(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-49330(P2016-49330A)
(43)【公開日】2016年4月11日
(54)【発明の名称】茹で鍋
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20160314BHJP
【FI】
A47J27/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-177010(P2014-177010)
(22)【出願日】2014年9月1日
(71)【出願人】
【識別番号】714008396
【氏名又は名称】高野 俊暁
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊暁
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA26
4B055BA22
4B055BA37
4B055CA02
4B055CA05
4B055CA13
4B055CB04
4B055CB05
4B055CB06
(57)【要約】
【課題】 パスタを茹でる際に多量の水が必要であり、そのため所定温度まで到達するまでに時間がかかること。
【解決手段】 この茹で鍋100の鍋本体1は、標準的な乾燥ロングパスタの長さ(25cm程度)より若干長い短冊形状の底部1aと、底部1aの長手方向の左右に立設した右壁1b及び左壁1cと、底部1aの長手方向の前後に立設した前壁1d及び後壁1eとを備える。右壁1b及び左壁1cの長手方向の中央部分の左右ないし幅方向(前記長手方向の直交方向)には拡張部2が形成される。拡張部2により全体が長細形状であっても載置時に姿勢が安定する。また、長手方向の一部に設けるので全体の鍋内空間の容積が大きくなることはない。拡張部2には、内側に筒状の管部3が設けられている。管部3により内部容量が小さくなり使用する水の量を節約できる。更に、水に接する面積が大きくなるので熱効率が良くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状の底部の周囲に立設した壁面で構成した鍋本体と、
鍋本体の底部及び壁面を長手方向中央付近において左右に張り出して形成した拡張部と、
を備えたことを特徴とする茹で鍋。
【請求項2】
更に、前記拡張部の内側に拡張部の壁面から所定の間隔をあけて配置された管状であって底が開口した管部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の茹で鍋。
【請求項3】
更に、前記管部の下側は開口していることを特徴とする請求項1または2に記載の茹で鍋。
【請求項4】
更に、前記底部にフィンを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の茹で鍋。
【請求項5】
更に、前記鍋本体の壁面を内側に傾けて形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の茹で鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタ等の長い食材を茹でるのに適した茹で鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に記載されているようなパスタ用茹で鍋が知られている。このパスタ用茹で鍋は、四角形の底部と、四角形を成す底部と、当該底部の前後左右の各辺部から立ち上がる壁部から構成される。前壁と後壁の内壁間を標準長さの乾燥パスタが収容できる長さとし、左壁と右壁の内壁に間仕切り板を着脱自在に支持できる支持部が設けられる。
【0003】
このパスタ用茹で鍋は、市販の標準的長さの乾燥パスタを長手方向に入れて茹でるものである。また、マカロニやブロッコリー等の小さい食材を茹でる場合、前記支持部に間仕切り板を装着して内部を複数の区画に分割し、これらをそれぞれの区画に入れることで同時に茹でることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3130912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパスタ用茹で鍋は、同公報
図1乃至3に示すように、全体的に箱型であって左壁と右壁との間隔が大きく、パスタを茹でる際に多量の水が必要であり、そのため所定温度まで到達するまでに時間がかかる。本発明は、係る問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の茹で鍋は、細長形状の底部の周囲に立設した壁面で構成した鍋本体と、鍋本体の底部及び壁面を長手方向中央付近において左右に張り出して形成した拡張部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、更に、前記拡張部の内側に拡張部の壁面から所定の間隔をあけて配置された管状であって底が開口した管部を備えても良い。更に、前記管部の下側は開口したものとしても良い。更に前記底部にフィンを設けても良い。更に、前記鍋本体の壁面を内側に傾けて形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る茹で鍋を示す斜視図である。
【
図13】この発明の実施の形態2に係る茹で鍋を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る茹で鍋を示す斜視図である。
図2は、
図1に示した茹で鍋の平面図、
図3は
図1に示した茹で鍋の側面図である。
図4は、
図2のA−A断面図である。この茹で鍋100の鍋本体1は、標準的な乾燥ロングパスタの長さ(25cm程度)より若干長い短冊形状の底部1aと、底部1aの長手方向の左右に立設した右壁1b及び左壁1cと、底部1aの長手方向の前後に立設した前壁1d及び後壁1eとを備える。換言すれば、鍋本体1は、長細形状であり且つ標準的なロングパスタひとり分の分量(80g〜150g)を投入して湯内に沈めることができ、その長さは通常の乾燥パスタの長さより若干長いことが少なくとも必要である。また、鍋本体1の幅は、パスタを茹でる際に鍋内でパスタの周囲を湯が循環して均一に加熱できるようにするため、4cm〜8cmが好ましい。また、鍋本体1の高さは、4cm〜10cmが好ましい。
【0010】
また、右壁1b及び左壁1cの長手方向の中央部分の左右ないし幅方向(前記長手方向の直交方向)には拡張部2が形成される。拡張部2は、
図2に示すように平面視にて台形であり、側面視において右壁1b及び左壁1cの壁面が山形に膨らんだ形状である。底部1aの右辺及び左辺も拡張部2の底を形成するように平面視で台形に拡張されている。拡張部2は、底部2a及び当該底部2aの周縁から立設した壁面2bから構成され、前記底部1a及び各壁1b〜1eにより形成した鍋内空間を幅方向に拡張させる。幅方向に拡張することにより全体が長細形状であっても載置時に姿勢が安定する。例えば、ガスコンロやIHコンロ上に載置する場合も、拡張部2により幅方向で支持するので高い安定性が得られる。
【0011】
また、拡張部2は、茹で鍋100の長手方向の一部に設けているのみであるから、全体の鍋内空間の容積が大きくなることはない。このため内部の水量増加を抑制できる。また、拡張部2により水に接する面積が大きくなるので熱効率が良くなる。拡張部2は、前記左右ないし幅方向の張り出し寸法が2cm〜6cmとするのが好ましい。換言すれば、鍋本体1の幅の半分から同じ寸法だけ張り出すようにするのが好ましい。
【0012】
次に、拡張部2には、内側に筒状の管部3が設けられている。管部3は、拡張部2の形状と平面視において相似形であり且つ当該管部3の壁面と拡張部2の壁面との間隔が一定となるように配置されている。換言すれば、当該管部3の壁面と拡張部2の壁面との間には、鍋本体1の拡張領域が形成される。この管部3の配置により当該拡張部2の張り出しを確保すると共に全ての幅を大きくした場合に比べて内部容量が小さくなり、使用する水の量を節約できる。更に、水に接する面積が大きくなるので熱効率が良くなる。
【0013】
管部3の下側及び上側は開口している(上側の開口部3a、下側の開口部3b)。これにより、鍋本体1の底部1aからのコンロの熱が開口部3aから管部3を通じて上昇し、開口部3bから出る。これにより管部自体が加熱され且つ拡張部2の底部2a及び壁面2bも加熱されることから、前記拡張領域の水を効率的に加熱できる。管部3の頂部は、鍋本体1の各壁1b〜1eと略同じ高さである。なお、管部3の平面視の形状は上記台形の他、円形、四角形その他の多角形等でも良い(図示省略)。また、拡張部2ごとに複数の管部3を設けても良い(図示省略)。
【0014】
鍋本体1の全体は、鋳鉄により鋳造成形される。厚さは全体を均一とし、外面には所定の塗装を施す。鍋本体1の上側に蓋を被せる場合、当該鍋本体1の上端を機械加工により平面に研削する。蓋は、例えば、鍋本体1の平面視において同一形状を有すると共に前記管部3に相当する部分は開口部が設けられる(図示省略)。なお、鍋本体1の素材や成型方法はこれに限定されない。ステンレス板等により板金製作しても良い。
【0015】
鍋本体1の長手方向の左右には、取っ手4を設けることができる。この取っ手4は断面がコの字形状となる。この取っ手4は、鋳造時に鍋本体1と一体成形しても良いし、鍋本体1に後付しても良い。なお、取っ手4は、本発明の必須構成要件ではないが、ハンドリングの際に便利である。
【0016】
図5及び
図6は、この茹で鍋の使用方法を示す説明図である。茹で鍋100の内部に水を入れてコンロ上に置く。このとき、鍋本体1の形状が長いものであるため不安定になるが、拡張部2がコンロの一部に載ることにより、左右ないし幅方向でのバランスが安定する。水を入れてコンロの火をかけると、内部の水の温度が上昇する。このとき、底部1aから熱が各壁1b〜1eに伝わると共に、管部3の壁面2bも加熱されてその熱が水に伝わる。内部の水は、パスタを茹でるために必要最小限に抑えられているため、内部の水が所定温度まで速やかに上昇する。
【0017】
所定温度になったときにパスタを内部に投入する。そして沸騰状態で弱火で所定時間加熱を継続する。パスタが茹で上がったら、茹で鍋100を持って(取っ手4が設けられている場合は取っ手4を持って)鍋本体1を持ち上げる。そして、
図5に示すように、内部の湯をキッチンシンク等に流し出す。この際、鍋本体1の長手方向の両側を保持し、一方の拡張部側に傾けることで、内部の湯が拡張部2から外に流れ出る。特に、拡張部2は台形であって角部を備えているため、この角部から湯が出るように傾けることで内部の湯を上手く外に出すことができる。
【0018】
また、拡張部2は、鍋本体1の中央部分付近にのみ形成されていることから、ロングのパスタがこの拡張部2に入り込んで湯と共に外に流れ出るようなことがない。即ち、パスタは、
図6(a)に示すように、拡張部2の管部3に引っ掛かるので前記拡張領域に入り込むようなことはなく、うまく管部3により当該拡張部2の内部への侵入が阻止される。これにより、拡張領域には湯のみが存在することになり、多少傾けてもパスタが拡張領域に入ることはないので、
図6(b)に示すように、鍋本体1を更に傾けることで湯が外に流れ出ることになる。
【0019】
即ち、管部3は、拡張部2において熱を効率的に水に伝える役割の他、湯を流し出すときにパスタが湯と共に外に流れ出るのを防止する役目を果たすことになる。このように、本発明の茹で鍋100は、内部の容積がパスタを茹でるために必要最小限に抑えることができるので、水を無駄に使用することがない。また、水が少ないので茹でる時間が少なくて済む。更に、拡張部2は、コンロ上やキッチンのプレートトップの上での姿勢安定に資するものとなる。また、拡張部2により湯切りが簡単に行えるようになる。
【0020】
図7は、上記拡張部の変形例を示す平面図である。
図8は、
図7のA―A断面図である。上記拡張部52は、平面視で半円形である。管部53も拡張部52と相似形の半円形である。このような形状であっても上記同様の作用・効果を奏するものとなる。また、拡張部52の付近に角が生じないので、茹で鍋100を洗うときに汚れを取り易い。
【0021】
また、
図9に示すように、拡張部2の片方(又は両方(図示量略))の一部に切欠部55を設けても良い。この切欠部55は、拡張部2の壁面2bと管部3の壁面3cとが外側で連結され、管部3の内部が鍋本体1の外側につながった形状である。拡張部2と管部3との間隙には鍋本体1の底部1aが拡張形成されている。係る形状によれば、茹でたパスタが入り込んでしまうのを更に防止できる。また、お湯切りの際に切欠部の壁面付近から湯を流し出し易い。
【0022】
図10に示すように、切欠部を拡張部2の根元の一部に設けても良い。係る構成では、切欠部56を鍋本体1の左壁1c及び右壁1bを延長して管部3の壁面3cを連続面として形成し、内部で台形に折り曲げられ、更に切欠部56を形成する壁面56aを形成し、続いて拡張部2の壁面2bを形成する。換言すれば、管部3の鍋本体1側となる壁面3cを拡張して左壁1c及び右壁1bに面一連結し、管部3の平面視で斜めに形成された壁面3cの端部を拡張部2の壁面2bと壁面56aで連結して切欠部56を形成したものである。係る構成によれば、鍋本体1の内側に連通した部分から湯が入り、茹で鍋100を斜めに傾けることで、長手方向反対側の切欠部付近から流れ出る。また、パスタが拡張部2に入っても当該拡張部2でトラップされるので、パスタが湯と共に流れ出るのを防止できる。
【0023】
また、
図11及び
図12に示すように、実施の形態1に係る茹の拡張部2の外側壁面2bの頂部2cを縦方向断面にて鋭角に処理しても良い。このようにすれば、茹で鍋100を傾けて内部の湯を流し出すときに、湯の切れが良くなるので、茹でた湯が茹で鍋100の壁面を伝って別の場所にたれることがない。この鋭角処理は、鋳造時に同時に形成しても良いし、成形後に機械加工により形成しても良い。
【0024】
(実施の形態2)
図13は、この発明の実施の形態2に係る茹で鍋を示す斜視図である。
図14は、
図13に示した茹で鍋の側面図である。
図15は、
図14のA−A断面図である。この茹で鍋200は、実施の形態1に係る茹で鍋100と略同一の構成であるが、底部1aの裏面にコンロの熱を効率的に伝達するフィン201を設けた点に特徴がある。その他の構成は実施の形態1と同じであるため同一構成要素には同一符号を付し説明を省略する。
【0025】
前記フィン201は三角形状であり、鍋本体1の外側が高く内側になるにつれて低くなる。このため、茹で鍋200を置くとき、フィン201の外側の下端部202でコンロ面やキッチントップに接する。このため、下端部202は水平に機械加工し、コンロ面やキッチントップに置いたときに姿勢が安定するようにする。
【0026】
またフィン201は、鍋本体1の底部1aの中心部を中心として略放射状に形成するものとする。同図の例では底部1aに6枚のフィン201を設けたが、これに限定されるものではない。このようにフィン201を放射状に設けることでコンロの炎と熱が均一に底部1aに広がると共に、下端部202が底部1aの左右両端近傍に広く配置されるので、載置時の安定性が増す。
【0027】
また、
図15に示すように、左壁1c及び右壁1bは、鍋本体1の内側に若干傾いている。具体的には、垂直方向に対して2度から10度傾いている。拡張部2の壁面も同様に傾けても良いし、垂直のままでも良い。係る構成では、湯切りの際にパスタが左壁1c又は右壁1bに引っ掛かるので、パスタがお湯と共に流れ出ることを防止できる。
【符号の説明】
【0028】
100 茹で鍋
1 鍋本体
2 拡張部
3 管部