特開2016-54800(P2016-54800A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016054800-骨壺およびその製作方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-54800(P2016-54800A)
(43)【公開日】2016年4月21日
(54)【発明の名称】骨壺およびその製作方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 17/08 20060101AFI20160328BHJP
【FI】
   A61G17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-181573(P2014-181573)
(22)【出願日】2014年9月5日
(71)【出願人】
【識別番号】514226291
【氏名又は名称】西村 四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】西村 四郎
(57)【要約】
【課題】生分解性の素材を用いずに簡単かつ廉価に製作できる骨壺を提供すること。
【解決手段】吸湿作用により自然崩壊して土に戻る骨壺1は、壺本体4と、この壺本体の上端開口部3に被せる蓋5とを備えている。壺本体4および蓋5のそれぞれは、陶土を成形して乾燥させたままの未焼成状態の部材である。陶土は、一般住宅の室内では自己保形性を保ち、土中に埋めておくと、土中の湿気を吸収して自己保形性を失う吸湿性を備えている。蓋5は、吸湿によって自己保形性の低下した壺本体4を押し潰すための錘として機能する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿作用により自然崩壊して土に戻る骨壺であって、
壺本体と、この壺本体の上端開口部に被せる蓋とを備え、
前記壺本体および前記蓋のそれぞれは、陶土を成形して乾燥させた未焼成状態の部材であり、
前記陶土は、一般住宅の室内などにおける第1の湿度よりも低い湿度状態では自己保形性を保ち、土中などの第1の湿度よりも高い湿度状態に所定期間以上に亘って置いておくと、湿気を吸って自己保形性を失う吸湿性を備え、
前記蓋は、吸湿によって自己保形性の低下した前記壺本体を押し潰すための錘であることを特徴とする骨壺。
【請求項2】
前記陶土は、信楽白土、または、当該信楽白土と同等以上の吸湿性を備えた陶土である請求項1に記載の骨壺。
【請求項3】
前記陶土には、当該陶土の空隙率を調整して吸湿性を増減させるための粒状物が混合されている請求項1または2に記載の骨壺。
【請求項4】
前記壺本体は第1の陶土から製作され、前記蓋は第2の陶土から製作されており、
前記第1の陶土の単位体積重量に比べて、前記第2の陶土の単位体積重量が大きい請求項1、2または3に記載の骨壺。
【請求項5】
前記壺本体は第1の陶土から製作され、前記蓋は第2の陶土から製作されており、
前記第1の陶土および前記第2の陶土は、相互に吸湿率が異なる請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項に記載の骨壺。
【請求項6】
前記蓋には、錘部材が混合され、あるいは、錘部材が取り付けられている請求項1ないし5のうちのいずれか一つの項に記載の骨壺。
【請求項7】
納骨堂に納めた骨壺を、当該骨壺の吸湿作用によって自然崩壊させて土に戻すようにした骨壺の製作方法であって、
前記骨壺は請求項1ないし6のうちのいずれか一つの項に記載の骨壺であり、
前記骨壺を納める前記納骨堂内の湿度に基づき、前記壺本体の吸湿性および前記蓋の重量のうちの少なくとも一方を調整し、
前記納骨堂に納めた前記骨壺の前記壺本体が前記蓋の重量によって押し潰され始める時期を調整することを特徴とする骨壺の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨壺に関し、特に、墓の納骨堂に入れると湿気により自然に崩れて土に戻る骨壺およびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨壺は一般的に陶器製のものが用いられている。陶器製の骨壺は墓の納骨堂(土中)に納められた後は半永久的に残る。納骨場所が手狭になった場合等においては骨壺を砕く等して処分する必要がある。
【0003】
このような不便さを解消するために、特許文献1においては、生分解性プラスチックを原料として製作した骨壺が提案されている。また、特許文献2においては、生分解性を有する原料から製作した骨壺の底面以外の外周部分を和紙で被覆することが提案されている。これらの骨壺は、墓に納めた後は、土中の微生物等によって分解されるので、骨壺の配置場所に困る等の不便さを解消することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−165463号公報
【特許文献2】特許第5404868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生分解性を備えた骨壺は、生分解性の素材を用いて製作する必要があり、一般的な陶器製の骨壺に比べて簡単に製作できず、製作コストも高いという課題がある。特に、特許文献2に記載されているように、生分解性の原料から製作した骨壺の外周部分に和紙を被覆して製作する場合には、製作に手間が掛かり、製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、遺族によっては、納骨後の所定の期間の間は骨壺が分解されずに原型のままの状態が維持されることを希望する場合がある。生分解性の素材からなる骨壺では、土中の微生物によって分解が進行するので、分解されて土に戻るまでの期間は不定である。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、生分解性の素材を用いずに簡単かつ廉価に製作できる骨壺およびその製作方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、吸湿作用により自然崩壊して土に戻る骨壺であって、
壺本体と、この壺本体の上端開口部に被せる蓋とを備え、
前記壺本体および前記蓋のそれぞれは、陶土を成形して乾燥させたままの未焼成状態の部材であり、
前記陶土は、一般住宅の室内などにおける第1の湿度よりも低い湿度状態では自己保形性を保ち、土中などの第1の湿度よりも高い湿度状態に所定期間以上に亘って置いておくと、湿気を吸って自己保形性を失う吸湿性を備え、
前記蓋は、吸湿によって自己保形性の低下した前記壺本体を押し潰すための錘であることを特徴としている。
【0009】
本発明では、骨壺を製作するための素材として従来と同様に陶土を用いているが、成形
後に乾燥させた後の未焼成状態のままで用いる。所定の吸湿性を備えた未焼成状態の陶土製の骨壺は、土中に埋めておくと湿気を吸収して脆くなり、徐々に自己保形性が失われて崩れていく。一般に、墓の納骨堂などの中の湿度は一般住宅の室内の湿度に比べて高く、その変動も少ない。したがって、未焼成状態の陶土製の骨壺の吸湿性を適切に設定しておけば、所定期間を経過するまで自己保形性が維持され(崩れることなく原型を維持し)、その期間を経過した後には徐々に崩れて土に戻る。
【0010】
また、本発明では、壺本体の上端に載せる蓋を所定の重量を備えた錘として機能させるようにしている。すなわち、同一形状・寸法の一般的な陶器製の骨壺の場合の蓋に比べて、例えば2倍以上の重量を備えた蓋を用いる。これにより、壺本体が吸湿によって自己保形性がある程度低下すると、蓋の重みにより、蓋よりも先に壺本体が崩れ始める。具体的には、壺本体における土に面している下側の部分が他の部分よりも早く湿気を吸収して、底側から崩れ始める。このように下側の部分から徐々に崩れる壺本体およびその中の遺骨の上に、蓋が覆いかぶさった状態になる。この状態で、壺本体および蓋の吸湿および自然崩壊が進み、蓋によって覆われた状態で、遺骨の分解が進む。よって、納骨堂内で崩れた状態の骨壺から遺骨が露出した状態になることが回避される。
【0011】
さらに、壺の吸湿性と蓋の重量とを適切に設定しておくことにより、骨壺が崩れる時期をある程度調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した骨壺の一例を示す斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した骨壺およびその製作方法の実施の形態を説明する。
【0014】
図1(a)は実施の形態に係る骨壺を示す斜視図であり、図1(b)はその縦断面図である。骨壺1は一般的な骨壺と同様な形状であり、底2aの付いた円筒状の胴部2の上端が円形の上端開口部3となっている壺本体4と、この壺本体4の上端開口部3に被せて当該上端開口部3を封鎖する円形の浅い皿形状の蓋5とを有している。
【0015】
壺本体4および蓋5は、陶土を成形して乾燥させた未焼成状態の部材である。陶土として、土中に所定期間を超える期間に亘って埋めておくと、土中の湿気を吸収して自己保形性を失う吸湿性を備えた陶土を使用している。また、蓋5として、吸湿によって自己保形性の低下した壺本体4を押し潰すことの可能な錘として機能する重量のある肉厚のものを用いている。
【0016】
陶土としては、例えば、信楽白土を用いることができる。信楽白土以外の陶土を用いてもよい。例えば、信楽白土と同等以上の吸湿性を備えた陶土を用いる。あるいは、壺本体4の吸湿状態が進み、自己保形性が失われて崩れ始めるまでの所要期間を調整するために、陶土の空隙率を調整して吸湿性を増減させるようにしてもよい。例えば、相対的に目の細かな陶土を用いることにより吸湿性を下げることができ、相対的に目の粗い陶土を用いることにより吸湿性を高めることができる。または、粒状物を陶土に混合して、陶土の空隙率を調整することによって、吸湿性を変えることもできる。一方、陶土として、例えば、鉄分を多く含む赤土を用いることができる。鉄分を多く含む陶土を用いると、骨が陶土に含まれる鉄分と反応するので、鉄分の少ない陶土を用いる場合に比べて、骨をより早く分解して土に戻すことができる。
【0017】
蓋5の重量を大きくするためには、蓋5の肉厚を厚くしておけばよい。陶土として、壺
本体4の製作に用いる壺本体用陶土(第1の陶土)と、蓋5の製作に用いる蓋用陶土(第2の陶土)とを異なる種類の陶土としてもよい。この場合には、壺本体用陶土の単位体積重量に比べて、蓋用陶土の単位体積重量が大きくなるようにする。これにより重量のある蓋5を製作できるので、蓋5を錘として効果的に機能させることができる。また、蓋5に重量のある錘部分を一体に形成し、または、蓋5に錘として機能する石などの錘部材を混合し、あるいは、石等の錘部材を蓋5の上に載せておくようにしてもよい。
【0018】
また、壺本体4の製作に用いる壺本体用陶土と、蓋5の製作に用いる蓋用陶土として異なる陶土を用いる場合には、壺本体用陶土の吸湿率を、蓋用陶土の吸湿率に比べて大きくなるようにしておくことができる。逆に、壺本体用陶土の吸湿率を、蓋用陶土の吸湿率に比べて小さくなるようにしておくこともできる。
【0019】
さらに、蓋5を、壺本体4よりも大きな外径寸法の蓋としておけば、最初に崩れ始める壺本体4およびその中の遺骨を、蓋5によって確実に覆い隠した状態を形成できる。
【0020】
なお、上記の例は、骨壺1の形状は一般的に使用されている円筒状のものであるが、骨壺の形状は多角形状など、各種の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 骨壺
2 胴部
2a 底
3 上端開口部
4 壺本体
5 蓋
図1