【0042】
また、金具5の躯体側当接部51には貫通孔51aが設けられており、この貫通孔51aにビス40が通されるとともに、ビス40が柱6に対して差し込まれる。柱6には透湿防水シート7が貼接されており、躯体側当接部51と柱6の間に透湿防水シート7が挟まれる。ビス40は透湿防水シート7を突き破って柱6に差し込まれる。なお、このように透湿防水シート7が設けられる場合には、透湿防水シート7の表面に躯体(柱6)の被固定部6aが形成されることになる。
【0043】
そして、
図4に示すように、躯体側当接部51の貫通孔51aの孔径は、係止部54の貫通孔54aよりも大きく構成される。例えば、直径を1.5倍〜2.5倍とすることが考えられる。本実施例では、ビス40を打ち込む際に、躯体側当接部51の貫通孔51aが固定片部38に隠されて目視できず、また、ビス40が傾いて打ち込まれてしまうことも想定され、ビス40が貫通孔51aの位置からずれてしまうことが懸念されるが、貫通孔51aの孔径を大きくすることで、このような不具合の発生を防止できる。
【0044】
また、金具5は、サイディング側当接部52の下方に、金属サイディング1Bの裏側の裏面材3に当接する裏面側当接部56を有している。裏面側当接部56の上端部は、躯体側当接部51の下端部と略水平の横板面部57を介して接続される。この横板面部57の幅D3によっても通気層8の幅が規定される。
【0045】
この裏面側当接部56が存在することにより、ビス40を締め付けた際に、金具5が図において時計周り方向に回転しようとした場合であっても、裏面側当接部56が金属サイディング1Bの裏面材3に当接することで回転を規制することができる。
【0046】
次に、金具5を用いた金属サイディング1Aの施工手順について説明する。
図5(A)に示すように、金具5を金属サイディング1Aの上辺縁部30(固定片部38)に引っ掛けるようにして仮固定する。仮固定後は、金属サイディング1Aとともに金具5を運ぶことができ、金具5を別途持ち運ぶ必要がなく、取り扱いが容易となる。特に、二階などの高所においては、既に金具5の仮固定がされていることで、高所における金属サイディング1Aに対する金具5の取り付けが不要となり、優れた施工性が実現される。
【0047】
また、金具5の仮固定の位置は、柱6,6の間隔に合わせて行われることが好ましい。これによれば、金属サイディング1Aを移動した後に、柱6,6に対する金具5の位置合わせが不要となる。
【0048】
次いで、
図5(B)に示すように、既に柱6に固定された金属サイディング1Bの上辺縁部30に、次に固定される金属サイディング1Aの下辺縁部20を載置することで、
図3に示すように、上側の金属サイディング1Aの凹部21と、下側の金属サイディング1Bの凸部31を嵌合させる。
【0049】
また、この際、
図5(C)に示すように、金具5の躯体側当接部51が躯体(柱6)の被固定部6a(透湿防水シート7の表面)に当接される。
【0050】
次いで、ビス40を打ち込んで金具5とともに金属サイディング1Aの固定片部38を柱6に対し留め付けることで、金属サイディング1Aの設置が完了する。
【0051】
このビス40の打ち込みの際には、
図2及び
図3に示すように、金具5の裏面側当接部56が金属サイディング1Bの裏面材3に当接することで、金具5が回転してぶれることがなく、金具5を手で押さえる必要がない。特に高所作業においては、金具5を手で押さえることなくビス40の打ち込みできる点で、作業性に優れた構成となる。
【0052】
また、
図4に示すように、躯体側当接部51の貫通孔51aの孔径は、係止部54の貫通孔54aよりも大きく構成されるため、ビス40が多少斜めに打ち込まれた場合にも、ビス40を柱6に到達させることができ、ビス40の打ちを失敗する確率を低減することができ、作業負担も軽減することができる。
【0053】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、
図2及び
図3に示すように、ビス40などの固定具にて躯体(柱6)に留め付けられる金属サイディング1Bに用いる金具5であって、金属サイディング1Bの裏面側に当接し金属サイディング1Bと躯体(柱6)との間隔を規定するサイディング側当接部52と、躯体(被固定部6a)に対して当接する躯体側当接部51と、を有する、金属サイディング用の金具5とするものである。
【0054】
また、
図2及び
図3に示すように、ビス40などの固定具にて躯体(柱6)に留め付けられる金属サイディング1Bの固定構造であって、金属サイディング1Bは躯体(柱6)に対し、金属サイディング1Bの裏面側に当接し金属サイディング1Bと躯体(柱6)との間隔を規定するサイディング側当接部52と、躯体(柱6)に対して当接する躯体側当接部51と、を有する金具5を介して固定される、金属サイディングの固定構造とする。
【0055】
これにより、金具5によって躯体と金属サイディングの間隔を規定することができ、縦胴縁を用いずに躯体と金属サイディングの間に通気層8を形成することができる。
【0056】
また、金属サイディング1Bに係止される係止部54を有する、金属サイディング金具とするものである。
【0057】
これにより、金具5を金属サイディング1Bの固定片部38に引っ掛けるようにして仮固定することができ、仮固定した状態で金属サイディング1Bと金具5を一緒に持ち運ぶことが可能となって、施工性に優れた構成が実現できる。
【0058】
また、係止部54と躯体側当接部51には、金属サイディング1Bに打ち込まれる釘又はビスなどの固定具を貫通させるための貫通孔54a,51aがそれぞれ形成されており、躯体側当接部51の貫通孔51aの孔径は、係止部54の貫通孔54aよりも大きく構成される、こととする。
【0059】
これにより、ビス等の固定具を打ち込む際に、躯体側当接部51の貫通孔51aが固定片部38に隠されて目視できず、また、固定具が傾いて打ち込まれてしまう場合であっても、躯体側当接部51の貫通孔51aの孔径を大きくすることで、このような不具合の発生を防止できる。
【0060】
また、
図5に示すように、金属サイディング用1Bの固定方法であって、金属サイディング1Aの上辺縁部30の裏面側に金具5のサイディング側当接部52を当接させるとともに、躯体(柱6)に対して金具5の躯体側当接部51を当接させ、金属サイディング1Aと躯体(柱6)との間隔を規定する工程と、固定片部38に釘又はビスなどの固定具を打ち込んで金属サイディング1Aを躯体(柱6)に留め付ける工程と、を含んで施工される金属サイディングの固定方法とするものである。
【0061】
これにより、金具5によって躯体と金属サイディングの間隔を規定することができ、縦胴縁を用いずに躯体と金属サイディングの間に通気層8を形成することができる。
【0062】
さらに、以上の実施例に加え、
図6に示すように、金具5の係止部54において、上下に隣り合う金属サイディング1Aの上側の金属サイディング1Aの裏面側に当接する当接部59を設けることとしてもよい。
【0063】
これによれば、金属サイディング1Aの下部(下辺縁部20)において、当接部59(金具5)を金属サイディング1Aと躯体(柱6)の間で突っ張らせることができ、金属サイディング1Aの下部がぐらついてしまうことを抑制することができる。特に、上下の金属サイディング同士が嵌合によってのみ接合される形態では、金属サイディングの下部が躯体(柱6)に固定されないため、金属サイディング1Aの下部のぐらつき防止は重要なものとなる。また、地震により大きくぐらついてしまう場合には、嵌合が解除されてしまい、金属サイディングの脱落も懸念されるため、ぐらつき防止による効果は重要なものとなる。
【0064】
加えて、
図6に示されるように、ビス40について厚みを有するナベ頭ビスを用いることにより、頭部40aを金属サイディング1Aの裏面材3に当接させることで、ぐらつき防止効果を得ることができる。