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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-436(P2016-436A)
(43)【公開日】2016年1月7日
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20151204BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20151204BHJP
【FI】
   B25J9/22 A
   B25J19/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-120661(P2014-120661)
(22)【出願日】2014年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】足立 大悟
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707JS07
3C707JU14
3C707MS16
3C707MS29
(57)【要約】
【課題】ロボット制御システムにおいてロボット制御装置が複数存在する場合、無線通信の接続を確立するロボット制御装置を間違える可能性がある。しかし、従来のロボット制御システムには、意図していないロボット制御装置に対する無線通信の接続が確立されることを抑制できる機能はない。
【解決手段】ロボット制御装置Cのロボット制御部12は、無線ティーチペンダントTPからMACアドレスの入力があった場合に、そのMACアドレスが記憶部12cに登録済みのMACアドレスであるか否かを判断する。MACアドレスが一致すると判断した場合、ロボット制御部12は、通信制御部14に対して接続許可信号を出力する。接続許可信号を受信した通信制御部14は、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPに対して無線通信の接続の確立を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するためのロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に対して無線通信で信号を送受信する無線ティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、
前記ロボット制御装置は、
前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、
前記無線ティーチペンダントに対する無線通信の接続を確立して前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボットの制御を可能とする通信制御部と、
無線通信の接続の確立が許可されている前記無線ティーチペンダントの個体識別情報が格納された識別情報記憶部とを備え、
前記ロボット制御部は、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントの個体識別情報が前記識別情報記憶部に格納されている個体識別情報に一致した場合に、前記通信制御部に接続許可信号を出力し、
前記通信制御部は、前記接続許可信号に基づいて、前記ロボット制御部と無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントとの間の無線通信の接続を確立する
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
ロボットを制御するためのロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に対して無線通信で信号を送受信する無線ティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、
前記ロボット制御装置は、
前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、
前記無線ティーチペンダントに対する無線通信の接続を確立して前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボットの制御を可能とする通信制御部と、
通信範囲内の無線ティーチペンダントに自身の個体識別情報を送信する送信部とを備え、
前記無線ティーチペンダントは、
無線通信の接続の確立が許可されている前記ロボット制御装置の個体識別情報が格納された識別情報記憶部と、
通信範囲内のロボット制御装置を選択可能に表示する表示部とを備え、
前記無線ティーチペンダントは、選択されたロボット制御装置の個体識別情報と前記識別情報記憶部に記憶されている個体識別情報とが一致した場合に、選択されたロボット制御装置に対して無線通信の接続の確立を要求し、
前記ロボット制御部は、前記無線ティーチペンダントから無線通信の接続の確立の要求があった場合に、前記通信制御部に接続許可信号を出力し、
前記通信制御部は、前記接続許可信号に基づいて、前記ロボット制御部と無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントとの間の無線通信の接続を確立することを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
前記無線ティーチペンダントは、
物体に固有な情報を読み取って当該物体に関する固有情報を生成する読取部と、
前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボット制御装置の制御について制御権限の異なる複数の権限レベルを設定できる権限レベル設定部と、
前記権限レベル及び前記固有情報が互いに関連付けられて権限管理情報として格納された固有情報記憶部とを備え、
前記権限レベル設定部は、前記権限管理情報に基づいて、前記読取部が生成した前記固有情報に応じた前記権限レベルを設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
ロボットを制御するためのロボット制御装置と、ロボット制御装置に対して信号を送受信するティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、
前記ティーチペンダントは、
物体に固有な情報を読み取って当該物体に関する固有情報を生成する読取部と、
前記ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボット制御装置の制御内容について制御権限の異なる複数の権限レベルを設定できる権限レベル設定部と、
前記権限レベル及び前記固有情報が互いに関連付けられて権限管理情報として格納された固有情報記憶部とを備え、
前記権限レベル設定部は、前記権限管理情報に基づいて、前記読取部が生成した前記固有情報に応じた前記権限レベルを設定する
ことを特徴とするロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットの動作等を制御するロボット制御装置とそのロボット制御装置に操作信号を入力するためのティーチペンダントとを、無線通信により接続する技術が提案されている。特許文献1のロボット制御システムにおいてロボット制御装置及びティーチペンダント間の無線通信の接続を確立(いわゆるペアリング)する際には、先ず、ティーチペンダントに搭載されたディスプレイに、そのティーチペンダントが接続可能なロボット制御装置が表示される。そして、ティーチペンダントのディスプレイ上において接続するロボット制御装置が選択されると、接続するロボット制御装置とティーチペンダントとの間で、要求信号や互いの識別情報が送受信され、その後、両者の間の無線通信の接続が確立される。また、特許文献1のロボット制御システムにおいては、無線通信の接続が確立された状態でティーチペンダントの接続先確認スイッチが操作されると、無線通信の接続が確立されている相手先のロボット制御装置の確認表示灯が点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−80474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のロボット制御システムにおいてロボット制御装置が複数存在する場合、無線通信の接続を確立するロボット制御装置を間違える可能性がある。具体的には、図8に示すように、ロボット制御装置Ca及びロボットRaの組と、ロボット制御装置Cb及びロボットRbの組とが存在していたとする。そして、操作者Hが所持する無線ティーチペンダントTPが、ロボット制御装置Caの無線通信範囲内であり、且つ、ロボット制御装置Cbの無線通信範囲内でもあるとする。この場合、無線ティーチペンダントTPのディスプレイには接続可能なロボット制御装置としてロボット制御装置Ca及びロボット制御装置Cbの両方が表示される。
【0005】
ここで、図8に示すように、操作者Hがロボット制御装置Cbに対する無線接続の確立を意図しているにも拘らず、無線ティーチペンダントTPの誤操作などによって接続先としてロボット制御装置Caが選択される可能性がある。この場合、無線ティーチペンダントTPからロボット制御装置Caに対して無線通信の接続の確立が要求され、両者の間で無線通信が確立される。しかし、元々接続の確立を意図していたロボット制御装置Cbに対する無線通信の接続は確立されない。
【0006】
特許文献1のロボット制御システムでは、ロボット制御装置の確認表示灯を点灯させることにより、無線通信の接続が確立されたロボット制御装置が意図していなかったロボット制御装置であることを確認することはできる。しかし、特許文献1のロボット制御システムに、意図していないロボット制御装置に対する無線通信の接続が確立されること自体を抑制できる機能が搭載されているとは言い難い。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線ティーチペンダントとロボット制御装置との間で無線通信の接続を確立するに際して、意図したロボット制御装置に対してより確実に無線通信の接続を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ロボットを制御するためのロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に対して無線通信で信号を送受信する無線ティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、前記ロボット制御装置は、前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、前記無線ティーチペンダントに対する無線通信の接続を確立して前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボットの制御を可能とする通信制御部と、無線通信の接続の確立が許可されている前記無線ティーチペンダントの個体識別情報が格納された識別情報記憶部とを備え、前記ロボット制御部は、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントの個体識別情報が前記識別情報記憶部に格納されている個体識別情報に一致した場合に、前記通信制御部に接続許可信号を出力し、前記通信制御部は、前記接続許可信号に基づいて、前記ロボット制御部と無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントとの間の無線通信の接続を確立する。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明は、ロボットを制御するためのロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に対して無線通信で信号を送受信する無線ティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、前記ロボット制御装置は、前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、前記無線ティーチペンダントに対する無線通信の接続を確立して前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボットの制御を可能とする通信制御部と、通信範囲内の無線ティーチペンダントに自身の個体識別情報を送信する送信部とを備え、前記無線ティーチペンダントは、無線通信の接続の確立が許可されている前記ロボット制御装置の個体識別情報が格納された識別情報記憶部と、通信範囲内のロボット制御装置を選択可能に表示する表示部とを備え、前記無線ティーチペンダントは、選択されたロボット制御装置の個体識別情報と前記識別情報記憶部に記憶されている個体識別情報とが一致した場合に、選択されたロボット制御装置に対して無線通信の接続の確立を要求し、前記ロボット制御部は、前記無線ティーチペンダントから無線通信の接続の確立の要求があった場合に、前記通信制御部に接続許可信号を出力し、前記通信制御部は、前記接続許可信号に基づいて、前記ロボット制御部と無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントとの間の無線通信の接続を確立する。
【0010】
上記発明において、前記無線ティーチペンダントは、物体に固有な情報を読み取って当該物体に関する固有情報を生成する読取部と、前記無線ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボット制御装置の制御について制御権限の異なる複数の権限レベルを設定できる権限レベル設定部と、前記権限レベル及び前記固有情報が互いに関連付けられて権限管理情報として格納された固有情報記憶部とを備え、前記権限レベル設定部は、前記権限管理情報に基づいて、前記読取部が生成した前記固有情報に応じた前記権限レベルを設定することが好ましい。
【0011】
本発明は、ロボットを制御するためのロボット制御装置と、ロボット制御装置に対して信号を送受信するティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、前記ティーチペンダントは、物体に固有な情報を読み取って当該物体に関する固有情報を生成する読取部と、前記ティーチペンダントの操作に基づく前記ロボット制御装置の制御内容について制御権限の異なる複数の権限レベルを設定できる権限レベル設定部と、前記権限レベル及び前記固有情報が互いに関連付けられて権限管理情報として格納された固有情報記憶部とを備え、前記権限レベル設定部は、前記権限管理情報に基づいて、前記読取部が生成した前記固有情報に応じた前記権限レベルを設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線ティーチペンダントとロボット制御装置との間で無線通信の接続を確立するに際して、より確実に意図したロボット制御装置に無線通信の接続を確立できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ロボット制御システムの概略図。
図2】ロボット制御装置のブロック図。
図3】無線ティーチペンダントのブロック図。
図4】無線ティーチペンダントのログイン処理を示すフローチャート。
図5】第1実施形態における無線通信の接続の確立処理を示すフローチャート。
図6】第2実施形態における無線通信の接続の確立処理を示すフローチャート。
図7】ロボット制御システムにおける無線通信の接続の確立処理の一例を示す説明図。
図8】従来のロボット制御システムにおける無線通信の接続の確立処理の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態の構成)
本発明のロボット制御システムの第1実施形態を説明する。先ず、ロボット制御システムの概要について説明する。
【0015】
図1に示すように、ロボット制御システムのロボット制御装置Cは、コンピュータや各種のモジュール等が内蔵された制御装置本体CMを有する。制御装置本体CMの筐体の外面には、無線アクセスポイントAPが固定されている。無線アクセスポイントAPは、制御装置本体CMに対して有線で接続され、制御装置本体CMとの間で有線通信により信号を送受信する。これら制御装置本体CM及び無線アクセスポイントAPで、ロボット制御装置Cが構成されている。
【0016】
図1に示すように、ロボット制御装置Cの制御装置本体CMには、有線でロボットRが接続されている。ロボットRは、例えば、サーボモータによって駆動される複数のアームを有し、その先端のアームに溶接トーチが搭載された多関節型の溶接ロボットである。そして、ロボットRは、制御装置本体CMからの制御信号によってアーム等の動作が制御される。また、ロボット制御システムは、ロボットRを操作するのに必要な情報を入力するための無線ティーチペンダントTPを有する。無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPに対して無線通信で信号を送受信する。
【0017】
次に、ロボット制御システムを構成する各装置の電気的構成について説明する。
図2に示すように、ロボット制御装置Cの制御装置本体CMには、電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチ11が設けられている。電源スイッチ11が操作されることにより、制御装置本体CM及び無線アクセスポイントAPを含めたロボット制御装置C全体の電源のオン/オフが切り替えられる。制御装置本体CMには、ロボットRの制御処理や通信処理等を担うロボット制御部12が設けられている。ロボット制御部12は、各種のプログラムを実行する中央演算装置12a(CPU)、各プログラムの実行に際してデータが一時的に格納される揮発性のRAM12b、処理に必要なプログラムや各種のデータ等が格納される不揮発性の記憶部12cなどを有するコンピュータとして構成されている。また、記憶部12cには、ロボット制御部12に対する無線通信の接続の確立が許可されている無線ティーチペンダントTPの個体識別情報として、無線ティーチペンダントTPのMACアドレスが登録されている。
【0018】
図2に示すように、制御装置本体CMには、ロボットRのサーボモータに電力を供給するためのサーボアンプ13が設けられている。サーボアンプ13は、ロボット制御部12によって指示されるロボットRのアームの姿勢等に応じた電力をロボットRのサーボモータに供給する。つまり、ロボット制御部12は、サーボアンプ13を制御することにより、ロボットRの動作を制御する。
【0019】
図2に示すように、制御装置本体CMの通信制御部14は、ロボット制御部12に接続されている。通信制御部14は、ロボット制御部12からの接続許可信号に基づいて無線アクセスポイントAPを介した無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続を確立する。通信制御部14は、無線通信の接続を確立した無線ティーチペンダントTPからの操作信号をロボット制御部12に出力して、当該無線ティーチペンダントTPの操作に基づくロボットRの制御を可能とする。通信制御部14にはLANケーブルを介して、無線アクセスポイントAPが接続されている。
【0020】
無線アクセスポイントAPには、電波を送受信するためのアンテナ、そのアンテナによる電波の送受信を制御する通信モジュール等が内蔵され、例えばIEEE802.11規格による無線通信を行う。無線アクセスポイントAPは、ロボット制御部12から通信制御部14を介して出力される信号を無線通信で無線ティーチペンダントTPに送信するとともに、無線ティーチペンダントTPから無線通信で受信した信号を、通信制御部14を介してロボット制御部12に出力する。また、無線アクセスポイントAPは、無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続が確立されているか否かに関わらず、自身のネットワーク情報(例えばSSID(Service Set Identifier))を所定時間毎に送信する。なお、このネットワーク情報は、特定の無線ティーチペンダントTP宛に送信されるのではなく、宛先を特定せずに送信される。
【0021】
図3に示すように、無線ティーチペンダントTPには、入力処理や通信処理等を担うティーチペンダント制御部21が設けられている。ティーチペンダント制御部21は、各種のプログラムを実行する中央演算装置21a(CPU)、プログラムの実行等に際してデータが一時的に格納される揮発性のRAM21b、処理に必要なプログラム等が格納される不揮発性の記憶部21cを有するコンピュータとして構成されている。記憶部21cには、制御権限の異なる複数の権限レベルで無線ティーチペンダントTPの処理を実行するためのプログラムが格納されている。また、記憶部21cには、無線ティーチペンダントTP自身の個体識別情報としてMACアドレスが格納されている。
【0022】
図3に示すように、無線ティーチペンダントTPには、各種の情報を表示するためのディスプレイ22が設けられている。ディスプレイ22は、ティーチペンダント制御部21からの画像信号に基づいて、例えばロボットRの現在状況やロボットRに対する教示内容等を表示する。無線ティーチペンダントTPには、情報を入力するためのキーボード23が設けられている。キーボ−ド23は、例えば、ディスプレイ22上で表示されている選択位置(カーソル位置)を移動させるための矢印キーや文字情報を入力するための文字キーである。また、無線ティーチペンダントTPには、ロボットRへの電力供給を許可するためのイネーブルスイッチ24、及び電力が供給されているロボットRを強制的に停止させるための非常停止スイッチ25が設けられている。
【0023】
図3に示すように、無線ティーチペンダントTPには、指紋を読み取るための指紋読取部26が設けられている。指紋読取部26による指紋読み取りの方式としては、例えば、光を指に照射して指紋を撮像する光学式、センサー部分に指を押し付けた際に生じる電荷量の違いに基づいて指紋画像を得る静電式などが挙げられる。指紋読取部26は、人の指紋を読み取ってその人に関する固有情報として指紋情報を生成する。そして、指紋読取部26は、生成した指紋情報をティーチペンダント制御部21に出力する。
【0024】
図3に示すように、無線ティーチペンダントTPには、ロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPと無線通信するための無線LANインターフェース27が設けられている。無線LANインターフェース27には、電波を送受信するためのアンテナ及びそのアンテナによる無線通信を制御するための通信モジュール等が内蔵され、例えばIEEE802.11規格による無線通信を行う。
【0025】
無線ティーチペンダントTPにおいて、ティーチペンダント制御部21は、記憶部21cに格納されているプログラムに基づいて、複数の権限レベルのうちの一つの権限レベルを設定して無線ティーチペンダントTPのログイン処理を行う。各権限レベルには、無線ティーチペンダントTPの操作に基づいてロボット制御装置CやロボットRを制御できる範囲が定められており、各権限レベルにおいてその制御範囲が異なっている。本実施形態では、ログインする際の権限レベルとして、ロボット制御部12の記憶部12cに格納されているMACアドレスの変更が可能な「管理者権限レベル」と、MACアドレスの変更ができない「オペレータ権限レベル」が設定されている。また、ティーチペンダント制御部21の記憶部21cには、各操作者の指紋に関する指紋情報が登録されている。そして、登録されている指紋情報と、その指紋情報に許可されている権限レベルとが関連付けられて権限管理情報として格納されている。権限管理情報としては、例えば「操作者Xの指紋に関する指紋情報:管理者権限レベル/オペレータ権限レベル」、「操作者Yの指紋に関する指紋情報:オペレータ権限レベル」などといった内容である。
【0026】
(無線ティーチペンダントのログイン処理)
先ず、無線ティーチペンダントTPにおけるログイン処理について、図4に従って説明する。
【0027】
操作者によって無線ティーチペンダントTPの電源がオフからオンに切り替えられた場合、無線ティーチペンダントTPのティーチペンダント制御部21の処理はステップST1に移行する。また、操作者によってそれまでログイン状態にあった無線ティーチペンダントTPにおいてログアウト処理がされた場合も、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST1に移行する。
【0028】
ステップST1では、ティーチペンダント制御部21は、無線ティーチペンダントTPが未ログイン状態であることを示す表示(例えば、ログイン画面)をディスプレイ22に表示させる。また、ティーチペンダント制御部21は、操作者に指紋読取部26での指紋読み取りを促す表示をディスプレイ22に表示させる。そして、ティーチペンダント制御部21は、指紋読取部26によって操作者の指紋が読み取られ、指紋読取部26が生成した指紋情報の入力があったか否かを判断する。指紋情報の入力がない場合(ステップST1においてNO)には、ティーチペンダント制御部21は、引き続き指紋情報の入力を待機する。指紋情報の入力があった場合(ステップST1においてYES)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST2に移行する。
【0029】
ステップST2では、ティーチペンダント制御部21は、入力された指紋情報を記憶部21cに格納されている権限管理情報と照合する。そして、ティーチペンダント制御部21は、その入力された指紋情報が記憶部21cに登録済みの指紋情報であるか否かを判断する。入力された指紋情報が登録済みの指紋情報でない場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST5に移行する。ステップST5では、ティーチペンダント制御部21は、ディスプレイ22に対して、ログインが許可されていない旨の警告表示をさせる処理を行い、その後、一連のログイン処理を終了する。
【0030】
入力された指紋情報が登録済みの指紋情報であった場合には、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST3に移行する。ステップST3では、ティーチペンダント制御部21は、記憶部21cに格納されている権限管理情報に基づいて、入力された指紋情報に対して許可されている権限レベルを判定する。そして、ティーチペンダント制御部21は、許可されている権限レベルを示す情報をディスプレイ22に選択可能に表示させる。具体的には、入力された指紋情報が「操作者Xの指紋に関する指紋情報」であり、その指紋情報に関して、記憶部21cに権限管理情報として「操作者Xの指紋に関する指紋情報:管理者権限レベル/オペレータ権限レベル」という情報が格納されているとする。この場合、ディスプレイ22には、「管理者権限レベル」及び「オペレータ権限レベル」という文字情報やアイコンが表示されるとともに、ディスプレイ22上のカーソルによってこれらを選択できるように表示される。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード23を操作することによりいずれかの権限レベルが選択されると、ティーチペンダント制御部21の処理は、ステップST4に移行する。ステップST4では、ティーチペンダント制御部21は、選択された権限レベルで無線ティーチペンダントTPのログインを許可して、無線ティーチペンダントTPにその選択された権限レベルを設定する。その後、一連のログイン処理を終了する。
【0031】
(第1実施形態における無線通信の接続の確立処理)
上述した無線ティーチペンダントTPのログイン処理が終了すると、続いて、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置Cのロボット制御部12との無線通信の接続の確立処理が行われる。この無線通信の接続の確立処理について、図5に従って説明する。
【0032】
ロボット制御装置Cの電源スイッチ11が操作されてロボット制御装置Cの電源がオンされると、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST21に移行する。ステップST21では、ロボット制御装置Cは、所定時間毎に無線アクセスポイントAPのネットワーク情報を送信する。その後、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST22に移行する。
【0033】
一方、無線ティーチペンダントTPの処理は、ログイン処理が終了した後、ステップST11に移行する。ステップST11では、ティーチペンダント制御部21は、ロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPのネットワーク情報が受信されたかに基づいて、通信可能なロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPを検索する。通信可能なロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPが検索された場合には、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST12に移行する。
【0034】
ステップST12では、ティーチペンダント制御部21は、検索された通信可能な無線アクセスポイントAPを特定できる情報として、受信した無線アクセスポイントAPのネットワーク情報をディスプレイ22に選択可能に表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST13に移行する。
【0035】
ステップST13では、ティーチペンダント制御部21は、検索された通信可能な無線アクセスポイントAPのうち、いずれかの無線アクセスポイントAPが選択されたかを判断する。無線アクセスポイントAPが選択されていない場合(ステップST13においてNO)、ティーチペンダント制御部21の処理はステップST11に戻り、再び、通信可能な無線アクセスポイントAPを検索する。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード23を操作することにより、ディスプレイ22上の無線アクセスポイントAPが選択された場合(ステップST13においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST14に移行する。
【0036】
ステップST14では、無線ティーチペンダントTPは、選択された無線アクセスポイントAPが設けられているロボット制御装置C宛に、無線通信の接続確立を要求する。また、このとき、選択された無線アクセスポイントAPが設けられているロボット制御装置C宛に、無線ティーチペンダントTPの記憶部21cに格納されている自身のMACアドレスを送信する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ロボット制御装置Cからの応答があるまで待機する。
【0037】
一方、ネットワーク情報を送信した(ステップST21)後、ロボット制御装置Cの処理はステップST22に移行している。ステップST22では、ロボット制御装置Cのロボット制御部12は、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPからMACアドレスの入力があったか否かを判断する。仮に、無線ティーチペンダントTPにおいてステップST11〜ステップST14の処理が完了しておらず、MACアドレスの入力がない場合には、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST21に戻る。無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPからMACアドレスの入力があった場合には(ステップST22においてYES)、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST23に移行する。
【0038】
ステップST23では、ロボット制御部12は、記憶部12cに登録されているMACアドレスを参照することにより、無線ティーチペンダントTPから入力されたMACアドレスが記憶部12cに登録済みのMACアドレスであるか否かを判断する。MACアドレスが一致しない場合には(ステップST23においてNO)、ロボット制御装置Cは、MACアドレスの送信元の無線ティーチペンダントTPに対して、無線通信の接続の確立を拒否する旨の拒否通知を送信する。
【0039】
無線ティーチペンダントTPにおいて拒否通知が受信されると無線ティーチペンダントTPの処理はステップST15に移行する。ステップST15では、ティーチペンダント制御部21は、無線通信の接続の確立ができなかった旨の警告表示をディスプレイ22に表示させる。その後、一連の無線通信の接続の確立処理を終了する。
【0040】
これに対して、ステップST23で、ロボット制御部12が、入力されたMACアドレスが登録済みのMACアドレスと一致すると判断した場合、ロボット制御装置Cは、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPに対して、その要求を許可した旨を示す許可通知を送信する。その後、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST24に移行する。
【0041】
ステップST24では、ロボット制御装置C内において、ロボット制御部12は、通信制御部14に接続許可信号を出力する。その後、接続許可信号が入力された通信制御部14は、ロボット制御装置Cのロボット制御部12と無線通信の接続の確立が許可された無線ティーチペンダントTPとの間の無線通信の接続の確立を行う。
【0042】
一方、ステップST16において、無線ティーチペンダントTPは、無線通信の接続の確立を要求したロボット制御装置Cからの許可通知を受信する。許可通知を受信した無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置Cのロボット制御部12との間で必要な情報を送受信し、その後、無線ティーチペンダントTP及びロボット制御装置Cのロボット制御部12との間で無線通信の接続が確立される。
【0043】
ロボット制御装置Cにおけるロボット制御部12と無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立された場合、無線ティーチペンダントTPのログイン時に設定された権限レベルに従って、ロボット制御装置CやロボットRを制御することが可能となる。例えば、オペレータ権限レベルでログインしている場合には、無線ティーチペンダントTPの操作に基づいて、ロボットRに動作を教示したり、教示した動作を再生させたりすることが可能となる。また、管理者権限レベルでログインしている場合には、オペレータ権限レベルでの制御内容に加えて、ロボット制御装置Cにおける記憶部12cに対して、新たにMACアドレスを追登録したり、既に登録されているMACアドレスを削除したりすることが可能となる。
【0044】
(第1実施形態の作用)
上記のように構成されたロボット制御システムの作用を、MACアドレスの登録態様の例と合わせて説明する。
【0045】
図7に示すように、工場内において製造ラインA及び製造ラインBの2つの製造ラインが並設されている。製造ラインAにおいて、ロボット制御装置Ca及びロボットRaの組が複数組設けられている(図7では2組を図示)。そして、各組のロボット制御装置Caにおいてロボット制御部12の記憶部12cには、いずれも無線通信の接続の確立を許可する無線ティーチペンダントTPのMACアドレスとして「0123456789AB」が登録されている。同様に、製造ラインBにおいて、ロボット制御装置Cb及びロボットRbの組が複数組設けられている(図7では2組を図示)。そして、各組のロボット制御装置Cbにおいてロボット制御部12の記憶部12cには、いずれも無線通信の接続の確立を許可する無線ティーチペンダントTPのMACアドレスとして「ABCDEF012345」が登録されている。
【0046】
ここで、操作者Hが所持する無線ティーチペンダントTPの記憶部21cに記憶されているMACアドレスが「ABCDEF012345」であるとする。また、操作者Hが所持する無線ティーチペンダントTPが、製造ラインAに属するロボット制御装置Caの無線通信範囲内であり、且つ、製造ラインBに属するロボット制御装置Cbの無線通信範囲内でもあるとする。この場合、無線ティーチペンダントTPのディスプレイ22には、通信可能なロボット制御装置Cとして、製造ラインAに属するロボット制御装置Ca、及び製造ラインBに属するロボット制御装置Cbの両方が表示される。
【0047】
このような状況で、操作者Hが、製造ラインBのロボット制御装置Cbに対する無線接続の確立を意図しているにも拘らず、無線ティーチペンダントTPの誤操作などによって、製造ラインAのロボット制御装置Caが選択される可能性がある。この場合、無線ティーチペンダントTPから製造ラインAのロボット制御装置Caに無線通信の接続の確立が要求され、無線ティーチペンダントTPのMACアドレスがロボット制御装置Caに出力される。しかし、製造ラインAのロボット制御装置Caの記憶部21cには、MACアドレスとして「0123456789AB」が登録されている。このMACアドレスは、無線ティーチペンダントTPから出力されたMACアドレスである「ABCDEF012345」とは一致しない。したがって、ロボット制御装置Caにおいては、ロボット制御部12から通信制御部14に対して接続許可信号が出力されず、無線ティーチペンダントTPと製造ラインAのロボット制御装置Caとの間では、無線通信の接続は確立されない。また、無線ティーチペンダントTPにおいては、ディスプレイ22上に警告表示が表示される。
【0048】
警告表示を見た操作者Hが、誤ったロボット制御装置Caを選択していることに気付き、改めて製造ラインBのロボット制御装置Cbを選択したとする。この場合、無線ティーチペンダントTPから、製造ラインBのロボット制御装置Cbに無線通信の接続の確立が要求され、無線ティーチペンダントTPのMACアドレスがロボット制御装置Caに出力される。このとき、製造ラインBのロボット制御装置Cbの記憶部21cに登録されているMACアドレス「ABCDEF012345」と、無線ティーチペンダントTPから出力されたMACアドレス「ABCDEF012345」とが一致する。したがって、ロボット制御装置Caにおいては、ロボット制御部12から通信制御部14に対して接続許可信号が出力される。また、ロボット制御装置Cbから無線ティーチペンダントTPに対して無線通信の接続の確立を許可する旨の許可通知が送信される。その後、ロボット制御装置Cbのロボット制御部12と無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立される。
【0049】
上述の例において、製造ラインBの各ロボット制御装置Cbには、いずれもMACアドレスとして「ABCDEF012345」が登録されている。したがって、無線ティーチペンダントTPは、製造ラインBに属するロボット制御装置Cbであれば、必要に応じていずれのロボット制御装置Cbに対しても無線通信の接続を確立することができる。すなわち、同じ製造ライン内においては無線ティーチペンダントTPの汎用性が確保される。
【0050】
(第1実施形態の特徴)
上記第1実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1)上記第1実施形態では、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPのMACアドレスが、ロボット制御装置Cにおける記憶部12cに格納されているMACアドレスに一致しないと、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置Cのロボット制御部12との間の無線通信の接続が確立されない。したがって、意図しないロボット制御装置Cに対して無線通信の接続が確立される可能性が低くなる。その結果として、意図したロボット制御装置Cのロボット制御部12に対してより確実に無線通信の接続を確立することができる。
【0051】
(2)MACアドレスは、例えば無線ティーチペンダントTPを製造する際に付されるものであり、原則として重複したMACアドレスが付されることはない。したがって、無線ティーチペンダントTPを特定するための個体識別情報として好適である。
【0052】
(3)上記第1実施形態では、登録されている指紋情報に対応する指紋を有する者のみが管理者権限でログインできる。そして、その管理者権限レベルでのみ、ロボット制御装置Cにおける記憶部12cのMACアドレスを変更できる。したがって、権限のない操作者が、むやみに無線通信の接続の確立が許可される無線ティーチペンダントTPを追加したり削除したりすることはない。
【0053】
(4)ところで、WO2009/119382号公報には、ロボットの動作等を制御するロボット制御装置とそのロボット制御装置に操作信号を入力するためのティーチペンダントとを有するロボット制御システムにおいて、ティーチペンダントのログインの権限レベルとして、複数の権限レベルを設定する技術が提案されている。
【0054】
上記公報のロボット制御システムでは、それぞれの権限レベルに対してそれぞれ異なるパスワードが設定されている。しかし、パスワードでの権限レベルの管理では、パスワードがそのパスワードを知らされるべきでない者に対して漏洩するおそれが捨てきれない。したがって、単に、パスワードの認証によってティーチペンダントのログインの権限レベルを管理するのにも限界がある。そのため、ティーチペンダントのログインの権限レベルをより確実に管理することが求められる。
【0055】
この点、上記第1実施形態では、複製や改ざんがほぼ不可能な指紋に基づいて指紋情報を生成し、その指紋情報に応じて無線ティーチペンダントTPのログインの権限レベルが設定される。したがって、無線ティーチペンダントTPに対するログイン権限を有していない操作者が無線ティーチペンダントにログイン可能となることは考えにくい。その結果、無線ティーチペンダントTPのログインの権限レベルをより確実に管理できる。なお、上記実施形態のように、MACアドレスを利用した無線通信の接続の確立処理を採用しなくても、上記指紋情報に応じた無線ティーチペンダントTPのログインの権限レベル設定は実現できる。
【0056】
(第2実施形態における無線通信の接続の確立処理)
本発明のロボット制御システムの第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態のロボット制御システムにおける各装置の電気的構成や、無線ティーチペンダントTPのログイン処理については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。以下では、第2実施形態における無線通信の接続の確立処理に関して説明する。
【0057】
先ず、図2に示すように、ロボット制御装置Cにおけるロボット制御部12の記憶部12cには、ロボット制御装置C自身の個体識別情報としてMACアドレスが格納されている。また、図3に示すように、無線ティーチペンダントTPにおけるティーチペンダント制御部21の記憶部21cには、無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続の確立が許可されているロボット制御装置Cの個体識別情報として、ロボット制御装置CのMACアドレスが登録されている。
【0058】
図6に示すように、ロボット制御装置Cの電源スイッチ11が操作されてロボット制御装置Cの電源がオンされると、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST41に移行する。ステップST41では、ロボット制御装置Cは、所定時間毎に無線アクセスポイントAPのネットワーク情報を送信する。また、ロボット制御装置Cは、無線アクセスポイントAPのネットワーク情報と共に自身のMACアドレスを送信する。その後、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST42に移行する。
【0059】
一方、無線ティーチペンダントTPの処理は、ログイン処理が終了した後、ステップST31に移行する。ステップST31では、ティーチペンダント制御部21は、ロボット制御装置Cが送信した無線アクセスポイントAPのネットワーク情報が受信されたかに基づいて、通信可能なロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPを検索する。通信可能なロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPが検索された場合には、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST32に移行する。
【0060】
ステップST32では、ティーチペンダント制御部21は、検索された通信可能な無線アクセスポイントAPを特定できる情報として、受信した無線アクセスポイントAPのネットワーク情報をディスプレイ22に選択可能に表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST33に移行する。
【0061】
ステップST33では、ティーチペンダント制御部21は、検索された通信可能な無線アクセスポイントAPのうち、いずれかの無線アクセスポイントAPが選択されたかを判断する。無線アクセスポイントAPが選択されていない場合(ステップST33においてNO)、ティーチペンダント制御部21の処理はステップST31に戻り、再び、通信可能な無線アクセスポイントAPを検索する。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード23を操作することにより、ディスプレイ22上の無線アクセスポイントAPが選択された場合(ステップST33においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST34に移行する。
【0062】
ステップST34では、ティーチペンダント制御部21は、記憶部21cに登録されているMACアドレスを参照することにより、操作者に選択された無線アクセスポイントAPが設けられたロボット制御装置CのMACアドレスが、記憶部21cに登録済みのMACアドレスであるか否かを判断する。MACアドレスが一致しない場合には(ステップST34においてNO)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST36に移行する。ステップST36では、ティーチペンダント制御部21は、選択された無線アクセスポイントAPが設けられたロボット制御装置Cに対して無線通信の接続の確立が許可されていない旨の警告表示をディスプレイ22に表示させ、無線通信の接続の確立処理を終了する。
【0063】
MACアドレスが一致した場合には(ステップST34においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST35に移行する。ステップST35では、無線ティーチペンダントTPは、操作者に選択された無線アクセスポイントAPが設けられたロボット制御装置Cに対して、無線通信の接続の確立を要求する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ロボット制御装置Cからの応答があるまで待機する。
【0064】
一方、無線アクセスポイントAPがネットワーク情報及びMACアドレスを送信した(ステップST41)後、ロボット制御装置Cの処理はステップST42に移行している。ステップST42では、ロボット制御装置Cのロボット制御部12は、無線ティーチペンダントTPが無線通信の接続の確立を要求しているか否かを判断する。仮に、無線ティーチペンダントTPにおいてステップST31〜ステップST35の処理が完了しておらず、MACアドレスの入力がない場合には、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST41に戻る。無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPがある場合には(ステップST42においてYES)、ロボット制御装置Cは、無線通信の接続の確立を要求している無線ティーチペンダントTPに対して、その要求を許可した旨を示す許可通知を送信する。その後、ロボット制御装置Cの処理は、ステップST43に移行する。
【0065】
ステップST43では、ロボット制御装置C内において、ロボット制御部12は、通信制御部14に接続許可信号を出力する。その後、接続許可信号が入力された通信制御部14は、ロボット制御装置Cのロボット制御部12と無線通信の接続の確立が許可された無線ティーチペンダントTPとの間の無線通信の接続の確立を行う。
【0066】
一方、ステップST37において、無線ティーチペンダントTPは、無線通信の接続の確立を要求したロボット制御装置Cからの許可通知を受信する。許可通知を受信した無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置Cのロボット制御部12との間で必要な情報を送受信し、その後、無線ティーチペンダントTP及びロボット制御装置Cのロボット制御部12との間で無線通信の接続が確立される。
【0067】
(第2実施形態の特徴)
上記第2実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(5)上記第2実施形態では、操作者に選択された無線アクセスポイントAPが設けられたロボット制御装置CのMACアドレスが、無線ティーチペンダントTPにおける記憶部21cに格納されているMACアドレスに一致しないと、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置Cのロボット制御部12との間の無線通信の接続が確立されない。したがって、意図しないロボット制御装置Cに対して無線通信の接続が確立される可能性が低くなる。その結果として、意図したロボット制御装置Cのロボット制御部12に対してより確実に無線通信の接続を確立することができる。
【0068】
(変更例)
上記第1実施形態及び第2実施形態は、以下のように変更してもよい。また、各変更例を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0069】
・ 上記各実施形態では、無線ティーチペンダントTPやロボット制御装置Cの個体識別情報としてMACアドレスを採用したが、個体識別情報はこれに限らない。例えば、権限のある操作者が各無線ティーチペンダントTPやロボット制御装置Cに対して割り振った独自の番号や名称等の情報であってもよい。
【0070】
・ 上記各実施形態では、操作者の固有の情報としての指紋を指紋読取部26で読み取るようにしたが、操作者を特定できる生体情報を生成できるであれば、他の部位を利用してもよい。例えば、操作者の固有の情報としては、瞳(虹彩、網膜)、手のひらの静脈パターン、耳の形状、声紋などが挙げられる。
【0071】
・ 操作者の固有情報(生体情報)を利用するのではなく、他の物体の固有情報を利用してもよい。例えば、無線ティーチペンダントTPにUSBコネクタを設け、このUSBコネクタに接続されたUSBドングルキーのMACアドレスを固有情報として利用してもよい。また、例えば、無線ティーチペンダントTPに鍵穴を設け、この鍵穴に挿入される鍵(メカニカルキー)の形状を固有情報として利用してもよい。
【0072】
・ 無線ティーチペンダントのログイン処理において、無線ティーチペンダントTPの指紋読取部26による指紋読み取り、指紋情報の照合の各ステップを省略してもよい。これらを省略する場合には、すべての操作者にすべての権限レベルでのログインを可能としてもよいし、権限レベル毎にパスワードを設定してもよい。
【0073】
・ 指紋読み取り、指紋情報の照合の各ステップを省略するにあたり、無線ティーチペンダントTPの指紋読取部26そのものを省略してもよい。また、無線ティーチペンダントTPのキーボード23を操作することによって、指紋読み取り、指紋情報の照合の各ステップの有効/無効(省略)を切り替え可能としてもよい。このように有効/無効を切り替え可能とする場合、管理者権限レベルなど、しかるべき権限レベルでのログイン時にのみ、切り替え可能とすることが好ましい。
【0074】
・ 上記各実施形態では、無線ティーチペンダントTPのログイン処理を行った後に、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置Cのロボット制御部12との無線通信の接続の確立処理を行ったが、この順序を逆にしてもよい。
【0075】
・ 上記各実施形態では、ロボット制御装置Cの無線アクセスポイントAPについて、自身のネットワーク情報(SSID)を送信するのに代えて又は加えて、他の情報を送信してもよい。例えば、無線アクセスポイントAPやロボット制御装置Cに名称や番号を付しておき、その名称や番号に関する情報を送信するようにしてもよい。無線ティーチペンダントTPのディスプレイ22で通信可能な無線アクセスポイントAPを表示する際、ネットワーク情報だけでなくこれらの名称や番号を表示すれば、無線アクセスポイントAPを区別しやすい。
【0076】
・ 権限レベルは、上記各実施形態で例示した2つの権限レベルに限らず、他の権限レベルでもよい。また、設定される権限レベルも2つに限らず、3つ以上でもよい。
・ ロボット制御装置Cにおける制御装置本体CMの通信制御部14に、LANケーブルを介して有線ティーチペンダントを追加接続してもよい。この場合、通信制御部14は、無線ティーチペンダントTP及び有線ティーチペンダントのいずれか一方について通信の接続を確立する。
【符号の説明】
【0077】
R…ロボット、C…ロボット制御装置、12…ロボット制御部、14…通信制御部、TP…無線ティーチペンダント、21…ティーチペンダント制御部、26…指紋読取部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8