【解決手段】測定装置10は、直流の電源電圧をDUT1に供給する電源電圧出力部23と、プレストーク信号をDUT1に出力するPTT信号出力部24と、DUT1からAF信号の成分を含む無線周波数信号を入力し、この無線周波数信号に基づいて無線機の所定の電気特性を測定する電気特性測定部22と、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに電源電圧及び所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示する表示部27と、を備える。
前記電気特性測定手段は、前記所定の電気特性として、前記無線周波数信号の電力特性及び周波数特性、前記音声周波数信号の信号レベル特性、信号対雑音比及び周波数偏移特性のうちの少なくともいずれか1つを測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
前記表示手段は、前記電源電圧及び前記所定の電気特性の時間的変動を示すデータに加えて、前記所定の電気特性に関して予め定められたしきい値の範囲を表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プレストーク方式の無線機では、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点で、無線機に供給されている直流の電源電圧が変動することが知られており、その変動に伴う電気特性の変動を確認できるものが求められていた。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のものは、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認できないという課題があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認することができる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る測定装置は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる無線機の電気特性を測定する測定装置であって、直流の電源電圧を前記無線機に供給する電源電圧供給手段と、前記プレストーク信号を前記無線機に出力するプレストーク信号出力手段と、前記無線機から音声周波数信号の成分を含む無線周波数信号を入力し、この無線周波数信号に基づいて前記無線機の所定の電気特性を測定する電気特性測定手段と、前記プレストーク信号により前記受信状態と前記送信状態とが切り替わる時点をトリガに前記電源電圧及び前記所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示する表示手段と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに電源電圧及び所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示する表示手段を備えるので、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る測定装置は、前記電気特性測定手段は、前記所定の電気特性として、前記無線周波数信号の電力特性及び周波数特性、前記音声周波数信号の信号レベル特性、信号対雑音比及び周波数偏移特性のうちの少なくともいずれか1つを測定するものであることが好ましい。
【0012】
本発明の請求項3に係る測定装置は、前記電源電圧供給手段は、前記電源電圧を所定のステップで変化させて前記無線機に供給するものであり、前記電気特性測定手段は、前記電源電圧の所定のステップごとに前記無線機の所定の電気特性を測定するものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、所定のステップで変化させた電源電圧ごとに電気特性の合否を判定すれば、極めて効率的に無線機メーカでの設計検証を効率的に行うことができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る測定装置は、前記表示手段は、前記電源電圧及び前記所定の電気特性の時間的変動を示すデータに加えて、前記所定の電気特性に関して予め定められたしきい値の範囲を表示するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項4に係る測定装置は、電気特性の測定値がしきい値で示した許容範囲内にあるか否かを測定者に提示することができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る測定装置は、複数の無線機に対する前記所定の電気特性の統計情報を求める統計処理手段(26)をさらに備え、前記表示手段は、前記統計情報を表示するものである構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項5に係る測定装置は、統計情報により被測定品のバラツキやデータの傾向を測定者に把握させることが可能となる。
【0018】
本発明の請求項6に係る測定方法は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる無線機(1)の電気特性を測定する測定方法であって、直流の電源電圧を前記無線機に供給する電源電圧供給ステップ(S12)と、前記プレストーク信号を前記無線機に出力するプレストーク信号出力ステップ(S18)と、前記無線機から音声周波数信号の成分を含む無線周波数信号を入力し、この無線周波数信号に基づいて前記無線機の所定の電気特性を測定する電気特性測定ステップ(S15、S19、S23)と、前記プレストーク信号により前記受信状態と前記送信状態とが切り替わる時点をトリガに前記電源電圧及び前記所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示する表示ステップ(S16、S20、S24)と、を含む構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項6に係る測定方法は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに電源電圧及び所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示するので、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認することができるという効果を有する測定装置及び測定方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の測定装置をアナログ信号FM方式の無線機の電気特性を測定するものに適用した例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
まず、本発明に係る測定装置の一実施形態における構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における測定装置10は、操作部11、設定制御部12、測定処理装置20を備えている。測定処理装置20は、信号発生部21、電気特性測定部22、電源電圧出力部23、PTT信号出力部24、測定データ記憶部25、測定データ解析部26、表示部27を備えている。この測定装置10は、アナログ信号FM方式の無線機であるDUT1の電気特性を測定するものである。
【0025】
測定装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。測定装置10は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを、操作部11、設定制御部12、測定処理装置20の機能部として機能させるようになっている。
【0026】
DUT1は、直流の電源電圧が供給される電源端子1a、プレストーク信号を入力するPTT信号入力端子1b、オーディオ周波数のAF信号(音声周波数信号)を入力する音声信号入力端子1c、入力信号をFM変調してRF信号(無線周波数信号)に変換して出力する出力端子1dを備えている。
【0027】
操作部11は、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、測定条件等を表示するディスプレイ、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成され、各測定条件の入力や、プレストーク信号をPTT信号出力部24に出力させるコマンドの送出、表示部27の表示内容の設定等を行うため、測定者が操作するものである。
【0028】
設定制御部12は、操作部11によって入力された各種情報を測定処理装置20の各部に設定するようになっている。
【0029】
信号発生部21は、例えば1kHzのAF信号を発生し、これを試験信号としてDUT1の音声信号入力端子1cに出力するようになっている。ここで、DUT1は、入力したAF信号の振幅に応じて搬送波の周波数を変化させるFM変調を行い、所定周波数のRF信号に変換し、電気特性測定部22に出力する。すなわち、DUT1が出力するRF信号は、AF信号の成分を含む。
【0030】
電気特性測定部22は、図示を省略したが、DUT1の出力端子1dから入力したRF信号をIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号にダウンコンバートする受信部と、IF信号をBB(Base Band:ベースバンド)信号に変換する周波数変換部と、BB信号に変換したFM変調信号をFM復調するFM復調部と、を備えている。この電気特性測定部22は、電気特性測定手段を構成する。
【0031】
また、電気特性測定部22は、PTT信号出力部24からプレストーク信号を入力するようになっている。また、電気特性測定部22は、電源電圧出力部23から電源電圧を入力し、DUT1に供給される直流電圧の変動をモニタできるようになっている。なお、電気特性測定部22は、例えばシグナルアナライザで実現されるものである。
【0032】
前述の構成において、電気特性測定部22は、DUT1からAF信号の成分を含むRF信号を入力し、このRF信号に基づいてDUT1の所定の電気特性を測定するようになっている。ここで、所定の電気特性は、例えば、RF信号の電力特性及び周波数特性、AF信号の信号レベル特性、信号対雑音比(SN比)及び周波数偏移特性のうちの少なくともいずれか1つである。
【0033】
また、電気特性測定部22は、PTT信号出力部24から入力したプレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに、電源電圧出力部23から入力する電源電圧と所定の電気特性との時間的変動を示すデータを時間的に同期させて取得するようになっている。
【0034】
電源電圧出力部23は、所定電圧の直流の電源電圧をDUT1の電源端子1a及び電気特性測定部22に出力するようになっている。なお、電源電圧出力部23は、電源電圧供給手段を構成する。
【0035】
この電源電圧出力部23は、例えば、12.0V〜15.0Vの範囲で出力電圧を任意に設定できるものであるのが好ましい。なお、電源電圧出力部23として、実使用でDUT1と組み合わせて使用される電源を用いてもよい。具体的には、DUT1が車載型であれば車載用のバッテリ、携帯型であれば高出力用の高電圧バッテリパック(例えば12.0V出力)や標準出力用の標準電圧バッテリパック(例えば7.2V出力)等を電源電圧出力部23として用いてもよい。
【0036】
PTT信号出力部24は、測定者が操作部11を操作して所定のコマンドを入力したタイミングに基づいて、DUT1のPTT信号入力端子1b及び電気特性測定部22に出力するプレストーク信号オン又はオフに設定するようになっている。このPTT信号出力部24は、プレストーク信号出力手段を構成する。なお、DUT1が、押すことにより送信モードとなり、離すことにより受信モードとなる動作を切り換えるPTTスイッチを備え、PTT信号出力部24が、DUT1のPTTスイッチに代わるPTTスイッチを有し、このPTTスイッチをオンにするとDUT1が送信状態に設定され、オフにするとDUT1が受信状態に設定されるよう構成してもよい。
【0037】
測定データ記憶部25は、例えばメインメモリ等の主記憶装置で構成され、電気特性測定部22の測定結果のデータを記憶するようになっている。
【0038】
測定データ解析部26は、測定者が操作部11を操作して指示した電気特性の測定データを測定データ記憶部25から読み出し、該当する電気特性の統計情報を求めて表示部27に表示させることができるようになっている。具体的には、測定データ解析部26は、DUT1の個体を識別する製造番号やロット番号と、測定データとを紐付けておいて、これらの測定データを統計用アプリケーションで閲覧できる構成を有する。この構成により、特に無線機メーカの管理者が統計データとしてバラツキやデータの傾向を把握することが可能となる。また、そのバラツキやデータの傾向が部品に依存するものであれば部品メーカへのフィードバックができ、また無線機メーカでの調整の効率化、設計の改善を図ることが可能となる。なお、測定データ解析部26は、統計処理手段を構成する。
【0039】
表示部27は、測定者が操作部11を操作して指示した電気特性の測定データを測定データ記憶部25から読み出し、測定結果を画面に表示するようになっている。また、表示部27は、測定データ解析部26が求めた統計情報を表示するようになっている。この表示部27は、表示手段を構成する。
【0040】
次に、電気特性測定部22が測定して表示部27の画面に表示される電気特性のデータについて
図2〜
図7を用いて説明する。
図2〜
図7は、表示部27が表示する各電気特性のグラフであって、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに各電気特性の波形データを模式的に示した図である。
【0041】
図2は、プレストーク信号により受信状態から送信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号の送信電力(RF信号パワーと図示)と、そのRF信号を復調して得られたAF信号の信号レベル(AF信号レベルと図示)と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0042】
図2に示すように、時刻t1においてDUT1に対する電源電圧の供給が開始されている。その後、時刻t2においてプレストーク信号がオンにされている。すなわち、時刻t2以前はDUT1が受信状態、時刻t2以降はDUT1が送信状態にあり、時刻t2が受信状態と送信状態とが切り替わる時点であって、この時刻t2の時点をトリガに、時刻t2以前及び以後における各電気特性の波形データが示されている。この時刻t2以降では、電源電圧が若干低下するとともに、RF信号の送信電力及びAF信号の出力レベルが時間の経過とともに上昇していることが示されている。
【0043】
また、
図2において、T1及びT2は、それぞれ、RF信号の送信電力及びAF信号の出力レベルの立ち上がり時間を示し、V1は電源電圧の低下電圧を示している。ここで、立ち上がり時間は、安定値の10%から90%までの時間で示したが、これに限定されない。立ち上がり時間や低下電圧については、電気特性測定部22に算出させて、それにより求めた数値を表示部27の画面に表示する構成とすることができる。なお、表示部27が、立ち上がり時間や低下電圧のしきい値を水平ラインや垂直ラインで表示し、測定結果が許容範囲内にあるか否かを測定者が視覚的に判断できる構成としてもよい。
【0044】
図3は、プレストーク信号により送信状態から受信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号の送信電力(RF信号パワーと図示)と、そのRF信号を復調して得られたAF信号の信号レベル(AF信号レベルと図示)と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0045】
図3に示すように、時刻t3においてプレストーク信号がオフにされている。その後、時刻t4においてDUT1に対する電源電圧の供給が停止されている。すなわち、時刻t3以前はDUT1が送信状態、時刻t3以降はDUT1が受信状態にあり、時刻t3が受信状態と送信状態とが切り替わる時点であって、この時刻t3の時点をトリガに、時刻t3以前及び以後における各電気特性の波形データが示されている。この時刻t3以降では、電源電圧が若干上昇するとともに、RF信号の送信電力及びAF信号の出力レベルが時間の経過とともに下降していることが示されている。
【0046】
また、
図3において、T3及びT4は、それぞれ、RF信号の送信電力及びAF信号の出力レベルの立ち下がり時間を示し、V2は電源電圧の上昇電圧を示している。ここで、立下がり時間は、安定値の90%から10%までの時間で示したが、これに限定されない。立ち下がり時間や上昇電圧については、電気特性測定部22に算出させて、それにより求めた数値を表示部27の画面に表示する構成とすることができる。なお、表示部27が、立ち下がり時間や上昇電圧のしきい値を水平ラインや垂直ライン等で画面に表示し、測定結果が許容範囲内にあるか否かを測定者が視覚的に判断できる構成としてもよい。
【0047】
図4は、プレストーク信号により受信状態から送信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号の周波数(RF信号周波数と図示)と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0048】
図4に示すように、時刻t2においてプレストーク信号がオンにされると、RF信号周波数が、0Hzで表した規格中心値(例えば140MHz)を中心に変動しながら収束している。表示部27の画面には図示のように上限のしきい値である+500Hzと、下限のしきい値である−500Hzとが水平ラインで表示されているので、測定者は、電源電圧の低下電圧が確認できるとともに、RF信号周波数の測定値が規格内か否かを容易に把握することができる。
【0049】
なお、
図4に示した例に加えて、RF信号周波数が収束する時間を規定する時間方向のしきい値を例えば垂直ラインにより画面表示する構成とすれば、測定者は、RF信号周波数の収束時間の合否を容易に判定することが可能となる。また、電源電圧の低下電圧に対するしきい値を水平ラインで表示すれば、低下電圧の合否を容易に判定することが可能となる。
【0050】
図5は、プレストーク信号により受信状態から送信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号の周波数偏移(RF信号周波数偏移と図示)と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0051】
図5に示すように、時刻t2においてプレストーク信号がオンにされると、RF信号周波数偏移の値が変動しながら収束している。表示部27の画面には図示のように上限のしきい値である±5.0kHzと、下限のしきい値である±4.0kHzとが水平ラインで表示されているので、測定者は、電源電圧の低下電圧が確認できるとともに、RF信号周波数偏移の測定値が規格内か否かを容易に把握することができる。
【0052】
なお、
図5に示した例に加えて、RF信号周波数偏移の測定値が収束する時間を規定する時間方向のしきい値を例えば垂直ラインにより画面表示する構成とすれば、測定者は、RF信号周波数偏移の収束時間の合否を容易に判定することが可能となる。
【0053】
図6は、プレストーク信号により受信状態から送信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号に含まれるAF信号のSN比(AF信号S/Nと図示)と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0054】
図6に示すように、時刻t2においてプレストーク信号がオンにされると、AF信号のSN比の値が変動しながら収束している。表示部27の画面には図示のようにしきい値である20がカーソルで表示されているので、測定者は、電源電圧の低下電圧が確認できるとともに、AF信号のSN比の測定値が規格内か否かを容易に把握することができる。
【0055】
なお、
図6に示した例に加えて、RF信号周波数偏移の測定値が収束する時間を規定する時間方向のしきい値を例えば垂直ラインにより画面表示する構成とすれば、測定者は、AF信号のSN比の収束時間の合否を容易に判定することが可能となる。
【0056】
図7は、プレストーク信号により受信状態から送信状態に切り替わる状況において、DUT1が出力するRF信号に含まれるAF信号の周波数応答と、DUT1に供給される電源電圧の測定結果と、を模式的に示したものである。
【0057】
ここで、AF信号の周波数応答は、例えば、DC〜4kHzの信号成分を同レベルで含むホワイトノイズを信号発生部21に発生させ、信号発生部21が、このホワイトノイズをDUT1の音声信号入力端子1cに出力した場合に、DUT1が出力するRF信号を復調して得られたAF信号の信号レベルをL1〜L5の範囲で示したものである。
【0058】
図7に示すように、時刻t2においてプレストーク信号がオンにされると、AF信号の信号レベルL1〜L5の各境界部分の周波数が変動しながら一定値に収束している。表示部27の画面には図示のようにAF信号の信号レベルL1〜L5が互いに異なるパターン(ハッチング、色、濃淡等)で表示されているので、測定者は、電源電圧の低下電圧が確認できるとともに、AF信号の周波数応答を容易に把握することができる。
【0059】
なお、
図7に示した例に加えて、AF信号の周波数応答が一定値に収束する時間を規定する時間方向のしきい値を例えば垂直ラインにより画面表示する構成とすれば、測定者は、AF信号の周波数応答の収束時間の合否を容易に判定することが可能となる。
【0060】
また、
図7に示した例は、AF信号の周波数応答を2次元のグラフで表したものであるが、AF信号の周波数応答を3次元(時間軸、AF信号の周波数軸、AF信号の信号レベル軸)のグラフで表し、さらに電源電圧の変動を示すグラフをAF信号の周波数応答と時間的に同期させて表示させれば、AF信号の周波数応答の変動を測定者にさらにわかりやすく提示可能となる。
【0061】
前述の説明のうち、
図4〜
図7にそれぞれ示した電気特性は、プレストーク信号のオンでの表示例であるが、プレストーク信号をオフとした場合の表示例は省略する。
【0062】
次に、本実施形態における測定装置10の動作について
図8を用いて説明する。なお、測定開始時のプレストーク信号はオフであるとする。
【0063】
設定制御部12は、測定者が操作部11を操作して入力した測定条件を測定処理装置20の各部に設定する(ステップS11)。例えば、設定制御部12は、信号発生部21が発生する試験信号の信号レベル及び信号周波数の設定、電源電圧出力部23が出力する直流の電源電圧の電圧レベルの設定、電気特性測定部22に測定させる測定項目の情報の設定、表示部27の表示内容の指示等の情報を含む信号を測定処理装置20の各部に送出する。
【0064】
電源電圧出力部23は、測定者が操作部11を操作して設定した直流の電源電圧をDUT1及び電気特性測定部22に出力する(ステップS12)。
【0065】
信号発生部21は、測定者が操作部11を操作して設定した信号レベル及び信号周波数を有するAF信号をDUT1に出力する(ステップS13)。
【0066】
電気特性測定部22は、DUT1からAF信号の信号成分を含むRF信号を入力して復調し(ステップS14)、AF信号の成分を取り出す。
【0067】
電気特性測定部22は、測定者が操作部11を操作して設定した電気特性の測定を開始し、所定の時間間隔でデータを取得して測定データ記憶部25に記憶する(ステップS15)。
【0068】
表示部27は、操作部11からの操作信号に従って、測定データ記憶部25から所定の測定データを読み出して画面に表示する(ステップS16)。
【0069】
PTT信号出力部24は、プレストーク信号をオンにするコマンドを受信したか否かを判断する(ステップS17)。ここで、電気特性測定部22は、プレストーク信号をオンにするコマンドを受信したと判断しなかった場合は、ステップS15に戻る。
【0070】
一方、PTT信号出力部24は、ステップS17において、プレストーク信号をオンにするコマンドを受信したと判断した場合は、プレストーク信号をDUT1に出力する(ステップS18)。すなわち、プレストーク信号はオンになる。
【0071】
電気特性測定部22は、プレストーク信号のオン後における電気特性の測定を行い、所定の時間間隔でデータを取得して測定データ記憶部25に記憶する(ステップS19)。
【0072】
表示部27は、操作部11からの操作信号に従って、測定データ記憶部25から所定の測定データを読み出して画面に表示する(ステップS20)。例えば、表示部27は、
図2に示した内容を画面に表示する。
【0073】
PTT信号出力部24は、プレストーク信号をオフにするコマンドを受信したか否かを判断する(ステップS21)。ここで、PTT信号出力部24は、プレストーク信号をオフにするコマンドを受信したと判断しなかった場合は、ステップS19に戻る。
【0074】
一方、PTT信号出力部24は、ステップS21において、プレストーク信号をオフにするコマンドを受信したと判断した場合は、DUT1に対するプレストーク信号の出力を停止する(ステップS22)。すなわち、プレストーク信号はオフになる。
【0075】
電気特性測定部22は、プレストーク信号のオフ後における電気特性の測定を行い、所定の時間間隔でデータを取得して測定データ記憶部25に記憶する(ステップS23)。
【0076】
表示部27は、操作部11からの操作信号に従って、測定データ記憶部25から所定の測定データを読み出して画面に表示する(ステップS24)。例えば、表示部27は、
図3に示した内容を画面に表示する。
【0077】
測定データ解析部26は、操作部11からの操作信号に従って、測定データ記憶部25に記憶された複数の測定データに対する所定の統計処理、例えば、
図2においてRF信号の送信電力及びAF信号の信号レベルの立ち上がり時間のデータの平均値、分散、最大値、最小値等を求めて表示部27に表示する(ステップS25)。
【0078】
以上のように、本実施形態における測定装置10は、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが切り替わる時点をトリガに電源電圧及び所定の電気特性の時間的変動を示すデータを表示する構成としたので、プレストーク信号により受信状態と送信状態とが相互に切り替わる時点をトリガに電気特性の変動を確認することができる。
【0079】
その結果、本実施形態における測定装置10は、無線機メーカでの開発、製造段階での試験や特性調整を効率的に進めることに資することができる。
【0080】
また、本実施形態における測定装置10は、DUT1が車載型、携帯型にかかわらず好適に適用することができる。例えば、DUT1が車載型の無線機であった場合、車の電源電圧は、エンジンの回転数に従って変動し、一般的には12.0V〜15.0V程度の変化がある。DUT1が携帯型の場合は、バッテリの消耗による電圧変動や、装着しているバッテリパックによっても電源電圧が変動する。したがって、電源電圧の変動による無線機の送受信特性の変動が生じるが、本実施形態における測定装置10は、送受信特性の変動が測定者の所望する範囲内にあるか否かを確認でき、無線機メーカでの設計検証が効率的となる。
【0081】
また、電源電圧出力部23が、電源電圧の変化を所定ステップで変化させて(例えば0.01Vステップ)、電源電圧ごとに電気特性の合否を判定すれば、極めて効率的に無線機メーカでの設計検証が効率的となる。