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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-53268(P2016-53268A)
(43)【公開日】2016年4月14日
(54)【発明の名称】地山補強用鋼管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20160318BHJP
   E21D 20/00 20060101ALI20160318BHJP
【FI】
   E21D9/04 F
   E21D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-179546(P2014-179546)
(22)【出願日】2014年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000158910
【氏名又は名称】株式会社亀山
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】亀山 元則
(72)【発明者】
【氏名】田中 正広
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勉
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054FA07
(57)【要約】
【課題】ねじ部に必要な強度の経済的な確保、ねじ部の打設抵抗の低減を図ると共に、縮径加工時の素管の破断や縮径加工の残留応力による鋼管の破断を無くす。
【解決手段】本体21と、内周面に雌ねじ221が形成された雌ねじ部22とが連設され、軸方向に略同一の外径を有する第1管体2と、本体21と略同一の外径と本体21より厚い肉厚を有する基部31と、基部31より小さい外径で形成され外周面に雄ねじ321が形成された雄ねじ部32とが連設され、第1管体2より短尺である第2管体3とから構成され、雌ねじ部22と雄ねじ部32がねじ接続状態で地山打設に必要な強度となる所要の肉厚をそれぞれ有し、第1管体2の本体21側の端縁に第2管体3の基部31側の端縁が摩擦圧接して一体化され、第1管体2の本体21側の端縁の略内端から雄ねじ部32側に向かって漸次内径が縮径するテーパ部33が第2管体3の周壁の内面に形成されている地山補強用鋼管1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山補強に必要な強度の所要の肉厚を有する本体と、内周面に雌ねじが形成されている雌ねじ部とが連なって設けられ、軸方向に略同一の外径で形成されている第1管体と、
前記本体と略同一の外径と前記本体より厚い肉厚を有する基部と、前記基部より小さい外径で形成され、外周面に雄ねじが形成されている雄ねじ部とが連なって設けられ、前記第1管体より短尺で形成されている第2管体とから構成され、
前記雌ねじ部と前記雄ねじ部がねじ接続状態で地山打設に必要な強度となる所要の肉厚をそれぞれ有し、
前記第1管体の前記本体側の端縁に、前記第2管体の前記基部側の端縁が摩擦圧接して一体化され、
前記第1管体の前記本体側の端縁の略内端から前記雄ねじ部側に向かって漸次内径が縮径するテーパ部が前記第2管体の周壁の内面に形成されている
ことを特徴とする地山補強用鋼管。
【請求項2】
請求項1記載の地山補強用鋼管の製造方法であって、
地山補強に必要な強度の所要の肉厚を有し、軸方向に略同一の外径で形成されている前記第1管体となる第1素管の端縁に、前記本体と略同一の外径と前記本体より厚い肉厚を有し且つ前記第1素管より短尺の前記第2管体となる第2素管の端縁を摩擦圧接して接合管を形成する第1工程と、
前記接合管の前記第2素管側の端部の外周面に雄ねじを形成すると共に、前記接合管の前記第1素管側の端部の内周面に雌ねじを形成する第2工程と
を備え、
前記第1工程の前に、前記第2素管の摩擦圧接側の端縁の肉厚が前記第1素管の肉厚と略一致するようにして、前記第2素管の摩擦圧接側の端縁から漸次内径が縮径するテーパ部を前記第2素管の周壁の内面に形成する工程を行い、
前記第1工程において、前記テーパ部が形成された前記第2素管の端縁を、肉厚が略一致する前記第1素管の端縁に摩擦圧接する
ことを特徴とする地山補強用鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの長尺先受け工、鏡補強工、地盤支持杭等で地山に打設される地山補強用鋼管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル切羽の前方上部の地山に長尺の補強管を打設して固結材を注入する長尺先受け工、切羽の前方の地山に長尺の補強管を打設して固結材を注入する鏡補強工、地中深くの支持層まで支持杭を打ち込む地盤支持杭等に、端部にねじ部が形成されているねじ接続可能な地山補強用鋼管が用いられている。
【0003】
この種の地山補強用鋼管は、例えば長尺先受け工の場合、標準で3m程度の長さのものがねじ接続により4本程度接続しながら地中に打設され、長尺の補強管が構成される。更に、この補強管の周壁には全長に亘って所定ピッチで吐出孔を設けておき、打設後に補強管の内部から固結材を注入してこれを地山にも吐出させて固結させ、長尺に亘って地盤を補強する長尺先受け工が形成される。同様に、鏡補強工、地中深くまで打ち込む地盤支持杭においても、地山補強用鋼管をねじ接続で接続して長尺の補強管が構成される。
【0004】
このように地山補強用鋼管は、ねじ接続でかなり長尺にして地中に打設されることでねじ接続部には打設抵抗によって大きな負荷がかかることから、端部のねじ部において必要な強度を確保できる肉厚にし、この肉厚に合わせて全長に亘って地山補強用鋼管を形成することが行われていた。しかしながら、この鋼管は、鋼管の端部以外で肉厚が過大になることによる材料コストの上昇、経済性の低下という欠点がある。他方において、地山補強用鋼管には、地中に打ち込む際に大きな打設抵抗が生ずることを避けるため、ねじ部でも外周への出っ張りをできるだけ無くして平滑にすることが求められる。
【0005】
そのため、ねじ部の必要な強度を経済的に確保することができると同時に、ねじ部の外周への出っ張りを無くして打設抵抗を小さくできる地山補強用鋼管として、特許文献1の地山補強用鋼管が提案されている。特許文献1の地山補強用鋼管は、鋼管の一方の端部を鋼管本体と略同一の外径で形成し、その内周面に雌ねじを形成すると共に、他方の端部に縮径加工を施し、その縮径部の外周面に雄ねじを形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−188837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の地山補強用鋼管を形成する際に、ある程度以上の縮径率で端部を縮径加工すると、材料によっては加工硬化により素管が破断したり、帯板を丸めて軸方向に溶接した溶接管を母材とした場合には溶接部が破断したりすることがある。即ち、縮径加工時の素管や、縮径加工により内部応力が残留する鋼管において、端部の縮径部や鋼管本体で破断を避けるには縮径率即ち厚肉にできる量に限界があるという不具合があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、縮径加工時の素管の破断や縮径加工の残留応力による鋼管の破断の問題なく、ねじ部に必要な強度の経済的な確保、ねじ部の打設抵抗の低減を図ることができる地山補強用鋼管及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地山補強用鋼管は、地山補強に必要な強度の所要の肉厚を有する本体と、内周面に雌ねじが形成されている雌ねじ部とが連なって設けられ、軸方向に略同一の外径で形成されている第1管体と、前記本体と略同一の外径と前記本体より厚い肉厚を有する基部と、前記基部より小さい外径で形成され、外周面に雄ねじが形成されている雄ねじ部とが連なって設けられ、前記第1管体より短尺で形成されている第2管体とから構成され、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部がねじ接続状態で地山打設に必要な強度となる所要の肉厚をそれぞれ有し、前記第1管体の前記本体側の端縁に、前記第2管体の前記基部側の端縁が摩擦圧接して一体化され、前記第1管体の前記本体側の端縁の略内端から前記雄ねじ部側に向かって漸次内径が縮径するテーパ部が前記第2管体の周壁の内面に形成されていることを特徴とする。
これによれば、第1管体より肉厚の第2管体を略同一外径の第1管体に摩擦圧接し、第2管体に雄ねじ部を形成することにより、地山補強用鋼管の全体的な肉厚を薄く合理的なものにしつつ、ねじ接続部に必要とされる肉厚を十分に確保して、地山補強用鋼管のねじ部に必要な強度を経済的に確保することができる。従って、地山補強用鋼管の軽量化及び低コスト化、鋼管を運搬、設置する作業性の向上を図ることもできる。更に、地山補強用鋼管をねじ接続で継ぎ足して地山に打設する際に、ねじ接続部で第1管体より外側に突出する部分が生じないことから、ねじ部或いはねじ接続部の打設抵抗を低減することができる。更に、鋼管端部を縮径して雄ねじを形成する工程を用いないことから、縮径加工時の素管の破断や縮径加工の残留応力による鋼管の破断を無くすことができ、高強度で安定性の高い地山補強用鋼管を得ることができる。更に、第1管体と第2管体を摩擦圧接することにより、第1管体自体の強度と同等或いはそれ以上の非常に高い強度で第1管体と第2管体を一体化することができる。更に、雄ねじ部を第1管体とは別で第1管体より肉厚の厚い第2管体に形成することにより、雄ねじ部、ねじ接続部の肉厚の調整、強度の調整が極めて容易となる。更に、摩擦圧接による接合箇所に不可避に形成される内周側及び外周側のバリのうち、外周側のバリと異なり削って除去することが難しい内周側のバリについて、第2管体のテーパ部によって、その第2管体よりも薄肉であるが故に内径大となる第1管体本体側の内周管壁に誘導形成されることとなり、これによって、内周側のバリが内径の小さい第2管体の内径よりも内側に突出することを極力防止することができる。従って、例えば固結材注入時に注入管が内周側のバリに引っ掛かることや、内周側のバリで固結材の流動性が阻害されることを防止することができる。
【0010】
本発明の地山補強用鋼管の製造方法は、本発明の地山補強用鋼管を製造する方法であって、地山補強に必要な強度の所要の肉厚を有し、軸方向に略同一の外径で形成されている前記第1管体となる第1素管の端縁に、前記本体と略同一の外径と前記本体より厚い肉厚を有し且つ前記第1素管より短尺の前記第2管体となる第2素管の端縁を摩擦圧接して接合管を形成する第1工程と、前記接合管の前記第2素管側の端部の外周面に雄ねじを形成すると共に、前記接合管の前記第1素管側の端部の内周面に雌ねじを形成する第2工程とを備え、前記第1工程の前に、前記第2素管の摩擦圧接側の端縁の肉厚が前記第1素管の肉厚と略一致するようにして、前記第2素管の摩擦圧接側の端縁から漸次内径が縮径するテーパ部を前記第2素管の周壁の内面に形成する工程を行い、前記第1工程において、前記テーパ部が形成された前記第2素管の端縁を、肉厚が略一致する前記第1素管の端縁に摩擦圧接することを特徴とする。
これによれば、第1管体となる第1素管と第2管体となる第2素管の肉厚を地山補強用鋼管として求められる性能に適したものを選択しながら、摩擦圧接により溶接以上の強度で接合一体化することができ、ねじ部となる鋼管端部を縮径或いは拡径する加工に比して、製品寸法バリエーションの増大、製造コストの低減、製造工程の効率化を図ることができる。更に、第1管体と第2管体での肉厚の連続性を保ちつつ、摩擦圧接により不可避に形成される内周側のバリを、第2管体よりも薄肉であるが故に内径大となる第1管体における端縁の略内端とテーパ部とが当接する箇所周辺に誘導形成してそこに極力収容し、内周側のバリが内径の小さい第2管体の内径より内側に突出することを極力防止した状態で、第1管体と第2管体を強固に一体化することができる。これにより、摩擦圧接により不可避に形成されるバリの除去作業を可及的に低減することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1管体より肉厚の第2管体を略同一外径の第1管体に摩擦圧接し、第2管体に雄ねじ部を形成することにより、地山補強用鋼管の全体的な肉厚を薄くしつつ、ねじ接続部に必要とされる肉厚を十分に確保して、地山補強用鋼管のねじ部に必要な強度を経済的に確保することができると共に、ねじ部の打設抵抗を低減することができる。更に、縮径加工時の素管の破断や縮径加工の残留応力による鋼管の破断の問題なく、ねじ部に必要な強度の経済的な確保、ねじ部の打設抵抗の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による実施形態の地山補強用鋼管の一部破断正面説明図。
図2】(a)は実施形態の地山補強用鋼管の一部破断正面図、(b)はその地山補強用鋼管の一部破断縦断面図、(c)は同図(b)のA部拡大図。
図3】(a)は実施形態の地山補強用鋼管を接続した補強管のねじ接続部周辺を示す一部断面正面図、(b)は同図(a)の補強管を地山に打設した状態を示すねじ接続部周辺の断面図。
図4】実施形態の地山補強用鋼管を用いて構築中のトンネルの切羽補強をしている状態の縦断説明図。
図5】実施形態の地山補強用鋼管を用いて構築中のトンネルの切羽補強をしている状態の横断説明図。
図6】実施形態の地山補強用鋼管を用いる二重管削孔打設の構成を示す縦断説明図。
図7】(a)〜(d)は実施形態の地山補強用鋼管の製造工程を示す断面説明図。
図8】(a)〜(d)は実施形態の地山補強用鋼管の製造工程において第2管体へのテーパ部の形成から第1管体と第2管体の摩擦圧接までの工程を示す断面説明図。
図9】(a)、(b)はテーパ部を形成しない第2管体を第1管体に摩擦圧接する工程を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態の地山補強用鋼管及びその製造方法〕
本実施形態の地山補強用鋼管1は、図1及び図2に示すように、加工前は別部材である略円筒状の第1管体2と略円筒状の第2管体3とを摩擦圧接で一体化して形成されている。第1管体2には、地山補強に必要な所要の肉厚を有する本体21と、内周面に雌ねじ221が形成されている雌ねじ部22とが隣に連なって設けられ、第1管体2は軸方向に略同一の外径で形成されている。第1管体2は、例えば全体の長さを2900mm〜3500mm程度とし、その外径を直径60〜120mmとして同一径で軸方向に形成すると共に、本体21の肉厚を2.5〜7mm程度とし、同じ肉厚を有する一方の端部の内周面に雌ねじ221を形成して50〜70mm程度の雌ねじ部22を設けて構成すると良好である。更に、第1管体2の本体21の所定箇所には、固結材の吐出孔23が内外に貫通して複数形成されている。
【0014】
第2管体3には、第1管体2の本体21と略同一の外径と本体21より厚い肉厚を有する基部31と、基部31より小さい外径で形成され、外周面に雄ねじ321が形成されている雄ねじ部32とが隣に連なって設けられ、又、第2管体3は第1管体2よりも短尺で形成されている。第2管体3の長さは、例えば雄ねじ部32が50〜70mm程度の場合に60〜80mm程度とすると良好である。また、第2管体3の基部31の肉厚は、本体21の肉厚が2.5〜7mm程度の場合に5〜10mm程度とすると良好である。また、第2管体3の基部31の外径は、第1管体2の本体21の外径に合わせて直径60〜120mmが望ましく、300mm以下の管体に適用可能である。又、雄ねじ部32の外径は、その雄ねじ321が同一構成の別の地山補強用鋼管1の雌ねじ部22の雌ねじ221に螺合する径とする。
【0015】
第1管体2の本体21側の端縁と、第2管体3の基部31側の端縁は、摩擦圧接して一体化されており、図2の二点鎖線で示す摩擦圧接による接合部4で一体化して接合され、一体的な地山補強用鋼管1が形成されている。更に、地山補強用鋼管1においては、第1管体2の本体21側の端縁の略内端から第2管体3の雄ねじ部32側に向かって漸次内径が縮径するテーパ部33が第2管体2の周壁の内面に形成されている。
【0016】
地山補強用鋼管1の第1管体2の雌ねじ部22と、第2管体3の雄ねじ部32は、ねじ接続状態で地山打設抵抗によってねじ部が破損しないように必要な強度となる所要の肉厚をそれぞれ有する。そして、図2及び図3に示すように、地山補強用鋼管1の雌ねじ部22に同一構成の別の地山補強用鋼管1の雄ねじ部32が螺合されて形成されるねじ接続部の肉厚と、地山補強用鋼管1の雄ねじ部32に同一構成の更に別の地山補強用鋼管1の雌ねじ部22が螺合されて形成されるねじ接続部の肉厚は、それぞれ本体21の肉厚よりも厚くなり、本実施形態では基部31に肉厚と略同一の肉厚になっている。
【0017】
更に、これらのねじ接続部の外径は、地山補強用鋼管1、第1管体2、第2管体3の基部31の外径と同一径となっており、図3に示すように、複数の地山補強用鋼管1がねじ接続部でねじ接続された長尺の補強管10では、ねじ接続部を含めて第1管体2の本体21の外径よりも外側に突出する段差が生じないようになっている。従って、複数の地山補強用鋼管1をねじ接続しながら順次継ぎ足して地山100に打設する際に、ねじ接続部の外側への突出部分が貫入抵抗を増大させることはない。
【0018】
このように実施形態の地山補強用鋼管1をねじ接続して構成される補強管10は、図4及び図5に示すように、例えば先受け工53や鏡補強工56で用いられる。図4及び図5において、100は地山、101はトンネル空間、102は掘進途中のトンネルの先端位置の切羽であり、トンネル空間102内にはドリルジャンボ51が配置されている。
【0019】
先受け工53は、切羽102の前方上部の地山100に長尺の補強管10を配置してアーチ状に補強するものであり、その施工に際しては、例えば切羽102の直近に既に立て込まれている支保工54の前方位置で、切羽102の天端部から前方上部の地山100に向かって補強管10よりも大径の下孔を所定の仰角で深さ数10cm程度まで穿孔し、その下孔から二重管削孔打設方式により、地山100に削孔を施すと同時に削孔内に長尺の補強管10を打設する。
【0020】
削孔の形成及び補強管10の打設では、図6に示すように、ドリルジャンボのガイドセル512に補強管10を構成する地山補強用鋼管1を配置すると共に、先端に削孔ビット514が装着されている削孔ロッド513を地山補強用鋼管1内に挿入し、削孔ロッド513の後端を削岩機511に連結する。更に、削孔ビット514の外周にケーシングシュー515を設け、ケーシングシュー515に地山補強用鋼管1の先端部を取り付ける。
【0021】
そして、削岩機511から削孔ロッド513を介して削孔ビット514に回転力と打撃力を伝達し、図3に示すように、地山補強用鋼管1の雄ねじ部32と後続の地山補強用鋼管1の雌ねじ部22の螺合によるねじ接続で地山補強用鋼管1を順次継ぎ足し、複数の地山補強用鋼管1を接続して構成される長尺の補強管10を削孔内に打設して存置する。具体的には、例えば先頭部には長さ3500mmの地山補強用鋼管1を用い、その後方に長さ3050mmの地山補強用鋼管1を3本継ぎ足して、全長12650mmの補強管10を地山100に打設する。この際、補強管10には外側に突出する段差がないことから、小さな貫入抵抗で打設することが可能である。その後、図4及び図5に示すように、補強管10内に長さの異なる複数本の固結材注入管(不図示)を挿入して補強管10の吐出孔23から周囲の全長12650mm分の地山100内に固結材を充填し、地山100内に固結領域52を形成する。
【0022】
また、鏡補強工56は、切羽102の前方の地山100を削孔して長尺の補強管10を配置して補強するものであり、その施工に際しては、例えば切羽102に施されている鏡面吹き付けコンクリート55から、上記先受け工53と同様の施工手順で、前方の地山100内に削孔を施して地山補強用鋼管1を継ぎ足した長尺の補強管10を打設し、その補強管10の周囲に固結領域52を形成する。
【0023】
次に、本実施形態の地山補強用鋼管1を製造する方法について説明する。本実施形態の地山補強用鋼管1を製造する際には、図7及び図8に示すように、円筒状で、地山補強に必要な強度の所要の肉厚を有し、軸方向に略同一の外径で形成されている第1管体2となる第1素管2mと、円筒状で、第1管体2の本体21の外径に相当する第1素管2mの外径と略同一の外径と、第1管体2の本体21の肉厚に相当する第1素管2mの肉厚よりも厚い肉厚を有し、且つ第1素管2mより短尺の第2管体3となる第2素管3mが用いられる。第1素管2mと第2素管3mの素材は実施例においては同じであり、例えば炭素鋼の鋼管等とする。
【0024】
そして、第2素管3mの摩擦圧接側の端縁の肉厚が第1素管2mの肉厚と略一致するようにして、第2素管3mの摩擦圧接側の端縁から漸次内径が縮径するテーパ部33を第2素管2mの周壁の内面に形成し(図8(a)、(b)参照)、テーパ部33が形成された第2素管2mの端縁を、肉厚が略一致する第1素管2mの片方の端縁に摩擦圧接し、接合管1mを形成する(図7(a)、(b)、図8(c)、(d)参照)。
【0025】
この摩擦圧接の工程では、通常、摩擦圧接の接合部4の内周側と外周側にそれぞれバリが不可避に形成されるため、接合管1mの外周側のバリは切削工程等により除去する。他方において、接合管1mの内周側のバリbuは、第2素管3mの摩擦圧接側端部にテーパ部33があることによって、該第2素管3mよりも内径の大きな第1素管2m側の端部内面に誘導されるように形成されることから、第1管体本体21よりも内径の小さな第2管体3或いは第2素管3mの内径よりも内側に内周側のバリbuが突出することが極力防止される。そして、バリbuが第1素管2m即ち第1管体2の内面のみにとどまり第2素管3m即ち第2管体3の内径よりも内面側に突出することなく発生している限りは、バリ除去処理をせずに使用することも可能である(図8(d)参照)。従って、地山補強用鋼管1は複数本接続して長尺の補強管10として地山100に打設してからその全長分の周囲の地山100に万遍なく固結材を注入するという用途が予定されるため、注入時には長さの異なる複数本の注入管を補強管10内部に挿入する必要があるが、この注入管が第2管体3或いは第2素管3mの内径よりも内側のバリbuによって挿入が阻害されることなく、補強管10の先端近傍まできちんと挿入される。また、バリbuの突出によって固結材の流動性が阻害されることもない。
【0026】
尚、比較例として、図9に示すように、第1素管2cの端縁と、第1素管2cの外径と略同一の外径と、第1素管2cの肉厚よりも厚い肉厚を有し、テーパ部を有しない第2素管3cの端縁とを摩擦圧接して接合管1cを形成した場合には、通常、第2素管3cの内径よりも内側に内周側のバリbuが突出してしまうことから、内周側のバリbuを別途切削等で除去する難しい工程が必須となる。特に、図9のように肉厚の異なる管の端縁同士を摩擦圧接した場合には、第2素管3cの接合側端縁における内周側は圧接対象材が存在しないまま加工により加熱され、溶融した金属が段差となる接合部の内周側に逃げて内周側のバリbuがより形成されやすく、管の内空断面を侵す突起物となってしまう。一方、図8に示す本発明においては、テーパ部33の形成によって接合される管の肉厚を一致させてある為、摩擦圧接時にバリbuの形成を極力回避し、内周側に形成されるとしても第1素管2m側に溶融金属が逃げるように誘導される。
【0027】
その後、図7(c)、(d)に示すように、接合管1mの第2素管3m側の端部の外周面に雄ねじ321を形成して第2素管3mに雄ねじ部32を設け、基部31と雄ねじ部32を有する第2管体3を形成すると共に、接合管1mの第1素管2m側の端部の内周面に雌ねじ221を形成して第1素管3mに雌ねじ部32を設け、本体21と雌ねじ部22を有する第1管体2を形成して、地山補強用鋼管1が完成する。
【0028】
上記実施形態の地山補強用鋼管1によれば、第1管体2より肉厚の第2管体3を略同一外径の第1管体2に摩擦圧接し、第2管体3に雄ねじ部32を形成することにより、地山補強用鋼管1の全体的な肉厚を薄く合理的なものにしつつ、ねじ接続部に必要とされる肉厚を十分に確保して、地山補強用鋼管1のねじ部22、32に必要な強度を経済的に確保することができる。従って、地山補強用鋼管1の軽量化及び低コスト化、鋼管1を運搬、設置する作業性の向上を図ることもできる。
【0029】
更に、地山補強用鋼管1をねじ接続で継ぎ足して地山100に打設する際に、ねじ接続部で第1管体2より外側に突出する部分が生じないことから、ねじ部22、32或いはねじ接続部の打設抵抗を低減することができる。更に、鋼管端部を縮径して雄ねじを形成する工程を用いないことから、縮径加工時の素管の破断や縮径加工の残留応力による鋼管の破断の問題なく、ねじ部に必要な強度の経済的な確保、ねじ部の打設抵抗の低減を図り、高強度で安定性の高い地山補強用鋼管1を得ることができる。更に、第1管体2と第2管体3を摩擦圧接することにより、第1管体2自体の強度と同等或いはそれ以上の非常に高い強度で第1管体2と第2管体3を一体化することができる。更に、雄ねじ部32を第1管体2とは別で第1管体2より肉厚の厚い第2管体3に形成することにより、雄ねじ部32、ねじ接続部の肉厚の調整、強度の調整が極めて容易となる。
【0030】
また、テーパ部33を形成することにより、内周側のバリbuを第2本体3よりも内径の大きな第1管体2の内面側に誘導し、これによって、バリbuが第2管体3の内径よりも内側に突出することを極力防止することができ、例えば固結材注入時に注入管が内周側のバリbuに引っ掛かることや、内周側のバリbuで固結材の流動性が阻害されることを防止することができる。
【0031】
また、地山補強用鋼管1を製造する際に、第1管体2となる第1素管2mと第2管体3となる第2素管3mを摩擦圧接した後に雄ねじ321と雌ねじ221を形成することにより、鋼管の両端部に雄ねじと雌ねじを形成する既存の製造ラインをそのまま用いて雄ねじ321と雌ねじ221を形成することができ、製造コストの低減、製造工程の効率化を図ることができる。更に、部材を早期の段階で一体化し、取扱い、管理を容易化することができる。
【0032】
また、テーパ部33が形成された第2素管3mの端縁を、肉厚が略一致する第1素管2mの端縁に摩擦圧接することにより、第1管体2と第2管体3での肉厚の連続性を保ちつつ、摩擦圧接による内周側のバリbuを第1管体2の端縁の略内端とテーパ部33とが当接する箇所周辺に収容し、第2管体3の内径より内側に突出することを防止するようにして、第1管体2と第2管体3を一体化することができる。
【0033】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0034】
例えば摩擦圧接して接合管1mを形成する前に、第1素管2mの端部の内周面に雌ねじ221を形成すると共に、第2素管3mの端部の外周面に雄ねじ321を形成し、その後に、第1素管2mと第2素管3mを摩擦圧接して一体化した地山補強用鋼管、或いは摩擦圧接して接合管1mを形成する前に、第1素管2mの端部の内周面の雌ねじ221、若しくは第2素管3mの端部の外周面の雄ねじ321の一方を形成し、第1素管2mと第2素管3mの摩擦圧接後に他方の雄ねじ321若しくは雌ねじ221を形成して製造した地山補強用鋼管も本発明に包含される。即ち、第1管体2となる第1素管2mの端縁に、第2管体3となる第2素管3mの端縁を摩擦圧接して接合管1mを形成する第1工程と、接合管1mの第2素管3m側の端部の外周面に雄ねじ321を形成すると共に、その接合管1mの第1素管2m側の端部の内周面に雌ねじを形成する第2工程とは、第1第2という手順をあらわすものではなく、2つの工程を備えていればその順序にかかわらず、本発明に含有される。
【0035】
また、本発明の地山補強用鋼管の用途は、上述のトンネルの先受け工53、鏡補強工56に限定されず、ねじ接続で長尺の連結鋼管を形成して地山に埋め込み、地山を補強する適宜の用途に使用可能であり、例えばフットパイル、地盤支持杭等にも用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えばトンネル掘削時に先行地山を補強する先受け工、鏡補強工、フットパイル、地盤支持杭等に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…地山補強用鋼管 2…第1管体 21…本体 22…雌ねじ部 221…雌ねじ 23…吐出孔 3…第2管体 31…基部 32…雄ねじ部 321…雄ねじ 33…テーパ部 4…接合部 10…補強管 1m、1c…接合管 2m、2c…第1素管 3m、3c…第2素管 51…ドリルジャンボ 511…削岩機 512…ガイドセル 513…削孔ロッド 514…削孔ビット 515…ケーシングシュー 52…固結領域 53…先受け工 54…支保工 55…鏡面吹き付けコンクリート 56…鏡補強工 100…地山 101…トンネル空間 102…切羽 bu…内周側のバリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9