特開2016-56676(P2016-56676A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016056676-水質汚濁防止フェンス 図000003
  • 特開2016056676-水質汚濁防止フェンス 図000004
  • 特開2016056676-水質汚濁防止フェンス 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-56676(P2016-56676A)
(43)【公開日】2016年4月21日
(54)【発明の名称】水質汚濁防止フェンス
(51)【国際特許分類】
   E02B 15/00 20060101AFI20160328BHJP
   E02B 15/06 20060101ALI20160328BHJP
【FI】
   E02B15/00 B
   E02B15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-7692(P2015-7692)
(22)【出願日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-185077(P2014-185077)
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】大友 啓次
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 文秀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広行
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025AA03
2D025BA03
2D025BA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】汚濁防止機能を損なわずに効果を測定でき、効果測定用のサンプルの採取が容易かつ作業効率がよく、効果測定用のサンプルの対比が明確で、測定しやすい水質汚濁防止フェンスを提供する。
【解決手段】フロート11と、フロートに吊下したフェンスシート12と、を有するフェンス部10と、フェンス部の一部に、フェンスシートの両面に相対向して外装可能な測定シート20と、測定シートに接続した引き上げロープ25とから構成したことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質汚濁防止フェンスであって、
フロートと、前記フロートに吊下したフェンスシートと、を有するフェンス部と、
前記フェンス部の一部に、前記フェンスシートの両面に相対向して外装可能な、測定シートと、から構成したことを特徴とする、
水質汚濁防止フェンス。
【請求項2】
前記測定シートは、内シートと、外シートと、前記内シートと前記外シートとを連結する、連結部と、から構成したことを特徴とする、請求項1に記載の水質汚濁防止フェンス。
【請求項3】
前記測定シートの一部に、引き上げロープを接続し、前記引き上げロープを介して、前記測定シートを引き上げ可能に構成したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水質汚濁防止フェンス。
【請求項4】
前記フェンスシートが、透水性シートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、水質汚濁防止フェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質汚濁防止フェンスに関し、特に汚濁防止効果の測定機能を有する水質汚濁防止フェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
水質汚濁防止フェンスは、港湾・海岸・河川等の水域における、汚濁物質の拡散防止に使用される浮体式のフェンスであり、近年は、農業用ダム・ため池の除染作業等にも広く利用されている。
柱状のフロートの下部から透水性のシートを垂下し、当該フロートで対象水域を囲い込み、または締め出すことで、汚濁物質の拡散を防止する。
【0003】
特許文献1には、フロートとシートとからなる本体を、ジョイント部材を介して直列に接続した水質汚濁防止フェンスが開示されている。
【0004】
水質汚濁防止フェンスは、供用後、定期的に汚濁防止効果を測定する場合がある。効果測定は、シートの内外の汚濁物質の濃度を対比して行う。
従来は、シートを水上に引き上げ、シートの一部を切り抜いて、その表裏に付着した汚濁物質を採取し、測定機にかけて汚濁物質の濃度を対比することで、汚濁防止効果を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−64614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術には、汚濁防止効果の測定時、次のような欠点があった。
<1>シートの一部を切り抜くため、シートが欠損し、フェンス本来の汚濁防止機能が損なわれる。
<2>シートは水質汚濁防止フェンスの全長に亘って連続している。そのため、水中から引き上げるために多大な労力を要し、作業効率が悪い。
<3>切り抜いたシート片の表裏の区別がつきにくいため、測定を誤りやすい。
<4>一般的に水質の検査方法として、ロープ付きの採水容器(口広ボトル)を使用して採取した水を検査する方法が広く知られている。
この検査方法にあっては、採水容器の沈降時だけでなく引上げ時にも容器内の水が自由に出入りするために、採取した水の水深を特定することが非常に難しい。
したがって、特定の水深における汚濁状況を正確に検査することができない。
【0007】
本発明の目的は、次の効果のうち少なくともひとつを有する、水質汚濁防止フェンスを提供することにある。
<1>水質汚濁防止フェンス本来の汚濁防止機能を損なわずに汚濁防止効果を測定できること。
<2>汚濁防止効果測定用のサンプルの採取が容易で、作業効率がよいこと。
<3>汚濁防止効果測定用のサンプルの対比が明確で、測定しやすいこと。
<4>特定の水深における汚濁状況を正確に検査できること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するための、本発明の水質汚濁防止フェンスは、フロートと、フロートに吊下したフェンスシートと、を有するフェンス部と、フェンス部の一部に、フェンスシートの両面に相対向して外装可能な測定シートと、から構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の水質汚濁防止フェンスは、測定シートを、内シートと、外シートと、内シートと外シートとを連結する、連結部と、から構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明の水質汚濁防止フェンスは、測定シートの一部に、引き上げロープを接続し、引き上げロープを介して、測定シートを引き上げ可能に構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の水質汚濁防止フェンスは、フェンスシートが、透水性シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、水質汚濁防止フェンスは、以上説明した構成を有するため、次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>フェンス部と別体の測定シートからサンプルを採取し、フェンスシート自体を傷付けないため、サンプル採取後も、汚濁防止機能が損なわれない。
<2>測定シートはフェンス部に部分的に配置され、また、内シート、外シートの下端には引き上げロープが連結されているため、引き上げ作業が容易で、作業効率がよい。
<3>1枚のシート片の表裏でなく、内シートと外シートとを対比するため、比較対象が明確で、測定が容易である。
<4>測定シートを水深方向に沿って配置できるので、水深に応じたサンプリングが可能となって、特定の水深における汚濁状況を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る水質汚濁防止フェンスの説明図。
図2】本発明に係る水質汚濁防止フェンスの説明図。
図3】本発明の実施例2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の、水質汚濁防止フェンスについて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
[本発明の構成]
<1>全体の構成(図1、2)。
本発明の水質汚濁防止フェンス1は、フェンス部10と測定シート20とからなる。
複数のフェンス部10を、フロート11の長手方向に連結することで、水域を囲い込み、汚濁物質の移動を制限することができる。測定シート20は、フェンス部10の上に、部分的に設置する。
本例において、フェンス部10と測定シート20は、分離可能な別部材とするが、両者をフロート11の上部で連結することもできる。あるいは、一体構造とすることもできる。
【0016】
<2>フェンス部。
フェンス部10は、汚濁物質の透過を阻止することで拡散を防ぐ部分である。
フェンス部10は、カーテン式のフェンスであり、例えば公知のシルトフェンスやオイルフェンス等を含む。
フェンス部10は、柱状のフロート11と、フロート11の下部から水中に吊下するフェンスシート12と、を少なくとも有する。
【0017】
<2.1>フロート。
フロート11は、水質汚濁防止フェンス1に浮力を与える部材である。
本例では、フロート11に、円柱形のポリスチレン発泡体をPVCターポリンで被覆したものを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0018】
<2.2>フェンスシート。
フェンスシート12は、汚濁物質の水中での移動を制限する部材である。
本例では、フェンスシート12に、ポリエステル製の方形のキャンバスを採用する。透水性を確保するためキャンバスの繊維間には空隙を設けるが、用途によっては非透水性とすることもできる。その他、公知の各技術を採用することができる。
フェンスシート12は、フロート11の下部に、長手方向に沿って接続し、水中に吊り下げる。
フェンスシート12の下辺に沿って、フェンスシート12の捲れや孕みを防止するための、ウエイト13を連結することができる。
本例では、ウエイト13に、亜鉛メッキ処理を施した鋼製のチェーンを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0019】
<3>測定シート。
測定シート20は、フェンス部10の汚濁防止効果を測定するための部分である。
測定シート20は、フェンスシート12の両側面に相対向して外装可能な内シート21、外シート22と、両シート間を接続する連結部23と、を少なくとも有する。
測定シート20は、連結部23をフロート11の上部に巻き掛け、内シート21と外シート22を、フロート11の両側の水中に吊下して使用する。
【0020】
<3.1>内シート、外シート。
内シート21、外シート22は、汚濁物質の水中濃度を測定する機能を有するシートである。便宜上、汚濁物質防止フェンス1で囲い込んだ水域の内側のシートを内シート21、外側のシートを外シート22として説明するが、機能は同様である。
本例では、内シート21、外シート22には、フェンスシート12と同様の、ポリエステル製の方形の透水性キャンバスを採用する。サンプリング条件を同一にするため、内シート21と外シート22とは、透過性能を同一とする。
内シート21、外シート22の下辺には、捲れ、孕みを防止するための、ウエイト26を連結することができる。
本例では、ウエイト26に、亜鉛メッキ処理を施した鋼製のチェーンを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0021】
<3.2>連結部。
連結部23は、内シート21と、外シート22との間を連結する部分である。
本例では、連結部23は、内シート21、外シート22と別部材とするが、一枚の連続したシートの中央部分を連結部23とすることもできる。
連結部23は、フロート11を被覆することで、フェンス部10と測定シート20とを接続する。接続にあたり、特別な固定具は必要としない。
【0022】
<3.3>引き上げロープ。
引き上げロープ25は、内シート21、外シート22を水中から引き揚げるためのロープである。
引き上げロープ25には、繊維ロープの他、ワイヤーロープやチェーンなどを採用することができる。
引き上げロープ25は、一端を内シート21、外シート22の下端に接続し、他端をブイ24に接続する。引き上げロープ25の長さは、水面から内シート21、外シート22の下端までの長さ程度とする。
水面に浮いたブイ24を目印に引き上げロープ25を手繰り上げれば、船上から内シート21、外シート22を容易に引き上げることができる。
【0023】
[水質汚濁防止効果の測定方法]
引き続き、図面を参照しながら本発明の水質汚濁防止フェンスによる水質汚濁防止効果の測定方法について説明する。
【0024】
<1.1>設置場所。
本発明の水質汚濁防止フェンス1は、海洋、ため池、湖等の水域で使用することができる。
【0025】
<1.2>汚濁物質の例示。
本願の水質汚濁防止フェンス1の対象となる汚濁物質には、有害物質の付着した土粒子やセシウム、ダイオキシン等がある。
【0026】
<1.3>汚濁物質の捕捉機能。
本例では、内シート21、外シート22のキャンバスの繊維間の空隙に汚濁物質を付着させることで、当該水域の汚濁物質の含有量を計測するサンプルとする。但し、サンプリングの方法はこれに限られず、その他公知の各技術を採用することができる。
【0027】
<2.1>シートの引き上げ。
船上、又は水質汚濁防止フェンス1端部の陸上から、ブイ24を目印に、汚濁物質防止フェンス1の内側のブイ24に接続された引き上げロープ25を手繰り寄せる。
引き上げロープ25は内シート21の下端に接続されているため、引き上げロープ25を水上に引くことで、内シート21の下端を水上に引き上げることができる。
従来の水質汚濁防止フェンスは、本発明の引き上げロープ25のような引き上げ手段を持たず、また、シート全体を引き上げていたため、重量が重く、引き上げの作業効率が悪かった。
一方、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、フェンス部10上に部分的に配置された内シート21のみを引き上げるため、引き上げにかかる重量が軽く、引き上げロープ24を引っぱるだけでよいので、作業効率が非常によい。
【0028】
<2.2>サンプルの回収。
水上に引き上げた内シート21の一部を切除して、汚濁物質の付着量をはかるサンプルとして回収する。フェンスシート12外側の外シート22も同様に一部を回収する。
従来の水質汚濁防止フェンスは、水質汚濁防止効果を測定するため、シートそのものを一部切除して回収していた。そのため、シートが欠損し、水質汚濁防止機能が損なわれていた。
これに対し、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、汚濁物質の拡散を防ぐフェンス部10と、フェンス部10の汚濁防止効果を測定するための測定シート20を別個に有し、測定シート20のみからサンプルを採取し、フェンス部10を傷付けない。このため、汚濁防止効果を測定しても、汚濁防止機能が損なわれることがない。
【0029】
<2.3>汚濁物質の測定。
フェンス部10の両側の内シート21、外シート22を、付着した汚濁物質ごと細分化し、測定機にかける。両シートの汚濁物質の濃度を比較することで、水質汚濁防止フェンス1の汚濁防止効果を測定することができる。
従来の水質汚濁防止フェンスは、一枚のシートの一部を切除し、その両面から汚濁物質を採取しなければならず、汚濁物質の採取が困難であった。また、一枚のシート片の表裏を対比するため、サンプルを取り違えやすかった。
これに対し、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、内シート21、外シート22の二枚のシートをそのまま使用するため、汚濁物質の採取が容易である。また、サンプルを取り違えにくい。
更に、フェンスシート12と共に水深方向に沿って配置した測定シート20には水深に応じた汚濁状況が直接反映されことになる。
したがって、水深に応じたサンプリングが可能となって、特定の水深における汚濁状況を正確に検査することができる。
【実施例2】
【0030】
[引き上げロープで内シート、外シート同士を接続した例]
引き続き、引き上げロープ25で、内シート21と、外シート22とを接続した、他の実施例について説明する(図3)。
本例では、引き上げロープ25の一端を内シート21の下端に接続し、他端をフロート11の上部に掛け渡し、反対側の外シート22の下端に接続する。
本例では、ブイ24を必要とせず、簡単に引き上げロープ25を手繰ることができる。また、一本の引き上げロープ25を操作するだけで、フェンスシート12両側の内シート21、外シート22を引き上げることができ、作業効率が良い。
【符号の説明】
【0031】
1 水質汚濁防止フェンス
10 フェンス部
11 フロート
12 フェンスシート
13 ウエイト
20 測定シート
21 内シート
22 外シート
23 連結部
24 ブイ
25 引き上げロープ
26 ウエイト
図1
図2
図3