特開2016-53254(P2016-53254A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-53254(P2016-53254A)
(43)【公開日】2016年4月14日
(54)【発明の名称】デッキプレートの防水工法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20160318BHJP
   E04D 7/00 20060101ALI20160318BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20160318BHJP
【FI】
   E04B1/68 Z
   E04D7/00 B
   E04B5/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-178771(P2014-178771)
(22)【出願日】2014年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】514224105
【氏名又は名称】日本躯体処理株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】平松 賢士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001EA02
2E001EA04
2E001FA18
2E001HF01
2E001LA10
2E001MA01
2E001MA06
(57)【要約】
【課題】デッキプレートともコンクリートとも一体化することが可能なデッキプレートの防水工法を提供する。
【解決手段】有機高分子としての、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子に対し、無機質分として炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を用い、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強し、該補強テープ上に前記無機系弾性防水材を塗布し、デッキプレートにコンクリートを打設して防水性を付与することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートの防水工法であって、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子に対し、無機質分として炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を用いて、該無機系弾性防水材を、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に塗布することを特徴とするデッキプレートの防水工法。
【請求項2】
デッキプレートの防水工法であって、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強し、該補強テープ上に、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子に対し、無機質分として炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を塗布することを特徴とするデッキプレートの防水工法。
【請求項3】
前記無機系弾性防水材を塗布した後に、デッキプレートにコンクリートを打設して防水性を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のデッキプレートの防水工法。
【請求項4】
前記デッキプレートにコンクリートを打設した後に、打設したコンクリート上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布し、コンクリートに防水性を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデッキプレートの防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデッキプレートの防水工法に係り、より詳しくは、有機高分子としての水系高分子に有機高分子含有量に対し10%〜300%の無機質分を添加し更に適宜水を混合して製造した無機系弾性防水材を、デッキプレートの隙間、又はデッキプレートの隙間を補強したテープの上に塗布し、これにより、デッキプレートの防水性を建築物に付与することを特徴とするデッキプレートの防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートによる建造物の建築に際しては、デッキプレートをコンクリートの型枠として利用するとともに構造部材として用いるデッキプレート工法が採用されている。そして、このデッキプレート建築物の現場では、デッキプレートの隙間を養生テープで埋めることで防水を行うデッキプレートの防水工法が採用されている。
【0003】
即ち、デッキプレートに隙間があると、コンクリート打設時にコンクリートが隙間から漏れてしまい、見栄的にも悪くなるとともに、デッキプレートの亜鉛メッキがセメント分で腐食し、錆が発生してしまうという問題がある。そのため従来から、このような問題点を未然に防止するために、デッキプレート工法においては、デッキプレートの隙間を養生テープで埋めることが行われていた。
【0004】
また、デッキプレート面の防水と言うことでは、従来、コンクリート打設後に、アスファルト防水やウレタン防水、FRP防水、ウレタンFRP複合防水等を施工する塗膜防水の工法が採用されていた。
【0005】
更に、近年、初期工事費が前記の塗膜防水に比べ安価で、維持補修費もより安価な、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を防水材として使用する躯体防水工法も広がってきた。即ち、この防水材では、けい酸塩がコンクリートに浸透し、コンクリート中のセメント由来のカルシウムイオンと反応して、セメントの硬化体と同様な反応生成物がコンクリート中の空隙に生成し、緻密化することによってコンクリート層そのものを防水層とする防水方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122370号公報
【特許文献2】特開平10−292542号公報
【特許文献3】特開平5−44222号公報
【特許文献4】実開平7−43188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、養生テープとして通常のテープを用いた場合には、接着剤がアルカリ水に弱いために、はがれやすいという問題点があった。更に、テープ上にはコンクリートが付着せず、漏水の原因になり易く、構造上の強度的にも問題であった。更にまた、デッキプレートの隙間を養生テープで埋めた場合でも、コンクリート打設中にコンクリートが漏れるため、当日に下部面から漏れたコンクリートを高圧洗浄で除去しなければならないという問題点があった。
【0008】
また、従来から提供されている養生テープなどでは、接着剤が酢酸ビニル樹脂のため、コンクリート中のアルカリでは分解し、接着性が保持されないためコンクリート打設中に漏水してしまうという問題点もあった。
【0009】
更に、養生テープなどやウレタンやFRP等の有機系の塗膜防水材では、施工するコンクリートとの接着性が無く、結果的にデッキプレートとコンクリートが一体化しないために構造的に問題が発生するという欠点も考えられた。
【0010】
更にまた、コンクリート打設後に、アスファルト防水やウレタン防水、FRP防水、ウレタンFRP複合防水等を施工する塗膜防水の工法では、アスファルト防水の場合は、防水層保護のために、シンダーコンクリートを打設する必要があるため、上部構造物の重量が重たくなり、強度確保のため鉄骨が太くなりコストが多大に必要であった。
【0011】
また、その他の防水では、コンクリートのひび割れ発生や紫外線劣化、駐車場では車による摩擦やねじれにより、塗膜防水が破れ漏水が発生していた。
【0012】
そして、これらの塗膜防水では、デッキプレートがあるために、漏水箇所と漏水原因箇所が異なることが多く、止水工事は困難を極めていた。
【0013】
また、塗膜防水では、紫外線劣化や、コンクリート中の水分による膨れ・剥がれが多く、維持補修に多額の金額が必要とされていた。
【0014】
一方、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を防水材として使用する躯体防水工法は、安価で維持費も比較的安く便利な防水方法であるが、金属や樹脂などの他部材とコンクリートとの接合部は防水できず、大幅な収縮ひび割れや構造クラックにも対応できないと言う欠点がある。
【0015】
そこで、本発明はデッキプレートともコンクリートとも一体化することが可能なデッキプレートの防水工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述したように、従来から提供されている養生テープでは防水できないと言う問題点を有している。また、安価な材料としてはセメント系の補修材などもあるが、硬化体が硬く、弾性がないために割れやはがれのため、防水性がなく漏水し易いとの問題が発生しやすく、デッキプレートにも付着しにくいという問題点を有している。更に、防水テープ等の成形品はコストも高く、施工性が悪いためにかえって作業効率が低下すると言う問題点があった。
【0017】
そこで本発明者らは、これらの問題点を解決可能な無機系弾性防水材の開発について試行錯誤を繰り返した結果、従来の問題点を有効に解決可能な無機系弾性防水材を使用したデッキプレートの防水工法を開発するに至った。
【0018】
即ち、請求項1に記載の本発明のデッキプレートの防水工法は、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子に対し、無機質分として炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を用いて、該無機系弾性防水材を、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に塗布することを特徴としている。
【0019】
また、請求項2に記載の本発明のデッキプレートの防水工法は、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強し、この補強テープ上に、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子に対し、無機質分として炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を塗布することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明におけるデッキプレートの防水工法では、無機系弾性防水材を用いたことを特徴としている。そして、この無機系弾性防水材は、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子を使用し、この有機高分子に、無機質分として炭酸カルシウム、高炉スラグ、フライアッシュ、珪砂、セメントなどを、有機高分子含有量に対して、10%〜300%の範囲で添加し、更に水を適宜混合して製造することを特徴としており、これにより、弾性防水性を得ることができるとともに、作業性を向上することができ、更に、価格を低減することを可能としている。
【0021】
また、本発明のデッキプレートの防水工法では、前記無機系弾性防水材を、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に塗布することを特徴としており、これにより、前記無機系弾性防水材がデッキプレートともコンクリートとも一体化するために、確実にデッキプレートの防水を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例に用いる無機系弾性防水材の試験結果を示す表である。
図2】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例に用いる無機系弾性防水材の試験結果を示す表である。
図3】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例で防水施工を行うデッキプレートの全体を示した図である。
図4】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例を説明するための工程図であり、デッキ重ね部分の端部を防水する工程を示す図である。
図5】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例を説明するための工程図であり、フラッシング等の継ぎ足し部分を防水する工程を示す図である。
図6】本発明のデッキプレートの防水工法の実施例を説明するための工程図であり、コン止部を防水する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
請求項1に記載の本発明のデッキプレートの防水工法では、無機系弾性防水材を用いて、この無機系弾性防水材を、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に塗布することを特徴としている。
【0024】
そして、本発明に用いる無機系弾性防水材は、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子を使用して、無機質分として、炭酸カルシウム、高炉スラグ、フライアッシュ、タルク、珪砂、セメントなどを、有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を、適宜混合することで生成する。
【0025】
また、請求項2に記載の本発明のデッキプレートの防水工法では、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強し、その後、補強テープ上に、有機高分子として、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子を使用して、無機質分として、炭酸カルシウム、高炉スラグ、フライアッシュ、タルク、珪砂、セメントなどを、有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加し、更に水を、適宜混合することで生成した無機系弾性防水材を塗布することを特徴としている。
【0026】
更に、請求項3に記載の本発明のデッキプレートの防水工法では、請求項1又は請求項2のデッキプレートの防水工法において、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に無機系弾性防水材を塗布した後に、デッキプレートにコンクリートを打設して、これにより防水性を付与することとしている。
【0027】
更にまた、請求項4に記載の本発明のデッキプレートの防水工法では、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデッキプレートの防水工法において、デッキプレートにコンクリートを打設した後に、打設したコンクリート上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布することを特徴とし、これにより、コンクリートに防水性を付与することとしている。
【実施例1】
【0028】
本発明のデッキプレートの防水工法の実施例について説明すると、本実施例のデッキプレートの防水工法では、まず、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等のデッキプレート面の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強する。そしてその後に、前記補強テープ上に無機系弾性防水材を塗布することとしている。
【0029】
ここで、本実施例で用いる無機系弾性防水材について説明すると、本実施例で用いる前記無機系弾性防水材は、有機高分子に無機質分を添加し、更に水を混合することで生成することを特徴としており、無機質分は、有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加することとしている。
【0030】
そして、有機高分子としては、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子を使用することとしている。但し、硬化時の芯乾き性や値段を考慮すると、エチレン酢酸ビニル、アクリルエマルジョン、スチレンブタジエンラテックスが好ましい。
【0031】
次に、前記無機質分としては、炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを用いて、この無機質分を、前記有機高分子に添加することとしている。なお、セメントとしては、普通、早強および超早強などの各種ポルトランドセメントや、中庸熱セメント、白色セメント、アルミナセメントを使用しても良い。
【0032】
また、前記無機質分は、前記有機高分子含有量に対して、10%〜300%の範囲で添加することとしているが、作業性を考慮すると、有機高分子含有量に対する無機質分の添加量は、50%〜200%の範囲が好ましい。
【0033】
なお、水は適切な作業性を得るために混合すると良いが、必ずしも混合する必要は無く、水を混合しなくても良い。
【0034】
ここで、図1及び図2を用いて、本実施例で用いる前記無機系弾性防水材の試験結果について説明すると、図1は、配合1から配合8の試験結果を示しており、図1に示す配合1〜8は、有機高分子としてエチレン酢酸ビニル180kgを用い、これに無機質分を添加した場合である。
【0035】
そして、配合1では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂100kg、セメント10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合2では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂100kg、セメント10kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合3では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂90kg、セメント20kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合4では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合5では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂70kg、セメント40kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合6では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂60kg、セメント50kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合7では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂50kg、セメント60kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合8では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂40kg、セメント70kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示しており、いずれの場合も、作業性、防水性、弾性、付着性ともに良好な結果となった。
【0036】
次に、図2は配合9〜16の試験結果を示しており、配合9は、有機高分子として粉末エチレン酢酸ビニル90kgを用い、無機質分として、炭酸カルシウムを30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合10は、有機高分子としてアクリルを120kg用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合11は、有機高分子としてアクリルスチレンを100kg用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合12は、有機高分子としてスチレンブタジエンラバー100kgを用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示している。
【0037】
また、配合13〜配合16は前記配合1〜8と同様に、有機高分子としてエチレン酢酸ビニル180kgを用い、これに無機質分を添加した場合であり、配合13では、無機質分として、高炉スラグ30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合14では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、高炉スラグ30kg、珪砂80kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合15では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、フライアッシュ30kg、珪砂80kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合16では、無機質分として、タルク30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示しており、いずれの場合も、作業性、防水性、弾性、付着性ともに良好な結果となった。
【0038】
次に、以上のようにして構成される無機系弾性防水材を用いた本実施例のデッキプレートの防水工法について、図3図6を参照して説明すると、図4図6は、本実施例のデッキプレートの防水工法の工程を示す図であり、図4はデッキの重ね部分の隙間を防水する場合を示し、図5はフラッシング等の継ぎ足し部分の隙間を防水する場合を示し、図6はコン止部の隙間を防水する場合を示している。
【0039】
また、図3は、本実施例のデッキプレートの防水工法で防水施工を行うデッキプレートの全体を示した図であり、図において1がデッキプレートで、本実施例では波型デッキプレートの場合を示している。そして、図3において、Aで示す箇所が、図4で説明するデッキの重ね部分を示し、Bで示す箇所が、図5で説明するフラッシング等の継ぎ足し部分を示し、Cで示す箇所が、図6で説明するコン止部を示している。
【0040】
そして、前記Aで示すようなデッキの重ね部分を防水施工する場合は、デッキの重ね部分の端部及びその周囲をブラシ等で清掃した後に、図4(a)に示すように、該デッキの重ね部分の端部及びその周囲を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、図4(b)に示すように、前記補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。
【0041】
次に、前記Bで示すようなフラッシング等の継ぎ足し部分を防水施工する場合には、フラッシング等の継ぎ足し部分のジョイント部をブラシ等で清掃した後に、図5(a)に示すように、前記ジョイント部を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、図5(b)に示すように、補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。
【0042】
次に、前記Cで示すようなコン止部の防水施工を行う場合には、コン止部をブラシ等で清掃した後に、図6(a)に示すように、コン止部と継ぎ足し部分の立ち上がりまで、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、図6(b)に示すように、補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。なお、このとき、コンクリート打設高さを確認して、床上より上には無機系弾性防水材を塗布しないように注意する必要がある。
【0043】
次に、本実施例のデッキプレートの防水工法では、前述のように、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に前記無機系弾性防水材を塗布した後に、デッキプレートにコンクリートを打設して、これにより防水性を付与する。
【0044】
そして更に、本実施例のデッキプレートの防水工法では、前述のように、デッキプレートにコンクリートを打設した後に、打設したコンクリート上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布し、これにより、コンクリートに防水性を付与する。
【0045】
このように、本実施例のデッキプレートの防水工法では、デッキプレートの隙間に前記無機系弾性防水材を塗布し、更に、その上にコンクリートを打設し、更にまた、その上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布しているために、無機系弾性防水材がデッキプレートともコンクリートとも一体化するために、確実にデッキプレートの防水を行うことが可能である。
【0046】
但し、補強テープによる養生は必ずしも必要なものではなく、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材の塗布に関しても、必ずしも必要ではなく、これを塗布しなくても良い。
【0047】
なお、図3においてDで示す箇所は、柱と梁の接合箇所であるが、デッキプレートをコンクリートの型枠及び構造部材として利用した建造物の建築に際し、柱と梁の間に隙間がある場合には、当該隙間及びその周囲をブラシ等で清掃した後に、前記隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープで覆って養生し、その後に、テープ上に前記無機系弾性防水材を塗布すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のデッキプレートの防水工法によれば、防水材がデッキプレートともコンクリートとも一体化し、確実にデッキプレートの防水を行うことが可能であるため、デッキプレートとコンクリートによる建造物の建築の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 デッキプレート
2 補強テープ
3 無機系弾性防水材
A デッキ重ね部分
B フラッシング等の継ぎ足し部分
C コン止部
D 柱と梁の隙間部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6