(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-37424(P2016-37424A)
(43)【公開日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ガラス板の熱処理方法及び成形方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/025 20060101AFI20160222BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20160222BHJP
【FI】
C03B23/025
C03B32/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-162787(P2014-162787)
(22)【出願日】2014年8月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 元
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】石橋 信治
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015AA04
4G015EA02
(57)【要約】
【課題】元ガラス板を熱処理する際に、ガラス板に傷が発生するのを防止することができるガラス板の熱処理方法を提供する。
【解決手段】熱処理により収縮する元ガラス板1を熱処理するガラス板の熱処理方法であって、トチ11の上に、熱処理に伴って収縮する下地ガラス板13と、下地ガラス板13の上に配置される元ガラス板1とを載せる工程と、元ガラス板1及び下地ガラス板13を加熱する工程とを備えることを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理により収縮する元ガラス板を熱処理するガラス板の熱処理方法であって、
トチの上に、前記熱処理に伴って収縮する下地ガラス板と、前記下地ガラス板の上に配置される前記元ガラス板とを載せる工程と、
前記元ガラス板及び前記下地ガラス板を加熱する工程とを備える、ガラス板の熱処理方法。
【請求項2】
熱処理により収縮する元ガラス板を熱処理して、トチの成形面に沿った形状に曲げ加工するガラス板の成形方法であって、
前記トチの成形面の上に、前記熱処理に伴って収縮する下地ガラス板と、前記下地ガラス板の上に配置される前記元ガラス板とを載せる工程と、
前記元ガラス板及び前記下地ガラス板を加熱し、曲げ加工する工程とを備える、ガラス板の成形方法。
【請求項3】
前記元ガラス板及び前記下地ガラス板が、結晶性ガラスであり、加熱により、前記元ガラス板及び前記下地ガラス板が、曲げ加工されるとともに結晶化する、請求項2に記載のガラス板の成形方法。
【請求項4】
前記元ガラス板と前記下地ガラス板の間に、離型材が配置される、請求項2または3に記載のガラス板の成形方法。
【請求項5】
前記トチの成形面と対向する前記元ガラス板の面に、印刷部が設けられている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のガラス板の成形方法。
【請求項6】
前記元ガラス板と、前記下地ガラス板が、実質的に同一の組成を有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載のガラス板の成形方法。
【請求項7】
前記曲げ加工が、前記元ガラスの外周面を実質的に円弧状に変形する曲げ加工であり、前記円弧状の円弧角度が115度以上であり、かつ円弧長が300mm以上である、請求項2〜6のいずれか一項に記載のガラス板の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元ガラス板を熱処理するガラス板の熱処理方法、及び元ガラス板を加熱して、トチの成形面に沿った形状に曲げ加工するガラス板の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
据え置き型ストーブや暖炉等の暖房装置では、その内部を視認できるように、窓ガラスや暖房装置の一部として、平板形状、屈曲形状、円弧形状などの各種形状を有した結晶化ガラスが用いられている。
【0003】
近年、このような用途に用いられる円弧形状を有する結晶化ガラスにおいて、円弧角度の大きな品種が増えており、円弧角度の大きな結晶化ガラスを製造する方法が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−91994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円弧形状を有する結晶化ガラスの製造方法として、トチの成形面の上に平板状の元ガラス板を載置し、この状態で元ガラス板を加熱して、元ガラス板を変形させるとともに、結晶化させる方法が挙げられる。
【0006】
図5は、このような従来の結晶化ガラス板の製造方法を示す模式的断面図である。
図5に示すように、トチ11は、セッター12の上に載せられている。トチ11の外周面は、円弧状に形成されており、成形面11aを構成している。円弧状の成形面11aの上には、平板状の元ガラス板1が載せられている。元ガラス板1と成形面11aとの間には、アルミナペーパーなどからなる第1の離型材15が設けられている。第1の離型材15は、成形面11aの上に載せられている。元ガラス板1の中央部が、成形面11a上の第1の離型材15と接している。
【0007】
元ガラス板1の両端部には、印刷部2が設けられている。円弧状に曲げ加工されたガラス板に印刷部を設ける方法としては、曲げ加工した後のガラス板に対して印刷する方法が一般的である。具体的には、曲げ加工したガラス板に転写紙を用いて印刷層を貼り付けた後、印刷層を焼き付ける方法が一般的である。しかしながら、この方法では、印刷部のサイズが大きくなると、転写紙を用いて印刷層を貼り付ける際に、印刷層がシワになったり、破れたりするという問題がある。また、貼り付けの際の位置精度を高めることができず、生産性に劣るなどの問題がある。
【0008】
そこで、
図5に示すように、曲げ加工する前の元ガラス板1に印刷部2を形成した後、曲げ加工することが考えられる。平板状の元ガラス板1に印刷する場合、スクリーン印刷などを用いることができるので、位置精度を高め、良好な生産性で製造することができる。
【0009】
図6は、
図5に示す状態で元ガラス板1を加熱し、元ガラス板1を自重によって曲げ加工するとともに、結晶化させて、ガラス板3を製造する工程を示す図である。
図6に示すように、曲げ加工され結晶化したガラス板3は、結晶化に伴い、矢印A方向、すなわち中央部に向かう方向に収縮する。ガラス板3と成形面11aとの間には、アルミナペーパーなどからなる第1の離型材15が設けられており、ガラス板3が収縮すると、印刷部2が第1の離型材15で擦られた状態になり、印刷部2に傷が発生する。印刷部2は設けられていない箇所においても、傷が発生するが、印刷部2が設けられていないと目立たないのに対し、印刷部2が設けられていると、傷の発生が目立ちやすい。
【0010】
本発明の目的は、元ガラス板を熱処理する際に、ガラス板に傷が発生するのを防止することができるガラス板の熱処理方法、及び元ガラス板を加熱して、トチの成形面に沿った形状に曲げ加工する際に、ガラス板に傷が発生するのを防止することができるガラス板の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガラス板の熱処理方法は、熱処理により収縮する元ガラス板を熱処理するガラス板の熱処理方法であって、トチの上に、熱処理に伴って収縮する下地ガラス板と、下地ガラス板の上に配置される元ガラス板とを載せる工程と、元ガラス板及び下地ガラス板を加熱する工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のガラス板の成形方法は、熱処理により収縮する元ガラス板を熱処理して、トチの成形面に沿った形状に曲げ加工するガラス板の成形方法であって、トチの成形面の上に、熱処理に伴って収縮する下地ガラス板と、下地ガラス板の上に配置される元ガラス板とを載せる工程と、元ガラス板及び下地ガラス板を加熱し、曲げ加工する工程とを備えることを特徴としている。
【0013】
本発明において、元ガラス板及び下地ガラス板は、結晶性ガラスであり、加熱により、元ガラス板及び下地ガラス板が、曲げ加工されるとともに結晶化することが好ましい。
【0014】
元ガラス板と下地ガラス板の間に、離型材が配置されることが好ましい
【0015】
トチの成形面と対向する元ガラス板の面には、印刷部が設けられていてもよい。
【0016】
元ガラス板と、下地ガラス板が、実質的に同一の組成を有することが好ましい。
【0017】
本発明は、曲げ加工が、元ガラスの外周面を実質的に円弧状に変形する曲げ加工であり、円弧状の円弧角度が115度以上であり、かつ円弧長が300mm以上であるときに、特に有用である。
【0018】
本発明における「熱処理により収縮する」及び「熱処理に伴って収縮する」には、結晶性ガラスを熱処理して結晶化させる際の収縮、及び一般的なガラスの熱処理における加熱後の冷却の際の収縮が含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、元ガラス板を熱処理する際、あるいは元ガラス板を加熱して、トチの成形面に沿った形状に曲げ加工する際に、ガラス板に傷が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のガラス板の製造工程を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態のガラス板の製造工程を示す模式的断面図である。
【
図3】曲げ加工後のガラス板の外周面の円弧角度及び円弧長を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態のガラス板の製造工程において、成形面の上に元ガラス板及び下地ガラス板を載せたトチを加熱炉に導入するときの状態を示す模式的断面図である。
【
図5】従来のガラス板の製造工程を示す模式的断面図である。
【
図6】従来のガラス板の製造工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態のガラス板の製造工程を示す模式的断面図である。
図1に示すように、トチ11は、セッター12の上に載せられている。トチ11の外周面は、円弧状に形成されており、成形面11aを構成している。円弧状の成形面11aの上には、アルミナペーパーなどからなる第1の離型材15が設けられている。第1の離型材15の上には、平板状の下地ガラス板13が載せられている。下地ガラス板13の中央部が、成形面11a上の第1の離型材15と接している。
【0023】
トチ11は、例えば、耐火セラミックスや結晶化ガラスなどから形成することができる。耐火セラミックスの具体例としては、コーディライトやムライトなどが挙げられる。結晶化ガラスの具体例としては、β−石英固溶体や、β−スポジュメン固溶体を主結晶とする結晶化ガラスなどが挙げられる。
【0024】
下地ガラス板13の上には、元ガラス板1が載せられている。下地ガラス板13と元ガラス板1との間には、アルミナペーパーなどからなる第2の離型材14が配置されている。本実施形態では、下地ガラス板13は、元ガラス板1より大きな面積を有している。したがって、下地ガラス板13の周縁部は、元ガラス板1の周縁部より外側に位置している。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、下地ガラス板13と元ガラス板1は、ほぼ同じ面積を有し、それらの周縁部の位置が互いにほぼ同じであるガラス板であってもよい。
【0025】
本実施形態では、下地ガラス板13及び元ガラス板1は、ともに結晶性ガラスである。したがって、加熱することにより、曲げ加工することができるとともに、結晶化させることができる。結晶性ガラスとしては、結晶化することにより、例えば、β−石英固溶体や、β−スポジュメン固溶体を主結晶とする結晶化ガラスになるガラスが挙げられる。本実施形態では、下地ガラス板13及び元ガラス板1は、実質的に同一の組成を有するガラスから形成されている。
【0026】
元ガラス板1の両端部には、印刷部2が設けられている。本実施形態において、印刷部2は、スクリーン印刷により形成されている。印刷部2の厚みは、特に限定されるものではないが、2.0μm〜5.5μmの範囲内であることが好ましく、4.0μm〜5.0μmの範囲内であることがより好ましい。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態のガラス板の製造工程を示す模式的断面図であり、
図1に示す状態の元ガラス板1及び下地ガラス板13を加熱して、曲げ加工するとともに、結晶化させた状態を示している。
図2に示すように、元ガラス板1及び下地ガラス板13は、トチ11の成形面11aに沿った円弧状に曲げ加工されるとともに、結晶化する。元ガラス板1は、曲げ加工され、結晶化することにより、ガラス板3となる。
【0028】
元ガラス板1が結晶化されてガラス板3となる際に、元ガラス板1は、
図2に示す矢印A方向に、すなわち中央部に向かって収縮しながらガラス板3となる。
図6に示す従来の方法では、このガラス板3の収縮によって、印刷部2がその下の離型材で擦られた状態になり、印刷部2に傷が発生していた。
【0029】
しかしながら、本実施形態では、ガラス板3の下に、第2の離型材14を介して、下地ガラス板13が存在している。この下地ガラス板13も結晶性ガラスであるので、ガラス板3と同様に、結晶化することにより、
図2に示す矢印A方向に、すなわち中央部に向かって収縮する。したがって、下地ガラス板13が、ガラス板3と同様に収縮するので、それらの間に介在する第2の離型材14も、ガラス板3及び下地ガラス板13と共に移動する。このため、ガラス板3と第2の離型材14との間の摩擦が低減され、ガラス板3に傷が発生するのを防止することができる。したがって、印刷部2における傷の発生を防止することができる。
【0030】
なお、元ガラス板1及び下地ガラス板13の加熱は、曲げ加工するとともに結晶化することができる温度であればよく、例えば、これらのガラス板の軟化点〜軟化点+150℃の範囲内の温度で行うことができる。
【0031】
元ガラス板1の厚みは、特に限定されるものではないが、2.0mm〜10.0mmの範囲内であることが好ましく、3.0mm〜6.0mmの範囲内であることがより好ましく、4.0mm〜5.0mmの範囲内であることがさらに好ましい。下地ガラス板13の厚みは、特に限定されるものではないか、元ガラス板1の厚みと同程度であることが好ましい。下地ガラス板13の厚みは、具体的には、元ガラス板1の厚みに対して、±50%の範囲内であることが好ましく、±20%の範囲内であることがより好ましく、±10%の範囲内であることがさらに好ましい。このような範囲内にすることにより、結晶化による下地ガラス板13の収縮と元ガラス板1の収縮を互いに同程度にすることができ、本発明の効果をより確実に得ることができる。なお、ここでいう下地ガラス板13の厚みは、曲げ加工前の厚みである。
【0032】
第1の離型材15及び第2の離型材14は、アルミナペーパー以外のセラミックペーパーから構成されていてもよいし、タルクなどの無機粉末から構成されていてもよい。
【0033】
図3は、曲げ加工後のガラス板の外周面の円弧角度及び円弧長を説明するための模式図である。本実施形態において、曲げ加工後のガラス板3の外周面の円弧角度θは、115度以上であることが好ましい。また、曲げ加工後のガラス板3の外周面の円弧長Lは、300mm以上であることが好ましい。このように大きな円弧角度θ及び円弧長Lを有する円弧状のガラス板3を曲げ加工するのに、本発明は特に有用である。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態のガラス板の製造工程において、成形面11aの上に元ガラス板1及び下地ガラス板13を載せたトチ11を連続加熱炉20に導入するときの状態を示す模式的断面図である。
図4に示すように、トチ11を、矢印B方向、すなわち成形面11aの湾曲方向に沿う方向に進行させて、連続加熱炉20にトチ11を導入することが好ましい。このような方向に進行させて、トチ11を導入することにより、元ガラス板1の湾曲させる方向の端部から徐々に加熱することができ、精度良く曲げ加工することができる。元ガラス板1の湾曲させる方向と垂直な方向の端部から加熱し始めると、曲げ加工の形状にねじれが生じる場合がある。
【0035】
以上のように、本実施形態では、元ガラス板1を加熱して、曲げ加工するとともに結晶化させる工程において、ガラス板3と第2の離型材14との間の摩擦が低減され、ガラス板3に傷が発生するのを防止することができる。したがって、印刷部2における傷の発生を防止することができる。
【0036】
上記実施形態では、端部に印刷部が設けられた元ガラス板を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、元ガラス板の全面に印刷部が設けられていてもよい。また、本発明においては、元ガラス板に印刷部が設けられていなくてもよい。印刷物が設けられてなくとも、曲げ加工後のガラス板に傷が入るのを防止することができるという本発明の効果は発揮される。
【0037】
上記実施形態では、曲げ加工の形状として、円弧状を例にして説明しているが、本発明をこれに限定されるものではない。曲げ加工の形状は、例えば、円弧状以外のアール形状や、屈曲形状などであってもよい。また、曲げ加工の形状として、元ガラス板に対し凸状となる成形面の形状を例にして説明しているが、元ガラス板に対し凹状となる成形面の形状であってもよい。
【0038】
上記実施形態では、元ガラス板及び下地ガラス板として、実質的に同一の組成を有するガラスを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
元ガラス板と下地ガラス板の収縮率の差は、小さいことが好ましい。具体的には、元ガラス板と下地ガラス板の収縮率の差は、±0.5%であることが好ましく、より好ましくは±0.3%であり、さらに好ましくは±0.1%である。ここでいう元ガラス板と下地ガラス板の収縮率の差は、以下の式から求めることができるものである。
【0040】
元ガラス板と下地ガラス板の収縮率の差(%)=(元ガラス板の熱処理による収縮率(%))―(下地ガラス板の熱処理による収縮率(%))
【0041】
ここでいう熱処理は、本発明の熱処理方法または成形方法において、元ガラス板及び下地ガラス板が実際に受ける熱処理と同一の条件での熱処理である。また、収縮率は、以下の式から求められるものである。
【0042】
収縮率(%)={[(収縮前のガラス板の所定方向の長さ)―(収縮後のガラス板の所定方向の長さ)]/(収縮前のガラス板の所定方向の長さ)}×100
【0043】
元ガラス板と下地ガラス板は、特に湾曲方向の寸法について、上記収縮率差の関係を満たすことが好ましい。
【0044】
上記実施形態では、元ガラス板及び下地ガラス板として、加熱により結晶化する結晶性ガラスを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、元ガラス板及び下地ガラス板として、加熱により結晶化しないガラスを用いた場合にも、本発明の効果を得ることができる。この場合、加熱して元ガラス板を曲げ加工する際、元ガラス板は加熱による膨張後に冷却による収縮を伴う。したがって、このような収縮により、ガラス板に傷が発生する。本発明を適用することにより、このようなガラス板の収縮による傷の発生を防止することができる。この場合、下地ガラス板としては、元ガラス板の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するガラスを用いることが好ましく、さらには、元ガラス板の熱膨張係数と実質的に同一の熱膨張係数を有するガラスを用いることが好ましい。下地ガラス板の熱膨張係数は、元ガラス板の熱膨張係数の±45%の範囲内であることが好ましい。
【0045】
また、上記実施形態では、熱処理により、元ガラス板の曲げ加工及び結晶化を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の熱処理方法では、例えば、予め曲げ加工した元ガラス板を、曲げ加工された下地ガラス板の上に載置し、熱処理して結晶化させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…元ガラス板
2…印刷部
3…ガラス板
11…トチ
11a…成形面
12…セッター
13…下地ガラス板
14…第2の離型材
15…第1の離型材
20…連続加熱炉