【実施例1】
【0015】
[本発明の構成]
<1>全体の構成(
図1、2)。
本発明の水質汚濁防止フェンス1は、フェンス部10と測定シート20とからなる。
複数のフェンス部10を、フロート11の長手方向に連結することで、水域を囲い込み、汚濁物質の移動を制限することができる。測定シート20は、フェンス部10の上に、部分的に設置する。
本例において、フェンス部10と測定シート20は、分離可能な別部材とするが、両者をフロート11の上部で連結することもできる。あるいは、一体構造とすることもできる。
【0016】
<2>フェンス部。
フェンス部10は、汚濁物質の透過を阻止することで拡散を防ぐ部分である。
フェンス部10は、カーテン式のフェンスであり、例えば公知のシルトフェンスやオイルフェンス等を含む。
フェンス部10は、柱状のフロート11と、フロート11の下部から水中に吊下するフェンスシート12と、を少なくとも有する。
【0017】
<2.1>フロート。
フロート11は、水質汚濁防止フェンス1に浮力を与える部材である。
本例では、フロート11に、円柱形のポリスチレン発泡体をPVCターポリンで被覆したものを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0018】
<2.2>フェンスシート。
フェンスシート12は、汚濁物質の水中での移動を制限する部材である。
本例では、フェンスシート12に、ポリエステル製の方形のキャンバスを採用する。透水性を確保するためキャンバスの繊維間には空隙を設けるが、用途によっては非透水性とすることもできる。その他、公知の各技術を採用することができる。
フェンスシート12は、フロート11の下部に、長手方向に沿って接続し、水中に吊り下げる。
フェンスシート12の下辺に沿って、フェンスシート12の捲れや孕みを防止するための、ウエイト13を連結することができる。
本例では、ウエイト13に、亜鉛メッキ処理を施した鋼製のチェーンを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0019】
<3>測定シート。
測定シート20は、フェンス部10の汚濁防止効果を測定するための部分である。
測定シート20は、フェンスシート12の両側面に相対向して外装可能な内シート21、外シート22と、両シート間を接続する連結部23と、を少なくとも有する。
測定シート20は、連結部23をフロート11の上部に巻き掛け、内シート21と外シート22を、フロート11の両側の水中に吊下して使用する。
【0020】
<3.1>内シート、外シート。
内シート21、外シート22は、汚濁物質の水中濃度を測定する機能を有するシートである。便宜上、汚濁物質防止フェンス1で囲い込んだ水域の内側のシートを内シート21、外側のシートを外シート22として説明するが、機能は同様である。
本例では、内シート21、外シート22には、フェンスシート12と同様の、ポリエステル製の方形の透水性キャンバスを採用する。サンプリング条件を同一にするため、内シート21と外シート22とは、透過性能を同一とする。
内シート21、外シート22の下辺には、捲れ、孕みを防止するための、ウエイト26を連結することができる。
本例では、ウエイト26に、亜鉛メッキ処理を施した鋼製のチェーンを採用する。その他、公知の各技術を採用することができる。
【0021】
<3.2>連結部。
連結部23は、内シート21と、外シート22との間を連結する部分である。
本例では、連結部23は、内シート21、外シート22と別部材とするが、一枚の連続したシートの中央部分を連結部23とすることもできる。
連結部23は、フロート11を被覆することで、フェンス部10と測定シート20とを接続する。接続にあたり、特別な固定具は必要としない。
【0022】
<3.3>引き上げロープ。
引き上げロープ25は、内シート21、外シート22を水中から引き揚げるためのロープである。
引き上げロープ25には、繊維ロープの他、ワイヤーロープやチェーンなどを採用することができる。
引き上げロープ25は、一端を内シート21、外シート22の下端に接続し、他端をブイ24に接続する。引き上げロープ25の長さは、水面から内シート21、外シート22の下端までの長さ程度とする。
水面に浮いたブイ24を目印に引き上げロープ25を手繰り上げれば、船上から内シート21、外シート22を容易に引き上げることができる。
【0023】
[水質汚濁防止効果の測定方法]
引き続き、図面を参照しながら本発明の水質汚濁防止フェンスによる水質汚濁防止効果の測定方法について説明する。
【0024】
<1.1>設置場所。
本発明の水質汚濁防止フェンス1は、海洋、ため池、湖等の水域で使用することができる。
【0025】
<1.2>汚濁物質の例示。
本願の水質汚濁防止フェンス1の対象となる汚濁物質には、有害物質の付着した土粒子やセシウム、ダイオキシン等がある。
【0026】
<1.3>汚濁物質の捕捉機能。
本例では、内シート21、外シート22のキャンバスの繊維間の空隙に汚濁物質を付着させることで、当該水域の汚濁物質の含有量を計測するサンプルとする。但し、サンプリングの方法はこれに限られず、その他公知の各技術を採用することができる。
【0027】
<2.1>シートの引き上げ。
船上、又は水質汚濁防止フェンス1端部の陸上から、ブイ24を目印に、汚濁物質防止フェンス1の内側のブイ24に接続された引き上げロープ25を手繰り寄せる。
引き上げロープ25は内シート21の下端に接続されているため、引き上げロープ25を水上に引くことで、内シート21の下端を水上に引き上げることができる。
従来の水質汚濁防止フェンスは、本発明の引き上げロープ25のような引き上げ手段を持たず、また、シート全体を引き上げていたため、重量が重く、引き上げの作業効率が悪かった。
一方、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、フェンス部10上に部分的に配置された内シート21のみを引き上げるため、引き上げにかかる重量が軽く、引き上げロープ24を引っぱるだけでよいので、作業効率が非常によい。
【0028】
<2.2>サンプルの回収。
水上に引き上げた内シート21の一部を切除して、汚濁物質の付着量をはかるサンプルとして回収する。フェンスシート12外側の外シート22も同様に一部を回収する。
従来の水質汚濁防止フェンスは、水質汚濁防止効果を測定するため、シートそのものを一部切除して回収していた。そのため、シートが欠損し、水質汚濁防止機能が損なわれていた。
これに対し、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、汚濁物質の拡散を防ぐフェンス部10と、フェンス部10の汚濁防止効果を測定するための測定シート20を別個に有し、測定シート20のみからサンプルを採取し、フェンス部10を傷付けない。このため、汚濁防止効果を測定しても、汚濁防止機能が損なわれることがない。
【0029】
<2.3>汚濁物質の測定。
フェンス部10の両側の内シート21、外シート22を、付着した汚濁物質ごと細分化し、測定機にかける。両シートの汚濁物質の濃度を比較することで、水質汚濁防止フェンス1の汚濁防止効果を測定することができる。
従来の水質汚濁防止フェンスは、一枚のシートの一部を切除し、その両面から汚濁物質を採取しなければならず、汚濁物質の採取が困難であった。また、一枚のシート片の表裏を対比するため、サンプルを取り違えやすかった。
これに対し、本発明の水質汚濁防止フェンス1は、内シート21、外シート22の二枚のシートをそのまま使用するため、汚濁物質の採取が容易である。また、サンプルを取り違えにくい。
更に、フェンスシート12と共に水深方向に沿って配置した測定シート20には水深に応じた汚濁状況が直接反映されことになる。
したがって、水深に応じたサンプリングが可能となって、特定の水深における汚濁状況を正確に検査することができる。