(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-4035(P2016-4035A)
(43)【公開日】2016年1月12日
(54)【発明の名称】ドプラセンサーによる非接触流量測定システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20060101AFI20151208BHJP
【FI】
G01F1/66 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-138100(P2014-138100)
(22)【出願日】2014年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】504212932
【氏名又は名称】株式会社デジタル・スパイス
(72)【発明者】
【氏名】高山 光博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 文博
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA06
2F035DA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便に瞬間流量が得られるドプラセンサーによる非接触流量測定システムを提供する。
【解決手段】ドプラセンサー1による非接触流量測定システム100は、放出口から放出される流体の流量をドプラセンサー1によって測定する流量測定システムであり、ドプラセンサー1から取得したドプラシフト成分を、逐次A/Dコンバータによるアナログ−デジタル変換を行なうことでデジタルデータとして保存する記憶手段と、デジタルデータのドプラシフト成分量からゼロクロス数を検出するゼロクロス検出手段と、一定区間毎のゼロクロス数をカウントするゼロクロス数カウント手段と、このゼロクロス数カウント手段のゼロクロス数に応じて予め定めた瞬間流量に変換する流量変換テーブルとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出口から放出される流体の流量をドプラセンサーによって測定する流量測定システムであって、
前記ドプラセンサーから取得したドプラシフト成分を、逐次A/Dコンバータによるアナログ−デジタル変換を行なうことでデジタルデータとして保存する記憶手段と、
前記デジタルデータのドプラシフト成分量からゼロクロス数を検出するゼロクロス検出手段と、一定区間毎のゼロクロス数をカウントするゼロクロス数カウント手段と、
このゼロクロス数カウント手段のゼロクロス数に応じて予め定めた瞬間流量に変換する流量変換テーブルとを備えたことを特徴とする流量測定システム。
【請求項2】
一定区間毎の瞬間流量を所定時間積分する積分手段を備え、この積分手段により所定時間における排出総流量を求める請求項1記載の流量測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドプラセンサーを用いて非接触で流量が算出可能なドプラセンサーによる非接触流量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放出口から放出される流体の流量を測定する流量測定機器としては、超音波センサを用いた超音波流量計が知られている。この超音波流量計は、上流からの音波と下流からの音波の伝搬時間差や管断面積などから流量を算出している。また、トイレに超音波センサを設置し、容器への尿の流入量の変化から尿量を求める機器も存在する。いずれもフーリエ変換や複雑な数式を用いて演算するためDSPを使用して算出したり、専用の演算部を備えることが多い。
【0003】
また、ドプラセンサーによるドプラシフト成分から流速情報を求め、その変化を時間軸と対応付けた流速曲線から算出する方法が、特開2013−34548号(特許文献1)に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−34548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された方法では、ドプラセンサーによるドプラシフト成分から得られるデータからは、流量の変化と定性的な曲線が得られるものの、この曲線からは流量を求めることはできない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、この問題を解決し、簡便に瞬間流量が得られるドプラセンサーによる非接触流量測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるドプラセンサーによる非接触流量測定システムは、放出口から放出される流体の流量をドプラセンサーによって測定する流量測定システムであって、前記ドプラセンサーから取得したドプラシフト成分を、逐次A/Dコンバータによるアナログ−デジタル変換を行なうことでデジタルデータとして保存する記憶手段と、前記デジタルデータのドプラシフト成分量からゼロクロス数を検出するゼロクロス検出手段と、一定区間毎のゼロクロス数をカウントするゼロクロス数カウント手段と、このゼロクロス数カウント手段のゼロクロス数に応じて予め定めた瞬間流量に変換する流量変換テーブルとを備えることを要旨としている。
【0008】
さらに、本発明のドプラセンサーによる非接触流量測定システムは、一定区間毎の瞬間流量を所定時間積分する積分手段を備え、この積分手段により所定時間における排出総流量を求めるようにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドプラセンサーによる非接触流量測定システムによれば、フーリエ変換や複雑な数式などを用いて演算する必要が無く、演算的にも負荷の少ないゼロクロス法でドプラシフト成分量が求められれば、流量変換テーブルから簡便に瞬間流量を求めることができる。
【0010】
また、一定区間毎の瞬間流量を所定時間積分する積分手段を備えることにより、所定時間における排出総流量を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる流量測定システムの構成の一例を示すブロック図
【
図2】同測定システムの演算動作を説明するフローチャート
【
図3】同測定システムのゼロクロス数演算の一例を説明するグラフ
【
図4】ゼロクロス数と流量との関係の一例を表すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるドプラセンサーによる非接触流量測定システムは、放出口から放出される流体の流量をドプラセンサーによって測定する流量測定システムであって、前記ドプラセンサーから取得したドプラシフト成分を、逐次A/Dコンバータによるアナログ−デジタル変換を行なうことでデジタルデータとして保存する記憶手段と、前記デジタルデータのドプラシフト成分量からゼロクロス数を検出するゼロクロス検出手段と、一定区間毎のゼロクロス数をカウントするゼロクロス数カウント手段と、このゼロクロス数カウント手段のゼロクロス数に応じて予め定めた瞬間流量に変換する流量変換テーブルとを備えている。
【0013】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施例について説明する。なお、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本発明によるドプラセンサーによる非接触流量測定システムの実施例を示すブロック図である。流量測定システム100は、ドプラセンサー1、データ保存器2、演算装置3を備えている。
【0015】
ドプラセンサー1は、送信部11、受信部12、データ保存器2へ接続し、取得した情報を出力するための信号線13を備える。
【0016】
送信部11は、データ保存器2の発振器22にて作成された送信信号を信号線13経由で送信する。
【0017】
受信部12は、送信部11から送信された送信信号が検出範囲において反射された反射波すなわち受信信号を受信し、データ保存器2のミキサ21へ信号線13経由で送信される。
【0018】
データ保存器2は、ミキサ21、発振器22、フィルタ部23、A/D変換器24、保存部25、データ送信部26、フラッシュメモリ27を備える。
【0019】
ミキサ21は、発振器22が出力した送信信号と、ドプラセンサー1の受信部12が出力した受信信号とを混合した混合信号を生成するとともに、送信信号の周波数と受信信号の周波数との差、すなわちドプラシフト成分を混合信号から抽出して、フィルタ部23に出力する。
【0020】
発振器22は、所定の周波数の送信信号を生成し、ドプラセンサー1の送信部11へ出力する。発振器22の動作は、データ保存器2内の集積回路(図示なし)で制御される。
【0021】
フィルタ部23は、ミキサ21にて作成したドプラシフト成分を、ローカットフィルタで直流成分やノイズ源となる超低周波数成分を除去する。また、フィルタ部23の構成については、分析の際に不要な周波数成分はここでフィルタに通して除去することも考えられる。さらに、フィルタ部23は、フィルタを通過したドプラシフト成分を増幅して出力する増幅回路(図示なし)を有する。
【0022】
A/D変換器24は、フィルタ部23でフィルタリングや増幅されたドプラシフト成分を、アナログ−デジタル変換でデジタルデータへ変換するが、変換されたデジタルデータは、フラッシュメモリ27にて一定時間分保存される。A/D変換器24の動作は、データ保存器2内の集積回路(図示なし)で制御される。
【0023】
記憶手段としての保存部25は、A/D変換器24で作成されたドプラシフト成分のデジタルデータを、一定時間分フラッシュメモリ27へ保存するための処理を行なう。保存部25は、フラッシュメモリ27へ保存するドプラシフト成分のデジタルデータについて、データ保存器2保有の時刻管理機能(図示なし)を用いて、受信信号の取得時刻、取得順を管理し、記録する処理を行なう。
【0024】
データ送信部26は、演算装置3のデータ受信部31と通信を行い、フラッシュメモリ27のデータを送信する。通信は、国際規格で制定されている有線通信規格あるいは無線通信規格を用いて演算装置3へデータを送信する。
【0025】
演算装置3は、データ受信部31、分析部32、出力部33を備える。
【0026】
データ受信部31は、データ保存器2のフラッシュメモリ27に保存されたドプラシフト成分のデジタルデータを演算装置3に転送を行なう際に、データ保存器2のデータ送信部26と通信を行い、データを受信し、分析部32へデータを送信する。
【0027】
分析部32は、本発明の中心となる処理である。取得したドプラシフト成分のデジタルデータは一定時間分のデータとして構成されているので、データを一定サンプル数毎に区切り、区間毎のゼロクロス数はゼロクロス法を用いて求める。
【0028】
ゼロクロス法について、一例として示す
図3によって説明する。本発明のゼロクロス法とは、データをあるサンプル数毎に区切り、その区間内で振幅が0もしくは基準となる値の軸301とデータ302が時間軸に沿って遷移する際に交差した位置303を周知のゼロクロス検出手段によって検出し、その一定区間毎のゼロクロス数をゼロクロス数カウント手段によってカウントする方法で、その数値が区間毎のゼロクロス数である。
【0029】
ドプラシフト成分量とゼロクロス数は比例して増加する。しかしゼロクロス数と流量との関係は
図4のように比例するが正比例ではない。そのため、関係を表す数式で流量を求めることが出来ない。流量を求めるにはゼロクロス数から流量を求める流量変換テーブルが必要になる。
【0030】
流量全範囲での流量変換テーブルを作成することは不可能であるため、ゼロクロス数が示す上下の変換値候補とサンプルとの距離により加重平均法を用いて補正計算を行なう。求められた各区間の流量を積分することで、分析部32が取得したドプラシフト成分のデジタルデータの排出総流量を求める事ができる。
【0031】
出力部33は、分析部32で求められた瞬間流量、排出総流量、時間軸と瞬間流量を対応付けた、流量曲線グラフを出力する。出力する情報は求められた情報だけでなく、それらから演算可能な情報も併せて出力できる。
【0032】
次に、分析部32の動作すなわち計算システムの演算動作について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
(S01ステップ)データ受信部31経由で受信した、ドプラシフト成分のデジタルデータを演算装置のメモリ(図示なし)にて受信、蓄積する。
【0034】
(S02ステップ)ドプラシフト成分のデジタルデータを一定サンプル毎に区切り、区間データとして細分化する。以降データの処理は、基本的にこの区間データ単位で行なう。
【0035】
(S03ステップ)一定サンプル毎に区切った区間データ毎に、区間内のゼロクロス数を算出する。今後はこの区間毎のゼロクロス数を使用して処理を行なう。
【0036】
(S04ステップ)区間毎のゼロクロス数がそれぞれ流量変換テーブルのどの位置に該当するか比較を行い、該当したテーブル位置から1クロスあたりの流量を求める。
【実施例1】
【0037】
次の表1に示すような流量変換テーブルが存在し、ある区間のゼロクロス数zc=12とする。
【表1】
【0038】
この表1を用いて、各区間のゼロクロス数から1クロスあたりの流量を求める。
各区間のゼロクロス数zcが表1のどの位置に該当するか調べ、各区間の1クロスあたりの水量fを加重平均法で求めるが、zc=12の時はf=2.4となる。そこからこの区間の水量をfxとすると、
【数1】
【0039】
(S05、S06ステップ)同様に全区間の水量を求めるまで、S03ステップからS05ステップまでの処理を繰り返し結果を蓄積する。
【0040】
(S07ステップ)全区間の水量を積分して、排出総流量を算出する。結果は表示部に出力したり、記憶装置(図示なし)に保存することが可能である。
【0041】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。ドプラセンサーから取得したドプラシフト成分をフラッシュメモリに一定時間分保存し、演算装置に入力することで瞬間流量を求めるようにしても良い。また、ドプラセンサーから取得したドプラシフト成分を可搬型フラッシュメモリに一定時間分保存し、演算装置に入力することで瞬間流量を求めるようにしても良い。さらに、保存されたドプラシフト成分を、有線通信規格を用いて演算装置に入力することで瞬間流量を求めるようにしても良い。さらにまた、保存されたドプラシフト成分を、無線通信規格を用いて演算装置に入力することで瞬間流量を求めるようにしても良い。また、ドプラシフト成分量から瞬間流量を分析する演算装置に、パーソナルコンピュータを用いて分析するようにしても良い。また、ドプラシフト成分量から瞬間流量を分析する演算装置に、集積回路上のマイクロプロセッサを用いて分析するようにしても良い。また、前記演算装置を用いて求めた演算結果を、演算装置に接続された、あるいは演算装置に搭載された表示装置への表示が可能な機能を備えるようにしても良い。また、前記演算装置を用いて求めた演算結果を、演算装置に接続された、あるいは演算装置に搭載された印字装置への出力が可能な機能を備えるようにしても良い。また、前記演算装置を用いて求めた演算結果を、演算装置に接続された、あるいは演算装置に搭載された記録媒体への保存や、他の処理装置、他の演算装置への処理結果の引渡しが可能な機能を備えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、尿流動態学(ウロダイナミクス、Urodynamics)および関連する尿動態計測における泌尿器科等の医学分野に使用される流量測定システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ドプラセンサー
2 データ保存器
3 演算装置
11 送信部
12 受信部
13 信号線
21 ミキサ
22 発振器
23 フィルタ部
24 A/D変換器
25 保存部
26 データ送信部
27 フラッシュメモリ
31 データ受信部
32 分析部
33 出力部
100 流量測定システム
301 振幅0もしくは基準値の軸
302 データ
303 ゼロクロス数