【実施例1】
【0028】
本発明のデッキプレートの防水工法の実施例について説明すると、本実施例のデッキプレートの防水工法では、まず、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等のデッキプレート面の隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープなどの補強テープで補強する。そしてその後に、前記補強テープ上に無機系弾性防水材を塗布することとしている。
【0029】
ここで、本実施例で用いる無機系弾性防水材について説明すると、本実施例で用いる前記無機系弾性防水材は、有機高分子に無機質分を添加し、更に水を混合することで生成することを特徴としており、無機質分は、有機高分子含有量に対し10%〜300%の範囲で添加することとしている。
【0030】
そして、有機高分子としては、合成樹脂エマルジョンのエチレン酢酸ビニル、アクリル、アクリルスチレンなどのエマルジョンや粉末樹脂、スチレンブタジエンなどのラテックスなどの水系高分子を使用することとしている。但し、硬化時の芯乾き性や値段を考慮すると、エチレン酢酸ビニル、アクリルエマルジョン、スチレンブタジエンラテックスが好ましい。
【0031】
次に、前記無機質分としては、炭酸カルシウム・高炉スラグ・フライアッシュ・タルク・珪砂・セメントなどを用いて、この無機質分を、前記有機高分子に添加することとしている。なお、セメントとしては、普通、早強および超早強などの各種ポルトランドセメントや、中庸熱セメント、白色セメント、アルミナセメントを使用しても良い。
【0032】
また、前記無機質分は、前記有機高分子含有量に対して、10%〜300%の範囲で添加することとしているが、作業性を考慮すると、有機高分子含有量に対する無機質分の添加量は、50%〜200%の範囲が好ましい。
【0033】
なお、水は適切な作業性を得るために混合すると良いが、必ずしも混合する必要は無く、水を混合しなくても良い。
【0034】
ここで、
図1及び
図2を用いて、本実施例で用いる前記無機系弾性防水材の試験結果について説明すると、
図1は、配合1から配合8の試験結果を示しており、
図1に示す配合1〜8は、有機高分子としてエチレン酢酸ビニル180kgを用い、これに無機質分を添加した場合である。
【0035】
そして、配合1では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂100kg、セメント10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合2では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂100kg、セメント10kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合3では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂90kg、セメント20kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合4では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合5では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂70kg、セメント40kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合6では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂60kg、セメント50kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合7では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂50kg、セメント60kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合8では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂40kg、セメント70kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示しており、いずれの場合も、作業性、防水性、弾性、付着性ともに良好な結果となった。
【0036】
次に、
図2は配合9〜16の試験結果を示しており、配合9は、有機高分子として粉末エチレン酢酸ビニル90kgを用い、無機質分として、炭酸カルシウムを30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合10は、有機高分子としてアクリルを120kg用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合11は、有機高分子としてアクリルスチレンを100kg用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合12は、有機高分子としてスチレンブタジエンラバー100kgを用い、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示している。
【0037】
また、配合13〜配合16は前記配合1〜8と同様に、有機高分子としてエチレン酢酸ビニル180kgを用い、これに無機質分を添加した場合であり、配合13では、無機質分として、高炉スラグ30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合14では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、高炉スラグ30kg、珪砂80kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合15では、無機質分として、炭酸カルシウム30kg、フライアッシュ30kg、珪砂80kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示し、配合16では、無機質分として、タルク30kg、珪砂80kg、セメント30kg、水10kgを添加した場合の試験結果を示しており、いずれの場合も、作業性、防水性、弾性、付着性ともに良好な結果となった。
【0038】
次に、以上のようにして構成される無機系弾性防水材を用いた本実施例のデッキプレートの防水工法について、
図3〜
図6を参照して説明すると、
図4〜
図6は、本実施例のデッキプレートの防水工法の工程を示す図であり、
図4はデッキの重ね部分の隙間を防水する場合を示し、
図5はフラッシング等の継ぎ足し部分の隙間を防水する場合を示し、
図6はコン止部の隙間を防水する場合を示している。
【0039】
また、
図3は、本実施例のデッキプレートの防水工法で防水施工を行うデッキプレートの全体を示した図であり、図において1がデッキプレートで、本実施例では波型デッキプレートの場合を示している。そして、
図3において、Aで示す箇所が、
図4で説明するデッキの重ね部分を示し、Bで示す箇所が、
図5で説明するフラッシング等の継ぎ足し部分を示し、Cで示す箇所が、
図6で説明するコン止部を示している。
【0040】
そして、前記Aで示すようなデッキの重ね部分を防水施工する場合は、デッキの重ね部分の端部及びその周囲をブラシ等で清掃した後に、
図4(a)に示すように、該デッキの重ね部分の端部及びその周囲を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、
図4(b)に示すように、前記補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。
【0041】
次に、前記Bで示すようなフラッシング等の継ぎ足し部分を防水施工する場合には、フラッシング等の継ぎ足し部分のジョイント部をブラシ等で清掃した後に、
図5(a)に示すように、前記ジョイント部を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、
図5(b)に示すように、補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。
【0042】
次に、前記Cで示すようなコン止部の防水施工を行う場合には、コン止部をブラシ等で清掃した後に、
図6(a)に示すように、コン止部と継ぎ足し部分の立ち上がりまで、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープ2で覆って養生する。そしてその後に、
図6(b)に示すように、補強テープ2上に、前記無機系弾性防水材3を塗布する。なお、このとき、コンクリート打設高さを確認して、床上より上には無機系弾性防水材を塗布しないように注意する必要がある。
【0043】
次に、本実施例のデッキプレートの防水工法では、前述のように、デッキプレートの接合部、鉄骨との取合い部等の隙間に前記無機系弾性防水材を塗布した後に、デッキプレートにコンクリートを打設して、これにより防水性を付与する。
【0044】
そして更に、本実施例のデッキプレートの防水工法では、前述のように、デッキプレートにコンクリートを打設した後に、打設したコンクリート上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布し、これにより、コンクリートに防水性を付与する。
【0045】
このように、本実施例のデッキプレートの防水工法では、デッキプレートの隙間に前記無機系弾性防水材を塗布し、更に、その上にコンクリートを打設し、更にまた、その上に、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材を塗布しているために、無機系弾性防水材がデッキプレートともコンクリートとも一体化するために、確実にデッキプレートの防水を行うことが可能である。
【0046】
但し、補強テープによる養生は必ずしも必要なものではなく、けい酸塩系の浸透性コンクリート改質材の塗布に関しても、必ずしも必要ではなく、これを塗布しなくても良い。
【0047】
なお、
図3においてDで示す箇所は、柱と梁の接合箇所であるが、デッキプレートをコンクリートの型枠及び構造部材として利用した建造物の建築に際し、柱と梁の間に隙間がある場合には、当該隙間及びその周囲をブラシ等で清掃した後に、前記隙間を、アルミテープ、布テープ、ブチルテープ等の補強テープで覆って養生し、その後に、テープ上に前記無機系弾性防水材を塗布すると良い。