【解決手段】エアフィルタユニットは、メインフィルタと、プレフィルタと、ケーシングと、を備える。前記プレフィルタは、互いに離間した1対のローラと、プレフィルタ用濾材とを有し、一方のローラから前記プレフィルタ用濾材の未使用領域を引き出して前記メインフィルタの前面に前記未使用領域を移動させるとともに、前記プレフィルタ用濾材の使用済み領域を他方のローラに巻き取らせるように構成されている。前記ケーシングは、前記通路を通る気流が前記メインフィルタを通過するように前記メインフィルタを保持する保持枠と、前記メインフィルタと前記保持枠との気流の方向の隙間に配された、前記メインフィルタを前記保持枠に対し押し付けるための押付機構と、を有する。
前記ケーシングには、前記メインフィルタを前記1対のローラと平行な方向にスライドさせて取り出すための取出孔が形成され、前記ケーシングは、さらに、前記取出孔を開閉するための扉を有している、請求項1に記載のエアフィルタユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のエアフィルタユニット、および空気調和システムについて詳細に説明する。
【0016】
(エアフィルタユニット)
図1は、本発明の一実施形態によるエアフィルタユニット1を示す図である。
図2は、エアフィルタユニット1を内部構造に注目して示す側面図である。
エアフィルタユニット1は、気体中の塵埃等の微粒子を捕集する。エアフィルタユニット1は、メインフィルタ11およびメインフィルタ13と、プレフィルタ5と、ケーシング7と、を備える。なお、
図1では、分かりやすく説明するために、ケーシング7の上下方向に延びる2つの側面のうちの一方を省略して示し、メインフィルタ13の一部を切り欠いて示す。
【0017】
(a)メインフィルタ
エアフィルタユニット1は、このように複数のメインフィルタ11,13を備えることで濾過面積が大きく、外調機のように大規模に空気清浄を行う装置に好ましく用いられる。なお、メインフィルタの数は、2つに制限されるものではなく、風量、濾過能力に応じて適宜選択され、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。メインフィルタの数が複数の場合は、それらのメインフィルタは、気流の方向に対して並列に並んで配置されることが好ましい。並列に並んで配置されるとは、例えば、
図1および
図2に示されるように、複数のメインフィルタ11,13が1つの平面をなすように並んで配置されることを意味する。なお、本実施形態では、メインフィルタ11とメインフィルタ13は、同様に構成されているため、以降の説明では、特に言及する場合を除いて、メインフィルタ11を例にして説明するが、例えば、後述する押付機構による押し付けが可能となる範囲で、寸法が異なっていてもよい。
【0018】
メインフィルタ11は、プレフィルタ5を通過した微小な塵埃を捕集するためのフィルタであり、下記の中性能フィルタまたは高性能フィルタが好ましく用いられる。
【0019】
中性能フィルタは、粒径1μm以上、濃度0.1〜6mg/m
3の粉塵の除去に用いられるフィルタである。中性能フィルタとしては、捕集効率が、質量法で90〜96%、比色法(光散乱積算法)で50〜90%、計数法で5〜50%のいずれかであり、圧力損失が79〜247Pa、粉塵保持容量が300〜800g/m
3であるものが用いられる。捕集効率の測定に際して、重量法では、JIS Z8901に規定される15種の粉体、又は、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)に規定される粉塵が用いられる。比色法では、JIS Z8901に規定される11種の粉体が用いられる。計数法では、粒径0.3μmの、大気塵、ポリアルファオレフィン(PAO)、シリカのいずれかの粒子が用いられる。粉塵保持容量は、フィルタが所定の最終圧力損失に達するまでに捕集した粉塵量である。
高性能フィルタは、粒径1μm以下、濃度0.3mg/m
3以下の粉塵の除去に用いられるフィルタである。高性能フィルタとしては、計数法による捕集効率が80%以上、圧力損失が79〜493Pa、粉塵保持容量が200〜800g/m
3のものが用いられる。
【0020】
メインフィルタ11には、例えば、ガラス繊維または合成繊維を繊維材料とする、不織布、マット、フェルト状の濾材にプリーツ加工を施したものが濾材として用いられる。プリーツ加工された濾材は、複数の帯状のホットメルトリボン、セパレータ、あるいは、濾材の表面に施されたエンボス突起によってプリーツ間隔が保持される。セパレータは、例えば、アルミ箔、ステンレス箔、樹脂シートをラミネートした不織布、をジグザグ状に折ったものである。メインフィルタ11には、プリーツ加工された濾材のほか、平板状の複数の濾材を厚さ方向に互いに間隔をあけて積層した複層濾材、等の他の種類の濾材が用いられてもよい。メインフィルタ11は、濾材にエレクトレット処理が施されたものであってもよい。これにより、濾材本来の捕集性能に対し、濾材の繊維が帯電することによる捕集性能が付与される。また、メインフィルタ11は、濾材に抗菌剤を付着させる抗菌処理を施して、抗菌性能を付与したものであってもよい。これらエレクトレット処理および抗菌処理は、組み合わせて行なってもよい。
【0021】
なお、メインフィルタ11は、特に図に表わされないが、上記濾材をジグザグ形状に折り畳んだ(プリーツ加工を施した)フィルタパックと、フィルタパックを保持する枠体とを有している。枠体は、具体的には、気流の方向の断面がコの字形状である部分が、フィルタパックを外周側から全周にわたって取り囲むように連続して延びて形成されている。枠体は、亜鉛鉄板、ステンレス板等の枠材を組み合わせて作られる。フィルタパックは、縦方向(
図1において上下方向)の両端(ジグザグ形状が現れている両端)が、ウレタン樹脂シール剤により枠体の対応する部分に固定されるとともに、横方向(
図1において右下と左上を結ぶ方向)の両端(ジグザグ形状に折り畳まれる方向の両端)が、枠体の対応する部分に接着剤で線接着されることで固定される。線接着は、縦方向に延びる線に沿った接着である。
メインフィルタ11は、さらに、
図2に示されるように、枠体の下流側の面に設けられたガスケット61を有している。なお、下流側は、
図1において左下側、
図2において右方である。ガスケット61は、下流側に露出した濾材を外周側から取り囲むように枠体に設けられている。ガスケット61は、メインフィルタ11、13と後述するケーシング7の保持枠31とに挟持されることで、メインフィルタ11,13と保持枠31との間のリークを防止する。ガスケット61には、例えば発泡ポリウレタンを材質とするものが用いられる。なお、
図2に示される例では、後述する押付機構33によってメインフィルタ11,13を保持枠31に対して下流側に押し付けるよう構成されていることから、ガスケット61は、枠体の下流側の面に設けられているが、メインフィルタ11,13を保持枠31に対して上流側に押し付けるよう構成されている場合には、ガスケットは、枠体の上流側の面に設けられる。また、ガスケット61は、メインフィルタ11,13に備えられる代わりに、保持枠31に備えられていてもよい。
【0022】
(b)プレフィルタ
プレフィルタ5は、メインフィルタ11,13に対し気流の上流側に配され、比較的粗大な塵埃を捕集する。プレフィルタ5は、1対のローラ21,23と、プレフィルタ用濾材25とを有する。なお、上流側は、
図1において右上側、
図2において左方である。
ローラ21,23は、互いに離間してほぼ平行に配される。1対のローラ21,23のうちローラ23が、プレフィルタ用濾材25を巻き取るためのローラであり、ローラ21にはプレフィルタ用濾材25の未使用領域が巻き回される。ローラ21の近傍には、ローラ27が設けられており、ローラ21から送り出されるプレフィルタ用濾材25が架け渡される。また、ローラ23の近傍には、ローラ29が設けられており、プレフィルタ用濾材25はローラ29で折り返されてローラ23に巻き取られる。これにより、プレフィルタ用濾材25にかかるテンションを下流側でより大きくして、プレフィルタ用濾材25の撓みを抑えることができる。
【0023】
プレフィルタ用濾材25は、ローラ21,23に巻き回される長尺のシート状の濾材である。プレフィルタ用濾材25は、例えば、長手方向の両端がそれぞれ両面テープでローラ21,23の軸に貼り付けられている。プレフィルタ用濾材25は、粒径5μm以上、濃度0.4〜7mg/m
3の粉塵の除去に用いられるフィルタである。プレフィルタ用濾材25としては、捕集効率が、質量法で70〜90%、比色法で15〜40%、計数法で5〜10%のいずれかであって、圧力損失が30〜296Pa、粉塵保持容量が500〜2000g/m
3であるものが用いられる。捕集効率の測定に用いられる粒子は、メインフィルタ11の捕集効率の測定に用いられる粒子と同様である。プレフィルタ用濾材25には、具体的に、ガラス繊維または合成繊維を繊維材料とする、不織布、マット、フェルト状の濾材が用いられる。プレフィルタ用濾材25は、上述したエレクトレット処理、抗菌処理が施されてもよい。
【0024】
プレフィルタ用濾材25は、例えば、ケーシング7に設けられた不図示の制御盤に設けられた操作ボタン等を操作することで、使用済み領域がローラ23に巻き取られると同時にローラ21から未使用領域が引き出され、メインフィルタ11、13の前面(上流側の面)に未使用領域が移動する。ケーシング7には、このようにプレフィルタ用濾材25の巻き取りを行うために、ローラ23を駆動するためのモータ、ギア列等を含む不図示の駆動機構が備えられている。なお、プレフィルタ用濾材25の送り量は、公知の方法で制御されてもよく、例えば、ローラ21の回転数をリミットスイッチで検出し、所定回数カウントされた場合にローラ21が停止するよう制御されてもよい。
【0025】
なお、メインフィルタ11,13は、1対のローラ21,23の間に挟まれるように配置される。具体的に、メインフィルタ11,13は、ローラ21,23の外形を結んで形成される空間と少なくとも一部が重なるよう配置されていればよい。ローラ21,23の外形とは、それぞれに巻き回されたプレフィルタ用濾材25を含んだ形をいう。
【0026】
プレフィルタ用濾材25には、メインフィルタ11のフィルタ領域(上流側に露出する濾材の領域)に対応させて使用領域が区画されていてもよい。使用領域は、例えば、プレフィルタ用濾材25の表面に色付けされた線等によって区画されていてもよく、ヒートシールやエンボス加工が施されて他の領域と区別できるよう区画されていてもよい。
【0027】
プレフィルタ用濾材25の使用領域ごとの寿命の合計量と、メインフィルタ11の寿命は、等しくてもよいが、本実施形態では、プレフィルタ5とメインフィルタ11,13をそれぞれ交換できるようになっているため、異なっていてもよい。なお、寿命は、フィルタを使い始めてから所定の圧力損失(最終圧力損失)に達するまでの時間をいう。
【0028】
(c)ケーシング
ケーシング7は、メインフィルタ11,13およびプレフィルタ5を収納する筐体であり、
図3に示されるように、気流の上流側および下流側において開口された部分を有する。
図3は、ケーシング7の分解斜視図である。ケーシング7は、ローラ21が収納されるケーシング81、メインフィルタ11が収納されるケーシング83、およびローラ23が収納されるケーシング85の3つケーシングからなる。
ケーシング81には、ローラ21を収納または取り出すための取出孔81a、およびプレフィルタ用濾材25が通るスリット81bが形成されている。ケーシング81は、取出孔81aを塞ぐためのカバー82を有している。カバー82を開けることで、取出孔81aからローラ21を取出し、交換を行うことができる。
ケーシング83には、気流の入口となる上流側開口部83a、プレフィルタ用濾材25が通るスリット83b、83c、メインフィルタ11、13を収納または取り出すための取出孔83d、ならびに、プレフィルタ5およびメインフィルタ11、13を通過した気流の出口となる下流側開口部83eが形成されている。このうち取出孔83dは、メインフィルタ11、13を1対のローラ21,23の軸と平行な方向にスライドさせて取り出せるよう、ケーシング83の側面に形成されている。ケーシング83は、取出孔83dを開閉するための扉84を有している。扉84は、例えば蝶番によってケーシング83の側面に回動自在に取り付けられている。なお、メインフィルタ11,13は、取出孔83dから取り出せることに加えて、さらに、後述するように、別の方向(例えば上流側または下流側)から取り出せるようになっていてもよい。
ケーシング85には、ローラ23を収納または取り出すための取出孔85a、およびプレフィルタ用濾材25が通るスリット83bが形成されている。ケーシング85は、取出孔85aを塞ぐためのカバー86を有している。カバー84を開けることで、取出孔85aからローラ23を取出し、交換を行うことができる。
【0029】
ケーシング81,83,85は、亜鉛鉄板、ステンレス板、アルミニウム合金板等から作製され、上記取出孔およびスリットを除いて、内側に気密な空間を形成する。また、ケーシング81、83、85は、ケーシング83の上流側開口部83aから取り込まれた気体がリークすることなく下流側開口部83eから排出されるよう、図示されないガスケットを介して互いに連結される。具体的に、ガスケットは、ケーシング81とケーシング83の間において、スリット81bとスリット83bを連通する閉空間を形成するよう配置されるとともに、ケーシング83とケーシング85の間において、スリット83cとスリット85bを連通する閉空間を形成するよう配置される。このほか、ガスケットは、ケーシング81において取出孔81aとカバー82の間、ケーシング83において取出孔83dと扉84との間、およびケーシング85において取出孔85aとカバー86の間にも、それぞれリークを防ぐために配置されている。
【0030】
図1および
図2に戻って、ケーシング83は、メインフィルタ11,13を保持するための保持枠31と、押付機構33とを有している。押付機構33は後で詳細に説明する。保持枠31は、ケーシング83内において気流の通路を形成するとともに、この通路を通る気流がメインフィルタ11、13を通過するようにメインフィルタ11,13を保持する。具体的に、保持枠31は、メインフィルタ11、13を外周側から取り囲むよう設けられた、断面視略ロの字状のフレーム31a、31bと、メインフィルタ11、13の枠体を下流側から支持する、直線状に延びるフレーム31c、31d、31e、31f、31g(フレーム31f、31gは
図1参照)と、を有している。フレーム31a,31bとフレーム31c,31d,31e、31f、31gとは、溶接等によって連結されており、これにより、気密な気流の通路が形成されている。フレーム31f、31gは、フレーム31c,31d,31eと交差する方向(
図1および
図2において上下方向)に延びて、フレーム31c,31d,31eに上流側から重ねるようにして配されている。なお、
図2において、フレーム31a、31bとフレーム31c,31d,31eとの間、およびフレーム31c,31eとケーシング83との間は、説明の便宜のため、間隔をあけて示される。また、
図1において、フレーム31a,31bの一部(右下側において上下方向に延びる部分)、およびフレーム31gの一部(フレーム31dとフレーム31eとの間の部分)は省略して示される。
図1において、押付機構33は、分かり易さのため、後述する板バネに注目して模式的に示される。フレーム31a,31bのうち後述する押付機構33を除く部分の気流の方向の長さは、メインフィルタ11,13の気流の方向の幅(高さ)よりも広く、メインフィルタ11,13の交換が容易に行えるようになっている。
なお、後で説明するように、押付機構33がメインフィルタ11,13に対して気流の方向の下流側に配されている場合は、押付機構33を下流側から支持するフレーム31c,31eの下流側の端(例えば下記説明する
図4において、上下方向に延びるよう折り返された部分)が、ケーシング83の下流側開口部83eの開口面積を広げるようにそれぞれ退避できるよう構成されていてもよい。より具体的には、フレーム31cの下流側の端は、フレーム31cが支持する押付機構33ごと上方にスライドして、例えば
図4においてローラ21側に退避するとともに、フレーム31eの下流側の端は、フレーム31eが支持する押付機構33ごと下方にスライドして、例えば
図4においてローラ23側に退避するよう構成されていてもよい。
【0031】
エアフィルタユニット1のケーシングは、上記ケーシング81,83,85のように複数の筐体からなる分離型でなくてもよく、例えば、
図4に示されるように一体型であってもよい。
図4は、本実施形態の変形例に係るエアフィルタユニットを内部構造に注目して示す側面図である。なお、
図4において、各部の符号には、便宜的に、上記説明した例の各部と同じ符号を用いている。
この変形例は、上記例のエアフィルタユニット1と異なって、ケーシング83が省略され、かつ、ケーシング81およびケーシング85のメインフィルタ11,13側を向く壁部がそれぞれ省略されるとともに、保持枠31のフレーム31c,31eがそれぞれ、ケーシング81、85の下流側の壁部に達するよう延びている。なお、
図4において、フレーム31c,31eとケーシング81,85との間は、説明の便宜のため、間隔をあけて示される。
【0032】
(d)押付機構
次に、押付機構33について詳細に説明する。
押付機構33は、メインフィルタ11,13を保持枠31に対して押し付けるための機構であり、メインフィルタ11,13と保持枠31との間の気流の方向の上流側の隙間に配されている。ケーシング83の保持枠31は、上述したように、メインフィルタ11、13の交換を容易に行えるよう気流方向の長さが設定されているために、単にメインフィルタ11,13を保持枠31に保持させただけでは、保持枠31とメインフィルタ11,13との間の隙間からリークが生じるおそれがある。このため、押付機構33によって、メインフィルタ11,13を保持枠31に対して気流の方向に押し付けることで、メインフィルタ11,13と保持枠31との間のリークを抑えることができる。
押付機構33は、具体的には、保持枠31のフレーム31a,31bのそれぞれの上流側の端に2つずつ設けられている。これにより、メインフィルタ11,13はそれぞれ、2つの押付機構33によって下流側に押し付けられる。なお、押付機構33によってメインフィルタ11,13を押し付ける方向は、
図2に示されるように気流の方向の下流側であってもよく、気流の方向の上流側であってもよい。気流の方向の上流側に押し付ける場合は、押付機構33は、メインフィルタ11,13と保持枠31との気流の方向の下流側の隙間に配される。押付機構33がメインフィルタ11,13と保持枠31との気流の方向の下流側に配される場合は、例えば、上述したように、保持枠31のフレーム31c,31eを、ケーシング83の下流側開口部83eの開口面積を広げるようにそれぞれ退避可能に構成することで、メインフィルタ11,13を、エアフィルタユニット1の背面側(気流の方向の下流側)から取り出して交換することができる。
【0033】
ここで、
図5〜
図7を参照して、押付機構33をより具体的に説明する。ここでは、メインフィルタ11を押し付ける2つの押付機構33のうち、
図2において下方に位置する方の押付機構33に注目して説明するが、メインフィルタ11を押し付ける他方の押付機構33、およびメインフィルタ13を押し付ける2つの押付機構33も同様に構成される。
図5に、
図2の上方から見た押付機構33の構造を示す。
図6に、押付機構33の後述する板バネの外観を示す。
図7に、押付機構33の後述する調節部材の一部の外観を示す。
押付機構33は、
図5に示されるように、付勢部材41と、付勢部材41の付勢力を調節する調節部材50と、を含んでいる。
【0034】
付勢部材41は、メインフィルタ11,13を気流の方向の下流側に付勢する部材である。付勢部材41には、板バネ、コイルスプリング等、種々のものを用いることができるが、
図5〜
図7に示される例では、気流の方向と平行な方向の下流側(
図5において下方)に突出するよう撓む形状の板バネが用いられる。板バネ41は、
図6に示されるように、一端が保持枠31のフレーム31aの上流側の端(上下方向に延びるよう折り返された部分)にビス止めによって固定されるとともに、他端はフレーム31aに対して自由である。また、板バネ41は、一端と他端の間の部分が下流側に緩やかに撓んだ形状に形成されている。板バネ41には、後述するロッド51が挿通される2つの孔41a、41bが形成されている。これらの孔41a,41bのうち、上記他端側の孔41aは円形状であり、上記一端側の孔41bは板バネ41の長手方向(
図6の左下から右上に向かう方向、
図5において左右方向)と同じ方向に延びて形成された長孔である。このように形の異なる孔41a、41bが形成されていることによって、板バネ41は、ロッド51が後述するように軸方向に移動するのに伴って締め付けられて、下流側への撓み量が大きくなるよう変形する。一方、板バネ41は、ロッド51が軸方向の反対側に移動するのに伴って、撓み量が小さくなるよう変形する。なお、1本のロッド51に取り付けられる付勢部材の数は、
図5に示されるように2つであってもよく、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0035】
調節部材50は、板バネ41と係合するロッド51と、ロッド51をその軸周りに回転させて軸方向に移動させるためのハンドル53と、を備えている。
ロッド51は、1対のローラ21,23の軸と平行な方向に延びるよう配されている。ロッド51は、板バネ41の孔41a、41bに挿通されるとともに、一端が、ハンドル53の回転中心と同軸にハンドル53に取り付けられている。ハンドル53は、
図7に示されるように、円板状部材であり、これを回転させることで、ロッド51が軸周りに回転する。ハンドル53の主表面(
図7において左下側の表面)には2つの回転方向を示す矢印が記されるとともに、それぞれの方向に回転させた場合に、押付機構33による押し付けが行われるか、押し付けが解除されるかが作業者が見て分かるよう、図示されないが、例えば「閉」、「開」と記されている。また、このような表記とは別に、押付機構33を構成する他の部品もしくは他の場所には、さらに、ハンドル53をどの程度回転させると押し付けまたは押し付けの解除が行われるかが分かるように、例えば、「押し付けを解除する場合は、左に〇回回して下さい。」および「押し付ける場合は、右に〇回回して下さい。」といった情報が記載されていることが好ましい。なお、上記他の場所としては、例えば、扉84を開けたときに取出孔83d越しに見える保持枠31の部分や、押付機構33の使い方を説明するマニュアル等が挙げられる。
【0036】
調節部材50は、さらに、ロッド51がねじ込まれるナット55と、ロッド51を貫通するよう設けられたピン57とを有している。なお、ロッド51の表面のうち、ハンドル53と、ハンドル53に近い方の板バネ41との間の部分には、表面にねじ山が形成されており、ロッド51はナット55のねじ溝にねじ込まれる。ナット55には、例えば高ナットが用いられる。ナット55は、保持枠31に固定されている。これにより、ハンドル53を操作すると、ロッド51はフレーム31aに対して軸方向に移動する。
図5に示す例において、押付機構33による押し付けが行われる場合は、ロッド51は左方に移動し、これに伴って、板バネ41がピン57に右方から押圧されることで左右方向に締め付けられて撓み量が大きくなるよう変形する(
図8(b)参照)。一方、押し付けが解除される場合は、ロッド51は右方に移動し、これに伴って、ピン57が板バネ41から離れるように左方に移動することで弾性力(復元力)により板バネ41の撓み量は小さくなるよう変形する(
図8(a)参照)。上述したように板バネ41には長孔41bが設けられているため、押し付けおよび押し付けの解除に伴って板バネ41が変形しても、ロッド51は逃げることができ、軸方向にのみ移動することができる。このため、板バネ41は自由に変形することができる。なお、
図8(a)は、押付機構33による押し付けが解除された解除状態にある板バネ41を上方から見て示す図である。
図8(b)は、押付状態にある板バネを上方から見て示す図である。
【0037】
本実施形態のエアフィルタユニット1では、上記説明した押付機構33を用いて、プレフィルタ5とは別に、メインフィルタ11,13の交換を行うことができる。つまり、プレフィルタ5と、メインフィルタ11、13とは異なるタイミングで交換を行うことができる。
【0038】
メインフィルタ11の交換は、例えば次のようにして行うことができる。まず、ケーシング83の扉84を開き、ハンドル53を回転操作して、締め付けられた状態にある板バネ41の撓み量を小さくすることで、板バネ41をメインフィルタ11の枠体から離間させる。これにより、押付機構33による押付状態を解除する。板バネ41がメインフィルタ11から離間した状態では、押付機構33とメインフィルタ11との気流の方向の間に隙間が生じているため、メインフィルタ11を手前側(
図2の紙面手前側)に容易に引き出して、取出孔34dから取り出すことができる。
次いで、未使用の新たなメインフィルタ11を、保持枠31のフレーム31aとフレーム31c,31dで囲まれる空間に向けて取出孔34dの外側から押し込んだ後、ハンドル53を、メインフィルタ11を取り外したときとは逆方向に回転操作して板バネ41を締め付け、板バネ41の撓み量を大きくする。これにより、メインフィルタ11は板バネ41に下流側に押圧され、ガスケット61を介してフレーム31c,31dに押し付ける。このようにして押付状態とする。
【0039】
上記した交換方法は一例であり、他の方法によって交換を行ってもよい。ここで、押付機構の付勢部材として、板バネの代わりにコイルスプリングを用いた場合を例に説明する。この場合、例えば、ロッド51には、ハンドル53に回転操作されることでロッド51の軸周りにロッド51と一体に回転する部材である図示されないストッパーが設けられる。ストッパーは、ロッド51の表面からロッド51の径方向外側に所定の距離だけ延びるアーム(不図示)と、このアームの先端からロッド51の軸方向と平行に延びるよう折れ曲がって延び、ロッド51に対向する面を有する押え板(不図示)と、を有している。押え板は、押し付けが解除された状態では、ロッド51とメインフィルタ11の枠体との間に配されるとともに、押し付け状態では、ロッド51とメインフィルタ11の枠体の間から離れるよう配される。コイルスプリングは、押し付けが解除された状態では、ロッド51と押え板との間に圧縮状態で配されるとともに、押し付け状態では、ロッド51が所定の角度だけ回転するのに伴って押え板がロッド51とメインフィルタ11の枠体との間から離れるように移動することで、コイルスプリングは、解放されるとともにロッド51とメインフィルタ11の枠体との間で圧縮状態で配されることによってメインフィルタ11を押圧する。このようにして、メインフィルタ11は、保持枠31に対して気流の方向に押し付けられる。
一方、メインフィルタ11を取り外す場合には、例えば、二人の作業者が一組となり、一方の作業者が、エアフィルタユニット1の下流側に立ち、メインフィルタ11を押圧しているコイルスプリングの端を、下流側からコイルスプリングの弾性力に抗して押すとともに、他方の作業者が、ケーシング7の扉84に向かい合うように立ち、ハンドル53を、上記押付状態としたときとは逆向きに所定角度回転操作することでストッパーの押え板をロッド51とメインフィルタ11の枠体との間に配置させ、上記一方の作業者がコイルスプリングを放すことで、コイルスプリングをロッド51と押え板との間に圧縮状態で配置させる。これにより、メインフィルタ11が保持枠31に対して押し付けられた状態を解除でき、メインフィルタ11を取り出すことができる。
【0040】
なお、以上メインフィルタ11の交換について説明したが、メインフィルタ13も同様にして交換することができ、メインフィルタ11とメインフィルタ13は、異なるタイミングで交換してもよく、同時に交換してもよい。
【0041】
また、プレフィルタ5の交換は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、ケーシング81,85のカバー82,86を取り外すとともに、ローラ21とローラ23とに掛け渡されたプレフィルタ用濾材25の部分を適当な位置で裁断し、ケーシング83内のプレフィルタ用濾材25をケーシング83またはケーシング85で巻き取った後、ケーシング81の取出孔81aからローラ21を、ケーシング83の取出孔81bからローラ23をそれぞれ取り出す。
次いで、未使用のプレフィルタ用濾材25を巻き回した新たなローラ21、およびローラ23の軸をそれぞれケーシング81、83内に収納するとともに、ローラ21からプレフィルタ用濾材25を引き出してスリット81b、83b、83c、85bを通し、先端をローラ23の軸に接着してローラ23に巻きつける。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のエアフィルタユニット1では、メインフィルタ11,13およびプレフィルタ5を容易に交換することができる。特に、エアフィルタユニット1は、押付機構33を備えているため、メインフィルタ11,13を交換するために、例えば特許文献2に記載されるようにローラをケーシングから退避させるように動かし、さらに、ケーシングの仕切り板(仕切り板7、8)をエアフィルタユニットの上方または下方に開く作業をすることなく、押付機構33による押し付けまたは押し付けの解除を行うことで、メインフィルタ11,13の交換を容易に行うことができる。
また、エアフィルタユニット1が、外調機に用いられる比較的大きな寸法のものである場合であっても、プレフィルタ5が巻き付けられた重量の大きいローラを動かす必要がなく、ローラを動かす場合と比べ安全性に優れる。さらに、ケーシングの仕切り板を開くためのスペースをエアフィルタユニット1の下方または上方に必要としないため、外調機の省スペース化を図ることができる。特に、ケーシングの仕切り板をエアフィルタユニット1の上方に開くように構成した場合と比べて、作業者が高所に登ってメインフィルタ11,13の取り出し等を行うことなく楽に交換作業を行える。
【0043】
以上説明したエアフィルタユニット1のプレフィルタ、メインフィルタとして、下記仕様、性能のものを例示できる。なお、いずれも縦(
図2の上下方向)1200mm×横(
図2の手前奥方向)800mm×高さ(
図2の左右方向)500mmの主捕集層を直径約600mmのプレフィルタのローラで挟んだ場合の仕様である。上記縦、横、高さは、それぞれ、
図2において上下方向、奥行き方向、左右方向である。
【0044】
(a)プレフィルタ(型式:DS−340R)
厚さ20mm、目付け280g/m
2、平均繊維径約40μmのポリエステル樹脂製スパンボンド不織布。
捕集効率(質量法):85%(JIS B9908 形式3)
圧力損失(処理風量2900m
3/時間):59Pa
粉塵保持量:約520g/m
2
長さ:20m
重量(ローラ21,23およびこれらに巻き付けられたプレフィルタ用濾材25の各重量の合計):190kg
【0045】
(b)メインフィルタ(型式:EMLS)
平均繊維径約2.5μmのポリプロピレン樹脂製メルトブローン不織布にエレクトレット処理を施したものを主濾材とし、平均繊維径約32μmのポリエステル樹脂製サーマルボンド不織布を補強材として、主濾材の片側に補強材を熱ラミネートにより接合してなる、厚さ0.5mm、目付け105g/m
2、濾材面積8m
2の濾材。
捕集効率(比色法(光散乱積算法)):90%
初期圧力損失(処理風量2900m
3/時間):40Pa
粉塵保持量:約360g/m
2
【0046】
以上説明した仕様、性能はそれぞれ、例えば下記の測定法により測定される。
(厚さ)
試験サンプルに10mmφで2.5Nの荷重をかけたときの厚さを、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定する。
(目付)
試験サンプルから採取した100mm×100mmの試験片の重さを測定し、1m
2当たりの重さに換算して求める。
(平均繊維径)
試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像上で直交した2本の線を引き、これらの線と交わった繊維の像の太さを繊維径として、500本測定し、これらの算術平均を平均繊維径とする。
【0047】
(メインフィルタの捕集効率)
JIS B9908 形式2に準拠し、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉塵含有空気を試験風速2.5cm/秒で通過させ、JIS Z8813に準拠する光散乱光量積算方式により、通過前および通過後の粉塵濃度を同時に連続的に測定し、次式により捕集効率を求める。
捕集効率(%)=(通過後の粉塵濃度(個数/L)−通過前の粉塵濃度(個数/L))/(通過前の粉塵濃度(個数/L))×100
(プレフィルタの捕集効率)
JIS B9908 形式3に準拠し、タテ型試験装置を用いて、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉塵による、試験風速2.5m/秒での捕集効率を測定する。
【0048】
(初期圧力損失)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠し、610mm×610mmの寸法のダクトを用いて、風速2.5/秒での圧力損失を測定する。
(粉塵保持量)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠して、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉体による、粉塵濃度70±30mg/m
3、試験風速2.5m/秒での圧力損失が最終圧力損失(プレフィルタでは200Pa、メインフィルタでは294Pa)に達するまでの粉塵供給量を測定する。
(寿命)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠して、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉体による、粉塵濃度70±30mg/m
3、試験風速2.5cm/秒での圧力損失が最終圧力損失(プレフィルタでは200Pa、メインフィルタでは294Pa)に達するまでの時間を測定する。
【0049】
以上のエアフィルタユニット1において、メインフィルタ11,13は、押付機構33によってケーシング7の保持枠31に対し気流の方向に押し付けられている。このため、メインフィルタ11,13と保持枠31の間での気流のリークを抑え、ケーシング7内に取り込んだ空気を確実にメインフィルタ11,13に通すことができる。
押付機構33には、メインフィルタを気流の方向に付勢するための付勢部材として板バネ41が用いられている。このため、安価で、簡単な構成によって押し付けを行うことができる。また、押付機構33は、初期状態において既に撓んだ形状の板バネ41を用いて、その撓み量の大きさを調節することで押し付けおよび押し付けの解除を行うものであるため、例えば特開2005−103460号公報に記載されたカム12を利用してフィルタ1をケーシング7に押し付け、異なる2つの姿勢を切り替える操作を行うと比べ、小さな力で押し付けおよび押し付けの解除を行うことができ、作業を楽に行える。そのため、メインフィルタ11,13の交換をスムーズにより行うことができる。
【0050】
(空気調和システム)
次に、本実施形態の空気調和システムについて説明する。
図9は、本実施形態の空気調和空気調和システム100の概略構成図である。
【0051】
空気調和システム100は、ビル等の建物の中の外壁に近い場所や、建物の屋上に設置され、外気を取り込んで空気清浄、温度、湿度調整等を行う外調機である。空気調和システム100は、ハウジング101と、ハウジング101の上流側の端に設けられた2つの外気取入口120と、を備えている。ハウジング101は、内側に、例えば3つの部屋110,112,114が形成されるよう区画し、かつ、外気取入口120から取り込んだ外気を各部屋110〜114を順に通過させるよう構成されている。
部屋110には、エアフィルタユニット1が配置されている。エアフィルタユニット1は、上記説明したエアフィルタユニット1である。
部屋112には、空調ユニット102が配置されている。空調ユニット102は、熱交換器103および加湿器104を備える。熱交換器103としては、空気調和システム100とは別に設けられた冷温水器、ボイラーとそれぞれ接続され、これらから供給される冷水、温水、蒸気が流れるコイル(冷却加熱兼用コイル)が用いられる。コイルは、冷却および加熱のいずれかを行うものであってもよい。加湿器104には、水気化式加湿器が用いられ、例えば高圧水スプレー式のものが用いられる。
部屋114には、ファン106が配されている。ファン106は、外気を空気調和システム100内に取り込み、清浄化され、熱交換、加湿が行われた空気を建物の室内に供給する。
【0052】
部屋110〜114のそれぞれには、ドア111,113,115が設けられ、作業員がハウジング101内に入ってメンテナンス、交換等の作業を行えるようになっている。部屋110の場合、ドア111を開けて、エアフィルタユニット1に対して、交換時期に達したプレフィルタまたはメインフィルタの交換作業を行うことができる。
なお、空気調和システム100は、下流側において、図示されないダクトに接続され、空気調和システム100を通過した空気は、例えば、ビルの各部屋に供給される。また、例えば、空気調和システム100は、同じ建物において、他の空気調和システムとともに用いられてもよく、その場合に、空気調和システム100は、当該他の空気調和システムの上流側または下流側に配されていてもよい。
【0053】
以上の空気調和システム100は、フィルタの交換が容易なエアフィルタユニット1を用いたことで、メンテナンス性に優れている。また、空気調和システム100は、エアフィルタユニット1の上方または下方に、フィルタ交換のためのスペースを確保する必要がないため、空気調和システム100をコンパクトなものとし、しかも、プレフィルタのローラ間のスペースにメインフィルタを埋め込むように配置したことで、従来、プレフィルタおよびメインフィルタをそれぞれ配置していた2つの部屋の一方の部屋を省略でき、
図9に示される例においては、気流の方向の長さで約2割の省スペース化を図ることができる。
【0054】
以上、エアフィルタユニット、空気調和システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。