【課題】シール性を確保した上で、歪み等が生じず、作業を行う際に必要なスペースを小さくでき、コストも削減できるパイプとフランジ部材の締結構造及び締結方法を提供する。
【解決手段】パイプ10の先端部12にフランジ部材20を締結する構造であって、フランジ部材20には、パイプ10の通路11と連通する開口部22と、開口部22の周縁部23から内側に向けて突出形成された環状の第1挟持部24及び第2挟持部25と、を有しており、パイプ10の先端部12が、外側に拡径された状態で第1挟持部24と第2挟持部25の間に形成されると共に、第1挟持部24と第2挟持部25で挟持されることで、パイプ10の先端部12が、フランジ部材20の開口部22の周縁部23に固定されているパイプ10とフランジ部材20の締結構造とした。
前記パイプの前記先端部を、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に挿入し、前記第2挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入元側から抑え治具で抑えつつ、前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧する押圧治具で前記第1挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて変形させることで、前記パイプの前記先端部を、外側に拡径させつつ、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持させて、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定することを特徴とする請求項2に記載のパイプとフランジ部材の締結方法。
前記パイプの前記先端部を、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に挿入し、前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧するプレス機の第1押圧治具で前記第1挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧変形させると共に、前記パイプの前記先端部の挿入元側から挿入先側に向けて押圧する前記プレス機の第2押圧治具で前記第2挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入元側から挿入先側に向けて押圧変形させることで、前記パイプの前記先端部を、外側に拡径させつつ、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持させてかしめ成形して、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定することを特徴とする請求項2に記載のパイプとフランジ部材の締結方法。
前記パイプの前記先端部を挟持する前の前記第1挟持部は、内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられており、前記第1挟持部に前記パイプの前記先端部を上方から当接させ、前記第1挟持部を下方から上方に向けて押圧して変形させると、当該角度によって前記パイプの前記先端部が外側に案内されて拡径されるようになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載のパイプとフランジ部材の締結方法。
前記フランジ部材は、板状のフランジ部材基材に対し、大径の上段部と小径の下段部からなる段部を有する前記開口部を形成し、このうち、前記下段部が前記第1挟持部となる箇所に形成され、前記上段部の周縁部分の一部を下方へ押して内側に傾斜させることで前記第2挟持部を形成するようになっていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載のパイプとフランジ部材の締結方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したような溶接やロー付けによるパイプとフランジ部材の接合では、接合部分を高温にする必要があり、これによって接合部分の鋭敏化、歪み等が生じるという問題があった。また、このようなパイプに対しては、さらなる軽量化の要請があり、より薄肉化していく可能性が高い。しかし、今後、軽量化の要請によって薄肉化されたパイプに、フランジ部材を接合しようとしても、歪み等が大きくなって正常な接合ができない虞があった。また、溶接については、フランジ部材とパイプの曲げ点が近いと、溶接を行うスペースが確保できず、溶接を行えないという問題も生じていた。また、ロー付けでは、ロット生産になるため、生産性が悪く、コストが嵩むという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シール性を確保した上で、歪み等が生じず、作業を行う際に必要なスペースを小さくでき、コストも削減できるパイプとフランジ部材の締結構造及び締結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、パイプの先端部にフランジ部材を締結する構造であって、前記フランジ部材には、前記パイプの通路と連通する開口部と、該開口部の周縁部から内側に向けて突出形成された環状の第1挟持部及び第2挟持部と、を有しており、前記パイプの前記先端部が、外側に拡径された状態で前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に形成されると共に、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持されることで、前記パイプの前記先端部が、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定されているパイプとフランジ部材の締結構造としたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、パイプの先端部にフランジ部材を締結する方法であって、前記フランジ部材には、前記パイプの通路と連通する開口部と、該開口部の周縁部から内側に向けて突出形成された環状の第1挟持部及び第2挟持部と、を有しており、前記パイプの前記先端部を、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に挿入し、外側に拡径させつつ、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持することで、前記パイプの前記先端部を、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定するパイプとフランジ部材の締結方法としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明に加え、前記パイプの前記先端部を、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に挿入し、前記第2挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入元側から抑え治具で抑えつつ、前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧する押圧治具で前記第1挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて変形させることで、前記パイプの前記先端部を、外側に拡径させつつ、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持させて、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定するパイプとフランジ部材の締結方法としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明に加え、前記パイプの前記先端部を、前記第1挟持部と前記第2挟持部の間に挿入し、前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧するプレス機の第1押圧治具で前記第1挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入先側から挿入元側に向けて押圧変形させると共に、前記パイプの前記先端部の挿入元側から挿入先側に向けて押圧する前記プレス機の第2押圧治具で前記第2挟持部を前記パイプの前記先端部の挿入元側から挿入先側に向けて押圧変形させることで、前記パイプの前記先端部を、外側に拡径させつつ、前記第1挟持部と前記第2挟持部で挟持させてかしめ成形して、前記フランジ部材の前記開口部の前記周縁部に固定するパイプとフランジ部材の締結方法としたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の何れか一項に記載の発明に加え、前記パイプの前記先端部を挟持する前の前記第1挟持部は、内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられており、前記第1挟持部に前記パイプの前記先端部を上方から当接させ、前記第1挟持部を下方から上方に向けて押圧して変形させると、当該角度によって前記パイプの前記先端部が外側に案内されて拡径されるようになっているパイプとフランジ部材の締結方法としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5の何れか一項に記載の発明に加え、前記フランジ部材は、板状のフランジ部材基材に対し、大径の上段部と小径の下段部からなる段部を有する開口部を形成し、このうち、前記下段部が前記第1挟持部となる箇所に形成され、前記上段部の周縁部分の一部を下方へ押して内側に傾斜させることで前記第2挟持部を形成するようになっているパイプとフランジ部材の締結方法としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1及び2に記載の発明によれば、パイプの先端部が、拡径された状態でフランジ部材の第1挟持部と第2挟持部によって挟持されることで、フランジ部材の開口部の周縁部に固定されるようになっているため、溶接やロー付けを行わなくても、パイプとフランジ部材の強固な締結が得られると同時に、シール性を確保することができ、その上で、歪み等が生じず、作業を行う際に必要なスペースを小さくでき、コストも削減できる。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、第2挟持部を抑え治具で抑えつつ、押圧治具で第1挟持部を変形させることで、パイプの先端部を、外側に拡径させつつ、第1挟持部と第2挟持部で挟持させて、フランジ部材の開口部の周縁部に固定するようになっているため、第1挟持部を変形させるだけでパイプの先端部を挟持することができ、より小規模な装置で、パイプとフランジ部材の締結におけるシール性を確保することができる。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、プレス機に設けられた2つの押圧治具で第1挟持部と第2挟持部を上下から押圧変形させることで、パイプの先端部を、外側に拡径させつつ、第1挟持部と第2挟持部で挟持させてかしめ成形して、フランジ部材の開口部の周縁部に固定するようになっているため、第1挟持部と第2挟持部の双方を変形させてパイプの先端部を挟持することができ、より強力かつ確実に、パイプとフランジ部材の締結におけるシール性を確保することができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、パイプの先端部を挟持する前の第1挟持部が、内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられており、第1挟持部にパイプの先端部を当接させると共に当該第1挟持部を上方に向けて押圧して変形させると、当該角度によってパイプの先端部が外側に案内されて拡径されるようになっていることで、パイプの先端部がより拡径させ易くなっており、確実にパイプの先端部を拡径させて、第1挟持部と第2挟持部で挟持して固定することができる。
【0016】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、フランジ部材は、板状のフランジ部材基材に所定の段部を有する開口部を形成し、そのうちの上段部の周縁部分の一部を下方へ押して内側に傾斜させることで第2挟持部を形成するようになっていることで、第1挟持部と第2挟持部を確実に効率よく形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[発明の実施の形態1]
始めに、本発明の実施の形態1について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0019】
図1の(a)は、本発明の実施の形態1に係るパイプとフランジ部材の締結構造を示す平面図であり、
図1の(b)は、(a)のA−A断面図である。
図2〜6は、同実施の形態に係るパイプとフランジ部材の締結部分の加工手順及び締結方法の手順を示す断面図である。
【0020】
まず、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結構造について、
図1(a),(b)を用いて説明する。本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結構造は、
図1(a),(b)に示すように、自動車のエンジンから出た排気ガスを内部の通路11に通すステンレス製のEGRパイプである円筒形状のパイプ10の先端部12が外側に拡径されており、当該先端部12がフランジ部材20にかしめて締結されて、パイプ10の先端部12がフランジ部材20に固定された構造である。また、フランジ部材20には、パイプ10における内部の通路11と連通する開口部22と、パイプ10の先端部12をかしめて締結するための第1挟持部24及び第2挟持部25とを有しており、パイプ10の先端部12が、フランジ部材20の開口部22の周縁部23に固定されている。以下、詳述する。
【0021】
本実施の形態のパイプ10は、
図1(a),(b)に示すように、所定の円筒形状に形成されており、その先端部12が外側に拡径した状態で、後述するフランジ部材20の第1挟持部24及び第2挟持部25にかしめられて、当該フランジ部材20に締結されている。
【0022】
また、本実施の形態のフランジ部材20は、
図1(a),(b)に示すように、パイプ10の先端部12に取り付けられた際に、当該パイプ10の通路11の延出方向と直交する方向に拡がる略板状のフランジ部材本体21を有している。このフランジ部材本体21の略中央部には開口部22を有しており、この開口部22とパイプ10の通路11とが連通するように、フランジ部材20に対してパイプ10が締結されるようになっている。
【0023】
また、
図1(a),(b)に示すように、フランジ部材本体21における開口部22を挟んだ両側の所定位置には、ネジ等を通す係合孔26が形成されている。例えば、フランジ部材20が取り付けられたパイプ10をエンジン本体に接合する際に、フランジ部材20をエンジン本体の係合孔が設けられた箇所に当接させて係合孔26を重ね合わせてネジ等を通してナット等で固定することで、丁度、開口部22がエンジン本体と連通する状態でパイプ10が接合するように構成されている。
【0024】
また、
図1(a),(b)に示すように、フランジ部材20の開口部22の周縁部23には、第1挟持部24と第2挟持部25が形成されている。これら第1挟持部24及び第2挟持部25は、フランジ部材20の開口部22の周縁部23から内側に向けて突出形成された環状の部分であり、より内側かつ下側から斜め内側上方に突出した第1挟持部24と、より外側かつ上側から斜め内側上方に突出した第2挟持部25とで構成されている。そして、第1挟持部24と第2挟持部25の間に、外側に拡径された状態のパイプ10の先端部12が形成され、その上で、第1挟持部24と第2挟持部25とでパイプ10の先端部12を挟持するようになっている。
【0025】
このように、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結構造によれば、パイプ10の先端部12が、拡径された状態でフランジ部材20の第1挟持部24と第2挟持部25によって挟持されることで、フランジ部材20の開口部22の周縁部23に固定されるようになっているため、パイプ10とフランジ部材20の強固な締結が得られると同時に、シール性を確保した上で、歪み等が生じず、作業を行う際に必要なスペースを小さくでき、コストも削減できる。
【0026】
次に、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。本実施の形態では、フランジ部材20の作製工程と、当該作製工程にて作製されたフランジ部材20とパイプ10との締結工程について説明するものである。以下、各工程について詳細に説明する。
【0027】
始めに、フランジ部材20の作製工程について、説明する。まず、所定の外形状に形成された板状のフランジ部材基材20Aに対し、
図2(a)に示すように、パンチ加工や切削加工等で2箇所に係合孔26を形成する。次に、
図2(b)に示すように、2箇所の係合孔26同士の中央に、略円筒形状の開口部22をパンチ加工や切削加工等で形成する。それから、
図2(c)に示すように、開口部22の下方部分の周縁部分を内側に延出させて仮第1挟持部24Aを形成し、上段部と下段部を有する開口部22とする。
【0028】
その際、
図2(c)に示すように、本実施の形態では、治具として開口部22の周縁部分の一定幅を押し潰すことが可能な程度の直径のパンチ50を使用しており、開口部22に対して上方からパンチ50を所定位置まで挿入することで、開口部22の周縁部分の一部を押し潰しながら下方へ寄せて、大径の上段部と小径の下段部からなる段部を形成するようになっている。また、このパンチ50は、その先端部の外側部分51に所定の丸み又は傾斜の付いた形状となっており、さらに、パンチ50を打ち抜かないで所定位置(例えば、フランジ部材基材20Aの厚みの半分位置)まで挿入して停止させるようになっている。これにより、パンチ50で下方に寄せて内側に延出させた開口部22の周縁部分のメタルフロー(鍛流線)を切断することなく、上段部と下段部を有する段部を形成することができる。その結果、第1挟持部24と第2挟持部25となる部分を強固に効率よく形成することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、パンチ50を用いて、
図2(c)に示すような、仮第1挟持部24Aとなる小径の下段部を形成する際に、同時にその上面が、所定の角度θ(
図4に図示)で内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられた状態に形成されるようになっている。具体的には、パンチ50における下段部と当接する先端部の当接部分52の形状が、内側から外側に向けて下方に傾斜するように形成されており、当該パンチ50で下段部を押圧しながらパンチ50の当接部分52の当該形状を下段部に転写することで、角度が付けられた状態を形成するようになっている。
【0030】
次に、
図3(a)に示すように、開口部22の上段部の周縁部分を上面側から円形状に押し潰して当該部分の材料を内側に押し出すと同時に、押し出した箇所をさらに内側に傾斜させ(例えば、垂直方向に対して20°〜60°程度傾斜させ)、第2挟持部25を形成する。なお、このように上段部が加工された開口部22における下段部は、上記したように、仮第1挟持部24Aとなっている。
【0031】
ここで、
図3(a)に示すように、本実施の形態では、治具としてのパンチ抑え治具60が、上下動可能な筒状部材であり、その先端部61の内側部分が下方に向かって細くなるように傾斜した形状となっている。そして、このようなパンチ抑え治具60の先端部61を、開口部22の周縁部分の一定幅を残した外側部分に押し当てて、上方から所定位置まで押し潰すように挿入しながら、先端部61の内側の傾斜した箇所でフランジ部材基材20Aの材料を内側に押さえることで傾斜させる方向に寄せることで、開口部22の周縁部分の一部を第2挟持部25として形成するようになっている。
【0032】
また、このパンチ抑え治具60は、その当接する先端部61に所定の丸み(例えば、0.3R〜2Rの丸み)の付いた形状となっており、さらに、パンチを打ち抜かないで所定位置(例えば、フランジ部材基材20Aの厚みの半分位置)まで挿入して停止させるようになっている。これにより、パンチ抑え治具60の先端部61で押し潰した第2挟持部25は、メタルフロー(鍛流線)を切断することなく成形されるため、第1挟持部24と第2挟持部25となる部分を高強度を保持した状態で効率よく形成することができる。
【0033】
それから、フランジ部材20とパイプ10との締結工程に移り、
図3(b)に示すように、パイプ10を上方から挿入する。このとき、パイプ10の先端部12の先端は、拡径されていない仮先端部12Aとなっており、上方の通路11と同じ径となっている。また、パイプ10は、その仮先端部12Aが第2挟持部25の内側を通り、仮第1挟持部24Aの上面に当接するようになっている。
【0034】
そして、
図4に示すように、パイプ10の仮先端部12Aを仮第1挟持部24Aの上面に当接させたら、
図5に示すように、上方から図示しない装置で抑えた抑え治具としてのパンチ抑え治具60で第2挟持部25を下方に抑えつつ、下方から側面視略台形状に形成された押圧治具70を上方に動かして、仮第1挟持部24Aを押し上げながら潰すように変形させていく。このとき、上方からパイプ10を抑えると共に押圧治具70で仮第1挟持部24Aを押圧することで、パイプ10の仮先端部12Aを拡径させていく。
【0035】
なお、このとき、
図4に示すように、仮第1挟持部24Aの上面の内側が、所定の角度θ(例えば10°〜30°程度)で上方に曲折してせり上がっている。これにより、仮第1挟持部24Aの上面が、内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられた案内部となっている。そして、ここにパイプ10の仮先端部12Aを当接させ、押圧治具70で仮第1挟持部24Aを上方に向けて押圧して変形させることで、パイプ10の仮先端部12Aが拡径するように外側方向に導かれ易くなっている。この案内部の形状は、前記したように、
図2(c)で仮第1挟持部24Aを形成するときに同時に形成されるようになっている。そして、
図1(a),(b)及び
図6に示すように、上方に押し上げられて所定量潰された第1挟持部24が開口部22の周縁部23に形成され、それと共に、第1挟持部24と第2挟持部25で拡径したパイプ10の先端部12を開口部22の周縁部23にかしめて固定する。
【0036】
このように、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法によれば、パイプ10の先端部12が、拡径された状態でフランジ部材20の第1挟持部24と第2挟持部25によって挟持されることで、フランジ部材20の開口部22の周縁部23に固定されるようになっているため、溶接やロー付けを行わなくても、パイプ10とフランジ部材20の強固な締結が得られると同時に、シール性を確保することができ、その上で、高温による歪み等が生じない状態にすることができる。
【0037】
また、従来の溶接では、パイプ10の外側から作業を行う必要があり、広い作業スペースを必要としていたが、本実施の形態では、パイプ10の外側はパンチ抑え治具60で抑えておくだけであり、当該状態のパイプ10の内側から押圧治具70で押圧していけば、かしめ固定ができるため、溶接作業が廃止でき、ロー付けのようなロット生産を回避することができ、連続生産が可能になるため、作業効率が向上して、コストも削減できる。
【0038】
また、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法によれば、第2挟持部25をパンチ抑え治具60で抑えつつ、押圧治具70で第1挟持部24を変形させることで、パイプ10の先端部12を、外側に拡径させつつ、第1挟持部24と第2挟持部25で挟持させて、フランジ部材20の開口部22の周縁部23に固定するようになっているため、第1挟持部24を変形させるだけでパイプ10の先端部12を挟持することができ、より小規模な装置で、パイプ10とフランジ部材20の強固な締結が得られると同時に、シール性を確保することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法によれば、パイプ10の先端部12を挟持する前の仮第1挟持部24Aが、内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられており、仮第1挟持部24Aにパイプ10の仮先端部12Aを当接させると共に当該仮第1挟持部24Aを上方に向けて押圧して変形させることで、当該角度によってパイプ10の仮先端部12Aが外側に案内されて拡径され易くなっており、確実にパイプ10の仮先端部12Aを拡径させて、第1挟持部24と第2挟持部25で挟持して固定することができる。
【0040】
また、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法によれば、フランジ部材20は、板状のフランジ部材基材20Aに所定の段部を有する開口部22を形成し、そのうちの上段部の周縁部分の一部を下方へ押し潰しながら内側に傾斜させることで第2挟持部25を形成するようになっており、その際のパンチ抑え治具60が、先端部61に所定の丸みが付いており、これによって開口部22の周縁部分のメタルフロー(鍛流線)を切断することなく、第2挟持部25を形成するようになっていることで、第1挟持部24と第2挟持部25を強固に効率よく形成することができる。
【0041】
また、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材20の締結方法によれば、フランジ部材20は、板状のフランジ部材基材20Aに所定の開口部22を形成した後、その開口部22の周縁部分の一部を押し潰しながら下方へ寄せることで段部を形成し、さらに当該段部から仮第1挟持部24A(第1挟持部24となる箇所)と第2挟持部25を加工して形成されるようになっており、段部を形成する治具としてのパンチ50の先端部から後端部に向けて広がるような丸み又は傾斜が付けられており、これによって開口部22の周縁部分のメタルフロー(鍛流線)を切断することなく、段部を形成するようになっていることで、第1挟持部24と第2挟持部25となる部分を強固に効率よく形成することができる。
[発明の実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、
図7〜
図10を参照して説明する。なお、本実施の形態における前記した発明の実施の形態1と同様の構成の一部については、同じ符号を付して、説明を省略している。
【0042】
図7は、重量軽減を図るため、フランジ部材の板厚を薄くした場合を想定したもので、本発明の実施の形態2に係るパイプとフランジ部材の締結構造を示す断面図である。
図8の(a)は、同実施の形態に係るパイプとフランジ部材の締結部分の加工手順を示す平面図であり、
図8の(b)は、(a)のB−B断面図である。
図9〜
図10は、同実施の形態に係るパイプとフランジ部材の締結部分の加工手順を示す断面図である。
【0043】
まず、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材120の締結構造について、
図7を用いて説明する。本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材120の締結構造は、
図7に示すように、前記した発明の実施の形態1よりも薄いフランジ部材120によって、パイプ10の先端部12がかしめ固定された構造である。このため、フランジ部材120の外周及びかしめ部分には、バーリング等による補強リブを設けている。これ以外の点については、前記した発明の実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
次に、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材120の締結方法について、
図7〜
図10を参照して説明する。本実施の形態では、フランジ部材120の作製工程と、当該作製工程にて作製されたフランジ部材120とパイプ10との締結工程について説明するものである。なお、本実施の形態では、バーリング加工を施した部材を用いてフランジ部材120を作製することが、前記した発明の実施の形態1と異なる点である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0045】
始めに、フランジ部材120の作製工程について、説明する。まず、所定の外形状に形成された板状のフランジ部材基材120Aのフランジ部材本体121に対し、
図8(a),(b)に示すように、パンチ加工や切削加工等で2箇所に係合孔126を形成する。また、
図8(a),(b)に示すように、2箇所の係合孔126同士の中央に、略円筒形状の開口部122をパンチ加工や切削加工等で形成する。
【0046】
次に、
図9(a)に示すように、開口部122の周縁部分をバーリング加工によって屈曲させて立ち上げて立上げ部127Aを形成し、開口が拡がった開口部122とする。その後、
図9(b)に示すように、立上げ部127Aを上方から押圧して所定量潰すように変形させ、立上げ量を抑えて増肉させた立上げ部127Bとする。
【0047】
その際、
図9(b)に示すように、本実施の形態では、立上げ部127Aを一定幅増肉させて立上げ部127Bを形成するように、内側の大きさを規制するとともに外側の大きさを規制して、当該立上げ部127Aを押し潰すことが可能な構成の立上げ部押さえ治具150を治具として使用している。そして、この立上げ部押さえ治具150で上方から立上げ部127Aの幅を所定幅に規制しつつ押圧して潰すことで、立上げ量を抑えて増肉させた立上げ部127Bを形成するようになっている。
【0048】
次に、
図10(a)に示すように、立上げ部122Bの内側部分の材料を塑性加工により底面方向に移動させながら内側に延出させて、仮第1挟持部124Aを形成し、開口を再び狭めた開口部122とする。また、このとき、残っている外側部分が仮第2挟持部125Aとなる。
【0049】
その際、
図10(a)に示すように、本実施の形態では、治具として立上げ部127Bの内側部分を押し潰すことが可能な程度の直径の第1パンチ160を使用しており、開口部122に対して上方から第1パンチ160を所定位置まで挿入することで、立上げ部127Bの内側部分の一定幅を押し潰しながら下方へ寄せて、小径の下段部である仮第1挟持部124Aと大径の上段部である仮第2挟持部125Aからなる段部を形成する。また、この第1パンチ160は、その先端部の外側部分161に所定の丸み又は傾斜の付いた形状となっており、さらに、第1パンチ160を打ち抜かないで所定位置(例えば、フランジ部材基材120Aの立上げ部127B厚みの半分位置)まで挿入して停止させるようになっている。これにより、第1パンチ160で下方に寄せて内側に延出させた開口部122の周縁部分のメタルフロー(鍛流線)を切断することなく、下段部の仮第1挟持部124Aと上段部の仮第2挟持部125Aを有する段部を形成することができる。その結果、第1挟持部124と第2挟持部125となる部分を強固に効率よく形成することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、第1パンチ160を用いて、
図10(a)に示すような、仮第1挟持部124Aとなる小径の下段部を形成する際に、同時にその上面が、所定の角度(
図4に図示したものと同様)で内側から外側に向けて下方に傾斜するように角度が付けられた状態に形成されるようになっている。具体的には、第1パンチ160における下段部と当接する先端部の当接部分162の形状が、内側から外側に向けて下方に傾斜するように形成されており、当該第1パンチ160で下段部を押圧しながら第1パンチ160の当接部分162の当該形状を下段部に転写することで、角度が付けられた状態を形成するようになっている。
【0051】
次に、
図10(b)に示すように、仮第2挟持部125Aを内側に傾斜させ(例えば、垂直方向に対して20°〜60°程度傾斜させ)、第2挟持部125を形成する。なお、このように上段部が加工された開口部122における下段部は、上記したように、仮第1挟持部124Aとなっている。
【0052】
ここで、
図10(b)に示すように、本実施の形態では、治具としての第2パンチ170が、上下動可能な筒状部材であり、その先端部の内側部分171が下方に向かって細くなるように傾斜した形状となっている。そして、このような第2パンチ170の先端部の内側部分171を、仮第2挟持部125Aの外側部分に押し当てて、上方から所定位置まで下降させることで、当該内側部分171で仮第2挟持部125Aを内側に傾斜させて、開口部122の周縁部分の一部を第2挟持部125として形成するようになっている。
【0053】
それから、前記した発明の実施1と同様のフランジ部材120とパイプ10との締結工程に移り、
図7に示すように、仮第1挟持部124Aを変形させた第1挟持部124と第2挟持部125で拡径させたパイプ10の先端部12を開口部122の周縁部123にかしめて固定する。
【0054】
このように、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材120の締結方法によれば、前記した発明の実施1と同様の作用効果の他、バーリング加工を施した部材を用いてフランジ部材120を作製しているため、より薄いフランジ部材120で、パイプ10の先端部12をかしめ固定することができる。
[発明の実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、
図11を参照して説明する。なお、本実施の形態における前記した発明の実施の形態1と同様の構成の一部については、同じ符号を付して、説明を省略している。
【0055】
図11は、本発明の実施の形態3に係るパイプとフランジ部材の締結構造及び締結方法を示す断面図である。
【0056】
まず、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材220の締結構造について、
図11を用いて説明する。本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材220の締結構造は、
図11に示すように、前記した発明の実施の形態1よりも、パイプ10の先端部212が大きく拡径し、かつ、大きく傾斜した状態でかしめ固定された構造である。これ以外の点については、前記した発明の実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
次に、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材220の締結方法について、
図11を参照して説明する。本実施の形態では、フランジ部材220とパイプ10との締結工程について説明するものである。なお、フランジ部材220の作製工程については、前記した発明の実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
本実施の形態のフランジ部材220とパイプ10の締結工程では、フランジ部材220の第1挟持部224及び第2挟持部225がプレス機(図示省略)により押圧変形可能となっており、先端部が拡径されていないパイプ10を上方から挿入した後、
図11に示すように、下方から側面視略台形状に形成されたプレス機の第1押圧治具250を上方に動かして、第1挟持部224を押し上げながら潰すように押圧変形させると共に、上方から筒形状に形成されたプレス機の第2押圧治具260を下方に動かして、第2挟持部225を押し下げながら潰すように押圧変形させる。
【0059】
このとき、プレス機に設けられた第1押圧治具250と第2押圧治具260の双方で上下から押圧するため、パイプ10の先端部212を大きく拡径させることができる。そして、
図11に示すように、上方に押し上げられて所定量潰された第1挟持部224が開口部222の周縁部223に形成され、それと共に、下方に押し下げられて所定量潰された第2挟持部225が形成されることで、第1挟持部224と第2挟持部225で拡径したパイプ10の先端部212を開口部222の周縁部223にかしめ成形して固定する。
【0060】
このように、本実施の形態に係るパイプ10とフランジ部材220の締結構造及び締結方法によれば、前記した発明の実施1と同様の作用効果の他、プレス機に設けられた第1押圧治具250と第2押圧治具260の2つの押圧治具で第1挟持部224と第2挟持部225を押圧変形させることで、パイプ10の先端部212を、外側に拡径させつつ、第1挟持部224と第2挟持部225で挟持させてかしめ成形して、フランジ部材220の開口部222の周縁部223に固定するようになっているため、第1挟持部224と第2挟持部225の双方を変形させてパイプ10の先端部212を挟持することができ、より強力かつ確実に、パイプ10とフランジ部材220の締結におけるシール性を確保することができる。
【0061】
なお、以上説明した各実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【0062】
例えば、前記した各実施の形態では、自動車のエンジンから出た排気ガスを内部の通路に通すステンレス製のEGRパイプに本発明を適用したが、これに限るものではなく、他の用途のパイプとフランジ部材との締結に対して、本発明を適用しても良い。
【0063】
また、前記した各実施の形態では、パイプとエンジン本体を繋ぐ箇所にフランジ部材が設けられていたが、これに限るものではなく、例えばフランジ部材を介してパイプ同士を繋ぐ箇所に本発明のフランジ部材が設けられていても良い。
【0064】
また、前記した各実施の形態では、上方から第2挟持部を抑えて下方から第1挟持部を押圧してかしめ固定していく場合と、上方と下方の双方から第2挟持部と第1挟持部を押圧してかしめ固定していく場合について説明したが、これに限るものではなく、下方から第1挟持部を抑えて上方から第2挟持部を押圧してかしめ固定していく方法を用いても良い。
【0065】
また、前記した発明の実施の形態1,2では、フランジ部材20の第2挟持部25を作製する治具としてのパンチ抑え治具60(発明の実施の形態2では第2パンチ170が相当)と、パイプ10の先端部12を第1挟持部24と第2挟持部25で挟持してかしめ固定するときに第2挟持部25を抑える抑え治具としてのパンチ抑え治具60(発明の実施の形態2では第2パンチ170が相当)として、同じものを兼用して使用していたが、これに限るものではなく、別々の治具が用意されていても良い。ただし、2つの治具を兼用とすることで、パイプ10とフランジ部材20のかしめ固定を行う装置が簡略化されると共に、製造工程も簡略化されるため、コストダウンに繋がり易くなる。
【0066】
また、前記した各実施の形態では、かしめ固定のみでパイプとフランジ部材を締結させていたが、これに限るものではなく、かしめ部分にシール剤や接着剤を併用、あるいはかしめ固定させた上で、溶接等を施しても良い。