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特開2016-50859LET非依存性ピーク検出法、線量分布測定法、並びに、熱蛍光特性の判定法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-50859(P2016-50859A)
(43)【公開日】2016年4月11日
(54)【発明の名称】LET非依存性ピーク検出法、線量分布測定法、並びに、熱蛍光特性の判定法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/115 20060101AFI20160314BHJP
【FI】
   G01T1/115 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-176380(P2014-176380)
(22)【出願日】2014年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(71)【出願人】
【識別番号】591031430
【氏名又は名称】株式会社千代田テクノル
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】眞正 浄光
(72)【発明者】
【氏名】古場 裕介
(57)【要約】
【課題】 高精度且つ簡易に、LET依存性を測定する方法(依存性のないピークを検出する方法)を確立して、粒子線の線量分布を判明させると共に熱蛍光体の熱蛍光特性を判定できる判定方法を提供すること。
【解決手段】 熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出するLET非依存性ピーク検出法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出するLET非依存性ピーク検出法。
【請求項2】
所定の熱蛍光体における粒子線の線量分布測定法であって、
上記熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出し、該非依存性ピークの測定値からLETと線量分布測定を行う線量分布測定法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度且つ簡易に行うことができる、LET非依存性ピーク検出法、線量分布測定法、並びに、熱蛍光特性の判定法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LET(LET:Linear Energy Transfer、線エネルギー付与)は、放射線、粒子線が媒質中を通過する際に媒質に与えるエネルギーであり、放射線、粒子線の種類(線質)の違いを表す指標として用いられている。
一般的に、熱蛍光の発光効率はLETに大きく依存することが知られている。
熱蛍光は簡易に検出・測定することができるため、医療現場をはじめとして幅広い分野で用いられており、その依存性を利用して、簡易にLETを算出する方法、粒子線の線量分布を測定する方法がこれまでに試みられている。例えば、非特許文献1では、BeOで観測される2つのグローピークの比からLETを算出する方法(HTR法)が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. Yasuda and K. Fujitaka“GLOW CURVES FROM BERYLLIUM OXIDE EXPOSED TO HIGH ENERGY HEAVY IONS”Radiation Protection Dosimetry,Vol. 87, No. 3, pp. 203-206 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LETに対して熱蛍光の発光効率が大きく変化するため、熱蛍光を用いた粒子線の線量分布の測定方法については、いまだ用いる熱蛍光体ごとに線種ごとのLET依存性が十分に判明しておらず、実用性の点で十分ではなかった。
また、非特許文献1に記載のHTR法によって算出されるLETは誤差が大きいという問題があり、いまだ十分な実用性がなかった。
このため、高精度且つ簡易に、熱蛍光体のLET依存性を理解し、粒子線の線量分布を判明させて、熱蛍光体の熱蛍光特性を判定できる方法が求められている。
したがって、本発明の目的は、高精度且つ簡易に、LET依存性を測定する方法(依存性のないピークを検出する方法)を確立して、粒子線の線量分布を判明させると共に熱蛍光体の熱蛍光特性を判定できる判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、Alにおいて、粒子線を照射して得られるグロー曲線のうち特定のグローピークがLETに対する依存性が少ないことを知見し、かかる知見に基づいてこの特定のグローピークを再現性よく検出できる方法を検討するとともに検出したグローピークデータの応用方法について種々検討を行い、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出するLET非依存性ピーク検出法。
2.所定の熱蛍光体における粒子線のLETと線量分布測定法であって、
上記熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出し、該非依存性ピークの測定値から線量分布測定を行う線量分布測定法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の検出法は、高精度且つ簡易にLET依存性のない熱蛍光スペクトルを示すピークを検出でき、粒子線の線量分布や熱蛍光特性を測定する方法に適用できるものである。
本発明の線量分布測定法は、高精度且つ簡易に粒子線の線量分布を測定することができるものである。
本発明の判定法は、高精度且つ簡易に、熱蛍光体の熱蛍光特性を判定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1のグロー曲線測定の結果を示すチャートである。
図2図2は、実施例1のグロー曲線の測定装置の説明図である。
図3図3は、実施例2のグロー曲線測定の結果(X線)を示すチャートである。
図4図4は、実施例2のグロー曲線測定の結果(Ne線)を示すチャートである。
図5図5は、実施例2のグロー曲線測定の結果(X、Ne線)を示すチャートである。
図6図6は、実施例2の照射線量と蛍光強度との比較の結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例2のグローピークA及びBのTL強度/線量とLETとの関係グラフである。
図8図8は、実施例2のグローピークB/Aの値とLETとの関係グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔LET非依存性ピーク検出法〕
本発明の検出法は、熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出するLET非依存性ピーク検出法である。
【0009】
<熱蛍光体>
本発明の検出法に用いられる上記熱蛍光体は、粒子線により熱蛍光を発生する特性を有すれば、特に制限されず、例えば、金属酸化物を主成分としてなるセラミックスからなり、
発光中心成分を含有するもの等が挙げられる。
ここで、上記主成分とは、上記セラミックスがその全重量に対して50重量%以上含有することを意味し、好ましくは70重量%以上である。
上記金属酸化物は、セラミックスを形成するものであれば、特に制限されず、例えば、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Fr、Ra、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lrなどの金属の酸化物を挙げることができ、これらの金属酸化物は単体または混合物を使用することができる。具体的には、Al、BaSO、LiF、BeO、CaF、Li、CaSO等からなる群より選択される化合物を挙げることができ、中でもAlが好ましい。
【0010】
本明細書において、上記発光中心成分とは、放射線や粒子線を照射した熱蛍光体において励起され光を放出する成分をいう。
上記発光中心成分は、特に制限されず、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を挙げることができる。
上記金属酸化物と上記発光中心成分との配合割合は、両者の重量の合計量を100とした場合に、金属酸化物:発光中心成分=90〜99.999:0.001〜10とするのが好ましい。
なお、上記熱蛍光体は、熱蛍光特性を示す市販のものを用いることもできる。市販のものとしては、例えば、セラミックス(型名:A476、京セラ社製((Al含有量96%))などが挙げられる。
【0011】
<粒子線>
本発明の検出法で用いられる上記粒子線は、特に制限されず、例えば、アルファ線、ベータ線、陽電子線、陽子線、He、C、Ne、Si、Ar、Feなどの重イオン線、中性子線などが挙げられる。
【0012】
<照射>
上記粒子線の照射の方法は、特に制限されず、公知の方法で照射を行うことができ、例えば、放射線医学総合研究所のHIMACなどを用いて行うことができる。
上記粒子線の照射量は、特に制限されないが、 1 〜 20 Gyであると好ましい。
【0013】
<検出>
本発明の検出法においては、検出する際に、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定する手法(手法1)と、照射後の熱蛍光体を特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定する手法(手法2)とのいずれかを用いる。
以下、両者について説明する。
(手法1)
手法1について図1を参照して具体的に説明する。
図1は、上記熱蛍光体(型名:A476、京セラ社製(Al含有量96%のセラミックス))に、X線、He線、C線、Ne線を同線量(20Gy)の照射をし、照射後の熱蛍光体を所定の昇温温度で昇温して熱蛍光特性を測定した結果の一例である。
この場合の熱蛍光特性は、発光量を温度の関数で表すいわゆるグロー曲線の特性である。
なお、照射した粒子線・放射線のLETは、Ne線>C線>He線>X線である。
図1に示すように、図1のBに示すピークは、その強度がLETの大きさとは逆にNe線<C線<He線<X線であり、LETに依存的であることがわかる。
一方、図1のAに示すピークは、照射した粒子線・放射線の線種に関わらず、同程度のピーク強度を示しており、LET依存性のない非依存性ピークであることがわかる。
ここで、上記の「同程度」とは、ピーク強度がおよそ ±3%以内の範囲内にあることをいう。
上記所定の昇温速度は、0.5℃/秒以下であるのが好ましく、0.1℃/秒以下であるとより好ましい。このような昇温速度で温度を上昇させてグロー曲線の測定を行うことにより、ピークを高精度に測定することができ、ピークごとの異同を明確に把握することができる。換言すると、このような昇温速度にて温度を上昇させることによって初めてLET依存性のピークの存在が明らかになったのであって、この昇温速度が本発明の特徴点であると言える。
また、上記の測定温度の範囲は、特に制限されないが、通常、室温〜400℃である。
なお、上記測定に用いられる装置は、上記の所定の昇温速度に制御が可能であれば、特に制限されず、例えば、実施例に示すような光子の数を計数するフォトンカウンティングヘッドと、昇温装置と、遮光された測定部とを備える装置等を用いることができる。
【0014】
(手法2)
手法2は、照射後の熱蛍光体を特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定する手法である。
上記の特定の波長は、例えば、Al(A476)の熱蛍光体においては、693nmである。
この際用いることができる上記光学フィルターは、一般的に使用されるバンドパスフィルター、ロングパスフィルターなど公知のものを用いることができ、検出する波長により適宜変更されうるものである。
【0015】
以上の説明のとおり、本発明の検出法は高精度且つ簡易にLET依存性のないスペクトるピークを検出することができる。
また、本発明の検出法は、LETを測定する方法、粒子線の線量分布を測定する方法に好適に適用することができ、これらの方法を高精度且つ簡易に実行することを可能にする。
【0016】
〔線量分布測定法〕
次に、本発明の線量分布測定法を説明する。
以下の説明においては上述の検出法と異なる点を中心に説明する。特に説明しない点については上述の説明が適宜適用される。
【0017】
本発明の線量分布測定法は、所定の熱蛍光体における粒子線の線量分布測定法であって、
上記熱蛍光体に粒子線を照射し、照射後の熱蛍光体を所定の昇温速度で昇温して熱蛍光特性を測定するか、特定の波長の光のみで熱蛍光特性を測定することにより、LET依存性のない非依存性ピークを検出し、該非依存性ピークの測定値から線量分布測定を行う線量分布測定法である。
【0018】
粒子線を照射してから非依存性ピークを検出するまでは上述の「検出法」と同様であるので、線量分布測定を行う工程について図1を参照して説明する。
【0019】
例えば、図1に示す条件の場合、図1のAに示すピークは、上述したように、その発光強度が、LETにほとんど依存しないため、LETによる補正をすることなく粒子線の線量分布を示すことになる。
すなわち、図1のAに示すピークの測定値はLETに依存しないものであるため、このピークを検出すれば、このピークがLETによる補正をする必要がないため、単位面積中におけるピーク強度の分布を測定すれば、どの部分で線量がどの程度であるかを正確に測定することができる(単位面積当たりの線量分布)。
このように本発明の線量分布測定法は、LETに依存しないピークに基づいて線量の分布を測定する方法であるため。補正をすることなく粒子線の線量分布を正確に取得できる。
【0020】
〔熱蛍光特性判定法〕
次に、本発明の判定法を説明する。
以下の説明においては上述の検出法、線量分布測定法と異なる点を中心に説明する。特に説明しない点については上述の説明が適宜適用される。
【0021】
本発明の判定法は、熱蛍光体の熱蛍光測定値を補正するに際して、該熱蛍光体のLET依存性を求めて該LET依存性をもって補正し、線質及び線量に対する正確な熱蛍光特性を求める熱蛍光特性の判定法であって、
上記熱蛍光体における所定の昇温速度での150〜200℃における熱蛍光特性を測定し、LET依存性のないピークを特定し、
上記熱蛍光体の測定値における上記のLET依存性のないピーク以外のピークについて、補正を行うことを特徴とする判定法である。
【0022】
(ピークの特定)
ピークの特定に際して、LET非依存性のピークの検出は、上述の本発明の検出法と同様に行うことができるが、その際の昇温温度範囲は、昇温速度での150〜200℃である。この温度範囲とすることにより、正確にLET依存性のないピークを特定することができる。
また、上記LET依存性あるピークは、LET依存性のないピークを検出した後で、対象である熱蛍光体の熱蛍光測定を行い、得られた結果からLET依存性のないピークを除外してピークを確認することで把握することができる。具体的には、上述の図1の例では、図1のBに示すピークである。
【0023】
(LETの算出)
上述の工程で把握されたLET依存性のないピークとそれ以外のLET依存性のあるピークとの比を、あらかじめ線種ごとの線量が判明している照射を行い、線種ごとに算出し、得られた比に基づいてLETを算出する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
(熱蛍光体)
熱蛍光体として、Al含有量96%のセラミックス(商品名:A476、京セラ社製)、大きさ(縦 10 mm×横 10 mm×厚さ 1 mm)を用いた。
【0026】
(粒子線・放射線の照射)
それぞれ別々の上記熱蛍光体に対して、20GyのX線、He線、C線、Ne線を照射した。
X線の照射は、LINAC(Varian社製)を用いて行った、
He線、C線、Ne線の照射は、HIMAC(放射線医学総合研究所)を用いて行った。
【0027】
(グロー曲線の測定)
放射線、または、粒子線を照射した熱蛍光体の熱蛍光特性を調べるため、グロー曲線を調べた。
グロー曲線は、図2に示すフォトンカウンティングヘッド(商品名:H11890-210、浜松ホトニクス社製)と、昇温装置(型名:SCR−SHQ−A、坂口電熱社製)と、遮光された測定部としての暗箱と、制御用のソフトウェアーがインストールされているコンピュータ(図示せず)とを備える装置で、下記条件にて測定を行った。
条件:
昇温速度:0.13℃/min
測定温度:室温〜400℃
光学フィルター:なし

得られた結果を図1に示す。
その結果、図1のAに示すLET依存性のない非依存性ピークが検出された。
なお、図1のAに示すピーク時の温度は 165 ℃、発光強度は 6×10 、Bのピーク時の温度は 250 ℃であり、発光強度は 2〜3×10 、Cのピーク時の温度は 315 ℃であり、発光強度は 1.5〜2.2×10 であった。
図1のAに示すピークは、照射した粒子線・放射線のLETに関係なく強度がほぼ一定であった。
図1のB及びCに示すピークは、LETの大きさとは、逆に発光強度が、Ne線<C線<He線<X線の関係であった。
この結果から、図1のAに示すピークは、発光強度がLETにほとんど依存しないため、補正をすることなく粒子線の線量分布が取得できることがわかる。
【0028】
〔実施例2〕
X線、Ne線に対するグロー曲線の線量応答性を測定した。
粒子線・放射線の照射量を変えた以外は、実施例1と同様にして、グロー曲線を測定した。
なお、粒子線・放射線の照射量は、1,2、5、10、20Gyで行った。
その結果を、図3(X線)、図4(Ne線)に示す。
また、X線を20Gy照射したときと、Ne線を20Gy照射したときと、のグロー曲線を比較した結果を図5に示す。
また、図3図4それぞれのA及びBに示すピークにおける発光強度を比較した結果を図6に示す。
【0029】
結果から、図3図4に示すように、照射した線量に依存的に、発光強度が増加しているのがわかる。
また、図5に示す結果から、図中にAで示すピークの発光強度は、照射した線種に依存しないことがわかる。すなわち、本方法により、LET依存性のない非依存性ピークが検出されたのがわかる。図6に示す結果からも、照射する線量を変化させても、同様の現象が起こるのがわかる。すなわち、照射する線量を変化させても、本方法により、LET依存性のない非依存性ピークが検出されたのがわかる。
次に、上述の測定値を用いてLETを算出した。
LETの算出に際しては、まずグローピークAとグローピークBのTL強度/線量の関係を求める。図7にX線、He線、C線及びNe線の4種の線種に対するピークAの面積と線量との関係、すなわちピークAのTL強度/線量、及びこれら4種の線種に対するピークBの面積と線量との関係、すなわちピークBのTL強度/線量のを示す。なお、6MVのX線のLETは0.2eV/μm、150MeV/uのHe線のLETは2eV/μm、290MeV/uのC線のLETは13.2eV/μm、400MeV/uのNe線のLETは35eV/μmであった。
図7に示すようにグローピークAとBのLET依存性の違いが確認できる。この違い、すなわちTL強度比を用いることでLETを算出できる。LETを算出するには、図8に示すようにグローピークB/Aの値とLETとの関係をあらかじめグラフ化して求めておく。ついで、実際の測定値から得られるグローピークB/Aの値をこのグラフに当てはめることでLETの値を求めることができる。
たとえば、図8に示すNeのグローピークB/AとLETとの関係グラフから、グローピークB/Aの実測値が0.4であった場合、LETは1keV/μmとなることが判る。
このように本発明の線量分布測定法を用いた検出器を作成すると、かかる検出器は、グローピークAのTL強度と線量の関係から線量を算出し、グローピークB/AからLETを算出できる、ハイブリット検出器となる。
【0030】
以上から、本発明の検出法は、高精度且つ簡易に、LETを測定する方法、粒子線の線量分布を測定する方法に適用できるものであることがわかる。
また、本発明の線量分布測定法は、高精度且つ簡易に粒子線の線量分布を測定することができるものであることがわかる。
また、本発明の判定法は、高精度且つ簡易に、LETを測定する方法、粒子線の線量分布を測定する方法に適用できるものであることがわかる。
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図1
図2