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特開2016-52277ニラ加工食品の製造方法、ニラ加工食品、茶葉様物および粉末調味料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-52277(P2016-52277A)
(43)【公開日】2016年4月14日
(54)【発明の名称】ニラ加工食品の製造方法、ニラ加工食品、茶葉様物および粉末調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20160318BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20160318BHJP
【FI】
   A23L1/212 A
   A23L1/221 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-179432(P2014-179432)
(22)【出願日】2014年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】511206478
【氏名又は名称】柴田 和己
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和己
【テーマコード(参考)】
4B016
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE02
4B016LG05
4B016LP08
4B016LP13
4B047LB07
4B047LE06
4B047LG39
4B047LP07
4B047LP19
(57)【要約】
【課題】原料であるニラの風味が強く残るニラ加工食品の製造方法、ニラ加工食品、茶葉様物、粉末調味料を提供する。
【解決手段】ニラ加工食品の製造方法は、ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させる発酵工程と、少なくとも前記発酵工程の後に、前記ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、乾燥させる乾燥工程とを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させる発酵工程と、
該発酵工程で発酵させたニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の含水率まで乾燥させる乾燥工程とを備える
ニラ加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記発酵工程が30℃〜70℃の温度条件下で行われる
請求項1記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程が24時間〜48時間かけて行われる
請求項1または請求項2記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程において、含水率が10%以下になるように乾燥させる
請求項1、請求項2または請求項3記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程後に、料理の種類に応じたサイズに加工するサイズ加工工程を備える
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項6】
原料としてニラの茎、または、葉および茎を用いる場合に、前記発酵工程の前に、同ニラの茎、または、葉および茎を、乾燥させる準備工程とを備える
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項7】
前記準備工程において、含水率が40%〜70%となるように乾燥させる
請求項6記載のニラ加工食品の製造方法。
【請求項8】
ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵したニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を乾燥させることより得られる
ニラ加工食品。
【請求項9】
ニラから茎を分離し、該茎を含水率が40%〜70%となるように乾燥させた後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させ、該乾燥した茎を焙煎することより得られる
茶葉様物。
【請求項10】
ニラから葉を分離し、該葉を茹でるか、または、蒸した後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した葉を乾燥させることより得られる
茶葉様物。
【請求項11】
ニラから茎を分離し、該茎を含水率が40%〜70%となるように乾燥させた後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させて粉砕することより得られる
粉末調味料。
【請求項12】
ニラから葉を分離し、該葉を茹でるか、または、蒸した後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させて粉砕することより得られる
粉末調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニラ加工食品の製造方法、ニラ加工食品、茶葉様物および粉末調味料に関する。更に詳しくは、原料であるニラの風味が強く残る加工食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニラ(韮)は栄養価が高く、スタミナが付く食材として知られている。更に詳しくは、ニラは、ベータカロチンやビタミンA、ビタミンC、カルシウム、リン、鉄などのミネラルに富むと共に、代謝機能、免疫機能を高め、疲労回復に役立ち、更に食物繊維も豊富なため整腸作用があるとされ、生薬としても利用されている。
【0003】
一方、ニラは葉物野菜の中でも傷みが早いため、例えば、下記の非特許文献1に開示されているように乾燥粉末にした利用方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】茨城県地域情報紙「常陽リビング」 ニラの風味を生かした「にらうどん」インターネット<URL:http://www.joyoliving.co.jp/special/localtaste/vol_010/localtaste01004.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者がニラの乾燥粉末を作成し、試食したところ、上記非特許文献1にも記載されているように、ニラ特有の風味が損なわれていた。この理由は定かでは無いが、例えば、ニラの臭い成分である硫化アリル(アリシン)が乾燥工程において揮発したこと等がその一因と考えられる。
【0006】
このように、これまでのニラの乾燥粉末は、生のニラと比較してその風味が大きく異なっており、ニラの香りを含めて好む者にとっては、不満の残るものであった。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、原料であるニラの風味が強く残るニラ加工食品の製造方法、ニラ加工食品、茶葉様物、粉末調味料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明のニラ加工食品の製造方法は、ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させる発酵工程と、該発酵工程で発酵させたニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の含水率まで乾燥させる乾燥工程とを備える。
【0009】
上記構成を備えることにより、乾燥工程後においても、原料であるニラの葉もしくは茎、または、葉および茎(以下、単に「ニラ」と総称する場合がある)の風味が強く残るニラ加工食品を提供できる。本明細書および本特許請求の範囲において、「ニラ加工食品」の語は、飲料原料および飲料を含む意味で使用している。
【0010】
なお、乾燥工程後においても原料であるニラの風味が強く残る理由は定かではないが、発酵工程を経ることに起因するものと推測される。また、ニラは、特に菌類を添加すること無く所定の環境下で発酵するが、この発酵がニラ表面に常在する菌によるものであるのか、または、空気中の菌が関係しているのかは定かではなく、同じネギ属のニンニクが一定条件下において自己発酵することと同様の理由によるものではないかと推測される。
【0011】
また、ニラを所定時間、所定温度で加温して発酵させる発酵工程を経ることにより、乾燥工程後においても含水率の多少にそれほど影響されることなく、原料であるニラの風味が強く残ると共に、ニラが発酵して独特の風味が生まれる。そして、単にニラを乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
【0012】
更に、発酵したニラを乾燥させる乾燥工程を経ることにより、発酵したニラの含水率が低下して保存性が向上する。
【0013】
前記発酵工程が30℃〜70℃の温度条件下で行われる場合は、同温度帯で発酵が行われることによって、更に発酵が促進され、また、独特の風味等も更に向上する。
【0014】
前記発酵工程が24時間〜48時間かけて行われる場合は、同時間帯で発酵が行われることによって、更に発酵が促進され、また、独特の風味等が更に向上する。
【0015】
前記乾燥工程において、含水率が10%以下になるように乾燥させる場合には、ニラの含水率が10%以下となるように乾燥されることにより、カビが発生する可能性が低下し、保存性が向上する。
【0016】
前記乾燥工程後に、料理の種類に応じたサイズに加工するサイズ加工工程を備える場合には、調理の際の利便性が向上する。
【0017】
原料としてニラの茎、または、葉および茎を用いる場合に、前記発酵工程の前に、同ニラの茎、または、葉および茎を、乾燥させる準備工程とを備える場合は、事前にニラを乾燥させる準備工程を経ることにより、発酵工程等の後工程に係る作業がしやすくなる。
【0018】
前記準備工程において、含水率が40%〜70%となるように乾燥させる場合には、ニラの含水率を40%〜70%に低下させることにより、重量の約93%が水分であるニラの水分を減少させて発酵工程等に好適な含水率に調整されることとなり、発酵工程等の後工程に係る作業が更にしやすくなる。
【0019】
上記の目的を達成するために本発明のニラ加工食品は、ニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵したニラの葉もしくは茎、または、葉および茎を乾燥させることより得られる。
【0020】
上記構成を備えることにより、ニラ加工食品は、ニラを発酵させると共に発酵後に乾燥させた結果、乾燥後も原料であるニラの風味が強く残るものとなる。
【0021】
上記の目的を達成するために本発明の茶葉様物は、ニラから茎を分離し、該茎を含水率が40%〜70%となるように乾燥させた後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させ、該乾燥した茎を焙煎することより得られる。
【0022】
上記構成を備えることにより、茶葉様物は、ニラを発酵させると共に発酵後に乾燥させた結果、乾燥後も原料であるニラの風味が強く残るものとなる。この茶葉様物を湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られる。
【0023】
なお、本明細書および本特許請求の範囲において、「茶葉様物」の語は、「茶葉のようなもの」の意味で使用している。また、本明細書において、「茶外茶」の語は、チャノキ以外の植物などから作られる飲料を指す意味で使用している。
【0024】
また、元々風味が強く、かつ、栄養価の高い部分である茎のみをニラから分離して使用することで、茶葉様物のニラの風味をより強くし、かつ、栄養価を高めることができる。加えて、ニラの含水率を40%〜70%に低下させることにより、発酵工程等に好適な含水率に調整される。
【0025】
更に、ニラの茎を所定の時間、所定の温度で加温して発酵させることで、原料であるニラの風味が強く残ると共に、独特の風味が出る。そして、単にニラの茎を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
更にまた、発酵した茎を乾燥させ、乾燥した茎を焙煎することで、保存性が向上すると共に、香ばしい風味が付加されて、茶外茶にしたときに飲みやすくなる。
【0026】
上記の目的を達成するために本発明の茶葉様物は、ニラから葉を分離し、該葉を茹でるか、または、蒸した後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した葉を乾燥させることより得られる。
【0027】
上記構成を備えることにより、茶葉様物は、ニラを発酵させると共に発酵後に乾燥させた結果、乾燥後も原料であるニラの風味が強く残るものとなる。この茶葉様物を湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られる。
また、ニラから葉のみを分離し、かつ、葉を茹でるか、または、蒸すことにより、加工時の色味の低下を防止し、鮮やかな緑色を保持することができる。
【0028】
更に、ニラの葉を所定の時間、所定の温度で加温して発酵させることで、原料であるニラの風味が強く残ると共に、独特の風味が出る。そして、単にニラの葉を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
更にまた、発酵した葉を乾燥させることで、保存性が向上し、乾燥させた葉を粉砕することで、使いやすさが向上する。
【0029】
上記の目的を達成するために本発明の粉末調味料は、ニラから茎を分離し、該茎を含水率が40%〜70%となるように乾燥させた後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させて粉砕することより得られる。
【0030】
上記構成を備えることにより、粉末調味料は、ニラを発酵させると共に発酵後に乾燥させた結果、乾燥後も原料であるニラの風味が強く残るものとなる。
【0031】
また、元々風味が強く、かつ、栄養価の高い部分である茎のみをニラから分離して使用することで、粉末調味料のニラの風味をより強くし、かつ、栄養価を高めることができる。加えて、ニラの含水率を40%〜70%に低下させることにより、発酵工程等に好適な含水率に調整される。
【0032】
更に、ニラの茎を所定の時間、所定の温度で加温して発酵させることで、原料であるニラの風味が強く残ると共に、独特の風味が出る。そして、単にニラの茎を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
更にまた、発酵した茎を乾燥させることで、保存性が向上し、乾燥させた茎を粉砕することで、使いやすさが向上する。
【0033】
上記の目的を達成するために本発明の粉末調味料は、ニラから葉を分離し、該葉を茹でるか、または、蒸した後に、所定の時間、所定の温度で加温して発酵させ、該発酵した茎を乾燥させて粉砕することより得られる。
【0034】
上記構成を備えることにより、粉末調味料は、ニラを発酵させると共に発酵後に乾燥させた結果、乾燥後も原料であるニラの風味が強く残るものとなる。
また、ニラから葉のみを分離し、かつ、葉を茹でるか、または、蒸すことにより、加工時の色味の低下を防止し、鮮やかな緑色を保持することができる。
【0035】
更に、ニラの葉を所定の時間、所定の温度で加温して発酵させることで、原料であるニラの風味が強く残ると共に、独特の風味が出る。そして、単にニラの葉を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
更にまた、発酵した葉を乾燥させることで、保存性が向上し、乾燥させた葉を粉砕することで、使いやすさが向上する。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るニラ加工食品の製造方法によれば、原料であるニラの風味が強く残るニラ加工食品を提供できる。
また、本発明によれば、原料であるニラの風味が強く残るニラ加工食品を提供できる。
更に、本発明によれば、原料であるニラの風味が強く残る茶葉様物を提供できる。
更にまた、本発明によれば、原料であるニラの風味が強く残る粉末調味料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
なお、本実施の形態においては、ニラ加工食品として、葉または茎のいずれかを使用した茶葉様物および粉末調味料について説明しているが、これに限定するものではなく、例えば、茎と葉を分離させることなく加工してもよいし、ニラ加工食品として用途に応じた所定長さ(例えば20mm〜50mm程度)の短冊状物、所定大きさ(例えば、2mm〜10mm程度)のフレーク状物あるいは粒状物等に形成してもよい。また、茎と葉を分離せずに加工食品とする際には、後述する茎のみを使用した茶葉様物および粉末調味料の加工方法と同様の方法により加工が行われる。
【0038】
〔第1実施形態〕
ニラの茎を加工した茶葉様物について説明する。この茶葉様物は、湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られるものである。
本実施形態に係る茶葉様物の製造方法について、以下詳述する。
【0039】
(1:下処理工程)
下処理工程では、ニラの洗浄と、ニラの葉と茎の分離を行う。なお、ここでは、茎のみ使用する。これは、元々風味が強く、かつ、栄養価の高い部分である茎のみをニラから分離して使用することで、ニラの風味をより強くし、かつ、栄養価を高めるためである。
【0040】
(2:準備工程)
ニラの茎を、含水率が40%〜70%になるように乾燥させる。これは、重量の約93%が水分であるニラの水分を減少させることで、発酵工程に好適な含水率に調整され、乾燥工程を含む後工程に係る作業をしやすくするためである。
【0041】
なお、本実施形態では、天日にて1日〜2日程度乾燥させることにより、先述の乾燥状態となるが、これに限定するものではなく、例えば、屋内乾燥あるいは乾燥機使用であってもよいし、また、乾燥時間は、天候あるいは季節、乾燥機の使用に応じて、ニラが傷まない程度において適宜変更することができる。
【0042】
また、本実施形態では、含水率が40%〜70%となるようにしているが、これに限定するものではなく、より好ましくは、50%〜60%である。なお、理由は定かではないが、発明者の経験上、含水率が40%を下回っても70%を越えても、発酵が進まないか、または、発酵に長い時間を要することが判明している。
【0043】
(3:発酵工程)
第1乾燥工程を経て乾燥したニラの茎を、50℃で30時間、加温して発酵させる。
【0044】
本実施形態において、発酵時間は、30時間としているが、これに限定するものではなく、好ましくは24時間〜48時間の範囲内であり、更に好適には27時間〜33時間の範囲内である。なお、発酵工程の時間は、24時間未満では発酵度合いが足りないため風味に欠け、48時間を過ぎると発酵度合いが進みすぎて臭いがきつくなり、更に時間が経過すると、溶けたような状態になって食用に適さない状態となってしまうため、適当ではない。
【0045】
本実施形態において、発酵温度は、50℃としているが、これに限定するものではなく、30℃〜70℃の範囲内であることが好ましく、40℃〜60℃の範囲内であることが更に好適である。なお、発酵工程の温度は、30℃未満でも60℃を上回っても発酵しにくくなり、70℃を上回ると発酵力が極端に低下し、80℃を上回るとほとんど発酵しなくなるため、適当ではない。
【0046】
(4:乾燥工程)
発酵したニラの茎を乾燥させる。このとき、ニラの茎の含有水分量が5%以下(より詳しくは0.1%〜5%)になるように乾燥させる。これは、カビが発生する可能性が低下させ、保存性を向上させるためである。
【0047】
なお、本実施形態では、天日にて24時間程度乾燥させることにより、先述の乾燥状態となるが、これに限定するものではなく、例えば、屋内乾燥あるいは乾燥機使用であってもよいし、また、乾燥時間は、天候あるいは季節、乾燥機の使用に応じて、ニラが傷まない程度において適宜変更することができる。一方、防腐効果のある各種食品添加物を添加することによりニラの茎の含有水分量が10%を超えることを除外するものではないが、食の安全性の観点や消費者心理を考慮すると、食品添加物を使用せずに含有水分量を下げることが好適である。
【0048】
また、本実施形態では、ニラの茎の含有水分量が5%以下となる例を記載しているが、これに限定するものではなく、10%以下(より詳しくは0.1%〜10%)の範囲内であることが好ましく、3%〜7%の範囲内であることが更に好適である。
【0049】
(5:サイズ加工工程)
第2乾燥工程後に、茶葉様物としての用途に適したサイズに加工する。
上記サイズは、湯に入れるか、または、煮出す際の利便性を考慮すれば、いわゆる茎茶のようなサイズ(5mm〜15mm)が好ましいが、これよりも短いものや長いもの、粉末状のもの等を除外するものではない。
【0050】
(6:焙煎工程)
サイズ加工工程後に、乾燥した茎を10〜30秒(焦げ目がつく程度)焙煎する。これにより、香ばしい風味が付加されて、煎じた茶外茶が飲みやすくなる。
最後に、計量、袋詰め等を行えば、出荷可能となる。
【0051】
先に述べた通り、この茶葉様物は、湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られるが、ニラから茎のみを分離し、かつ、発酵させたことで、後述する葉のみのものよりもニラ独特の風味が強く出るものであり、かつ、高い栄養価が期待される。そして、単にニラの茎を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
【0052】
また、ニラを発酵させることによる栄養価の向上についても、その理由は定かではないが、同じネギ属のニンニクが発酵させることによって栄養価が向上する(参考ホームページ:http://homepage3.nifty.com/plan100/ninniku/p5b.html)ことと同様の理由によるものではないかと推測される。
【0053】
〔第1実施形態の変形例〕
ニラの葉を加工した茶葉様物について説明する。この茶葉様物も、湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られるものである。
本変形例に係る茶葉様物の製造方法について、以下詳述する。なお、第1実施形態で記載した工程と同じ内容については、その説明を省略し、相違する点のみ詳述する。
【0054】
(1:下処理工程)
下処理工程では、ニラの洗浄と、見た目の良い葉を持つニラの選別と、ニラの葉と茎の分離を行う。なお、ここでは、葉のみ使用する。葉緑素の多い葉の部分を分離し使用することで、緑色が鮮やかであり、かつ、茎のみを用いたものよりもマイルドな風味の茶葉様物が得られる。
【0055】
(2:色止め工程)
ニラの葉を、極短時間(例えば、30秒〜60秒程度)熱湯で茹でるか、または、蒸して、色止めを行う。葉の場合、発酵前に乾燥させると変色しやすく緑色が褪せるためである。なお、ニラの葉を茹でる等する時間が30秒未満であっても60秒以上であっても色が悪くなりやすいため、当該時間内であることが好ましい。
【0056】
(3:発酵工程)
色止め工程を経たニラの葉を、約18時間、50℃に加温して発酵させる。
【0057】
本実施形態において、発酵時間は、約18時間としているが、これに限定するものではなく、好ましくは12時間〜24時間の範囲内であり、更に好適には16時間〜20時間の範囲内である。なお、葉は、茎に比べて薄く、全体へ温度が通りやすいため、発酵が早い。このため、茎の場合よりも発酵時間が短く設定されている。発酵工程の時間は、12時間未満では発酵度合いが足りないため風味に欠け、24時間を過ぎると発酵度合いが進みすぎて臭いがきつくなり、また、溶けたような状態になって食用に適さない状態となってしまうため、適当ではない。
【0058】
(4:乾燥工程)
発酵したニラの葉を乾燥させる。このとき、ニラの葉の含有水分量が5%以下になるように乾燥させる。
【0059】
なお、本実施形態では、天日にて30分〜6時間程度(天候により変動)乾燥させることにより、先述の乾燥状態となるが、これに限定するものではなく、乾燥方法または乾燥時間は先に述べた通り適宜変更することができる。また、陰干しすることを除外するものではなく、その際には乾燥時間は12時間〜24時間が好適である。
【0060】
(5:サイズ加工工程)
乾燥工程後に、茶葉様物としての用途に適したサイズに加工する。なお、本工程は第1実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
先に述べた通り、この茶葉様物は、湯に入れるか、または、煮出すことで、茶外茶が得られるが、ニラから葉のみを分離し、分離した葉を発酵させたことで、緑が鮮やかで見た目が良く、また、先述した茎のみのものよりもニラ独特の風味がマイルド(人によって感じ方は相違するが、茎は発酵食品独特の強い香りがするが、葉の場合多少青臭い香りである)である。そして、単にニラの葉を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。
【0062】
〔第2実施形態〕
ニラの茎を加工した粉末調味料について説明する。この粉末調味料は、料理に混ぜるまたは、振りかけることで、ニラの風味と栄養が得られるものである。
本実施形態に係る粉末調味料の製造方法について、以下説明する。なお、第1実施形態で記載した工程と同じ内容については、その説明を省略し、相違する点のみ説明する。
【0063】
(1:下処理工程)、(2:準備工程)、(3:発酵工程)、(4:乾燥工程)については、第1実施形態で記載した工程と同じ内容であるため、説明を省略する。
【0064】
(5:サイズ加工工程)
乾燥工程後に、粉末調味料としての用途に適したサイズに加工する。具体的には、乾燥工程を経た茎を破砕機等に掛けて、粉状化する。
最後に、計量、袋詰め等を行えば、出荷可能となる。
【0065】
先に述べた通り、この粉末調味料は、料理に混ぜるか、または、振りかけることで、ニラの風味と栄養が得られるものであるが、ニラから茎のみを分離し、かつ、発酵させたことで、後述する葉のみのものよりもニラ独特の風味が強く出るものであり、かつ、ニラ由来の高い栄養価が期待される。そして、単にニラの茎を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。また、中華料理への風味付け、または味付け、小麦粉または米粉等への練り込み、ふりかけ等として好適に使用される。
【0066】
〔第2実施形態の変形例〕
ニラの葉を加工した粉末調味料について説明する。この粉末調味料は、料理に混ぜるか、または、振りかけることで、ニラの風味と栄養が得られるものである。
本実施形態に係る粉末調味料の製造方法については、概ね、第1実施形態の変形例または第2実施形態で記載した工程と同じであり、同じ部分については説明を省略する。
【0067】
(1:下処理工程)、(2:色止め工程)、(3:発酵工程)、(4:乾燥工程)については第1実施形態の変形例で記載した工程と同様の作業を行い、(5:サイズ加工工程)については第2実施形態で記載した工程と同様の作業を行って製造する。
【0068】
先に述べた通り、この粉末調味料は、料理に混ぜるまたは、振りかけることで、ニラの風味と栄養が得られるものであるが、ニラから葉のみを分離し、分離した葉を発酵させたことで、緑が鮮やかで見た目が良く、また、先述した茎のみのものよりもニラ独特の風味がマイルド(人によって感じ方は相違するが、茎は発酵食品独特の強い香りがするが、葉の場合多少青臭い香りである)である。そして、単にニラの葉を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。また、中華料理への風味または味付け、小麦粉または米粉等への練り込み、ふりかけ他として好適に使用され、特に緑が鮮やかであるため、小麦粉等へ練り込んだ際の色合いが良い。
【0069】
本実施の形態において、茶葉様物は、健康飲料として混ぜ物無しの方が効果的であるが、これに限定するものではなく、例えば、焙煎した大麦の粉末等の副原料(配合比率によっては主原料)や、各種ハーブ等と組み合わせることにより、香りや風味を変えてもよい。
【0070】
本実施の形態において、粉末調味料は、単独での使用を想定しているが、これに限定するものではなく、例えば、胡椒、唐辛子、ニンニク粉末、柑橘類の粉末等の各種香辛料またはハーブ等と組み合わせることもできる。
【0071】
上記の通り、発酵工程および乾燥工程を経たニラの葉や茎の加工食品、茶葉様物、粉末調味料は、原料であるニラの風味が強く残ると共に独特の風味が生まれ、そして、単にニラの葉や茎を乾燥させたものよりも、旨味および栄養成分が優れる。更に、発酵した葉や茎を乾燥させることで、保存性が向上する。
【0072】
本明細書および本特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および本特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。