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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-44405(P2016-44405A)
(43)【公開日】2016年4月4日
(54)【発明の名称】地盤の液状化対策工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20160307BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20160307BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20160307BHJP
【FI】
   E02D3/10
   E02D27/34
   E02D27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-167140(P2014-167140)
(22)【出願日】2014年8月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人地盤工学会が、平成26年7月1日に発行した第49回地盤工学研究発表会DVD−ROM 北九州国際会議場にて、平成26年7月17日に開催した第49回地盤工学研究発表会
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】大林 淳
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉富 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】秋間 健
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】平田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】高岡 雄二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬藤 慎一
【テーマコード(参考)】
2D043
2D046
【Fターム(参考)】
2D043DA03
2D043DA04
2D043DA09
2D043EB02
2D046BA00
2D046DA17
(57)【要約】
【課題】マンションやオフィスビル等の敷地における外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤の液状化対策として、工事の費用を安くすることができ、その工事の期間も短縮することのできる地盤の液状化対策工法を提供する。
【解決手段】砕石、礫を用いたグラベルドレーン21を地盤中に所定の間隔で複数設置し、このグラベルドレーン21を地盤中に複数設置することによって、グラベルドレーン21の周囲に地震時に水圧の上昇が抑止されて所定の地盤強度を保つようになる強度保持地盤22を形成し、この複数のグラベルドレーン21の周囲の強度保持地盤22の上に表層版23を掛け渡すようにし、この表層版23を対象地盤範囲全域にわたって設置するようにした地盤の液状化対策工法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石、礫、人工ドレーン材等を用いた柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で複数設置し、この柱状ドレーンを地盤中に複数設置することによって、柱状ドレーンの周囲に地震時に水圧の上昇が抑止されて所定の地盤強度を保つようになる強度保持地盤を形成し、
この複数の柱状ドレーンの周囲の強度保持地盤の上に表層版を掛け渡すようにし、この表層版を対象地盤範囲全域にわたって設置するようにしたことを特徴とする地盤の液状化対策工法。
【請求項2】
前記表層版は、浅層混合処理工法により造成される浅層改良層、または路盤と舗装表面からなる舗装層、または鉄筋スラブ、またはジオテキスタイル等の敷設物、または金属製の版状物、あるいはこれらの複合物であることを特徴とする請求項1記載の地盤の液状化対策工法。
【請求項3】
前記柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で設置する際の間隔は、柱状ドレーン間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比0.6〜0.8の値に基づいて算出するようにし、柱状ドレーンと柱状ドレーンの周囲に形成する強度保持地盤との支持力及び地盤自体の強度による支持力で表層版を支持できる剛性を有するようにしたことを特徴とする請求項1及び2記載の地盤の液状化対策工法。
【請求項4】
前記柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で設置する際の間隔は、柱状ドレーン間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比0.8〜0.95の値に基づいて算出するようにし、柱状ドレーンと柱状ドレーンの周囲に形成する強度保持地盤との支持力で表層版を支持できる剛性を有するようにしたことを特徴とする請求項1及び2記載の地盤の液状化対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションやオフィスビル等の敷地における建物本体の周囲の駐車場や玄関アプローチや駐輪スペース等の簡易構造物が存在する外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤において、地震時の液状化による地盤沈下を低減する地盤の液状化対策工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震時の地盤の液状化対策としては、砕石や礫を用いたグラベルドレーンを地盤中に複数設置し、この設置したグラベルドレーンにより、地震時に生じる過剰間隙水圧を早期に消散させてその上昇を抑えて液状化を防止するグラベルドレーン工法という地盤の液状化対策工法が知られていた。
【0003】
このグラベルドレーン工法は、施工機械によりケーシングパイプを地盤の所定の深さまで挿入し、挿入後、砕石や礫をケーシングパイプ内に投入し、そして、ケーシングパイプを引き抜きながら、砕石や礫を排出することにより、ここに砕石や礫を残置し、これによって、地盤中に砕石や礫を用いたグラベルドレーンを造成して設置する。そして、このグラベルドレーンの設置を、対象地盤範囲全域にわたって所定の間隔にて設置するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来のグラベルドレーン工法にあっては、地震時の地盤の液状化を確実に防止するため、設置するグラベルドレーンの設置の間隔を小さくする必要があり、このため、グラベルドレーンを対象地盤範囲全域にわたって設置する際、多数のグラベルドレーンを設置しなければならず、施工が非常に大掛かりなものとなり、工事の費用が高くなると共に、その工事の期間も長くなるといったことがあった。
【0005】
このような従来のグラベルドレーン工法は、地震時の地盤の液状化を確実に防止することを目的としていることから、マンションやオフィスビル等の建物本体の地盤における液状化対策としては最適であるものの、その一方、マンションやオフィスビル等の敷地において、建物本体の周囲の駐車場や玄関アプローチや駐輪スペース等の簡易構造物が存在する外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤では、地盤の液状化による大きな地盤沈下を抑え、かつ不等沈下を抑制することで、地盤の液状化対策として十分であるため、ここまで大掛かりな施工を行う必要がなく、要するに、マンションやオフィスビル等の敷地における外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤における液状化対策としては、従来のグラベルドレーン工法を用いた施工を行うことは費用対効果の面で不経済となるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、マンションやオフィスビル等の敷地における外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤の液状化対策として、工事の費用を安くすることができ、その工事の期間も短縮することのできる地盤の液状化対策工法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、砕石、礫、人工ドレーン材等を用いた柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で複数設置し、この柱状ドレーンを地盤中に複数設置することによって、柱状ドレーンの周囲に地震時に水圧の上昇が抑止されて所定の地盤強度を保つようになる強度保持地盤を形成し、この複数の柱状ドレーンの周囲の強度保持地盤の上に表層版を掛け渡すようにし、この表層版を対象地盤範囲全域にわたって設置するようにした地盤の液状化対策工法である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、表層版は、浅層混合処理工法により造成される浅層改良層、または路盤と舗装表面からなる舗装層、または鉄筋スラブ、またはジオテキスタイル等の敷設物、または金属製の版状物、あるいはこれらの複合物である地盤の液状化対策工法である。
【0009】
第三の発明は、第一又は第二の発明において、柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で設置する際の間隔は、柱状ドレーン間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比0.6〜0.8の値に基づいて算出するようにし、柱状ドレーンと柱状ドレーンの周囲に形成する強度保持地盤との支持力及び地盤自体の強度による支持力で表層版を支持できる剛性を有するようにした地盤の液状化対策工法である。
【0010】
第四の発明は、第一又は第二の発明において、柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で設置する際の間隔は、柱状ドレーン間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比0.8〜0.95の値に基づいて算出するようにし、柱状ドレーンと柱状ドレーンの周囲に形成する強度保持地盤との支持力で表層版を支持できる剛性を有するようにした地盤の液状化対策工法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱状ドレーンを地盤中に所定の間隔で複数設置し、この柱状ドレーンを地盤中に複数設置することによって、柱状ドレーンの周囲に地震時に水圧の上昇が抑止されて所定の地盤強度を保つようになる強度保持地盤を形成し、この複数の柱状ドレーンの周囲の強度保持地盤の上に表層版を掛け渡すようにし、この表層版を対象地盤範囲全域にわたって設置するようにしたことにより、液状化による大きな地盤沈下を抑え、かつ不等沈下を抑制しつつ、このグラベルドレーンの間隔を広い間隔にすることができる。これにより、マンションやオフィスビル等の敷地における外構部の地盤、あるいは戸建住宅等の軽微な建物の地盤において、施工する際、グラベルドレーンの設置数を大幅に減らすことができ、グラベルドレーンの設置数を大幅に減らすことにより、工事の費用を安くすることができると共に、工事の期間についても短縮することができ、費用対効果の面でも極めて良好なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の地盤の液状化対策工法を用いて施工する場所の平面図である。
図2図1におけるA−A断面図である。
図3】本発明の地盤の液状化対策工法を示す説明図である。
図4】(a)本発明におけるグラベルドレーンの設置する位置関係を示す平面図である。(b)本発明におけるグラベルドレーンの設置する位置関係を示す平面図である。
図5】本発明の地盤の液状化対策工法の他の例を示す説明図である。
図6】(a)従来のグラベルドレーン工法によるグラベルドレーンの設置の間隔を示す説明図である。(b)本発明の地盤の液状化対策工法によるグラベルドレーンの設置の間隔を示す説明図である。
図7】体積圧縮係数と過剰間隙水圧比との関係を示す図表である。
図8】本発明の地盤の液状化対策工法のグラベルドレーン間の水の流れを示す説明図である。
図9】本発明の地盤の液状化対策工法の他の例を示す説明図である。
図10】本発明の地盤の液状化対策工法に関する実験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の地盤の液状化対策工法の一実施形態について説明する。
本発明の地盤の液状化対策工法を用いて施工する場所は、マンションやオフィスビル等の敷地において、このマンションやオフィスビル等の建物本体の周囲の駐車場や玄関アプローチや駐輪スペース等の簡易構造物が存在する外構部の地盤である。ただし、施工する場所としては、ここに限定されるものではなく、戸建住宅等の軽微な建物の地盤やその他の地盤でも良い。
【0014】
このマンションやオフィスビル等の敷地1における外構部2について述べると、マンションの敷地1にあっては、図1に示すように、建物本体3であるマンションが存在すると共に、これ以外にも、このマンションの周囲に、駐車場4、玄関アプローチ5、ゴミ置き場6、電気及び機械室7、駐輪スペース8といった簡易構造物が存在しているが、外構部2とは、この建物本体3であるマンションの周囲に存在する簡易構造物のことである。
【0015】
そして、このようなマンションの敷地1の地盤としては、たとえば、図2に示すように、深いところに硬い地層となる支持層11が存在し、この支持層11の上に非液状化層12が存在し、この非液状化層12の上に液状化層13が地表面近くまで存在している。
【0016】
そして、このような敷地1に建物本体3であるマンションを建築する場合、マンション直下にあっては、深いところに存在する支持層11まで達する支持杭15を多数構築すると共に、さらに地盤の締固めによって、地盤をより密にし、土の間隙比の減少を図るようにする。これにより、建物本体3であるマンションに対しては十分な液状化対策が施され、建物本体3を確実に支持するようにしている。
【0017】
一方、建物本体3であるマンションの周囲の駐車場4や玄関アプローチ5や駐輪スペース8等の簡易構造物が存在する敷地1内の外構部2においては、この外構部2を含む周辺の地盤を対象地盤範囲とし、この対象地盤範囲を、次のような本発明の地盤の液状化対策工法を用いて施工する。
【0018】
図3に示すように、地盤の液状化対策工法としては、砕石や礫を用いた柱状ドレーンであるグラベルドレーン21を、対象地盤範囲である敷地1内の外構部2において地盤中に所定の間隔で複数設置する。なお、柱状ドレーンとしては、グラベルドレーン21に限定されるものではなく、人工ドレーン材を用いた人工ドレーン等といった他の柱状ドレーンでも良い。
【0019】
そして、このグラベルドレーン21を地盤中に複数設置することによって、各グラベルドレーン21の周囲に地震時に水圧の上昇が抑止されて所定の地盤強度を保つようになる強度保持地盤22をそれぞれ形成する。
【0020】
さらに、地盤中に複数設置したグラベルドレーン21の周囲の強度保持地盤22の上に表層版23を掛け渡すようにし、この表層版23を対象地盤範囲全域にわたって設置するようにする。
【0021】
これを詳細に述べると、まず、グラベルドレーン21の設置作業は、従来と同様のグラベルドレーン工法によって行うものであって、施工機械によりケーシングパイプを地盤の所定の深さまで挿入し、挿入後、砕石や礫をケーシングパイプ内に投入し、そして、ケーシングパイプを引き抜きながら、砕石や礫を排出することにより、ここに砕石や礫を残置し、グラベルドレーン21を造成して設置する。
【0022】
このように設置したグラベルドレーン21にあっては、地表面もしくは路盤から液状化層に達するようにし、具体的には液状化層の下端まで達するような深さにしており、このグラベルドレーン21により、地震時に地盤中に生じる過剰間隙水を上方に排水して過剰間隙水圧を早期に消散させてその上昇を抑えることにより液状化を防止するようにしている。
【0023】
そして、この複数のグラベルドレーン21において、その設置する位置としては、図4(a)に示すように、対象地盤範囲において平面視で縦横方向に規則的に所定の間隔をもった位置に設置するようにし、このときの位置関係は、設置する位置を線で結ぶと格子状(多数の正方形が現れる)になるものである。ただし、この位置関係については、これに限定されるものではなく、たとえば、図4(b)に示すように、縦方向における上下の位置を横方向に半分ずらすことで、設置する位置を線で結ぶと多数の正三角形が現れるようになるもの等の他のものでも良い。
【0024】
このようなグラベルドレーン21を地盤中に設置することによって、グラベルドレーン21の周囲に強度保持地盤22を形成する。この強度保持地盤22は、設置されたグラベルドレーン21により、その周囲では常に水がグラベルドレーン21に流れ込むようになり、ここでの水圧が上がることがなく、これにより、地震時においても水圧の上昇が抑止されて常に地盤変形が起こらない所定の地盤強度が保たれるようになるものである。
【0025】
そして、地盤中に複数設置したグラベルドレーン21の周囲の強度保持地盤22の上に表層版23を掛け渡すようにする。この表層版23としては、路盤25と舗装表面26からなる舗装層27であって、具体的には砕石・砂利・砂等を敷き詰めて路盤25を形成し、その上に、非透水性のアスファルトによるアスファルト舗装によって舗装表面26を形成したものである。なお、舗装表面26については、アスファルト舗装に限定されるものではなく、コンクリート舗装等の他の舗装でも良い。この表層版23である路盤25と舗装表面26からなる舗装層27にあっては、実際の厚みとしては20cm〜50cm程度である。そして、この表層版23を、対象地盤範囲全域にわたって、隣接するグラベルドレーン21の周囲の強度保持地盤22の上に掛け渡すようにして設置する。
【0026】
また、この表層版23についても、上記の路盤25と舗装表面26からなる舗装層27に限定されるものではなく、図5に示すように、浅層混合処理工法により造成される浅層改良層28でも良い。この浅層改良層28は、地表面を平面的に30cm〜2m程度の深さまで掘削し、ここに石灰、セメント、セメント系の固化材等を混合しながら埋め戻し、これを締固めて固化させることで形成したものである。
【0027】
さらに、表層版23として、これら以外にも、鉄筋スラブ、または合成樹脂製や繊維製のシートであるジオテキスタイル等の敷設物、または格子状や板状の金属製の版状物、あるいはこれらの複合物であっても良い。
【0028】
なお、この表層版23において、その厚みにあっては、それぞれの場所の地盤に応じた最適な厚みにするものであって、上記の厚みに限定されるものではない。
【0029】
次に、グラベルドレーン21を地盤中に所定の間隔で設置する際の間隔の算出方法について説明する。このグラベルドレーン21の間隔は、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比の値に基づいて算出するようにしている。この過剰間隙水圧比とは、過剰間隙水圧を有効土かぶり圧で割った(過剰間隙水圧/有効土かぶり圧)ものであって、値が1.0となると液状化が進行するものである。
【0030】
これについて具体的に述べると、通常の従来のグラベルドレーン工法では、図6(a)に示すように、グラベルドレーン21の間隔を、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Paが0.3〜0.5といった値の範囲になるように、平均的な過剰間隙水圧比0.3〜0.5の値に基づいて算出するようにし、これにより、設置したグラベルドレーン21のみによって、地震時の地盤の液状化を確実に防止するようにしていた。このときのグラベルドレーン21の間隔としては、たとえば、0.8m〜1.2m程度といった狭い間隙となる。
【0031】
一方、本発明では、図6(b)に示すように、グラベルドレーン21の間隔を、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Pbが0.8といった値になるように、平均的な過剰間隙水圧比0.8の値に基づいて算出するようにし、ここにおいて、グラベルドレーン21とグラベルドレーン21の周囲に形成する強度保持地盤22との支持力及び地盤自体の強度による支持力で表層版23を支持できる剛性を有するようにする。なお、過剰間隙水圧比0.8程度の地盤であると、そこにはある程度の地盤自体の強度が存在しており、これによる支持力というものが生じるものである。これにより、設置したグラベルドレーン21と、その周囲に形成する強度保持地盤22と、強度保持地盤22の上に設置する表層版23を組み合わせることによって、液状化による大きな地盤沈下を抑え、かつ不等沈下を抑制するようにしている。このときのグラベルドレーン21の間隔としては、たとえば、1.6m〜2.4m程度かそれ以上といった広い間隔となり、この間隔は、通常の従来のグラベルドレーン工法における間隔の略倍となる。このようにグラベルドレーン21の間隔については、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Pbを液状化が進行する1.0の値に近い0.8の値に基づいて算出し、グラベルドレーン21の間隔を広い間隔にしている。このようにグラベルドレーン21の間隔を、通常の従来のグラベルドレーン工法における間隔の略倍といった広い間隔にすることで、グラベルドレーン21を設置する際の設置する本数を1/4に減らすことができ、本数を大幅に減らすことが可能となる。
【0032】
なお、この図6(a)及び(b)には、隣接するグラベルドレーン21間における水圧分布Wのイメージがそれぞれ示されているが、この水圧分布Wでは、隣接するグラベルドレーン21間の中央が一番水圧が高くなり、グラベルドレーン21に近づくにつれて水圧が下がるようになっている。
【0033】
また、このグラベルドレーン21の間隔の算出において、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Pbが0.8といった値になるように、平均的な過剰間隙水圧比0.8の値に基づいて算出するようにし、グラベルドレーン21とグラベルドレーン21の周囲に形成する強度保持地盤22との支持力及び地盤自体の強度による支持力で表層版23を支持できる剛性を有するようにしていたが、これを、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Pbが0.6〜0.8といった値の範囲になるように、平均的な過剰間隙水圧比0.6〜0.8の値に基づいて算出するようにし、グラベルドレーン21とグラベルドレーン21の周囲に形成する強度保持地盤22との支持力及び地盤自体の強度による支持力で表層版23を支持できる剛性を有するようにしても良い。このとき、過剰間隙水圧比0.6〜0.8の値において、0.6に近いほど地盤自体の強度は強くなるものである。
【0034】
この平均的な過剰間隙水圧Pbを0.6〜0.8といった値の範囲にすることは、まず、図7に示すように、体積圧縮係数と過剰間隙水圧比との関係といったものが知られているが、この関係から、通常の従来のグラベルドレーン工法では、この体積圧縮係数と過剰間隙水圧比との関係において、体積圧縮係数が低い状態のままである過剰間隙水圧比Paが0.3〜0.5といった値の範囲にしていた。一方、本発明では、設置したグラベルドレーン21と、その周囲に形成する強度保持地盤22と、強度保持地盤22の上に設置する表層版23を組み合わせることによって、液状化による大きな地盤沈下を抑え、かつ不等沈下を抑制するようにしたことから、この体積圧縮係数と過剰間隙水圧比との関係において、体積圧縮係数が増加し始める点である過剰間隙水圧比の値0.6を最小値とし、体積圧縮係数が大きく増加し始める点である過剰間隙水圧比の値0.8を最大値として、平均的な過剰間隙水圧Pbを0.6〜0.8といった値の範囲にするようにした。
【0035】
さらに、グラベルドレーン21の間隔の算出において、グラベルドレーン21間の地盤における平均的な過剰間隙水圧比Pbが0.8〜0.95といった値の範囲になるように、平均的な過剰間隙水圧比0.8〜0.95の値に基づいて算出するようにしても良い。このときは、ここにおいて、グラベルドレーン21とグラベルドレーン21の周囲に形成する強度保持地盤22との支持力で表層版23を支持できる剛性を有するようにし、これにより、設置したグラベルドレーン21と、その周囲に形成する強度保持地盤22と、強度保持地盤22の上に設置する表層版23を組み合わせることによって、液状化による大きな地盤沈下を抑え、かつ不等沈下を抑制するようにしている。このときのグラベルドレーン21の間隔は、さらに広い間隔となる。
【0036】
また、このようなグラベルドレーン21の間隔を広い間隔とした場合の液状化により発生した水の流れとしては、図8に示すように、グラベルドレーン21の近くでは水はグラベルドレーン21に向かって流れるが、隣接するグラベルドレーン21間の中央付近では水は上方に流れる。しかしながら、地表面には表層版23が設置されていることにより、上方に流れた水はそこから水平方向に流れてグラベルドレーン21に向かうようになり、液状化による大きな地盤沈下が抑えられ、かつ不等沈下も抑制されるようになる。
【0037】
このようにグラベルドレーン21の間隔を広い間隔にして設置すると共に、グラベルドレーン21の周囲に強度保持地盤22を形成し、この形成した強度保持地盤22の上に表層版23を設置したことで、このグラベルドレーン21と強度保持地盤22と表層版23を組み合わせることによって、液状化による大きな地盤沈下が抑えられ、かつ不等沈下も抑制されるようになり、施工する対象地盤範囲にグラベルドレーン21を設置する際、グラベルドレーン21の設置数を大幅に減らすことができる。これにより、グラベルドレーン21の設置数を大幅に減らすことで、地盤の液状化対策において、その工事の費用を安くすることができると共に、工事の期間についても短縮することができる。
【0038】
また、この実施形態では、グラベルドレーン21の設置する深さにあっては、地表面もしくは路盤から液状化層の下端まで達する深さにしていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、図9に示すように、グラベルドレーン21を液状化層の下端に至らない深さとしても良い。
【0039】
このときのグラベルドレーン21の設置する深さについては、液状化の発生に関する表層の非液状化層の厚さと深部の液状化層との関係といったことが研究されて、地震時に液状化層で液状化が発生しても、液状化の影響が地表に及ばなくなる非液状化層の厚さを求めることができるようになってきた。そこで、これによって求めた非液状化層の厚さに基づいてグラベルドレーン21の設置する深さを決定するようにする。
【0040】
このようにグラベルドレーン21の設置する深さを液状化層の下端に至らない深さにしても、液状化による被害の発生を抑えることができ、さらには、グラベルドレーン21自体の長さも短くすることができる。これにより、施工する対象地盤範囲には多数のグラベルドレーン21を設置するようになるが、このとき、この多数のグラベルドレーン21すべてでその長さを短くできることから、工事の費用をさらに安くすることができると共に、工事の期間についてもさらに短縮することができる。
【0041】
また、本発明の地盤の液状化対策工法についての実験も行ったので、以下に述べる。
この実験は、本発明の地盤の液状化対策工法である所定の間隔で設置したグラベルドレーン21と、その周囲に形成される強度保持地盤22の上に設置する表層版23を組み合わせたものが、グラベルドレーン21の有無によって、あるいは表層版23の有無によって、どのようになるかを沈下ひずみを測定して調べたものである。
【0042】
これは、模型振動実験(模型の縮尺率は1/10)であって、実験条件としては、地盤の全層厚は260mmで、地下水位は地表面から80mmの位置にして液状化対象の層厚を180mmにしたものである。また、グラベルドレーン21を設置する際はこの間隔を300mmにする。
【0043】
そして、この実験条件にて、(A1)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21を設置しないもの、(A2)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したもの、(A3)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したもの、さらに、(B1)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21を設置しないもの、(B2)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したもの、(B3)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したもの、計6通りのものを用意し、これらの沈下ひずみの平均値を測定した。
【0044】
その実験結果は、図10の図表に示す通りである。
図10に示すように、(A1)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21を設置しないものでは、沈下ひずみの平均値は、3.0%である。(A2)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したものでは、沈下ひずみの平均値は、2.8%である。(A3)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したものでは、沈下ひずみの平均値は、0.5%である。(B1)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21を設置しないものでは、沈下ひずみの平均値は、3.8%である。(B2)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したものでは、沈下ひずみの平均値は、1.6%である。(B3)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したものでは、沈下ひずみの平均値は、0.8%である。なお、図10の中で、各沈下ひずみの平均値に示された縦の線は、沈下ひずみのばらつきを表したものである。
【0045】
この実験結果によれば、(A3)表層版23を設置せず、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したもの、(B2)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したもの、(B3)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したもの、において、沈下ひずみの平均値が、2.0%以下という小さい値がでた。
【0046】
以上のことから、グラベルドレーン21の長さをある程度自由にする(グラベルドレーン21を液状化層の下端に達する長さにしなくても良い)ことを考慮すると、(B2)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを170mmにして設置したもの、(B3)厚さ25mmの表層版23を設置し、グラベルドレーン21の長さを地盤の全層厚と同じ260mmにして設置したもの、が良く、要するに、グラベルドレーン21を設置すると共に、表層版23も設置するものが良いということがわかる。
【符号の説明】
【0047】
1…敷地、2…外構部、3…建物本体、4…駐車場、5…玄関アプローチ、6…ゴミ置き場、7…電気及び機械室、8…駐輪スペース、11…支持層、12…非液状化層、13…液状化層、15…支持杭、21…グラベルドレーン、22…強度保持地盤、23…表層版、25…路盤、26…舗装表面、27…舗装層、28…浅層改良層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10