【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
電磁波放射染糸1は、本実施形態では、
図1に示すように、繊維21aからなる糸21を染液で染めたものである。繊維21aには、天然繊維と化学繊維といった種類がある。
【0016】
天然繊維は、木綿や麻やリンネルといった食物繊維、ウールや絹やカシミヤといった動物繊維、石綿といった鉱物繊維、という化学的な加工を加えていない繊維21aである。なお、天然繊維は上記したものに限定されない。
【0017】
化学繊維は、ポリエステルやナイロンといった合成繊維、アセテートやプロミックスといった半合成繊維、レーヨンやキュプラといった再生繊維、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、という化学的プロセスにより製造される繊維21aである。なお、化学繊維は上記したものに限定されない。
【0018】
天然繊維や化学繊維からなる繊維21aは、紡績、製糸又は紡糸を経て糸21として製造される。糸21には、本実施形態では、ポリエステルであるテトロン(登録商標)が好適に用いられるが、絹糸、綿糸、毛糸等や、二種類以上の繊維21aを混ぜ合わせた混紡糸、混撚糸といったものでもよく、特に限定されない。このような糸21を束ねたものを、本実施形態では染糸本体2とする。
【0019】
電磁波放射染糸1では、糸21を構成する繊維21aに色素3を付着させることにより、糸21に色を付ける。色素3には、水や油に溶ける粉末である染料31と、水や油に溶けない粉末である顔料32とがある。これらの染料31や顔料32を溶媒(本実施形態では水)に入れたものが染液となる。染液において、染料31を溶媒に溶かしたものが染色液51であり、顔料32を溶媒に混合したものが顔料液52である。
【0020】
染料31は、繊維21aに対して吸着するという染着力をもつ物質である。染料31には、直接染料、酸性染料、分散染料、カチオン染料、建染染料、硫化染料、反応染料、ナフトール染料等といった種類がある。本実施形態で用いられる染料31は上記した染料31に限定されず、繊維21aの種類に応じた最適なものが用いられる。なお、染料31は、本実施形態では、アゾ系分散染料が好適に用いられる。
【0021】
繊維21aを染料31で染め着ける染色では、染料31の分子と繊維21aの分子とが持つ分子同士の引力や電気的な吸引力といった親和性に基づいて吸着する。ここで、染料31の分子と繊維21aの分子同士の親和性が弱い場合、酢酸アルミニウム・酢酸クロム・酢酸銅等といった媒染剤を用いて染色を行う。
【0022】
染色の技法には、染色液51に染糸本体2を浸漬して染める浸し染め、植物を煮出した液に染糸本体2を浸漬して染める草木染め等といったものがある。染色は、本実施形態では、浸し染めが好適に用いられるが、とくに限定されものではない。
【0023】
ここで、染料31が繊維21aへ吸着する原理は、糸21の種類により異なる。以下に、糸21としてポリエステル、ウール、綿を例に挙げて、染料31が繊維21aへ吸着の原理を示す。
【0024】
本実施形態で好適に用いられる糸21であるポリエステルを染色する場合、染料31は、
図2Aに示すように、繊維21aに形成された亀裂21bに挟まれ、その亀裂21b内で繊維21aに対して水素結合で吸着する。ポリエステルは、親和性が弱い疎水性の繊維21aであるため、亀裂21bで挟むことにより、染料31が取れ難くしている。このように、染料31を繊維21aに吸着させるには、例えば以下に記載する方法が用いられる。
【0025】
ポリエステルを240℃の高温で加熱すると、繊維21aが膨張し、ポリエステルの繊維21aに亀裂21bが生じる。そして、亀裂21bが生じた高温のポリエステルを染色液51に浸漬させることにより、染料31を亀裂21bに入り込ませる。そして、高温のポリエステルを自然放熱させると、亀裂21bが閉じていくので、亀裂21bに入り込んだ染料31が挟まれる。そして、その亀裂21b内で染料31は繊維21aに吸着する。
【0026】
また、ウールを染色する場合、染料31は、
図2Bに示すように、染料31の陰イオンと繊維21aの陽イオンとがイオン結合をすることにより、繊維21aの表面に吸着する。ウールの場合、イオン結合で強力に繊維21aに吸着するので、亀裂21bを繊維21aに形成する必要がない。
【0027】
また、綿を染色する場合、染料31は、
図2Cに示すように、染料31が繊維21aに吸収され易いため、繊維21aの内部で分子間力や水素結合で吸着する。面の場合、分子間力や水素結合で強力に繊維21aに吸着するので、亀裂21bを繊維21aに形成する必要がない。
【0028】
顔料32は、光から特定の波長の光を選択的に吸収し、他の波長の光を反射する物質である。そして、この反射された光が目に入り色として認識される。顔料32には、無機顔料、有機顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等といった種類がある。本実施形態で用いられる顔料32は上記した顔料32に限定されず、繊維21aに応じた最適なものが用いられる。
【0029】
繊維21aを顔料32で着色する顔料染めでは、繊維21aと吸着する性質が無い顔料32を、
図2Dに示すように、バインダー33により繊維21aに固着させる。バインダー33は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂といった合成樹脂が好適に用いられるが、用いられる材質は特に限定されない。
【0030】
顔料染めの技法には、顔料液52に染糸本体2を浸漬した後にバインダー33で顔料32を固着させる顔料吸尽染色といったものがある。顔料染めは、本実施形態では、顔料吸尽染色が好適に用いられるが、特に限定されるものではない。
【0031】
このような染料31や顔料32といった色素3が、本実施形態では、テラヘルツ波4を放射し、この色素3を溶媒に入れることにより、テラヘルツ波4を放射する染液が調製される。
【0032】
テラヘルツ波4は、0.1〜100THzの周波数を有する。テラヘルツ波4は、電波と光の中間領域の波長をもつ電磁波である。そのため、電波が持つ性質である物質透過性を有し、さらに光が持つ性質である直進性を有する。テラヘルツ波4の周波数は、多くの原子や分子の固有振動数とほぼ等しい。また、テラヘルツ波4は、布、紙、木、プラスチック、陶磁器を透過するが、金属や水は透過しない、という特性がある。また、テラヘルツ波4は指紋スペクトルという特性を有する。この指紋スペクトルとは、特定の物質が特定の周波数のテラヘルツ波4を吸収するという特性のことを示す。
【0033】
テラヘルツ波4を放射する色素3の生成方法として、例えば、後述する方法で発生させたテラヘルツ波4が色素3に所定時間照射されることで、テラヘルツ波4を放射する色素3が生成される方法が考えられる。テラヘルツ波4を照射する所定時間は、2〜12時間である。テラヘルツ波4は、液体や液状の金属には吸収され易く、固形状の物質には吸収され難い性質を有しており、その物質に合わせて所定時間が決定される。なお、色素3にテラヘルツ波4を照射する際、周囲の温度は20〜100℃であることが好ましい。
【0034】
ここで、テラヘルツ波4を発生させる方法の例を以下に記載する。テラヘルツ波4は、例えば、電気回路を用いて発生させる方法では、フェムト秒レーザー光を光伝導素子や光整流素子に照射して発生させることができる。また、テラヘルツ波4は、例えば、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、セラミクス等に低周波電力を加えることにより発生させることができる。なお、テラヘルツ波4を発生させる方法は上記したものに限定されない。このような方法で発生させたテラヘルツ波4を所定時間色素3に照射することで、色素3はテラヘルツ波4を放射するようになる。
【0035】
また、テラヘルツ波4を所定時間照射する方法で生成されたテラヘルツ波4を放射する染料31を用いた、電磁波放射染糸1の製造方法を以下に例示する。
【0036】
作業者は、
図3Aに示すように、複数の繊維21aを撚り合わせることで糸21を作成する。作業者は、複数の糸21を束ねた染糸本体2を精錬することにより、余分な油脂分や汚れを落とす。作業者は、染料31の染まり具合を良くするために、染糸本体2を湯又は水に所定時間浸漬させる。作業者は、
図3Bに示すように、テラヘルツ波4を放射する染料31を水に溶かすことにより染色液51を調製する。作業者は、染糸本体2を脱水し、湿った状態のまま、
図3Cに示すように染色液51に浸漬させることにより、染糸本体2を染色する。以上のような製造方法で、
図3Dに示すような電磁波放射染糸1が製造される。
【0037】
また、テラヘルツ波4を所定時間照射する方法で生成されたテラヘルツ波4を放射する顔料32を用いた、電磁波放射染糸1の製造方法を以下に例示する。
【0038】
作業者は、
図4Aに示すように、複数の繊維21aを撚り合わせることで糸21を作成する。作業者は、複数の糸21を束ねた染糸本体2を精錬することにより、余分な油脂分や汚れを落とす。作業者は、顔料32の繊維21aへの着色を良くするために、染糸本体2をカオチン化溶液に所定時間浸漬させる。作業者は、
図4Bに示すように、顔料32を水に混合し顔料液52を調製する。作業者は、
図4Cに示すように、カオチン化した染糸本体2を顔料液52に浸漬させ、染糸本体2を着色する。作業者は、
図4Dに示すように、着色した染糸本体2をバインダー液53に浸漬させ、その後脱水する。作業者は、
図4Eに示すように、染糸本体2に熱風54や熱線55等を当て、バインダー33を硬化させることにより、顔料32を繊維21aに固着させ、染糸本体2を着色する。以上のような製造方法で、
図4Fに示すような電磁波放射染糸1が製造される。
【0039】
テラヘルツ波4を放射する染液の他の製造方法として、例えば、テラヘルツ波4を発生する鉱石の粉粒体と色素3を混合して、染液が調製されることが考えられる。その鉱石の粉粒体の製造方法の例を以下に記載する。
【0040】
作業者は、深成岩であるケイ酸塩鉱物(玄武岩、安山岩、等)をパウダー状にし、そのパウダーに活性炭を加える。作業者は、無酸素状態の空間で、そのパウダーを1200℃以上の温度で約十時間加熱し焼結させる。作業者は、この焼結させた物質を顔料32と同程度の大きさに砕いて粉粒体にする。この粉粒体と色素3を混合することで、テラヘルツ波4を放射する色素3が形成される。
【0041】
テラヘルツ波4を放射する鉱石と染料31を混合する方法で調製されたテラヘルツ波4を放射する染色液51を用いた、電磁波放射染糸1の製造方法を以下に例示する。この電磁波放射染糸1の製造方法は、
図3A〜
図3Dを用いて説明した、染料31を用いた電磁波放射染糸1の製造方法と似ているため、図示はしない。
【0042】
作業者は、複数の繊維21aを撚り合わせることで糸21を作成する。作業者は、複数の糸21を束ねた染糸本体2を精錬することにより、余分な油脂分や汚れを落とす。作業者は、染料31の染まり具合を良くするために、染糸本体2を湯又は水に所定時間浸漬させる。作業者は、染料31を水に溶かし調製した染色液51にテラヘルツ波4を放射する鉱石の粉粒体を混合する。作業者は、染糸本体2を脱水し、湿った状態のまま染色液51に浸漬させることにより、染糸本体2を染色し、粉粒体を染糸本体2に付着させる。作業者は、染色した染糸本体2をバインダー液53に浸漬させ、その後脱水する。作業者は、染糸本体2に熱風54や熱線55等を当て、バインダー33を硬化させ、粉粒体を繊維21aに固着させる。以上のような製造方法で、電磁波放射染糸1が製造される。
【0043】
また、テラヘルツ波4を放射する鉱石と顔料32を混合する方法で生成されたテラヘルツ波4を放射する顔料液52を用いた、電磁波放射染糸1の製造方法を以下に例示する。この電磁波放射染糸1の製造方法は、
図4A〜
図4Fを用いて説明した、顔料32を用いた電磁波放射染糸1の製造方法と似ているため、図示はしない。
【0044】
作業者は、複数の繊維21aを撚り合わせることで糸21を作成する。作業者は、複数の糸21を束ねた染糸本体2を精錬することにより、余分な油脂分や汚れを落とす。作業者は、顔料32の繊維21aへの着色を良くするために、染糸本体2をカオチン化溶液に所定時間浸漬させる。作業者は、顔料32と粉粒体を水に混合し顔料液52を調製する。作業者は、カオチン化した染糸本体2を顔料液52に浸漬させ、染糸本体2を着色し、粉粒体を染糸本体2に付着させる。作業者は、着色した染糸本体2をバインダー液53に浸漬させ、その後脱水する。作業者は、染糸本体2を熱風54や熱線55等を当て、バインダー33を硬化させることにより、顔料32と粉粒体を繊維21aに固着させる。以上のような製造方法で、電磁波放射染糸1が製造される。
【0045】
色素3が放射するテラヘルツ波4の所定の周波数は、32〜38THzであることが好ましい。これは、人体の固有振動数が約32〜38THzに近いため、この固有振動数に合わせたテラヘルツ波4を照射することにより、人体を構成する細胞を活性化し易いためである。
【0046】
なお、テラヘルツ波4を放射する色素3の製造方法及び電磁波放射染糸1の製造方法は上記したものに限定されない。
【0047】
上記した構成を用いる電磁波放射染糸1の製造方法では、テラヘルツ波4を放射する色素3を溶媒に溶かした染液で糸21を染めるので、テラヘルツ波4を放射する染糸を製造することができる。また、テラヘルツ波4を放射する色素3により糸21に色を付けるので、一般に流通している糸21を用いることができる。さらに、電磁波放射染糸1では、糸21にテラヘルツ波4を放射する物質を混合しないので、その物質による色素3の染糸本体2の色付けの阻害が抑制され、色斑が生じ難くなる。
【0048】
上記した構成を備える電磁波放射染糸1では、テラヘルツ波4が放射されるので、衣類やサポーターを電磁波放射染糸4で作ることにより、人体の酸化体の作用を抑制することができる。
【0049】
本実施形態の電磁波放射染糸1の製造方法では、以下に示すような方法で電磁波放射染糸1を製造する。
【0050】
電磁波放射染糸1の製造方法では、テラヘルツ波4を放射する染液を調製し、染液に糸21を浸漬し、糸21に色素3を付着させることを特徴とする。
【0051】
このような電磁波放射染糸1の製造方法では、テラヘルツ波4を放射する染液で糸21を染めるので、テラヘルツ波4を放射する染糸を製造することができる。
【0052】
また、色素3が、染料31であることが好ましい。
【0053】
染料31は染糸本体2の奥にまで浸透し染糸本体2を均一に染色するので、電磁波放射染糸1から均一にテラヘルツ波4が放射され易い。
【0054】
また、色素3が、顔料32であることが好ましい。
【0055】
顔料32は水に溶けないので、電磁波放射染糸1を洗ってもテラヘルツ波4の放射量が減少し難い。
【0056】
本実施形態の電磁波放射染糸1では、以下に示すような構成を備える。
【0057】
上記した電磁波放射染糸1の製造方法で製造された電磁放射染糸1であって、電磁波放射染糸1はテラヘルツ波4を放射することを特徴とする。
【0058】
電磁波放射染糸1では、テラヘルツ波4が放射されるので、衣類やサポーターを電磁波放射染糸4で作ることにより、人体の酸化体の作用を抑制することができる。
[実験例]
上記した方法で製造した電磁波放射糸の効果を検証するため、以下に示すような実験を行った。
【0059】
糸(フクイボウ株式会社製:ポリエステル)と紺色の染料(日本化薬株式会社製:アゾ系分散染料)から、糸を染料で染めた電磁波放射染糸を作成した。そして、糸のみで編んだニットと、電磁波放射染糸と糸を配合したニットと、電磁波放射染糸のみで編んだニットと、を用意した。糸のみで編んだニットと電磁波放射染糸と糸を配合したニットと電磁波放射染糸のみで編んだニット、の夫々を150mlの水道水を入れたビーカーに巻きつけた。そして、夫々のニットを巻きつけたビーカーを12時間放置したときの水道水の酸化還元電位を、酸化還元電位計(佐藤商事社製:ORP−203)を用いて測定した。
【0060】
糸のみで編んだニットを用いた実験を比較例、電磁波放射染糸を25%配合したニットを用いた実験を実施例1、電磁波放射染糸を50%配合したニットを用いた実験を実施例2とする。さらに、電磁波放射染糸を75%配合したニットを用いた実験を実施例3、電磁波放射染糸のみで編んだニットを用いた実験を実施例4とする。
【0063】
表1によれば、ニットにおける電磁波放射染糸の配合率を上げると、水道水の酸化還元電位が下がることがわかった。酸化還元電位が下がるということは、水道水に含まれる酸化体の作用が抑制されていることになる。これにより、電磁波放射染糸から放射されるテラヘルツ波が照射された水道水は、水道水に入れられた物質を酸化させ難くなっていることがわかる。従って、本実施形態の電磁波放射染糸1で衣類やサポーターを製造し、それを着用すると、体内の酸化体の作用を抑制することができる。