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特開2016-43714鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-43714(P2016-43714A)
(43)【公開日】2016年4月4日
(54)【発明の名称】鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム
(51)【国際特許分類】
   B61D 35/00 20060101AFI20160307BHJP
【FI】
   B61D35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-166928(P2014-166928)
(22)【出願日】2014年8月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室田 満秋
(72)【発明者】
【氏名】中尾 稔
(72)【発明者】
【氏名】中村 康介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 肇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英明
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(57)【要約】
【課題】停電時に汚物処理装置に電力及び圧縮空気を供給して、汚物処理装置を作動させることができる鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムを提供すること。
【解決手段】停電時に、通常電源20と汚物処理装置10との電気的な接続状態、及びメインバッテリ30と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態が遮断され、且つバックアップバッテリ50と汚物処理装置10との電気的な接続状態、及びバックアップバッテリ50と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態が確保される。よって、バックアップバッテリ50の電力を汚物処理装置10及び補助電動空気圧縮装置40に供給できる。また、圧縮空気がメイン配管を通って汚物処理装置10に供給される状態から、補助配管を通って汚物処理装置10に供給される状態へ切換わる。こうして、停電時に、補助電動空気圧縮装置40が生成した圧縮空気を汚物処理装置10に送り込むことができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に設けられて電力及び圧縮空気によって作動する汚物処理装置と、
電力によって駆動して圧縮空気を生成する電動空気圧縮装置と、
前記汚物処理装置に電力を供給可能な通常電源と、
前記電動空気圧縮装置に電力を供給可能なメインバッテリと、
前記汚物処理装置へ圧縮空気を送り込むための通常エア通路とを備えた鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、
停電時に電力を供給するためのバックアップバッテリと、
停電時に前記通常電源と前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記メインバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を遮断し、且つ前記バックアップバッテリと前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保する電源切換回路と、
前記電動空気圧縮装置から前記汚物処理装置へ圧縮空気を送り込むための補助エア通路と、
停電時に前記通常エア通路のエア供給状態を遮断し、且つ前記補助エア通路のエア供給状態を確保するエア通路切換手段と、
を設けたことを特徴とする鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、
前記電動空気圧縮装置は、パンタグラフを動かすための圧縮空気を貯留する補助エアタンクと、前記補助エアタンクに生成した圧縮空気を送り込む補助電動空気圧縮機とを備えた補助電動空気圧縮装置であることを特徴とする鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、
前記電源切換回路は、停電時から電力復旧したとき、前記通常電源と前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記メインバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保し、且つ前記バックアップバッテリと前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を遮断する停電検知リレーを有することを特徴とする鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載された鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、
前記通常電源と前記バックアップバッテリとが充電用回路で接続されていて、
前記充電用回路には、前記通常電源から前記バックアップバッテリへ電力を供給して前記バックアップバッテリを充電可能な充電器が設けられていることを特徴とする鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載された鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、
前記補助エア通路には、前記汚物処理装置へ送り込む圧縮空気の空気圧が不足しているか否かを検知する圧力スイッチが設けられていて、
前記電源切換回路は、前記圧力スイッチが前記空気圧の不足を検知したときにのみ、前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保することを特徴とする鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時に汚物処理装置を確実に作動させることができる鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許分献1に記載されているように、鉄道車両には汚物処理装置が設けられている。この汚物処理装置は、圧縮空気が供給されることによって、移送タンク内の排泄物を汚物タンクへ送り込むことができるようになっている。また、汚物処理装置は、電源回路及び制御回路を備えているため、電力が供給されることによって、作動できるようになっている。
【0003】
ここで、従来において、汚物処理装置に電力を供給するための電気回路を、図12を用いて説明する。図12に示すように、汚物処理装置210は通常電源220に電気的に接続されている。このため、通常時において、汚物処理装置210は、通常電源220から電力が供給されることによって作動している。また、この電気回路DK1において、停電時のように通常電源220からの電力供給が遮断された場合に備え、メインバッテリ230と補助電動空気圧縮装置240が設けられている。
【0004】
補助電動空気圧縮装置240は、図示しないパンタグラフを如何なる時でも動かすことができるように、パンタグラフに供給する圧縮空気を生成するものである。このため、補助電動空気圧縮装置240は、メインバッテリ230に電気的に接続されている。そして、メインバッテリ230は、図示しない照明、放送、列車無線等の重要機器に電気的に接続されるとともに、汚物処理装置210に電気的に接続されている。このため、この電気回路DK1では、停電時に、メインバッテリ230の電力が汚物処理装置210及び補助電動空気圧縮装置240に供給されることになる。
【0005】
また、従来において、汚物処理装置210に圧縮空気を供給するための空気回路(空気回路ツナギ図)を、図13を用いて説明する。図13に示すように、鉄道車両の進行方向に延びる1本のメイン配管310が、各車両の床下に配置されていて、圧縮空気がメイン配管310を流れるようになっている。メイン配管310を流れる圧縮空気は、鉄道車両に設けられている図示しないブレーキ制御装置、側引戸装置、車体傾斜装置等に供給される。また、メイン配管310から1本の分岐配管310dが分岐していて、汚物処理装置210に接続されている。このため、この空気回路KK1では、メイン配管310を流れる空気が分岐配管310dを通って汚物処理装置210に供給されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−106857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来では、長時間停電した場合に、電力及び圧縮空気が汚物処理装置に供給されなくなり、確実に作動させることができないという問題点があった。即ち、停電によって通常電源220からの電力供給が遮断されると、図12に示すように、汚物処理装置210は、通常電源220から電力を得ることができなくなるため、メインバッテリ230から電力を得る必要がある。これに対して、メインバッテリ230は、照明、放送、列車無線等の重要機器に対して優先的に電力を供給するようになっている。そして、メインバッテリ230は、圧縮空気を生成する補助電動空気圧縮装置240に電力を供給し続けると、やがてメインバッテリ230がすぐに上がってしまうことになる。こうして、停電時に、汚物処理装置210にメインバッテリ230の電力を供給することができないという問題点があった。
【0008】
また、停電時には、圧縮空気の消費が抑えられるようになっている。しかし、汚物処理装置210を作動させるためには、大量の圧縮空気を供給する必要がある。このため、停電時に、図13に示すように、仮に汚物処理装置210がメイン配管310を流れる圧縮空気を使用すると、空気回路KK1が落ちてしまうことがある。その結果、停電から電力復旧したとき、緊急ブレーキが作動した状態になるとともに、パンタグラフを動かすことができなくなる。こうして、停電時に、汚物処理装置210にメイン配管310を流れる圧縮空気を供給することができないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、停電時に汚物処理装置に電力及び圧縮空気を供給して、汚物処理装置を確実に作動させることができる鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムは、鉄道車両に設けられて電力及び圧縮空気によって作動する汚物処理装置と、電力によって駆動して圧縮空気を生成する電動空気圧縮装置と、前記汚物処理装置に電力を供給可能な通常電源と、前記電動空気圧縮装置に電力を供給可能なメインバッテリと、前記汚物処理装置へ圧縮空気を送り込むための通常エア通路とを備えたものであって、停電時に電力を供給するためのバックアップバッテリと、停電時に前記通常電源と前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記メインバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を遮断し、且つ前記バックアップバッテリと前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保する電源切換回路と、前記電動空気圧縮装置から前記汚物処理装置へ圧縮空気を送り込むための補助エア通路と、停電時に前記通常エア通路のエア供給状態を遮断し、且つ前記補助エア通路のエア供給状態を確保するエア通路切換手段と、を設けたことを特徴とする。
【0011】
この場合には、停電時に、電源切換回路が、通常電源と汚物処理装置との電気的な接続状態、及びメインバッテリと電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を遮断する。同時に、電源切換回路は、バックアップバッテリと汚物処理装置との電気的な接続状態、及びバックアップバッテリと電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保する。このため、停電時に、バックアップバッテリの電力を汚物処理装置及び電動空気圧縮装置に供給することができる。従って、汚物処理装置は、電気的に作動することができ、補助電動空気圧縮装置は、大量の圧縮空気を生成することができる。
【0012】
また、停電時に、エア通路切換手段により、通常エア通路のエア供給状態が遮断され、且つ補助エア通路のエア供給状態が確保される。このため、停電時に、電動空気圧縮装置が大量に生成した圧縮空気を補助エア通路を通して汚物処理装置に送り込むことができる。従って、停電時であっても、汚物処理装置に電力及び圧縮空気を供給することができ、確実に作動させることができる。
【0013】
また、本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、前記電動空気圧縮装置は、パンタグラフを動かすための圧縮空気を貯留する補助エアタンクと、前記補助エアタンクに生成した圧縮空気を送り込む補助電動空気圧縮機とを備えた補助電動空気圧縮装置であることが好ましい。
【0014】
この場合には、汚物処理装置に圧縮空気を送り込むための装置として、既存の補助電動空気圧縮装置を用いる。このため、新たな電動空気圧縮装置を設置する必要がなくて、既存設備を利用するため、スペース面及びコスト面において優れたシステムになる。
【0015】
また、本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、前記電源切換回路は、停電時から電力復旧したとき、前記通常電源と前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記メインバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保し、且つ前記バックアップバッテリと前記汚物処理装置との電気的な接続状態、及び前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を遮断する停電検知リレーを有することが好ましい。
【0016】
この場合には、停電時から電力復旧したとき、停電検知リレーによって、汚物処理装置では、バックアップバッテリからの電力供給から、通常電源からの電力供給へ自動的に切換えることができる。また、同時に、補助電動空気圧縮装置では、バックアップバッテリからの電力供給から、メインバッテリからの電力供給へ自動的に切換えることができる。
【0017】
また、本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、前記通常電源と前記バックアップバッテリとが充電用回路で接続されていて、前記充電用回路には、前記通常電源から前記バックアップバッテリへ電力を供給して前記バックアップバッテリを充電可能な充電器が設けられていることが好ましい。
【0018】
この場合には、通常時に、通常電源の電力がバックアップバッテリに供給されて、バックアップバッテリを充電できる。このため、停電時において、十分に充電されたバックアップバッテリの電力を、汚物処理装置及び補助電動空気圧縮装置に供給することができる。
【0019】
また、本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムにおいて、前記補助エア通路には、前記汚物処理装置へ送り込む圧縮空気の空気圧が不足しているか否かを検知する圧力スイッチが設けられていて、前記電源切換回路は、前記圧力スイッチが前記空気圧の不足を検知したときにのみ、前記バックアップバッテリと前記電動空気圧縮装置との電気的な接続状態を確保することが好ましい。
【0020】
この場合には、圧力スイッチが汚物処理装置へ送り込む圧縮空気の空気圧の不足を検知したときにのみ、バックアップバッテリと電動空気圧縮装置との電気的な接続状態が確保される。このため、このときには、バックアップバッテリから電動空気圧縮装置へ電力が供給され、汚物処理装置が圧縮空気を必要とする状況で、電動空気圧縮装置は圧縮空気を生成することができる。逆に言えば、汚物処理装置へ送り込む圧縮空気の空気圧が十分足りているときには、バックアップバッテリと電動空気圧縮装置との電気的な接続状態が遮断される。このため、このときには、バックアップバッテリから電動空気圧縮装置へ電力が供給されず、圧縮空気が無駄に生成されるのを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムによれば、停電時に汚物処理装置に電力及び圧縮空気を供給して、汚物処理装置を確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】汚物処理装置を模式的に示した図である。
図2】本実施形態において、汚物処理装置に電力を供給するための電気回路を示した図である。
図3】電気回路の動作を示したフローチャートである。
図4】通常時の電気回路の電力供給状態を示した図である。
図5】停電したときの電気回路の電力供給状態を示した図である。
図6】電源切換スイッチを押圧した後の電気回路の電力供給状態を示した図である。
図7】停電時から電力復旧した直後の電力供給状態を示した図である。
図8】リセットスイッチを押圧したときの電力供給状態を示した図である。
図9】本実施形態において、汚物処理装置に圧縮空気を供給するための空気回路を示した図である。
図10】通常時の空気回路で圧縮空気が流れる状態を示した図である。
図11】停電時の空気回路で圧縮空気が流れる状態を示した図である。
図12】従来において、汚物処理装置に電力を供給するための電気回路を示した図である。
図13】従来において、汚物処理装置に圧縮空気を供給するための空気回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、汚物処理装置10を模式的に示した図である。
【0024】
<汚物処理装置10の構成>
汚物処理装置10は、鉄道車両に設けられていて、図1に示すように、洋式便器11と、小便器12と、汚物タンク13とを備えている。洋式便器11及び小便器12は、それぞれ汚水配管14,15を介して汚物タンク13に接続されている。
【0025】
洋式便器11は、真空処理構造が採用されたものである。この洋式便器11では、排泄物を直接受けるボウル11aが移送タンク11bに接続されていて、移送タンク11bは汚水配管14を介して汚物タンク13に接続されている。
【0026】
ボウル11a内の排泄物を流す際、先ず、密閉された移送タンク11b内の圧力を下げて、真空引きが行われる。そして、ボウル11aと移送タンク11bとを連通状態にする。これにより、ボウル11a内の排泄物が移送タンク11bへ引き込まれる。
【0027】
次に、移送タンク11b内を密閉にして、移送タンク11bに圧縮空気を送り込み、移送タンク11b内を加圧する。そして、移送タンク11bと汚水配管14とを連通状態にする。これにより、移送タンク11b内の排泄物が押し出されて、汚水配管14を通って汚物タンク13へ送り込まれる。
【0028】
一方、小便器12では、排泄物が汚水配管15を通ってそのまま汚物タンク13へ流れる。汚水配管15には、ノーマルオープン型のホースバルブ16が設けられている。このホースバルブ16の開閉動作は、電力が供給されることによって制御されている。
【0029】
上述したように、加圧された移送タンク11bから排泄物が汚物タンク13へ送り込まれる際、汚物タンク13も加圧されることになる。これにより、汚物タンク13内の臭気が、汚水配管15及び小便器12を通って、車内へ漏れ出るおそれがある。従って、ホースバルブ16は、排泄物が汚物タンク13へ送り込まれる際、臭気が汚水配管15を逆流しないように、閉じられる。
【0030】
こうして、汚物処理装置10は、圧縮空気が供給されることによって排泄物を流すことができるとともに、電力が供給されることによってホースバルブ16等の機器を操作できるようになっている。ここで、図2は、本実施形態において、汚物処理装置10に電力を供給するための電気回路DKを示した図である。
【0031】
<電気回路DKの構成>
図2に示すように、電気回路DKでは、汚物処理装置10の他に、通常電源20と、メインバッテリ30と、補助電動空気圧縮装置40とが設けられている。なお、汚物処理装置10は、電源回路17と制御回路18とを有し、電源回路17及び制御回路18に電力が供給されることによって作動する。
【0032】
通常電源20は、通常時に、汚物処理装置10に電力を供給するとともに、図示しない照明、放送、列車無線等の重要機器に電力を供給するものである。この通常電源20は、導線21を介して上記した重要機器に電気的に接続されている。
【0033】
導線21から分岐した導線22は、汚物処理装置10の電源回路17に電気的に接続されていて、リレー70の接点70aが閉じている状態で電源回路17に電力供給可能である。また、導線21から分岐した導線23は、汚物処理装置10の制御回路18に電気的に接続されていて、リレー70の接点70bが閉じている状態で制御回路18に電力供給可能である。
【0034】
メインバッテリ30は、停電時のように通常電源20からの電力供給が遮断された場合であっても、重要機器に電力を供給するものである。メインバッテリ30は、導線31から分岐した導線32に電気的に接続されていて、導線31,32を介して重要機器に電力を供給できるようになっている。なお、メインバッテリ30は、停電時であっても確実に重要機器に電力を供給できるように、通常電源20とは電気的に切り離されている。
【0035】
補助電動空気圧縮装置40は、図示しないパンタグラフを如何なる時でも動かすことができるように、パンタグラフに供給する圧縮空気を生成するための既存の電動空気圧縮装置である。この補助電動空気圧縮装置40は、導線31から分岐した導線41に電気的に接続されていて、リレー80の接点80aが閉じている状態でメインバッテリ30から電力が供給される。
【0036】
ところで、鉄道車両が事故等によって停電すると、通常電源20からの電力供給が遮断されることになる。このため、汚物処理装置10は、通常電源20から電力を得ることができない。また、停電時に、メインバッテリ30は、重要機器に優先的に電力を供給するようになっている。このため、補助電動空気圧縮装置40及び汚物処理装置10は、メインバッテリ30が上がってしまうことを防止するため、メインバッテリ30から電力を得ることが好ましくない。
【0037】
そこで、本実施形態では、メインバッテリ30とは別に、バックアップバッテリ50が新たに設けられている。更に、従来の電気回路に、電源切換回路60が新たに設けられている。この電源切換回路60は、通常電源20と汚物処理装置10との電気的な接続状態を遮断し、バックアップバッテリ50と汚物処理装置10との電気的な接続状態を確保するようになっている。また、電源切換回路60は、メインバッテリ30と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態を遮断し、バックアップバッテリ50と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態を確保するようになっている。
【0038】
バックアップバッテリ50は、停電時に、汚物処理装置10及び補助電動空気圧縮装置40に電力を供給するものである。ここで、導線51の一端51aが補助電動空気圧縮装置40に電気的に接続され、導線51の他端51bがバックアップバッテリ50に電気的に接続されている。そして、通常時には、リレー80の接点80bが開いているため、バックアップバッテリ50の電力が、補助電動空気圧縮装置40に供給されないようになっている。
【0039】
また、バックアップバッテリ50と通常電源20とを電気的に接続するために、導線52が設けられている。導線52の一端52aは導線51に接続され、導線52の他端52bは導線21に接続されている。この導線52には充電器100が設けられていて、通常時には、リレー90の接点90aが閉じている。このため、通常時には、通常電源20の電力がバックアップバッテリ50に供給されて、バックアップバッテリ50が充電されるようになっている。
【0040】
ここで、導線21のうちバックアップバッテリ50から導線52の一端52aまでの部分と、導線52と、導線21のうち通常電源20から導線52の他端52bまでの部分とが、本発明の「充電用回路」に相当する。
【0041】
電源切換回路60では、導線51から分岐した導線61が、上流側(図2上側)と下流側(図2下側)とで並列状になっている。導線61の上流側の並列状の部分のうち一方では、電源切換スイッチ62とリレー90の接点90bが設けられ、他方では、リレー70の接点70fとリレー90の接点90cとリセットスイッチ65が設けられている。また、導線61の下流側の並列状の部分のうち一方では、圧力スイッチ63とリレー80のコイル80cが設けられ、他方では、リレー70のコイル70cが設けられている。
【0042】
また、導線61から分岐した導線66は、汚物処理装置10の電源回路17に電気的に接続されている。そして、電源回路17は、通常時にリレー70の接点70dが開いているため、バックアップバッテリ50から電力が供給されない。また、導線61から分岐した導線67は、汚物処理装置10の制御回路18に電気的に接続されている。そして、制御回路18は、通常時にリレー70の接点70eが開いているため、バックアップバッテリ50から電力が供給されない。
【0043】
電源切換スイッチ62は、手動で押圧されると接点を閉じて、通常電源20からの電源系統をバックアップバッテリ50からの電源系統に切換えるものである。圧力スイッチ63は、汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧が不足しているか否かを検知するものである。そして、圧力スイッチ63は、その空気圧の不足を検知したときにのみ、接点を閉じるようになっている。リセットスイッチ65は、手動で押圧されると接点を開いて、バックアップバッテリ50からの電源系統を通常電源20からの電源系統に切換えるものである。
【0044】
リレー70は、コイル70cが通電されて励磁すると、接点70a,70dを開閉するとともに、接点70b,70eを開閉するようになっている。また、リレー80は、コイル80cが通電されて励磁すると、接点80a,80bを開閉するようになっている。
【0045】
ここで、通常電源20から延びる導線21には、リレー90のコイル90dが設けられている。リレー90のコイル90dは、通常時に通常電源20によって、通電されている。このため、通常時に、リレー90のコイル90dが励磁することで、リレー90の接点90b,90cが開くようになっている。
【0046】
一方、リレー90のコイル90dは、停電時に通常電源20の電力供給が遮断されるため、通電されなくなる。このため、停電時に、リレー90のコイル90dが消磁して、リレー90の接点90b,90cが閉じるようになっている。なお、リレー90の接点90aは、コイル90dが励磁されることで閉じ、コイル90dが消磁されることで開くようになっている。このリレー90が、本発明の「停電検知リレー」に相当する。
【0047】
次に、本実施形態の電気回路DKの動作について、図3図8を用いて説明する。図3は、電気回路DKの動作を示したフローチャートである。なお、図4図8において、通電状態である導線が太線で示されている。
【0048】
<通常時>
図4は、通常時の電気回路DKの電力供給状態を示した図である。図4に示すように、通常時(図3のステップS1)、通常電源20からの電力供給が確保されている。これにより、通常電源20の電力は、汚物処理装置10の電源回路17及び制御回路18に供給される。このため、汚物処理装置10は、電気的に作動することができる。また、通常電源20の電力は、充電器100によってバックアップバッテリ50に供給される。このため、バックアップバッテリ50を充電することができる。
【0049】
一方、リレー90のコイル90dは通電されて励磁しているため、接点90b,90cが開いている。このため、バックアップバッテリ50の電力は、電源切換回路60へ供給されない。また、リレー80の接点80aが閉じているのに対して、リレー80の接点80bが開いている。このため、補助電動空気圧縮装置40は、メインバッテリ30から電力を得ることができる。
【0050】
<停電したとき>
図5は、停電したときの電気回路DKの電力供給状態を示した図である。図5に示すように、停電したとき(図3のステップS2)、通常電源20からの電力供給が遮断される。これにより、汚物処理装置10の電源回路17及び制御回路18は、電力を得ることができなくなる。そして、リレー90のコイル90dが通電されなくて消磁するため、接点90b,90cが閉じる。なお、このときには、接点90aが開くため、バックアップバッテリ50の電力が通常電源20に供給されることはない。
【0051】
<停電時に電源切換スイッチを押圧したとき>
図6は、電源切換スイッチ62を押圧した後の電気回路DKの電力供給状態を示した図である。停電した後、電源切換スイッチ62を押圧すると(図3のステップS3)、図5に示した状態から電源切換スイッチ62の接点が閉じる。これにより、リレー70のコイル70c及びリレー80のコイル80cが通電される。なお、圧力スイッチ63は、汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧が不足していることを検知していて、その接点を閉じている。
【0052】
この結果、リレー70のコイル70cが励磁されるため、図5に示した状態から図6に示すように、接点70aが開くのに対して接点70dが閉じ、且つ接点70bが開くのに対して接点70eが閉じる。これにより、バックアップバッテリ50の電力は、汚物処理装置10の電源回路17及び制御回路18に供給される。こうして、汚物処理装置10では、停電時に、通常電源20からの電力供給から、バックアップバッテリ50からの電力供給に切換えられて、電気的に作動することができる。
【0053】
また、リレー80のコイル80cが励磁されるため、接点80aが開くのに対して接点80bが閉じる。これにより、バックアップバッテリ50の電力は、補助電動空気圧縮装置40に供給される。こうして、補助電動空気圧縮装置40では、停電時に電源切換スイッチ62が押圧されることで、メインバッテリ30からの電力供給から、バックアップバッテリ50からの電力供給に切換えられて、駆動することができる。
【0054】
従って、補助電動空気圧縮装置40の駆動により、パンタグラフを動かすための圧縮空気を十分確保できて、停電時であってもパンタグラフが動かない事態を確実に防止できる。また、メインバッテリ30では、停電時に、補助電動空気圧縮装置40及び汚物処理装置10に電力を供給することがないため、照明、放送、列車無線等の重要機器に供給する電力を十分確保できる。
【0055】
この電源切換回路60では、図6に示すように、リレー70のコイル70cが励磁されると、接点70fが閉じる。このため、電流が導線61の上流側の並列状の部分のうち他方に流れるようになり、リレー70のコイル70cが励磁され続ける。これにより、接点70d,70eが閉じ且つ接点70a,70bが開いた状態が維持される。こうして、電源切換回路60は、自己保持回路になっている。
【0056】
<停電時から電力復旧したとき>
図7は、停電時から電力復旧した直後の電力供給状態を示した図である。図7に示すように、通常電源20からの電力供給が復活する(図3のステップ4)。これにより、リレー90のコイル90dが通電されて励磁して、リレー90の接点90b,90cが開く。このため、リレー70のコイル70c及びリレー80のコイル80cが通電されなくなって、消磁する。
【0057】
従って、図7に示した状態から図4に示すように、接点70aが閉じるのに対して接点70dが開き、且つ接点70bが閉じるのに対して接点70eが開く。こうして、汚物処理装置10では、停電時から電力復旧したとき、バックアップバッテリ50からの電力供給から、通常電源20からの電力供給へ自動的に切換えられるようになっている。
【0058】
また、図7に示した状態から図4に示すように、接点80aが閉じるのに対して接点80bが開く。こうして、補助電動空気圧縮装置40では、停電時から電力復旧したとき、バックアップバッテリ50からの電力供給から、メインバッテリ30からの電力供給へ自動的に切換えられるようになっている。
【0059】
<停電時にリセットスイッチを押圧したとき>
図8は、リセットスイッチ65を押圧したときの電力供給状態を示した図である。図6に示した停電時の状態からリセットスイッチ65を押圧すると(図3のステップS5)、図8に示すように、リセットスイッチ65の接点が開く。これにより、リレー70のコイル70c及びリレー80のコイル80cが通電されなくなって、消磁する。
【0060】
従って、図8に示した状態から図2に示すように、接点70aが閉じるのに対して接点70dが開き、且つ接点70bが閉じるのに対して接点70eが開く。また、接点80aが閉じるのに対して接点80bが開く。こうして、通常電源20の電力が復旧するのを待機した状態になる。そして、通常電源20の電力供給が復活すれば、図4に示すように、通常電源20の電力が汚物処理装置10の電源回路17及び制御回路18に供給され、メインバッテリ30の電力が補助電動空気圧縮装置40に供給されることになる。よって、リセットスイッチ65を手動で操作することによって、汚物処理装置10及び補助電動空気圧縮装置40の電源を切換えることができる。
【0061】
ところで、上述したように、汚物処理装置10は、電力だけでなく圧縮空気が供給されることによって、適切に作動することができる。このため、以下に、停電時であっても圧縮空気が汚物処理装置10に供給される構成について説明する。図9は、本実施形態において、汚物処理装置10に圧縮空気を供給するための空気回路KKを示した図(空気回路ツナギ図)である。
【0062】
<空気回路KKの構成>
図9に示すように、空気回路KKでは、鉄道車両の進行方向に延びる1本のメイン配管110が、各車両の床下に配置されている。このメイン配管110には、圧縮空気が流れるようになっている。ここで、図9には、2つの車両を跨ぐ空気回路が示されていて、図9の中央に2つの車両を連結する連結器120が示されている。
【0063】
メイン配管110は、図示しない分岐した配管を介して、各車両に設けられたブレーキ制御装置、側引戸装置、車体傾斜装置等に接続されている。このため、メイン配管110を流れる圧縮空気が、ブレーキ制御装置、側引戸装置、車体傾斜装置に送り込まれて、これら各装置が作動するようになっている。
【0064】
ここで、図9の左側のメイン配管110をメイン配管110aと呼び、図9の右側のメイン配管110をメイン配管110bと呼ぶことにする。メイン配管110a,110bを流れる圧縮空気は、連結器120を介して互いに行き来することができるようになっている。
【0065】
上述した補助電動空気圧縮装置40は、パンタグラフを動かすための圧縮空気を貯留する補助エアタンク42と、補助エアタンク42に生成した圧縮空気を送り込む補助電動空気圧縮機43とを備えている。補助エアタンク42は、メイン配管110aから分岐した分岐配管110cに接続されている。なお、上述した電気回路DKにおいて、補助電動空気圧縮装置40に供給される電力は、詳細には補助電動空気圧縮機43に送り込まれている。
【0066】
また、上述した汚物処理装置10は、メイン配管110bから分岐した分岐配管110dに接続されている。このため、通常時には、メイン配管110bを流れる圧縮空気が分岐配管110dを通って汚物処理装置10に送り込まれて、汚物処理装置10が作動する。
【0067】
ところで、停電時には、圧縮空気の消費が抑えられるようになっている。しかし、汚物処理装置10を作動させるには、大量の圧縮空気を供給する必要がある。このため、仮に汚物処理装置10がメイン配管110bを流れる圧縮空気を使用すると、空気回路KKが落ちてしまうおそれがある。
【0068】
そこで、本実施形態では、既存の補助電動空気圧縮装置40を用いて、停電時に汚物処理装置10に圧縮空気を供給することに特徴がある。即ち、停電時であっても、上述したように、バックアップバッテリ50から補助電動空気圧縮機43に電力が供給される。このため、補助電動空気圧縮機43は、大量の圧縮空気を生成して、生成した圧縮空気を補助エアタンク42に送り込むことができる。これにより、補助エアタンク42内の圧縮空気を汚物処理装置10に供給して、汚物処理装置10を作動させることができる。以下、補助エアタンク42内の圧縮空気を汚物処理装置10に供給する構成について説明する。
【0069】
空気回路KKでは、従来の空気回路に対して、補助配管130と三方弁131及び補助配管140と三方弁141が、新たに設けられている。補助配管130の一端130aは、連結器120に接続され、補助配管130の他端130bは、分岐配管110cの途中に接続されている。
【0070】
三方弁131は、補助配管130の他端130bに設けられている。このため、三方弁131を手動で回すことで、補助エアタンク42内の圧縮空気が分岐配管110cを通ってメイン配管110aに送り込まれる状態と、補助エアタンク42内の圧縮空気が分岐配管110cの一部を通って補助配管130に送り込まれる状態とを切換えることができる。なお、三方弁131は、簡単に操作できるように、床下ではなく車内に配置されている。
【0071】
補助配管140の一端140aは、連結器120に接続され、補助配管140の他端140bは、分岐配管110dの途中に接続されている。補助配管130,140を流れる圧縮空気は、連結器120を介して互いに行き来することができるようになっている。
【0072】
三方弁141は、補助配管140の他端140bに設けられている。このため、三方弁141を手動で操作することで、補助配管140内の圧縮空気が分岐配管110dの一部を通って汚物処理装置10に送り込まれる状態と、メイン配管110b内の圧縮空気が分岐配管110dを通って汚物処理装置10に送り込まれる状態とを切換えることができる。なお、三方弁141は、簡単に操作できるように、床下ではなく車内に配置されている。
【0073】
これら三方弁131,141が、本発明の「エア通路切換手段」に相当する。また、メイン配管110a,110bと分岐配管110dとが、本発明の「通常エア通路」に相当する。また、分岐配管110cの一部と補助配管130,140と分岐配管110dの一部とが、本発明の「補助エア通路」に相当する。
【0074】
ここで、図9に示すように、電気回路DKで説明した圧力スイッチ63(図4参照)は、補助配管140内の圧縮空気の空気圧を検知できるように、補助配管140に設けられている。この圧力スイッチ63は、補助配管140から汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧が不足していると検知したときにのみ、接点を閉じる。このため、汚物処理装置10が圧縮空気を必要としている状況で、補助電動空気圧縮装置40が生成した圧縮空気を汚物処理装置10に送り込むようになっている。
【0075】
言い換えると、補助配管140から汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧が十分足りているときには、圧力スイッチ63の接点が開く。これにより、リレー80のコイル80cが通電されなくて消磁するため、接点80bが開くのに対して接点80aが閉じる(図4参照)。従って、バックアップバッテリ50から補助電動空気圧縮装置40(補助電動空気圧縮機43)へ電力が供給されず、圧縮空気が無駄に生成されるのを防止できるようになっている。
【0076】
次に、本実施形態の空気回路KKの動作について、図10及び図11を用いて説明する。図10及び図11において、圧縮空気が流れる配管が太線で示されている。
【0077】
<通常時>
図10は、通常時に空気回路KKで圧縮空気が流れる状態を示した図である。図10に示すように、通常時、補助エアタンク42内の圧縮空気は、分岐配管110cを通って、メイン配管110aに送り込まれる。また、メイン配管110bを流れる圧縮空気は、分岐配管110dを通って、汚物処理装置10に送り込まれる。こうして、通常時に汚物処理装置10は作動することができる。なお、メイン配管110a,110bを流れる圧縮空気は、ブレーキ制御装置、側引戸装置、車体傾斜装置にも送り込まれるようになっている。
【0078】
<停電時>
図11は、停電時に空気回路KKで圧縮空気が流れる状態を示した図である。停電時では、上述したように、補助電動空気圧縮機43は、バックアップバッテリ50からの電力供給によって(図6参照)、大量の圧縮空気を生成する。これにより、補助エアタンク42は、停電時であっても大量の圧縮空気を供給することができる状態になる。
【0079】
そこで、停電時において、三方弁131及び三方弁141を手動で切換える。これにより、補助エアタンク42内の圧縮空気は、分岐配管110cの一部と補助配管130,140と分岐配管110dの一部を通って、汚物処理装置10に送り込まれる。このため、停電時であっても、汚物処理装置10は、メイン配管110a,110bを流れる圧縮空気を使用せずに、作動することができる。
【0080】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、停電時に、電源切換スイッチ62を押圧すると、図6に示すように、電源切換回路60が、通常電源20と汚物処理装置10との電気的な接続状態、及びメインバッテリ30と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態を遮断する。同時に、電源切換回路60は、バックアップバッテリ50と汚物処理装置10との電気的な接続状態、及びバックアップバッテリ50と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態を確保する。このため、停電時に、バックアップバッテリ50の電力を汚物処理装置10及び補助電動空気圧縮装置40に供給することができる。従って、汚物処理装置10は、電気的に作動することができ、補助電動空気圧縮装置40は、大量の圧縮空気を生成することができる。
【0081】
また、停電時に、図11に示すように、三方弁131,141を手動で回すと、圧縮空気がメイン配管110a,110bと分岐配管110dを通って汚物処理装置10に供給される状態から、圧縮空気が分岐配管110cの一部と補助配管130,140と分岐配管110dの一部を通って汚物処理装置10に供給される状態へ、切換わる。このため、停電時に、補助電動空気圧縮装置40が大量に生成した圧縮空気を汚物処理装置10に送り込むことができる。従って、停電時であっても、汚物処理装置10に電力及び圧縮空気を供給することができ、確実に作動させることができる。
【0082】
具体的に、汚物処理装置10では、図1に示すように、停電時に供給される圧縮空気によって、移送タンク11b内の排泄物を汚物タンク13へ流すことができる。また、停電時に供給される電力によって、ホースバルブ16等を適切に開閉させることができ、汚物タンク13内の臭気が、汚水配管15及び小便器12を通って、車内へ漏れ出ることを防止できる。こうして、停電時であっても、汚物処理装置10を適切に作動させることができ、万が一の時の旅客サービスを向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、汚物処理装置10に圧縮空気を送り込むための装置として、既存の補助電動空気圧縮装置40を用いている。このため、新たな電動空気圧縮装置を設置する必要がなくて、既存設備を利用するため、スペース面及びコスト面において優れたシステムになる。
【0084】
また、本実施形態によれば、停電時から電力復旧したとき、図7に示した状態から図4に示すように、リレー90によって、汚物処理装置10では、バックアップバッテリ50からの電力供給から、通常電源20からの電力供給へ自動的に切換えることができる。また、同時に、補助電動空気圧縮装置40では、バックアップバッテリ50からの電力供給から、メインバッテリ30からの電力供給へ自動的に切換えることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、図4に示すように、充電器100が設けられているため、通常時に、通常電源20の電力がバックアップバッテリ50に供給されて、バックアップバッテリ50を充電できる。このため、停電時において、十分に充電されたバックアップバッテリ50の電力を、汚物処理装置10及び補助電動空気圧縮装置40に供給することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、図6に示すように、圧力スイッチ63が汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧の不足を検知したときにのみ、バックアップバッテリ50と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態が確保される。このため、このときには、バックアップバッテリ50から補助電動空気圧縮装置40へ電力が供給され、汚物処理装置10が圧縮空気を必要とする状況で、補助電動空気圧縮装置40が圧縮空気を生成することができる。逆に言えば、汚物処理装置10へ送り込む圧縮空気の空気圧が十分足りているときには、バックアップバッテリ50と補助電動空気圧縮装置40との電気的な接続状態が遮断される。このため、このときには、バックアップバッテリ50から補助電動空気圧縮装置40へ電力が供給されず、圧縮空気が無駄に生成されるのを防止できる。
【0087】
以上、本発明に係る鉄道車両用汚物処理装置のバックアップシステムの実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、汚物処理装置10に圧縮空気を送り込むために、既存の補助電動空気圧縮装置40を用いたが、新たに設置する電動空気圧縮装置を用いても良い。
また、本実施形態の電気回路DKにおいて、本発明の「電源切換回路」を構成する際に、リレー、スイッチの数及び配置は、適宜変更可能である。
また、本実施形態の空気回路KKにおいて、本発明の「通常エア通路」、「補助エア通路」「エア通路切換手段」を構成する際に、配管、三方弁の数及び配置は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 汚物処理装置
20 通常電源
30 メインバッテリ
40 補助電動空気圧縮装置
42 補助エアタンク
43 補助電動空気圧縮機
50 バックアップバッテリ
60 電源切換回路
62 電源切換スイッチ
63 圧力スイッチ
65 リセットスイッチ
70,80,90 リレー
100 充電器
110,110a,110b メイン配管
110c,110d 分岐配管
130,140 補助配管
131,141 三方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13