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特開2016-46295静止誘導機器用タンク、および静止誘導機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-46295(P2016-46295A)
(43)【公開日】2016年4月4日
(54)【発明の名称】静止誘導機器用タンク、および静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20160307BHJP
   H01F 27/12 20060101ALI20160307BHJP
【FI】
   H01F27/02 Z
   H01F27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-167422(P2014-167422)
(22)【出願日】2014年8月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健一
【テーマコード(参考)】
5E050
5E059
【Fターム(参考)】
5E050BA03
5E059BB03
5E059BB05
(57)【要約】
【課題】従来の放熱器を備える誘導機器用タンクは、放熱効果を高くするために放熱器の形状を大きくしたり、数を増やしたりするので、小型化が困難であるという課題があった。
【解決手段】円筒状のタンク1はドーム状の上蓋部11と円板状の底板部12と円筒状の胴部13とで構成され、内部に冷却用および絶縁用の絶縁油と誘導機器本体が収納される。胴部13の側面の中央部に複数の放熱フィン151からなる放熱器15が設けられている。複数の放熱フィン151が突設された胴部13はアルミニウム材にプレス成形加工を施して一体的に形成されている。胴部13に軟鉄材よりも熱伝導率の高いアルミニウム材を用いることで、放熱器15の小型化が可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱器が設けられた静止誘導機器用タンクにおいて、少なくとも前記放熱器の素材がアルミニウムであることを特徴とする静止誘導機器用タンク。
【請求項2】
前記放熱器は、波状に突設された1または2以上の放熱フィンを含む、請求項1記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項3】
前記放熱フィンは、中実若しくは中空の放熱フィンである、請求項2記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項4】
前記放熱フィンは、タンク内の空間に連通して当該タンクに充填された絶縁油が浸入可能な凹部を有する放熱フィンである、請求項2記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項5】
前記放熱器は、前記絶縁油が充填されたタンクに当該絶縁油が循環可能に連結されている、請求項4記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項6】
前記放熱器を構成する1または2以上の放熱フィンは、タンク外周面に設けられ、
前記放熱器と前記放熱器が設けられるタンク外周面とを含む放熱部の素材がアルミニウムである、請求項4記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項7】
前記放熱部は、アルミニウム材を用いて所定の一体成形加工を行うことにより、一体的に形成されている、請求項6記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項8】
前記所定の一体成形加工は、プレス成形加工である、請求項7記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項9】
前記所定の一体成形加工は、3次元プリンタを用いた成形加工である、請求7記載の静止誘導機器用タンク。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静止誘導機器用タンクを備えたことを特徴とする静止誘導機器。
【請求項11】
前記静止誘導機器は、変圧器である、請求項10記載の静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止誘導機器用タンク、およびその静止誘導機器用タンクを用いた静止誘導機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油入自冷方式の静止誘導機器が知られている(特許文献1参照)。例えば、柱上設置型の油入変圧器として、図16に示す外観形状を有する油入変圧器が知られている。
【0003】
図16に示す油入変圧器500は、主として、円筒型のタンク501と、タンク501に充填される冷却用および絶縁用の絶縁油(図16では見えていない。)と、タンク501内に絶縁油に浸漬させて配設される変圧器本体(図16では見えていない。)とで構成される。図16に示す油入変圧器500は、高圧配電線路に印加される高圧(例えば、6600ボルト)を家庭などで使用する低圧(例えば、100ボルト若しくは200ボルト)に変圧する変圧器である。
【0004】
タンク501は、上部501A、下部501B、および胴部501Cで構成され、上面の開口部は蓋502とロック部材505とによって密閉されている。上部501Aの側面適所に2個の高圧ブッシング503,503と3個の低圧ブッシング(図16では見えていない。)が設けられ、胴部501Cに複数の放熱フィン504が放射状に突設されている。各放熱フィン504は、タンク501内の空間に連通する凹部が形成されており、その凹部にもタンク1に充填された絶縁油が浸入するようになっている。
【0005】
変圧器本体は、例えば、環状鉄心と、その環状鉄心のリムに巻回された低圧コイル(二次巻線)と、低圧コイルの外側に同心状に巻回された高圧コイル(一次巻線)と、接続部とを備える。高圧コイルは、接続部を介して高圧ブッシング503,503に接続され、高圧ブッシング503,503から高圧コイルに6600ボルトの高電圧が印加される。低圧コイルは、接続部を介して低圧ブッシングに接続され、低圧コイルから低圧ブッシングに100ボルトと200ボルトの低電圧が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−96861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のタンク1は、軟鋼材を用いて製造されているので、高い放熱効果を得るために、放熱フィン504を大きくしたり、放熱フィン504の枚数を多くしたりするなどの工夫をする必要があった。
【0008】
このため、胴部501Cの放熱フィン504が設けられた部分が大きくなり、タンク501の大型化を招くという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本第一の発明の静止誘導機器用タンクは、放熱器が設けられた静止誘導機器用タンクにおいて、少なくとも放熱器の素材がアルミニウムであることを特徴とする、静止誘導機器用タンクである。
【0010】
また、本第二の発明の静止誘導機器用タンクは、第一の発明に対して、放熱器は、波状に突設された1または2以上の放熱フィンを含む、静止誘導機器用タンクである。
【0011】
また、本第三の発明の静止誘導機器用タンクは、第二の発明に対して、放熱フィンは、中実若しくは中空の放熱フィンである、静止誘導機器用タンクである。
【0012】
かかる構成により、本第一から本第三のいずれか1つの発明の静止誘導機器用タンクは、放熱器の放熱効果が高くなるので、放熱器の小型化が可能になり、延いては放熱器を備えた静止誘導機器用のタンクの小型化が可能になる。
【0013】
また、本第四の発明の静止誘導機器用タンクは、第二の発明に対して、放熱フィンは、タンク内の空間に連通して当該タンクに充填された絶縁油が浸入可能な凹部を有する放熱フィンである、静止誘導機器用タンクである。
【0014】
また、本第五の発明の静止誘導機器用タンクは、第四の発明に対して、放熱器は、絶縁油が充填されたタンクに当該絶縁油が循環可能に連結されている、静止誘導機器用タンクである。
【0015】
かかる構成により、本第四または本第五の発明の静止誘導機器用タンクは、放熱器の更なる小型化が可能になり、延いては放熱器を備えた静止誘導機器用のタンクの更なる小型化が可能になる。
【0016】
また、本第六の発明の静止誘導機器用タンクは、第四の発明に対して、放熱器を構成する1または2以上の放熱フィンは、タンク外周面に設けられ、放熱器と放熱器が設けられるタンク外周面とを含む放熱部の素材がアルミニウムである、静止誘導機器用タンクである。
【0017】
かかる構成により、本第六の発明の静止誘導機器用タンクは、放熱部の小型化が可能になり、延いては放熱部を備えた静止誘導機器用のタンクの小型化が可能になる。
【0018】
また、本第七の発明の静止誘導機器用タンクは、第六の発明に対して、放熱部は、アルミニウム材を用いて所定の一体成形加工を行うことにより、一体的に形成されている、静止誘導機器用タンクである。
【0019】
また、本第八の発明の静止誘導機器用タンクは、第七の発明に対して、所定の一体成形加工は、プレス成形加工である、静止誘導機器用タンクである。
【0020】
また、本第九の発明の静止誘導機器用タンクは、第七の発明に対して、所定の一体成形加工は、3次元プリンタを用いた成形加工である、静止誘導機器用タンクである。
【0021】
かかる構成により、本第七から本第九のいずれか1つの発明の静止誘導機器用タンクは、放熱部の製造が容易になり、延いては放熱部を備えた静止誘導機器用のタンクの生産性が向上する。
【0022】
また、本第十の発明の静止誘導機器は、第一から第九のいずれか1つの発明の静止誘導機器用タンクを備えたことを特徴とする、静止誘導機器である。
【0023】
また、本第十一の発明の静止誘導機器は、変圧器である。
【0024】
かかる構成により、本第十または本第十一の発明の静止誘導機器は、放熱器の放熱効果の向上に基づき放熱器の小型化が可能になり、延いては機器全体の小型化が可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による静止誘導機器用タンク、および静止誘導機器によれば、誘導機器用タンクの放熱器の素材がアルミニウムであるので、従来の軟鋼材を用いたタンクよりも放熱器の小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態1における柱上設置型の変圧器の外観の一例を示す斜視図
図2】放熱フィンの断面形状を示す胴部の要部断面図
図3】実施の形態1のプレス成形加工に用いられる非鉄金属の基材を示す斜視図
図4】同プレス成形加工に用いられる上金型と下金型を示す斜視図
図5】同上金型の形状を示す上面図と側面図
図6】同下金型の形状を示す上面図と側面図
図7】同プレス成形加工における下金型に被加工材を載置する工程を示す図
図8】同プレス成形加工における上金型をプレスする工程を示す図
図9】同プレス成形加工における上金型をプレス開始位置に戻す工程を示す図
図10】同プレス成形加工における下金型から被加工材を型抜きする工程を示す図
図11】同プレス成形加工における胴部を円筒形に整形する工程を示す図
図12】従来の油入変圧器の胴部の製造で用いられる軟鋼の基材を示す図
図13】同胴部の製造工程における基材を折り曲げる工程を示す図
図14】同胴部の製造工程における折り合わせ面を接続する工程を示す図
図15】同胴部の製造工程における胴部を円筒形に整形する工程を示す図
図16】従来の油入変圧器の一例の外観形状を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る静止誘導機器用タンクの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態1においては、静止誘導機器として柱上設置型の変圧器を例に説明する。本実施の形態1の柱設置型の変圧器は、高圧配電線路に印加される高電圧(例えば、6600ボルト)を家庭や事務所などで使用する低電圧(例えば、100ボルト若しくは200ボルト)に変圧する油入自冷式の変圧器である。
【0029】
図1は、柱上設置型の変圧器の外観の一例を示す斜視図である。図2は、放熱フィン151の断面形状を示す胴部13の要部断面図である。なお、本発明に係る変圧器Aは、タンク1の放熱器15が設けられた胴部13の構造に特徴があるので、図1には、簡略化した変圧器A(タンク1)の外観形状を示している。また、以下の説明では、胴部13以外の構成については説明を簡略化し、胴部13の構造および製造方法について詳細に説明する。
【0030】
図1に示す変圧器Aは、主として、円筒型のタンク1と、タンク1に充填される冷却用および絶縁用の絶縁油(図1では見えていない。)と、タンク1内に絶縁油に浸漬させて配設される単相3線式の変圧器本体(図1では見えていない。)とで構成される。変圧器本体は変圧器の電気回路を構成する部分で、例えば、環状鉄心と、その環状鉄心のリムに巻回された低圧コイル(二次巻線)と、低圧コイルの外側に同心状に巻回された高圧コイル(一次巻線)と、接続部とを備えている。
【0031】
高圧コイルには2個の入力端子が設けられ、その入力端子が接続部を介して後述する2個の高圧ブッシング14に接続されている。高圧コイルには、高圧ブッシング14,14から、例えば6600ボルトの高電圧が印加される。また、低圧コイルには3個の出力端子(1個はアース端子)が設けられ、その出力端子が後述する3個の低圧ブッシングに接続されている。低圧コイルの一方の出力端子から、例えば100ボルトの低電圧が出力され、低圧コイルの他方の出力端子から、例えば200ボルトの低電圧が出力される。
【0032】
タンク1は円筒形をなし、ドーム状の上蓋部11と、円板状の底板部12と、円筒状の胴部13とで構成される。タンク1の上面は開口されており、その開口部が上蓋部11によって密閉されている。上蓋部11は、4個のロック部材16によって胴部13に固定されている。
【0033】
胴部13の上部の適所に、2個の高圧ブッシング14と3個の低圧ブッシング(図1では見えていない。)が設けられている。2個の高圧ブッシング14には変圧器本体の高圧コイルに設けられた2個の入力端子がそれぞれ接続され、3個の低圧ブッシングには変圧器本体の低圧コイルに設けられた3個の出力端子がそれぞれ接続されている。
【0034】
胴部13の外周面131(タンク側面131)に放熱器15が設けられている。放熱器15は、複数枚の放熱フィン151で構成されている。複数枚の放熱フィン151は、胴部13の外周面131に放射状に突設されている。各放熱フィン151には、図2に示すように、タンク1内の空間に連通する凹部152が形成されている。凹部152は、タンク1内に充填される絶縁油(図示省略)を放熱フィン151内に侵入させるもので、この構造により各放熱フィン151の放熱効率を高める。
【0035】
本実施の形態1のタンク1は、放熱フィン151の上部に配置されている上蓋部11と、放熱フィン151の下部に配置されている底板部12は軟鋼材で構成され、胴部13はアルミニウムで構成されている。複数枚の放熱フィン151は、所定のアルミニウム材を用いて所定の一体成形加工を行うことによりタンク側面131に一体的に形成されている。所定の一体成形加工には、プレス成形加工、深絞り成形加工、射出成形加工などを用いることができる。また、3次元プリンタを用いてタンク側面131に複数枚の放熱フィン151が突設された胴部13を一体的に成形することもできる。
【0036】
本実施の形態1のタンク1は、胴部13を軟鋼材よりも熱伝導率の高いアルミニウムで構成しているので、図16に示す胴部13を軟鋼材で構成したタンク501よりも放熱器15の放熱効率が高い。従って、胴部13のサイズをタンク501の胴部501Cよりも小さくすることができる。
【0037】
本実施の形態1の胴部13は、図3に示す帯状のアルミニウム基材3を所定の長さNで切断して板状の被加工材を生成し、その被加工材にプレス成形加工を施して作製されている。アルミニウム基材3は、胴部13の高さW(図2参照)と略同一の幅寸法と所定の厚みtを有し、所定の長さNは、胴部13の周長(2πR:Rは胴部13の半径)と略同一の寸法である。
【0038】
プレス加工成形では、図4図6に示す上金型21と下金型22とからなる金型2が用いられる。
【0039】
上金型21は、図5に示されるように、基盤211の下面に所定数の凸部212を間隔D1で一列に並べて突設した形状を有している。凸部212の数は、胴部13に設けられる放熱フィン151の数と同一の数である。凸部212は、L1(長手方向の長さ)×W1(幅方向の長さ)×H1(高さ)のサイズを有している。
【0040】
下金型22は、図6に示されるように、基盤221の上面に凸部212と同一数の凹部222を間隔D2で一列に並べて穿設した形状を有している。凹部222は、図6に示されるように、L2(長手方向の長さ。L1<L2)×W2(幅方向の長さ。W1<W2)×H2(深さ。H1<H2)のサイズを有している。凹部222の長手方向の長さL2は、放熱フィン151の高さ方向の長さL2(図2参照)と略同一との長さであり、凹部222の幅方向の長さW2は、放熱フィン151の厚みと油導を含めた寸法と略同一との長さである。上金型21の各凸部212は下金型22の各凹部222に対向するように配置されており、上金型21を下降すると、上金型21の各凸部212が下金型22の対向する各凹部222に嵌入する。
【0041】
所定枚の放熱フィン151が突設された胴部13は、図7図11に示すように、下記の加工手順(A1)〜(A4)で作製されている。なお、図7図11では、作図の便宜上、凸部212と凹部222の数は実際の数とは異なっている。
(A1)下金型22の上面に被加工材31(アルミの板材31)を載置する(図7参照)。
(A2)上金型21を所定の圧力で当該上金型21の各凸部212が対向する下金型22の各凹部222に完全に嵌入するまで下降させる(図8参照)。
(A3)上金型21をプレス開始位置まで上昇させた後(図9)、プレス成形加工が行われたアルミの板材31を下金型22から型抜きする(図10)。これにより、タンク側面131に所定数の放熱フィン151が一体的に形成された胴部13(平面に展開した状態の胴部13)が作製される。
(A4)下金型22から型抜きして得られた胴部13を、複数枚の放熱フィン151が外側になるように円形に湾曲させた後、両端13A,13Bを溶接する(図11)。これにより円筒状の胴部13が完成する。
【0042】
なお、上述したように、実際の場合は、胴部13の上側の開口部が上蓋部11で密閉されるので、胴部13の上端には上蓋部11のロック部材を係止させるための係止部が形成される。その係止部は、例えば、胴部13の上端部を外側(放熱フィン151が形成された側)に折り返して形成される鍔状の部材である。従って、実際の場合は、(A4)の工程で胴部13を筒状に湾曲させた後に、胴部13の一方の側部(胴部13の上側になる側部)を外側にカールさせる曲げ加工を行って係止部が形成される。
【0043】
深絞り成形加工は、所定の輪郭形状に成形した平板素材を、ダイスおよびポンチと呼ばれるオス・メス一対の金型を用いてプレスし、例えば、円筒状の容器などを一度に成形する加工方法である。深絞り成形加工は、金型を用いてプレス加工をする点では、プレス成形加工と共通している。深絞り成形加工を用いる場合は、金型の形状が異なる点を除いて、基本的に上述したプレス成形加工の加工手順と同様の手順で、複数枚の放熱フィン151が突設された胴部13を一体成形することができる。
【0044】
また、射出成形加工は、軟化する温度に加熱した素材を、射出圧を加えて金型に充填し、冷却固化させて成形する加工方法である。従って、射出成形加工を用いる場合は、図10の型抜きした胴部13と同一形状の溝を有する金型を用意し、その金型に射出成形機から溶融したアルミニウムを所定の射出圧で充填し、冷却固化した後に金型から型抜きすることにより、複数枚の放熱フィン151が突設された胴部13(図10の型抜きした胴部13と同一形状の胴部13)を一体成形することができる。
【0045】
本実施の形態1では、放熱フィン151の下部に配置される底板部12は円板状となっており、タンク1は、胴部13の下端面(リング状の端面)に底板部12を溶接などで固定することにより完成する。
【0046】
本実施の形態1のタンク1によれば、アルミニウム材を用いて一体化加工により、複数の放熱フィン151が放射状に設けられるタンク1の胴部13(側面全体)を一体的に形成しているので、従来の胴部13に軟鋼材を用いたものよりも放射器15の放熱効果を高めることができる。
【0047】
すなわち、放熱フィン151はタンク1内の絶縁油とタンク1外の空気との間の壁になるもので、放熱フィン151による放熱のメカニズムは、絶縁油から空気に熱を伝達する面積を広げることによって空気側の熱抵抗を下げ、これにより絶縁油から空気への熱交換の効率を高めるものである。
【0048】
タンク1内の絶縁油とタンク1外の空気との間の熱抵抗を「R」、絶縁油側の熱抵抗を「R1」、放熱フィン151の熱抵抗を「R2」、空気側の熱抵抗を「R3」とすると、熱抵抗Rは、R=R1+R2+R3で表され、放熱フィン151の熱抵抗R2を小さくすることによって、すなわち、放熱フィン151に熱伝導率λの高い素材を用いることによって、絶縁油から空気への放熱量を増加させることができる。
【0049】
室温付近での鉄とアルミニウムの熱伝度率λの比率は、およそFe:Al≒1:2.8であるので、軟鋼を用いる場合よりも放熱フィン151の熱抵抗R2を大幅に小さくすることができる。
【0050】
従って、同じ放熱量で比較した場合、アルミニウムを用いた放射器15を、軟鋼材を用いたものよりも大幅に小さくすることができ、延いてはタンク1を用いた変圧器Aの小型化を図ることができる。
【0051】
また、アルミニウム材は軟鋼材よりも電気抵抗率ρが小さいので、軟鋼材を用いた場合よりも渦電流損を低減することができる。
【0052】
また、一体成形加工により凹部152を有する複数の放熱フィン151をタンク側面131に一体的に形成するので、各放熱フィン151の凹部152に溶接などによる封止部分がなく、放熱フィン151での絶縁油の漏洩を適切に防止することができる。
【0053】
本実施の形態1では、円筒状のタンク1のタンク側面131全体をアルミニウムで構成したが、タンク側面131の放熱器15が設けられる部分(図16の胴部501Cに相当する部分。以下、「放熱部」という。)をアルミニウムで構成し、放熱部以外の部分(図16の上部501Aおよび下部501Bに相当する部分)をアルミニウム以外の金属材、例えば、銅、銅合金、ステンレス、ステンレス合金などの非鉄金属材で構成してもよい。
【0054】
この場合、放熱部は、例えば、図12図15に示すように、下記の加工手順(B1)〜(B3)でプレス折曲成形加工により成形することができる。
(B1)帯状のアルミニウム基材400(図12参照)をプレス折曲成形加工によって所定数の折曲部401が波状に並んだ形に成形する(図13参照)。なお、アルミニウム基材400は、図3に示すアルミニウム基材3に対して、幅方向の長さを放熱フィン151の長手方向の長さL2に変更したものである。
(B2)折曲部401の幅方向の端部401Aを押し潰した後、当該端部401Aの折り合せ面401Bを溶接によって繋ぎ合わせる(図14参照)。折曲部401は、放熱フィン151になる部分で、(B2)の工程は、放熱フィン151の幅方向の両端に生じる隙間を封止して当該放熱フィン151に絶縁油を浸入させるための凹部152を設ける工程に相当している。
(B3)所定数の放熱フィン304を波状に形成した部分を帯状のアルミニウム基材400から切り離し、円筒状に曲げて両端402A,402Bを溶接により接続する(図15参照)。
【0055】
タンク側面131の放熱部をアルミニウム材で構成し、放熱部以外の部分をアルミニウム以外の金属材で構成した場合も、軟鋼材を用いた場合よりも放熱器15の放熱効果を高めることができるので、放熱器151の小型化と変圧器Aの小型化を図ることができる。
【0056】
また、タンク側面131全体をアルミニウム材で一体成形化した場合と同様に、放熱部で生じる渦電流損を、軟鋼材を用いた場合よりも低減することができる。
【0057】
上記実施の形態1では、円筒状のタンク1について説明したが、タンク1の形状は円筒状に限定されるものではなく、直方体形状やその他の立体形状でもあってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態1では、複数の放熱フィン151がタンク1の胴部13にだけ形成されていたが、放熱フィン151の形成位置は胴部13に限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施の形態1では、放熱器15が複数の放熱フィン151で構成されていたが、放熱器15は1個の放熱フィン151で構成されていてもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態1では、複数の放熱フィン151がタンク1の側面に放射状に形成されていたが、複数の放熱フィン151を有する放熱器15をタンク1とは別体とし、その放熱器15をタンク1に絶縁油が循環可能に連結する構成であってもよい。
【0061】
また、上記実施の形態1では、各放熱フィン151を、絶縁油を浸入させるための凹部152を有する構成としたが、絶縁油を浸入させない中実若しくは中空の放熱フィンにしてもよい。各放熱フィン151を中実の放熱フィンにする場合は、タンク側面131に所定数の中実の放熱フィン151を所定の間隔D2で一列に配列した胴部13の金型を用いて射出成形加工により、当該胴部13を一体的に成形することができる。各放熱フィン151を中空の放熱フィンにする場合は、図13に示したように、帯状のアルミニウム機材400をプレス折曲成形加工により三角形状の折曲部401(中空の放熱フィンとなる部分)が波状に並んだ形に形成することによって作成することができる。
【0062】
上記実施の形態1では、柱上設置型変圧器に用いられるタンクを例に説明したが、本発明に係るタンク1は、地上設置型の変圧器、柱上設置型若しくは地上設置型の自動電圧調整器、柱上設置型若しくは地上設置型のリアクトルなどの他の種類の静止誘導機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
A 変圧器(静止誘導機器)
1 変圧器用のタンク
11 上板部
12 下板部
13 胴部
131 胴部の外周面(タンク側面)
14 高圧ブッシング
15 放熱器
16 ロック部材
151 放熱フィン
152 凹部
2 金型
21 上金型
211 基盤
212 凸部
22 下金型
221 基盤
222 凹部
3 アルミニウム材
31 被加工材(アルミの板材)
400 アルミニウム基材
401 折曲部
401A 端部
401B 折り合せ面
402A,402B 両端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16