(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-36010(P2016-36010A)
(43)【公開日】2016年3月17日
(54)【発明の名称】圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 41/047 20060101AFI20160219BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20160219BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20160219BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20160219BHJP
H01L 41/313 20130101ALI20160219BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20160219BHJP
H01L 41/297 20130101ALI20160219BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/083
H01L41/09
H01L41/053
H01L41/313
G06F3/041 480
H01L41/297
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-50586(P2015-50586)
(22)【出願日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0099957
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボーム−ソック キム
(72)【発明者】
【氏名】キュン−ロック キム
(72)【発明者】
【氏名】セウン−ホ リー
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ウーク セオ
(72)【発明者】
【氏名】フイ−スン パク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラックの発生率を低減することができる圧電素子及び圧電振動モジュールを提供する。
【解決手段】第1電極層121と第2電極層122とが交互に繰り返し積層され、第1電極層121と第2電極層122との間毎に圧電層が介在される圧電素子であって、第1電極層121のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第1電極121で構成され、第2電極層122のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第2電極122で構成され、一側に配置された第1電極121及び第2電極122のそれぞれの内側端部を連結する直線が圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と第2電極層とが交互に繰り返し積層され、前記第1電極層と前記第2電極層との間毎に圧電層が介在される圧電素子であって、
前記第1電極層のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第1電極で構成され、
前記第2電極層のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第2電極で構成され、
一側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である圧電素子。
【請求項2】
他側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれが、前記圧電層の長手方向に垂直な中心面を避けて形成される請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項4】
1対の前記第1電極間の距離が、1対の前記第2電極間の距離と同じである請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項5】
一側に配置された前記第1電極の内側端部が、1対の前記第2電極間のギャップの中心に対応するように位置する請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
一側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、15゜以上20゜以下である請求項2または5に記載の圧電素子。
【請求項7】
1対の前記第1電極間の距離が、1対の前記第2電極間の距離よりも大きい請求項1に記載の圧電素子。
【請求項8】
1対の前記第1電極及び1対の前記第2電極のそれぞれが、前記圧電層の長手方向に垂直な中心面に対して対称をなす請求項7に記載の圧電素子。
【請求項9】
前記第1電極層及び前記第2電極層のそれぞれを電気的に相互接続させるために、前記圧電層を貫通するビアをさらに含む請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項10】
前記ビア上に形成され、外部電源と電気的に接続する端子をさらに含む請求項9に記載の圧電素子。
【請求項11】
前記第1電極層及び前記第2電極層のそれぞれを電気的に相互接続させるために、前記圧電層の側面に形成される外部電極をさらに含む請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項12】
前記第1電極層または前記第2電極層のうちの少なくとも一つをカバーするために、前記圧電層上に積層される非圧電層をさらに含む請求項1から11のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項13】
振動板と前記振動板に結合され前記振動板を振動させる圧電素子とを含み、前記圧電素子は、第1電極層と第2電極層とが交互に繰り返し積層され、前記第1電極層と前記第2電極層との間毎に圧電層が介在される圧電振動モジュールであって、
前記圧電素子において、
前記第1電極層のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第1電極で構成され、
前記第2電極層のそれぞれが、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第2電極で構成され、
一側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である圧電振動モジュール。
【請求項14】
前記圧電素子において、他側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である請求項13に記載の圧電振動モジュール。
【請求項15】
前記圧電素子において、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれは、前記圧電層の長手方向に垂直な中心面を避けて形成される請求項13または14に記載の圧電振動モジュール。
【請求項16】
前記圧電素子において、
1対の前記第1電極間の距離が、1対の前記第2電極間の距離と同じである請求項13から15のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【請求項17】
前記圧電素子において、
一側に配置された前記第1電極の内側端部が、1対の前記第2電極間のギャップの中心に対応して位置する請求項16に記載の圧電振動モジュール。
【請求項18】
前記圧電素子において、
一側に配置された前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が前記圧電層の長手方向に対してなす角度は、15゜以上20゜以下である請求項14または17に記載の圧電振動モジュール。
【請求項19】
前記圧電素子において、
1対の前記第1電極間の距離が、1対の前記第2電極間の距離よりも大きい請求項13に記載の圧電振動モジュール。
【請求項20】
前記圧電素子において、
1対の前記第1電極及び1対の前記第2電極のそれぞれが、前記圧電層の長手方向に垂直な中心面に対して対称をなす請求項19に記載の圧電振動モジュール。
【請求項21】
前記圧電素子が、
前記第1電極層及び前記第2電極層のそれぞれを電気的に相互接続させるために、前記圧電層を貫通するビアをさらに含む請求項13から20のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【請求項22】
前記圧電素子が、
前記ビア上に形成され、外部電源と電気的に接続する端子をさらに含む請求項21に記載の圧電振動モジュール。
【請求項23】
前記圧電素子が、
前記第1電極層及び前記第2電極層のそれぞれを電気的に相互接続させるために、前記圧電層の側面に形成される外部電極をさらに含む請求項13から20のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【請求項24】
前記圧電素子が、
前記第1電極層または前記第2電極層のうちの少なくとも一つをカバーするために、前記圧電層上に積層される非圧電層をさらに含む請求項13から23のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【請求項25】
前記振動板の上部に配置される重量体をさらに含む請求項13に記載の圧電振動モジュール。
【請求項26】
前記振動板、前記圧電素子及び前記重量体をカバーするケースをさらに含む請求項25に記載の圧電振動モジュール。
【請求項27】
前記圧電素子に電圧を印加するために、前記圧電素子に結合される基板をさらに含む請求項13、25および26のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【請求項28】
前記圧電素子と前記振動板との間に介在される接着部材をさらに含む請求項13、25、26および27のいずれか1項に記載の圧電振動モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、タッチキーボードなどは電子機器に装着され、文字や絵を入力するときにユーザの手先に振動を与えることができる。
【0003】
この機能は、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuator)のような振動発生手段によりタッチパネルに振動感が印加されることにより、ユーザに振動感が伝達される構造で実現可能である。
【0004】
圧電アクチュエータとしては、セラミック圧電体を用いることができる。セラミック圧電体が圧電特性に応じて振動する場合、圧電体を構成する圧電層にクラックが発生するおそれがあるという問題点がある。クラックの発生率が高いと、圧電アクチュエータの信頼性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本公開特許公報特開2002−299706号(2002.10.11.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、クラックの発生率を低減することができる圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、内部電極が両分されるように形成され、互いに異なる極を有する内部電極の内側端部が、圧電層の長手方向に対して垂直な同一平面上に位置しないことを特徴とする圧電素子が提供される。
【0008】
第1電極層と第2電極層とが交互に繰り返し積層され、上記第1電極層と上記第2電極層との間毎に圧電層が介在される圧電素子において、上記第1電極層のそれぞれは、両内側の端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第1電極で構成され、上記第2電極層のそれぞれは、両内側端部が互いに離隔して両側に配置された1対の第2電極で構成され、一側に配置された上記第1電極及び上記第2電極それぞれの内側端部を連結する直線が上記圧電層の長手方向に対してなす角度は90゜未満であり得る。
【0009】
他側に配置された上記第1電極及び上記第2電極それぞれの内側端部を連結する直線が上記圧電層の長手方向に対してなす角度は、90゜未満であり得る。
【0010】
上記第1電極及び上記第2電極それぞれは、上記圧電層の長手方向に垂直な中心面を避けて形成することができる。
【0011】
1対の上記第1電極間の距離は、1対の上記第2電極間の距離と同じであり、一側に配置された上記第1電極の内側端部は、1対の上記第2電極間のギャップの中心に対応するように位置することができ、一側に配置された上記第1電極及び上記第2電極のそれぞれの内側端部を連結する直線が上記圧電層の長手方向に対してなす角度は、15゜以上20゜以下であることができる。
【0012】
1対の上記第1電極間の距離は、1対の上記第2電極間の距離よりも大きくてもよく、1対の上記第1電極と1対の上記第2電極のそれぞれは、上記圧電層の長手方向に垂直な中心面に対して対称であってもよい。
【0013】
圧電素子は、ビア及び端子をさらに含むことができ、外部電極をさらに含むことができる。また、圧電素子は非圧電層をさらに含むことができる。
【0014】
本発明の他の側面によれば、内部電極が両分されるように形成され、互いに異なる極を有する内部電極の内側端部が圧電層の長手方向に対して垂直な同一平面上に位置しないことを特徴とする圧電素子を含む圧電振動モジュールが提供される。
【0015】
圧電振動モジュールは、振動板及び圧電素子を含み、接着部材、重量体、ケース及び基板をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施例に係る圧電振動モジュールを示す斜視図である。
【
図2】一実施例に係る圧電振動モジュールを示す分解図である。
【
図3】一実施例に係る圧電振動モジュールの一部を示す図である。
【
図5】一実施例に係る圧電素子を示す断面図である。
【
図6】一実施例に係る圧電素子の電極層を示す図である。
【
図8】また他の実施例に係る圧電素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールの実施例を添付図面に基づいて詳細に説明し、添付図面に基づいて説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0018】
また、以下で使用する「第1」、「第2」などの用語は、同一または対応する構成要素を区別するための識別記号に過ぎず、同一または対応する構成要素が、第1、第2などの用語によって限定されることはない。
【0019】
また、「結合」とは、各構成要素の間の接触関係において、各構成要素が物理的に直接接触して一体化される場合のみを意味するものではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、該他の構成を介して構成要素が一体化されている場合まで包括する概念として使用する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールを示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールを示す分解図であり、
図3は、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールの一部を示す図であり、
図4及び
図5は、本発明の一実施例に係る圧電素子を示す図であり、
図6は、本発明の一実施例に係る圧電素子の電極層を示す図である。
【0021】
図1から
図3を参照すると、圧電振動モジュール10は、振動板11と圧電素子100とを含み、接着部材12、重量体150、ダンパ151、152、ケース160及び基板170をさらに含むことができる。
【0022】
振動板11は、圧電素子100の動きにより上下に振動する板であって、タッチパネル、画像表示部、HPPなどに振動を伝達する機能を果たし、伝達された振動は、ハプティック(haptic)技術として実現される。
【0023】
振動板11は、スチール(steel)またはサス(Steel Use Stainless、SUS)材質からなることができる。また、振動板11は、圧電素子100の熱膨脹係数と類似の材質であるインバー(invar)からなることができる。
【0024】
振動板11は、上部プレート11aと下部プレート11bとを含むことができる。下部プレート11bは、圧電素子100と結合する部分であり、上部プレート11aは、下部プレート11bの両側に結合され、後述する重量体150と結合する部分である。
【0025】
下部プレート11bと上部プレート11aとは、一体型の単一部品として形成可能であり、これとは異なって、多様な接合方法により固定結合されることも可能である。
【0026】
接着部材12は、圧電素子100が振動板11に結合されるように、その間に介在されることができる。接着部材12を用いると、圧電素子100を振動板11に容易に付着できる。また、接着部材12は、圧電素子100と振動板11とを互いに絶縁させることができる。
【0027】
圧電素子100は、電圧の印加により伸縮する性質を有する素子である。圧電素子100に電圧が印加されると、圧電層110内で2つの電極(+、−)の間に電界が形成され、圧電層110の内部で発生する双極子(dipole)により圧電層110の内部構造が変わり、圧電層110が伸縮することができる。
【0028】
圧電素子100が振動板11に結合された状態で左右に伸縮すると、振動板11を上下に振動させることができる。すなわち、圧電素子100の圧電特性は、振動板11の振動を誘導することができる。
【0029】
図4及び
図5を参照すると、圧電素子100は複数の圧電層110と複数の電極層120とを含み、電極層120は、第1電極層と第2電極層とに分けることができる。
【0030】
圧電層110は、圧電特性を示す層であって、PNN−PZT(lead zirconate titanate)系セラミックを含む材料からなることができる。この場合、圧電層110の材料は、下記の組成物を主成分とすることができる。
[化学式1]
【化1】
化学式1中、x、y、zは定数値であって、xが0.8、yが0.44、そして、zが1/3であることができる。
【0031】
また、圧電層110の材料は、焼結助剤として用いられる副成分をさらに含むことができる。副成分は、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化鉛(PbO)のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0032】
圧電層110は、複数にすることができ、このようにすると、低い電圧でも圧電素子100の駆動に必要な電界を確保することができる。すなわち、複数の圧電層110を有する圧電素子100は、同じ電圧でもより大きい圧電特性を実現することができる。
【0033】
電極層120は、圧電層110に電界を形成させる導電体である。上述したように、電極層120は、第1電極層と第2電極層とに分けることができる。第1電極層と第2電極層とは互いに異なる極を有する。
【0034】
電極層120は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)のうちの少なくとも1種を含む電極ペースト(paste)を圧電層の一面または両面に印刷した後に焼成することにより形成することができる。例えば、銀とパラジウムとの混合物で構成された電極ペーストにおける銀/パラジウムの値は、7/3以上9.5/0.5以下であってもよい。
【0035】
第1電極層と第2電極層とは、互いに平行に交互に繰り返し積層される。また、第1電極層と第2電極層との間毎に圧電層110が介在される。すなわち、第1電極層、圧電層110、第2電極層、圧電層110、第1電極層、圧電層110、第2電極層… のような順に積層される。
【0036】
第1電極層は、1対の第1電極121で構成され、第2電極層は、1対の第2電極122で構成される。1対の第1電極121の両外側端部は圧電層110の両端部に位置することになり、1対の第2電極122の両外側端部も圧電層110の両端部に位置することになる。
【0037】
1対の第1電極121は、両内側端部が互いに離隔して両側に配置される。また、1対の第2電極122も両内側端部が互いに離隔して両側に配置される。
【0038】
すなわち、第1電極層及び第2電極層のそれぞれは両分される。両側に分割された電極層を用いると、応力の集中が緩和されて圧電層110のクラックの発生を低減することができる。圧電層110の一部から誘発されたクラックは、圧電層110のグレーン(grain)の境界に沿って拡散され、圧電層110の全体にクラックを誘導し、圧電素子100が割れることがある。したがって、第1電極層及び第2電極層のそれぞれを両側に分割することにより、圧電層110のクラックの発生率を低減させ、圧電素子100の割れることを防止することができる。
【0039】
一方、一側に配置された単一の第1電極121及び単一の第2電極122のそれぞれの内側端部を連結する直線が圧電層110の長手方向に対してなす角度は、90゜未満である。すなわち、圧電層110の長手方向に対して垂直でありながら、一側に配置された第1電極121の内側端部を含む平面は、圧電層110の長手方向に対して垂直でありながら、一側に配置された第2電極122の内側端部を含む平面とは同一ではない。また、他側に配置された第1電極121及び第2電極122のそれぞれの内側端部を連結する直線が上記圧電層110の長手方向に対してなす角度は90゜未満であってもよい。すなわち、他側に配置された第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部とは、同一平面上に位置しない。
【0040】
これによれば、第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部とは、ジグザグの配置を有することになる。
【0041】
第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部とが、圧電層110の長手方向に対して垂直な同一面上に位置すると、第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部との間の距離が短いため、ショートの発生する確率がより高い。
【0042】
しかし、本発明のように、第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部とが圧電層110の長手方向に垂直な同一面上に位置しないと、第1電極121の内側端部と第2電極122の内側端部との間の距離が遠くなり、ショートの発生する確率が低くなる。
【0043】
一方、第1電極121と第2電極122とは、圧電層110の長手方向に垂直な中心面を避けて形成することができる。すなわち、1対の第1電極121間のギャップ及び1対の第2電極122間のギャップのすべてが圧電層110の中心面上に位置することができる。
【0044】
この場合、1対の第1電極121の両外側端部は、圧電層110の両端に位置し、単一の第1電極121の長さは圧電層110の長さの半分よりも小さくてもよい。また、これと同様に、1対の第2電極122の両外側端部は、圧電層110の両端に位置し、単一の第2電極122の長さは圧電層110の長さの半分よりも小さくてもよい。
【0045】
通常、圧電素子100が結合されている振動板11が上下に振動する場合、圧電層110のクラックは、圧電層110の中心面上で発生しやすく、特に圧電層110の表面の中央で発生しやすい。これは当該箇所に応力が集中するからである。
【0046】
第1電極121と第2電極122とを、圧電層110の長手方向に対して垂直な中心面を避けて形成すれば、圧電層110の中心面上への応力の集中を緩和することができる。これにより、クラックの発生が低減し、圧電素子100の割れることを防止することができる。
【0047】
図5に示すように、1対の第1電極121間の距離は、1対の第2電極122間の距離と同じであってもよい。この場合、縦断面上で第1電極121間のギャップと第2電極122間のギャップとは、ジグザグ形状となることができる。
【0048】
図6に示すように、複数の圧電層110の厚さがhで同じである場合、一側に配置された第1電極121の内側端部は、1対の第2電極122間のギャップの中心に対応するように位置することができる。すなわち、第1電極121間のギャップ及び第2電極122間のギャップの長さがすべてLで同じである場合、一側に配置された第1電極121の内側端部は、一側に配置された第2電極122の内側端部から水平にL/2だけ離れた箇所に対応するように位置することができる。
【0049】
図6を参照すると、一側に配置された第1電極121の内側端部と一側に配置された第2電極122の内側端部とを連結する直線は、圧電層110の長手方向に対してθの角度を有する。また、一側に配置された第1電極121の内側端部と他側に配置された第2電極122の内側端部とを連結する直線も圧電層110の長手方向に対してθの角度を有する。
【0050】
この場合、第1電極121の内側端部は、第2電極122の両内側端部のいずれとも遠い距離を保持することができる。
【0051】
一方、hが、20μm以上80μm以下である場合、θは、15゜以上20゜以下になることができる。θが15゜以上20゜以下であると、圧電振動モジュール10の振動力は、2.1g以上となることができる。
【0052】
図7は、他の実施例に係る圧電素子100を示す図である。
【0053】
図7を参照すると、1対の第1電極121間の距離は、1対の第2電極122間の距離よりも大きくすることができる。ここで、
図7における第1電極121及び第2電極122は、任意で決められたものであって、互いに変わることもできる。
【0054】
この場合、
図7に示すように、1対の第1電極121は、圧電層110の長手方向に垂直な中心面に対して互いに対称をなし、1対の第2電極122も中心面に対して互いに対称をなすことができる。
【0055】
再び、
図5を参照すると、圧電素子100は、ビア123、端子124及び非圧電層130、140をさらに含むことができる。
【0056】
ビア123は、互いに並んで配列される電極層120間を電気的に接続させることができる。すなわち、ビア123は、第1電極層及び第2電極層のそれぞれを相互接続させる。ビア123は、圧電層110を貫通して形成されることができる。ビア123は、第1電極層を接続させるビアと第2電極層を接続させるビアとに分けることができる。また、ビア123は、1対の第1電極121を接続させる2つと、1対の第2電極122を接続させる2つとで、総4つで構成されることができる。
【0057】
端子124は、電極層120が外部電源に電気的に接続されるようにし、外部へ露出されるように圧電素子100の表面に形成することができる。端子124は、ビア123上に形成されてもよい。ビア123が4つである場合、端子124の数も4つであることができる。この中、2つは第1電極層と電気的に接続され、他の2つは、第2電極層と電気的に接続されることができる。4つの端子124は、圧電層110の長手方向に一列に配置されてもよい。
【0058】
図8は、また他の実施例に係る圧電素子を示す図である。
【0059】
図8を参照すると、圧電素子100は、ビア123及び端子124を代替する外部電極125を含むことができる。
【0060】
外部電極125は、電極層120と接続するように、圧電素子100の両側面に形成される。外部電極125は、第1電極層と接続するものと第2電極層と接続するものとに分けることができる。圧電素子100が外部電極125を含む場合、
図2に示されているものとは異なって、後述する基板170の位置が外部電極125と接続するように変更されることができる。
【0061】
非圧電層は、圧電層110及び電極層120を保護する層である。非圧電層には電界が形成されないため、非圧電層は圧電特性を有さない。
【0062】
非圧電層は、第1電極層または第2電極層のうちの少なくとも一つをカバーすることができる。すなわち、非圧電層は、電極層120のうちの露出している電極層120をカバーすることができる。非圧電層は、第1カバー層130と第2カバー層140とを含むことができる。
【0063】
第1カバー層130は、端子124が形成される圧電層110上に形成されることができる。また、第2カバー層140は、第1カバー層130と反対に形成され、振動板11が結合される圧電層110上に形成されることができる。この場合、振動板11と第2カバー層140との間に接着部材12が介在されてもよい。
【0064】
第1カバー層130及び第2カバー層140は、圧電層110を構成する材料と同じであってもよい。すなわち、第1カバー層130及び第2カバー層140は、圧電層110を構成するものと同じのPNN−PZT系セラミックを含む材料で形成することができる。この場合、第1カバー層130及び第2カバー層140は、以下の組成物を主成分として形成することができる。
[化学式2]
【化2】
ここで、xは0.8、yは0.44、そして、zは1/3であることができる。
【0065】
また、第1カバー層130及び第2カバー層140は、圧電層110の1つの厚さよりも小さな厚さを有することができる。圧電層110の1つの厚さが約80μmである場合、第1カバー層130及び第2カバー層140は、約30μmの厚さを有することができる。
【0066】
再び、
図2を参照すると、重量体150は、振動力を最大に増加させる媒介物であって、振動板11の上部に位置する。重量体150を用いることによりハプティック感を向上させることができる。
【0067】
重量体150は、振動板11の上部プレート11aに結合可能であり、下部プレート11bと直接的に接触しないように両端部から中心部に向けて傾くように形成することができる。また、重量体150は、金属材質で形成してもよく、同一体積で相対的に密度の高いタングステン(W)材質を用いることができる。
【0068】
ケース160は、振動板11、圧電素子100及び重量体150をすべてカバーするハウジング(housing)であって、振動板11、圧電素子100及び重量体150を含めた圧電振動モジュール10の内部部品を保護する役割をする。
【0069】
ケース160は、上部ケースと下部ケースとに分けることができる。下部ケースは、
図2に示されているように、細くて長い扁平な形状に形成され、上部ケースの開放下部面を閉鎖できる大きさに形成される。上部ケースと下部ケースは、通常の技術者に既に広く知られているコーキング(caulking)、溶接あるいはボンディングなどの様々な方法により結合されることができる。
【0070】
下部ケースは、振動板11の下部プレート11bと所定の間隔を置いて平行に離隔しており、下部プレート11bは、下部ケースの両端部に結合され固定されることができる。
【0071】
第1ダンパ151は、重量体150とケース160との間に介在され、重量体150がケース160にぶつかって破損することを防止することができる。第1ダンパ151は、重量体150の上部に結合可能であり、弾性部材、例えば、ゴム材質を用いて形成することができる。
【0072】
第2ダンパ152は、重量体150と振動板11との間に介在され、重量体150と振動板11との間の衝撃を緩和することができる。第2ダンパ152は、重量体150の下部に結合可能であり、第1ダンパ151と同じく弾性部材、例えばゴム材質を用いて形成することができる。
【0073】
基板170は、圧電素子100の電極層120に電圧を印加するために圧電素子100に結合される回路基板である。基板170は、圧電素子100の下部に結合可能であり、フレキシブルPCB(flexible PCB、FPCB)であってもよい。
【0074】
上述したように、本発明の一実施例に係る圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールによれば、圧電層の特定領域への応力集中を緩和してクラックの発生を防止する一方、電極の内側端部間の距離が長くなり、不要なショートを防止することができる。
【0075】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などをすることにより本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるとものといえよう。
【符号の説明】
【0076】
10 圧電振動モジュール
11 振動板
11a 上部プレート
11b 下部プレート
12 接着部材
100 圧電素子
110 圧電層
120 電極層
121 第1電極
122 第2電極
123 ビア
124 端子
125 外部電極
130 第1カバー層
140 第2カバー層
150 重量体
151 第1ダンパ
152 第2ダンパ
160 ケース
170 基板