特開2016-43375(P2016-43375A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-43375曲げ金属管の製造方法、金属管の曲げ加工装置およびコイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-43375(P2016-43375A)
(43)【公開日】2016年4月4日
(54)【発明の名称】曲げ金属管の製造方法、金属管の曲げ加工装置およびコイル
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/16 20060101AFI20160307BHJP
【FI】
   B21D7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-168419(P2014-168419)
(22)【出願日】2014年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(74)【代理人】
【識別番号】100100066
【弁理士】
【氏名又は名称】愛智 宏
(72)【発明者】
【氏名】西本 友三
(72)【発明者】
【氏名】福有 睦人
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴志
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA04
4E063BC11
4E063KA04
(57)【要約】
【課題】厚肉管の曲げ加工に好適な加熱コイルを得る。
【解決手段】金属管をコイルによって環状に加熱すると共に、金属管の加熱部近傍位置を把持可能で且つ当該把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって金属管を把持し、金属管を材軸方向に推進させることによりクランプアームによる把持部を旋回させ金属管が弧を描いて湾曲するように案内することにより金属管の加熱部に曲げモーメントを加えて金属管を連続的に湾曲状態に塑性変形させて金属管を曲げ加工する曲げ金属管の製造方法で、前記コイルは、金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、曲げ加工のときに第一のコイル部によって金属管が加工温度にまで加熱されるように第一のコイル部を第二のコイル部より大きな出力で駆動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の一部をコイルによって環状に加熱すると共に、
前記金属管の加熱部近傍位置を把持可能で且つ当該把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって前記金属管を把持し、
前記金属管を材軸方向に推進させることにより前記クランプアームによる把持部を旋回させ前記金属管の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内することにより前記金属管の加熱部に曲げモーメントを加えて当該金属管の少なくとも一部を連続的に湾曲状態に塑性変形させて当該金属管を曲げ加工する
曲げ金属管の製造方法であって、
前記コイルは、前記金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、
前記曲げ加工のときに、前記第一のコイル部によって前記金属管が加工温度にまで加熱されるように前記第一のコイル部を前記第二のコイル部より大きな出力で駆動する
ことを特徴とする曲げ金属管の製造方法。
【請求項2】
前記第二のコイル部は、前記第一のコイル部によって加工温度まで加熱された前記金属管の加熱部の温度を当該加工温度に保持するように当該金属管を加熱する
請求項1に記載の曲げ金属管の製造方法。
【請求項3】
金属管の一部を環状に加熱するコイルと、
前記金属管を材軸方向に推進させる推進装置と、
前記金属管の加熱部近傍位置を把持可能で且つ当該把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームと
を備え、
前記クランプアームによって前記金属管を把持し、前記金属管を前記コイルに向け推進させることにより前記クランプアームによる把持部を旋回させ前記金属管の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内することにより前記金属管の加熱部に曲げモーメントを加えて当該金属管の少なくとも一部を連続的に湾曲状態に塑性変形させて当該金属管を曲げ加工する
金属管の曲げ加工装置であって、
前記コイルは、前記金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、
前記第一のコイル部は、前記第二のコイル部より大きな出力で駆動されることにより前記金属管を加工温度にまで加熱する本加熱用コイルであり、
前記第二のコイル部は、前記金属管の加熱部を前記加工温度に保つための保温用コイルである
ことを特徴とする金属管の曲げ加工装置。
【請求項4】
金属管の曲げ加工装置に備えられて金属管の一部を環状に加熱するコイルであって、
当該コイルは、前記金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、
前記第一のコイル部は、前記第二のコイル部より大きな出力で駆動されることにより前記金属管の一部を加工温度にまで加熱する本加熱用コイルであり、
前記第二のコイル部は、前記第一のコイル部によって加熱された金属管の加熱部を前記加工温度に保つための保温用コイルである
ことを特徴とするコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ金属管の製造方法、金属管の曲げ加工装置およびコイルに係り、特に、厚肉の金属管を熱間曲げ加工するのに好適な加熱コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
工場やプラント、パイプライン、発電所などの各種の産業施設において液状あるいはガス状物質を搬送するために金属管が使用されている。特にパイプラインや発電所に使用される金属管は、より過酷な環境への適用が増大しつつある。
【0003】
例えば、石油や天然ガスなどを輸送するパイプラインには高強度鋼材料が使用され、また深海向けのパイプラインが増加していることから肉厚の大きな厚肉管へのニーズが近年高まっている。火力発電プラントにおいては、高温高圧化による発電効率向上のため、配管の厚肉化が進められている。さらに金属管の構成材料として、従来の炭素鋼に代え、高温強度が高い合金鋼や超合金などの材料が使用されることもある。
【0004】
このような金属管は、規格化され予め所定形状になされたエルボやベンド等の異形管が使用される一方で、施工対象に応じて直線状の管を曲げ加工した管(「曲げ管」と言う)も様々な曲率・管路形状への要求に柔軟に対応できることから広範に使用されている。
【0005】
曲げ管を製造するには、一般に、図6図8に示すように加工対象である直線状の金属管11の一部を、高周波電流の供給を受ける誘導加熱コイル12によって環状に加熱するとともに、クランプアーム31によって金属管11の誘導加熱コイル12より前端側(管先端側)を把持しながら誘導加熱コイル12に向けて金属管11を押し進める。クランプアーム31は、支軸32を中心として旋回し金属管11の進路を弧状に規制するもので、このようなクランプアーム31によって金属管11を把持しながら推進させることで、誘導加熱コイル12によって加熱された部分に曲げモーメントが加わり、支軸32を中心とした半径Rの弧を描くように金属管11を連続的に塑性変形させることが出来る。なお、図8は誘導加熱コイル12を2つのコイル部(2ターンの巻線)12c,12dによって構成した例を示している。
【0006】
また、このような金属管の高周波曲げ加工に関する技術を開示するものとして下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−012062号公報
【特許文献2】特開2013−010109号公報
【特許文献3】特開2014−065072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、金属管の高周波曲げを行う場合、管厚が厚くなると、管の外面温度に対して管の内面温度が上がり難く、管内外面の温度差が大きくなる。
【0009】
この内外面温度差は、管外面の温度が同じになるように加熱しても管断面の平均温度が低いことを意味し、このため管の変形抵抗が大きくなって加工中に金属管を推進させる大きな推力が必要となり、加工可能な管のサイズが制限される問題が生じる。特に圧縮曲げは、非常に大きな推力が必要になるため、加工可能な管のサイズが大きく制限される問題が生じる。また、パイプラインに使用される高強度鋼材料は、曲げ変形の直後に水冷し焼入れされることにより強度が確保されるが、管の内面温度が十分に上がらない場合、管の強度を確保することが出来ない事態も生じ得る。
【0010】
一方、このような事態を回避するため加工温度を高くすることも考えられる。しかしながら、単純に管内面の温度を上げようとすれば、管外面は必要以上の温度に加熱されることとなるから、材料の健全性を損ない、当該金属管の品質を劣化させるおそれがある。また、管内面の温度を上げるために加工速度(金属管の推進速度)を遅くすることも考えられるが、管の送り速度を遅くすることにも限度がある上、速度を遅くする分、生産効率が低下してしまう。
【0011】
したがって、本発明の目的は、金属管の高周波曲げを行う新たなコイル、特に厚肉管の曲げ加工を良好に行うことが可能な加熱コイルに関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る曲げ金属管の製造方法は、金属管の一部をコイルによって環状に加熱すると共に、金属管の加熱部近傍位置を把持可能で且つ当該把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって金属管を把持し、金属管を材軸方向に推進させることによりクランプアームによる把持部を旋回させ金属管の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内することにより金属管の加熱部に曲げモーメントを加えて当該金属管の少なくとも一部を連続的に湾曲状態に塑性変形させて当該金属管を曲げ加工する曲げ金属管の製造方法であるが、前記コイルが、金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、曲げ加工のときに、第一のコイル部によって金属管が加工温度にまで加熱されるように第一のコイル部を第二のコイル部より大きな出力で駆動する。
【0013】
従来の曲げ加工では、前記図6図7ならびに前記特許文献1〜3に示すようにクランプアーム直前の金属管の部分を1ターンの巻線からなるコイルによって単純に加熱するか、あるいは、上記本発明のように複数のコイル部(例えば図8に示すように2ターンの巻線)を備えるコイルを使用する場合であっても従来では、各コイル部への投入電力を特に変えることなく同じ出力で駆動する(各コイル部に同等の電力供給を行う)ことが通常であった。
【0014】
これに対して本発明の製造方法では、コイルが前述のように金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部を含むようにし、曲げ加工のときに、第一のコイル部によって金属管が加工温度にまで加熱されるように第一のコイル部を第二のコイル部より大きな出力で駆動する。別の表現をすれば本発明に係るコイルは、金属管の推進方向に向かって後方(クランプアームから遠い側)に配置した第一のコイル部と、先方(クランプアームに近い側)に配置した第二のコイル部とを含み、第一のコイル部を、金属管の温度を加工温度にまで高める本加熱用コイルとし、第二のコイル部を、第一のコイル部によって高められた金属管の温度を加工温度に保持する(第一のコイル部によって加工温度まで加熱された管加熱部の温度を当該加工温度に保持するように金属管を加熱する)保温用コイルとする。
【0015】
このような本発明の製造方法によれば、コイルの配置領域に進行した金属管は、当初から加工温度に達するように速やかに加熱されこの温度が維持されるから、厚肉管であっても管内面まで十分に温度を上昇させて小さな変形抵抗で曲げ加工を行うことが出来る。特に圧縮曲げは、必要な推力が非常に大きいため、小さな変形抵抗にすることでより減肉抑制の効果が大きくなる。高温で引張力を受けて割れが生じる場合でも、圧縮曲げを行うことにより引張ひずみを低減させて割れを抑制することも出来る。また、高強度を必要とされる材料に対して、管内面温度を十分高くできるため、焼入れにより強度を十分確保することが出来る。
【0016】
また、本発明に係るコイルは、従来のコイルと同じコイル幅(金属管の進行方向の幅寸法)あるいは同じ管外面のピーク温度であっても、従来のコイルと比べて管外面と管内面の温度差を小さくすることが出来るもので、本発明に係るコイルは厚肉ではない管にも勿論適用可能であるが、特に厚肉管に有効なものである。
【0017】
本発明に係る曲げ加工装置は、上記製造方法と同様の特徴を有する。具体的には、当該曲げ加工装置は、金属管の一部を環状に加熱するコイルと、金属管を材軸方向に推進させる推進装置と、金属管の加熱部近傍位置を把持可能で且つ当該把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームとを備え、クランプアームによって金属管を把持し、金属管をコイルに向け推進させることによりクランプアームによる把持部を旋回させ金属管の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内することにより金属管の加熱部に曲げモーメントを加えて当該金属管の少なくとも一部を連続的に湾曲状態に塑性変形させて当該金属管を曲げ加工する曲げ加工装置であって、前記コイルは、金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、第一のコイル部は、第二のコイル部より大きな出力で駆動されることにより金属管を加工温度にまで加熱する本加熱用コイルであり、第二のコイル部は、金属管の加熱部を加工温度に保つための保温用コイルである。
【0018】
また、本発明に係るコイルも前記製造方法と同様の特徴を有するもので、金属管の曲げ加工装置に備えられて金属管の一部を環状に加熱するコイルであって、当該コイルは、金属管の推進方向に順に並ぶように配置した第一のコイル部と第二のコイル部とを含み、第一のコイル部は、第二のコイル部より大きな出力で駆動されることにより金属管の一部を加工温度にまで加熱する本加熱用コイルであり、第二のコイル部は、第一のコイル部によって加熱された金属管の加熱部を加工温度に保つための保温用コイルである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属管の熱間曲げ加工にあたって当該金属管を内面まで速やかに加熱して変形抵抗の増大を防ぎ、特に厚肉管の曲げ加工を良好に行うことが出来る。また、高強度を必要とされる材料に対して、管内面温度を十分高くできるため、焼入れにより強度を十分確保することが出来る。
【0020】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置(初期状態)を模式的に示す平面図である。
図2図2は、前記実施形態に係る曲げ加工装置(加工中の状態)を模式的に示す平面図である。
図3図3は、前記実施形態に係る曲げ加工装置のコイル配置部(金属管)の断面図(図1のA−A断面)である。
図4図4は、前記実施形態に係る曲げ加工装置で加工を行った場合の金属管の外面の温度変化と内面の温度変化を示す線図である。
図5図5は、従来の曲げ加工装置で加工を行った場合の金属管の外面の温度変化と内面の温度変化を示す線図である。
図6図6は、従来の曲げ加工装置(初期状態)を模式的に示す平面図である。
図7図7は、従来の曲げ加工装置(加工中の状態)を模式的に示す平面図である。
図8図8は、従来の別の曲げ加工装置(初期状態)を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図3に示すように本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置は、加工対象である金属管11の一部を環状に加熱する誘導加熱コイル12と、コイル12に向け金属管11を推進する推進機構14と、金属管11の前方部分を把持する前方クランプ33を有するとともに金属管11の推進に伴い支軸32を中心として回動することにより金属管11に曲げモーメントを付与するクランプアーム31と、金属管11の推進と反対方向の力である引戻力を発生して金属管11に圧縮力を付与する圧縮機構21を備えている。
【0023】
なお、図1図3には前後左右上下の方向を示しており、本実施形態ではこれらの方向に基づいて説明を行う。また、図中符号Cは金属管11の中心線を、符号Rは金属管11の曲げ半径を、符号11aは金属管11の内面を、符号11bは金属管11の外面を、符号tは金属管11の肉厚を、符号13は金属管11を案内するガイドローラをそれぞれ示している。
【0024】
金属管11を推進させる推進機構14は、金属管11の後部を把持する後方クランプ15と、この後方クランプ15を通じて金属管11に前方への推進力を付与する推進駆動部16とを有する。推進駆動部16は、例えば油圧シリンダにより構成する。
【0025】
一方、金属管11に圧縮力をかける圧縮機構21は、クランプアーム31の下端部に固定されクランプアーム31の支軸32を中心としてクランプアーム31と一緒に回転する(矢印P4参照)スプロケット24と、このスプロケット24と噛み合うチェーン23と、チェーン23を金属管11の推進方向と逆方向(後方)へ引っ張る引戻力P5を発生する圧縮駆動部22とを有する。圧縮駆動部22は、例えば油圧シリンダにより構成すれば良い。
【0026】
なお、これら推進機構14および圧縮機構21は、特定の構造に限定されるものではなく、本発明における推進機構14は金属管11を推進可能なものであれば、また、圧縮機構21は金属管11に対して圧縮力を付与可能なものあれば、それぞれ如何なるものであっても良く、図示した構造に限定されない。また、圧縮曲げを行わないのであれば、圧縮機構を備えなくても構わない。
【0027】
金属管11を加熱するコイル12は、クランプアーム31の後方に配置する。このコイル12は、誘導加熱コイルからなり金属管11を加工温度(塑性変形させるための温度であり加工中における最高温度)にまで高める本加熱用コイル部12aと、同じく誘導加熱コイルからなり本加熱用コイル部12aによって高められた金属管11の温度を加工温度に保持する保温用コイル部12bとからなる。
【0028】
これらのコイル部12a,12bは共に、高周波電力を供給する電源を含む駆動部(図示せず)によってそれぞれ駆動するが、本加熱用コイル部12aは保温用コイル部12bに比べて高周波電力の投入量を大きくする。これは、本加熱用コイル部12aによって金属管11の温度を加工温度にまで速やかに高めて、保温用コイル部12bによって温度を維持し管断面の平均温度を上げることにより当該金属管11の変形抵抗(必要推力)の増大を防ぐ。また、保温用コイル部12bは、本加熱用コイル部12aによって高められた温度を維持するだけ良いから、本加熱用コイル部12aに比べて電力投入量は少なくて良い。
【0029】
具体的な例を述べれば、本実施形態の装置では、一段目の本加熱用コイル部12aに例えば70%、二段目の保温用コイル部12bに例えば30%の電力をそれぞれ投入する。なお、前記第一のコイル部と第二のコイル部の駆動の方法(第一のコイル部を第二のコイル部より大きな出力で駆動する)について別の表現をすれば、本発明では第一のコイル部の電流密度が第二のコイル部の電流密度より大きくなるように各コイル部に電流を供給すると言うことも出来る。また、本加熱用コイル部12aおよび保温用コイル部12bは、本実施形態ではそれぞれ1つのコイル部(1ターンの巻線)を備えるものとしたが、これら各コイル部12a,12bは、いずれか一方または双方を複数のコイル部(2ターン以上の巻線)からなるようにしても良い。
【0030】
また、曲げ加工直後に金属管11を冷却できるように冷却水を噴射可能な冷却機構(冷却機構自体は図示しないが、当該冷却機構から噴射される冷却水を図2において符号10で示した)をコイル12(保温用コイル部12b)と一体に設けてあり、加工時にはコイル12(保温用コイル部12b)の直ぐ前方の金属管11の外表面11bに向け冷却水10を吹き付け、加熱され曲げられた金属管11を冷却する。
【0031】
加工にあたっては、金属管11の後部を後方クランプ15によって、金属管11の前部を前方クランプ33によってそれぞれ把持し、後方クランプ15を介して油圧シリンダ16により金属管11を前方へ推進する(矢印P1参照)。
【0032】
金属管11が前方へ推進されると(矢印P2参照)、この推進力P2を受けてクランプアーム31は支軸32を中心として水平に回動し(矢印P3参照)、金属管11を把持している前方クランプ33は支軸32を中心として弧を描くように旋回する。これに伴い、前方クランプ33により把持された金属管11には曲げモーメントが加わり、コイル12によって加熱された部分が次々と曲げられて金属管11が連続的に弧状に塑性変形される(図2参照)。
【0033】
一方、金属管11(曲げ外周側)の引張ひずみを低減し或いは管外周側の減肉(曲げ加工に伴い肉厚が薄くなること)を防ぐためには、次のような圧縮曲げを行えば良い。
【0034】
金属管11の推進に伴うクランプアーム31の回動により、スプロケット24が回転してチェーン23が巻き取られるが、これに抗する力(後方への引戻力)P5を圧縮駆動部22によってチェーン23及びスプロケット24を介してクランプアーム31にかける。これにより、金属管11に対して材軸方向の圧縮力を付与し、曲げ加工中に金属管11に発生する引張ひずみを低減し、あるいは、金属管11の曲げ外周側の減肉を抑制することが出来る。
【0035】
図4は肉厚tの大きな金属管について本実施形態に係る曲げ加工装置で加工を行った場合の金属管の内外各面11a,11bの温度変化を示すもので、金属管11の或る点(部分)が金属管11の推進に伴い(時間が経過するにつれて)コイル12に接近していき、コイル12内に進入して加熱され、その後コイル12内から抜け出て冷却水10によって冷却されるまでの温度変化を管内面11a(破線)と管外面11b(実線)のそれぞれについて示している。また図5は同様の金属管を従来の装置で加工を行った場合の金属管の内外各面11a,11bの温度変化を図4と同様に示すものである。
【0036】
これら図4および図5から分かるように、本実施形態の装置(図4)によれば、従来装置(図5)に比べて管外面11bと管内面11aの温度差を小さくすることが出来る。肉厚tの大きな管は、外面11bと比べて内面11aの温度が特に十分に上がらず、肉厚tの薄い管と比べて変形抵抗が増大するが、本実施形態の装置によれば、このような厚肉の管についても従来の装置より変形抵抗を小さく抑えることが出来る。また、パイプライン用の管のような高い強度を必要とされる高強度鋼材料に対しても、管内面温度を十分高くすることが出来るため、焼入れにより強度を十分確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
C 金属管の中心線
R 曲げ半径
11a 金属管の内面
11b 金属管の外面
t 金属管の肉厚
11 金属条材(金属管)
12 誘導加熱コイル
12a 本加熱用コイル部
12b 保温用コイル部
12c 1段目のコイル部(1ターン目の巻線)
12d 2段目のコイル部(2ターン目の巻線)
13 ガイドローラ
14 推進機構
15 後方クランプ
16 推進駆動部
21 圧縮機構
22 圧縮駆動部
23 チェーン
24 スプロケット
31 クランプアーム
32 支軸
33 前方クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8