【課題】ボイラー、ガスタービン、またはリーンバーン型ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を尿素水の噴霧により浄化する際に、尿素水をNH
【解決手段】一体構造型担体に一層以上の触媒層として被覆された触媒であって、尿素加水分解触媒は、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/mol以下のチタニア系無機酸化物からなる尿素加水分解材料よりなり、尿素加水分解触媒は、該尿素加水分解材料に更にゼオライトを加えてなる選択還元触媒。
前記チタニア系無機酸化物が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化バリウムから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の尿素加水分解触媒。
前記チタニア系無機酸化物中のシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化バリウムの総量が30重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の尿素加水分解触媒。
前記剥離抑制材は、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/molを越えるチタニア系無機酸化物、チタニアゾル、またはシリカゾルから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の尿素加水分解触媒。
前記チタニア系無機酸化物が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化バリウムから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項8に記載の尿素加水分解材料を用いた選択還元触媒。
前記チタニア系無機酸化物中のシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化バリウムの総量が30重量%以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の尿素加水分解材料を用いた選択還元触媒。
請求項1〜7のいずれかに記載の尿素加水分解触媒を有する排気ガス浄化装置であって、尿素加水分解触媒の上流側に尿素水噴霧装置が設置されてなる排気ガス浄化装置。
請求項8〜13のいずれかに記載の尿素加水分解材料を用いた選択還元触媒を有する排気ガス浄化装置であって、選択還元触媒の上流側に尿素水噴霧装置が設置されてなる排気ガス浄化装置。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼機関から排出される排気ガスには、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質が含まれる。このような有害物質としては炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOFともいう)、煤(Soot)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などがあり、これら有害成分の排出量に対する規制は年々強化されている。それら有害成分の浄化方法としては、排気ガスを触媒に接触させて浄化する方法が実用化されている。
【0003】
また、このような希薄燃焼機関では、燃料の種類や供給量や供給のタイミング、空気の量等を制御して有害物質の発生量を抑制することも検討されている。しかし、従来の触媒や制御方法では満足の行く排気ガスの浄化はできていなかった。特に、希薄燃焼機関では、窒素酸化物が排出されやすく、加えて、その規制は益々強化されているが、既存のNOx浄化技術では、自動車に搭載されるディーゼルエンジンの場合、その稼動条件は常に変化することから、有害物質の排出を抑制することは困難であった。
【0004】
NOxの浄化技術(脱硝技術)のうち、触媒を使用するものとしては、NOxを含む排気ガスを、アンモニア(NH
3)成分の存在下で、酸化バナジウム、ゼオライト等を主成分とする選択還元触媒と接触させて還元脱硝する技術が、選択還元法、または選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRということがある)法として知られている。
【0005】
このNH
3成分を還元剤として用いるSCRでは、主として次に示す反応式(1)〜(3)によって、NOxを最終的にN
2に還元する。
4NO + 4NH
3 + O
2 → 4N
2 + 6H
2O ・・・(1)
6NO
2 + 8NH
3 → 7N
2 + 12H
2O ・・・(2)
NO + NO
2 + 2NH
3 → 2N
2 + 3H
2O ・・・(3)
【0006】
排気ガス中の脱硝に際しては、前記脱硝反応(1)〜(3)において、理論上はNH
3/NOxモル比が1.0であれば良いが、ディーゼルエンジンの稼動時における過渡的なエンジン運転条件の場合や、空間速度や、排気ガスの温度、触媒表面の温度が適していない場合に、充分な脱硝性能を得るために供給するNH
3成分のNH
3/NOx比率を大きくせざるを得ない場合があり、結果的に未反応のNH
3が漏出し、新たな環境汚染などの二次公害を引き起こす危険性が指摘されていた。以下、漏出するNH
3をスリップ、またはNH
3スリップということがある。
【0007】
このような脱硝触媒システムには、還元成分としてNH
3ガスを用いても良いが、NH
3はそれ自体、刺激臭や有害性がある。そのため、NH
3成分として脱硝触媒の上流から尿素水を添加して、熱分解や加水分解によりNH
3を発生させ、これを還元剤として作用させ脱硝性能を発現する方式が提案されている。
このような尿素の分解でNH
3を得る反応式は、以下の(4)〜(6)のとおりである。
NH
2−CO−NH
2 → NH
3 + HNCO (4;尿素熱分解)
HNCO + H
2O → NH
3 + CO
2 (5;イソシアン酸加水分解)
NH
2−CO−NH
2 + H
2O → 2NH
3 + CO
2 (6;尿素加水分解)
【0008】
尿素はSCR触媒の上流から尿素水として噴霧供給される。前述のとおり、NOxの還元浄化に貢献するのは主にNH
3であることから、SCR触媒におけるNOxの反応は、尿素の分解効率によって影響を受ける。尿素の分解効率が低いとNOx浄化の効率が低下することはもちろん、尿素の使用量が増え、未反応の尿素によってNH
3スリップを誘発する恐れがある。
【0009】
このようなNH
3スリップに対しては、SCR触媒の後段にスリップしたNH
3を酸化して浄化するために、酸化触媒を配置する必要があった。しかし、このようなNH
3スリップ浄化用の触媒を配置することは、コスト増につながり、特に自動車では触媒の搭載場所を確保することが難しかった。
また、スリップするNH
3の量が多くなると、触媒に高い酸化能力が要求され、活性種である白金など高価な貴金属を多量に使用する必要があった。
【0010】
また、NH
3成分によるNOxの浄化では、上記式(3)のようにNOとNO
2が概ね半分ずつ含まれる雰囲気で反応が促進する(特許文献1)。しかしながら、希薄燃焼機関から排出されるNOx成分の殆どは一酸化窒素(NO)である(特許文献2)。そのため、NOxの効率的な浄化のため、排気ガス中のNO
2成分の濃度を増すために、排気ガス流路にNO酸化手段を配置することが提案されている(特許文献1)。
このようなNO酸化手段を利用して、有害微粒子成分、NOxを一つの触媒系で同時に浄化する方法も提案されている。その一つが、排気ガス流路中に酸化触媒、フィルター、SCR触媒をこの順に配置し、SCR触媒の前段でアンモニア成分を噴霧するものである(特許文献3)。
【0011】
このようなNOxの浄化と、微粒子成分の燃焼除去を同時に行う浄化方法として、ディーゼル自動車用途である日産ディーゼル(株)のFLENDS(フレンズ)システムや、ダイムラー社のBluetechなどが開発され普及が進んでいる。また、還元成分としては、濃度31.8〜33.3重量%の規格化された尿素水溶液があり、商品名アドブルー(Adblue)として流通している。
【0012】
このように触媒の種類が機能別に多彩になる一方、エンジン自体は環境への負荷低減、燃料費の低減の観点から燃費の改善が求められており、エンジンから排出される排気ガスはますます低温化しており、使用される触媒についても低温での着火性の向上、高性能化が求められている。
その一方で、高性能を求められる触媒の探索には、費用負担の増大が懸念されるようになった。特に、大容量のディーゼルエンジンの場合、それに使用される触媒も必然的に大容量とならざるを得ない。
実際、ディーゼルエンジンによる触媒の性能評価にはガソリンエンジンを用いた場合に比べ、設備面でも、費用面でも、時間においても、何倍も大変であるため、簡単な指標で触媒の性能評価の優劣が判断できることが求められていた。
【0013】
ところで、一般には、貴金属・卑金属などの活性成分を担持するか、それ自体が活性を有する無機酸化物などからなる母材は、触媒性能の優劣を左右する重要な役割を果たしていると言われている。これは活性サイトの数や耐久性能が母材となる素材の表面積(例えば、BET比表面積)、細孔径、細孔容積、酸点、塩基点の量などの各種物性に強く影響を受けるためであり、優れた触媒性能を発揮する触媒を探索するためには、これらの諸要素の内、触媒性能に対し、何が好結果をもたらし、何が悪影響をもたらすかを見極めることが非常に重要となる。
【0014】
しかし、触媒反応の優劣と上記諸要素との関係は、反応毎に異なることもあって、これまでは各々の要素毎に条件をかえて、実際に触媒反応を行わせることで、いちいち触媒性能を確認するしかなかった。
そのため、尿素加水分解触媒、尿素加水分解材料を用いた選択還元触媒を効率的かつ低コストで製造でき、優れた触媒性能を長期間維持できる手法が必要とされていた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の尿素加水分解触媒及び尿素加水分解材料を用いた選択還元触媒をディーゼル自動車用途に適用した場合について主に詳述するが、本発明は発電機など様々な定置電力源に使用されるディーゼルエンジンにも有効であることはいうまでもない。
【0026】
1.尿素加水分解材料
尿素加水分解触媒と選択還元触媒に使用される尿素加水分解材料としては、酸化チタン(TiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)の混合物(特開2004−108185号公報)、γ−アルミナ(特開2004−202450号公報)、ゼオライト、アルミナ、チタニアのうち1種以上から選ばれた組成物、またはチタニア−バナジウム系、チタニア−バナジウム−タングステン系、チタニア−タングステン系のうち1種以上(特開2005−288397号公報)、酸化チタン担体に酸化タングステンを添加、又は、酸化チタン担体に酸化タングステンを添加し、さらに五酸化バナジウムを添加した材料(特開2006−122792号公報)などが知られている。
【0027】
また、一般にチタニアは、固体酸性が強いが故に硫黄が付着しにくい母材として知られている。一方、アルミナは、チタニアと比較して固体酸性が弱いが故に硫黄が吸着しやすい母材としてよく知られている。そのため、ディーゼルエンジンのような排気ガス中に硫黄酸化物が含まれている場合、母材としてはチタニアを初めとして硫黄が付着しにくい固体酸性の強い金属酸化物が一般に使用され、アルミナの様な硫黄が付着しやすい固体酸性の弱い金属酸化物はあまり使用されていない。
【0028】
1−1.チタニア系無機酸化物
本発明において、尿素加水分解触媒の母材として使用するチタニアは、多孔質無機酸化物の一種であり、また、固体酸性が強いため、硫黄がほとんど吸着しないことがよく知られている。結晶構造としては、アナタース型の他、ルチル型、ブルカイト型が挙げられる。
さらに、チタニアは、単独で使用した場合、雰囲気温度の上昇とともにBET比表面積が変化して低下するため、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化バリウム等を少量加えて、BET比表面積が変化しないように耐熱性を向上させたチタニア系複合酸化物を使用することが望ましい。
【0029】
また、本発明において、チタニア系無機酸化物のBET比表面積(BET法による、以下同様)、NH
3吸着量(酸量)、細孔容積、平均細孔径などの物性値は、後述するように大まかな傾向が把握できており、尿素加水分解性能の良否と明確な相関性はない。
すなわち、BET比表面積、平均細孔径は小さい方が、NH
3吸着量(酸量)、細孔容積は大きい方が、尿素加水分解性能は良好である。
BET比表面積としては90m
2/g以下、NH
3吸着量(酸量)としては0.09mmol/g以上、細孔容積としては1cc/g以上、平均細孔径としては1000nm以下が好ましい傾向にあるが、本発明において、尿素加水分解性能の良否はあくまで目安程度に過ぎず、活性化エネルギーが重要な指標となる。
【0030】
本発明で用いる尿素加水分解材料は、それ自体の尿素加水分解性能における活性化エネルギー(Ea)が120kJ/mol以下のものである。
尿素加水分解材料自体の尿素加水分解性能における活性化エネルギーは、以下に示すKissingerプロットから算出される。
【0031】
熱分析で昇温速度を変えて複数回DTA測定を行った場合、DTA曲線の変化速度が等しい点では次の関係式が成り立つ。
【0033】
(式中、φ:昇温速度[K/min]、T:絶対温度[K]、Ea:活性化エネルギー(1モルあたり)、R:気体定数である。)
【0034】
DTA曲線の変化速度が最大の点(T)におけるln(φ/T
2)を縦軸に、1/Tを横軸にプロットすると、得られる傾き(−Ea/R)より、Eaが算出される。この変化速度が最大の点におけるプロットは、Kissingerプロットと呼ばれる。
【0035】
具体的には、例えば、まずチタニア系無機酸化物などの粉末(試料)に尿素水を添加し、TG−DTA測定装置で昇温速度(φ)を変えて(20〜60K/min)DTA測定を行う(
図1参照)。次に、得られたその昇温カーブの頂点{変化速度が最大の点(T)}におけるln(φ/T
2)と1/Tをプロット(Kissingerプロット)し(
図2参照)、その傾きから活性化エネルギー(Ea)を求めるようにする。他の試料についても同様にして活性化エネルギー(Ea)を求め、後でこれらの結果を対比する。
尿素加水分解材料自体の尿素加水分解性能の活性化エネルギーは、120kJ/mol以下でなければならず、110kJ/mol以下が好ましく、100kJ/mol以下がより好ましい。尿素加水分解材料自体の尿素加水分解性能の活性化エネルギーが120kJ/molを超えると、後述するように、尿素加水分解性能が著しく悪化するので好ましくない。
【0036】
2.尿素加水分解触媒
尿素加水分解触媒は、希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物を浄化するため、配管内に還元剤として噴霧された尿素水をNH
3に加水分解することを目的とし、前記尿素加水分解材料を使用する。
【0037】
本発明の尿素加水分解触媒は、前記した、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kj/mol以下の尿素加水分解材料を、バインダーを用いて一体構造型担体に一層以上の触媒層として被覆したものである。触媒層の被覆量が、50〜200g/Lであることが好ましい。触媒層の被覆量が、50g/L未満であると性能が不十分となることがあり、200g/Lを超えると圧力損失の面で好ましくない。
この尿素加水分解材料は、剥離抑制材と混合して被覆されるのが望ましい。剥離抑制材は、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/molを越えるチタニアを含む無機酸化物、チタニアゾル、またはシリカゾルから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、尿素加水分解材料を30重量%以上使用することで優れた尿素加水分解性能が発揮される。尿素加水分解材料が30重量%未満であると優れた尿素加水分解性能が得られないことがある。
【0038】
3.選択還元触媒
選択還元触媒は、希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物を浄化するため、尿素加水分解により得られたNH
3で窒素酸化物を選択的にN
2に還元することを目的とする。その場合、尿素加水分解反応は、選択還元触媒の前段に尿素加水分解触媒を配置して行わせることを前提とはしていないから、希薄燃焼機関の種類、収納に必要な許容スペース、設置費用、維持費などの関係で、選択還元触媒自体に尿素加水分解機能を持たせることができる。
選択還元触媒自体に尿素加水分解機能を持たせる方法としては、二種類の方法が考えられる。一つは、前記尿素加水分解材料を選択還元触媒に加えることであり、他の一つは、選択還元触媒材料自体が尿素加水分解機能を有することである。本発明では、前者の尿素加水分解材料を選択還元触媒に加えることで尿素加水分解機能を付与させる。
【0039】
本発明の選択還元触媒は、少なくとも前記尿素加水分解材料が、バインダーを用いて一体構造型担体に一層以上の触媒層として被覆されることが望ましく、触媒層の被覆量が、100〜300g/Lであることが好ましい。触媒層の被覆量が、100g/L未満であると性能が不十分となることがあり、300g/Lを超えると圧力損失の面で好ましくない。また、触媒層内の前記加水分解材料が10〜40重量%であることが好ましい。触媒層内の加水分解材料の量が、10重量%未満であると性能が不十分となることがあり、40重量%を超えるとコスト面で好ましくない。
【0040】
3−1.選択還元触媒材料
選択還元触媒材料としては、ゼオライトやゼオライト類似の化合物(結晶金属アルミノリン酸塩)の他、バナジウム酸化物、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化銅、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の各種無機材料が挙げられる。
また、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカと上記酸化物との混合物や複合化物等も挙げられる。また、銅や鉄などの卑金属をゼオライトやゼオライト類似の化合物等にイオン交換した無機材料等も挙げられる。ただし、自動車用途ではバナジウムのような有害な重金属を含まないことが望ましい。
本発明では、選択還元触媒がゼオライト又は結晶金属アルミノリン酸塩を含むことが好ましい。また、本発明では、PtやPdなどの貴金属成分は、アンモニア成分を酸化しNOxを生成するので含まないことが好ましい。
【0041】
3−2.各種無機材料
本発明では、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の無機材料を選択還元触媒材料とともに用いることができる。それ以外にも、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカを選択還元触媒材料とともに用いることができる。これらは耐熱性に優れ、比表面積が上記酸化物より大きいため、上記酸化物と混合または複合化することで上記酸化物自体の比表面積を増大させることができるので、より好ましい。
なかでも、セリアは、NOx吸着を促進することでNH
3とNOxのSCR反応を促進できる機能を有する。また、ジルコニアは、その他成分を熱的に安定な状態で高分散させる為の分散保持材料としての効果を期待できる。さらにタングステンの酸化物は、酸性が強く、アルカリ成分である尿素やアンモニアの吸着力が大きいので、脱硝性能が高くなるという作用効果を期待できる。これらの酸化物は単独でも使用できるが、混合もしくは複合化することが好ましい。
これらの酸化物およびそれらの複合酸化物は、組成、構造、製法によって特に限定されない。例えば、上記元素を含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物等の形態を有する出発原料を水溶液中に溶解させた後、混合し、pH調整等により沈殿物として沈降させるか蒸発乾固させるかして得られた固形物を焼成してもよいし、混合もしくは複合化する際には、これらの複数の金属塩を一度に可溶化させて上記処理を行ってもよいし、単一もしくは複数の金属塩に上記処理を行うことにより酸化物を形成させた後、残りの金属塩を一度にまたは逐次に担持してもよい。ここで、チタニアは、尿素加水分解性能も有するので、選択還元触媒用材料としての使用量を加減する必要がある。
【0042】
4.バインダー
本発明において、前記尿素加水分解触媒や選択還元触媒は、母材粒子や助触媒粒子とともに一体構造型担体に被覆した際に剥離を生じることがある。それを抑制するため、母材粒子や助触媒粒子に付着して各々の粒子を結合させるバインダーを後述する剥離抑制材として使用してもよい。
使用するバインダーには特に制限はないが、焼成などでバインダーが揮発せず、母材に固着する場合は、母材に悪影響を及ぼす恐れがあるため、母材と同種の成分であることが好ましい。
バインダーとしては、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルを挙げることができる。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩も使用できる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も使用できる。
【0043】
5.一体構造型担体
前記尿素加水分解触媒や選択還元触媒は、母材粒子や助触媒粒子とともに、一体構造型担体であるハニカム構造担体に担持することが好ましい。ハニカム構造担体とは、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックや、ステンレス等の金属からなるもので、その構造は構造担体中の全体に渡って伸びている平行な多数の微細な気体流路を有している。材質としてはコージェライトが耐久性、コストの理由で好ましい。
また、このようなハニカム構造担体としては、さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められる。そのセル密度は、100〜900セル/inch
2(15.5〜139.5セル/cm
2)であることが好ましく、200〜600セル/inch
2(31〜93セル/cm
2)がより好ましい。セル密度が900セル/inch
2(139.5セル/cm
2)を超えると、付着した粒子状成分(PM)で目詰まりが発生しやすく、100セル/inch
2(15.5セル/cm
2)未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことである。
また、ハニカム構造担体には、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。フロースルー型構造体であれば空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体であれば、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。本発明の排気ガス浄化用触媒は、そのどちらの構造体にも用いる事ができる。
【0044】
6.層構成
本発明の尿素加水分解触媒や尿素加水分解材料を含む選択還元触媒は、ハニカム構造担体に一層以上被覆する。層構成は、一層でもよいが、二層以上とすれば耐久性および/または触媒性能を高めることもできる。
【0045】
6−1.尿素加水分解触媒の層構成
本発明において、尿素加水分解を含む触媒組成物の総被覆量は、尿素加水分解触媒で50〜200g/Lが好ましく、70〜150g/Lがより好ましい。50g/Lより少ないと、量の減少に伴い尿素加水分解材料中の活性点の数が減り、尿素加水分解性能が低下するので好ましくない。また、尿素加水分解触媒は、選択還元触媒に比べ、触媒径が小さいため、排気ガスの流速が早く、圧損が増大し易い傾向にあるので、200g/Lより多いと、セル内の圧損が増大し、エンジンに対する負荷が高くなるので、好ましくない。
【0046】
尿素加水分解材料としてチタニア系無機酸化物を使用し、ハニカム構造担体に塗布する際、チタニア系無機酸化物とハニカム構造体の熱膨張係数の差異から剥離という問題を生じる恐れがある。剥離を抑制する一つの方法は、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/mol以下のチタニア系無機酸化物を塗布する際に、適当な剥離抑制材を加えることである。
【0047】
剥離抑制材としては、チタニア系複合酸化物の主成分であるチタニアをゾル化したバインダーの他、チタニア系複合酸化物中に含まれるシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジウム、酸化バリウムなどをゾル化したバインダーなども必要に応じ使用できる。また、尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/molを超えるチタニア系無機酸化物であっても、それ自体が十分な剥離抑制機能を有しているのであれば、剥離抑制材として、使用できる。
尿素加水分解反応の活性化エネルギーが120kJ/mol以下のチタニア系無機酸化物が触媒組成物の総被覆量に占める割合は、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上が特に好ましい。30重量%より少ないと、量の減少に伴い尿素加水分解の活性点の数が減り、尿素加水分解性能が低下するので好ましくない。
剥離を抑制するもう一つの手法は、1回に塗布する触媒量を減らす代わりに塗布回数を増やすことが挙げられる。塗布回数は、特に制限はないが剥離量が最小になるようにする。但し、塗布の回数を無暗に増やすと経費がかさむので、例えば2回とし、剥離抑制材の選定とともに、経費や生産性を加味する必要がある。1回目の塗布後に剥離状況を確認し2回目以降の塗布量を決めるのがよい。
【0048】
6−2.尿素加水分解材料を含む選択還元触媒の層構成
本発明において、尿素加水分解材料を含む選択還元触媒では、触媒組成物の総被覆量は、100〜300g/Lが好ましく、150〜250g/Lがより好ましい。100g/Lより少ないと、担持されるRh等の貴金属の分散性が悪化するため、活性点の数が減り、水蒸気改質性能が低下するので好ましくなく、300g/Lより多いとセル内が狭くなることで圧損が増大し、エンジンに対する負荷が高くなるので、好ましくない。
【0049】
尿素加水分解材料を含む選択還元触媒では、尿素加水分解触媒と異なり、触媒層を構成する主成分はゼオライトであり、ゼオライトとハニカム構造体の熱膨張係数の差異から剥離しやすいという問題がある。ゼオライトの剥離を抑制するため、ゼオライトの主成分であるシリカをゾル化したバインダーを必要とする。
【0050】
また、尿素加水分解材料を含む選択還元触媒では、尿素加水分解機能を十分に発揮するため、尿素加水分解材料が触媒組成物の総被覆量に占める割合は、10〜40重量%が好ましく、15〜30重量がより好ましい。10重量%より少ないと、量の減少に伴い尿素加水分解の活性点の数が減り、尿素加水分解性能が低下するので好ましくない。一方、40重量%より多いと、相対的にゼオライトなどの選択還元材料の量が減り、脱硝性能が低下する上、尿素水の加水分解により生成したNH
3が反応されずにそのまま排気されてしまうので好ましくない
【0051】
なお、本発明では、上記尿素加水分解機能を有する選択還元触媒の一例として、鉄元素を含むゼオライトを一体構造型担体の表面に、セリア・ジルコニア系複合酸化物、鉄元素を含むゼオライトを被覆し、その上に前記尿素加水分解材料であるチタニア系複合酸化物を被覆したものを挙げることができる。
その他、例えば、銅元素を含むゼオライトのように、それ自体が尿素加水分解機能を有する脱硝成分を触媒層として、一体構造型担体の表面に被覆しても構わない。
【0052】
7.触媒調製法
本発明において、ハニカム担体と触媒材料から尿素加水分解触媒や選択還元触媒(SCR)を調製するには、一般にウォッシュコート法が用いられる。
まず、特定の活性化エネルギー(Ea)を有する尿素加水分解材料を含む触媒材料、ハニカム担体を用意する。触媒材料は、必要に応じてバインダーや界面活性剤などの添加剤を水または水に水溶性有機溶媒を加えた溶媒と混合してスラリー状混合物にしてから、ハニカム担体へ塗工した後、乾燥、焼成する事により製造される。すなわち、触媒材料と水または水に水溶性有機溶媒(水系媒体)を加えた溶媒と所定の比率で混合してスラリー状混合物とするが、本発明においては、水系媒体は、スラリー中で各触媒成分が均一に分散できる量を用いれば良い。
【0053】
次に、触媒組成物をスラリー状混合物としてハニカム担体に塗工し被覆する。触媒組成物を塗工した後、乾燥、焼成を行う。乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜600℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。乾燥時間は0.5〜2時間、焼成時間は1〜3時間が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0054】
8.排気ガス浄化装置
本発明の尿素加水分解触媒や選択還元触媒を組み込んだ排気ガス浄化装置は、下記触媒装置I、IIとして例示するように触媒の上流側に尿素水噴霧装置が設置されている。
尿素水噴霧装置(Injector)は、尿素水を供給するために、通常、還元剤の貯蔵タンクと配管、その先端に取り付けられた噴霧ノズルから構成される。
尿素水噴霧装置の位置は、酸化触媒(DOC)の後方、窒素酸化物(NOx)を還元剤と接触させて還元するための選択還元触媒(SCR)の前方に設置される。そして、DPF又はCSFがDOCとSCRの間に設置される場合は、DPF又はCSFの後方に配置することが好ましい。
尿素成分としては、濃度31.8〜33.3重量%の規格化された尿素水溶液、例えば商品名アドブルー(Adblue)を使用できる。
【0055】
8−1.触媒装置I
尿素加水分解触媒が組み込まれた触媒装置Iを模式的に
図15に示す。具体的には、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)を酸化するための貴金属成分を含む酸化触媒(DOC)と、煤などの微粒子成分を捕集し、蓄積する煤による圧損が所定の値を超える度に軽油を噴霧させて排気温度を上昇させることで煤を燃焼させるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素水を供給する尿素水噴霧装置と、尿素が加水分解されることで生成するNH
3により窒素酸化物(NOx)を還元除去するための貴金属を含まない選択還元触媒(SCR)を排気ガス流路の上流側からこの順に配置した排気ガス浄化装置に、さらに、尿素水噴霧装置とSCRの間に尿素加水分解触媒を配置した排気ガス浄化装置である。
【0056】
すなわち、
図15のように、ディーゼルエンジン1からの排気ガス流路2に、酸化触媒(DOC)5とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF){又は触媒化燃焼フィルター(CSF)}6の後方に、尿素水噴霧装置4を設け、この噴霧装置4の後方に選択還元触媒(SCR)8を配置し、さらに尿素水噴霧装置4とSCR8の間に尿素加水分解触媒7を設置した排気ガス浄化触媒装置である。
その際、系内の排気温度を上昇させて、DPF(又はCSF)6による煤の燃焼除去を促進するため、軽油噴霧装置2を酸化触媒(DOC)5よりも上流に配置する。軽油噴霧する場所としては、ディーゼルエンジンの筒内に噴霧する以外にも、ディーゼルエンジンの排気口から酸化触媒(DOC)の間の配管内に噴霧する場合がある。
本発明の触媒製造に用いる尿素加水分解材料は、従来の材料と比べると活性が高いので尿素加水分解触媒の使用量を減らすことができ、装置も小型化しうる。
【0057】
8−2.触媒装置II
触媒装置IIは、酸化触媒(DOC)と、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)又は触媒化燃焼フィルター(CSF)と、尿素水噴霧装置と、尿素加水分解材料を有する選択還元触媒(SCR)を排気ガス流路の上流側からこの順に配置している。
すなわち、触媒装置IIは、
図16のように、ディーゼルエンジン1からの排気ガス流路2に、酸化触媒(DOC)5とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF){又は触媒化燃焼フィルター(CSF)}6の後方に、尿素水噴霧装置4を設け、この噴霧装置4の後方に尿素加水分解材料を有する選択還元触媒(SCR)9を配置している。
本発明で用いる尿素加水分解材料は、選択還元触媒に対して上下の層構成になるよう配置されるが、従来の材料と比べると活性が高いので尿素加水分解材料の使用量を減らすことができ、装置も小型化しうる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にするが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0059】
なお、本実施例、並びに比較例で尿素加水分解触媒および選択還元触媒(SCR)に使用される尿素加水分解材料は、その尿素加水分解性能の活性化エネルギー、BET比表面積、NH
3吸着量、細孔容積、及び平均細孔径を各々下記に示す方法によって測定した。
【0060】
<尿素加水分解性能の活性化エネルギー>
各種チタニア系複合酸化物粉末を10g計量した後、電気炉内で650℃、100時間、焼成する。冷却した後、電気炉から取り出し、そこから10mgを分取し、熱処理済みチタニア系複合酸化物粉末に市販のAdBlueを1mg添加する。その後、TG−DTA測定装置のサンプル管の中に詰め、表1のガスを流しながら昇温速度(φ)を20、40、60K/minに3水準に振って、Rigaku社製Thermo Mass Photoを使用して昇温測定を行った(
図1参照)。この昇温曲線を基に、CO
2の変化速度最大の点(T)におけるln(φ/T
2)を縦軸に、1/Tを横軸にプロットし(Kissingerプロット、
図2参照)、その傾きから活性化エネルギーを求めた(
図3参照)。
【0061】
【表1】
【0062】
<BET比表面積>
各種尿素加水分解材料粉末のBET比表面積は、Micromeritcs社製のTristar3000にて吸着分子としてN
2を使用し、BET法により算出した。
<NH
3吸着量>
各種尿素加水分解材料粉末のNH
3吸着量は、日本ベル社製の全自動昇温脱離スペクトル装置TPD−1−ATを用い、粉末を50mg分取し、100℃で1時間、NH
3を吸着させた後、600℃まで昇温させ、脱離したNH
3量を状態方程式(PV=nRT)より算出した。
<細孔分布(細孔径、細孔容積)測定>
各種アルミナ粉末の細孔径{モード径(直径)}及び細孔容積は、Termo Fisher Scientific社製のPASCAL140、440にて水銀圧入法により算出した。
【0063】
<触媒のエンジン評価試験>
尿素加水分解触媒または尿素加水分解材料を含む選択還元触媒を各々コンバーターに格納後、ディーゼルエンジンの排気口にコンバーターを装着して、以下の要領で尿素水噴霧試験を実施し、触媒のエンジン評価を行った。
下記実施例1〜3、および比較例1の尿素加水分解触媒では、650℃、50時間の電気炉による熱処理を実施し、実施例4および比較例2の尿素加水分解材料を含む選択還元触媒は650℃、100時間の電気炉による熱処理を実施した。
【0064】
1.尿素水噴霧試験
1−1.NH
3生成試験
排気量5Lのディーゼルエンジンの回転数を2,000rpmとし、尿素加水分解触媒の入口の手前に設置した熱電対で排気ガス温度を150℃に固定し、その手前に設置した尿素水噴霧管から市販の尿素水を噴霧し、排出エンジンから排出されるNOxと尿素水から生成されるNH
3のモル比(NH
3/NOx比)が1.4となるように噴霧を続け、当該触媒出口の排気ガスをサンプリング管からサンプリングし、排気ガス中のNH
3濃度を計測した。
【0065】
1−2.脱硝性能試験
排気量5Lのディーゼルエンジンの回転数を2,000rpmとし、尿素加水分解材料を含む選択還元触媒の入口の手前に設置した熱電対で排気ガス温度を140℃に固定し、その手前に設置した尿素水噴霧管から市販の尿素水を噴霧し、NH
3/NOx比が1.0となるように噴霧を続け、当該触媒の前後の排気ガスをサンプリング管からサンプリングし、排気ガス中のNOx濃度を計測し、その差異からNOx浄化率を算出した。その後、5℃/分で定速昇温しながら、NO浄化率を求めた。
【0066】
[実施例1]
尿素加水分解活性化エネルギー(Ea)72kJ/mol、BET比表面積65m
2/g、平均細孔径502nm、細孔容積1.1cc/g、NH
3吸着量(酸量)0.108mmol/gのチタニア系複合酸化物粉末A(TiO
2:97重量%、SiO
2:3重量%)500gに、剥離抑制材として、Ea 142kJ/mol、BET比表面積96m
2/g、平均細孔径189nm、細孔容積1.7cc/g、NH
3吸着量(酸量)0.043mmol/gのチタニア系複合酸化物粉末E(TiO
2:89重量%、SiO
2:7重量%、Al
2O
3:4重量%)500gとチタニアゾル(酸化物換算)100gをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングしてスラリーαを得た。
続いて、このスラリーαに一体型担体、すなわち、ハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch
2(465k/m
2)、5mil(0.125mm)厚み、143.8mm径×76.2mm長さ、1.238L}を浸漬させ、単位体積あたりの担持量が110g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して実施例1の尿素加水分解触媒を得た。
チタニア系複合酸化物AとEをハニカム構造体に塗布した実施例1の尿素加水分解触媒を用いて、NH
3生成時間(
NH3T
30ppm:150℃で尿素水噴霧後、尿素加水分解触媒通過後のNH
3の生成量が30ppmに達するまでに要した時間)を測定し、
図8に示した。
【0067】
[実施例2]
実施例1に記載のチタニア系複合酸化物粉末Aの代わりに、Ea 83kJ/mol、BET比表面積75m
2/g、平均細孔径389nm、細孔容積1.57cc/g、NH
3吸着量(酸量)0.123mmol/gのチタニア系複合酸化物粉末B(TiO
2:88重量%、SiO
2:3重量%、ZrO
2:9重量%)を用いた以外は、実施例1と同様な触媒調製法により、実施例2の尿素加水分解触媒を得た。
チタニア系複合酸化物BとEをハニカム構造体に塗布した実施例2の尿素加水分解触媒を用いて、NH
3生成時間(
NH3T
30ppm:150℃で尿素水噴霧後、尿素加水分解触媒通過後のNH
3の生成量が30ppmに達するまでに要した時間)を測定し、
図8にまとめた。
【0068】
[実施例3]
実施例1に記載のチタニア系複合酸化物粉末Aの代わりに、Ea 87kJ/mol、BET比表面積98m
2/g、平均細孔径186nm、細孔容積1.73cc/g、NH
3吸着量(酸量)0.109mmol/gのチタニア系複合酸化物粉末C(TiO
2:90重量%、SiO
2:10重量%)を用いた以外は、実施例1と同様な触媒調製法により、実施例3の尿素加水分解触媒を得た。
チタニア系複合酸化物CとEをハニカム構造体に塗布した実施例3の尿素加水分解触媒を用いて、NH
3生成時間(
NH3T
30ppm:150℃で尿素水噴霧後、尿素加水分解触媒通過後のNH
3の生成量が30ppmに達するまでに要した時間)を測定し、
図8にまとめた。
【0069】
[比較例1]
実施例1に記載のチタニア系複合酸化物粉末Aの代わりに、Ea 151kJ/mol、BET比表面積65m
2/g、平均細孔径2094nm、細孔容積0.75cc/g、NH
3吸着量(酸量)0.108mmol/gのチタニア系複合酸化物粉末D(TiO
2:85重量%、SiO
2:15重量%)を用いた以外は、実施例1と同様な触媒調製法により、比較例1の尿素加水分解触媒を得た。
チタニア系複合酸化物DとEをハニカム構造体に塗布した比較例1の尿素加水分解触媒を用いて、NH
3生成時間(
NH3T
30ppm:150℃で尿素水噴霧後、尿素加水分解触媒通過後のNH
3の生成量が30ppmに達するまでに要した時間)を測定し、
図8に示した。
【0070】
「評価1」
上記実施例1〜3、および比較例1の尿素加水分解触媒は、ハニカム構造体との密着性に優れるチタニア系複合酸化物Eとチタニアゾルを剥離抑制材料として使用しているが、尿素加水分解性能が不十分なため、尿素加水分解反応に有効に機能したのは、触媒全体の45重量%程度である。
尿素加水分際材料として用いたチタニア系複合酸化物A〜Eについて、尿素加水分解反応の活性化エネルギー(Ea)を
図3に、BET比表面積を
図4に、NH
3吸着量(酸量)を
図5に、細孔容積を
図6に、平均細孔径を
図7にまとめた。
図3から明らかなように、チタニア系複合酸化物A〜CのEaは、いずれも120kJ/mol以下で、優れた尿素加水分解性能を発揮したのに対し、チタニア系複合酸化物D、EのEaはいずれも140kJ/molを上回り、尿素加水分解性能に劣っている。
【0071】
これらの尿素加水分解触媒によるNH
3生成時間(
NH3T
30ppm:150℃で尿素水噴霧後、尿素加水分解触媒通過後のNH
3の生成量が30ppmに達するまでに要した時間)をまとめた
図8から次のことが明らかである。
すなわち、尿素加水分解の活性化エネルギーが120kJ/mol以下のチタニア系複合酸化物A〜Cを用いて製造した実施例1〜3の尿素加水分解触媒は、150℃という尿素が分解しないと言われている低温での尿素水の噴霧条件下でも、400秒以下でNH
3を生成したのに対し、140kJ/molを上回るチタニア系複合酸化物DとEを用いて製造した比較例1の尿素加水分解触媒は、500秒を超えないとNH
3は生成しなかった。
このように、尿素加水分解の活性化エネルギーが120kJ/mol以下のチタニア系複合酸化物を尿素加水分解材料として使用すれば、尿素加水分解触媒に用いた本発明の尿素加水分解材料の添加量が50重量%以下であっても、NH
3生成時間(
NH3T
30ppm)と良好な相関関係を発揮した。
【0072】
同様にして、実施例1〜3、および比較例1の尿素水の加水分解によるNH
3の生成時間と、各々の触媒に使用された尿素加水分解材料A〜Dの諸物性{Ea(
図9参照)、BET比表面積(
図10参照)、NH
3吸着量(酸量)(
図11参照)、細孔容積(
図12参照)、平均細孔径(
図13参照)}の相関性を見比べると、NH
3の生成時間と良好な相関性を発揮したのは尿素加水分解性能(Ea)のみで、その他の一般的な材料の物性{BET比表面積、NH
3吸着量(酸量)、細孔容積、平均細孔径}とは相関性は得られなかった。これらの結果は、触媒の尿素加水分解性能を材料の尿素加水分解性能で代用特性にできることを示唆する一方、一般的な材料の物性では代用特性にならないことを明示している。
【0073】
[実施例4]
<選択還元触媒(1)の製造>
=下層=
Feを1重量%イオン交換したβ型ゼオライト粉末F(シリカ/アルミナ比=26)4.3kg、Feを4重量%イオン交換したMFI型ゼオライト粉末G(シリカ/アルミナ比=26)6.2kg、チタニア系複合酸化物粉末A 2.0kgに、剥離防止剤としてアモルファスシリカゾルを酸化物換算で0.9kgをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングし、スラリーβを得た。
続いて、このスラリーβに一体型担体、すなわち、ハニカムフロースルー型コージェライト担体{300cell/inch
2(465k/m
2)、5mil(0.125mm)厚み、266.7mm径×152.4mm長さ、8.514L}を浸漬させ、単位体積あたりの担持量が134g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して選択還元触媒(1)の下地層を得た。
=上層=
セリア−ジルコニア系複合酸化物粉末H(ZrO
2:65重量%、CeO
2:24重量%、SiO
2:1重量%、WO
3:10重量%)1.3kg、Fe−MFI型ゼオライト粉末G 2.3kg、チタニア系複合酸化物粉末A 2.8kgに、アモルファスシリカゲルを酸化物換算で0.7kgをボールミルに加えた後、純水を足して所定の粒度までミリングし、スラリーγを得た。
続いて、このスラリーγに前記の下層塗布済み品を浸漬させ、単位体積あたりの触媒担持量が71g/Lとなるようにウォッシュコート法で塗布した。その後、150℃で1時間乾燥させ、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成して選択還元触媒(1){触媒量:205g/L、Fe−ゼオライト:128g、尿素加水分解材料(チタニア系複合酸化物):48g}を得た。
得られた選択還元触媒(1)2個を電気炉内で650℃、100時間、空気雰囲気下で焼成し、その後、触媒をコンバーターに直列に詰め、ディーゼルエンジン(排気量:5L)の排気口に接続して、尿素水をNH
3/NOx比(モル比)が1.0となるように噴霧しながら、触媒出口の排気ガス温度の時間変化を計測し、
図14に示した。
【0074】
[比較例2]
<選択還元触媒(2)の製造>
チタニア系複合酸化物粉末Aの代わりに、チタニア系複合酸化物粉末Dを用いた以外は、実施例4と同様な触媒調製法で比較例2の選択還元触媒(2){触媒量:205g/L、Fe−ゼオライト:128g、尿素加水分解材料(チタニア系複合酸化物):48g}を得た。
得られた選択還元触媒(2)2個を電気炉内で650℃、100時間、空気雰囲気下で焼成し、その後、触媒をコンバーターに直列に詰め、ディーゼルエンジン(排気量:5L)の排気口に接続して、尿素水をNH
3/NOx比(モル比)が1.0となるように噴霧しながら、触媒出口の排気ガス温度の時間変化を計測し、
図14にまとめた。
【0075】
「評価2」
上記結果をまとめた
図14から明らかなように、尿素加水分解性能の良かったチタニア系複合酸化物Aを用いて製造した実施例4の選択還元触媒は、尿素加水分解性能が不良のチタニア系複合酸化物Dを用いて製造した比較例2の選択還元触媒に比べ、140℃という極低温から高い脱硝性能を発揮した。
また、本発明で用いる尿素加水分解材料の使用量が低減でき、チタニア系複合酸化物Aの添加量が23重量%程度であっても、窒素酸化物(NOx)を浄化するために必要となるNH
3を尿素水から加水分解するために十分機能していると言える。
【0076】
以上の結果より、本発明により、尿素加水分解触媒または尿素加水分解材料を含む選択還元触媒において、噴霧された尿素水をより低温で加水分解してNH
3を生成させ、より低温でNOxをNH
3で還元除去するには、尿素加水分解材料の尿素加水分解性能(Ea)の良否を判定するだけで、触媒化し容易に脱硝性能の良否を予測することが可能となることがわかる。また、従来、活性の良否を左右する指標として重要視されてきた材料の物性{BET比表面積、NH
3吸着量(酸点量)、細孔容積、平均細孔径}は尿素加水分解反応においては、有効に機能していないこともわかった。