(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-5319(P2016-5319A)
(43)【公開日】2016年1月12日
(54)【発明の名称】電圧レギュレータの安全性を向上する方法、電源システムおよびコンピュータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20151208BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-122932(P2014-122932)
(22)【出願日】2014年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】織田大原 重文
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ランダル・ヒンケル
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS19
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF09
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX19
5H730XX25
5H730XX38
5H730XX42
(57)【要約】
【課題】電圧レギュレータの安全性を向上させる。
【解決手段】直流電力源から電力の供給を受けるソース・パワーレーン234aに保護用のMOS−FET235aを配置する。ソース・パワーレーンから分岐したフォーク・パワーレーン204a〜204cのそれぞれに電圧レギュレータ(VR)205a〜205cを接続する。PTCサーミスタ351a〜355aは、VRの半導体チップの表面または近辺に配置される。いずれかのPTCサーミスタの温度が上昇したときに保護コントローラ201aがMOS−FET235aをオフ状態にする。さらに各VRは、半導体チップの内部に組み込んだ温度センサが検出する温度が上昇したときにBMC203aを経由してMOS−FET235aをオフ状態にする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの電源システムであって、
直流電力源から電力の供給を受けるパワーレーンに配置した保護スイッチと、
それぞれがスイッチング素子含み前記パワーレーンから分岐して配置した複数の電圧レギュレータと、
各電圧レギュレータの温度を検出する温度センサと、
いずれかの前記電圧レギュレータの温度が上昇したときに前記保護スイッチをオフ状態にして前記複数の電圧レギュレータに供給する電力を停止するコントローラと
を有する電源システム。
【請求項2】
前記スイッチング素子が半導体チップに組み込まれ、前記温度センサが前記半導体チップの表面または近辺の温度を検出する請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記温度センサが、PTCサーミスタである請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記温度センサが前記半導体チップの内部の温度を検出するように前記半導体チップに組み込まれている請求項2に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電圧レギュレータが電圧および電流から計算した前記スイッチング素子のオン抵抗またはオフ抵抗に異常を検知したときに前記保護スイッチをオフ状態にするための信号を前記コントローラに送る請求項1に記載の電源システム。
【請求項6】
前記複数の電圧レギュレータが相互に異なる電圧を出力する第1の電圧レギュレータと第2の電圧レギュレータを含み、前記電圧レギュレータの負荷が前記第1の電圧レギュレータの出力電圧と前記第2の電圧レギュレータの出力電圧で動作するデバイスを含む請求項1に記載の電源システム。
【請求項7】
複数のサブシステムを含むコンピュータであって、各サブシステムが、
プロセッサとシステム・メモリを含む複数のデバイスと、
直流電力源から電力の供給を受けるパワーレーンに設けた保護スイッチと、
それぞれがスイッチング素子を含み前記複数のデバイスに電力を供給する複数の電圧レギュレータと、
各電圧レギュレータの温度を検出する第1の温度センサと、
いずれかの前記電圧レギュレータの温度が上昇したときに前記保護スイッチをオフ状態にする第1の保護回路と
を有するコンピュータ。
【請求項8】
前記スイッチング素子が半導体チップに組み込まれ、前記第1の保護回路は前記半導体チップの表面または近辺の温度が上昇したときに前記保護スイッチをオフ状態にする請求項7に記載のコンピュータ。
【請求項9】
さらに前記半導体チップに組み込まれた第2の温度センサを有し、
前記第2の温度センサが検出した温度が上昇したときに前記保護スイッチをオフ状態にする第2の保護回路と
を有する請求項8に記載のコンピュータ。
【請求項10】
前記コンピュータがブレード・サーバを構成するサーバ・ユニットで、該サーバ・ユニットは、前記直流電力源に接続されたミッドプレーンに接続する電力端子を含み、前記サーバ・ユニットを前記ミッドプレーンに接続する際に、突入電流を抑制するように前記保護スイッチを制御するコントローラを含む請求項7に記載のコンピュータ。
【請求項11】
前記複数のサブシステムが、
それぞれプロセッサとシステム・メモリを含み相互に独立して機能する複数の主サブシステムと、
前記複数の主サブシステムが機能を発揮するために利用する共通サブシステムと
を含む請求項10に記載のコンピュータ。
【請求項12】
前記共通サブシステムの前記第1の保護回路が前記保護スイッチをオフ状態にするときに前記複数の主サブシステムの前記保護スイッチをオフ状態にする請求項11に記載のコンピュータ。
【請求項13】
ラックの表面に前記コンピュータの動作状態を表示するフロント・パネルを備え、前記第1の保護回路が前記保護スイッチをオフ状態にするときに前記フロント・パネルに異常内容を表示する請求項10に記載のコンピュータ。
【請求項14】
ソース・パワーレーンから直流の電力の供給を受けるサブシステムが搭載する電圧レギュレータの安全性を向上する方法であって、
前記ソース・パワーレーンから分岐する複数のフォーク・パワーレーンのそれぞれにスイッチング素子を含む電圧レギュレータを設けるステップと、
各電圧レギュレータのスイッチング素子の温度を検出するステップと、
いずれかの電圧レギュレータの前記温度が上昇したときに前記ソース・パワーレーンが供給する電力を停止するステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記スイッチング素子が半導体チップに組み込まれており、前記温度を検出するステップが、前記半導体チップの表面または近辺の温度を検出するステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記温度を検出するステップが、前記半導体チップの内部の温度を検出するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記スイッチング素子のオン抵抗またはオフ抵抗が異常になったときに前記ソース・パワーレーンが供給する電力を停止するステップを有する請求項14に記載の方法。
前記保護スイッチ
【請求項18】
前記サブシステムが、
プロセッサとシステム・メモリを負荷とする複数の主サブシステムと、
前記主サブシステムが機能を発揮するためにアクセスする共通サブシステムを含み、
前記電力を停止するステップが、前記共通サブシステムのソース・パワーレーンが供給する電力を停止する際に、前記複数の主サブシステムのソース・パワーレーンが供給する電力を停止するステップを含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を含む電圧レギュレータの安全性を向上する技術に関し、さらにはスイッチング素子の発煙および焼損を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、サーバに適用する従来の典型的な電源システムの概要を説明するための図である。電源供給ユニット(PSU)501は、サーバを構成する複数のサブシステム503〜507に直流電圧で電力を供給する。各サブシステム503〜507は主として、PSU501の出力電圧を安定した所定の電圧に変換する電圧レギュレータ(VR)511a〜511cと、各VRに対応するCPU、メモリ、およびハードディスク・ドライブ(HDD)などの負荷513a〜513cで構成されている。各VR511a〜511cの1次側にはヒューズ509a〜509cを設けている。いずれかの負荷513a〜513cの電力が停止しても他の負荷に電力が供給されていれば、サブシステム503としては完全に機能が停止しないようになっている。
【0003】
特許文献1は、過負荷が発生したときにスイッチング動作を停止する保護機能を備えたスイッチング電源装置を開示する。特許文献2は、負荷回路が短絡したときにスイッチング素子またはヒューズで保護するスイッチング・レギュレータを開示する。特許文献3は、障害が発生したブレード・サーバへの電源供給を停止して、予備系のブレード・サーバに切り換えるクラスタ・システムを開示する。特許文献4は、ラックマウント型のサーバに過負荷保護の可能な複数の開閉部を経由して交流電源を供給する電源制御装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−116890号公報
【特許文献2】特開平09−182277号公報
【特許文献3】特開2006−277210号公報
【特許文献4】特開2004−222352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電源装置は、過負荷になったときにスイッチング素子を停止することで回路を保護することができる。特許文献2のスイッチング・レギュレータは負荷が短絡したときの2次電圧の低下を検出してスイッチング素子を停止することで回路を保護することができる。特許文献2には、従来技術として負荷が短絡したときに流れる大電流でヒューズを溶断させて回路を保護することが記載されている。
【0006】
すなわち従来のスイッチング素子を備える直流の電源装置では、負荷に短絡故障が発生した場合に、スイッチング素子をオフ状態にして回路の保護ができる。この場合、スイッチング素子が短絡故障に対する保護スイッチとしての機能が発揮できるのはスイッチング素子が正常に動作する場合に限られる。スイッチング素子は、比較的高い信頼性を保つように製造されており、故障することは一般的に少ないと考えてよいためその限りにおいてはこのような保護思想に問題はないといえる。
【0007】
さらに、
図7の電源システムでは、VR511a〜511cのスイッチング素子が閉状態で故障して短絡電流が流れる場合に、1次側のヒューズ509a〜509cを溶断させて当該系統だけを遮断することができる。ヒューズ509a〜509cは、制御回路も不要でかつ安価であるため、めったに発生しないようなスイッチング素子の故障に対してはこのような保護思想は合理的なものであった。
【0008】
ところが、
図7に示す電源システムでも、VR511a〜511cが発煙したり焼損したりすることがある。その現象を調べると、スイッチング素子の焼損が激しいことがわかる。スイッチング素子が焼損する直接的な原因は大電流で多量の発熱を発生していることにある。もし、スイッチング素子が閉状態で故障したとすれば、短絡電流が流れてヒューズ509a〜509cのいずれかが溶断するはずであるが、発煙および焼損が発生するということは、ヒューズ509a〜509cが溶断しないか、溶断してもそのタイミングが回路と協調していないといえる。
【0009】
ヒューズ509a〜509cは、VR511a〜511cに通電を開始する際の突入電流(インラッシュ電流)の繰り返しで素子が劣化しないようにする必要があり、さらに目的が短絡保護にあることなどから溶断電流はVR511a〜511cの定格電流よりも相当大きく、また、溶断時間も長いものを採用する必要がある。一例としてヒューズ509a〜509cの電流−時間特性では、VR511a〜511cの定格電流の2倍の電流を流したときに溶断するまでに2分間必要とする。この電流値と通電時間はスイッチング素子に発煙および焼損をもたらすのに十分な値である。
【0010】
スイッチング素子が、抵抗がゼロに近い状態で短絡故障する(これを完全短絡という。)場合は、電流値は大きくても溶断時間が短いため、発煙および焼損が発生する前にヒューズ509a〜509cが溶断して回路を遮断することができる。しかしある抵抗を伴う態様で短絡故障する(これを抵抗短絡という。)と、ヒューズ509a〜509cが溶断する前に、またはヒューズ509a〜509cが溶断しないでスイッチング素子が発煙および焼損して回路が遮断されることがわかってきた。
【0011】
スイッチング素子はオン/オフの頻度が高いため経年的に劣化する。スイッチング素子が激しい発熱を伴って焼損すると、付近のデバイスがすべて損傷してしまいときには正常なサブシステムまで交換が必要になる。また、スイッチング素子が発熱すると火災の危険性でてくるため、たとえ可能性は低くてもこのような事態を放置することは好ましくない。PSU501は各サブシステム503〜507に電力を供給する必要があるためVR511a〜511cに比べて定格電流は大きく、その保護回路でもスイッチング素子に抵抗短絡が発生したときの発煙や焼損を防ぐことはできない。
【0012】
また、負荷513a〜513cは、複数のVR511a〜511cから電源の供給を受けるデバイスを含むため別の問題が生ずる。たとえば、負荷513bがVR511aからも電源の供給を受けるデバイスを含む場合に、ヒューズ509aが溶断したときは、VR511aからの電源が停止したにもかかわらずVR511bからの電源が継続して供給されると、負荷513bのデバイスにラッチアップが発生して二次的な発煙および焼損につながる可能性が高まる。
【0013】
そこで本発明の目的は、電圧レギュレータの安全性を向上させた電源システムを提供することにある。さらに、本発明の目的は、スイッチング素子の抵抗短絡に対する安全性を向上させた電源システムを提供することにある。さらに本発明の目的はスイッチング素子の焼損を防ぐことが可能な電源システムを提供することにある。さらに本発明の目的はそのような電源システムを搭載したコンピュータおよび安全性を向上する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、直流電力源から電力の供給を受けるパワーレーンに配置した保護スイッチと、それぞれがスイッチング素子を含みパワーレーンから分岐して配置した複数の電圧レギュレータと、各電圧レギュレータの温度を検出する温度センサと、いずれかの電圧レギュレータの温度が上昇したときに保護スイッチをオフ状態にして複数の電圧レギュレータに供給する電力を停止するコントローラとを有する電源システムを提供する。上記の構成によりスイッチング素子が抵抗短絡で故障する場合でも、温度を検出して保護スイッチをオフ状態にすることで発煙や焼損を防止できる。
【0015】
スイッチング素子が半導体チップに組み込まれるときに、温度センサは半導体チップの表面または近辺の温度を検出することができる。半導体チップの外側から温度を検出することで、急激に温度が上昇する場合であっても温度センサはその影響を受けないで保護スイッチを確実にオフ状態にすることができる。温度センサは、PTCサーミスタとすることができる。コントローラは半導体チップに組み込まれた温度センサが検出する温度が上昇したときに保護スイッチをオフ状態にすることができる。
【0016】
半導体チップの外側の温度を検出する温度センサと内側の温度を検出する温度センサを設けることで、スイッチング素子に急激な発熱があっても確実に保護することができる。電圧レギュレータは電圧または電流から計算したスイッチング素子のオン抵抗またはオフ抵抗が上昇したときに保護スイッチをオフ状態にするための信号をコントローラに送ることができる。本発明は複数の電圧レギュレータが異なる電圧を出力する第1の電圧レギュレータと第2の電圧レギュレータを含み、負荷が第1の電圧レギュレータの出力電圧と第2の電圧レギュレータの出力電圧で動作するデバイスを含む場合に適している。この場合、いずれかの電圧レギュレータに異常が発生したときにすべての電圧レギュレータを停止するため、負荷のデバイスのラッチアップを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、電圧レギュレータの安全性を向上させた電源システムを提供することができた。さらに、本発明により、スイッチング素子の抵抗短絡に対する安全性を向上させた電源システムを提供することができた。さらに本発明によりスイッチング素子の焼損を防ぐことが可能な電源システムを提供することができた。さらに本発明によりそのような電源システムを搭載したコンピュータおよび安全性を向上する方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ブレード・サーバ10の概要を説明するための図である。
【
図2】ブレード・サーバ10の概要を説明するための図である。
【
図3】サーバ・ユニット100aを構成する複数のサブシステムの概要を説明するための図である。
【
図4】主サブシステム151aの回路構成を説明するための概略の機能ブロック図である。
【
図5】VR205aの回路構成を説明するための概略の機能ブロック図である。
【
図6】電源システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】サーバに適用する従来の典型的な電源システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる電源システムは、好適には集合型コンピュータ・システムに適用できる。集合型コンピュータ・システムは、同等のコンピュータ機能を備える複数のコンピュータ・ユニットで構成される。各コンピュータ・ユニットは、プロセッサ、システム・メモリ、I/Oコントローラ、記憶装置および周辺デバイスなどのハードウェアとオペレーティング・システム、アプリケーション・プログラムなどのソフトウェアで構成されている。
【0020】
各コンピュータ・ユニットには、商用電源を直流電圧に変換したPSUが電力を供給する。PSUはコンピュータ・システムに対して1台だけ設けてもよいし、複数のコンピュータ・ユニットのグループに対して1台ずつ設けてもよい。各コンピュータ・ユニットは、複数のサブシステムを含む。各サブシステムは複数のVRを含む。集合型コンピュータ・システムは、ラックマウント型のサーバ、ブレード・サーバまたはルータなどとして実現することもできる。
【0021】
図1〜
図3は、ブレード・サーバ10の概要を説明するための図である。
図1(A)はブレード・サーバ10の外形を示し、
図1(B)は内部構成を示している。
図2は、PSU21と各サーバ・ユニット100a〜100hで構成する電源系統の概要を示し、
図3は、サーバ・ユニット100aを構成する複数のサブシステムの概要を示している。
【0022】
図1でラック11は表面にフロント・パネル23を備え、内部に複数のサーバ・ユニット100a〜100h、ミッドプレーン13、スイッチ・モジュール15、シャーシ・マネジメント・モジュール(CMM)17、ファン・モジュール19およびPSU21を収納する。サーバ・ユニット100a〜100hは、それぞれ独立したエンクロージャにマザーボードを含んでおり、内部に独立したコンピュータとして動作するためのハードウェアとソフトウェア資源を含んでいる。
【0023】
ミッドプレーン13は、信号および電力の配線と、両面に各モジュールを結合するコネクタを含む回路基板である。サーバ・ユニット100a〜100hは、PSU21の出力電圧で通電しているミッドプレーン13にホットスワップで接続することができる。スイッチ・モジュール15は、ネットワークや外部の記憶装置に接続するためのスイッチ群を含む。CMM17は、ブレード・サーバ10の動作状態を遠方に通知したり、フロント・パネル23に表示したりする。ファン・モジュール19は、ラック11の内部の熱を放熱する。PSU21は、交流電圧を直流電圧に変換して、サーバ・ユニット100a〜100hおよびその他のモジュールに電力を供給する。
【0024】
図2で、サーバ・ユニット100a〜100hは、電力端子105a〜105hおよび信号端子107a〜107hでミッドプレーン13に接続されている。ミッドプレーン13には、PSU21およびCMM17が接続されている。CMM17にはフロント・パネル23が接続されている。PSU21は、ミッドプレーン13および電力端子105a〜105hを通じて各サーバ・ユニット100a〜100hに電力を供給する。
【0025】
図3でサーバ・ユニット100aの電源端子105aには、ルート・パワーレーン106aにソース・パワーレーン234a〜234cが接続されている。ソース・パワーレーン234a、234bには、主サブシステム151a、151bが接続され、ソース・パワーレーン234cには共通サブシステム151cが接続されている。ここに、ルート・パワーレーン106aは、PSU21から受け取った電力を3つのサブシステム151a〜151cに供給する電路に相当し、ソース・パワーレーン234a〜234cは3つのサブシステム151a〜151に電力を供給する電路に相当する。
【0026】
主サブシステム151a、151bは、CPUおよびシステム・メモリなどを含んで構成されておりそれぞれ相互に独立して動作する。共通サブシステム151cは、主サブシステム151a、151bがコンピュータとして機能するために両者または一方が利用する必要があるI/OコントローラやHDDなどを含んで構成されており独立して機能することはない。本発明の適用において主サブシステム151a、151bの数は1個以上でよい。また、共通サブシステム151cはその機能を各主サブシステム151a、151bに組み込んで省略することもできる。各サブシステム151a〜151cは、保護用のMOS−FET235a〜235c、BMC(Base Management Controller)203a〜203c、VR205a〜209a、205b〜209b、205c〜209cを含んでいる。
【0027】
VRは、PSU21の出力電圧を負荷に応じた所定の安定した電圧に変換するスイッチング・レギュレータである。VR205a〜209aはCPU、システム・メモリなどの負荷211a〜215aに電力を供給し、VR205b〜209bはCPU、システム・メモリなどの負荷211b〜215bに電力を供給し、VR205c〜209cはHDD、I/Oコントローラなどの負荷211c〜215cに電力を供給する。BMC203a〜203cは、信号端子105bを通じてサブシステム151a〜151cの動作状態をCMM17に通知する他に、MOS−FET235a〜235cを制御する。
【0028】
図4は、主サブシステム151aの回路構成を説明するための概略の機能ブロック図である。ソース・パワーレーン234a上の入力端子VINには、ルート・パワーレーン106aを経由してPSU21が電力を供給する。入力端子VINには電流センス抵抗233a、n型のMOS−FET235aが直列に接続されている。電流センス抵抗233aの両端は保護コントローラ201aに接続されている。MOS−FET235aのゲートは保護コントローラ201に接続されている。MOS−FET235aからは、フォーク・パワーレーン204a〜204cが分岐しており、それぞれにVR205a〜209aが接続されている。
【0029】
フォーク・パワーレーン204a〜204cは、それぞれ対応するVR205a〜209aに電力を供給する電路に相当する。VR205a〜209aはそれぞれ対応する負荷211a〜215aが使用する安定した所定の電圧V21、V22、V23を出力する。VR205aは主としてCPUで構成された負荷211aに電力を供給し、VR207aは主としてシステム・メモリで構成された負荷213aに電力を供給し、VR209aはその他のデバイスで構成された負荷215aに電力を供給する。
【0030】
各負荷211a〜215aが含むデバイスの中には、他のVRが出力する電圧を使用して複数の電圧で動作するものを含む。入力端子VINは、直列に接続された抵抗235aおよびPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ351a〜355aでグランドに接続されている。PTCサーミスタ351a〜355aは、通常温度では平坦な温度−抵抗特性を備えているが、一定の温度(キューリー温度)を越えると急激に抵抗値が増大する素子である。
【0031】
PTCサーミスタ351a〜355aは、VR205a〜209aを構成するスイッチング回路303(
図5)の半導体チップの表面または近辺の環境温度を計測するように配置されている。n型のMOS−FET231aはゲートが抵抗235aとPTCサーミスタ351aの接続点に接続され、ドレインが保護コントローラ201aの端子202aに接続され、ソースがグランドに接続されている。MOS−FET231aのドレインには、入力端子VINとグランドの間に直列に接続された分圧抵抗237a、239aの接続点が接続されている。
【0032】
MOS−FET231aのドレインは、並列に接続されたn型のMOS−FET251a、253aのドレインに接続されている。MOS−FET251a、253aのソースはグランドに接続されている。MOS−FET251aのゲートはBMC203aに接続されている。MOS−FET253aのゲートは共通サブシステム151cが搭載するBMC203cに接続されている。
【0033】
電源端子VCCからは保護コントローラ201a、VR205a〜209a、およびBMC203aの駆動用の電力を供給する。主サブシステム151bも同様の構成であるが、共通サブシステム151cは、MOS−FET253aに相当する他の主サブシステム151a、151bのBMC203a、203bの信号で動作するMOS−FETは存在しない点が異なる。
【0034】
図5は、VR205aの回路構成を説明するための概略の機能ブロック図である。VR205aは実際にはさらに多くの素子を含むが、
図5は、本発明の理解に必要な範囲で示している。VR205aは主として、PWMコントローラ301、スイッチング回路303およびリアクトル313で構成されている。スイッチング回路303は、ドライバ回路305、n型のMOS−FET309、311、および温度検出回路307などが1つの半導体チップの中に組み込まれている。
【0035】
ドライバ回路305は、PWMコントローラ301からのPWM信号を受け取ってフォーク・パワーレーン204aに直列に接続されたMOS−FET309、311を同期整流方式でスイッチング制御して、入力電圧V11を安定した出力電圧V21に変換し、ノード333からリアクトル313を通じて出力端子VOUTrに電力を出力する。ドライバ回路305は、演算増幅器を備えており、ノード331の入力電圧V11、ノード333の出力電圧V21、ローサイドのMOS−FET311のオン抵抗とノード333の電圧から計算した、MOS−FET311を流れる電流I11、リアクトル313の抵抗とコンデンサ315の電圧から計算した出力電流I21などを計測する。
【0036】
ドライバ回路305は、ノード333の出力電圧V21をPWMコントローラ301にフィードバックする。PWMコントローラ301は、フィードバックされた電圧Vfbと設定された電圧を比較してPWM信号のデューティ比を制御する。ドライバ回路305は、入力電圧V11、出力電圧V21、電流I21、I22などに異常が発生した場合および電圧と電流から計算したMOS−FET309、311のオン抵抗またはオフ抵抗が規定値以上の変化をしたときにPWMコントローラ301にエラー信号を出力する。
【0037】
温度検出回路307は、スイッチング回路303の半導体チップに組み込まれた温度センサを含み、半導体チップの内部温度T1が所定値を越えたときにPWMコントローラ301にエラー信号を送る。ドライバ回路305または温度検出回路307からエラー信号を受け取ったPWMコントローラ301はエラー信号をBMC203aに出力する。なお、エラー信号は、PWMコントローラ301を経由しないでドライバ回路305がBMC203aに直接送るようにしてもよい。
【0038】
PTCサーミスタ351aは、スイッチング回路303の表面またはその近傍に取り付けられ、VR205aから独立した回路で、ソース・パワーレーン234aの入力端子VIN(
図4)とグランドとの間に他のPTCサーミスタ353a、355aと直列に接続される。VR207a、209aも同様の構成にすることができる。
【0039】
なお、
図1〜
図5は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウェアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。ここまでの説明で言及した以外にも、電源システムを構成するには多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく言及しない。図で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
【0040】
つぎに、
図4、
図5に示した電源システムの動作を
図6のフローチャートを参照して説明する。ここでは、主として主サブシステム151aの動作について説明するが主サブシステム151bおよび共通サブシステム151cについても同様に理解することができでる。ブロック401でサーバ・ユニット100aの電力端子105aおよび信号端子105bを通電状態のミッドプレーン13に接続すると主サブシステム151aの保護コントローラ201aに電源が入る。このときMOS−FET231a、251a、253aはオフ状態である。
【0041】
保護コントローラ201aは、分圧抵抗237、239を通じて入力電圧VINを検出したときに、MOS−FET235aのゲート電圧を制御して、突入電流を抑制する。保護コントローラ201aは突入電流が消滅するとMOS−FET235aを完全なオン状態にする。つづいて、ブロック403でVR205a〜209aが動作を開始して負荷211a〜215aに電力を供給する。
【0042】
ブロック405で、MOS−FET309、311のオン抵抗またはオフ抵抗の増大などのMOS−FET309の抵抗短絡につながるような予兆となる異常がVR205aに発生する。ブロック407でドライバ回路305が電圧V11、V21、電流I11、I21などからVR205aの異常を検出した場合はエラー信号を出力してブロック409に移行する。また、温度検出回路307が内部温度T1に異常を検出したときもエラー信号を出力してブロック409に移行する。
【0043】
ブロック409でPWMコントローラ301はドライバ回路305または温度検出器307からエラー信号を受け取ると、BMC203aにエラー信号を出力する。エラー信号に応答したBMC203aが、MOS−FET251aをオン状態にすると、端子202aの電位が低下して保護コントローラ201aは、MOS−FET235aをオフ状態にして、VR205a〜209aの電力がすべて停止する。ドライバ回路305または温度検出回路307がエラー信号を出力してMOS−FET235aをオフ状態にする回路を1次保護回路という。
【0044】
図7の電源システムのように、故障に対応するVRだけをヒューズの溶断で停止させる場合は、動作を続けるVRの負荷においてラッチアップが発生する可能性があったが、本実施の形態では、すべてのVR205a〜209aを停止させるためラッチアップは発生しない。なお、ラッチアップは、CMOSタイプのICに形成されるバイポーラ・タイプの寄生トランジスタが導通状態になる現象でラッチアップが発生したICは破壊される場合がある。VR207a、209a、主サブシステム151bおよび共通サブシステム151cも異常があると同様に動作する。
【0045】
1次保護回路は、PWMコントローラ301およびドライバ回路305または温度検出回路307がエラー信号を出力できる場合には有効であるが、それらがエラー信号を出力する前に熱で故障する場合がある。1次保護回路では、BMC203aを経由しないでドライバ回路305または温度検出回路307が保護コントローラ201aの端子202aに直接信号を送るようにしてもよい。
【0046】
ブロック421では、1次保護回路の動作と並行して温度を検出するPTCサーミスタ351aの温度が上昇してキューリー温度を越えると抵抗値が急激に増加する。その結果、MOS−FET231aはゲート電圧が上昇するためオン状態になって、端子202aの電位が低下し、保護コントローラ201aはMOS−FET235aをオフ状態にする。このとき保護コントローラ201aは、BMC203aにソース・パワーレーン234aの電力を停止したことを通知する。VR207a、209aに対応するPTCサーミスタ353a、355aの抵抗が増加したときも同様にMOS−FET235aはオフ状態になる。
【0047】
PTCサーミスタ351a〜355aが、MOS−FET235aをオフ状態にする回路を2次保護回路ということにする。2次保護回路は、1次保護回路を構成するスイッチング回路303、PWMコントローラ301、およびBMC203aとは独立した系統にしており、スイッチング回路303の発熱の影響を受けないため、1次保護回路が機能しない場合でも確実に保護できる。1次保護回路と2次保護回路のいずれも機能しない場合はやがてMOS−FET309は焼損するが、本実施の形態では二重の保護回路を備えているためその可能性は低い。
【0048】
1次保護回路または2次保護回路が動作して共通サブシステム151cが停止すると、主サブシステム151a、151bはサーバ・ユニット100としての機能を発揮することができない。ブロック411では共通サブシステム151cが保護用のMOS−FET235a〜235cをオフ状態にした場合は、ブロック413に移行する。共通サブシステム151cは、VR205c〜209cに故障が発生したときにBMC203cはMOS−FET235cをオフ状態にすると同時に主サブシステム151a、151bのMOS−FET235a、235bもオフ状態にする。
【0049】
主サブシステム151a、151bは、いずれか一方だけでも、共通サブシステム151cとともにサーバ・ユニット100としての機能を発揮することができる。したがって、主サブシステム151a、151bのいずれかがMOS−FET235a、235bをオフ状態にすることがあっても、他の主サブシステムおよび共通サブシステム151cを停止させることはない。
【0050】
ブロック415では、MOS−FET235a〜235cをオフ状態にしたBMC203a〜203cが、CMM17に通知する。CMM17は、フロント・パネル23にエラー内容を表示する。保護コントローラ201aは、MOS−FET231a251a、253aの動作によりMOS−FET235aをオフ状態にしたときは、ユーザが手動でリセットしない限り復帰させないようにして安全を確保することができる。
【0051】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0052】
10 ブレード・サーバ
11 ラック
17 シャーシ・マネジメント・モジュール(CMM)
21 電源供給ユニット(PSU)
23 フロント・パネル
100a〜100h サーバ・ユニット
105a〜105h 電力端子
107a〜107h 信号端子
106a ルート・パワーレーン
151a、151b 主サブシステム
151c 共通サブシステム
204a〜204c フォーク・パワーレーン
205a〜209a、205b〜209b、205c〜209c 電圧レギュレータ(VR)
234a〜234c ソース・パワーレーン
301 PWMコントローラ
305 スイッチング回路
307 温度検出回路
309、311 スイッチング素子
351a〜355a PTCサーミスタ
211a〜215a、211b〜215b、211c〜215c 負荷