特開2016-5381(P2016-5381A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-5381(P2016-5381A)
(43)【公開日】2016年1月12日
(54)【発明の名称】電車車体運搬車
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20151208BHJP
   B60P 3/06 20060101ALI20151208BHJP
   B62D 53/06 20060101ALI20151208BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20151208BHJP
   B62D 12/02 20060101ALI20151208BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   B60P3/06
   B62D53/06 Z
   B62D53/00 D
   B62D12/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-125079(P2014-125079)
(22)【出願日】2014年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】390010973
【氏名又は名称】日立交通テクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599166448
【氏名又は名称】株式会社ヤシマキザイ
(71)【出願人】
【識別番号】510195032
【氏名又は名称】新トモエ電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 猛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 保司
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA20
5H125BA06
5H125BA09
5H125CA13
5H125CD04
5H125EE41
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】車輪の駆動装置及び操舵装置を1系統にして旋回時のタイヤの横滑りを防止できる電車車体運搬車を提供する。
【解決手段】電車車体を支持するトレーラと、前記トレーラに旋回軸を介して回転自在に結合されたトラクタと、からなる電車車体運搬車であって、前記トラクタは、ハンドル及びアクセルペダルを有する運転席と、一対の車輪と、前記一対の車輪を回転させる一対の駆動モータ及び前記一対の駆動モータの回転力を前記一対の車輪に伝達する一対の伝達機構と、前記ハンドルの操舵角及び前記アクセルペダルの踏み角に応じて前記一対の駆動モータのそれぞれの指令値を演算する演算装置と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車車体を支持するトレーラと、前記トレーラに旋回軸を介して回転自在に結合されたトラクタと、からなる電車車体運搬車であって、
前記トラクタは、ハンドル及びアクセルペダルを有する運転席と、一対の車輪と、前記一対の車輪を回転させる一対の駆動モータ及び前記一対の駆動モータの回転力を前記一対の車輪に伝達する一対の伝達機構と、前記ハンドルの操舵角及び前記アクセルペダルの踏み角に応じて前記一対の駆動モータのそれぞれの指令値を演算する演算装置と、を備える
ことを特徴とする電車車体運搬車。
【請求項2】
前記トラクタは、前記トラクタ自身と前記旋回軸とを相対回転させる相対回転機構を備え、
前記演算装置は、前記ハンドルの操舵角に応じて前記相対回転機構の回転制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電車車体運搬車。
【請求項3】
前記一対の駆動モータは、回転力の出力軸への伝達をオンオフする機能を有し、
前記相対回転機構は、前記相対回転をオンオフする機能を有し、
前記トラクタは、前記一対の駆動モータのオンオフする機能と前記相対回転機構のオンオフする機能とをそれぞれ個別に切り替える切替スイッチを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の電車車体運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車車体を運搬する運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電車の台車と車体を分離して修繕等の作業を行う際に、分離場から修繕場の間で搬入や搬出等の運搬を行う場合に、電車車体運搬車を使用している(例えば、特許文献1〜3を参照)。
このような電車車体運搬車は、トラクタ1台とトレーラ1台とで構成されており、当該電車車体運搬車を2台用意し、トレーラの後端部を向かい合せて配置することにより、前後2台のトレーラに車体を跨って乗せて操舵して自走行している。
【0003】
このような電車車体運搬車において、運搬される車体の前後にトラクタが配置されるため、当該車体の運搬方向に応じて進行方向前側のトラクタの操舵手段のハンドル用いて運転される。
トラクタとトレーラは、自在に回転できる旋回軸で結合し、トラクタの足回りは旋回小回りのできる1軸配置とし、エンジンを駆動源としトルクコンバータ、減速機、ディファレンシャルギア、車輪等を備えた駆動装置を備えている。
また、トラクタは、例えば特許文献3に示すように、駆動源のエンジンで油圧ポンプを作動させ油圧をブースターに送り運転手のハンドル操作により制御弁を介してブースターピストンを出し入れして、ピストンに繋がる操舵用ラックによりトラクタとトレーラを結合する旋回軸を回転させて行う操舵装置を備えている。
【0004】
上記した従来の一対の電車車体運搬車によって車体の運搬走行を行う時には、進行方向前位側のトラクタは、エンジン駆動にて牽引するとともにハンドル操舵により自走行し、進行方向後位側のトラクタは、エンジンは駆動のままでトルクコンバータがクラッチを断としてエンジンの動力伝達を絶つように構成されている。
このとき、後位側のトラクタのエンジンは駆動しているので、油圧ポンプは作動しハンドル操舵ができるため、後位側のトラクタは、前位側のトラクタに牽引されながらハンドル操舵して追従走行する。
【0005】
このように、一対の電車車体運搬車を用いて運搬することにより、前後のトラクタに乗車する運転手間の相互の合図で、牽引側、非牽引側を変えることが可能で、自在に前進方向を選択して走行することができる。
【0006】
しかしながら、従来の電車車体運搬車は、エンジンを駆動源として車輪を回転させる駆動装置とハンドル操舵による旋回軸を回転させる操舵装置とが別系統に構成されているために、旋回時に、運転手が車輪の回転速さに合わせてハンドル操作して旋回軸を回してトラクタ、車輪の向きを変えている。
この際に車輪の回転速さとハンドル操舵による旋回軸の回転速さとが合わないことがあり、このため車輪が横滑りして、運搬路の壁面等の他の物体に電車車体が衝突することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭 44−7281号公報
【特許文献2】実公昭 39−4801号公報
【特許文献3】実公昭 41−11766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、車輪の駆動装置及び操舵装置を1系統にして旋回時のタイヤの横滑りを防止できる電車車体運搬車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電車車体運搬車は、電車車体を支持するトレーラと、前記トレーラに旋回軸を介して回転自在に結合されたトラクタと、からなり、前記トラクタは、ハンドル及びアクセルペダルを有する運転席と、一対の車輪と、前記一対の車輪を回転させる一対の駆動モータ及び前記一対の駆動モータの回転力を前記一対の車輪に伝達する一対の伝達機構と、前記ハンドルの操舵角及び前記アクセルペダルの踏み角に応じて前記一対の駆動モータのそれぞれの指令値を演算する演算装置と、を備える。
【0010】
また、前記トラクタは、前記トラクタ自身と前記旋回軸とを相対回転させる相対回転機構を備え、前記演算装置は、前記ハンドルの操舵角に応じて前記相対回転機構の回転制御を行うように構成してもよい。
さらに、前記一対の駆動モータは、回転力の出力軸への伝達をオンオフする機能を有し、前記相対回転機構は、前記相対回転をオンオフする機能を有し、前記トラクタは、前記一対の駆動モータのオンオフする機能と前記相対回転機構のオンオフする機能とをそれぞれ個別に切り替える切替スイッチを備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電車車体運搬車によれば、次の効果が得られる。
(1)ハンドルの操舵角とアクセルペダルの踏み角とに応じて最適な車輪の回転速度を左右で独立に制御することができることから、旋回時の車輪の横滑りが無くなり、電車車体が運搬路の壁面等の他の物体に衝突することなく走行できる。
(2)駆動源に一対の駆動モータを用いたため、車輪を回転させるための駆動装置から排気ガスを排出せず、作業者や運転者の健康を害するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の電車車体運搬車を用いて、実際に車体を載置及び運搬している様子を示す側面図である。
図2】本発明の電車車体運搬車におけるトラクタの駆動装置の詳細を示す平面図である。
図3図2の駆動装置において駆動回転軸の中心を通る水平面における断面図である。
図4】本発明の電車車体運搬車の操舵方式を示す図である。
図5】本発明の電車車体運搬車のトラクタとトレーラとの結合構造を説明する要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の電車車体運搬車を用いて、実際に車体を載置及び運搬している様子を示す側面図である。ここで、説明の都合上、図1において車体は紙面左方向に前進するものとする。
本発明の電車車体運搬車は、運搬される車体Wの前後に配置されるものであって、図1に示すように、車体の前側(前位側)に配置される電車車体運搬車は、前位側のトラクタ1aと前位側のトレーラ2aとを、トレーラ2aに固定された旋回軸3aで旋回自由に取付けることにより構成されている。
また、車体の後側にも後位側のトラクタ1bとトレーラ2bとをトレーラ2bに固定された旋回軸3bで旋回自由に取付けられた電車車体運搬車が配置される。
【0014】
図2は、本発明の電車車体運搬車におけるトラクタの駆動装置の詳細を示す平面図である。なお、前位側のトラクタ1aと後位側のトラクタ1bとは同一の構成を備えているため、ここでは前位側のトラクタ1aの構成を例示する。
前位側のトラクタ1aは、一対の車輪7aを左右に有しており、それぞれ駆動回転軸8a、アクスルチューブ9a、減速機10a、及び駆動モータ11a等を備えている。
図2に示すように、これらの構成はそれぞれ左右で独立しており、その結果、一対の車輪7aはそれぞれ独立して回転制御することができる。
【0015】
図3は、図2において7a〜11aの符号で示される駆動装置の駆動回転軸8aの中心を通る水平面における断面図である。
図3に示すように、車輪7aはリム12a及びホイールハブ13aを備え、駆動回転軸8aの一端に締結ボルト等で固着されている。またホイールハブ13aは、軸受20aを介してアクスルチューブ9aにより支持されている。
駆動回転軸8aは、アクスルチューブ9aの内部を貫通するように配置され、その他端がスプライン等で減速機10a内の歯車軸14aに接続されている。
減速機10aは、内部に歯車14a〜17aを備えており、上述のとおり歯車14aは駆動回転軸8aと接続されており、歯車17aはフランジ等を介して駆動モータ11aの回転軸と取付けられている。
また、アクスルチューブ9aは、支持脚19aでトラクタ1aの下部にボルト等で結合固着されている。
さらに、一対の駆動モータ11aは、運転者が切替スイッチ(図示せず)を操作することにより、駆動モータ11aの回転力を駆動回転軸8aに伝達するモード(オンモード)と伝達しないモード(オフモード)とを切り替えることができるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、駆動モータ11a回転は減速機10aを介して駆動回転軸8aに伝わり、当該駆動回転軸8aに固着されているホイールハブ13aを介してリム12aにその回転が伝ることによって車輪7aを回転させる。
また、図1図3に示す一対の車輪7aは、トラクタ1aにその回転軸が同一軸心となるように固定されており、当該一対の車輪7aにそれぞれ接続されている駆動モータ11aの回転数が同一の場合には直進動作を行う。
一方、一対の駆動モータ11aの回転数に差異を設ければ、上記一対の車輪7aの回転速度が異なるため、トラクタ1aはトレーラ2aと結合するための旋回軸3aを中心に旋回することになる。
本発明の電車車体運搬車は、車輪7aを回転させる駆動装置の駆動源に駆動モータ11aを用いているため、従来のエンジン駆動の駆動装置と異なり、排気ガスを噴出することなく、運転者の健康を害するおそれがない。
【0017】
図4は、本発明の電車車体運搬車の操舵方式を示す図である。なお、前位側のトラクタ1aと後位側のトラクタ1bとは同一の構成を備えているため、ここでは前位側のトラクタ1aの構成を例示する。
図4に示すとおり、前位側のトラクタ1aの運転席には、操舵用のハンドル21a、操舵角検出装置22a、及びアクセルペダル23aが取付けてある。
操舵角検出装置22aは、ハンドル21aの操舵角を電気的に検出可能な機構を備えた装置であり、例えばパルスカウンタの変化又は抵抗値の変化又は電圧の変化等を電気的に検出して、ハンドルの回転角(操舵角)を電気信号化するものである。
アクセルペダル23aは、その踏み角(アクセル開度)を電気信号として出力できる機能を有しており、上記操舵角検出装置22a及びアクセルペダル23aは、それぞれ演算装置24aに接続されている。
また、一対の駆動モータ11aには、それぞれ駆動モータ制御装置25aが接続されており、当該駆動モータ制御装置25aは、演算装置24からの指令信号を受信して一対の駆動モータ11aがそれぞれどのような回転速度(回転数)で回転するかを対応する駆動モータ11aに指令する。
【0018】
演算装置24aは、操舵角検出装置22a及びアクセルペダル23aからの出力信号をそれぞれ受けるとともに、これらの信号に基づいて一対の車輪7aがそれぞれどのような回転速度(回転数)で回転すれば良いかを演算して、その結果を指令信号として一対の駆動モータ制御装置25aのそれぞれに出力する。
このような構成を用いることにより、ハンドル21aの操舵角とアクセルペダル23aの踏み角とに応じて最適な車輪7aの回転速度を左右で独立に制御することができ、結果として、旋回時の車輪の横滑りを防止できる。
【0019】
図5は、本発明の電車車体運搬車のトラクタ1aとトレーラ2aとの結合構造を説明する要部の側面図である。
図5に示すように、トラクタ1aは旋回軸3aを介してトラクタ2aと結合されている。
トラクタ1aには、ステアリングモータ31aが設けられており、当該ステアリングモータ31aの出力軸にはスプロケット32aが取り付けられている。
また、ステアリングモータ31aは、図4に示す演算装置24aと電気的に接続されており、演算装置24aは、ハンドル21aの操舵角に応じてステアリングモータ31aの駆動を指令する信号を出力する。
【0020】
一方、トレーラ2aに固定されている駆動軸3aには、スプロケット33aが取り付けられており、上記スプロケット32a及び33aをチェーンやベルト等の回転伝達手段34aで結合する。
演算装置24aの指令信号に基づいてステアリングモータ31aが回転駆動すると、スプロケット32a及び33aと回転伝達手段34aとを介して回転力が旋回軸3aを回転させるため、トラクタ1aはトレーラ2aに対して旋回軸3aを中心に相対回転することができる。
【0021】
ステアリングモータ31aには、運転者が切替スイッチ(図示せず)を操作することにより、ステアリングモータ31aの回転力をスプロケット32aに伝達するモード(オンモード)と伝達しないモード(オフモード)とを切り替えることができるように構成されている。
【実施例】
【0022】
上述した本発明の電車車体運搬車を用いて実際に車体Wを運搬する際の動作を、図1図5等を参照して説明する。
図1に示すように、2台の電車車体運搬車が車体Wの前後に配置され、それぞれのトレーラ2a及び2bが車体Wの床面を支持するように固定保持する。
【0023】
次に、図1の紙面左方向に前進する場合、前位側のトラクタ1aに乗車する運転者は、上述の切替スイッチ(図示せず)を操作して、駆動モータ11aを「オンモード」、ステアリングモータ31aを「オフモード」に選択する。
これらのモードを選択することにより、トラクタ1aの運転者は、ハンドル21a及びアクセルペダル23aを操作してトラクタ1aを自走走行させる。
一方、後位側のトラクタ1bに乗車する運転者は、同様に切替スイッチを操作して、駆動モータ11bを「オフモード」、ステアリングモータ31aを「オンモード」に選択する。
これらのモードを選択することにより、後位側の電車車両運搬車は前位側の電車車両運搬車に牽引されることとなり、トラクタ1bの運転者は、トラクタ1aの動きに合わせてハンドル21bを操作して追従走行を行う。
【0024】
本発明の電車車体運搬車によれば、トラクタのハンドル操作と車輪の回転とのバランスを取りつつ旋回走行することが可能となるため、車輪が横滑りして車体が走行路の壁面等の他の物体に衝突するような事故を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、2方式の操舵装置を有する電車車体運搬車として、電車車体修理場等において車体を運搬する際に利用される。
【符号の説明】
【0026】
1a トラクタ
2a トレーラ
3a 旋回軸
7a 車輪
10a 減速機
11a 駆動モータ
21a ハンドル
22a 操舵角検出装置
23a アクセルペダル
24a 演算装置
25a 駆動モータ制御装置
31a ステアリングモータ
図1
図2
図3
図4
図5