【解決手段】圧電体層110と、隣接する圧電体層110の間毎に形成される内部電極層120と、を含む積層体部100、隣接する内部電極層120に互いに異なる極性の電荷が印加されるように、積層体部に形成される電極部200、隣接する圧電体層110を接続させるために、内部電極層120を貫通して形成される接続孔300、を含む。接続孔300の大きさは、隣接する内部電極層120のうち上層に行くほど増加する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いたものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明らかに表現しない限り、複数の表現を含む。本願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解しなくてはならない。
【0010】
また、「結合」とは、各構成要素の間の接触関係において、各構成要素の間に物理的に直接接触される場合のみを意味することではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、その他の構成に構成要素がそれぞれ接触されている場合まで包括する概念として使用する。
【0011】
以下、本発明に係る圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールの実施例を添付図面に基づいて詳細に説明し、添付図面に基づいて説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0012】
先ず、本発明の一実施例に係る圧電素子を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係る圧電素子を示す断面図であり、
図2は、本発明の一実施例に係る圧電素子を示す分解斜視図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施例に係る圧電素子1000は、積層体部100と、電極部200と、接続孔300とを含む。
【0015】
積層体部100は、圧電体層110と、隣接する圧電体層110の間毎に形成される内部電極層120とを含む。
【0016】
圧電体層110は、電気的信号を機械的信号に変換できる材料を含む。具体的に圧電セラミック及び圧電特性を示す高分子物質などが含まれ得る。本実施例では、圧電セラミックを例に挙げて説明するが、これにより本発明の範囲が制限されることはない。すなわち、圧電特性を示す高分子物質を用いて圧電体層110を形成することもできる。
【0017】
圧電体層110は、圧電セラミックをスラリー(Slurry)に調製し、ドクターブレードなどの方法を用いてグリーンシートを製作した後、グリーンシートを焼結して形成することができる。
【0018】
圧電セラミックは、チタン酸ジルコン酸鉛(Lead zirconate titanate、以下、PZTと称する)を主成分とすることができる。すなわち、リラクサ(relaxor)の添加された、PNN−PZT系圧電セラミック、PMN−PZT系圧電セラミックまたはPNN−PMN−PZT系圧電セラミックであることができる。また、鉛が含まれていない無鉛系圧電セラミックであることもできる。
【0019】
内部電極層120は、隣接する圧電体層110の間毎に形成される。つまり、隣接する内部電極層120の間毎に圧電体層110が形成される。
【0020】
隣接した内部電極層120には、後述する電極部200により互いに異なる極性の電荷が印加されるため、隣接した内部電極層120はその間に形成されている圧電体層110に電場を形成する。内部電極層120には互いに異なる極性の電荷を印加できるようにパターンを形成することができる。
【0021】
内部電極層120は、導電性物質を含む。本実施例のように、圧電セラミックを用いて圧電体層110を形成した場合は、導電性物質として圧電セラミックの焼結温度よりも高い融点を有する単一金属または金属合金を用いることができる。例としては、Pd、Pt、Ru、Ir、Au、Ni、Mo、W、Al、Ta、Ag及びTiで構成されたグループから選択された少なくとも1種の金属または、Pd、Pt、Ru、Sr、La、Ir、Au、Ni、Co、Mo、W、Al、Ta及びTiで構成されたグループから選択された少なくとも1種の金属の導電性酸化物または導電性窒化物を用いることができる。
【0022】
内部電極層120は、圧電体層110の上面及び下面に形成されるが、蒸着(deposition)により形成することができ、電極ペーストを圧電体層110の上面または下面に塗布することにより形成することもできる。
【0023】
積層体部100は、圧電体層110と内部電極層120とが交互に積層された構造で形成される。
【0024】
図1及び
図2には、内部電極層120が5層で構成されているが、これは例示に過ぎず、必要によって内部電極層120の積層数を変更することができる。
【0025】
積層体部100は、最上層または最下層のうちの少なくとも一つに形成されるカバー層130をさらに含むことができる。一例として、それぞれの上面に電極ペーストの形成された複数のグリーンシートを積層する場合、最上層に形成される電極ペーストが外部に露出することになる。この場合は、外部に露出された電極ペーストを保護するために、その上に上部カバー層130を形成することができる。
【0026】
この場合、
図1及び
図2に示すように、積層体部の最下層は内部電極層ではなく圧電体層111が形成されるので、下部カバー層を形成しなくてもよい。勿論、この場合にも最下層に配置される圧電体層111の下部に下部カバー層130を追加的に形成することもできる。
【0027】
カバー層130は、外部の衝撃から圧電体層110及び内部電極層120を保護するためのものであり、カバー層130は圧電機能とは関係のない部材であるため、圧電体層110の材質とは異なる材質を用いて形成しても構わない。しかし、圧電体層110との機械的結合または熱膨脹係数などを考慮して、カバー層130は圧電体層110と類似の材質を用いて形成することができる。
【0028】
すなわち、本実施例のように、圧電セラミックを用いて圧電体層110を形成した場合は、圧電体層110とカバー層130との間の機械的結合または熱膨脹係数を考慮して、カバー層130も圧電体層110に使用された圧電セラミックを用いて形成することができる。
【0029】
電極部200は、隣接する内部電極層120に互いに異なる極性の電荷が印加されるように、積層体部100に形成される。電極部200は、積層体部100の外部に位置する電源供給装置から電荷の供給を受け、積層体部100の内部に形成された内部電極層120に電荷を供給することができる。
【0030】
電極部200は、隣接する内部電極層120に互いに異なる極性の電荷が印加されるように、正極性の電荷を供給する正電極211と負極性の電荷を供給する負電極212とを含むことができる。
【0031】
図1及び
図2には、積層体部100の上面に形成された正電極211及び負電極212が示されているが、これに限定されることはない。
【0032】
例えば、隣接する内部電極層の両端が積層体部の両端に交互に延長されるように形成し、積層体部の外側面に外部電極を形成することにより、隣接した内部電極層に互いに異なる極性の電荷を印加することもできる。
【0033】
電極部200は、積層体部100の一面に形成される正電極211と、負電極212と、隣接する内部電極層120を交互に正電極211または負電極212と電気的に接続させるために積層体部100の内部に形成される導電用ビアホール220とを含むことができる。
【0034】
図2を参照すると、圧電体層110には、導電性物質で充填された導電用ビアホール220が形成されている。また、内部電極層120には正電極211または負電極212と電気的に接続されるようにするためのパターンが形成されている。したがって、隣接する内部電極層120は、導電用ビアホール220及びパターンを介して互いに異なる電極(正電極または負電極)と電気的に接続される。
【0035】
すなわち、
図2に示されているように、第1内部電極層121、第3内部電極層123及び第5内部電極層125が導電用ビアホール220及びパターンを介して正電極211と接続され、第2内部電極層122及び第4内部電極層124は、導電用ビアホール220及びパターンを介して負電極212と接続される。
【0036】
一方、交流電圧が印加され、正電極211及び負電極212の極性が変わるときには、第1内部電極層121、第3内部電極層123及び第5内部電極層125に負電荷が印加されることができ、この場合も本発明の範囲に属する。また、
図2に示された内部電極層120のパターンの形態は例示に過ぎず、内部電極層120が交互に正電極211または負電極212と接続することができれば本発明の保護範囲に属する。
【0037】
正電極211及び負電極212は、積層体部100の外部面に別個に形成されるので、積層体部100を焼結した後に形成することができる。したがって、上述した内部電極層120とは異なって、比較的に低い融点を有する導電性物質を用いることができる。例えば、電気伝導度に優れたCu、Agまたはこれらの合金などを用いて形成することができる。また、Au、Pd、Ni、Agまたはそれらの合金などを用いることができる。
【0038】
接続孔300は、隣接する圧電体層110を接続させるために、内部電極層120を貫通して形成される。接続孔300の大きさは、隣接する内部電極層120のうちの上層に行くほど増加する。
【0039】
すなわち、内部電極層120を貫通する接続孔300を形成することにより、ある一つの内部電極層120を間に置いて隣接する2つの圧電体層110が互いに接続される。
【0040】
接続孔300の大きさについて、隣接する内部電極層120を比較すると、上層の内部電極層120に形成された接続孔300の大きさが、下層の内部電極層120に形成された接続孔300の大きさより大きい。
【0041】
例として、
図2の第3内部電極層123を基準にして説明する。
【0042】
図2に示されているように、第3内部電極層123は、i)複数の圧電体層110との関係から、下部には第3圧電体層113、上部には第4圧電体層114と隣接している。また、ii)複数の内部電極層120との関係から、下部には第2内部電極層122、上部には第4内部電極層124と隣接している。
【0043】
第3内部電極層123に接続孔330を形成することで、焼結により第3圧電体層113と第4圧電体層114とが互いに接続されることができる。
【0044】
第3内部電極層123に形成された接続孔330の大きさは、第2内部電極層122に形成された接続孔320の大きさより大きく、第4内部電極層124に形成された接続孔340の大きさより小さい。
【0045】
一方、
図2では接続孔300の横断面が円形であるが、これは例示に過ぎず、三角形を含む多角形または不定形の接続孔300であることができる。
【0046】
接続孔300は、内部電極層120と同時にまたは異時に形成されることができる。
【0047】
このようにすることで、本発明の一実施例に係る圧電素子1000は信頼度が向上される。すなわち、内部電極層120の上面及び下面に形成され、互いに隣接する圧電体層110が接続孔300を介して互いに接続されるので、素子の破壊強度が増加することができる。
【0048】
一方、圧電素子1000の下面に、後述する振動板400が結合する場合、圧電素子1000と振動板400との弾性率の差により圧電素子1000の内部においては、応力が上部に行くほど増加し得る。したがって、本実施例に係る圧電素子1000は、積層体部の上部に行くほど内部電極層120に形成される接続孔300を大きくして、隣接する圧電体層110と接続する体積を積層体部の上部に行くほど増加させることにより圧電素子1000が安定に動作することができ、信頼度を向上させることができる。
【0049】
ここで、接続孔300は、隣接する内部電極層120のうちの下層に形成される第1接続孔と上層に形成される第2接続孔とをそれぞれ含むことができる。このとき、第1接続孔を縦方向に投映した領域が第2接続孔を縦方向に投映した領域に含まれ得る。
【0050】
また、第1接続孔の中心と第2接続孔の中心とは縦方向において一致することができる。
【0051】
なお、
図2の第3内部電極層123を例にして詳細に説明する。
【0052】
第3内部電極層123は、第4内部電極層124と隣接している。この場合、下層は第3内部電極層123となり、上層は第4内部電極層124となる。したがって、この場合には下層である第3内部電極層123に形成された接続孔330が第1接続孔330(以下、本例では同様である)となり、上層である第4内部電極層124に形成された接続孔340(以下、本例では同様である)が第2接続孔340となる。
【0053】
第1接続孔330と第2接続孔340とを縦方向に投映した場合、第1接続孔330を投映した領域が第2接続孔340を投映した領域に含まれる。すなわち、積層体部100を縦方向に投映した場合、第1接続孔330と第3内部電極層123とからなる境界が第2接続孔340と第4内部電極層124とからなる境界内に含まれる。
【0054】
このようにすることで、本発明の一実施例に係る圧電素子1000は、第2接続孔を貫通する縦軸を基準にして第1接続孔を隣接して形成することにより、圧電素子1000の内部で発生する応力に、より効果的に対応することができる。
【0055】
第2接続孔を貫通する縦軸が第1接続孔を貫通する縦軸と一致する場合にも圧電素子1000の内部で発生する応力に、より効果的に対応することができる。
【0056】
ここで、接続孔300は、内部電極層120を横方向に三等分した場合の中心部に過半が位置するように、それぞれの内部電極層120に複数形成することができる。
【0057】
接続孔300は、それぞれの内部電極層120に複数形成することができる。この場合、内部電極層120に形成された複数の接続孔300は、それぞれの内部電極層120を横方向に三等分した場合の中心部(
図1及び
図2に示された点線の間の領域)に過半が位置するように形成することができる。
【0058】
図1には、それぞれの内部電極層120に3つの接続孔300が形成されているが、これは例示に過ぎず、その数は多様に変更可能である。また、それぞれの内部電極層120に形成された複数の接続孔300がすべて中心部に位置しているが、これは例示に過ぎず、接続孔300が上述した条件を満たせば、中心部の外部にも形成されることができる。
【0059】
このようにすることで、本発明の一実施例に係る圧電素子1000は、ある内部電極層120を基準にして複数の接続部位が生じるので、応力に対してより効果的に耐えることができる。また、外郭部よりも素子の中央部から主に素子破壊が生じるので、複数の接続孔300のうちの過半を内部電極層120の中心部に位置づけることにより、素子の破壊強度を向上させることができる。
【0060】
ここで、接続孔300は、直径が100μm以上300μm以下であることができる。ここで、「直径」とは、接続孔300の横断面を通過する多くの直線のうちの最も長い直線の長さを意味することができる。
【0061】
接続孔300の直径が100μm未満である場合は、内部電極層120を形成するとき接続孔300が形成されないこともある。接続孔300の直径が300μmを超過する場合は、素子内で接続孔300の数が少なくなり、接続孔300の周辺に大きい応力が発生し得る。
【0062】
このようにすることで、本発明の一実施例に係る圧電素子1000は、内部電極層120に接続孔300をより容易に形成することができる。また、接続孔300の数を適当に調整できるので、内部応力に、より効果的に対応することができる。
【0063】
ここで、電極部200は、それぞれ1つの正電極211と1つの負電極212とからなる複数の電極対を含み、複数の電極対は、積層体部100の外面に互いに別個に形成されることができる。
【0064】
積層体部100の外面に電極対が複数形成されると、積層体部100の内部クラックなどにより内部電極層120が一部切れても、クラックを中心に両方にそれぞれ存在する電極対のためにクラックにより分離される2つの領域がそれぞれ個別的に圧電素子1000として機能を発揮することができる。
【0065】
一方、
図1及び
図2には、2対の電極対が示されているが、これは例示に過ぎず、電極対は3つ以上であることができる。
【0066】
このようにすることで、本発明の他の実施例に係る圧電素子1000は、内部クラックにより内部電極層120が一部切れても、依然として圧電機能を発揮することができる。これにより、素子の信頼性及び寿命が向上する。
【0067】
次に、本発明の他の実施例に係る圧電振動モジュールを説明する。
【0068】
図3は、本発明の他の実施例に係る圧電振動モジュールを示す斜視図であり、
図4及び
図5は、本発明の他の実施例に係る圧電振動モジュールの駆動過程を示す図である。
【0069】
図3に示すように、本発明の他の実施例に係る圧電振動モジュール2000は、圧電素子1000と、振動板400と、質量体500と、基板600と、を含む。
【0070】
圧電素子1000は、電気的信号を機械的変位に変換できる素子であって、詳細な説明は上述したので重複範囲での説明を省略する。
【0071】
振動板400は、圧電素子1000の横方向の伸縮により縦方向変位が生じるように、圧電素子1000の下面に結合される。
図3から
図5には、圧電素子1000が振動板400の下部に結合されているが、これは上述した圧電素子1000を逆にしたものである。
【0072】
圧電素子1000は、ボンディング方法またはソルダリング方法を用いて振動板400の一面に結合される。
【0073】
振動板400は、電源を印加することにより引張及び圧縮変形を繰り返す圧電素子1000と一体に変形するように、サス(Sus)のような弾性力を備えた金属材質で構成されることができる。
【0074】
振動板400と圧電素子1000がボンディング方法により結合された場合は、接着部材の硬化により発生し得るベンディング(Bending)現象を防止するために、振動板400は、圧電素子1000の熱膨脹係数と類似の材質であるインバー(Invar)を含むことが好ましい。
【0075】
質量体500は、振動板400で発生する縦方向変位による振動力を増加させる。
【0076】
振動力を最大化するために、質量体500は、圧電素子1000の引張及び圧縮変形により最大の変位が生じる振動板400の最大変位箇所に質量体500の中央部が結合されるようにすることができる。
【0077】
質量体500は、金属(Steel)材質で構成できるが、相対的に同じ体積でも密度の高いタングステンを含む材質で構成されることが好ましい。
【0078】
基板600は、圧電素子1000に電源を供給するために圧電素子1000に結合される。圧電素子1000に変形が生じるので軟性基板であることができる。
【0079】
図4及び
図5は、それぞれ外部電源が印加され、圧電素子1000が圧縮及び引張することにより圧電振動モジュール2000が駆動する状態を示す図である。
【0080】
図4及び
図5を参照すると基板600により圧電素子1000に外部電源が印加されると、圧電素子1000が圧縮または引張する。これにより、圧電素子1000に結合された振動板400には縦方向変位が生じる。振動板400の縦方向変位により質量体500にも縦方向変位が生じ、このような縦方向変位、すなわち振動力は質量体500が有する質量により増加される。したがって、圧電振動モジュール2000は、縦方向の振動を発生させることになる。
【0081】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば特許請求範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などをすることにより本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものといえよう。