【解決手段】抗菌性粒子が不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持された抗菌性シート、および、抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持された抗菌性シート、および、抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸して、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持させる工程を有する抗菌性シートの製造方法。
抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸して、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持させる工程を有する抗菌性シートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、抗菌性シートは多様化するニーズに応じることが増々求められており、多様化するニーズに最適化した製品の開発を行うことが要求されている。そのため、様々な抗菌剤を繊維シート等に適用して幅広い用途に対応できる抗菌性シートを作製することができれば望ましい。
【0008】
従って、本発明の目的は、より多くの菌種に対して抗菌作用を有する抗菌性シートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る抗菌性シートの第一特徴構成は、抗菌性粒子が不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持された点にある。
【0010】
本構成によれば、所望の菌種に対する抗菌効果を期待できる不織布の繊維シートを作製することができる。また、本構成の抗菌性シートであれば、抗菌性粒子の塗布量(g/m
2)により抗菌力を容易にコントロールすることができるので、商品用途および対象菌種に応じて塗布量を適切に調整することができる。よって、本発明の抗菌性シートは、床や機器のワイパー類、エアコン等のエアフィルター類、オムツ・生理用品やマスク等の衛生材料の他、浄水器等のフィルターとしても利用できる。
【0011】
本発明に係る抗菌性シートの第二特徴構成は、抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持された点にある。
【0012】
本構成によれば、所望の菌種に対する抗菌効果を期待できるナノ繊維シートを作製することができる。また、比表面積が非常に大きくなるナノ繊維の特性により、吸着特性や接着特性に優れるため、所望の菌種を捕捉する効果に優れ、捕捉した菌を確実に死滅させることができる。さらに、ナノ繊維の特性によりスリップフロー効果という現象が生じ、ナノ繊維シートを使用して目の細かいフィルターを作製した場合、当該フィルターを通過する空気の流速に与える影響を少なくすることができる。そのため、例えばナノ繊維シートによってマスクを作製した場合、息苦しさの少ない高機能性マスクを作製することができる。
【0013】
また、本構成の抗菌性シートであれば、抗菌性粒子の塗布量(g/m
2)により抗菌力を容易にコントロールすることができるので、商品用途および対象菌種に応じて塗布量を適切に調整することができる。よって、本発明の抗菌性シートは、床や機器のワイパー類、エアコン等のエアフィルター類、オムツ・生理用品やマスク等の衛生材料の他、浄水器等のフィルターとしても利用できる。
【0014】
本発明に係る抗菌性シートの第三特徴構成は、前記抗菌性粒子を、シアノアクリレートポリマー粒子とした点にある。
【0015】
本構成によれば、例えば細胞壁を合成する細菌であるグラム陽性細菌、例えば黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA))、腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、レンサ球菌(肺炎レンサ球菌、口腔レンサ球菌、化膿レンサ球菌、ペプトストレプトコッカス属細菌等)、ジフテリア菌、プロピオニバクテリウム・アクネス、抗酸菌(結核菌、非結核性抗酸菌等)等に対する抗菌効果が期待できるが、これらに限定されない。よって、より多くの菌種に対して抗菌作用を有する抗菌性シートを供することができる。
【0016】
シアノアクリレートポリマー粒子は、グラム陽性細菌の細胞壁に特異的に接着し、グラム陽性菌のペプチドグリカン層に当該シアノアクリレートポリマー粒子が接触して溶菌させることができると考えられる。
【0017】
本発明に係る抗菌性シートの第四特徴構成は、前記抗菌性粒子を、有機酸を抱合或いは混合の少なくとも何れかの形態により含むシアノアクリレートポリマー粒子とした点にある。
【0018】
本構成によれば、上述したグラム陽性細菌に加えて、例えば細胞壁を合成する細菌であるグラム陰性細菌、例えば大腸菌、レジオネラ菌、緑膿菌、サルモネラ菌、肺炎桿菌等に対する抗菌効果が期待できる。よって、より多くの菌種に対して抗菌作用を有する抗菌性シートを供することができる。
【0019】
本態様では、抗菌活性成分である有機酸がグラム陰性菌細胞のリポ多糖により構成される外膜(莢膜)に作用し、有機酸を抱合或いは混合の少なくとも何れかの形態により含むシアノアクリレートポリマー粒子が当該外膜を破壊して通過し、その内側にあるペプチドグリカン層に当該シアノアクリレートポリマー粒子が接触した結果、溶菌させることができたと考えられる。
【0020】
本発明に係る抗菌性シートの製造方法の特徴手段は、抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸して、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持させる工程を有する点にある。
【0021】
エレクトロスピニング法は、キャピラリーと基板の間に高電圧が印加され、キャピラリー先端のノズルから、試料溶液(ポリマー樹脂液)は電荷を帯びた繊維としてスプレーされる。キャピラリーより放出された電荷を帯びたファイバーは、電界中を基板(電極)に向かって引き寄せられ、基板上に堆積して薄い繊維の層を形成する。このように形成されたナノ繊維は、不織布状となってナノ繊維シートを形成することができる。
【0022】
本手段によれば、抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸しているため、ナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに抗菌性粒子を担持させることができる。
【0023】
本発明に係る抗菌性ナノ繊維の特徴構成は、抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維の表面に担持された点にある。
【0024】
本構成によれば、ナノ繊維の表面に抗菌性粒子を担持することができるため、所望の菌種に対する抗菌効果を期待できる抗菌性ナノ繊維を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の抗菌性シートは、抗菌性粒子が不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持してある。或いは、本発明の抗菌性シートは、抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持してある。
【0027】
抗菌性粒子は、有効成分としてシアノアクリレートポリマー粒子を含有するものとすることができる。抗菌性粒子のシアノアクリレートポリマー部分は、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合して得られる。用いられるシアノアクリレートモノマーは、アルキルシアノアクリレートモノマー(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8)が好ましく、特に外科領域において傷口の縫合のための接着剤として用いられており、下記の化1の式で表されるブチルシアノアクリレートとするのがよい。
【0029】
シアノアクリレートモノマーは、イソブチルシアノアクリレート、n−ブチル−2−シアノアクリレート、sec-ブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート等のブチルシアノアクリレートを使用することができ、さらにメチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート(つけまつげ用接着剤)、プロピルシアノアクリレート等、他のアルキルシアノアクリレートを選択しても良い。特に、イソブチルシアノアクリレート、n-ブチル−2−シアノアクリレート、エチルシアノアクリレートであれば、安全性に優れている。
【0030】
アニオン重合では、重合安定化のために糖類を使用するとよい。即ち、本発明の「シアノアクリレートポリマー粒子」には、糖類のような重合安定剤を含むものも包含される。糖類は特に限定されず、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及び水酸基を有する多糖類のいずれであってもよいが、特に多糖類とするのがよい。単糖類としては、例えばグルコース、マンノース、リボース及びフルクトース等が挙げられ、グルコースが好ましい。二糖類としては、例えばマルトース、トレハロース、ラクトース及びスクロース等が挙げられる。多糖類としては、従来公知のシアノアクリレートポリマー粒子の重合に用いられているデキストランや、マンナン等を用いることができる。これらの糖は、環状、鎖状のいずれの形態であってもよく、また、環状の場合、ピラノース型やフラノース型等のいずれであってもよい。また、糖には種々の異性体が存在するがそれらのいずれでもよい。通常、単糖は、ピラノース型又はフラノース型の形態で存在し、二糖は、それらがα結合又はβ結合したものであり、このような通常の形態にある糖をそのまま用いることができる。
【0031】
また、上述した糖類に替えて、ポリエチレングリコールや界面活性剤等、アニオン重合の重合安定化の機能を有するものであれば使用できる。
【0032】
上述した糖類、ポリエチレングリコールおよび界面活性剤は単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記した糖類のうちデキストランが好ましく、デキストランとしては、平均分子量1万〜50万程度の重合度であるデキストランが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0033】
抗菌性粒子は、シアノアクリレートポリマー粒子のみを含有してもよいが、当該シアノアクリレートポリマー粒子は多孔性であることから、内部に所望の物質を抱合させることが可能である。シアノアクリレートポリマー粒子を形成した後、シアノアクリレートポリマー粒子を所望の物質の水溶液中に浸漬する或いは所望の物質を添加する等によりシアノアクリレートポリマー粒子の内部に所望の物質を抱合させてもよいし、所望の物質の共存下において、上記したアニオン重合を行なうことにより、生成される粒子中に所望の物質を抱合させてもよい。所望の物質として、例えば本実施形態では、シアノアクリレートポリマー粒子に有機酸を抱合させる場合について説明する。抱合とは、例えば親水性の分子に外来の物質が保持される状態のことをいう。
尚、本実施形態のようにシアノアクリレートポリマー粒子に有機酸を抱合させる態様に限定されず、シアノアクリレートポリマー粒子および有機酸が混合している態様とするものであってもよい。当該混合とは、シアノアクリレートポリマー粒子および有機酸が共存し混じりあっている態様であればよい。
【0034】
有機酸は、抗菌性を有するグリコール酸、フマル酸、クエン酸、酢酸、乳酸等を使用することができる。これらの有機酸のうち、少なくとも1つ以上を選択して使用することができる。特にグリコール酸は、有機酸の中で最も分子量が小さく、浸透性に優れている。これら有機酸は、抗菌性を有するものであればその誘導体を使用することができる。
【0035】
重合反応の溶媒としては、水を使用することができる。水は、要求される純度が異なる製品用途に応じて精製水、イオン交換水、蒸留水、純水、水道水、地下水等を適宜選択すればよい。
【0036】
シアノアクリレートポリマー粒子に有機酸を抱合させる場合、抗菌性粒子は、シアノアクリレートモノマー、糖類および有機酸の共存下において、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合させる工程を行うことにより製造することができる。具体的には、重合反応は、例えば、溶媒である水に抱合させるべき有機酸および糖類などの重合安定剤を溶解させた後、撹拌下にてシアノアクリレートモノマーを加え、撹拌を続けることにより行なうことができる。反応温度は、特に限定されないが、室温で行なうのがよい。反応時間は、反応液のpH、溶媒の種類及び重合安定剤の濃度に応じて反応速度が異なり、これらの要素に応じて適宜選択すればよいため特に限定されないが、通常、1〜6時間程度である。
【0037】
反応開始時の重合反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度は特に限定されないが、通常、0.01〜5%程度、好ましくは0.1〜3%程度である。反応開始時の重合反応液中の有機酸の濃度は、特に限定されないが、通常0.01wt%〜10wt%程度、好ましくは0.05wt%〜5wt%程度、さらに好ましくは0.05wt%〜3wt%程度とすればよい。反応開始時の重合反応液中の糖類の濃度は、特に限定されないが、通常、0.01〜5%程度、好ましくは0.1〜3%程度である。
【0038】
上述した重合反応により、シアノアクリレートモノマーがアニオン重合し、有機酸を効率良く抱合したシアノアクリレートポリマー粒子(有機酸抱合粒子)を合成して、抗菌性粒子を製造することができる。アニオン重合の際に2種類以上の有機酸を共存させれば、2種類以上の有機酸を抱合した有機酸抱合粒子を有する抗菌性粒子を製造することができる。
【0039】
重合反応の結果、合成された有機酸抱合粒子は、溶媒中に分散した抗菌性粒子分散液の状態で不織布或いはナノ繊維シートに担持させる反応に供することができる。得られた抗菌性粒子分散液は、保存時に粒子径分布の経時的変化がほとんどなく、静置保存しても粒子が凝集・沈降することがなく、分散安定性に優れる。このとき有機酸抱合粒子の濃度は、0.01wt%〜5wt%程度、好ましくは0.05wt%〜3wt%程度、さらに好ましくは0.1wt%〜2wt%程度とすればよい。
【0040】
合成された有機酸抱合粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、通常、ナノオーダーサイズ(1000nm未満)、好ましくは1nm〜1000nm、さらに好ましくは10nm〜600nm程度である。尚、当該粒径は、反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度や反応時間を調節することにより調節することが可能である。また、重合安定剤として糖類を用いる場合には、当該重合安定剤の濃度や種類を変えることによっても、粒子サイズを調節することができる。
【0041】
アニオン重合は水酸化物イオンにより開始されるので、反応液のpHは、重合速度に影響する。反応液のpHが高い場合には、水酸イオンの濃度が高くなるので重合が速く、pHが低い場合には重合が遅くなる。そのため、pHを1〜4程度とするのがよい。
【0042】
上述のようにして製造した抗菌性粒子は、不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持してある。不織布の繊維素材は、天然繊維、合成繊維等を使用することができ、親水性、疎水性、耐久性、風合い等商品用途に応じて選択すればよい。また、繊維の目付(g/m
2)、繊度(dtex)、密度(g/cm
3)等についても、商品に求められる機能や品質・精度に応じて選択すればよい。
【0043】
具体的には、不織布は、スパンレース不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられ、アクリル繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
抗菌性粒子を、不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持させるため、例えば抗菌性粒子分散液をディッピング方式或いはスプレー方式により当該繊維シートに塗布することが可能である。
【0045】
ディッピング方式は、抗菌性粒子分散液中に不織布を浸漬し、不織布をそのまま通過させるか或いはニップロールにより絞った後、非接触式の熱風乾燥機内を通して不織布を乾燥させることにより行われる。
【0046】
スプレー方式は、ノズル先端部からの吐出液の形状が扇形となる複数本(例えば不織布の幅方向に4本形成し、不織布の進行方向に2列配設してある)のスプレーを使用し、抗菌性粒子分散液を不織布の表面から塗布し、そのまま通過させるか或いはニップにより絞り、非接触式の熱風乾燥機或いは接触式のドラム乾燥機表面に接触させつつ不織布を乾燥させることにより行われる。
【0047】
抗菌性粒子は、不織布等に対し、ファンデルワールス力や、マイナスに帯電した抗菌性粒子と不織布との物理化学的な吸引力や、抗菌性粒子分散液中に重合安定剤として存在するデキストラン等の接着力により付着している。
【0048】
抗菌性粒子分散液をディッピング方式或いはスプレー方式により当該繊維シートに塗布する際に、例えば水系アクリルエマルションバインダー等の接着剤を使用してもよい。具体的には、抗菌性粒子の平均粒子径が例えば150〜300nm程度である場合、平均粒子径が10〜1000nmの水系アクリルエマルションバインダーと抗菌性粒子分散液を混合し、該混合液を上記スプレー方式あるいはディッピング方式により不織布等に抗菌性粒子を付着させる。これにより、抗菌性粒子を不織布等に当該接着剤を介して強固に付着させることができる。
【0049】
アクリルエマルションバインダーのガラス転移点(Tg)は、抗菌性粒子の熱的安定性と、抗菌性粒子との接着性を考慮すると50℃以下とするのがよい。つまりガラス移転点を考慮する必要性は、アクリルエマルションバインダー粒子の造膜により抗菌性粒子が固着されることに起因する。また、バインダーとしては、抗菌性粒子と不織布等と接着するのであればアクリルエマルション以外であってもよいが、抗菌性粒子は、水中分散体であるため、水系とするのがよい。
【0050】
また、上述のようにして製造した抗菌性粒子は、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持してある。
【0051】
ナノ繊維は、長さが繊維径の100倍以上あり、当該繊維径は、広義では1000ナノメートル未満の繊維径のナノファイバーとして定義され、好ましくは1〜100ナノメートルの繊維径のナノファイバーとすることができる。このようなナノ繊維に抗菌性粒子が担持されて抗菌性ナノ繊維を構成し、当該抗菌性ナノ繊維が堆積して抗菌性シートを構成する。
【0052】
抗菌性粒子を、ナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持させるため、例えば抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸することができる。
【0053】
エレクトロスピニング法は、キャピラリーと基板の間に高電圧が印加され、キャピラリー先端のノズルから、試料溶液(ポリマー樹脂液)は電荷を帯びた繊維としてスプレーされる。キャピラリーより放出された電荷を帯びたファイバーは、電界中を基板(電極)に向かって引き寄せられ、基板上に堆積して薄い繊維の層を形成する。このように形成されたナノ繊維は、不織布状となってナノ繊維シートを形成することができる。
【0054】
本構成によれば、抗菌性粒子を分散させた分散液およびナノ繊維を構成するポリマー樹脂液を混合した混合液をエレクトロスピニング法により紡糸しているため、ナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに抗菌性粒子を担持させることができる。
【0055】
ナノ繊維は、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエステルおよびポリアクリル酸等の水溶性高分子の水溶液(ポリマー樹脂液)により製造することができるが、これらに限定されるものではない。例えばポリエチレングリコールを使用する場合、分子量は例えば20000〜2000000の範囲が望ましいが、紡糸に適した濃度および粘度と、ナノ繊維の耐水強度等を考慮すると、例えば200000〜1000000の範囲が望ましい。
【0056】
ポリエチレングリコール等のポリマー樹脂については、高濃度または高粘度の方がナノ繊維の繊維径が太く紡糸される。従って、抗菌性粒子の大きさとナノ繊維の径を調整することにより、抗菌性粒子をナノ繊維の表面より突出させることができ、さらには、抗菌性粒子同士を凝集させることによりさらに大きくナノ繊維の表面より突出させることもできる。ポリマー樹脂の濃度については、水道水、精製水、蒸留水および純水等により調整することができ、この調整は所望の抗菌効果が得られるように調整すればよい。
【0057】
本発明の抗菌性シートでは、抗菌性粒子が不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持されることにより、所望の菌種に対する抗菌効果を期待できる不織布の繊維シートを作製することができる。
【0058】
また、本発明の抗菌性シートでは、抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持されることにより、所望の菌種に対する抗菌効果を期待できるナノ繊維シートを作製することができる。また、比表面積が非常に大きくなるナノ繊維の特性により、吸着特性や接着特性に優れるため、所望の菌種を捕捉する効果に優れ、捕捉した菌を確実に死滅させることができる。さらに、ナノ繊維の特性によりスリップフロー効果という現象が生じ、ナノ繊維シートを使用して目の細かいフィルターを作製した場合、当該フィルターを通過する空気の流速に与える影響を少なくすることができる。そのため、例えばナノ繊維シートによってマスクを作製した場合、息苦しさの少ない高機能性マスクを作製することができる。
【0059】
抗菌性粒子をシアノアクリレートポリマー粒子とした場合、例えば細胞壁を合成する細菌であるグラム陽性細菌、例えば黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA))、腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、レンサ球菌(肺炎レンサ球菌、口腔レンサ球菌、化膿レンサ球菌、ペプトストレプトコッカス属細菌等)、ジフテリア菌、プロピオニバクテリウム・アクネス、抗酸菌(結核菌、非結核性抗酸菌等)等に対する抗菌効果が期待できるが、これらに限定されない。シアノアクリレートポリマー粒子は、グラム陽性細菌の細胞壁に特異的に接着し、グラム陽性菌のペプチドグリカン層に当該シアノアクリレートポリマー粒子が接触して溶菌させることができると考えられる。
【0060】
抗菌性粒子を、有機酸を抱合或いは混合の少なくとも何れかの形態により含むシアノアクリレートポリマー粒子とした場合、上述したグラム陽性細菌に加えて、例えば細胞壁を合成する細菌であるグラム陰性細菌、例えば大腸菌、レジオネラ菌、緑膿菌、サルモネラ菌、肺炎桿菌等に対する抗菌効果が期待できる。本態様では、抗菌活性成分である有機酸がグラム陰性菌細胞のリポ多糖により構成される外膜(莢膜)に作用し、有機酸を抱合或いは混合の少なくとも何れかの形態により含むシアノアクリレートポリマー粒子が当該外膜を破壊して通過し、その内側にあるペプチドグリカン層に当該シアノアクリレートポリマー粒子が接触した結果、溶菌させることができたと考えられる。
また、有機酸としてグリコール酸を適用した本発明の抗菌性シートをフェイスマスクに利用すれば、雑菌に対する抗菌効果に加え、にきびの予防や治療にも役立つ。さらに当該抗菌性シートは寝たきり患者等の床ずれ予防の貼付剤としても利用できる。
【0061】
また、本構成の抗菌性シートであれば、抗菌性粒子の塗布量(g/m
2)により抗菌力を容易にコントロールすることができるので、商品用途および対象菌種に応じて塗布量を適切に調整することができる。よって、本発明の抗菌性シートは、床や機器のワイパー類、エアコン等のエアフィルター類、オムツ・生理用品やマスク等の衛生材料の他、浄水器等のフィルターとしても利用できる。
【0062】
また、上述した水系アクリルエマルションバインダー等の接着剤を用いることにより抗菌性粒子の不織布等に対する接着力を向上させることで、気体および液体の流速や圧力損失の大きいフィルターにも利用できる。また、この抗菌性シートの抗菌性は、安全性に優れ、緩やかに長時間持続する。
【実施例】
【0063】
本発明の実施例について説明する。
【0064】
〔実施例1〕
抗菌性粒子が不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持された抗菌性シートを作製した。抗菌性粒子を、不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持させるため、当該抗菌性粒子分散液をディッピング方式(本発明例1)およびスプレー方式(本発明例2)により当該繊維シートに塗布した。
【0065】
本実施例で使用した不織布は、アクリル繊維より成るスパンレース不織布(目付:40g/m
2)、レーヨン繊維より成るスパンレース不織布(目付:40g/m
2)、ポリエステル繊維より成るスパンレース不織布(目付:45g/m
2)、ポリエステル繊維より成るエアレイド不織布(目付:35g/m
2)とした。
【0066】
本実施例で使用した抗菌性粒子(抗菌ナノ粒子)は、シアノアクリレートポリマー粒子に有機酸(グリコール酸)を抱合させたものとした。抗菌ナノ粒子分散液は以下のようにして作製した。
500mLの容器に入れた精製水200gに、グリコール酸(有機酸:和光純薬工業株式会社製)0.4gおよびデキストラン(和光純薬工業株式会社製)1.6gを溶解させ、さらにイソブチルシアノアクリレート2.0gを滴下してマグネチックスターラー(AS ONE社製 RS-1DN)を使用して、室温下で600rpm、2時間の条件により重合反応を行った。反応液を5μmサイズのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製:ミニザルト)にて濾過した後、精製水を加えて0.1wt%の抗菌ナノ粒子分散液(グリコール酸濃度0.05wt%)を作製した。このとき得られた有機酸抱合粒子の平均粒子径は、ゼータサイザー(Malvern社製Nano-ZS90)を用いて常法により測定したところ、170nmであった。
【0067】
ディッピング方式は、以下のようにして行った。
0.1wt%の抗菌ナノ粒子(平均粒子径210nm)分散液を容器内に満たし、当該容器に一部が浸漬されたグラビアロールに不織布を接触させつつ通過させ、当該不織布をニップロールにより絞った後、非接触式の熱風乾燥機内を通して不織布を乾燥させた。不織布のラインスピードは1〜10m/分、ニップ圧は0.4〜0.5Mpaとし、乾燥温度は70〜100℃となるように調節した。尚、ラインスピードは、抗菌ナノ粒子の塗布量(g/m
2)、乾燥温度、生産スピード等に応じて調整すれば良く、また、ニップ圧は、抗菌ナノ粒子の塗布量に応じて調整すれば良い。
【0068】
ディッピング方式により不織布を構成する繊維に付着した抗菌ナノ粒子の量は、アクリルスパンレース0.24g/m
2、レーヨンスパンレース0.17g/m
2、ポリエステルスパンレース0.32g/m
2、ポリエステルエアレイド0.068g/m
2であった。
【0069】
抗菌ナノ粒子が不織布を構成する繊維に付着しているかどうかを確認した。
ディッピング方式により抗菌ナノ粒子が付着していると考えられる試料片(ポリエステルスパンレース:15cm×15cm)を、1000mLビーカー中に水500mLを満たした中に投入し、マグネチックスターラーにて30分間撹拌して洗浄した後ビーカーより試料片を取り出し、雰囲気温度40℃の恒温乾燥機にて乾燥した後、電子顕微鏡(×10000)により観察して抗菌ナノ粒子の存在を確認した(
図1)。
図1より、抗菌ナノ粒子が不織布を構成する繊維に付着していることが確認された。尚、他のアクリルスパンレース、レーヨンスパンレース、ポリエステルエアレイドについても同様の結果が得られた(図示しない)。
【0070】
さらに、ビーカー中の水を採取し、ゼータサイザー(Malvern社製Nano-ZS90)にて測定確認したところ、抗菌ナノ粒子を検出することができなかった。つまり、これは上記洗浄により抗菌ナノ粒子が不織布等から殆ど脱離しなかった結果であると考えられる。
【0071】
スプレー方式は、以下のようにして行った。
ノズル先端部からの吐出液の形状が扇形で、かつ不織布の幅方向に4本形成し、不織布の進行方向に2列配設してある計8本のスプレーを使用し、0.1wt%の抗菌ナノ粒子分散液を不織布の表面から塗布し、ニップロールにより絞った後、非接触式の熱風乾燥機に接触させつつ不織布を乾燥させた。不織布のラインスピードは5〜15m/分、ニップ圧は0.2Mpaとし、乾燥温度は70〜100℃となるように調節した。
【0072】
〔実施例2〕
実施例1でディッピング方式(本発明例1)により作製した抗菌性シートにおいて、抗菌効果を調べた。当該抗菌性シートは、アクリルスパンレース(本発明例1−1)、レーヨンスパンレース(本発明例1−2)、ポリエステルスパンレース(本発明例1−3)、ポリエステルエアレイド(本発明例1−4)を使用した。
【0073】
これら抗菌性シート片0.04gを計量後、70%(v/v)エタノールを噴霧して滅菌し、滅菌済シャーレに不織布片を1枚ずつ入れ、室温で一夜乾燥させた。菌接種の約2時間前にシャーレの蓋にオートクレーブ滅菌した濾紙を貼りつけ、滅菌水を吸収させた。抗菌性シート片に試験菌液(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732))0.02mLを接種させた後、シャーレに貼りつけた濾紙に再度吸水させ、37℃で18時間培養した。培養する際にはパラフィルムで密封した。接種直後および培養後に2mLの抽出液で菌を抽出し、生理食塩水で10倍希釈後、希釈液1mLを混釈培養(37℃、2日間)し、生菌数を計測した。結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
この結果、アクリルスパンレース(本発明例1−1)およびレーヨンスパンレース(本発明例1−2)の抗菌性シートは、培養後において約10〜50分の1程度にまで菌数は減少しており、ポリエステルスパンレース(本発明例1−3)およびポリエステルエアレイド(本発明例1−4)の抗菌性シートは、培養後において全く菌体は検出されなかった。尚、スプレー方式(本発明例2)により作製した抗菌性シートを使用して抗菌効果を調べた場合でも同様の結果が得られた(データは示さない)。そのため、本発明の抗菌性シート(不織布)は、優れた抗菌特性を有するものと認められた。
【0076】
〔実施例3〕
実施例1でディッピング方式(本発明例1)により作製した抗菌性シートにおいて、加熱後の抗菌効果を調べた。当該抗菌性シートは、レーヨンスパンレース(本発明例1−2)、ポリエステルスパンレース(本発明例1−3)を使用した。
【0077】
それぞれの抗菌性シートを100℃(1分、10分)および150℃(1分、10分)で加熱処理し、これら抗菌性シートに5300個の試験菌液(黄色ブドウ球菌)を接種後、37℃で18時間培養し、生菌数を計測した。結果を
図2に示した。
【0078】
この結果、レーヨンスパンレース(本発明例1−2)の抗菌性シートは、加熱後においてコントロールに対して100分の1程度にまで菌数は減少しており、ポリエステルスパンレース(本発明例1−3)の抗菌性シートは、加熱後において殆ど菌体は検出されなかった。そのため、本発明の抗菌性シート(不織布)は、加熱後においても優れた抗菌特性を有するものと認められた。
【0079】
〔実施例4〕
実施例1でディッピング方式(本発明例1)により作製した抗菌性シートにおいて、洗浄後の抗菌効果を調べた。当該抗菌性シートは、ポリエステルスパンレース(本発明例1−3)を使用した。
【0080】
洗浄は、抗菌性シート片(5cm×5cm)を300mLの水道水を満たした500mLビーカーに投入し、マグネチックスターラーにより400rpm×3分の条件にて撹拌した。その後、抗菌性シート片をビーカーより取り出し、40℃に設定した恒温乾燥機により加熱乾燥した。その後、抗菌性シートに試験菌液(黄色ブドウ球菌)を接種後、37℃で18時間培養し、生菌数を計測した。当該計測は実施例2に記載の方法に準じて行った。結果を表2に示した。
【0081】
【表2】
【0082】
この結果、アクリルスパンレース(本発明例1−1)の抗菌性シートは、洗浄前においては約7.5〜21分の1程度にまで菌数は減少しており、洗浄後においては約15分の1程度にまで菌数は減少した。従って、洗浄の前後において有意な差異は認められなかったため、本発明の抗菌性シート(不織布)は、洗浄後においても優れた抗菌特性を有するものと認められた。
【0083】
〔実施例5〕
抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面および内部の少なくとも何れかに担持された抗菌性シートを作製した。抗菌性粒子(抗菌ナノ粒子)を、不織布を構成する繊維の表面および内部の少なくとも何れかに担持させるため、エレクトロスピニング法により紡糸した。具体的には以下のようにして抗菌性シートを作製した。
【0084】
本実施例で使用した抗菌性粒子(抗菌ナノ粒子)は、シアノアクリレートポリマー粒子に有機酸(グリコール酸)を抱合させたものとした。抗菌ナノ粒子分散液は実施例1に記載の方法に準じて作製した。抗菌ナノ粒子分散液の濃度は1wt%に調製した。
【0085】
ナノ繊維を構成するポリマー樹脂としてポリエチレングリコール(分子量500000)10gを水道水90mLに溶解して10wt%のポリマー樹脂液100mLを作製した。当該ポリマー樹脂液および1wt%の抗菌ナノ粒子分散液100mLを混合し、撹拌して混合液を調整した。当該混合液を、エレクトロスピニング装置(カトーテック社製)により紡糸し、基材(セルロース系不織布28×15cm)上にナノ繊維シートを形成させた。紡糸条件は、上部電圧50kv、下部電圧30kv、ギアポンプ4mL/rpm、シリンジポンプ0.038mL/分、ノズルの針サイズ21を使用し、10分間の紡糸を行った。
【0086】
作製された本発明の抗菌性シート(ナノ繊維シート)を電子顕微鏡(×5000)により観察して抗菌ナノ粒子およびナノ繊維の存在を確認した(
図3)。
図3より、抗菌ナノ粒子がナノ繊維シートを構成するナノ繊維に付着(抗菌ナノ粒子がナノ繊維の表面より突出している)していることが確認された。ナノ繊維の繊維径は100〜150nmであった。
【0087】
紡糸した抗菌性シート(ナノ繊維シート)は、基材(セルロース系不織布)より剥がすことにより分離することができる。また、ポリエチレングリコールにより紡糸された抗菌性シート(ナノ繊維シート)の目付(g/m
2)は、セルロース系の基材40g/m
2に、ナノ繊維層0.23g/m
2および抗菌ナノ粒子0.02g/m
2を加えた40.25(g/m
2)であった。抗菌性シート(ナノ繊維シート)の目付(g/m
2)は、用途に応じて選択すればよく、主に0.01〜100g/m
2の範囲で製品用途が考えられる。例えば、マスクであれば、抗菌性シート(ナノ繊維シート)の目付(g/m
2)は、捕集効率と圧力損失を考慮し、1〜10g/m
2とするのがよい。また、マスクであれば、抗菌性能を考慮し、抗菌ナノ粒子の目付(g/m
2)は、0.01〜5g/m
2とするのがよい。
【0088】
〔実施例6〕
実施例5で作製した本発明の抗菌性シート(ナノ繊維シート)において、抗菌効果を調べた。生菌数の計測等の手法は実施例2に準じて行った。結果を表3に示した。
【0089】
【表3】
【0090】
この結果、本発明の抗菌性シート(ナノ繊維シート)は、培養後において約4分の1程度にまで菌数は減少していた。従って、本発明の抗菌性シート(ナノ繊維シート)は、優れた抗菌特性を有するものと認められた。
【0091】
〔実施例7〕
抗菌性粒子が、繊維径が1000ナノメートル未満のナノ繊維で構成されたナノ繊維シートの表面のみに担持された抗菌性シートを作製した。
【0092】
ナノ繊維を構成するポリマー樹脂としてポリアクリロニトリルを有機溶媒のジメチルホルムアミドに溶解してポリマー樹脂液を作製した。エレクトロスピニング装置により、セルロース系不織布の基材上に、上部電圧50kv、下部電圧25kv、ギアポンプ4mL/rpm、シリンジポンプ0.38mL/分、ノズルの針サイズ21を使用して5分間の紡糸を行い、基材上に繊維径約300nmのナノ繊維シートを形成させた。
【0093】
このナノ繊維シート上に、抗菌ナノ粒子分散液(実施例5で使用)をエレクトロスピニング装置によってエレクトロスプレーすることにより、抗菌ナノ粒子をナノ繊維シートの表面のみに付着させた。
【0094】
当該抗菌性シート(ナノ繊維シート)を電子顕微鏡(×5000)により観察して抗菌ナノ粒子およびナノ繊維の存在を確認した(
図4)。
【0095】
尚、有機溶媒に溶解するポリマー樹脂としては、ポリアクリロニトリル以外に、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリメタクリル酸、ポリエチレンテレフタレート等、有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。
【0096】
〔実施例8〕
実施例1でディッピング方式(本発明例1)により抗菌性シートを作製する際に、抗菌ナノ粒子分散液に水系アクリルエマルションバインダー(接着剤)を添加した。当該抗菌性シートはアクリルスパンレース(本発明例1−1)を使用し、0.1wt%の抗菌ナノ粒子分散液に、公知のアクリルエマルションバインダーが0.5wt%となるように添加した。
【0097】
作製した抗菌性シートを雰囲気温度40℃の恒温乾燥機にて乾燥した後、電子顕微鏡(×50000)により観察して抗菌ナノ粒子が接着している態様を確認した(
図5)。
図5より、抗菌ナノ粒子が接着剤を介して強固に付着していることが確認された。
【0098】
このようにして作製した抗菌性シートにMRSA(Staphylococcus aureus IID 1677)を含有する試験菌液を接種後、37℃で24時間培養し、生菌数を計測(培養初期(0時間後),6時間後,24時間後)した。当該計測は実施例2に記載の方法に準じて行った。培地はNutrient BrothおよびNutrient agar(DIFCO社製)を使用した。結果を表4に示した。
【0099】
【表4】
【0100】
この結果、コントロールにおいては24時間培養後において100倍以上に菌数が増加したのに対して、本実施例の抗菌性シートは、24時間培養後において100分の1程度にまで菌数は減少した。そのため、本実施例の抗菌性シートのように、水系アクリルエマルションバインダー(接着剤)を使用して抗菌性粒子を抗菌性シートに当該接着剤を介して強固に付着させることで、優れた抗菌特性を有するものと認められた。