【解決手段】屈曲部2で接続された第1のガラス板部3及び第2のガラス板部4を有するガラス板1の熱処理方法であって、第1のガラス板部3を載置する第1の載置面11及び第2のガラス板部4を載置する第2の載置面12を有するトチ10を準備する工程と、トチ10の上にガラス板1を載置する工程と、第1の載置面11の上に載置された第1のガラス板部3の端部3aを、屈曲部2に向かって押圧しながら、ガラス板1を熱処理する工程とを備えることを特徴としている。
第1の押え部材を準備し、前記第1の押え部材によって、前記第1のガラス板部の端部を前記屈曲部に向かって押圧する、請求項1または2に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
前記第1の押え部材が下方端部を有しており、前記下方端部を支点として、前記第1の押え部材を、前記第1のガラス板部の端部に向けて寄り掛からせることにより、前記第1のガラス板部の端部へ押圧力を作用させる、請求項3に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
互いに対向する第1の端部及び第2の端部を有する第2の押え部材を準備し、前記第2の押え部材を前記第1の載置面の上に載置して前記第1の端部を前記第1のガラス板部の端部に当接させ、前記第2の端部を前記第1の押え部材の主面で押圧することにより、前記第2の押え部材を介して、前記第1のガラス板部の端部を前記屈曲部に向かって押圧する、請求項3または4に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
前記第1の押え部材は、前記屈曲部が延びる方向の幅が、前記第1のガラス板部の前記方向の幅と同程度かあるいはそれより広い板材であり、前記第1の押え部材によって前記第1のガラス板部の端部の全面が押圧される、請求項3〜6のいずれか一項に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
重りを前記第1のガラス板部の端部に当接させた状態で前記第1の載置面の上に載置することによって、前記第1のガラス板部の端部を前記重りで押圧する、請求項1または2に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
前記屈曲部が延びる方向と略垂直な方向における前記第1のガラス板部の長さが、前記屈曲部が延びる方向と略垂直な方向における前記第2のガラス板部の長さよりも長い、請求項1〜8のいずれか一項に記載の屈曲部を有するガラス板の熱処理方法。
前記第1の載置面と前記第2の載置面で形成される角度が、90°〜150°の範囲内である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の屈曲部を有するガラス板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、さらに屈曲部を有するL字形のガラス板の熱処理時の収縮による変形について検討した。そして、屈曲部を有するL字形のガラス板が熱処理により結晶化して収縮したときに問題が生じる場合があることを見出した。
【0005】
図7は、屈曲部を有するガラス板の熱処理方法の一例を示す模式的断面図である。
図7に示すように、支持台40の上には、図示されない支持部材によって、トチ10が支持されている。トチ10の上には、ガラス板1が載置されている。ガラス板1は、屈曲部2と、屈曲部2で接続された第1のガラス板部3及び第2のガラス板部4とを有している。トチ10は、ガラス板1の屈曲形状に沿った形状の載置面を有している。具体的には、トチ10は、第1のガラス板部3を載置する第1の載置面11と、第2のガラス板部4を載置する第2の載置面12とを有している。
【0006】
ガラス板1において、屈曲部2が延びる方向(y方向)と略垂直な方向における第1のガラス板部3の長さL
1は、屈曲部2が延びる方向(y方向)と略垂直な方向における第2のガラス板部4の長さL
2より長くなっている。加熱炉内の高さに制限がある場合、支持台40からの高さhを低くする必要がある。第1のガラス板部3の長さL
1が第2のガラス板部4の長さL
2よりも長いガラス板1において、高さhを低くする方法として、第1の載置面11の水平方向(x方向)に対する傾斜角度θ1を小さくし、第2の載置面12の水平方向(x方向)に対する傾斜角度θ2を大きくする方法がある。
【0007】
上記のような状態で、ガラス板1が結晶化して収縮すると、第1のガラス板部3の屈曲部2から離れた部分は第1のガラス板部3の中央部に向かって、矢印E方向に収縮し、屈曲部2に近い部分は第1のガラス板部3の中央部に向かって、矢印F方向に収縮する。屈曲部2に近い第1のガラス板部3の部分が矢印F方向に収縮するため、
図8に示すように、ガラス板1の屈曲部2の位置が、トチ10の載置面からずれてしまうという問題を生じる。
【0008】
図8は、
図7に示す熱処理方法において、熱処理後のガラス板の状態を示す模式的断面図である。
図8に示すように、ガラス板1の屈曲部2の位置がずれると、屈曲部2の形状が崩れてしまい、高い形状精度でガラス板1を熱処理して結晶化することが困難となるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、屈曲部を有するガラス板を高い形状精度で熱処理することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、屈曲部で接続された第1のガラス板部及び第2のガラス板部を有するガラス板の熱処理方法であって、第1のガラス板部を載置する第1の載置面及び第2のガラス板部を載置する第2の載置面を有するトチを準備する工程と、トチの上にガラス板を載置する工程と、第1の載置面の上に載置された第1のガラス板部の端部を、屈曲部に向かって押圧しながら、ガラス板を熱処理する工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
本発明においては、ガラス板が結晶性ガラス板であることが好ましい。この場合、熱処理することにより、ガラス板を結晶化させることができる。
【0012】
本発明においては、第1の押え部材を準備し、第1の押え部材によって、第1のガラス板部の端部を屈曲部に向かって押圧することが好ましい。例えば、第1の押え部材が下方端部を有しており、下方端部を支点として、第1の押え部材を、第1のガラス板部の端部に向けて寄り掛からせることにより、第1のガラス板部の端部へ押圧力を作用させることができる。
【0013】
本発明の第1の局面では、第1のガラス板部の端部が、第1の載置面からはみ出るようにガラス板を載置し、第1の押え部材の主面を、第1のガラス板部の端部に直接当接させることにより、第1のガラス板部の端部を、屈曲部に向かって押圧する。
【0014】
本発明の第2の局面では、互いに対向する第1の端部及び第2の端部を有する第2の押え部材を準備し、第2の押え部材を第1の載置面の上に載置して第1の端部を第1のガラス板部の端部に当接させ、第2の端部を第1の押え部材の主面で押圧することにより、第2の押え部材を介して、第1のガラス板部の端部を屈曲部に向かって押圧する。
【0015】
本発明の第3の局面では、重りを第1のガラス板部の端部に当接させた状態で第1の載置面の上に載置することによって、第1のガラス板部の端部を重りで押圧する。
【0016】
本発明においては、第1の押え部材は、屈曲部が延びる方向の幅が、第1のガラス板部の方向の幅と同程度かあるいはそれより広い板材であり、第1の押え部材によって第1のガラス板部の端部の全面が押圧されることが好ましい。
【0017】
本発明においては、屈曲部が延びる方向と略垂直な方向における第1のガラス板部の長さが、屈曲部が延びる方向と略垂直な方向における第2のガラス板部の長さよりも長いことが好ましい。
【0018】
本発明においては、第1の押え部材が、結晶化ガラス板から構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明は、第1の載置面の水平方向に対する傾斜角度が45°未満である場合に、特にその効果がより一層発揮される。
【0020】
本発明においては、第1の載置面と第2の載置面で形成される角度が、90°〜150°の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、屈曲部を有するガラス板を高い形状精度で熱処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態におけるガラス板の熱処理方法を示す模式的断面図である。
図1に示すように、支持台40の上には、図示されない支持部材によって、トチ10が支持されている。トチ10の上には、ガラス板1が載置されている。ガラス板1は、屈曲部2と、屈曲部2で接続された第1のガラス板部3及び第2のガラス板部4とを有している。トチ10は、ガラス板1の屈曲形状に沿った形状の載置面を有している。具体的には、トチ10は、第1のガラス板部3を載置する第1の載置面11と、第2のガラス板部4を載置する第2の載置面12とを有している。なお、図示省略しているが、ガラス板1とトチ10との間には、アルミナペーパーなどの離型材が設けられている。
【0025】
図7を参照して説明したように、本実施形態では、屈曲部2が延びる方向(y方向)と略垂直な方向における第1のガラス板部3の長さL
1(
図7を参照)は、屈曲部2が延びる方向(y方向)と略垂直な方向における第2のガラス板部4の長さL
2(
図7を参照)より長くなっている。特に、第1のガラス板部3の長さL
1が700mm以上になると、
図7を参照して説明した矢印F方向の収縮が大きくなる。したがって、第1のガラス板部3の長さL
1が700mm以上である場合に、本発明を適用することが特に好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第1のガラス板部3の長さL
1が700mm未満の場合にも、本発明を適用することができる。また、本発明は、第1のガラス板部3の長さL
1が、第2のガラス板部4の長さL
2より長いことに限定されるものではなく、第1のガラス板部3の長さL
1が、第2のガラス板部4の長さL
2と同じであってもよいし、第2のガラス板部4の長さL
2が、第1のガラス板部3の長さL
1より長くてもよい。
【0026】
また、第1の載置面11の水平方向(x方向)に対する傾斜角度θ1が小さくなるほど、
図7を参照して説明した矢印F方向の収縮が大きくなる。したがって、傾斜角度θ1が小さくなるほど、本発明の効果がより一層発揮される。したがって、本発明において、傾斜角度θ1は45°未満あることが好ましく、より好ましくは40°以下であり、さらに好ましくは30°以下である。しかしながら、傾斜角度θ1が小さくなりすぎると、本発明を適用することが困難になる場合があるので、傾斜角度θ1は、1°以上であることが好ましく、より好ましくは10°以上であり、さらに好ましくは20°以上である。
【0027】
本実施形態において、第1のガラス板部3及び第2のガラス板部4は、それぞれ平板状に形成されている。本実施形態において、第1の載置面11と第2の載置面12で形成される角度θ3は、90°である。本発明において、第1の載置面11と第2の載置面12で形成される角度θ3は、90°〜150°の範囲内であることが好ましい。なお、本実施形態において、第1の載置面11と第2の載置面12で形成される角度θ3は、第1のガラス板部3と第2のガラス板部4で形成される角度、すなわち屈曲部2の角度に対応している。
【0028】
本実施形態では、第1の押え部材20として、板材が用いられている。第1の押え部材20は、第1の載置面11の上に載置された第1のガラス板部3の端部3aを押圧するように設けられている。具体的には、第1の押え部材20の下方端部22を支点として、第1の押え部材20を第1のガラス板部3の端部3aに寄り掛からせることにより、第1の押え部材20の主面21を第1のガラス板部3の端部3aに当接させている。支持台40に固定された留め具41に、第1の押え部材20の下方端部22を当接させて、下方端部22が支点となるように第1の押え部材20が支持されている。
【0029】
第1の押え部材20は、その主面21を第1のガラス板部3の端部3aに当接させることにより、自重で第1のガラス板部3の端部3aを矢印A方向に押圧している。
【0030】
図2は、
図1に示す矢印D方向から見た第1の押え部材と第1のガラス板部の端部を示す平面図である。
図2に示すように、本実施形態の第1の押え部材20は、屈曲部2が延びる方向(y方向)の幅が、第1のガラス板部3のy方向の幅より広い板材である。したがって、本実施形態では、第1のガラス板部3の端部3aの全面を、第1の押え部材の主面21で押圧している。
【0031】
本実施形態では、
図1に示すように、第1のガラス板部3の端部3aを第1の押え部材20の主面21で矢印A方向に押圧しながら、ガラス板1を熱処理して結晶させる。第1のガラス板部3の端部3aが矢印A方向に押圧されているので、第1のガラス板部3全体は、結晶化により矢印B方向に収縮する。このため、結晶化に伴うガラス板1の屈曲部2の位置ずれを抑制することができる。したがって、屈曲部2を有するガラス板1を高い形状精度で熱処理して結晶化することができる。
【0032】
図1に示すように、第1のガラス板部3の端部3aは、第1の載置面11の端部11aより外側に突出している。これは、結晶化に伴う第1のガラス板部3の収縮量を考慮したものであり、第1のガラス板部3の収縮が終了するまで、第1のガラス板部3の端部3aを第1の押え部材20の主面21で押圧できるようにするためである。したがって、第1のガラス板部3の端部3aは、結晶化に伴う第1のガラス板部3の長さ方向における平均収縮量と同程度になるように、第1の載置面11の端部11aから外側に突出していることが好ましい。これにより、第1のガラス板部3が結晶化により収縮する時にのみ、第1の押え部材20で押圧することができる。
【0033】
連続加熱炉等にトチ10を導入して熱処理する場合、支持台40を、屈曲部2が延びる方向(y方向)と略垂直な方向(x方向)に進行させて、トチ10を連続加熱炉等に導入することが好ましい。これにより、ガラス板1に対し、熱処理をより均一に行うことができる。
【0034】
トチ10は、例えば、耐火セラミックスや結晶化ガラスなどから形成することができる。耐火セラミックスの具体例としては、コーディライトやムライトなどが挙げられる。結晶化ガラスの具体例としては、β−石英固溶体や、β−スポジュメン固溶体を主結晶とする結晶化ガラスなどが挙げられる。
【0035】
本実施形態において、ガラス板1は、結晶性ガラスである。したがって、熱処理することにより、結晶化させることができる。結晶性ガラスとしては、結晶化することにより、例えば、β−石英固溶体や、β−スポジュメン固溶体を主結晶とする結晶化ガラスになるガラスが挙げられる。
【0036】
第1の押え部材20は、例えば、トチ10と同様に、耐火セラミックスや結晶化ガラスなどから形成することができる。第1の押え部材20の熱容量は、第1のガラス板部3の熱容量と同程度であることが好ましい。このような観点からは、ガラス板1が結晶化した後の結晶化ガラスと同様の結晶化ガラスから形成されていることが好ましい。また、第1の押え部材20の熱容量を、第1のガラス板部3の熱容量に近づける観点から、第1の押え部材20の厚みは、第1のガラス板部3の厚みと同程度であることが好ましい。具体的には、第1の押え部材20の厚みは、第1のガラス板部3の厚みの±50%の範囲内であることが好ましく、±20%の範囲内であることがより好ましく、±10%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0037】
第1の押え部材20の熱容量を、第1のガラス板部3の熱容量に近づけることにより、第1の押え部材20が接している第1のガラス板部3の端部3aの近傍における温度のばらつきを低減することができる。このため、温度のばらつきによる第1のガラス板部3の端部3a近傍の変形を抑制することができ、より高い形状精度で熱処理して結晶化させることができる。
【0038】
また、
図2に示すように、第1のガラス板部3の端部3aの全面を押圧することにより、第1のガラス板部3の端部3aの一部が凹むなどの変形を抑制することができる。このため、より高い形状精度で熱処理して結晶化させることができる。
【0039】
本実施形態では、第1の押え部材20の下方端部22を支点として、第1の押え部材20を第1のガラス板部3の端部3aに寄り掛からせることにより、第1の押え部材20で第1のガラス板部3の端部3aを押圧している。このため、第1の押え部材20の長さや第1の押え部材20の傾斜角度などを変えることにより、第1のガラス板部3の端部3aを押圧する力を調整することができる。
【0040】
図3は、本発明の第1の実施形態における変形例を示す模式的断面図である。
図3に示すように、第1の押え部材20の反対側の主面23の上に、重り42を載せることにより、第1のガラス板部3の端部3aを押圧する力を調整してもよい。また、第1の押え部材20の主面21側に重り42を取り付けて、第1のガラス板部3の端部3aを押圧する力を調整してもよい。
【0041】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態におけるガラス板の熱処理方法を示す模式的断面図である。本実施形態では、第1の押え部材20に加えて、互いに対向する第1の端部31及び第2の端部32を有する第2の押え部材30を用いている。
図4に示すように、第2の押え部材30を第1の載置面11の上に載置して第1の端部31を第1のガラス板部3の端部3aに当接させ、第2の端部32を第1の押え部材20の主面21で押圧している。これにより、第2の押え部材30を介して、第1の押え部材20の主面21で第1のガラス板部3の端部3aを矢印A方向に押圧している。
【0042】
図5は、
図4に示す矢印D方向から見た第1の押え部材、第2の押え部材、及び第1のガラス板部の端部を示す平面図である。
図5に示すように、本実施形態の第1の押え部材20は、屈曲部2が延びる方向(y方向)の幅が、第1のガラス板部3のy方向の幅より広い板材である。また、第2の押え部材30のy方向の幅は、第1のガラス板部3のy方向の幅と同程度かあるいはそれよりわずかに広くなっている。したがって、本実施形態では、第1のガラス板部3の端部3aの全面を、第2の押え部材30を介して、第1の押え部材20の主面21で押圧することができる。なお、本実施形態において、第1の押え部材20は、第1のガラス板部3の端部3aに直接接触しないので、第1の押え部材20のy方向の幅は、第1のガラス板部3のy方向の幅より狭くなっていてもよい。
【0043】
本実施形態においては、
図4に示すように、第2の押え部材30を介して、第1のガラス板部3の端部3aを第1の押え部材20の主面21で矢印A方向に押圧しながら、ガラス板1を熱処理して結晶させる。第1のガラス板部3の端部3aが矢印A方向に押圧されているので、第1のガラス板部3全体は、結晶化により矢印B方向に収縮する。このため、結晶化に伴うガラス板1の屈曲部2の位置ずれを抑制することができる。したがって、屈曲部2を有するガラス板1を高い形状精度で熱処理して結晶化することができる。
【0044】
図4に示すように、第2の押え部材30の第2の端部32は、第1の載置面11の端部11aより外側に突出している。これは、結晶化に伴う第1のガラス板部3の収縮量を考慮したものであり、第1のガラス板部3の収縮が終了するまで、第2の押え部材30を介して、第1のガラス板部3の端部3aを第1の押え部材20の主面21で押圧できるようにするためである。
図1に示す第1の実施形態では、結晶化に伴う第1のガラス板部3の長さ方向における平均収縮量と同程度になるように、第1のガラス板部3の端部3aを第1の載置面11の端部11aから外側に突出させている。この場合、第1のガラス板部3の実際の収縮量が平均収縮量より小さくなると、第1のガラス板部3の端部3aが第1の載置面11の端部11aからはみ出た状態で、結晶化が終了する。このような状態で結晶化が終了すると、第1のガラス板部3の下に配置されているアルミナペーパー等の離型材が、第1のガラス板部3の端部3aと接触し、離型材の跡が第1のガラス板部3の端部3aに転写されてしまうおそれがある。
【0045】
本実施形態では、第2の押え部材30を介して、第1のガラス板部3の端部3aを押圧しているので、結晶化終了時の第1のガラス板部3の端部3aの位置を、必ず第1の載置面11上にすることができる。したがって、上記の問題が発生するのを防止することができる。
【0046】
本実施形態では、結晶化に伴う第1のガラス板部3の長さ方向における平均収縮量と同程度あるいはそれ以上になるように、熱処理開始前において、第2の押え部材30の第2の端部32を、第1の載置面11の端部11aから外側に突出させておくことが好ましい。
【0047】
本実施形態において、トチ10としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。第1の押え部材20についても、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。本実施形態において、第1の押え部材20は、第1のガラス板部3の端部3aと直接接触しないので、第1の実施形態で例示したもの以外のものを用いてもよい。
【0048】
第2の押え部材30は、第1の実施形態の第1の押え部材20と同様に、耐火セラミックスや結晶化ガラスなどから形成することができる。第2の押え部材30は、板材であることが好ましい。第2の押え部材30の熱容量は、第1のガラス板部3の熱容量と同程度であることが好ましい。このような観点からは、ガラス板1が結晶化した後の結晶化ガラスと同様の結晶化ガラスから形成されていることが好ましい。また、第2の押え部材30の熱容量を、第1のガラス板部3の熱容量に近づける観点から、第2の押え部材30が板材である場合、第2の押え部材30の厚みは、第1のガラス板部3の厚みと同程度であることが好ましい。具体的には、第2の押え部材30の厚みは、第1のガラス板部3の厚みの±50%の範囲内であることが好ましく、±30%の範囲内であることがより好ましく、±10%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
第2の押え部材30の熱容量を、第1のガラス板部3の熱容量に近づけることにより、第2の押え部材30が接している第1のガラス板部3の端部3aの近傍における温度のばらつきを低減することができる。このため、温度のばらつきによる第1のガラス板部3の端部3a近傍の変形を抑制することができ、より高い形状精度で熱処理して結晶化させることができる。
【0050】
また、
図5に示すように、第1のガラス板部3の端部3aの全面を押圧することにより、第1のガラス板部3の端部3aの一部が凹むなどの変形を抑制することができる。このため、より高い形状精度で熱処理して結晶化させることができる。
【0051】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1の押え部材20の下方端部22を支点として、第1の押え部材20を第2の押え部材30の第2の端部32に寄り掛からせることにより、第1の押え部材20で第1のガラス板部3の端部3aを押圧している。このため、第1の押え部材20の長さや第1の押え部材20の傾斜角度などを変えることにより、第1のガラス板部3の端部3aを押圧する力を調整することができる。また、
図3に示すように、第1の押え部材20に重り42を取りつけて、第1のガラス板部3の端部3aを押圧する力を調整することもできる。
【0052】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態におけるガラス板の熱処理方法を示す模式的断面図である。本実施形態では、重り43を第1のガラス板部3の端部3aに当接させた状態で第1の載置面11の上に載置することによって、第1のガラス板部3の端部3aを重り43の自重で押している。
【0053】
本実施形態においても、
図6に示すように、重り43で第1のガラス板部3の端部3aを矢印A方向に押圧しながら、ガラス板1を熱処理して結晶化させている。第1のガラス板部3の端部3aが矢印B方向に押圧されているので、第1のガラス板部3全体は、結晶化により矢印B方向に収縮する。このため、結晶化に伴うガラス板1の屈曲部2の位置ずれを抑制することができる。したがって、屈曲部2を有するガラス板1を高い形状精度で熱処理して結晶化することができる。
【0054】
重り43としては、例えば、ムライトやコーディライト、シリカとアルミナに金属酸化物を含む耐火セラミックス等が挙げられる。
【0055】
本実施形態においても、第1のガラス板部3の端部3aの全面を、重り43で押圧することが好ましいので、重り43のy方向の幅は、第1のガラス板部3のy方向の幅と同程度かあるいはそれより広いことが好ましい。
【0056】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、重り43の熱容量は、第1のガラス板部3の熱容量と同程度であることが好ましい。しかしながら、第1のガラス板部3の熱容量と同程度の熱容量を有する重り43を用いると、重り43の重量が不足し、重り43として機能させることが難しい場合がある。したがって、このような観点からは、第1の実施形態及び第2の実施形態が好ましく採用される。
【0057】
上記各実施形態においては、第1の載置面11の水平方向に対する傾斜角度θ1が、45°未満であることが好ましいと説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の載置面11の水平方向に対する傾斜角度θ1が、45°以上であっても、
図7及び
図8を参照して説明した問題が生じる場合には、本発明を適用することができる。
【0058】
また、第2の載置面12に載置された第2のガラス板部4に対しても、必要な場合には、本発明を適用することができる。すなわち、別体の第1の押え部材等を設け、第2の載置面12に載置された第2のガラス板部4の端部を、この別体の第1の押え部材等で、直接または間接に押圧しながら、熱処理することができる。
【0059】
上記各実施形態では、ガラス板として、熱処理により結晶化する結晶性ガラスを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、熱処理により結晶化しないが、熱処理により収縮を伴うガラス板であれば、本発明を適用することができる。
【0060】
上記第1及び第2の実施形態では、第1の押え部材の下方端部を支点として、第1の押え部材の主面を第1のガラス板部の端部または第2の押え部材の第2の端部に寄り掛からせることにより押圧しているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の押え部材の主面で、直接または間接に第1のガラス板部の端部を押圧することができる方法であれば、他の方法でもよい。
【0061】
上記各実施形態では、板状部材の一方の面を第1の載置面及び第2の載置面として用いたトチを例にして示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、特許文献1に開示されたトチのように、複数の板状部材を立てて等間隔に配置してトチを構成し、複数の板状部材の頂面から第1の載置面及び第2の載置面を構成してもよい。