(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-52276(P2016-52276A)
(43)【公開日】2016年4月14日
(54)【発明の名称】防除草機
(51)【国際特許分類】
A01B 39/18 20060101AFI20160318BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20160318BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20160318BHJP
【FI】
A01B39/18 C
A01B69/00 303F
A01M21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-179426(P2014-179426)
(22)【出願日】2014年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】714007388
【氏名又は名称】池田 一久
(72)【発明者】
【氏名】池田 一久
【テーマコード(参考)】
2B034
2B043
2B121
【Fターム(参考)】
2B034AA07
2B034BB01
2B034BC03
2B034BE05
2B034BG02
2B034HA15
2B034HA16
2B034HB14
2B043AA04
2B043BA09
2B043EA23
2B043EB02
2B043EB05
2B043ED15
2B121AA19
2B121BB22
2B121BB23
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】防除草機の操縦には作業員の高度な技術が必要で、かつ、方向転換用に枕地を必要とする。また、自走式防除草機は、稲列に沿って走行するため、条間方向が一定しない不整列な植え付けでは、走行できない領域が残ってしまう問題がある。
【解決手段】防水性のあるケース1と浮体2によって、条間・株間を浮上走行して、水田の土壌表層の泥を、車輪3に設置された撹拌ワイヤー4でかき混ぜることにより濁りを発生させ、太陽光を遮光して雑草の発芽及び生育を抑制する防除草機である。板状の水掻きを備えた車輪は、浮上走行だけでなく接地走行も可能なため、水位にかかわらず走行できる。また、左右の車輪を逆転させることで超信地旋回(その場旋回)出来るため、枕地を必要としない。また、稲列に沿わずに水田全域を条間方向・株間方向に自律走行するため、不整列な植え付けであっても全域を走行して、防除草できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面を浮上走行することで防除草を行う装置であって、防水性のある本体ケースにモーター、電源装置が収納されており、モーターで駆動される車輪および撹拌ワイヤーを備え、電源装置から供給される電力によりモーターが回転し、車輪により走行することおよび撹拌ワイヤーにより土壌表層の泥を撹拌することを特徴とする防除草装置。
【請求項2】
方向転換する際に車輪の右側と左側を逆方向に回転させ、超信地旋回(その場旋回)を行う、請求項1に記載の防除草機。
【請求項3】
水深よりも長い撹拌ワイヤーにより、水田の水深にかかわらず土壌表層の泥を撹拌出来、撹拌ワイヤーが設置走行時に車輪から飛び出さない程度の柔軟性を持つ、請求項1に記載の防除草機。
【請求項4】
車輪に板状の水掻きを備えており、その内側・外側に異物巻き込み防止用円盤を備え、浮上走行および接地走行が出来る、請求項1に記載の防除草機。
【請求項5】
前記撹拌ワイヤーが車輪に設置された、請求項1に記載の防除草機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場内を走行し、農作物の防除草作業の軽減を図った防除草機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田の土壌に生える雑草類の除草方法として、下記の方法が知られている。
1.手作業によって一本々々雑草類を取り除く方法
2.中耕除草機によって雑草類を取り除く方法
3.土壌面に敷草などを敷いて、光を遮ることにより、雑草類の成長を抑制する方法
4.アイガモや鯉などの生物によって、雑草類を取り除く方法。
5.除草剤を土壌に散布して雑草類を抑制又は枯死させる方法
【0003】
しかし、1 〜 3の方法は、多くの労力を要し、生産性の面から有効な方法ではない。
4の方法は、生物の管理や除草後の利用が困難であり、問題が多い。
一方、5の除草剤を用いる方法は、労力が少なくて効果的ではあるが、環境保全の面から、好ましくない。
【0004】
中耕除草機では、土壌の表層を掻き回すことにより、発芽した雑草を浮かせたり、土壌中に埋め込むことにより除草する。
【0005】
一方、非特許文献1や非特許文献2のとおり、田面水を濁らせることで雑草の発芽・生育を抑制する方法が知られている。
【0006】
一方、特許文献6に記載の再生紙マルチ直播シートにより、太陽光を遮光することで、雑草の発芽を阻害する防除草方法や、浮遊性繊維により雑草の本葉を圧倒し枯死させる方法があるが、設置に労力および費用がかかる。
【0007】
従来の水田用除草機には、特許文献5記載の植え付け苗条の間で作用する条間除草機構と、植え付け苗条における株間に作用する株間除草機構からなる除草装置を、乗用走行体の後部に昇降自在に連結してなる乗用型除草機がある。
なお、条間とは田植え機の幅方向の苗間隔であり、北海道では33cm、北海道以外では30cmが一般的である。また、株間とは田植え機の進行方向の苗間隔であり、15cm〜18cmが一般的であるが、省力・低コスト栽培を目指した株間30cmの疎稙栽培が普及し始めている。
【0008】
また、小型の防除草機としては、特許文献1〜3に記載の車輪やキャタピラを用いて自走して、防除草を行うことが出来る、自走式防除草機がある。
【0009】
また、条間・株間を浮遊して除草する、特許文献4に記載の移動型除草機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−120573号公報
【特許文献2】特許第5420297号公報
【特許文献3】特開2011−019511号公報
【特許文献4】特開2009−278967号公報
【特許文献5】特許3965429号公報
【特許文献6】特開平10−52176号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】雑草研究 2003年4月 第48巻別号「田面水の撹拌が雑草の発生に及ぼす影響」
【非特許文献2】雑草研究 1998年3月 第43巻別号「水田雑草の発生に及ぼす田面水の濁りの影響」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に述べた乗用型除草機では、作業部分が条間を上手に通らなければ稲苗を痛めてしまうため、作業員の高度な技術が必要であった。
【0013】
また、以上に述べた乗用型除草機および自走式防除草機では、作物の植え付け面の外側に、
図4のような方向転換用の枕地が必要であり、導入が可能な水田が制限されていた。
【0014】
以上に述べた自走式防除草機では、稲列に沿って走行するため、
図4のような条間方向が一定しない不整列な植え付けには対応できない問題があった。
【0015】
以上に述べた自走式防除草機では、
図4のような農作物を跨ぐ門型の形状を有するため、使用可能な水深および草丈の範囲に制限がある。
【0016】
以上に述べた移動型除草機は、移動範囲が限定的であり、水田全域を移動することできない。
【0017】
本発明は、このような問題を解決しようとするものであり、水田全域を
図5のごとく、条間方向・株間方向に自律走行し、濁りを発生させることにより雑草の発芽および生育を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明1に係る防除草機は、水面上を浮上走行することで防除草を行う装置であって、防水性のある本体ケースにモーター、電源装置が収納されており、モーターで駆動される車輪を備えている。
電源装置から供給される電力によりモーターが回転し、車輪により走行することおよび撹拌ワイヤーにより土壌表層の泥を撹拌することを特徴とする。
【0019】
発明2に係る防除草機は、発明1に記載の防除草機において、方向転換する際に車輪の右側と左側を逆方向に回転させ、超信地旋回(その場旋回)を行うことを特徴とする。
【0020】
発明3に係る防除草機は、発明1に記載の防除草機において、水深よりも長い撹拌ワイヤーを使用することで水田の水深にかかわらず土壌表層の泥を撹拌出来、撹拌ワイヤーが接地走行時でも車輪から飛び出さない程度の柔軟性を持つことを特徴とする。
【0021】
発明4に係る防除草機は、発明1に記載の防除草機において、車輪に板状の水掻きを備えており、その内側・外側に異物巻き込み防止用円盤を備え、浮上走行および接地走行が出来ることを特徴とする。
【0022】
発明5に係る防除草機は、撹拌ワイヤーが車輪に設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の防除草機は、水田の水を濁らせることにより、太陽光を遮光して雑草の発芽および生育を抑制する。
条間方向に依存せずに作物間を走行する方式のため、四角形以外の水田における、不整列な植え付けにも対応できる。
また、自律走行するため、防除草機の操縦が不要になる。
また、旋回時に超信地旋回するため、作物を植付ける際に枕地を設けるなどの制限が不要である。
また、水陸両用の走行機構にて作物間を走行する方式のため、水深や作物の草丈の影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態を示す防除草機の概略斜視図
【
図2】本発明の実施形態を示す防除草機の概略平面図
【
図3】本発明の実施形態を示す防除草機の概略斜視図
【
図4】従来の自走式防除草機の水田内での軌跡例を示す図
【
図5】本発明の防除草機の水田内での軌跡例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。尚、対象とする農作物は、水田で栽培される水稲やい草などを想定しているが、ここでは水稲を例に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1および
図2において、防水性のある本体ケース1に右モーター5及び左モーター6、電源装置7、制御装置8、方位センサー9が収納されており、モーターで駆動される車輪3には撹拌ワイヤー4を備えている。
【0027】
本体ケース1および本体ケース1に取り付けられた浮体2により水面を浮遊する。
浮体は、車輪に取り付けても良いし、中空タイヤなどの様に車輪と兼用しても良い。
【0028】
本体ケース1の前面にはバンパー13が設けられ、畦・稲株センサー10、右稲株センサー11、左稲株センサー12を備えている。
畦・稲株センサー10、稲株センサー11および12にはタッチセンサーを使用しているが、他の物体センサーや全方位カメラを使用しても良い。
【0029】
電源装置7より供給された電力は制御装置8に送られ、制御装置によって制御された電力は、右モーター5及び左モーター6に伝わる。モーターの動力は連結された車輪3に伝えられ、車輪3が回転する。
【0030】
車輪3及び車輪3に設置した撹拌ワイヤー4が回転することにより、土壌表層の泥を撹拌して水を濁らせる。
撹拌ワイヤー4は車輪に設置されることが望ましいが、
図3の様に別の撹拌用モーター14で駆動しても良い。
【0031】
電源装置7は、充電電池を使用するが、太陽電池などによる充電機構を設けても良い。
【0032】
モーターは左右各1台備えることが望ましいが、左右の車輪を独立して制御可能であれば、1台でも複数台(
図1の例では左右各2台を使用)でもよい。
【0033】
制御装置8は左右のモーターに、前進、後進、右折、左折、180度旋回に必要な電力を供給する。モーターはDCモーターを使用し、PWM制御を行うが、サーボモータやパルスモーターなどを使用して、回転を制御してもよい。
【0034】
撹拌ワイヤー4は充分な柔軟性を備えているので、稲苗に接触しても傷つけることは少ない。
撹拌ワイヤーは棒状の軟質ナイロンが望ましいが、接地走行を妨げない柔軟性を有する材質であれば、他の材質でもよく、形状は棒状でも、板状でもよい。
【0035】
本防除草機は、方位センサー9と畦・稲株センサー10、稲株センサー11および12を用いて、
図5のように水田全域の走行及び障害物回避動作を行うが、この動作は本発明の主体ではないので省略する。
【実施例2】
【0036】
実施例2では
図3のごとく、撹拌用モーター14にて撹拌用回転プレート15を介して回転する撹拌ワイヤー4を備える。
実施例1の撹拌ワイヤー4が設置された車輪3と組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
水田や湿地など、水辺における雑草の防除草機に適用できる。
【0038】
本発明に、カメラと分光装置を組み込むことにより、作物の生育状況および病虫害の状況を監視・観測する装置に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 本体ケース
2 浮体
3 車輪
4 撹拌ワイヤー
5 右モーター
6 左モーター
7 電源装置
8 制御装置
9 方位センサー
10 畦・稲株センサー
11 右稲株センサー
12 左稲株センサー
13 バンパー
14 撹拌用モーター
15 撹拌用回転プレート