とに基づいて、下流側の断線を検出する下流側断線検出手段(電流変化ベクトル生成部1および下流側断線判断部2)と、上流側の断線を検出する上流側断線検出手段(実効値算出部3および上流側断線判断部4)とを備えた。配置場所の上流側の断線を検出することができ、配置場所の下流側の断線も検出することができるので、上流側または下流側の断線のみを検出する断線検出装置より、配電線に配置する数を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、第1実施形態に係る断線検出装置Aを説明するための図であり、三相の配電線に配置した状態を示している。三相はa相、b相、c相からなり、b相の電流はa相の電流より位相が遅れており、c相の電流はa相の電流より位相が進んでいる。
【0028】
断線検出装置Aは、配電線の断線を検出するものである。本実施形態では、断線検出装置Aが、a相の配電線a、b相の配電線bおよびc相の配電線cからなる三相の配電線の断線を検出する場合について説明する。
【0029】
配電線a、b、cの間には、変圧器Bを介して、それぞれ負荷が接続されている。配電線aと配電線bとの間には負荷Labが接続され、配電線bと配電線cとの間には負荷Lbcが接続され、配電線cと配電線aとの間には負荷Lcaが接続されている。配電線aには計器用変流器CT1が配置されており、配電線bには計器用変流器CT2が配置されており、配電線cには計器用変流器CT3が配置されている。計器用変流器CT1,CT2,CT3は、それぞれ配置された配電線を流れる電流を検出するものである。計器用変流器CT1,CT2,CT3によってそれぞれ検出された電流信号i
a,i
b,i
cは、断線検出装置Aに入力される。なお、計器用変流器CT1,CT2,CT3に代えて、他の電流検出装置(例えば、光電流測定など)を用いてもよい。また、配電線aと配電線bとの間には計器用変圧器PT1が配置されており、配電線bと配電線cとの間には計器用変圧器PT2が配置されており、配電線cと配電線aとの間には計器用変圧器PT3が配置されている。計器用変圧器PT1,PT2,PT3は、それぞれ配電線間の線間電圧を検出するものである。計器用変圧器PT1,PT2,PT3によってそれぞれ検出された電圧信号v
ab,v
bc,v
caは、断線検出装置Aに入力される。なお、計器用変圧器PT1,PT2,PT3に代えて、他の電圧検出装置(例えば、コンデンサ分圧など)を用いてもよい。
【0030】
計器用変流器CT1,CT2,CT3および計器用変圧器PT1,PT2,PT3の下流側には、遮断器CB1,CB2,CB3が設けられている。遮断器CB1,CB2,CB3は、断線検出装置Aから入力される遮断指令に応じて、それぞれ配電線a,b,cを流れる電流を遮断する。なお、遮断器CB1,CB2,CB3を、計器用変流器CT1,CT2,CT3および計器用変圧器PT1,PT2,PT3の上流側に設けるようにしてもよい。
【0031】
断線検出装置Aは、計器用変流器CT1、CT2,CT3からそれぞれ入力される電流信号i
a,i
b,i
c、および、計器用変圧器PT1、PT2,PT3からそれぞれ入力される電圧信号v
ab,v
bc,v
caに基づいて断線を検出し、通常時は閉路されている遮断器CB1,CB2,CB3を開放させるための遮断指令を出力する。断線検出装置Aは、電流変化ベクトル生成部1、下流側断線判断部2、実効値算出部3、上流側断線判断部4、遮断指令部5、および、通信部6を備えている。
【0032】
電流変化ベクトル生成部1は、入力される電圧信号v
ab,v
bc,v
caおよび電流信号i
a,i
b,i
cに基づいて、各相電圧基準の線電流ベクトルの変化ベクトルを生成して出力するものである。電流変化ベクトル生成部1は、ベクトル生成部11、演算部12、および、記憶部13を備えている。
【0033】
ベクトル生成部11は、各相の線電流ベクトルおよび線間電圧ベクトルを生成するものである。a相の線電流ベクトルをIa,b相の線電流ベクトルをIb,c相の線電流ベクトルをIcと表し、b相に対するa相の線間電圧ベクトルをVab,c相に対するb相の線間電圧ベクトルをVbc,a相に対するc相の線間電圧ベクトルをVcaと表す。ベクトル生成部11は、計器用変流器CT1、CT2,CT3からそれぞれ入力される電流信号i
a,i
b,i
cをデジタル信号に変換し、ローパスフィルタで高調波成分を除去し、それぞれ振幅および位相を検出し、これらに基づいて線電流ベクトルIa,Ib,Icを生成する。また、ベクトル生成部11は、計器用変圧器PT1、PT2,PT3からそれぞれ入力される電圧信号v
ab,v
bc,v
caをデジタル信号に変換し、ローパスフィルタで高調波成分を除去し、それぞれ振幅および位相を検出し、これらに基づいて線間電圧ベクトルVab,Vbc,Vcaを生成する。ベクトル生成部11は、生成した線電流ベクトルIa,Ib,Icおよび線間電圧ベクトルVab,Vbc,Vcaを演算部12に出力する。
【0034】
演算部12は、ベクトル生成部11より入力される線電流ベクトルIa,Ib,Icを各相電圧基準のベクトルに変換し、変化ベクトルを生成して出力するものである。演算部12は、ベクトル生成部11より入力される線電流ベクトルIa,Ib,Icを、線間電圧ベクトルVab,Vbc,Vcaを用いて、各線間電圧基準のベクトルに変換し、位相を30°遅らせることで各相電圧基準のベクトルに変換する。そして、各相電圧基準のベクトルに変換された線電流ベクトルIa,Ib,Icを記憶部13に記憶させつつ、所定時間(例えば、数十ミリ秒)前の線電流ベクトルを記憶部13から読み出す。演算部12は、ベクトル生成部11より入力されて各相電圧基準のベクトルに変換された線電流ベクトルIa,Ib,Icを、記憶部13から読み出された線電流ベクトルIa’,Ib’,Ic’からそれぞれ減算して、電流変化ベクトルΔIa(=Ia’−Ia),ΔIb(=Ib’−Ib),ΔIc(=Ic’−Ic)を算出し、下流側断線判断部2に出力する。
【0035】
なお、線電流ベクトルIa,Ib,Icを各線間電圧基準のベクトルに変換する際に、例えば線間電圧ベクトルVabを基準として変換し、その後、線電流ベクトルIbについては位相を120°進め、線電流ベクトルIcについては位相を120°遅らせるようにしてもよい。また、先に、線電流ベクトルIa,Ib,Icの変化ベクトルを生成し、各相電圧基準のベクトルに変換して出力するようにしてもよい。
【0036】
なお、電流変化ベクトル生成部1の構成は、上述したものに限定されず、各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを生成するものであればよい。また、ベクトル生成部11の前段にアナログフィルタを設けるようにしてもよい。また、ベクトル生成部11が所定時間ごとに線電流ベクトルIa,Ib,Icおよび線間電圧ベクトルVab,Vbc,Vcaを生成し、演算部12が前回入力された線電流ベクトルIa’,Ib’,Ic’と今回入力された線電流ベクトルIa,Ib,Icとから電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを算出するようにしてもよい。
【0037】
下流側断線判断部2は、計器用変流器CT1,CT2,CT3および計器用変圧器PT1,PT2,PT3が配置されている位置より下流側(負荷側)の断線の発生を判断し、断線した配電線の特定を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。下流側断線判断部2は、電流変化ベクトル生成部1より入力される各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcに基づいて判断を行う。下流側断線判断部2は、各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが所定の条件を満たす場合に、下流側で断線が発生したと判断する。下流側断線判断部2は、下流側で断線が発生したと判断した場合、下流側で断線が発生したこと、および、断線が発生した配電線の情報を、遮断指令部5および通信部6に出力する。
【0038】
以下に、下流側断線判断部2が下流側の断線を判断するための条件について説明する。
【0039】
下流側で断線が発生せず、配電線に接続されている負荷に変動がない場合、各線電流ベクトルIa,Ib,Icが変化しないので、各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIc(以下では、単に「ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIc」と記載する)は、いずれもゼロベクトルである。下流側で断線が発生した場合、線電流ベクトルIa,Ib,Icが変化するので、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcも変化する。しかし、各相の配電線間に接続された負荷が変動した場合にも、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが変化する。下流側断線判断部2は、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcの特徴から、下流側で断線が発生したことを判断する。具体的には、下流側断線判断部2は、下流側で断線が発生したときのベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcの特徴を条件化して記憶しており、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが当該条件に一致するか否かを判別することで、下流側の断線の発生を判断する。
【0040】
配電線と負荷との間に介在する変圧器B(
図1参照)の結線には、ΔΔ結線、YY結線、ΔY結線、YΔ結線などがある。本実施形態では、変圧器Bがいずれの結線であるかに関係なく、断線を判断できるようにしている。
【0041】
図2は、変圧器Bの結線がΔΔ結線である場合を示すものであり、
図2(a)は
図1に示す配電線a、b、cに接続された変圧器Bおよび負荷を示している。
図2(a)において、負荷Labに流れる電流のベクトルをIab、負荷Lbcに流れる電流のベクトルをIbc、負荷Lcaに流れる電流のベクトルをIcaとしている。
図2(a)に示すように、a相の配電線aの線電流ベクトルIa、b相の配電線bの線電流ベクトルIb、c相の配電線cの線電流ベクトルIcは、それぞれ、
Ia=Iab−Ica
Ib=Ibc−Iab
Ic=Ica−Ibc
となる。なお、計算の便宜上、変圧器Bの変圧比を「1」としている。変圧比が「1」でない場合は、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、大きさがそれぞれ変圧比で除算したものになるが、断線時でも負荷変動時でも条件は同じで、いずれの場合もベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcの大きさがそれぞれ変圧比で除算したものになる。したがって、変圧比を「1」として計算しても問題ない。
【0042】
図2(b)は、三相平衡状態の各電流および電圧のベクトルを示している。a相の相電圧ベクトルVa,b相の相電圧ベクトルVb,c相の相電圧ベクトルVcは、それぞれ互いに位相が120°ずつ離れている(
図2(b)において、太線矢印で示している)。b相に対するa相の線間電圧ベクトルVab、c相に対するb相の線間電圧ベクトルVbc、a相に対するc相の線間電圧ベクトルVcaは、それぞれ、
Vab=Va−Vb
Vbc=Vb−Vc
Vca=Vc−Va
となる(
図2(b)において、破線矢印で示している)。電流が電圧より位相θ進んでいるとすると、電流ベクトルIab,Ibc,Icaは、
図2(b)における細線矢印で示される。
【0043】
a相の相電圧ベクトルVaを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数1】
となり、b相の相電圧ベクトルVbを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数2】
となり、c相の相電圧ベクトルVcを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数3】
となる。
【0044】
図3(a)は、a相の配電線aにおいて断線が発生した状態を示している。配電線aで断線が発生すると、配電線aに電流が流れなくなるので、線電流ベクトルIaはゼロベクトルになる。負荷LabおよびLcaには同じ電流が流れ、この電流ベクトルは、電流ベクトルIbcと位相が同じで大きさが異なるベクトルになるので、αIbcと表すことができる。したがって、
Ia=0
Ib=Ibc+αIbc
Ic=−Ibc−αIbc
となる。
【0045】
よって、断線前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab−Ica)−(0)=Iab−Ica
ΔIb=(Ibc−Iab)−(Ibc+αIbc)=−Iab−αIbc
ΔIc=(Ica−Ibc)−(−Ibc−αIbc)=Ica+αIbc
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数4】
となる。
【0046】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルβVa,βVb,βVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数5】
となる。実際の電力系統では、断線時に電圧不足による停電のため、αは「0」に近い値になる。
図3(b)は、断線時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0047】
次に、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0048】
図4(a)は、単相負荷変動を表すものであり、負荷Labが切り離された状態を示している。この場合、
図4(a)から明らかなように、
Ia=−Ica
Ib=Ibc
Ic=Ica−Ibc
となる。
【0049】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab−Ica)−(−Ica)=Iab
ΔIb=(Ibc−Iab)−(Ibc)=−Iab
ΔIc=(Ica−Ibc)−(Ica−Ibc)=0
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数6】
となる。
【0050】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルβVa,βVb,βVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数7】
となる。
図4(b)は、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0051】
次に、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0052】
図5(a)は、三相負荷変動を表すものであり、負荷Lab,Lbc,Lcaが切り離された状態を示している。この場合、
図5(a)から明らかなように、
Ia=0
Ib=0
Ic=0
となる。
【0053】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab−Ica)−(0)=Iab−Ica
ΔIb=(Ibc−Iab)−(0)=Ibc−Iab
ΔIc=(Ica−Ibc)−(0)=Ica−Ibc
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数8】
となる。
【0054】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルβVa,βVb,βVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数9】
となる。
図5(b)は、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0055】
次に、変圧器Bの結線がΔY結線である場合について説明する。
【0056】
図6は、変圧器Bの結線がΔY結線である場合を示すものであり、
図6(a)は
図1に示す配電線a、b、cに接続された変圧器Bおよび負荷を示している。
図2(a)と同様に、
図6(a)において、負荷Labに流れる電流のベクトルをIab、負荷Lbcに流れる電流のベクトルをIbc、負荷Lcaに流れる電流のベクトルをIcaとしている。
図6(a)に示すように、a相の配電線aの線電流ベクトルIa、b相の配電線bの線電流ベクトルIb、c相の配電線cの線電流ベクトルIcは、それぞれ、
Ia=Iab+Ibc−2Ica
Ib=Ibc+Ica−2Iab
Ic=Ica+Iab−2Ibc
となる。
【0057】
図6(b)は、三相平衡状態の各電流および電圧のベクトルを示している。a相の相電圧ベクトルVa,b相の相電圧ベクトルVb,c相の相電圧ベクトルVcは、それぞれ互いに位相が120°ずつ離れている(
図6(b)において、太線矢印で示している)。b相に対するa相の線間電圧ベクトルVab、c相に対するb相の線間電圧ベクトルVbc、a相に対するc相の線間電圧ベクトルVcaは、それぞれ、
Vab=Va−Vb
Vbc=Vb−Vc
Vca=Vc−Va
となる(
図6(b)において、破線太線矢印で示している)。負荷Labにかかる電圧のベクトルをVab’、負荷Lbcにかかる電圧のベクトルをVbc’、負荷Lcaにかかる電圧のベクトルをVca’は、それぞれ線間電圧ベクトルVab,Vbc,Vcaに対して位相が30°進む。電流が電圧より位相θ進んでいるとすると、電流ベクトルIab,Ibc,Icaは、
図6(b)における細線矢印で示される。
【0058】
a相の相電圧ベクトルVaを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数10】
となり、b相の相電圧ベクトルVbを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数11】
となり、c相の相電圧ベクトルVcを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数12】
となる。
【0059】
変圧器Bの結線がΔY結線の場合も、断線時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
図3(b)と同様になる。
【0060】
次に、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0061】
負荷Labが切り離されて、Iab=0になると、
Ia=Ibc−2Ica
Ib=Ibc+Ica
Ic=Ica−2Ibc
となる。
【0062】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab+Ibc−2Ica)−(Ibc−2Ica)=Iab
ΔIb=(Ibc+Ica−2Iab)−(Ibc+Ica)=−2Iab
ΔIc=(Ica+Iab−2Ibc)−(Ica−2Ibc)=Iab
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数13】
となる。
【0063】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルγVa,γVb,γVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数14】
となる。
図7(a)は、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0064】
次に、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0065】
負荷Lab,Lbc,Lcaが切り離されると、
Ia=0
Ib=0
Ic=0
となる。
【0066】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab+Ibc−2Ica)−(0)=−3Ica
ΔIb=(Ibc+Ica−2Iab)−(0)=−3Iab
ΔIc=(Ica+Iab−2Ibc)−(0)=−3Ibc
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数15】
となる。
【0067】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルγVa,γVb,γVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数16】
となる。
図7(b)は、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0068】
次に、変圧器Bの結線がYΔ結線である場合について説明する。
【0069】
図8は、変圧器Bの結線がYΔ結線である場合を示すものであり、
図8(a)は
図1に示す配電線a、b、cに接続された変圧器Bおよび負荷を示している。
図2(a)と同様に、
図8(a)において、負荷Labに流れる電流のベクトルをIab、負荷Lbcに流れる電流のベクトルをIbc、負荷Lcaに流れる電流のベクトルをIcaとしている。
図8(a)に示すように、a相の配電線aの線電流ベクトルIa、b相の配電線bの線電流ベクトルIb、c相の配電線cの線電流ベクトルIcは、それぞれ、
Ia=(2/3)Iab−(1/3)Ibc−(1/3)Ica
Ib=(2/3)Ibc−(1/3)Ica−(1/3)Iab
Ic=(2/3)Ica−(1/3)Iab−(1/3)Ibc
となる。
【0070】
図8(b)は、三相平衡状態の各電流および電圧のベクトルを示している。a相の相電圧ベクトルVa,b相の相電圧ベクトルVb,c相の相電圧ベクトルVcは、それぞれ互いに位相が120°ずつ離れている(
図8(b)において、太線矢印で示している)。b相に対するa相の線間電圧ベクトルVab、c相に対するb相の線間電圧ベクトルVbc、a相に対するc相の線間電圧ベクトルVcaは、それぞれ、相電圧ベクトルVa,Vb,Vcと等しくなる。電流が電圧より位相θ進んでいるとすると、電流ベクトルIab,Ibc,Icaは、
図8(b)における細線矢印で示される。
【0071】
a相の相電圧ベクトルVaを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数17】
となり、b相の相電圧ベクトルVbを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数18】
となり、c相の相電圧ベクトルVcを基準にして、電流ベクトルIab,Ibc,Icaを表すと、
【数19】
となる。
【0072】
変圧器Bの結線がYΔ結線の場合も、断線時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
図3(b)と同様になる。
【0073】
次に、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0074】
負荷Labが切り離されて、Iab=0になると、
Ia=−(1/3)Ibc−(1/3)Ica
Ib=(2/3)Ibc−(1/3)Ica
Ic=(2/3)Ica−(1/3)Ibc
となる。
【0075】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(2/3)Iab−(1/3)Ibc−(1/3)Ica)−(−(1/3)Ibc−(1/3)Ica)=(2/3)Iab
ΔIb=((2/3)Ibc−(1/3)Ica−(1/3)Iab)−((2/3)Ibc−((1/3))Ica)=−(1/3)Iab
ΔIc=((2/3)Ica−(1/3)Iab−(1/3)Ibc)−((2/3)Ica−(1/3)Ibc)=−(1/3)Iab
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数20】
となる。
【0076】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルεVa,εVb,εVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数21】
となる。
図9(a)は、単相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0077】
次に、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0078】
負荷Lab,Lbc,Lcaが切り離されると、
Ia=0
Ib=0
Ic=0
となる。
【0079】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=((2/3)Iab−(1/3)Ibc−(1/3)Ica)−(0)=Iab
ΔIb=((2/3)Ibc−(1/3)Ica−(1/3)Iab)−(0)=Ibc
ΔIc=((2/3)Ica−(1/3)Iab−(1/3)Ibc)−(0)=Ica
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数22】
となる。
【0080】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルεVa,εVb,εVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数23】
となる。
図9(b)は、三相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
【0081】
変圧器Bの結線がYY結線の場合は、ΔΔ結線の場合と同様になる。なお、二相負荷変動は、きわめて特殊な状態でしか発生せず、実際に発生することはほとんどないので、本実施形態では、二相負荷変動が生じる場合を想定していない。
【0082】
以上のように、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、下流側で断線が発生した場合(
図3(b)参照)と、負荷変動が発生した場合(
図4(b)、
図5(b)、
図7(a)、(b)、
図9(a)、(b))とで異なるベクトルになる。ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが、
図3(b)に示すベクトルになった場合に、下流側で断線が発生したと判断することができる。しかし、負荷変動時はおおよそ負荷が平衡していると考えて問題ないが、下流側の断線時は断線点より負荷側の負荷が平衡しているとは限らず、
図3(b)に示すベクトル図からずれが生じる場合がある。また、計器用変流器CT1、CT2,CT3または計器用変圧器PT1、PT2,PT3に測定誤差が生じることも考慮にいれる必要がある。つまり、これらの誤差が含まれていても、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが、
図3(b)に示すベクトルであって、
図4(b)、
図5(b)、
図7(a)、(b)、
図9(a)、(b)に示すベクトルでないと判断できる条件を設定する必要がある。
【0083】
本実施形態では、下流側の断線発生を判断するための条件として、以下の条件を設定している。
(1)ある相の相電圧基準の電流変化ベクトルに対する、ある相より位相が進む相の相電圧基準の電流変化ベクトルの位相差、および、ある相より位相が遅れる相の相電圧基準の電流変化ベクトルに対する、ある相の相電圧基準の電流変化ベクトルの位相差が、それぞれ、第1閾値θ
1以上、第2閾値θ
2以下である。
(2)すべての相の相電圧基準の電流変化ベクトルの大きさが所定の閾値I
0以上である。
(3)以下の条件をすべて満たす場合に該当しない。
(3−1)各相の相電圧基準の電流変化ベクトルの中で大きさが最大のベクトルと、それ以外のベクトルとの位相差が、それぞれ、約60°である。
(3−2)前記最大のベクトルの大きさが、前記それ以外のベクトルの大きさの約2倍である。
【0084】
本実施形態では、第1閾値θ
1として5°〜30°の値が設定され、第2閾値θ
2として150°〜180°の値が設定され、所定の閾値I
0として数アンペアの値が設定されている。
【0085】
上記(1)の条件は、例えば「ある相」がa相の場合、a相の相電圧基準の電流変化ベクトルに対する、c相の相電圧基準の電流変化ベクトルの位相差がθ
1〜θ
2の範囲にあり、かつ、b相の相電圧基準の電流変化ベクトルに対する、a相の相電圧基準の電流変化ベクトルの位相差がθ
1〜θ
2の範囲にあることを意味している。
【0086】
上記(3)の条件は、
図7(a)および
図9(a)に示すベクトルに該当しないことを条件としている。断線により一切停電が発生しない場合、すなわち、αが(1/2)の場合、
図3(b)に示すベクトルと
図7(a)および
図9(a)に示すベクトルとを判別することが難しい。しかし、実際の系統で一切停電が発生しないことは考えられない。したがって、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが
図7(a)または
図9(a)に示すベクトルに該当する場合は、断線ではなく負荷変動であると判断しても問題ない。なお、本実施形態では、(3−1)の条件を、各位相差が60°±5°の範囲内であるかどうかで判断している。また、(3−2)の条件を、1.9〜2倍の範囲内であるかどうかで判断している。
【0087】
なお、上述した条件(1)〜(3)は、下流側の断線の発生を判断するための条件の一例であって、下流側断線判断部2に設定される条件はこれに限定されない。下流側の断線の発生を判断するための条件は、ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcに基づいて、下流側で断線が発生した場合(
図3(b)参照)と、負荷変動が発生した場合(
図4(b)、
図5(b)、
図7(a)、(b)、
図9(a)、(b))とを区別できるものであればよい。
【0088】
下流側断線判断部2は、電流変化ベクトル生成部1より入力されるベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが上記条件(1)〜(3)をすべて満たす場合に、配電線の下流側で断線が発生したと判断する。
【0089】
なお、上記では、負荷変動が発生した場合として、各負荷が切り離された場合のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcのベクトル図(
図4(b)、
図5(b)、
図7(a)、(b)、
図9(a)、(b)参照)を示している。負荷が減少した場合は、各図のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcの長さが異なるだけであり、負荷が増加した場合は、各図のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcの向きが180°反転するだけである。したがって、これらの場合も、上記条件(1)〜(3)を用いて、下流側の断線発生時のものと区別することができる。
【0090】
図1に戻って、実効値算出部3は、入力される電圧信号v
ab,v
bc,v
caに基づいて、各線間電圧の実効値Vrmsab,Vrmsbc,Vrmscaを算出するものである。実効値算出部3は、算出した実効値Vrmsab,Vrmsbc,Vrmscaを、上流側断線判断部4に出力する。
【0091】
上流側断線判断部4は、計器用変流器CT1,CT2,CT3および計器用変圧器PT1,PT2,PT3が配置されている位置より上流側(電源側)の断線の発生を判断し、断線した配電線の特定を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。上流側断線判断部4は、実効値算出部3より入力される各線間電圧の実効値Vrmsab,Vrmsbc,Vrmscaに基づいて判断を行う。通常時は、実効値Vrmsab,Vrmsbc,Vrmscaは、ほぼ同様の値になる。しかし、上流側で断線が発生した場合、断線した配電線に係わる線間電圧が低下する。例えば、a相の配電線aにおいて断線が発生した場合、実効値VrmsabおよびVrmscaが低下する。上流側断線判断部4は、実効値Vrmsab,Vrmsbc,Vrmscaのいずれか2つの値が残りの1つの値より所定値以上低下した場合に、上流側で断線が発生したと判断する。また、上流側断線判断部4は、どの2つの値が低下したかにより、断線した配電線を判断する。上流側断線判断部4は、上流側で断線が発生したと判断した場合、上流側で断線が発生したこと、および、断線が発生した配電線の情報を、遮断指令部5および通信部6に出力する。
【0092】
遮断指令部5は、下流側断線判断部2または上流側断線判断部4より入力される情報に基づいて、遮断器CB1、CB2、CB3に遮断指令を出力するものである。遮断指令部5は、断線が発生したことを示す情報が入力された場合、遮断器CB1〜CB3に遮断指令を出力し、遮断器CB1〜CB3を開放させる。
【0093】
通信部6は、下流側断線判断部2または上流側断線判断部4より入力される情報を、図示しない管理装置に送信するものである。管理装置は、配電線の状態を管理するものであり、通信部6より、断線が発生したことを示す情報が入力された場合、断線が発生したことをブザーで警告し、モニタ画面に表示する。また、下流側断線判断部2から通信部6に入力される情報には、下流側で断線が発生したことを示す情報が含まれており、上流側断線判断部4から通信部6に入力される情報には、上流側で断線が発生したことを示す情報が含まれている。したがって、通信部6から管理装置に送信される情報には、断線が下流側か上流側かを示す情報が含まれている。したがって、管理装置は、どの断線検出装置Aからどのような情報を入力されたかにより、断線が発生したのがどの配電線のいずれの区間であるかを判断し、判断した内容を、モニタ画面に表示する。
【0094】
なお、断線検出装置Aの各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを断線検出装置Aとして機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0095】
本実施形態において、上流側断線検出部4は、配電線の上流側の断線を検出することができ、下流側断線検出部2は、配電線の下流側の断線を検出することができる。すなわち、断線検出装置Aは、配置場所の上流側の断線を検出することができ、配置場所の下流側の断線も検出することができる。したがって、上流側または下流側の断線のみを検出する断線検出装置より、配電線に配置する数を少なくすることができる。
【0096】
例えば、
図10に示すように、配電線を3つの区間に分けて、区間ごとに断線を検出できるようにする場合、配電線の第1区間での断線は断線検出装置A1で検出することができ、第2区間での断線は断線検出装置A1および断線検出装置A2で検出することができ、第3区間での断線は断線検出装置A2で検出することができる。したがって、2つの断線検出装置A1,A2を配置するだけでよいので、上流側の断線(または、下流側の断線)だけを検出する断線検出装置の場合(
図16参照)と比べて、配置する断線検出装置の数を削減することができる。
【0097】
また、配電線に同じ数だけ配置する場合、上流側または下流側の断線のみを検出する断線検出装置を用いるより、1つの区間を短くすることができる。すなわち、断線位置を、従来より狭い区間に特定することができる。
【0098】
例えば、
図11に示すように、配電線に3つの断線検出装置を配置する場合、断線検出装置A1が第1区間および第2区間での断線を検出することができ、断線検出装置A2が第2区間および第3区間での断線を検出することができ、断線検出装置A3が第3区間および第4区間での断線を検出することができるので、配電線を4つの区間に分けることができる。一方、上流側の断線だけを検出する断線検出装置A101〜A103の場合、断線検出装置A101が第1区間での断線を検出し、断線検出装置A102が第2区間での断線を検出し、断線検出装置A3が第3区間の断線を検出するので、配電線を3つの区間に分ける必要がある。したがって、断線検出装置Aは、断線位置を狭い区間に特定することができる。
【0099】
また、本実施形態において、下流側断線判断部2は、電流変化ベクトル生成部1より入力される各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcが上記条件(1)〜(3)を満たすか否かを判別し、すべての条件が満たされる場合に下流側で断線が発生したと判断する。負荷変動と下流側の断線とを線電流ベクトルに基づいて区別することは難しいが、各相電圧基準の電流変化ベクトルの違いで区別することができる。したがって、下流側の断線検出において、負荷変動による誤検出を抑制することができる。
【0100】
本実施形態では、計器用変圧器PT1、PT2,PT3がそれぞれ配電線間の線間電圧を検出する場合について説明したが、計器用変圧器PT1、PT2,PT3がそれぞれ配電線の相電圧を検出するようにしてもよい。
【0101】
本実施形態では、下流側の断線の発生を判断するために、各相電圧基準の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを用いたが、これに限られない。例えば、各線間電圧基準の電流変化ベクトルを用いるようにしてもよい。また、各相電圧に所定の位相を加算した電圧(例えば、各相電圧をそれぞれ10°ずつずらした電圧)を基準とした場合の電流変化ベクトルを用いてもよい。つまり、相毎の基準電圧を基準とした電流変化ベクトルを用いればよい。
【0102】
上記第1実施形態では、二相負荷変動が生じる場合を想定しない場合について説明した。以下では、二相負荷変動が生じる場合も想定した場合について、第2実施形態として説明する。
【0103】
まず、変圧器Bの結線がΔΔ結線である場合の二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0104】
図12(a)は、二相負荷変動を表すものであり、負荷Labおよび負荷Lcaが切り離された状態を示している。この場合、
図12(a)から明らかなように、
Ia=0
Ib=Ibc
Ic=−Ibc
となる。
【0105】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab−Ica)−(0)=Iab−Ica
ΔIb=(Ibc−Iab)−(Ibc)=−Iab
ΔIc=(Ica−Ibc)−(−Ibc)=Ica
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数24】
となる。
【0106】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルβVa,βVb,βVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数25】
となる。
図12(b)は、二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
図3(b)に示す断線時のベクトル図において、αが「0」の場合、
図12(b)と同じベクトル図になってしまう。
【0107】
次に、変圧器Bの結線がΔY結線である場合の二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0108】
負荷Labおよび負荷Lcaが切り離されて、Iab=Ica=0になると、
Ia=Ibc
Ib=Ibc
Ic=−2Ibc
となる。
【0109】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=(Iab+Ibc−2Ica)−(Ibc)=Iab−2Ica
ΔIb=(Ibc+Ica−2Iab)−(Ibc)=Ica−2Iab
ΔIc=(Ica+Iab−2Ibc)−(−2Ibc)=Ica+Iab
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数26】
となる。
【0110】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルγVa,γVb,γVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数27】
となる。
図13(a)は、二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
図13(a)に示すベクトルであっても、上記条件(1)〜(3)をすべて満たしてしまう場合がある。
【0111】
次に、変圧器Bの結線がYΔ結線である場合の二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcについて説明する。
【0112】
負荷Labおよび負荷Lcaが切り離されて、Iab=Ica=0になると、
Ia=−(1/3)Ibc
Ib=(2/3)Ibc
Ic=−(1/3)Ibc
となる。
【0113】
よって、負荷変動前後の電流変化ベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcは、
ΔIa=((2/3)Iab−(1/3)Ibc−(1/3)Ica)−(−(1/3)Ibc)
=(2/3)Iab−(1/3)Ica
ΔIb=((2/3)Ibc−(1/3)Ica−(1/3)Iab)−(2/3)Ibc
=−(1/3)Ica−(1/3)Iab
ΔIc=((2/3)Ica−(1/3)Iab−(1/3)Ibc)−(−(1/3)Ibc)
=(2/3)Ica−(1/3)Iab
となり、各相の相電圧ベクトルを基準にして表すと、
【数28】
となる。
【0114】
各相電圧を基準とした線電流ベクトルをIとし、ベクトルεVa,εVb,εVcをそれぞれベクトルIに置き換えると、
【数29】
となる。
図13(b)は、二相負荷変動時のベクトルΔIa,ΔIb,ΔIcを示したものである。
図13(b)に示すベクトルであっても、上記条件(1)〜(3)をすべて満たしてしまう場合がある。
【0115】
以上のように、上記条件(1)〜(3)で断線の発生を判断すると、二相負荷変動時に断線と誤判定してしまう。第2実施形態は、二相負荷変動の場合に誤判定しないようにしたものである。
【0116】
図14は、第2実施形態に係る断線検出装置A’を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る断線検出装置A(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0117】
図14に示す断線検出装置A’は、零相電圧センサ7からの入力も用いて、下流側断線判断部2’が下流側の断線発生の判断を行っている点で、第1実施形態に係る断線検出装置Aと異なる。
【0118】
零相電圧センサ7は、配電線a,b,cに配置されており、零相電圧を検出するものである。零相電圧センサ7は、検出した零相電圧を下流側断線判断部2’に出力する。
【0119】
下流側断線判断部2’は、零相電圧センサ7から入力される零相電圧も用いて、断線発生の判断を行う。具体的には、下流側断線判断部2’は、上記条件(1)〜(3)に加えて、以下の条件(4)を設定している。
(4)零相電圧が所定の閾値V
0以上である。
【0120】
零相電圧は、三相平衡状態であれば「0」であり、負荷変動によっては影響されない。しかし、断線が発生した場合、不平衡状態になって、零相電圧は「0」でなくなる。零相電圧が検出誤差を踏まえた所定の閾値V
0以上になった場合、断線が発生した可能性がある。本実施形態では、所定の閾値V
0として、例えば数ボルトの値が設定されている。なお、電力系統の変動によって不平衡になって、零相電圧が「0」でなくなる場合があるので、条件(4)だけで断線発生を判断せず、上記条件(1)〜(3)も併せて判断している。下流側断線判断部2’は、上記条件(1)〜(4)をすべて満たす場合に、配電線で断線が発生したと判断する。
【0121】
二相負荷変動時には、上記条件(1)〜(3)を満たす場合があるが、上記条件(4)を満たさない。したがって、第2実施形態においては、二相負荷変動時に断線発生と誤判定することを抑制することができる。
【0122】
上記第1および第2実施形態では、電流変化ベクトルに基づいて下流側の断線を検出する場合について説明したが、下流側の断線を検出する方法はこれに限られない。例えば、電流ベクトルに基づいて下流側の断線を検出するようにしてもよい。また、インピーダンスの変化に基づいて下流側の断線を検出するようにしてもよい。
【0123】
上記第1および第2実施形態では、線間電圧の実効値に基づいて上流側の断線を検出する場合について説明したが、上流側の断線を検出する方法はこれに限られない。例えば、線間電圧の瞬時値に基づいて上流側の断線を検出するようにしてもよい。また、線間電圧ではなく相電圧を用いるようにしてもよい。また、電圧の代わりに、電流や、電力、零相電圧などを用いて、上流側の断線を検出するようにしてもよい。
【0124】
次に、断線検出装置A(A’)を用いた断線区間特定システムについて説明する。
【0125】
図15は、断線区間特定システムについて説明するための図である。断線区間特定システムは、配電線に配置される断線検出装置A1,A2,A3,…、および、管理装置Cを備えている。
【0126】
管理装置Cは、配電線の状態を管理するものであり、各断線検出装置A1,A2,A3,…から送信される情報を受信する。各断線検出装置A1,A2,A3,…は、断線を検出した場合、断線が発生したこと、断線が上流側であるか下流側であるか、および、断線が発生した配電線の情報を管理装置Cに送信する。管理装置Cは、各断線検出装置A1,A2,A3,…より受信した断線についての情報に基づいて、断線が発生した区間を特定する。そして、断線が発生したことと断線が発生した区間とを、モニタ画面などに表示して知らせる。
【0127】
例えば、管理装置Cは、断線検出装置A1およびA2より、下流側で断線が発生したことを示す情報を受信し、断線検出装置A3より、上流側で断線が発生したことを示す情報を受信した場合、第3区間で断線が発生したと判断する。
【0128】
本発明に係る断線検出装置、断線検出方法および断線区間特定システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る断線検出装置、断線検出方法および断線区間特定システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。